説明

通信装置、パケット分割方法及びプログラム

【課題】マルチリンクPPPを利用した通信において、特定の論理データリンクの帯域の使用率が他の論理データリンクの帯域の使用率よりも低い状態で固定されることを回避する。
【解決手段】通信回線に接続され、パケットの送信側から送信されたパケットを分割し、通信回線内に設定された複数の論理データリンクのそれぞれを使用して分割したパケットのそれぞれをパケットの受信側へ送信する通信装置であって、パケットの送信側から送信されたパケットに通信回線を介した通信に必要なヘッダを付加した第1のデータを生成するとともに、パケットの長さと、パケットの受信側が1回に受信できる最大のデータの長さであるMRUとに基づいて、パケットを分割するための分割数を算出し、第1のデータを分割数で除算することによって分割する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケットの送信側から送信されたパケットを分割し、分割したパケットをパケットの受信側へ送信する通信装置、パケット分割方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチリンクPPP(Point to Point Protocol)を利用した通信において、MRU(Maximum Receive Unit)によってパケットの分割を行う場合、パケットは、そのパケットの長さとMRUとに応じ、m個のマルチリンクPPPパケットに分割される。なお、MRUとは、パケットの受信側が1回に受信できる最大のデータ長のことである。この場合、分割されたm個のマルチリンクPPPパケットの内訳は、MRUと同じデータ長のマルチリンクPPPパケットが(m−1)個と、MRUよりも短いデータ長のマルチリンクPPPパケットが1個となる。
【0003】
ここで、PPPとは、2地点間を接続するための通信で使用されるWAN(Wide Area Network)用のプロトコルのことである。また、マルチリンクPPPとは、複数の論理データリンクを使用して複数のPPPによる接続を同時に確立できるようにしたプロトコルのことである。
【0004】
マルチリンクPPPを利用した通信において、複数の論理データリンクをラウンドロビン方式で使用し、映像ストリーム等のように長さが一定のパケットを連続して送信する場合を考えてみる。この場合、パケットの分割数と論理データリンクの数との間に公約数があると、MRUよりも短いデータ長のマルチリンクPPPパケットを送信する論理データリンクが固定される。つまり、特定の論理データリンクの帯域の使用率が他の論理データリンクの帯域の使用率よりも低い状態で固定されるという問題点がある。
【0005】
このような状況において、論理データリンクの帯域の使用率に応じ、使用する論理データリンクの数を動的に増減させようとする場合、論理データリンクの数を増やす基準となる閾値にこの論理データリンクの帯域の使用率が到達せず、論理データリンクの数を増やすことができない場合がある。
【0006】
ところで、パケットの長さに応じてパケット分割するための技術が例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。特許文献1に開示されている技術は、多層プロトコル構造を持つパケット通信において、プロトコルの種類に応じてエラーが発生しない長さにパケットを分割して送信するという技術である。
【0007】
また、特許文献2に開示されている技術は、PPPを利用したパケット通信において、通信経路の中間ノード等においてIPフラグメントが発生しないようにパケットを分割して送信するという技術である。なお、IPフラグメントとは、IPよりも下位のプロトコルの最大のフレーム長に応じ、ノードがIPパケットを分割することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−289431号公報
【特許文献2】特開2006−157544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1及び特許文献2に開示されている技術は、マルチリンクPPPを利用した通信のように、分割されたパケットを複数の論理データリンクを使用して同時に送信することを想定していない。
【0010】
そのため、特許文献1及び特許文献2に開示されている技術を利用しても、特定の論理データリンクの帯域の使用率が他の論理データリンクの帯域の使用率よりも低い状態で固定されるという問題点は解決されない。
【0011】
本発明は、マルチリンクPPPを利用した通信において、特定の論理データリンクの帯域の使用率が他の論理データリンクの帯域の使用率よりも低い状態で固定されることを回避することができる通信装置、パケット分割方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、
通信回線に接続され、パケットの送信側から送信されたパケットを分割し、前記通信回線内に設定された複数の論理データリンクのそれぞれを使用して前記分割したパケットのそれぞれを前記パケットの受信側へ送信する通信装置であって、
前記パケットの送信側から送信されたパケットに前記通信回線を介した通信に必要なヘッダを付加した第1のデータを生成するとともに、前記パケットの長さと、前記パケットの受信側が1回に受信できる最大のデータの長さであるMRUとに基づいて、前記パケットを分割するための分割数を算出し、前記第1のデータを前記分割数で除算することによって分割する。
【0013】
また、通信回線に接続され、パケットの送信側から送信されたパケットを分割し、前記通信回線内に設定された複数の論理データリンクのそれぞれを使用して前記分割したパケットのそれぞれを前記パケットの受信側へ送信する通信装置におけるパケット分割方法であって、
前記パケットの送信側から送信されたパケットに前記通信回線を介した通信に必要なヘッダを付加した第1のデータを生成する処理と、
前記パケットの長さと、前記パケットの受信側が1回に受信できる最大のデータの長さであるMRUとに基づいて、前記パケットを分割するための分割数を算出する算出処理と、
前記第1のデータを前記分割数で除算することによって分割する分割処理と、を有する。
【0014】
また、通信回線に接続され、パケットの送信側から送信されたパケットを分割し、前記通信回線内に設定された複数の論理データリンクのそれぞれを使用して前記分割したパケットのそれぞれを前記パケットの受信側へ送信する通信装置に、
前記パケットの送信側から送信されたパケットに前記通信回線を介した通信に必要なヘッダを付加した第1のデータを生成する機能と、
前記パケットの長さと、前記パケットの受信側が1回に受信できる最大のデータの長さであるMRUとに基づいて、前記パケットを分割するための分割数を算出する算出機能と、
前記第1のデータを前記分割数で除算することによって分割する分割機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通信装置は、複数の論理データリンクが設定された通信回線に接続され、パケットの送信側から送信されたパケットに通信回線を介した通信に必要なヘッダを付加した第1のデータを生成する。また、通信装置は、パケットの長さと、パケットの受信側が1回に受信できる最大のデータの長さであるMRUとに基づいて、パケットを分割するための分割数を算出し、第1のデータを分割数で除算することによって分割する。そして、通信装置は、複数の論理データリンクのそれぞれを使用して分割された第1のデータのそれぞれをパケットの受信側へ送信する。
【0016】
そのため、特定の論理データリンクの帯域の使用率が他の論理データリンクの帯域の使用率よりも低い状態で固定されることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の通信装置を適用した通信システムの実施の一形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図1及び図2に示した通信装置が分割単位長を算出する動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】図1及び図2に示した通信装置が分割単位長に従ってMPデータを分割して送信する動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】図1及び図2に示した通信装置が受信したIPパケットからマルチリンクPPPパケットが生成されるまでを段階的に示す図であり、(a)はMPデータが最大MPペイロード長で分割された場合を示す図、(b)はMPデータが分割単位長で分割された場合を示す図である。
【図6】図1及び図2に示した通信回線に設定された論理データリンクのそれぞれを使用して送信されるマルチリンクPPPパケットの長さの一例を示す図であり、(a)はMPデータが最大MPペイロード長で分割された場合を示す図、(b)はMPデータが分割単位長で分割された場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の通信装置を適用した通信システムの実施の一形態の構成を示すブロック図である。
【0020】
本実施形態の通信システムは図1に示すように、通信装置1−1,1−2と、通信装置1−1と通信回線4によって接続された通信端末3−1と、通信装置1−2と通信回線5によって接続された通信端末3−2とを備えている。
【0021】
また、通信装置1−1と通信装置1−2とは、通信回線2によって接続され、通信回線2内に設定された論理データリンク2−1〜2−nを使用してマルチリンクPPPを利用した通信を行う。なお、通信回線2としては例えば、ISDN(Integrated Services Digital Network)のPRI(Primary Rate Interface)が考えられ、その場合、論理データリンク2−1〜2−nは例えば、23本のBチャネルとなる。Bチャネルとは、ISDNのデータ用の論理チャネルであり、音声やデータの伝送に用いられる。Bチャネル1本の帯域は64kbpsである。
【0022】
通信端末3−1,3−2は、IPパケットの送信側の端末または受信側の端末である。なお、本実施形態では、通信端末3−1,3−2は、一例としてIP(Internet Protocol)に対応したIPパケットを送受信するものとして説明するが、通信端末3−1,3−2が送受信するパケットはIPパケットに限定されない。
【0023】
通信装置1−1,1−2は、通信端末3−1,3−2から送信されたIPパケットを受信する。そして、マルチリンクPPPを利用した通信を行うために、受信したIPパケットにヘッダを付加することによってカプセル化する機能を有している。
【0024】
図2は、図1に示した通信装置1−1の構成の一例を示すブロック図である。なお、通信装置1−2も同様の構成である。
【0025】
図1に示した通信装置1−1は図2に示すように、分割数算出部11と、分割単位長算出部12と、データ分割部13と、カプセル化部14と、通信IF15−1〜15−nとを備えている。
【0026】
通信IF15−1〜15−nは、通信装置1−1と通信回線2,4とを接続する。なお、本実施形態では、通信回線4は、通信IF15−1を介して通信装置1−1と接続され、通信回線2は、通信IF15−2を介して通信装置1−1と接続されている。
【0027】
カプセル化部14は、通信端末3−1から送信されたIPパケットを通信IF15−1を介して受信する。そして、受信したIPパケットにPPPヘッダを付加した第1のデータであるMPデータを生成する。このようにPPPヘッダをIPパケットに付加することにより、通信回線2を介してIPパケットを送受信することができるようになる。そして、カプセル化部14は、生成されたMPデータの長さであり、第1のデータ長であるMPデータ長を算出し、算出されたMPデータ長を分割数算出部11へ出力する。また、カプセル化部14は、生成されたMPデータをデータ分割部13へ出力する。また、カプセル化部14は、データ分割部13から出力された分割されたMPデータを受け付けると、受け付けた分割されたMPデータのそれぞれにマルチリンクPPPヘッダと、MPヘッダとを付加したマルチリンクPPPパケットを生成する。そして、生成されたマルチリンクPPPパケットのそれぞれを通信IF15−2を介して論理データリンク2−1〜2−nのいずれかへラウンドロビン方式で出力する。なお、MPヘッダは、論理データリンク2−1〜2−nのそれぞれに分割されて送信されたMPデータを組み立て直すために必要な情報を含むヘッダである。また、マルチリンクPPPヘッダは、PPPヘッダと同様に、通信回線2を介してIPパケットを送受信するために必要なヘッダである。
【0028】
分割数算出部11は、カプセル化部14から出力されたMPデータ長を受け付ける。そして、受け付けたMPデータ長とMRUとに応じ、MPデータを分割する分割数を算出する。具体的には、分割数算出部11は、まず、MPヘッダの長さであるMPヘッダ長をMRUから減算することにより、第2のデータ長である最大MPペイロード長を算出する。次に、算出された最大MPペイロード長でMPデータ長を除算する。この除算した結果を切り上げた値を分割数とする。そして、分割数算出部11は、算出された分割数とMPデータ長とを分割単位長算出部12へ出力する。
【0029】
分割単位長算出部12は、分割数算出部11から出力された分割数とMPデータ長とを受け付ける。そして、受け付けたMPデータ長を分割数で除算する。この除算した結果を切り上げた値を分割単位長とする。そして、分割単位長算出部12は、算出された分割単位長をデータ分割部13へ出力する。なお、分割単位長とは、MPデータを分割する長さの単位である。
【0030】
データ分割部13は、カプセル化部14から出力されたMPデータと、分割単位長算出部12から出力された分割単位長とを受け付ける。そして、受け付けたMPデータのMPデータ長と分割単位長とを比較する。比較した結果、MPデータ長が分割単位長よりも長い場合、MPデータを先頭から分割単位長で分割し、分割された分割単位長のMPデータをカプセル化部14へ出力する。そして、データ分割部13は、受け付けたMPデータのMPデータ長から分割単位長を減算した長さをMPデータ長とし、さらに、そのMPデータ長と分割単位長とを比較する。データ分割部13は、MPデータ長と分割単位長とを比較して分割単位長のMPデータをカプセル化部14へ出力する動作を、MPデータ長が分割単位長以下になるまで繰り返す。そして、最後に分割単位長以下の長さのMPデータをカプセル化部14へ出力する。
【0031】
以下に、上記のように構成された通信システムにおいて、IPパケットを分割して送信する動作について説明する。ここでは、長さが400byteのIPパケットが通信端末3−1から通信端末3−2へ連続して送信される場合を想定する。また、ここでは、一例として各ヘッダの長さ等を以下の(1)〜(4)に示すとおりとする。
【0032】
(1)MRU:200byte
(2)IPパケットに付加されるPPPヘッダ:1byte
(3)分割されたMPデータに付加されるマルチリンクPPPヘッダ:4byte
(4)分割されたMPデータに付加されるMPヘッダ:4byte
まず、図1及び図2に示した通信装置1−1が分割単位長を算出する動作を説明する。
【0033】
図3は、図1及び図2に示した通信装置1−1が分割単位長を算出する動作を説明するためのフローチャートである。
【0034】
まず、通信端末3−1は、IPパケットを通信端末3−2へ向けて送信する。
【0035】
通信端末3−1から送信されたIPパケットを通信回線4及び通信IF15−1を介して受信した通信装置1−1のカプセル化部14は、受信したIPパケットにPPPヘッダを付加したMPデータを生成する。そして、生成されたMPデータのMPデータ長を算出する(ステップS1)。ここでは、受信したIPパケットの長さが400byteであり、IPパケットに付加されるPPPヘッダの長さが1byteであるため、MPデータ長は401byteとなる。
【0036】
そして、カプセル化部14は、算出されたMPデータ長を分割数算出部11へ出力し、生成されたMPデータをデータ分割部13へ出力する。
【0037】
カプセル化部14から出力されたMPデータ長を受け付けた分割数算出部11は、MPヘッダ長をMRUから減算した長さである最大MPペイロード長を算出する(ステップS2)。ここでは、MRUが200byteであり、MPヘッダ長が4byteであるため、最大MPペイロード長は196byteとなる。
【0038】
次に、分割数算出部11は、ステップS2において算出された最大MPペイロード長で受け付けたMPデータ長を除算する。そして、その除算した結果を切り上げた値を分割数とする(ステップS3)。ここでは、MPデータ長は401byteであり、最大MPペイロード長が196byteであるため、分割数は3となる。
【0039】
そして、分割数算出部11は、算出された分割数とMPデータ長とを分割単位長算出部12へ出力する。
【0040】
分割数算出部11から出力された分割数とMPデータ長とを受け付けた分割単位長算出部12は、受け付けたMPデータ長を分割数で除算する。この除算した結果を切り上げた値を分割単位長とする(ステップS4)。ここではMPデータ長が401byteであり、分割数が3であるため、分割単位長は134byteとなる。
【0041】
そして、分割単位長算出部12は、算出された分割単位長をデータ分割部13へ出力する。
【0042】
以上が、図1に示した通信装置1−1が分割単位長を算出する動作である。
【0043】
次に、図1及び図2に示した通信装置1−1が分割単位長に従ってMPデータを分割して送信する動作を説明する。
【0044】
図4は、図1及び図2に示した通信装置1−1が分割単位長に従ってMPデータを分割して送信する動作を説明するためのフローチャートである。
【0045】
カプセル化部14から出力されたMPデータと、分割単位長算出部12から出力された分割単位長とを受け付けたデータ分割部13は、受け付けたMPデータのMPデータ長と分割単位長とを比較する(ステップS21)。
【0046】
ステップS21の比較の結果、MPデータ長が分割単位長よりも長い場合、MPデータを先頭から分割単位長で分割する。そして、分割された分割単位長のMPデータをカプセル化部14へ出力する。ここでは、MPデータ長が401byteであり、分割単位長が134byteであるため、MPデータ長が分割単位長よりも長い。従って、MPデータのうち先頭から134byteに相当する部分がカプセル化部14へ出力される。なお、ステップS21の比較の結果、MPデータ長が分割単位長以下である場合については後述する。
【0047】
分割単位長のMPデータを受け付けたカプセル化部14は、受け付けた分割単位長のMPデータにマルチリンクPPPヘッダとMPヘッダとを付加したマルチリンクPPPパケットを生成する(ステップS22)。ここでは、分割単位長134byteに4byteのマルチリンクPPPヘッダと4byteのMPヘッダとが付加された142byteのマルチリンクPPPパケットが生成される。
【0048】
そして、カプセル化部14は、生成されたマルチリンクPPPパケットを論理データリンク2−1を使用して通信装置1−2へ送信する(ステップS23)。
【0049】
次に、データ分割部13は、受け付けたMPデータ長から分割単位長分を減算し、その減算された長さをMPデータ長とする(ステップS24)。ここでは、受け付けたMPデータ長が401byteであり、分割単位長が134byteであるため、MPデータ長は267byteとなる。
【0050】
そして、ステップS21の動作へ遷移し、データ分割部13は、MPデータ長と分割単位長とを比較する。ここでは、MPデータ長が267byteであり、分割単位長が134byteであるため、MPデータ長が分割単位長よりも長い。従って、MPデータのうち先頭から134byteに相当する部分がカプセル化部14へ出力される。
【0051】
次に、ステップS22の動作に遷移し、カプセル化部14は、受け付けた分割単位長のMPデータにマルチリンクPPPヘッダとMPヘッダとを付加したマルチリンクPPPパケットを生成する。ここでは、分割単位長134byteに4byteのマルチリンクPPPヘッダと4byteのMPヘッダとが付加された142byteのマルチリンクPPPパケットが生成される。
【0052】
次に、ステップS23の動作に遷移し、カプセル化部14は、生成されたマルチリンクPPPパケットを論理データリンク2−2を使用して通信装置1−2へ送信する。
【0053】
次に、ステップS24の動作に遷移し、データ分割部13は、MPデータ長から分割単位長分を減算し、減算された長さをMPデータ長とする。ここでは、MPデータ長が267byteであり、分割単位長が134byteであるため、MPデータ長は133byteとなる。
【0054】
そして、再度、ステップS21の動作へ遷移し、データ分割部13は、MPデータ長と分割単位長とを比較する。ここでは、MPデータ長が133byteであり、分割単位長が134byteであるため、MPデータ長が分割単位長以下である。この133byteの長さのMPデータがカプセル化部14へ出力される。
【0055】
データ分割部13から出力された分割単位長以下のMPデータを受け付けたカプセル化部14は、受け付けた分割単位長以下の長さのMPデータにマルチリンクPPPヘッダとMPヘッダとを付加したマルチリンクPPPパケットを生成する(ステップS25)。ここでは、分割単位長以下の長さである133byteに4byteのPPPヘッダと4byteのMPヘッダとが付加された141byteのマルチリンクPPPパケットが生成される。
【0056】
そして、カプセル化部14は、生成されたマルチリンクPPPパケットを論理データリンク2−3を使用して通信装置1−2へ送信する。(ステップS26)。
【0057】
このように、上述したステップS21〜S24の動作は、MPデータ長が分割単位長よりも長い間、繰り返して行われる。
【0058】
以降、通信装置1−1が400byteの長さのIPパケットを引き続いて受信した場合も同様に、142byteのマルチリンクPPPパケットが論理データリンク2−1,2−2を使用して送信され、141byteのマルチリンクPPPパケットが論理データリンク2−3を使用して送信される。
【0059】
以上が、図1に示した通信装置1−1が分割単位長に従ってMPデータを分割して送信する動作である。
【0060】
図5は、図1及び図2に示した通信装置1−1が受信したIPパケットからマルチリンクPPPパケットが生成されるまでを段階的に示す図であり、(a)はMPデータが最大MPペイロード長で分割された場合を示す図、(b)はMPデータが分割単位長で分割された場合を示す図である。なお、図5においてはマルチリンクPPPヘッダのことをMLPPPヘッダと表記している。
【0061】
図5(a)及び図5(b)の最下段に示すマルチリンクPPPパケットを比較すると、図5(a)では、最後のマルチリンクPPPパケットの長さが他のマルチリンクPPPパケットの長さに比べて極端に短くなっている。一方、図5(b)では、最後のマルチリンクPPPパケットの長さと他のマルチリンクPPPパケットの長さとの間に大きな違いがない。
【0062】
図6は、図1に示した通信回線2に設定された論理データリンク2−1〜2−3のそれぞれを使用して送信されるマルチリンクPPPパケットの長さの一例を示す図であり、(a)はMPデータが最大MPペイロード長で分割された場合を示す図、(b)はMPデータが分割単位長で分割された場合を示す図である。なお、図6においては、IPパケットの長さやMRU、各ヘッダの長さを上述した動作フローにおいて示したものと同じとしている。
【0063】
図6(a)と図6(b)とを比較すると、図6(a)では、論理データリンク2−1,2−2にはMRU(200byte)にマルチリンクPPPヘッダ(4byte)が付加された204byteのマルチリンクPPPパケットが送信されており、論理データリンク2−3には17byteのマルチリンクPPPパケットが送信されている。つまり、論理データリンク2−3の帯域の使用率は、論理データリンク2−1,2−2の帯域の使用率よりも低い状態で固定されている。一方、図6(b)では論理データリンク2−1,2−2には134byteのマルチリンクPPPパケットが送信されており、論理データリンク2−3には133byteのマルチリンクPPPパケットが送信されている。つまり、論理データリンク2−1〜2−3の全ての帯域の使用率が平準化されている。
【0064】
このように本実施形態において通信装置1−1,1−2は、複数の論理データリンク2−1〜2−nが設定された通信回線2に接続され、パケットの送信側から送信されたパケットに通信回線2を介した通信に必要なPPPヘッダを付加したMPデータを生成する。また、通信装置1−1,1−2は、パケットの長さと、パケットの受信側が1回に受信できる最大のデータの長さであるMRUとに基づいて、パケットを分割するための分割数を算出し、MPデータを分割数で除算することによって分割する。そして、通信装置1−1,1−2は、複数の論理データリンク2−1〜2−nのそれぞれを使用して分割されたMPデータのそれぞれをパケットの受信側へ送信する。
【0065】
そのため、特定の論理データリンクの帯域の使用率が他の論理データリンクの帯域の使用率よりも低い状態で固定されることを回避することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、MRUから最大MPペイロード長を算出したが、MRU以外の値から最大MPペイロード長を算出してもよい。例えば、送信遅延を考慮し、マルチリンクPPPパケットに許容される最大のパケット長からマルチリンクPPPヘッダの長さとMPヘッダの長さとを減算した値を最大MPペイロード長としてもよい。
【0067】
また、本発明においては、通信装置内の処理は上述の専用のハードウェアにより実現されるもの以外に、その機能を実現するためのプログラムを通信装置にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを通信装置に読み込ませ、実行するものであっても良い。通信装置にて読取可能な記録媒体とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、DVD、CDなどの移設可能な記録媒体の他、通信装置に内蔵されたHDDなどを指す。
【符号の説明】
【0068】
1−1,1−2 通信装置
2,4,5 通信回線
2−1〜2−n 論理データリンク
3−1,3−2 通信端末
11 分割数算出部
12 分割単位長算出部
13 データ分割部
14 カプセル化部
15−1〜15−n 通信IF

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線に接続され、パケットの送信側から送信されたパケットを分割し、前記通信回線内に設定された複数の論理データリンクのそれぞれを使用して前記分割したパケットのそれぞれを前記パケットの受信側へ送信する通信装置であって、
前記パケットの送信側から送信されたパケットに前記通信回線を介した通信に必要なヘッダを付加した第1のデータを生成するとともに、前記パケットの長さと、前記パケットの受信側が1回に受信できる最大のデータの長さであるMRUとに基づいて、前記パケットを分割するための分割数を算出し、前記第1のデータを前記分割数で除算することによって分割する通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置において、
前記パケットの送信側から送信されたパケットから前記第1のデータを生成し、該生成された第1のデータと、当該第1のデータの長さである第1のデータ長を出力するカプセル化部と、
前記カプセル化部から出力された第1のデータ長を受け付け、該受け付けた第1のデータ長と、前記MRUとに応じ、前記分割数を算出し、該算出された前記分割数と、前記第1のデータ長とを出力する分割数算出部と、
前記分割数算出部から出力された前記分割数と前記第1のデータ長とを受け付け、該受け付けた前記第1のデータ長を前記受け付けた前記分割数で除算することにより、前記第1のデータを分割する長さの単位である分割単位長を算出し、該算出された分割単位長を出力する分割単位長算出部と、
前記分割単位長算出部から出力された分割単位長と、前記カプセル化部から出力された前記第1のデータとを受け付け、該受け付けた前記第1のデータを前記受け付けた分割単位長に従って分割するデータ分割部と、を有する通信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の通信装置において、
前記分割数算出部は、前記複数の論理データリンクを使用する際に必要なヘッダの長さを前記MRUから減算した長さである第2のデータ長を算出し、該算出された第2のデータ長で前記第1のデータ長を除算することにより、前記分割数を算出する通信装置。
【請求項4】
請求項2に記載の通信装置において、
前記分割数算出部は、前記論理データリンクを使用して送信することができる最大のパケット長に応じた長さである第2のデータ長を算出し、該算出された第2のデータ長で前記第1のデータ長を除算することにより、前記分割数を算出する通信装置。
【請求項5】
通信回線に接続され、パケットの送信側から送信されたパケットを分割し、前記通信回線内に設定された複数の論理データリンクのそれぞれを使用して前記分割したパケットのそれぞれを前記パケットの受信側へ送信する通信装置におけるパケット分割方法であって、
前記パケットの送信側から送信されたパケットに前記通信回線を介した通信に必要なヘッダを付加した第1のデータを生成する処理と、
前記パケットの長さと、前記パケットの受信側が1回に受信できる最大のデータの長さであるMRUとに基づいて、前記パケットを分割するための分割数を算出する算出処理と、
前記第1のデータを前記分割数で除算することによって分割する分割処理と、を有するパケット分割方法。
【請求項6】
請求項5に記載のパケット分割方法において、
前記算出処理は、
前記第1のデータの長さである第1のデータ長と、前記MRUとに応じ、前記分割数を算出する処理であり、
前記分割処理は、
前記第1のデータ長を前記分割数で除算することにより、前記第1のデータを分割する長さの単位である分割単位長を算出する処理と、
前記第1のデータを前記算出された分割単位長に従って分割する処理と、を含むパケット分割方法。
【請求項7】
請求項6に記載のパケット分割方法において、
前記算出処理は、
前記複数の論理データリンクを使用する際に必要なヘッダの長さを前記MRUから減算した長さである第2のデータ長を算出する処理と、
前記算出された第2のデータ長で前記第1のデータ長を除算することにより、前記分割数を算出する処理と、を含むパケット分割方法。
【請求項8】
請求項6に記載のパケット分割方法において、
前記算出処理は、
前記論理データリンクを使用して送信することができる最大のパケット長に応じた長さである第2のデータ長を算出する処理と、
前記算出された第2のデータ長で前記第1のデータ長を除算することにより、前記分割数を算出する処理と、を含むパケット分割方法。
【請求項9】
通信回線に接続され、パケットの送信側から送信されたパケットを分割し、前記通信回線内に設定された複数の論理データリンクのそれぞれを使用して前記分割したパケットのそれぞれを前記パケットの受信側へ送信する通信装置に、
前記パケットの送信側から送信されたパケットに前記通信回線を介した通信に必要なヘッダを付加した第1のデータを生成する機能と、
前記パケットの長さと、前記パケットの受信側が1回に受信できる最大のデータの長さであるMRUとに基づいて、前記パケットを分割するための分割数を算出する算出機能と、
前記第1のデータを前記分割数で除算することによって分割する分割機能と、を実現させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムにおいて、
前記算出機能は、
前記第1のデータの長さである第1のデータ長と、前記MRUとに応じ、前記分割数を算出する機能であり、
前記分割機能は、
前記第1のデータ長を前記分割数で除算することにより、前記第1のデータを分割する長さの単位である分割単位長を算出する機能と、
前記第1のデータを前記算出された分割単位長に従って分割する機能と、を含むプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムにおいて、
前記算出機能は、
前記複数の論理データリンクを使用する際に必要なヘッダの長さを前記MRUから減算した長さである第2のデータ長を算出する機能と、
前記算出された第2のデータ長で前記第1のデータ長を除算することにより、前記分割数を算出する機能と、を含むプログラム。
【請求項12】
請求項10に記載のプログラムにおいて、
前記算出機能は、
前記論理データリンクを使用して送信することができる最大のパケット長に応じた長さである第2のデータ長を算出する機能と、
前記算出された第2のデータ長で前記第1のデータ長を除算することにより、前記分割数を算出する機能と、を含むプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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