説明

通信経路設定装置、通信端末、マルチホップネットワークシステム

【課題】各通信端末が自律的に設定した通信経路と競合することなく、任意に設計した通信経路を各通信端末に設定する。
【解決手段】マルチホップネットワークに接続している通信端末の通信経路を当該通信端末に設定する装置であって、マルチホップネットワークの通信経路情報を格納する記憶手段102と、マルチホップネットワークを介して通信を行い、通信経路情報に基づき、当該通信経路を構成する各通信端末に対し、当該通信経路を設定するための情報を含む設定パケットを送信する通信手段103と、を備え、通信手段103は、設定パケットを送信する前に、当該設定パケットで設定する通信経路を構成する通信端末に対し、当該通信端末が自律的に通信経路を設定することを禁ずる旨のパケットを送信し、設定パケットの送信後に、禁止を解除する旨のパケットを送信することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチホップネットワークの通信経路設定に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、各々が中継機能を持つ無線端末同士でネットワークを構成し、無線による直接通信ができない範囲の端末に対しても、各々の中継機能を利用し通信範囲内にある端末によって順に中継することにより宛先通信端末へ間接的に送信し、複数の端末間で端末相互のデータ通信を実現するネットワークを、マルチホップネットワークという。
【0003】
このマルチホップネットワークシステムでは、宛先通信端末へのデータ送信の前に、どの端末を中継してデータを送信するかという通信経路を決定することが必要となる。
【0004】
通信経路の決定方法としては、例えばAODV(Ad hoc On−Demand Distance Vector)プロトコルがある。このプロトコルは、データ通信の要求があったとき経路探索を行って経路を決定するものであり、次のような手順で経路決定がなされる。
【0005】
(1)経路探索を開始する端末は、まず宛先アドレスおよび通信コストを含む経路要求パケットを同報により送信する。
(2)経路要求パケットを受信した端末は、自身が宛先通信端末でなければ通信コストを変更し同報により中継するとともに、経路要求パケットの情報と、このパケットを自身に中継した中継元の端末のアドレスを記憶しておく。
(3)宛先通信端末が経路要求パケットを受信すると、宛先通信端末は経路応答パケットを生成し、経路要求パケットを中継した中継元のアドレスへ送信する。
(4)経路応答パケットを受信した端末は、記憶してある経路要求パケットの中継元端末に中継するとともに、経路テーブルに経路応答パケットを中継した端末を中継先(次ホップ)アドレスとして記憶し、対応する宛先アドレスを記憶する。
(5)経路探索を開始した端末が経路応答パケットを受け取ると、経路テーブルに経路応答パケットを中継した端末を中継先アドレスとして記憶し、対応する宛先アドレスを記憶し、経路探索を終了する。
【0006】
このようにして経路探索がなされると、データの送信元端末から宛先通信端末までの中継端末のそれぞれの経路テーブルに宛先通信端末と中継先端末の情報が格納され、この中継先アドレスにしたがって中継することにより、送信元端末から宛先通信端末までデータを送信することが可能になる。
さらに経路要求パケット、経路応答パケットを通信コストに応じて送信することにより、通信コストの最も低い経路によりデータの通信を行うことができる。
【0007】
一方、マルチホップ無線通信システムの経路選択方法に関し、『リンク品質を考慮して最適な経路確立を可能にするマルチホップ無線通信システムおよびその経路選択方法を提供する。』ことを目的とした技術として、『中継ノードはRREQを受信して送信元ノードから自ノードに至る経路のリンク品質メトリックを求め、これをRREQに登録して転送する。宛先ノードはRREQを受信して送信元ノードから自ノードに至る経路のリンク品質メトリックを求め、これをRREPに登録して返信する。同一のRREQを別経路で受信した宛先ノードは、リンク品質メトリックの優れたRREQに応答してRREPを返信する。同一のRREPを別経路で受信した発信元ノードは、リンク品質メトリックの優れたRREPに基づいて経路情報を生成する。』というものが提案されている(特許文献1)。
【0008】
また、『そのデータパケットは、宛先ノードによって受信されるまで、ネットワークの中を転送される。それに応答して、宛先ノードは、経路情報を含む経路応答パケットを生成する。その経路情報はコストを含むことができる。経路応答パケットは、発信元ノードによって受信されるまで、ネットワークの中を転送される。転送中に、種々のコストを含む複数の経路応答パケットが生成されることができる。その後、発信元ノードはコスト計算を行い、そのコストに基づいて最良の経路を選択することができる。』というものも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−33557号公報(要約)
【特許文献2】特開2005−65267号公報(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の技術によれば、故障などにより宛先通信端末への経路で電文を到達できない場合でも自律分散的に代替経路を発見することができる。
その反面、ある端末が経路要求パケットを発行すると、ブロードキャストにより中継され、発見された経路上の端末すべてでその宛先への経路が設定されるため、特にその経路を変更する必要がない端末でも、通信状態の一時的な不具合や通信の衝突などによる通信エラーなどにより経路要求パケットが発行される毎に、その宛先通信端末への経路が変更してしまう可能性がある。
【0011】
このように、経路要求パケットが発行される毎に経路が変更してしまう可能性があるため、現在利用されている経路をシステムの運用時に推定することが難しい。
例えば、通信の不具合が発生した場合に不具合の発生した場所を即座に特定するといったことが困難である。
【0012】
また、経路探索はブロードキャストによりなされるため、ネットワークに対する通信コストが高く、できるだけ経路要求パケットの発生を抑制する必要がある。
【0013】
特にビル設備における空調や照明の制御用ネットワークのように、固定して設置された通信端末が多く、移動によって通信可能エリアが変化するということが少ないネットワークシステムにおいては、少数の移動端末が実行する経路探索によって、通信コストの高い経路要求パケットが頻繁に発生したり、本来変更の必要のない固定された端末間の経路までが変更されたりすることは望ましくない。
【0014】
また、外部から経路を設定する手段がないため、端末の交換などのメンテナンス作業のために一時的に迂回経路を設定し、作業後に経路を元に戻す、といった運用ができず、作業の手間を要するという課題があった。
【0015】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、各通信端末が自律的に設定した通信経路と競合することなく、任意に設計した通信経路を各通信端末に設定することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る通信経路設定装置は、マルチホップネットワークに接続している通信端末の通信経路を当該通信端末に設定する装置であって、前記マルチホップネットワークの通信経路情報を格納する記憶手段と、前記マルチホップネットワークを介して通信を行い、前記通信経路情報に基づき、当該通信経路を構成する各通信端末に対し、当該通信経路を設定するための情報を含む設定パケットを送信する通信手段と、を備え、前記通信手段は、前記設定パケットを送信する前に、当該設定パケットで設定する通信経路を構成する通信端末に対し、当該通信端末が自律的に通信経路を設定することを禁ずる旨のパケットを送信し、前記設定パケットの送信後に、禁止を解除する旨のパケットを送信することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る通信経路設定装置によれば、各通信端末が自律的に設定する通信経路とは独立に、任意の通信経路を各通信端末に設定することができる。
また、例えばメンテナンス作業等を行う場合において、作業に都合のよい通信経路を任意に設定できるので、各通信端末に設定されている通信経路を容易に把握でき、作業効率が向上するという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1に係る通信経路設定装置101の機能ブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る通信端末201の構成を示すブロック図である。
【図3】通信経路設定装置101の設定経路記憶手段102が格納する設定経路情報の構成図である。
【図4】通信端末201の経路記憶手段202が格納する経路情報テーブル401の構成とデータ例を示すものである。
【図5】通信経路設定装置101が各通信端末の通信経路を設定する動作の概略を説明するものである。
【図6】通信経路設定装置101が各通信端末の通信経路を設定する動作の詳細シーケンスを説明するものである。
【図7】実施の形態2に係る通信経路設定装置701の機能ブロック図である。
【図8】通信経路を設定している途中に、通信経路を構成する通信端末が通信不可状態になった場合の動作を説明するものである。
【図9】図8の後において、端末復帰検知手段704が、通信端末504が通信可能状態に復帰したことを検知した際の動作を説明するものである。
【図10】実施の形態3に係る通信経路設定装置1001の機能ブロック図である。
【図11】実施の形態3に係る通信端末1101の機能ブロック図である。
【図12】実施の形態5において通信端末201が保持している経路情報テーブル1201の構成とデータ例を示すものである。
【図13】実施の形態5に係る通信端末の経路設定動作を説明するものである。
【図14】実施の形態6において通信端末の経路記憶手段が格納している経路情報テーブル1401の構成とデータ例を示すものである。
【図15】実施の形態6に係る通信端末の経路設定動作を説明するものである。
【図16】実施の形態7に係る通信経路設定装置1601の機能ブロック図である。
【図17】経路設計手段1605が通信経路を自動設計した結果を示すものである。
【図18】実施の形態11に係る通信経路設定装置1801の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る通信経路設定装置101の構成を示すブロック図である。
通信経路設定装置101は、設定経路記憶手段102、通信手段103を有する。
設定経路記憶手段102は、後述の図3で説明する通信経路情報を格納している。
通信手段103は、ネットワークを介して他の通信端末と通信する。
【0020】
図2は、本実施の形態1に係る通信端末201の構成を示すブロック図である。
通信端末201は、経路記憶手段202、通信手段203を有する。
経路記憶手段202は、図4で説明する通信経路テーブル401を格納している。
通信手段203は、ネットワークを介して他の通信端末及び通信経路設定装置101と通信する。
【0021】
設定経路記憶手段102及び経路記憶手段202は、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置で構成することができる。
通信手段102及び通信手段203は、電波による無線通信手段、赤外線による無線通信手段の他、EtherNet、USB、RS−232Cなど有線の通信手段を利用して通信する手段として構成することができる。
また、通信経路設定装置101及び通信端末201は、通信パケットの生成や動作制御を行うための、CPUやマイコン等の制御手段を適宜備えることとする。
【0022】
図3は、通信経路設定装置101の設定経路記憶手段102が格納する設定経路情報の構成図である。
設定経路情報は、通信経路設定装置101が各通信端末の通信経路を設定するために用いる情報であり、例えば図3に示すように、テーブル形式で構成することができる。図3の構成例では、各行が1つの通信経路を表している。
「経路構成端末アドレスリスト」列には、その行が表す通信経路を構成する各通信端末のアドレスが、中継される通信端末の順に格納される。
「設定済み端末数」列には、「経路構成端末アドレスリスト」列に格納されている通信端末のうち何個の端末について通信経路を設定したかを表す値が格納される。詳細は後述の図5〜図6で説明する。
図3のデータ例では、例えば送信元端末から宛先通信端末までn回の中継により伝達される通信経路では、設定経路構成端末アドレスリスト列にはn+1個のアドレス値が格納される。
【0023】
なお、設定経路情報の形式は図3に示すようなテーブル形式に限られるものではなく、任意の形式とすることができる。また、各エントリの値は、あらかじめ設定しておく、ないしは別途入力するものとする。
【0024】
図4は、通信端末201の経路記憶手段202が格納する経路情報テーブル401の構成とデータ例を示すものである。
経路情報テーブル401は、「宛先アドレス」列と「中継先アドレス」列を有する。
「宛先アドレス」列には、当該通信端末が通信パケットを送信する最終宛先端末のアドレスが格納される。
「中継先アドレス」列には、当該通信端末が「宛先アドレス」列に相当する通信端末に宛てた通信パケットを送信する際に、次にパケットを送信すべき端末のアドレスが格納される。
【0025】
1行目のデータ例では、通信端末nに宛てて通信パケットを送信する際には、まず通信端末1にそのパケットを送信すべきことが分かる。通信端末1も同様の通信経路テーブルを保持しており、パケットの中継を繰り返すことにより、最終宛先である通信端末nにパケットが届けられる。
このような経路情報テーブル401をネットワーク中の通信端末201がそれぞれ分散して持つことにより、ある送信元端末から宛先通信端末への電文を中継して伝達することができる。
【0026】
なお、経路情報テーブル401の形式は図4に示すようなテーブル形式に限られるものではなく、任意の形式とすることができる。
【0027】
次に、本実施の形態1における経路設定の動作について説明する。
【0028】
図5は、通信経路設定装置101が各通信端末の通信経路を設定する動作の概略を説明するものである。ここでは、送信元の通信端末502から最終宛先の通信端末506に宛てた設定経路510を設定する場合を例にする。
なお、図5において、通信端末502〜506の添え字は、通信経路の中継順を表す。以下、ステップ毎に説明する。
【0029】
(1)通信経路設定装置101は、図3で説明した通信経路情報を読み取り、通信経路を構成する各通信端末のアドレスを取得する。
(2)通信経路設定装置101は、取得した通信経路の最終宛先端末から順に、通信経路を設定するための情報を含む設定パケットを送信する。
(3)設定パケットを受け取った通信端末は、その内容に基づき、通信経路テーブル401に保持するエントリを設定する。
【0030】
図6は、通信経路設定装置101が各通信端末の通信経路を設定する動作の詳細シーケンスを説明するものである。以下、各ステップについて説明する。
【0031】
(S601)
通信経路設定装置101は、図3で説明した通信経路情報を通信経路記憶手段102より読み取り、「経路構成端末アドレスリスト」列より、設定経路510を構成する構成端末のアドレスを取得する。また、「設定済み端末数」列の値を0に設定する。
次に、通信経路設定装置101は、n−1個目の通信端末505に、通信経路を設定するための情報を含む設定パケットを送信する。
設定パケットには、経路情報テーブル401の「宛先アドレス」列に通信端末506のアドレス、「中継先アドレス」列に通信端末506のアドレスを設定すべき旨の情報が含まれている。
【0032】
(S602)
通信端末505は、設定パケットを受信すると、その内容に基づき、経路情報テーブル401の「宛先アドレス」列に通信端末506のアドレス、「中継先アドレス」列に通信端末506のアドレスを設定する。
(S603)
通信端末505は、経路設定応答を通信経路設定装置101に送信する。
【0033】
(S604)
通信経路設定装置101は、ステップS603で経路設定応答を受信すると、通信経路情報の「設定済み端末数」列の値を1増加させる。また、増加後の値を、「経路構成端末アドレスリスト」列の端末個数と比較し、設定パケットの送信を継続するか否かを判断する。
ここでは、未設定の端末が残っているため、設定パケットの送信を継続する。
(S605)
通信経路設定装置101は、n−2個目の通信端末504に、通信経路を設定するための情報を含む設定パケットを送信する。
設定パケットには、経路情報テーブル401の「宛先アドレス」列に通信端末506のアドレス、「中継先アドレス」列に通信端末505のアドレスを設定すべき旨の情報が含まれている。
【0034】
(S606)
通信端末504は、設定パケットを受信すると、その内容に基づき、経路情報テーブル401の「宛先アドレス」列に通信端末506のアドレス、「中継先アドレス」列に通信端末505のアドレスを設定する。
(S607)
通信端末504は、経路設定応答を通信経路設定装置101に送信する。
【0035】
通信経路設定装置101は、設定パケットの送信と経路設定応答の受信を、「設定済み端末数」列の値と、「経路構成端末アドレスリスト」列の端末数とが一致するまで繰り返す。これにより、送信元通信端末502から宛先通信端末506への設定経路510が設定される。
【0036】
送信元通信端末502から宛先通信端末506へ電文を送信する場合には、各通信端末は以下の手順により自身の経路記憶手段202の保持する経路情報テーブル401を参照し、電文の中継先を取得する。
【0037】
(1)通信端末502は、「宛先アドレス」列の値が宛先通信端末506のアドレスと一致するエントリの「中継先アドレス」列の値を参照し、中継先の通信端末503のアドレスを取得し、通信端末503へ電文を送信する。
(2)通信端末503は、宛先通信端末506への電文を受信すると、同様に自身の経路記憶手段202の保持する経路情報テーブル401を参照し、2個目の中継先通信端末504へ電文を送信する。
(3)この手順を繰り返すことにより、送信元通信端末502から宛先通信端末506へ電文が中継される。
【0038】
このように、通信経路設定装置101は、任意の通信経路を各通信端末に設定することができる。これにより、例えばメンテナンス作業等を行う場合において、作業に都合のよい通信経路を任意に設定できるので、各通信端末に設定されている通信経路を容易に把握でき、作業効率が向上するという効果がある。
【0039】
また、通信経路設定装置101が各通信端末の通信経路を設定する場合に、「経路構成端末アドレスリスト」列の中で最終宛先端末に近い通信端末から順に設定パケットを送信するようにしているので、設定済みの通信経路に関しては、通信経路設定装置101が各通信端末の経路を設定している途中であっても有効に機能する。
【0040】
すなわち、例えば通信端末506から504までの経路情報テーブル401が設定されている時点で、通信端末504から通信端末506への電文の送信要求が発生した場合、既に設定されている経路情報テーブル401に基づき電文中継が可能である。
【0041】
ここで、通信経路設定装置101が「経路構成端末アドレスリスト」列の中で送信元通信端末から順に設定パケットを送信するようにしたものと仮定する。
通信端末502から504までの経路情報テーブル401が設定されている時点で、通信端末504から通信端末506への電文の送信要求が発生した場合、通信端末505の経路情報テーブル401に通信端末506宛ての経路情報が設定されているとは限らないため、宛先通信端末506へ正しく送信できない可能性がある。
最終宛先端末から順に設定パケットを送信するようにすることで、かかる経路情報テーブル401のデータ矛盾が生ずることがなくなる。
【0042】
以上のように、本実施の形態1によれば、通信経路設定装置101から経路を設定する場合に、「経路構成端末アドレスリスト」列の中で宛先通信端末に近い通信端末から順に設定パケットを送信するようにしたので、通信経路を各通信端末へ設定している途中であっても、設定済みの通信経路に関しては有効に機能する。
したがって、該経路の一部を利用するような他の通信が発生した場合にも、経路情報テーブル401のデータ矛盾が生ずることなく、宛先通信端末へ電文を中継することが可能になる。また、通信経路の冗長性を確保することができる。
【0043】
さらに、経路の設定手順中に経路構成端末の中のいずれかの端末に通信エラーなどにより正しく設定パケットを送信できなかった場合においても、同様に経路情報テーブル401のデータ矛盾が生ずることなく、宛先通信端末へ電文を中継することが可能である。
【0044】
通信端末の動作中に、「経路表に対応する経路情報がない」または「対応する中継先アドレスへの通信が失敗」といった中継エラーが生じた場合には、通信端末は自ら代替経路を探索するために、経路要求パケットを送信する。
一般に、経路要求パケットは同報送信されるためネットワークに与える負荷が高く、その送信は極力抑制されるべきであるが、本実施の形態1によれば、設定済みの経路情報テーブル401は有効に機能するため、かかる通信負荷の高い経路要求パケットの発行を効果的に抑制することが可能になる。
【0045】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2に係る通信経路設定装置701の構成を示すブロック図である。
通信経路設定装置701は、実施の形態1の図1で説明した構成に加えて、新たに端末復帰検知手段704を備える。
端末復帰検知手段704は、通信端末201が通信可能であるか否かを検知し、また停電や故障など通信できない状態から通信可能な状態に復帰したことを検知する。
その他の構成は図1と同様であるため、説明を省略する。
【0046】
端末復帰検知手段704は、以下のいずれかの手法により、通信端末201が通信可能であるか否かを検知する。
【0047】
(1)ネットワーク内の通信端末201より、周期的に通信経路設定装置101に宛てて通信可能状態を通知する電文を送信するように構成しておく。電文は、通信手段203を介して端末復帰検知手段704が受け取る。
端末復帰検知手段704は、上述の周期的な通知が途切れた場合に、通信端末が通信不可状態になったと判断し、周期的な通知が再開した場合に通信可能な状態になったと判断して、復帰を検知することができる。
(2)端末復帰検知手段704から通信端末201へ周期的に動作確認パケットを送信してその応答を検知することにより、通信端末201通信端末が通信不可状態になったことや、通信可能状態に復帰したことを検知する。
(3)その他適当な検知手法を用いてもよい。
【0048】
なお、端末復帰検知手段704は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、CPUやマイコンのような演算装置上で実行されるソフトウェアとして構成することもできる。
【0049】
図8は、通信経路設定装置701が各通信端末に通信経路を設定している途中に、通信経路を構成する通信端末が通信不可状態になった場合の動作を説明するものである。ここでは、送信元の通信端末802から最終宛先の通信端末806に宛てた設定経路810を設定する場合を例にする。
なお、通信端末802〜806に振られた添え字は、図5と同様に通信経路の中継順を表す。
【0050】
図8において、実施の形態1で説明した手順により、通信経路設定装置701から各通信端末に宛てて通信経路の設定パケットを送信する。
ここで、途中の通信端末804が故障などにより通信できない状態にある場合には、設定パケットの送信ができないため、経路設定がそこで中断される。このとき、「設定済み端末数」列の値は、設定経路810を構成する端末数よりも少ない値になっている。
【0051】
図9は、図8の後において、通信経路設定装置701の端末復帰検知手段704が、通信端末804が通信可能状態に復帰したことを検知した際の動作を説明するものである。
通信経路設定装置701は、中断されていた経路設定を直ちに再開し、図9に示す経路設定順序により中断されたところから設定する。以下、経路設定を再開する動作を、ステップ毎に説明する。
【0052】
(1)端末復帰検知手段704は、通信端末804が通信可能状態に復帰したことを検知する。
(2)設定経路記憶手段702より図3で説明した通信経路情報を読み取り、「設定済み端末数」列の値が「経路構成端末アドレスリスト」列の端末数よりも少ない状態にあるエントリを特定する。
(3)ステップ(2)で特定したエントリについて、先に設定パケットの送信を中断した通信端末より、設定パケットの送信を再開する。
(4)その後、実施の形態1と同様に「設定済み端末数」列の値と「経路構成端末アドレスリスト」列の端末数が一致するまで、設定パケットの送信を繰り返す。
(5)以上の手順により、設定経路810が設定される。
【0053】
以上のように、本実施の形態2によれば、端末復帰検知手段704により通信端末が通信可能状態に復帰したことを検知すると、直ちに中断されていた経路設定を再開するので、経路設定が途中で中断した場合であっても、所望の経路の設定を自動的かつ確実に実行することができる。また、復帰してから経路が設定されるまでの時間を短縮することができる。
【0054】
実施の形態3.
図10は、本発明の実施の形態3に係る通信経路設定装置1001の構成を示すブロック図である。
通信経路設定装置1001は、実施の形態1の図1で説明した構成に加えて、新たに経路探索許可フラグ設定手段1005を備える。
経路探索許可フラグ設定手段1005は、経路要求パケットを送信して自律的に通信経路を設定することの可否を通信端末に対して指示するためのパケットを生成し、通信手段1003を介して送信する。詳細は後述する。
その他の構成は図1と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
なお、経路探索許可フラグ設定手段1005は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、CPUやマイコンのような演算装置上で実行されるソフトウェアとして構成することもできる。
【0056】
図11は、本発明の実施の形態3に係る通信端末1101の機能ブロック図である。
通信端末1101は、実施の形態1の図2で説明した構成に加えて、新たに経路探索手段1104、経路探索許可フラグ記憶手段1105を備える。
その他の構成は図2と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
経路探索手段1104は、経路要求パケットの発行を制御し、アプリケーションの指示や通信手段での通信エラーにより経路探索要求が発生すると、経路探索を行なう。
なお、経路探索許可フラグ記憶手段1105で保持される値に「許可」の旨が設定されている場合には経路探索を行うが、「不許可」の旨が設定されている場合には経路探索を行わない。
【0058】
なお、経路探索手段1104は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、CPUやマイコンのような演算装置上で実行されるソフトウェアとして構成することもできる。
【0059】
経路探索許可フラグ記憶手段1105は、「許可」「不許可」の2値を取る経路探索許可フラグを格納する。同フラグの値は、通信経路設定装置1001の経路探索許可フラグ設定手段1005が生成する指示パケットにより設定される。
なお、経路探索許可フラグ記憶手段1105と経路記憶手段1102を一体的に構成してもよい。
【0060】
次に、本実施の形態3における通信経路設定装置1001と通信端末1101の動作について説明する。
【0061】
(1)通信経路設定装置1001が経路設定を開始するとき、経路探索許可フラグ設定手段1005は、「経路探索許可フラグ=不許可」を設定すべき旨の指示パケットを生成し、通信手段1003を介してネットワーク中のすべての端末に送信する。
(2)通信端末1101は、上記の指示パケットを受信し、経路探索許可フラグ記憶手段1105に同旨の値を格納する。これによりネットワーク中のすべての通信端末1101は、自律的に経路要求パケットを送信しないようになる。
【0062】
(3)通信経路設定装置1001による経路設定が終了すると、経路探索許可フラグ設定手段1005は、「経路探索許可フラグ=許可」を設定すべき旨の指示パケットを生成し、通信手段1003を介してネットワーク中のすべての端末に送信する。
(4)通信端末1101は、上記の指示パケットを受信し、経路探索許可フラグ記憶手段1105に同旨の値を格納する。これにより、各通信端末は、再度自律的に経路要求パケットを送信するようになる。
【0063】
なお、ネットワーク中のすべての端末に上述の指示パケットを送信する際には、ブロードキャストを利用してもよいし、各端末それぞれに個別に送信してもよい。
【0064】
以上のように、本実施の形態3によれば、通信経路設定装置1001から経路設定を行なう前に、経路探索許可フラグ記憶手段1105に格納するフラグの値を通信経路設定装置1001からの指示パケットにより設定することにより、各通信端末が経路要求パケットを送信しないようにすることができる。
したがって、通信経路設定装置1001が通信経路を設定しているときには、各通信端末1101が保持している通信経路テーブル401の値が自律的に更新されることがなくなり、経路設定装置から設定しようとする所望の経路を確実に設定することができる。
【0065】
上述の説明では、経路設定装置1001は経路設定前に経路探索許可フラグを「不許可」に設定し、経路設定が完了したら経路探索許可フラグを「許可」に戻すようにしているが、例えば以下のようにすることもできる。
(1)運用中は経路探索許可フラグを「不許可」に設定し、経路探索が必要なときにのみ経路探索許可フラグを「許可」にする。
(2)短い経路の設定のときは経路探索許可フラグを「許可」にし、経路構成端末の数が多い時のみ経路探索許可フラグを「不許可」に設定する。
【0066】
また、上述の説明ではネットワーク中のすべての端末に経路探索許可フラグを設定するようにしたが、一部の通信端末1101のみ経路探索許可フラグを設定するようにしてもよい。
【0067】
このように、各通信端末1101の経路探索許可フラグを通信経路設定装置1001から設定することにより、経路情報テーブル401が変更されなくなり、運用・保守の面で経路の把握が容易になる。
【0068】
実施の形態4.
実施の形態3では、通信経路設定装置1001からの指示パケットにより経路探索許可フラグを設定することを説明した。
一方、通信端末1101に電池残量検知手段(図示せず)を設け、電池残量があらかじめ定めた閾値よりも低下したら、自動的に経路探索許可フラグ記憶手段1105の保持する経路探索許可フラグを「不許可」に設定してもよい。
なお、設定動作は電池残量検知手段が行ってもよいし、CPUやマイコン等の制御部を介して行ってもよい。
このようにすることで、電池残量が少なくなったときに、経路要求パケットの通信を抑制し、電池の消費量を減らすことができる。また経路探索に対して応答しないため中継端末とならず、中継のための通信量が減り、同様に電池の消費量を減らすことができる。
【0069】
実施の形態5.
実施の形態3〜4では、通信端末1101に経路探索許可フラグを設定し、各通信端末が経路要求パケットを送信することを抑制する構成について説明した。
本発明の実施の形態5では、通信経路テーブルのエントリ毎に、自律的な更新の可否を設定することのできる構成について説明する。
なお、後述の図12で説明する経路情報テーブル1201を除き、本実施の形態5に係る通信端末の構成は、実施の形態1で説明した図2と同様であるため、説明を省略する。
【0070】
図12は、本実施の形態5において通信端末201が保持している経路情報テーブル1201の構成とデータ例を示すものである。
本実施の形態5において、経路情報テーブル1201は、図4の構成に加えて新たに「自律更新可否」列を有する。同列は、「可」「不可」の2値を取る。
【0071】
通信端末201は、通信経路設定装置101から設定パケットを受信すると、経路記憶手段202が格納する経路情報テーブル1201の「宛先アドレス」「中継先アドレス」列に経路情報を設定するとともに、「自律更新可否」列に「不可」を設定する。
一方、経路要求パケットによって自律的に経路情報テーブル1201のエントリが生成された場合には、そのエントリにおける「自律更新可否」列の値は「可」に設定する。
【0072】
(1)「自律更新可否」列の値が「不可」の場合
そのエントリは、通信端末201が経路要求パケットおよび経路応答パケットを受信しても更新されない。
また、通信端末201内でそのエントリの「宛先アドレス」列に相当する通信端末への経路要求が発生しても、経路要求パケットを送信せず、その時点で設定されている「中継先アドレス」列の値に従って電文の中継を行なう。
【0073】
(2)「自律更新可否」列の値が「可」の場合
そのエントリは、経路要求パケットおよび経路応答パケットの内容にしたがって更新される。また、通信端末201内でそのエントリの「宛先アドレス」列に相当する通信端末への経路要求が発生した場合には、経路要求パケットを発行して経路探索を開始する。
【0074】
図13は、本実施の形態5に係る通信端末の経路設定動作を説明するものである。
図13において、「1」〜「4」は本実施の形態5に係る通信端末である。
ここでは、通信端末「1」から「4」に宛てた通信経路を設定する場合を例にとり、各ステップについて説明する。
【0075】
(1)経路要求パケット送信前
通信端末「2」は、経路情報テーブル1201において、「宛先アドレス=4」「中継先アドレス=3」「自律更新可否=不可」のエントリを保持している。
通信端末「3」は、経路情報テーブル1201において、「宛先アドレス=4」「中継先アドレス=4」「自律更新可否=不可」のエントリを保持している。
即ち、通信端末「2」〜「4」の間の通信経路は、通信経路設定装置101により設定されており、各通信端末がその経路を自律的に更新することはできなくなっている。
なお、通信端末「1」の経路情報テーブル1201は、未だ設定されていないものとする。
【0076】
(2)経路要求パケット送信
通信端末「1」は、通信端末「4」宛の通信経路を要求する経路要求パケットを同報送信により送信する。送信した経路要求パケットは、通信端末「2」に到達する。
【0077】
(3)経路応答パケット返信
通信端末「2」は、通信端末「1」が送信した経路要求パケットを受信する。
次に、通信端末「2」は、受信した経路要求パケットの内容を読み取り、要求されている宛先アドレスと、経路情報テーブル1201の各エントリの「宛先アドレス」とを比較する。
ここでは、「宛先アドレス=4」「中継先アドレス=3」「自律更新可否=不可」のエントリがこれに合致する。したがって、通信端末「4」宛の通信経路は、経路要求パケットにより自律的に変更することができないことが分かる。
次に、通信端末「2」は、「中継先アドレス=2」に設定すべき旨の経路応答パケットを、通信端末「1」に返信する。
【0078】
(4)経路情報テーブル設定
通信端末「1」は、受信した経路応答パケットの内容に基づき、経路情報テーブル1201のエントリを設定する。ここでは、「宛先アドレス=4」「中継先アドレス=2」「自律更新可否=可」のエントリが新たに生成されることになる。
【0079】
以上のような動作により、経路要求パケットが送信された場合でも、通信経路設定装置101により「自律更新可否=不可」に設定されている経路情報エントリについては、上書き更新されることなく維持される。
【0080】
通常の経路要求パケットの場合は、上記ステップ(3)において、通信端末「2」は経路要求パケットをそのまま通信端末「4」へ宛てて転送するが、本実施の形態5においては「自律更新可否」列が有効に働き、転送することなく経路応答パケットを返信する。
したがって、経路情報エントリが上書き更新されることなく維持されるのである。
【0081】
以上のように、本実施の形態5によれば、経路情報テーブル1201に「自律更新可否」列を設け、通信経路設定装置101により設定された経路情報エントリに対しては同列の値を「不可」に設定し、経路探索により自律的に設定された経路情報エントリに対しては同列の値を「可」に設定するようにしたので、通信経路設定装置101から設定された経路を優先し、経路探索によって変更されないようにすることができる。
したがって、経路がむやみに変更されず、メンテナンス作業などを行う際に、各通信端末の通信経路を確認しやすくすることができる。
【0082】
なお、上述の説明では、「自律更新可否」列の値は通信経路設定装置101により設定されるか、経路探索により自律的に設定されるかによって、可否の値が自動的に設定されるようにしたが、さらに通信経路設定装置101からの指示パケットにより、「自律更新可否」列の値を任意に変更できるようにしてもよい。
このようにすることで、経路探索により探索される経路と、通信経路設定装置101から設定し固定的に利用する経路とを細かく制御することが可能となる。
【0083】
実施の形態6.
本発明の実施の形態6では、通信端末が複数の経路応答パケットを受信した際に、そのパケットに含まれる通信コストの値によって、いずれの経路を選択すべきかを決定することのできる構成と動作例について説明する。
【0084】
図14は、本実施の形態6において通信端末の経路記憶手段が格納している経路情報テーブル1401の構成とデータ例を示すものである。
経路情報テーブル1401は、実施の形態5で説明した図12の構成に加えて、新たに「通信コスト」列を有する。
「通信コスト」列には、当該通信端末から「宛先アドレス」に相当する通信端末までの通信にかかるコストを示す値、例えば中継ホップ数などが格納される。
【0085】
図15は、本実施の形態6に係る通信端末の経路設定動作を説明するものである。
図15において、「1」〜「6」は本実施の形態6に係る通信端末である。
ここでは、通信端末「5」から「4」に宛てた通信経路を設定する場合を例にとり、各ステップについて説明する。
【0086】
(1)経路要求パケット送信前
通信端末「1」は、経路情報テーブル1401において、「宛先アドレス=4」「中継先アドレス=2」「自律更新可否=不可」のエントリを保持している。
通信端末「2」は、経路情報テーブル1401において、「宛先アドレス=4」「中継先アドレス=3」「自律更新可否=不可」のエントリを保持している。
通信端末「3」は、経路情報テーブル1401において、「宛先アドレス=4」「中継先アドレス=4」「自律更新可否=不可」のエントリを保持している。
通信端末「6」は、経路情報テーブル1401において、「宛先アドレス=4」「中継先アドレス=4」「自律更新可否=可」のエントリを保持している。
即ち、通信端末「1」〜「4」の間の通信経路は、通信経路設定装置101により設定されており、各通信端末がその経路を自律的に更新することはできなくなっている。
また、通信端末「6」〜「4」の間の通信経路は、経路要求パケットにより自律的に設定されており、各通信端末がその経路を自律的に更新することができる。
なお、通信端末「5」の経路情報テーブル1401は、未だ設定されていないものとする。
【0087】
(2)経路要求パケット送信
通信端末「5」は、通信端末「4」宛の通信経路を要求する経路要求パケットを同報送信により送信する。送信した経路要求パケットは、通信端末「2」「3」「6」に到達する。
【0088】
(3)経路応答パケット返信
通信端末「2」「3」「6」は、通信端末「5」が送信した経路要求パケットを受信する。
次に、通信端末「2」「3」「6」は、受信した経路要求パケットの内容を読み取り、要求されている宛先アドレスと、経路情報テーブル1401の各エントリの「宛先アドレス」とを比較する。
いずれの端末も、通信端末「4」に宛てた経路情報エントリを保持しているため、それぞれ経路応答パケットを通信端末「5」に返信する。なお、経路応答パケットには、「通信コスト」列の値を含めるようにする。
ここで、通信端末「3」に関しては、「通信コスト」列の値をあらかじめ他の通信端末よりも低めに設定しておく。どの程度低めに設定しておくかは、ネットワークの環境や通信端末の仕様等に応じて適宜設計すればよい。
【0089】
(4)経路情報テーブル設定
通信端末「5」は、受信した経路応答パケットの内容に基づき、経路情報テーブル1401のエントリを設定する。図15の例では、複数の経路応答パケットを受信することになるので、同パケットに含まれる「通信コスト」の値が最も低いものを選択する。
ここでは、通信端末「3」に関して、「通信コスト」列の値をあらかじめ他の通信端末よりも低めに設定しておいたので、通信端末「3」が選択されやすくなる。
結果として、「宛先アドレス=4」「中継先アドレス=3」「自律更新可否=可」のエントリが新たに生成されることになる。
【0090】
以上のように、本実施の形態6によれば、「自律更新可否=不可」となっている通信端末については、「通信コスト」列の値をあらかじめ低めに設定しておくことにより、経路応答パケットの内容によって複数の通信経路を選択し得る状況下において、「自律更新可否=不可」となっている通信経路が優先的に選択されるように調整することができる。
したがって、通信経路設定装置101が設定した経路が変更されることを、より確実に防ぐことができる。
【0091】
実施の形態7.
図16は、本発明の実施の形態7に係る通信経路設定装置1601の構成を示すブロック図である。
通信経路設定装置1601は、実施の形態1の図1で説明した構成に加えて、新たに端末情報取得手段1604、経路設計手段1605を備える。
【0092】
端末情報取得手段1604は、各通信端末201について、例えば以下の情報を、通信手段1603を介して取得する。
(1)周囲の通信可能な端末のリスト
(2)受信電波強度、経路情報テーブル、電池残量、メモリ量等の情報
【0093】
経路設計手段1605は、端末情報取得手段1604が取得した情報を利用して、送信元端末から宛先通信端末への最適経路を設計する。設計した経路は設定経路記憶手段1602に格納され、実施の形態1で説明したものと同様の設定パケットにより各通信端末201に設定される。
【0094】
端末情報取得手段1604、経路設計手段1605は、これらの機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、CPUやマイコンのような演算装置上で実行されるソフトウェアとして構成することもできる。
【0095】
経路設計手段1605は、以下の手順により通信経路を設計する。
(1)送信元端末から宛先通信端末までのとりうる経路をすべて列挙する。
(2)ホップ数と各ホップにおける受信電波強度からなる評価関数を定める。あらかじめ評価関数を定めておいてもよい。
(3)端末情報取得手段1604により得られた受信電波強度の情報から、上記評価関数による評価値が最適となるような経路を選択することにより経路を設計する。
(4)ネットワークが複数の通信媒体を有しており、ゲートウェイやブリッジによりそれらをまたぐ中継が生じる場合には、該通信媒体の情報を端末情報取得手段1604により取得し、経路設計手段1605の評価関数のパラメータとして該通信媒体の情報を利用してもよい。
【0096】
以上のように、本実施の形態7によれば、経路設定装置1601に端末情報取得手段1604および経路設計手段1605を設けたので、自動的に最適な経路を設計して各通信端末201に設定することが可能となる。
【0097】
実施の形態8.
実施の形態7では、端末情報取得手段1604が取得した情報に基づき、経路設計手段1605が所定の評価関数を用いて通信経路を自動設計することを説明した。
経路設計手段1605は、端末情報取得手段1604により得られた各通信端末の現在の経路情報を参照し、より多くの通信で利用される通信端末201、すなわち中継先アドレスとしてより多く設定されている端末を通るような経路を優先して設定するようにしてもよい。
【0098】
このように、中継先アドレスとしてより多く設定されている端末を通るような経路を優先して設定することで、経路が分散せず特定の端末を通るようになるため、運用・保守の際に通信経路の確認が容易になる。また経路情報の情報量を少なくすることができ、通信端末に必要なメモリ量を減らしコストを下げることが可能になる。
【0099】
実施の形態9.
経路設計手段1605は、端末情報取得手段1604により得られた各通信端末の現在の経路情報を参照し、より多くの通信で利用される通信端末201への負荷が小さくなるように、すなわち中継先アドレスとしてより設定される端末ができるだけ分散するように経路を設定するようにしてもよい。特に電池残量が少ない通信端末が中継先アドレスとして設定されないように経路を設定してもよい。
【0100】
このように、中継先アドレスとして設定される端末が分散するように経路を設定することで、各通信端末の負荷を分散し、ネットワークトラフィックを有効に利用することが可能になる。また、電池残量が少ない通信端末が中継先アドレスとして設定されないようにすることで、電池残量が少ない通信端末の通信量が少なくなり、電池の寿命を延ばすことが可能になる。
【0101】
実施の形態10.
本発明の実施の形態10に係る通信経路設定装置において、経路設計手段1605は、以下の手順により通信経路を設定する。
【0102】
(1)経路設計手段1605は、端末情報取得手段1604により得られた各通信端末の現在の経路情報を参照する。
(2)経路設計手段1605は、同一の宛先アドレスに対して同じ経路を通る複数の送信元端末、すなわち同一の宛先アドレスと中継先アドレスからなる同一の経路情報を保持する通信端末を特定する。
(3)経路設計手段1605は、これらの複数の通信端末を、同一経路を通るグループとして取り扱う。さらに、同一経路情報を持つ複数の通信端末をグループとして取り扱う手順を階層的に適用し、同一宛先への通信に対し経路の一部分を重複して利用するような複数の通信端末201をグループとして取り扱うようにしてもよい。
(4)経路設計手段1605は、グループとして取り扱う通信端末から、グループ外の通信端末への通信は、必ず共通の通信端末を中継して送信するように経路を設計する。この端末は、グループの出口端末として機能することになる。
【0103】
図17は、経路設計手段1605が通信経路を自動設計した結果を示すものである。
図17において、「1」〜「6」は本実施の形態10に係る通信端末である。通信端末「3」〜「5」は、通信端末「1」「6」に対して電文を送信する際に、いずれも通信端末「2」を経由する点で共通している。
通信端末「2」〜「5」は、上記ステップ(3)でグループとして取り扱うように設定された通信端末群である。
また、通信端末「2」は、上記ステップ(4)で出口端末として設定された通信端末である。
【0104】
なお、出口端末はグループ内の端末から選択してもよいし、グループ外の端末を出口端末として設定してもよい。
【0105】
以上のように、本実施の形態10によれば、現在の経路情報にしたがって通信端末201をグループ化し、またグループからグループ外への通信は必ずある共通の通信端末を中継するようにすることで、経路の確認を行いやすくすることができる。
また、グループと判断された通信端末は物理的な位置が近くにあると想定できるため、アプリケーションプログラムや設定作業者、保守業者などに対し配置情報、位置情報、グループ情報を判断するための指標として利用することができる。
【0106】
なお、経路設計手段1605は、実施の形態7〜10で説明した、ホップ数、受信電波強度、通信媒体、現在の経路情報、電池残量、メモリ量、グループなどを組み合わせて、経路を設計してもよい。
このようにすることで、電池残量の少ない通信端末やメモリ量の少ない通信端末の中継通信量を少なくし、メモリ量が多い通信端末、ネットワークトラフィックに余裕のある通信端末の中継通信量を増やすなどの経路設計が可能になる。
また、上述の端末情報取得手段1604および経路設計手段1605と同様の構成を通信端末が備えていてもよい。
【0107】
実施の形態11.
図18は、本発明の実施の形態11に係る通信経路設定装置1801の構成を示すブロック図である。
通信経路設定装置1801は、入力手段1805を備える。入力手段1805は、設定経路情報を受け取り、その内容を設定経路記憶手段1802に格納する。
実施の形態7〜10では、経路設計手段1605が通信経路を自動設計する旨を説明したが、図18に示すように、別途設定経路情報を通信経路設定装置1801に供給するようにしてもよい。
【0108】
以上の実施の形態1〜11において、通信経路設定装置と通信端末は異なる装置として記述したが、ネットワーク中の通信端末が通信経路設定装置の機能を持ち、他の通信端末に経路を設定するようにしてもよい。
また、実施の形態1〜11までの各構成はそれぞれ取捨選択して一部のみで構成してもよいし、すべてを含む構成とすることもできる。複数の実施の形態を含む構成とすることでそれぞれの効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0109】
101 通信経路設定装置、102 設定経路記憶手段、103 通信手段、201 通信端末、202 経路記憶手段、203 通信手段、401 経路情報テーブル、502〜506 通信端末、510 設定経路、701 通信経路設定装置、702 設定経路記憶手段、703 通信手段、704 端末復帰検知手段、802〜806 通信端末、810 設定経路、1001 通信経路設定装置、1002 設定経路記憶手段、1003 通信手段、1005 経路探索許可フラグ設定手段、1101 通信端末、1102 経路記憶手段、1103 通信手段、1104 経路探索手段、1105 経路探索許可フラグ記憶手段、1201 経路情報テーブル、1401 経路情報テーブル、1601 通信経路設定装置、1602 設定経路記憶手段、1603 通信手段、1604 端末情報取得手段、1605 経路設計手段、1801 通信経路設定装置、1802 設定経路記憶手段、1803 通信手段、1804 端末情報取得手段、1805 入力手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチホップネットワークに接続している通信端末の通信経路を当該通信端末に設定する装置であって、
前記マルチホップネットワークの通信経路情報を格納する記憶手段と、
前記マルチホップネットワークを介して通信を行い、前記通信経路情報に基づき、当該通信経路を構成する各通信端末に対し、当該通信経路を設定するための情報を含む設定パケットを送信する通信手段と、
を備え、
前記通信手段は、
前記設定パケットを送信する前に、
当該設定パケットで設定する通信経路を構成する通信端末に対し、
当該通信端末が自律的に通信経路を設定することを禁ずる旨のパケットを送信し、
前記設定パケットの送信後に、禁止を解除する旨のパケットを送信する
ことを特徴とする通信経路設定装置。
【請求項2】
マルチホップネットワークにおいて通信を行う通信端末であって、
当該通信端末の通信経路テーブルを格納する記憶手段と、
前記通信経路テーブルに基づき前記マルチホップネットワークを介して通信を行う通信手段と、
を備え、
前記記憶手段は、
当該通信端末が自律的に通信経路を設定することの可否を表すフラグを格納しており、
前記通信手段は、
当該通信端末の通信経路を設定するための情報を含む設定パケットを受信し、
前記フラグに可である旨が設定されている場合に限り、所定の経路要求パケットを前記マルチホップネットワークに送信し、
その応答パケットに基づき、前記設定パケットに含まれる情報に基づく通信経路を前記通信経路テーブルに設定する
ことを特徴とする通信端末。
【請求項3】
当該通信端末に電力を供給する電池と、
前記電池の残量を検知する電池残量検知手段と、
を備え、
前記電池残量検知手段は、
検知値が所定値以下になると、前記フラグに不可である旨を設定する
ことを特徴とする請求項2に記載の通信端末。
【請求項4】
前記通信経路テーブルは、
通信経路のエントリ毎に、当該通信端末がそのエントリを自律的に更新することの可否を表す情報を格納する更新可否列を有しており、
前記通信手段は、
前記更新可否列の値に可である旨が設定されている場合に限り、当該エントリを更新するための経路要求パケットを前記マルチホップネットワークに送信する
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の通信端末。
【請求項5】
前記通信手段は、
他の通信端末が送信した経路要求パケットを受信した際に、
その経路要求パケットの宛先に対応する前記経路情報テーブルのエントリにおいて、
前記更新可否列に不可である旨が格納されている場合には、
当該エントリの内容に基づいて経路応答パケットを生成し、経路パケットの送信元端末へ返信する
ことを特徴とする請求項4に記載の通信端末。
【請求項6】
前記通信経路テーブルは、
当該通信端末から宛先端末までの通信コストを格納する通信コスト列を有しており、
前記通信手段は、
他の通信端末が送信した経路要求パケットを受信した際に、
その経路要求パケットの宛先に対応する前記経路情報テーブルのエントリにおいて、
前記更新可否列に不可である旨が格納されている場合には、
当該エントリの内容に基づいて、前記通信コスト列の値を反映した経路応答パケットを生成し、経路要求パケットの送信元端末へ返信する
ことを特徴とする請求項4に記載の通信端末。
【請求項7】
請求項1に記載の通信経路設定装置と、
請求項2ないし請求項6のいずれかに記載の通信端末と、
を有し、
前記通信経路設定装置は、
前記設定パケットを前記通信端末に送信し、
前記通信端末は、
その設定パケットに含まれる情報に基づく通信経路を前記通信経路テーブルに設定する
ことを特徴とするマルチホップネットワークシステム。
【請求項8】
請求項1に記載の通信経路設定装置と、
請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の通信端末と、
を有し、
前記通信端末は、
前記通信経路テーブルが保持しているエントリのうち、前記通信経路設定装置が設定したエントリについて、
前記更新可否列に不可である旨を設定する
ことを特徴とするマルチホップネットワークシステム。
【請求項9】
請求項1に記載の通信経路設定装置と、
請求項6に記載の通信端末と、
を有し、
前記通信端末は、
前記通信経路テーブルが保持しているエントリのうち、前記通信経路設定装置が設定したエントリについて、
前記通信コスト列の値を、他のエントリよりも小さく設定する
ことを特徴とするマルチホップネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−178348(P2010−178348A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27992(P2010−27992)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【分割の表示】特願2007−86456(P2007−86456)の分割
【原出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】