説明

通信装置、画像形成装置、通信システム、及び、通信プログラム

【課題】印刷データが暗号化された状態で通信装置から画像形成装置へ送信される場合に、画像形成装置において待機応答状態から印刷が完了するまでにかかる時間を短縮可能な通信システムを提供する。
【解決手段】通信システム1は、画像形成装置が搭載されたMFP3と通信装置5とを備える。通信装置5は、暗号化されていない印刷要求と暗号化された印刷データとをMFP3へ送信する。MFP3は、ネットワークI/F18と、復号化処理を行うメイン制御部19と、プリンタ15と、ネットワークI/F18に電力を供給させた状態で、メイン制御部19及びプリンタ15に対する電力の供給を停止させる電源制御部20とを備え、ネットワークI/F18は、暗号化されていない印刷要求を受信した場合に、メイン制御部19及びプリンタ15を起動させる起動信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、画像形成装置、通信システム、及び、通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークに接続されたパーソナルコンピュータ等の通信装置から、印刷要求と共に印刷データを受信して、印刷データを用紙に印刷する画像形成装置が広く知られている。また、省エネルギー化のために、印刷要求が受信されない状態が所定時間以上続くと、通信制御部を稼働させた状態で、印刷手段に対する電力の供給を停止する画像形成装置が、下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−75687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、セキュリティのために、印刷要求及び印刷データが暗号化された状態で画像形成装置へ送信される場合がある。この場合、画像形成装置は、CPU(Central Processing Unit)等で構成された復号化手段によって受信した情報を復号化することにより、受信した情報が印刷要求と印刷データとであることを認識する。
【0005】
そこで、上記特許文献1に記載の画像形成装置に復号化手段を付加し、更に、印刷要求が受信されない状態が所定時間以上続いた場合に、印刷手段に加えて復号化手段に対する電力供給を停止して待機応答状態へ移行するように、構成することが考えられる。この画像形成装置が待機応答状態であるときに、暗号化されていない印刷要求及び印刷データが受信された場合は、通信制御部において印刷要求を受信したことを認識できるので、印刷手段の起動を開始することができる。
【0006】
一方、この画像形成装置が待機応答状態であるときに、暗号化された印刷要求及び印刷データが受信された場合、画像形成装置は、復号化手段を起動して、復号化処理を行った後でなければ、受信した情報が印刷要求であることを認識できない。復号化手段の起動には、CPUの初期化、プログラムのロード等、種々の処理を行う必要がある。このため、印刷手段を起動するまでにかかる時間が長くなる。従って、セキュリティのために印刷データが暗号化されている場合、暗号化されていない場合と比較して、印刷完了までにかかる時間が長くなる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、印刷データが暗号化された状態で通信装置から画像形成装置へ送信される場合に、画像形成装置において待機応答状態から印刷が完了するまでにかかる時間を短縮可能な通信装置、画像形成装置、通信システム、及び、通信プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る通信装置は、印刷データを画像形成装置へ送信する通信装置であって、印刷データの印刷要求を生成する生成手段と、印刷データを暗号化する暗号化手段と、生成手段によって生成された暗号化されていない印刷要求と、暗号化手段によって暗号化された印刷データとを画像形成装置へ送信する送信手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る通信装置によれば、印刷要求が生成され、印刷データが暗号化された後、暗号化されていない印刷要求と暗号化された印刷データとが、画像形成装置へ送信される。これにより、画像形成装置の復号化手段が稼働していない待機応答状態であっても、画像形成装置の受信手段によって、受信した情報が印刷要求であることを認識できる。このため、画像形成装置において、復号化手段の起動が完了する前に、印刷手段の起動を開始することができる。従って、印刷データが暗号化された状態で通信装置から画像形成装置へ送信される場合に、画像形成装置において待機応答状態から印刷が完了するまでにかかる時間を短縮することが可能となる。
【0010】
本発明に係る通信装置では、送信手段が、暗号化されていない印刷要求を含むパケットと、暗号化された印刷データを含むパケットとを送信することが好ましい。
【0011】
この好ましい構成によれば、暗号化されていない印刷要求を含むパケットと、暗号化された印刷データを含むパケットとが、画像形成装置へ送信される。現在、一般的には、パケットのデータ部の全てを暗号化することが多い。すなわち、1つのパケットのデータ部に印刷要求と印刷データとが含まれる場合、印刷要求を暗号化せずに印刷データのみを暗号化することは、汎用性が低い。また、印刷要求である旨をヘッダ部に付加することも汎用性が低い。このため、暗号化されていない印刷要求と、暗号化された印刷データとを別々のパケットで送信することにより、汎用性の高いパケットの形式に対応して、暗号化されていない印刷要求と暗号化された印刷データとを送信することができる。
【0012】
本発明に係る通信装置では、送信手段が、暗号化された印刷データを送信する前に、暗号化されていない印刷要求を送信することが好ましい。
【0013】
この好ましい構成によれば、暗号化されていない印刷要求が暗号化された印刷データより先に送信される。よって、画像形成装置では、印刷手段をより早く起動することができる。従って、印刷完了までにかかる時間をより短縮することが可能となる。
【0014】
本発明に係る通信装置では、ユーザから印刷指示を受け付ける受付手段を備え、生成手段は、受付手段による印刷指示の受付をトリガとして、暗号化されていない印刷要求を生成して送信手段へ出力することが好ましい。
【0015】
この好ましい構成によれば、印刷指示の受付をトリガとして、暗号化されていない印刷要求が生成され、画像形成装置へ送信される。従って、通信端末において印刷データの暗号化処理等が完了するのを待つことなく、印刷要求が画像形成装置へ送信される。これにより、画像形成装置では、印刷手段を更に早く起動することができる。従って、印刷完了までにかかる時間を更に短縮することが可能となる。
【0016】
本発明に係る通信装置では、印刷指示画面を表示手段へ出力して、ユーザから印刷指示を受け付ける受付手段を備え、生成手段は、受付手段による印刷指示画面の出力をトリガとして、暗号化されていない印刷要求を生成して送信手段へ出力することが好ましい。
【0017】
この好ましい構成によれば、受付手段の起動をトリガとして、暗号化されていない印刷要求が生成され、画像形成装置へ送信される。一般的に、ユーザが印刷指示画面を表示する操作を行った場合、その後に、印刷指示が入力される。よって、印刷指示画面の出力をトリガとすることにより、印刷指示の入力を予測して、実際に印刷指示が入力される前に、印刷要求を送信することができる。このため、画像形成装置では、印刷手段を更に早く起動することができる。従って、印刷完了までにかかる時間を更に短縮することが可能となる。
【0018】
本発明に係る画像形成装置は、上記いずれかの通信装置から印刷要求及び暗号化された印刷データを受信する受信手段と、暗号化された印刷データを復号化する復号化手段と、復号化手段によって復号化された印刷データを印刷する印刷手段と、受信手段に電力を供給させた状態で、復号化手段及び印刷手段に対する電力の供給を停止させる制御手段とを備え、受信手段は、暗号化されていない印刷要求を受信した場合に、復号化手段及び印刷手段を起動させる起動信号を出力することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る画像形成装置によれば、受信手段に電力が供給された状態で、復号化手段及び印刷手段に対する電力の供給が停止された待機応答状態をとることができる。よって、受信機能を保った状態で、省電力化を実現することができる。また、暗号化されていない印刷要求を受信した場合、復号化手段及び印刷手段を起動させる起動信号が出力される。これにより、待機応答状態で、暗号化されていない印刷要求が受信された場合、復号化手段及び印刷手段が起動される。このため、復号化手段の起動が完了する前に、印刷手段の起動処理を開始させることができる。従って、印刷データが暗号化された状態で通信装置から画像形成装置へ送信される場合に、画像形成装置において待機応答状態から印刷が完了するまでにかかる時間を短縮することが可能となる。
【0020】
本発明に係る通信システムは、上記いずれかの通信装置と、上記の画像形成装置とを備える。
【0021】
本発明に係る通信システムによれば、暗号化されていない印刷要求と暗号化された印刷データとが、通信装置によって画像形成装置へ送信される。画像形成装置では、暗号化されていない印刷要求に応じて、復号化手段及び印刷手段を起動させる。このため、画像形成装置では、復号化手段の起動が完了する前に、印刷手段の起動処理を開始させることができる。従って、印刷データが暗号化された状態で通信装置から画像形成装置へ送信される場合に、画像形成装置において待機応答状態から印刷が完了するまでにかかる時間を短縮することが可能となる。
【0022】
本発明に係る通信プログラムは、印刷データを画像形成装置へ送信する通信装置としてコンピュータを機能させる通信プログラムであって、印刷データの印刷要求を生成する生成手段、印刷データを暗号化する暗号化手段、生成手段によって生成された暗号化されていない印刷要求と、暗号化手段によって暗号化された印刷データとを画像形成装置へ送信する送信手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る通信プログラムによれば、コンピュータを上記の通信装置として機能させることができる。従って、印刷データが暗号化された状態で通信装置から画像形成装置へ送信される場合に、画像形成装置において待機応答状態から印刷が完了するまでにかかる時間を短縮することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、印刷データが暗号化された状態で通信装置から画像形成装置へ送信される場合に、画像形成装置において待機応答状態から印刷が完了するまでにかかる時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る通信システムの構成と、本発明の実施形態に係る画像処理装置が搭載されたMFPの構成とを示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る通信装置の構成と、MFPの要部とを示すブロック図である。
【図3】印刷指示画面の一例を示す図である。
【図4】要求パケット及び印刷データパケットの構成を示す図である。
【図5】印刷要求処理およびプリンタの起動処理の処理手順を示すシーケンス図である。
【図6】本発明に係る通信プログラムを実行するコンピュータの構成を示すブロック図である。
【図7】通信プログラムのモジュール構成を示す図である。
【図8】プリンタの選択画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。最初に、図1を参照して、本発明の実施形態に係る通信システム1の構成と、本発明の実施形態に係る画像処理装置が搭載されたMFP(Multifunction Peripheral)3の構成とを説明する。図1は、通信システム1の構成とMFP3の構成とを示すブロック図である。
【0027】
通信システム1は、MFP3と、本発明の実施形態に係る通信装置5とを備えている。通信システム1は、1台の通信装置5を備えていてもよいし、複数台の通信装置5を備えていてもよい。MFP3と通信装置5とは、ネットワーク7を介して通信が可能に接続されている。ネットワーク7は、1つのLAN(Local Area Network)であってもよいし、LANとインターネット網とで構成されたネットワークであってもよい。
【0028】
MFP3は、プリント機能、スキャン機能、FAX(ファクシミリ)機能、及び、IFAX(インターネットFAX)機能を備えるネットワーク複合機である。このプリント機能を用いて、MFP3は、通信端末5からネットワーク7を介して送信される印刷データを印刷する。MFP3は、プリンタが使用されない状況になると、通信機能を保った状態でプリンタ及び復号化機能を発揮するためのCPU等に対する電力の供給を停止して、待機応答状態に移行する。通信装置5は、セキュリティのために印刷データを暗号化して送信する場合、CPUが起動していないMFP3において印刷要求であることが認識できるように、暗号化されていない印刷要求と暗号化された印刷データとをMFP3へ送信する。
【0029】
続いて、MFP3の各構成要素について説明する。MFP3は、ユーザから各種の操作を受け付けるために、操作部10と、表示部11とを備える。操作部10は、各種のファンクションキー等を備える。表示部11は、LCD等を用いた表示装置であり、MFP3の動作状態、各種設定内容等を表示する。また、MFP3は、FAX機能、IFAX機能、スキャン機能、プリント機能を発揮するために、FAX制御部12、IFAX制御部13、スキャナ14、及びプリンタ15を備えている。
【0030】
FAX制御部12は、MFP3が備えるNCU(Network Control Unit)16及びモデム17によって行われるPSTN(Public Switched Telephone Network)9を介したFAXの送受信を制御する。IFAX制御部13は、MFP3が備えるネットワークI/F18を介して行われるIFAXの送受信を制御する。スキャナ14は、CCD等によって構成され、原稿を光学的に読み取って画像データを生成する。
【0031】
プリンタ15は、スキャナ14によって生成された画像データ、FAXデータ等を用紙に印刷する。また、プリンタ15は、通信装置5から送信される印刷データを用紙に印刷する。すなわち、プリンタ15は、特許請求の範囲に記載の印刷手段として機能する。本実施形態のプリンタ15は、電子写真方式を用いて印刷を行うプリンタであり、プリンタコントローラとプリンタエンジンとを備えている。なお、このプリンタコントローラとしての機能は、後述するメイン制御部19が備えていてもよい。
【0032】
プリンタコントローラは、プリンタエンジンを構成する各機構を制御し、PDL(ページ記述言語)等で記述された印刷データをラスタ画像に展開する。プリンタエンジンは、感光体ドラム、帯電ローラ、光源、転写ローラ、熱定着器等により構成されている。熱定着器は、一対のローラで構成され、トナーが転写された用紙を挟んで、加熱することにより、用紙にトナーを定着させる。このため、熱定着器を所定温度まで加熱する必要がある。従って、プリンタ15に電源が投入されてから印刷可能な状態になるまでには、熱定着器が所定の温度に達するまでの時間が必要となる。
【0033】
MFP3が備えるメイン制御部19は、演算を行うCPU、CPUに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM等により構成されている。メイン制御部19は、ネットワークI/F18によって受信されたデータを解析する機能を有している。
【0034】
ネットワークI/F18は、例えば、ファイ回路及びMAC回路等によって構成され、受信したデータをメイン制御部19へ出力する。メイン制御部19は、ネットワークI/F18から出力された情報が暗号化されている場合は、出力された情報を復号化する。すなわち、メイン制御部19は、暗号化された印刷データが受信された場合、暗号化された印刷データを復号化する。印刷データは、例えば、HTTPS(Hypertext Transfer Protocol Security)に対応して、SSL(Secure Sockets Layer)/TLS(Transport Layer Security)を用いて暗号化されている。なお、メイン制御部19が、特許請求の範囲に記載の復号化手段として機能し、ネットワークI/F18が、特許請求の範囲に記載の受信手段として機能する。
【0035】
また、MFP3は、一定の条件下において、メイン制御部19及びプリンタ15に対する電力の供給を停止する電源制御部20を備える。この電源制御部20は、特許請求の範囲に記載の制御手段として機能する。一定の条件とは、例えば、印刷要求の受信が一定時間以上なかったことが検出された場合等である。すなわち、プリンタ15が使用されない状態が続いた場合等に、メイン制御部19及びプリンタ15に対する電力の供給が停止される。なお、本実施形態では、一定条件下において、電源制御部20は、操作部10、表示部11、FAX制御部12、IFAX制御部13、及びスキャナ14等のモジュールに対する電力の供給も停止する。
【0036】
メイン制御部19及びプリンタ15を含む各モジュールに対する電力の供給が停止されると、MFP3は、待機応答状態となる。待機応答状態は、ネットワークI/F18に電力が供給され、メイン制御部19及びプリンタ15を含む各モジュールに対する電力の供給が停止された状態である。ネットワークI/F18は、待機応答状態において、外部装置からデータを受信すると、受信データの内容を判別し、いずれかのモジュールを復帰させる必要があると判断した場合は、該当するモジュールを復帰させるための起動信号を出力する。この起動信号によって、該当するモジュールに対して電力が供給され、該当するモジュールが復帰する。なお、ネットワークI/F18は、待機応答状態において、ネットワークI/F18内で受信データに対する応答が可能な場合には、他のモジュールを復帰させることなく応答処理を行う。
【0037】
ネットワークI/F18は、待機応答状態において、印刷要求を受信すると、メイン制御部19及びプリンタ15を復帰させる必要があると判断し、起動信号をメイン制御部19及びプリンタ15へ出力する。なお、ネットワークI/F18は、電源制御部20を介して、起動信号をメイン制御部19及びプリンタ15へ出力してもよい。これにより、待機応答状態において印刷要求が受信されると、メイン制御部19及びプリンタ15が起動して、印刷を行える状態となる。
【0038】
但し、ネットワークI/F18は、暗号化された印刷要求を受信した場合、印刷要求であることを認識できない。そこで、ネットワークI/F18は、待機応答状態において暗号化された印刷要求を受信した場合、起動信号をメイン制御部19のみに出力して、メイン制御部19を起動させる。そして、メイン制御部19が、受信した情報の復号化を行うことにより、印刷要求であることを認識する。その後、メイン制御部19が、起動信号をプリンタ15へ出力し、プリンタ15を起動させることになる。
【0039】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る通信装置5の構成を説明する。図2は、通信装置5の構成とMFP3の要部とを示すブロック図である。MFP3について、図2では、本発明に関する主な構成要素を示し、その他の構成要素は省略している。
【0040】
通信装置5は、ネットワークI/F30を備え、ネットワークI/F30を介して、MFP3との間でデータの送受信が可能に構成されている。また、通信装置5は、MFP3のプリンタ15に対応するプリンタドライバ31が搭載されている。プリンタドライバ31によって発揮される機能的な要素として、通信装置5は、受付部32、生成部33、暗号化部34を備える。
【0041】
受付部32は、ユーザから印刷指示を受け付ける。すなわち、受付部32は、特許請求の範囲に記載の受付手段として機能する。受付部32は、印刷指示を受け付けるために、印刷指示画面を通信装置5が備えるディスプレイに出力する。図3は、印刷指示画面の一例である。図3に示す印刷指示画面40は、印刷ダイアログボックスとも呼ばれる。ユーザは、ディスプレイに表示された印刷指示画面40に従って、キーボード又はマウス等の入力装置を用いて各種の印刷設定、印刷指示を行うことができる。
【0042】
この例では、印刷指示画面40のOKボタン41がユーザによってクリックされることにより、受付部32は、ユーザからの印刷指示を受け付ける。生成部33は、受付部32による印刷指示の受付をトリガとして、印刷要求を生成し、生成した印刷要求をネットワークI/F30へ出力する。すなわち、生成部33は、特許請求の範囲に記載の生成手段として機能する。ネットワークI/F30は、出力された印刷要求をMFP3へ送信する。これにより、印刷指示の受付をトリガとして、暗号化されていない印刷要求が生成され、MFP3へ送信される。
【0043】
暗号化部34は、受付部32によって印刷指示が受け付けられると、印刷データと印刷要求とを暗号化し、ネットワークI/F30へ出力する。ネットワークI/F30は、暗号化された印刷データ及び印刷要求をMFP3へ送信する。なお、暗号化部34は、特許請求の範囲に記載の暗号化手段として機能し、ネットワークI/F30は、特許請求の範囲に記載の送信手段として機能する。
【0044】
ネットワークI/F30は、本実施形態では、印刷要求及び印刷データをパケット形式で送信する。ネットワークI/F30は、プリンタドライバ31の制御により、暗号化されていない印刷要求を含む要求パケットを送信した後に、暗号化された印刷要求と暗号化された印刷データを含む印刷データパケットを送信する。なお、ネットワークI/F30は、印刷データのサイズに応じて、暗号化された印刷データを含む複数の印刷データパケットを送信する。
【0045】
図4は、要求パケット及び印刷データパケットの構成を示す図である。図4(a)が要求パケットを示し、図4(b)が印刷データパケットを示している。図4(a)に示されるように、要求パケットは、データ部に暗号化されていない印刷要求が含まれている。この要求パケットは、マジックパケット(登録商標)を利用してもよい。また、図4(b)に示されるように、印刷データパケットは、データ部に暗号化された印刷要求及び印刷データが含まれている。また、印刷データパケットのヘッダ部には、データ部が暗号化されている旨の情報が付加されている。
【0046】
MFP3では、ネットワークI/F18が、通信装置5から最初に送信された要求パケットを受信する。ネットワークI/F18は、印刷要求が暗号化されていないので、印刷要求であることを認識して、起動信号をメイン制御部19及びプリンタ15へ出力する。これにより、メイン制御部19及びプリンタ15の起動処理が開始される。
【0047】
また、ネットワークI/F18は、要求パケットを受信した後に、印刷データパケットを受信する。印刷データパケットにはデータ部が暗号化されている旨が付加されているので、ネットワークI/F18は、既に起動処理が完了したメイン制御部19へ暗号化された印刷データ及び印刷要求を出力する。メイン制御部19は、暗号化された印刷要求と印刷データとを復号化し、プリンタ15へ出力する。プリンタ15は、熱定着器が所定の温度に達して印刷を行える状態となると、入力された印刷データを用紙に印刷する。
【0048】
引き続いて、図5を参照して、通信システム1におけるMFP3及び通信装置5の動作について説明する。図5は、印刷要求処理およびプリンタの起動処理の処理手順を示すシーケンス図である。通信装置5において印刷要求処理が行われ、印刷要求に応じてMFP3では、プリンタ15の起動処理が行われる。
【0049】
まず、ステップS101では、通信装置5において、ユーザによって入力された印刷指示が、受け付けられる。印刷指示の受付をトリガとして、ステップS102の処理が行われる。ステップS102では、要求パケットが生成され、MFP3へ送信される。要求パケットのデータ部には、暗号化されていない印刷要求が含まれている。また、ステップS103では、印刷要求及び印刷データが、暗号化される。そして、ステップS104において、印刷データパケットが送信される。印刷データパケットのデータ部には、暗号化された印刷要求と印刷データとが含まれている。
【0050】
一方、MFP3においては、ステップS105で、上記ステップS102において送信された要求パケットが、ネットワークI/F18によって受信される。要求パケットに含まれる印刷要求は暗号化されていないので、印刷要求であることがネットワークI/F18によって認識され、起動信号が、メイン制御部19とプリンタ15とへ送信される。これにより、ステップS106及びステップ107において、メイン制御部19及びプリンタ15の起動処理がそれぞれ開始される。
【0051】
また、ステップS108では、上記ステップS104において送信された印刷データパケットが、MFP3のネットワークI/F18によって受信される。印刷データパケットに含まれている印刷要求及び印刷データは暗号化されているので、ステップS109では、暗号化された印刷要求及び印刷データが、既に起動が完了したメイン制御部19によって復号化される。続いて、復号化された印刷データが、プリンタ15へ出力される。そして、プリンタ19の熱定着器が所定の温度に達して印刷を行える状態となると、ステップS109において、印刷データが用紙に印刷される。
【0052】
以上説明した通信システム1によれば、暗号化されていない印刷要求と暗号化された印刷データとが、通信装置5からMFP3へ送信される。MFP3では、待機応答状態で暗号化されていない印刷要求が受信された場合、復号化を行うメイン制御部19とプリンタ15とが起動される。このため、メイン制御部19の起動が完了する前に、プリンタ15の起動処理を開始させることができる。従って、印刷データが暗号化された状態で通信装置5からMFP3へ送信される場合に、MFP3において待機応答状態から印刷が完了するまでにかかる時間を短縮することが可能となる。すなわち、省電力化とセキュリティの強化との双方を実現しつつ、印刷完了までにかかる時間を短縮することが可能となる。
【0053】
また、通信装置5によれば、暗号化されていない印刷要求を含むパケットと、暗号化された印刷データを含むパケットとが、MFP3へ送信される。現在、一般的には、パケットのデータ部の全てを暗号化することが多い。すなわち、1つのパケットのデータ部に印刷要求と印刷データとが含まれる場合、印刷要求を暗号化せずに印刷データのみを暗号化することは、汎用性が低い。また、印刷要求である旨をヘッダ部に付加することも汎用性が低い。このため、暗号化されていない印刷要求と、暗号化された印刷データとを別々のパケットで送信することにより、汎用性の高いパケットの形式に対応して、暗号化されていない印刷要求と暗号化された印刷データとを送信することができる。
【0054】
更に、通信装置5によれば、暗号化された印刷データが送信される前に、暗号化されていない印刷要求が送信される。このため、MFP3において、より早く、プリンタ15を起動させることができる。従って、印刷完了までにかかる時間が長くなることをより確実に防止することが可能となる。
【0055】
特に、通信装置5によれば、印刷指示の受付をトリガとして、暗号化されていない印刷要求が生成され、MFP3へ送信される。従って、印刷データの暗号化処理等が完了するのを待つことなく、印刷要求が送信される。すなわち、暗号化されていない印刷要求がより早く送信されるので、MFP3では、より早くプリンタ15を起動することができる。従って、印刷完了までにかかる時間を短縮することが可能となる。
【0056】
ところで、待機応答状態にあるMFP3に対して暗号化された印刷データを送信する場合に、印刷完了までにかかる時間が長くなることを抑制するために、MFP3において、受信した情報が印刷要求であるか否かにかかわらず、プリンタを起動する構成も考えられる。この構成では、復号化処理の後、受信した情報が印刷要求でないことを認識した場合、プリンタの起動を停止し、電力の供給を再び停止させる。しかしながら、この構成では、印刷要求以外の情報が受信された場合にもプリンタを起動させることになるので、省電力効果の低下、プリンタの寿命の低下、動作音の発生頻度が多くなる等の問題が生じる。これに対して、本実施形態に係る通信システム1によれば、省電力効果の低下、プリンタの寿命の低下等の問題が生じることなく、上記課題を解決することができる。
【0057】
次に、図6及び図7を参照し、上記の通信装置5としてコンピュータ90を機能させるプログラム100について説明する。図6は、本実施形態に係るプログラム100を実行するためのコンピュータ90の構成を示すブロック図である。図7は、プログラム100のモジュール構成を示す図である。
【0058】
コンピュータ90は、プログラム100の実行等を制御する制御部(CPU)91と、プログラム100等が記憶されたハードディスク92と、メモリ(RAM)93と、CD−ROM等の記録媒体に記録されたプログラム等を読み取り可能な読取装置94とを備えている。また、コンピュータ90は、入力デバイス95と、ディスプレイ96と、ネットワークI/F97とを備えている。
【0059】
プログラム100は、CD−ROM等の記録媒体に記録されていてもよいし、ネットワークを介してサーバ等からコンピュータ90に提供されるものであってもよい。プログラム100は、処理を統括するメインモジュール101、受付モジュール102、生成モジュール103、暗号化モジュール104、送信モジュール105を備える。例えば、コンピュータ90の読取装置95により読み取られハードディスク93に記憶(インストール)されたプログラム100の各モジュールが実行されることにより、コンピュータ90が、通信装置5を構成する受付部32、生成部33、暗号化部34、及びネットワークI/F30として機能する。
【0060】
本実施形態によれば、プログラム100が実行されることにより、コンピュータを上記の通信装置5として機能させることができる。従って、印刷データが暗号化された状態で通信装置5からMFP3へ送信される場合に、MFP3において待機応答状態から印刷が完了するまでにかかる時間を短縮することが可能となる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、通信装置5では、印刷指示の受付をトリガとして、暗号化されていない印刷要求が生成されて送信されることとしたが、これに限られない。受付部32による印刷指示画面40の出力をトリガとして、暗号化されていない印刷要求を生成し、送信してもよい。
【0062】
なお、この構成を採用する際に、通信装置5が印刷を指示可能なMFP又はプリンタが複数存在する場合は、予め、印刷要求の送信先となるMFP又はプリンタを指定する必要がある。このため、通信装置5は、プリンタ(又はMFP)の選択を行うための選択画面を表示し、印刷要求の送信先となるプリンタ(MFP)の選択をユーザから予め受け付ける。図8は、プリンタ(MFP)の選択画面の一例である。
【0063】
一般的に、ユーザが印刷指示画面40を表示する操作を行った場合、その後に、印刷指示が入力される。よって、印刷指示画面40の出力、すなわち印刷指示画面40の表示をトリガとすることにより、印刷指示の入力を予測して、実際に印刷指示が入力される前に、印刷要求を生成して送信することができる。このため、MFP3では、より早くプリンタを起動することができる。従って、印刷完了までにかかる時間を短縮することが可能となる。
【0064】
また、通信装置5において暗号化されていない印刷要求を送信するタイミングは、印刷データの暗号化処理の後であってもよい。
【0065】
なお、本実施形態では、印刷データパケットを送信する前に、要求パケットを送信するので、印刷データの送信が、要求パケットの送信処理にかかる時間だけ遅延する。この遅延時間は、5760ns程度である。例えば、通信速度が100MBps(100Base−TX)の通信環境においては、64byteの要求パケットを送信するのにかかる時間は、5120ns程度である。この要求パケットの送信が完了してから印刷データパケットの送信を開始するまでにかかる時間は、最短で640ns程度である。従って、要求パケットを送信するために、印刷データパケットの送信が遅延する時間は、5760ns程度である。この遅延時間は、メイン制御部19及びプリンタ15の起動にかかる時間と比較して短く、実質的に影響のない範囲である。
【0066】
なお、印刷データパケットが送信された後に、要求パケットを送信してもよい。この場合であっても、メイン制御部19を起動し、起動されたメイン制御部19による印刷要求の復号化処理が完了する前に、要求パケットがMFP3において受信されることにより、印刷完了までにかかる時間を短縮することが可能となる。更に、許容される場合には、一つのパケットのデータ部に暗号化されていない印刷要求と暗号化された印刷データとを含めてもよい。また、印刷要求及び印刷データの送信は、パケット形式に限られない。
【符号の説明】
【0067】
1 通信システム
3 MFP
5 通信装置
15 プリンタ
18 ネットワークI/F
19 メイン制御部
20 電源制御部
30 ネットワークI/F
31 プリンタドライバ
32 受付部
33 生成部
34 暗号化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データを画像形成装置へ送信する通信装置であって、
前記印刷データの印刷要求を生成する生成手段と、
前記印刷データを暗号化する暗号化手段と、
前記生成手段によって生成された暗号化されていない印刷要求と、前記暗号化手段によって暗号化された印刷データとを前記画像形成装置へ送信する送信手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記送信手段は、暗号化されていない前記印刷要求を含むパケットと、暗号化された前記印刷データを含むパケットとを送信することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記送信手段は、暗号化された前記印刷データを送信する前に、暗号化されていない前記印刷要求を送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
ユーザから印刷指示を受け付ける受付手段を備え、
前記生成手段は、前記受付手段による印刷指示の受付をトリガとして、暗号化されていない前記印刷要求を生成して前記送信手段へ出力することを特徴とする請求項3項に記載の通信装置。
【請求項5】
印刷指示画面を表示手段へ出力して、ユーザから印刷指示を受け付ける受付手段を備え、
前記生成手段は、前記受付手段による印刷指示画面の出力をトリガとして、暗号化されていない前記印刷要求を生成して前記送信手段へ出力することを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の通信装置から印刷要求及び暗号化された印刷データを受信する受信手段と、
暗号化された前記印刷データを復号化する復号化手段と、
前記復号化手段によって復号化された前記印刷データを印刷する印刷手段と、
前記受信手段に電力を供給させた状態で、前記復号化手段及び前記印刷手段に対する電力の供給を停止させる制御手段と、
を備え、
前記受信手段は、暗号化されていない前記印刷要求を受信した場合に、前記復号化手段及び前記印刷手段を起動させる起動信号を出力することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の通信装置と、請求項6に記載の画像形成装置とを備える通信システム。
【請求項8】
印刷データを画像形成装置へ送信する通信装置としてコンピュータを機能させる通信プログラムであって、
前記印刷データの印刷要求を生成する生成手段、
前記印刷データを暗号化する暗号化手段、
前記生成手段によって生成された暗号化されていない印刷要求と、前記暗号化手段によって暗号化された印刷データとを前記画像形成装置へ送信する送信手段、
としてコンピュータを機能させることを特徴とする通信プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−44359(P2012−44359A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182318(P2010−182318)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】