説明

通信装置、通信システムおよび通信方法

【課題】道路線形情報を用いることなく道路線形に応じたパケット転送を行うことができる通信装置、通信システムおよび通信方法を提供する。
【解決手段】車両に設置された通信装置は、基準方向を基準に設定されるパケットの送信エリアを特定するための転送情報が含まれるパケットを送信元から受信する受信部と、自車両の進行方向を取得する位置情報取得部と、自車両の進行方向を自装置の基準方向とし、転送情報が含まれるパケットを、自車両の進行方向を基準に設定されたパケットの送信エリアに少なくとも送信する処理部と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信システムおよび通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、路車間(路側機と自車)通信や車車間(自車と他車)通信を用いて、周辺道路の状況や周辺車両の走行状態などを示す安全運転支援情報を、走行中の車両に知らせることにより、交通事故の低減を目指す通信システムの導入が進められている。
【0003】
この通信システムに用いられる安全運転支援情報は、情報発信源である送信元の車両(以下、「送信車両」と称する。)から一定の方向、一定の距離内に存在する車両を対象に提供される場合が多い。例えば、車車間通信のアプリケーションの1つとして考えられている緊急車両情報提供支援システムでは、送信車両である緊急車両から約300m前方の範囲内に存在する車両に情報提供が行われる。
【0004】
この通信システムでは、マイクロ波の電波が使用されることが有力であるが、マイクロ波のような高周波の電波は、伝搬距離が短く回折損失が大きいという特徴を有している。よって、送信車両は、送信情報の伝達対象エリア(以下、「送信先エリア」と称する。)内に存在する車両と直接通信を行うことが困難な場合がある。
【0005】
図7は、送信車両の送信先エリアを拡大するための手法を示す図である。図7に示すように、送信車両Aから送信された送信情報を転送可能な車両(以下、「中継車両」と称する。)Bが、送信情報を転送することにより、送信先エリアを拡大することが可能となる。
【0006】
一方、中継車両Bは、送信車両Aから送信情報が含まれたパケットを受信すると、そのパケットを送信先エリア外にも転送してしまう。このような無駄な中継を中継車両が繰り返し行うことにより、通信トラフィックが増大して適切な情報伝達が行えなくなってしまう。
【0007】
これに対し、送信パケットが転送される領域を限定するジオキャスト・ルーティング手法が知られている。ジオキャスト・ルーティング手法により指定される指定エリアの例を図8および図9に示す。
【0008】
図8は、ジオキャスト・ルーティング手法により、4点の位置座標を用いて矩形の指定エリアを設定した場合の観念図である。また、図9は、ジオキャスト・ルーティング手法により、中心座標および半径により円形の指定エリアを設定した場合の概念図である。
【0009】
ジオキャスト・ルーティング手法を用いた無線ネットワークシステムの一例として、特許文献1には、パケットの中継方向とパケットを中継する中継領域の有効幅とを示すパラメータを用いて指定エリアを設定する無線ネットワークシステムが記載されている。
【0010】
特許文献1に記載の無線ネットワークシステムにおいて、送信元端末装置は、中継方向および中継領域の有効幅を示すパラメータを指定し、そのパラメータ(以下、「指定パラメータ」と称する)をパケットに付加して送信する。中継端末装置は、送信元端末装置からパケットを受信すると、自車の現在位置が、指定パラメータにより定まる指定エリアに含まれるか否かを判定する。中継端末装置は、自車の現在位置が指定エリア内に含まれない場合にパケットの中継を禁止する。
【0011】
このため、無線ネットワークシステムは、中継車両による無駄な中継を減らして、パケット送信の輻輳を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−176370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載の無線ネットワークシステムでは、送信元端末装置が、パケットに指定パラメータを付加することにより、パケットの不要な転送を抑制する。しかしながら、送信元端末装置を備えた車両はカーブ等を有する道路上を移動するので、指定パラメータにより定まる指定エリアが、本来伝達したいエリアと異なってしまうことがある。その一例として、ジオキャスト・ルーティング手法を緊急車両情報提供支援システムに適用した場合の例について次図を参照して説明する。
【0014】
図10は、ジオキャスト・ルーティング手法により、緊急車両の前方300mの範囲を指定エリアとした場合の一例を示す図である。図10に示すように、送信車両である緊急車両がカーブの手前にさしかかると、指定エリアが本来伝達したいエリアから外れてしまう。このため、パケットが本来伝達したいエリアまで転送されないという課題があった。
【0015】
これに対し、道路線形とは異なる指定エリアが設定されたパケットを道路線形に沿って転送する手法として、中継車両が、地図情報などの道路線形情報を保持し、道路線形に合わせて指定エリアを更新していく手法が考えられる。しかしながら、全ての中継車両が、最新の道路線形情報を保持する必要があり、道路線形情報を保持していない中継車両は、道路線形に合わせて指定エリアの補正を行うことが困難となる。さらに、中継車両は、道路線形と指定エリアとのマッチング処理という複雑な処理を実行しなければならないという問題がある。
【0016】
本発明の目的は、上記した課題を解決する通信装置、通信システムおよび通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の通信装置は、車両に設置された通信装置であって、基準方向を基準に設定されるパケットの送信エリアを特定するための転送情報が含まれるパケットを送信元から受信する受信手段と、自車両の進行方向を取得する取得手段と、前記自車両の進行方向を自装置の前記基準方向とし、前記転送情報が含まれるパケットを、前記自車両の進行方向を基準に設定したパケットの送信エリアに少なくとも送信する処理手段と、を含む。
【0018】
本発明の通信システムは、車両に設置された通信装置を複数有する通信システムであって、前記複数の通信装置のうち送信元の通信装置は、基準方向を基準に設定されるパケットの送信エリアを特定するための転送情報が含まれるパケットを送信し、前記複数の通信装置のうち他の通信装置は、前記転送情報が含まれるパケットを前記送信元から受信する受信手段と、自車両の進行方向を取得する取得手段と、前記自車両の進行方向を自装置の前記基準方向とし、前記転送情報が含まれるパケットを、前記自車両の進行方向を基準に設定したパケットの送信エリアに少なくとも送信する処理手段と、を含む。
【0019】
本発明の通信方法は、車両に設置された通信装置の通信方法であって、基準方向を基準に設定されるパケットの送信エリアを特定するための転送情報が含まれるパケットを送信元から受信する受信ステップと、自車両の進行方向を取得する取得ステップと、前記自車両の進行方向を自装置の前記基準方向とし、前記転送情報が含まれるパケットを、前記自車両の進行方向を基準に設定したパケットの送信エリアに少なくとも送信する処理ステップと、を含む。
【0020】
本発明の通信方法は、車両に設置された通信装置を複数有する通信システムの通信方法であって、前記複数の通信装置のうち送信元の通信装置が、基準方向を基準に設定されるパケットの送信エリアを特定するための転送情報が含まれるパケットを送信する送信ステップと、前記複数の通信装置のうち他の通信装置が、前記転送情報が含まれるパケットを前記送信元から受信する受信ステップと、前記他の通信装置が、自車両の進行方向を取得する取得ステップと、前記他の通信装置が、前記自車両の進行方向を自装置の前記基準方向とし、前記転送情報が含まれるパケットを、前記自車両の進行方向を基準に設定したパケットの送信エリアに少なくとも送信する処理ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、道路線形情報を用いることなく道路線形に応じたパケット転送を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態における通信装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】転送情報が含まれたパケットのデータ形式の一例を示す図である。
【図3】車両A〜Cに設置された通信装置にて構成される通信システムのパケット転送に関する図である。
【図4】車両A〜Cの通信装置から送信される転送情報が含まれたパケットを示す図である。
【図5】通信装置における通信方法の処理手順例を示すフローチャートである。
【図6】パケットの転送回数に応じたカウント値と転送回数閾値とを含む転送情報が含まれたパケットを示す図である。
【図7】送信車両の送信先エリアを拡大するための手法の一例を示す図である。
【図8】ジオキャスト・ルーティング手法において4点の位置座標により矩形の指定エリアを設定した場合の観念図である。
【図9】ジオキャスト・ルーティング手法において中心座標および半径により円形の指定エリアを設定した場合の概念図である。
【図10】ジオキャスト・ルーティング手法における緊急車両前方300mの範囲を指定エリアに指定した場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態における通信装置の構成例を示すブロック図である。
【0025】
通信装置100は、車両部200に設置される車載機であり、路車間通信または車車間通信を行う。通信装置100は、位置情報取得部110と、受信部120と、処理部160と、を備える。処理部160は、通信制御部130と、情報処理部140と、送信部150と、を備える。
【0026】
受信部120は、一般的に受信手段と呼ぶことができる。
【0027】
受信部120は、アンテナ102を介して、他の通信装置が送信したパケットを受信する。受信部120は、パケットの送信元の車両の進行方向を基準に設定されたパケットの送信エリアを特定するための転送情報が含まれたパケットを送信元から受信する。
【0028】
本実施形態では、受信部120は、基準位置と基準方向とパケットの送信方向と角度閾値と転送距離閾値とパケットの発信元の位置とを含む転送情報が含まれたパケットを送信元から受信する。パケットの発信元とは、転送情報が含まれたパケットを最初に送信した車両の通信装置のことである。
【0029】
図2は、転送情報が含まれたパケットのデータ形式の一例を示す図である。
【0030】
パケット内の転送情報には、基準位置Pbとして示された送信元の位置と、基準方向Dbとして示された送信元の進行方向と、基準方向Dbを基準に設定されるパケットの送信方向Drと、角度閾値θtと、転送距離閾値Ltと、発信元の位置P1と、が含まれる。
【0031】
基準方向Dbとパケットの送信方向Drと角度閾値θtと転送距離閾値Ltとは、パケットの送信元の送信エリアを特定するために用いられる。パケットの送信方向Drは、例えば、車両の進行方向に対して同一の方向(車両の前方向)または反対の方向(車両の後方向)に設定される。
【0032】
基準位置Pbは、パケットの送信元から自車両への転送方向を特定するために用いられる。発信元の位置P1は、パケットの転送距離を求めるために用いられる。基準位置Pbと発信元の位置P1とは、経度および緯度により表現される。
【0033】
受信部120は、転送情報が含まれたパケットを受信すると、転送情報が含まれたパケットを、処理部160内の情報処理部140に供給する。
【0034】
位置情報取得部110は、一般的に取得手段と呼ぶことができる。
【0035】
位置情報取得部110は、アンテナ101を介して通信装置100の位置を示す位置情報を取得する。なお、通信装置100の位置のことを、以下「自車両の位置」と称する。自車両の位置は、緯度、経度および高度により表現される。例えば、位置情報取得部110は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を用いて位置情報を取得する。
【0036】
また、位置情報取得部110は、車両部200の進行方向を示す進行方向情報を取得する。なお、車両部200の進行方向のことを、以下「自車両の進行方向」と称する。位置情報取得部100は、所定時間ごとに位置情報を取得し、互いに異なるタイミングで取得した複数の位置情報を用いて進行方向情報を取得する。
【0037】
例えば、位置情報を取得すると位置情報取得部110は、位置情報と、その位置情報を取得する前に取得された過去の位置情報と、を用いて車両部200が過去の位置から現在の位置に移動した方向を、自車両の進行方向として求める。位置情報取得部110は、その自車両の進行方向を示す情報を、進行方向情報として取得する。
【0038】
なお、位置情報取得部110は、例えば、ジャイロセンサなどの加速度センサを用いて車両部200の進行方向を検出し、その進行方向を示す情報を進行方向情報として取得してもよい。また、位置情報取得部110は、位置情報と進行方向情報とを、通信制御部130および情報処理部140に供給する。
【0039】
処理部160は、一般的に処理手段と呼ぶことができる。
【0040】
処理部160は、受信部120から、パケットの送信元の進行方向を基準に設定された送信元の送信エリアを特定するための転送情報が含まれたパケットを受け付けると、位置情報取得部110から、自車両の進行方向を示す進行方向情報を受け付け、進行方向情報の示す自車両の進行方向を自装置の基準方向として使用する。
【0041】
処理部160は、転送情報が含まれたパケットを、進行方向情報の示す自車両の進行方向を基準に設定したパケットの送信エリアに少なくとも送信するために、自車両から全方向にパケットが送信されるように転送情報が含まれたパケットを送信する。
【0042】
本実施形態では、処理部160は、受信部120から、転送情報が含まれたパケットを受け付けると、位置情報取得部110から、自車両の位置を示す位置情報と自車両の進行方向を示す進行方向情報とを受け付ける。そして処理部160は、位置情報の示す自車両の位置が、パケット内の転送情報にて特定される送信元の送信エリア内に含まれるか否かを判定する。
【0043】
処理部160は、自車両の位置が送信元の送信エリア内に含まれない場合には、転送情報が含まれたパケットの転送を抑制する。一方、自車両の位置が送信元の送信エリア内に含まれている場合には処理部160は、パケット内の転送情報が含む送信元の基準方向Dbを送信元の進行方向から自車両の進行方向を示す進行方向情報に変更し、かつ、転送情報が含む基準位置Pbを、送信元の位置から自車両の位置を示す位置情報に変更し、変更後の転送情報が含まれたパケットを、進行方向情報の示す自車両の進行方向を基準に設定したパケットの送信エリアに少なくとも送信する。
【0044】
通信制御部130は、一般的に制御手段と呼ぶことができる。
【0045】
通信制御部130は、受信部120から、パケットの送信元の送信エリアを特定するための転送情報が含まれたパケットを受け付けると、位置情報取得部110から、自車両の位置を示す位置情報と自車両の進行方向を示す進行方向情報とを受け付ける。通信制御部130は、位置情報の示す自車両の位置が、送信元からのパケット内の転送情報にて特定される送信元の送信エリア内に含まれるか否かを判定する。
【0046】
通信制御部130は、自車両の位置が送信元の送信エリア内に含まれないと判定した場合には、転送情報が含まれたパケットの転送を抑制する。また、通信制御部130は、自車両の位置が送信元の送信エリア内に含まれないと判定した場合には、例えば、転送情報が含まれたパケットを破棄してもよい。
【0047】
一方、通信制御部130は、自車両の位置が送信元の送信エリア内に含まれていると判定した場合には、転送情報が含まれたパケットの転送を行う。ただし、通信制御部130は、進行方向情報の示す自車両の進行方向が、転送情報の示す送信元の進行方向と反対の方向である場合にはパケットの転送を抑制してもよい。
【0048】
本実施形態では、通信制御部130は、パケットに含まれる転送情報内の基準位置Pbとして示された送信元の位置から、位置情報の示す自車両の位置へのパケットの転送方向を求める。さらに通信制御部130は、そのパケットの転送方向と、転送情報内の基準方向Dbとして示された送信元の進行方向にて特定されるパケットの送信方向である送信元の送信方向と、の成す角度(以下、「転送角度」と称する。)を算出する。
【0049】
通信制御部130は、その転送角度が、転送情報内の角度閾値θtを超えるか否かを判断する。なお、転送情報内に角度閾値θtが示されていない場合には通信制御部130は、転送角度が、予め定められた角度判定閾値、例えば90度を超えるか否かを判断する。この場合、角度判定閾値は、例えば通信制御部130に予め記憶される。
【0050】
通信制御部130は、転送角度が角度閾値θtを超える場合には、自車両の位置が送信元の送信エリア内に含まれないと判定する。一方、通信制御部130は、転送角度が角度閾値を超えない場合には、転送情報の示す発信元の位置と、位置情報の示す自車両の位置と、の間の距離(以下、「到達距離」と称する。)を算出する。通信制御部130は、その到達距離が、転送情報内の転送距離閾値Ltを超えるか否かを判断する。
【0051】
通信制御部130は、到達距離が転送距離閾値Ltを超えている場合には、自車両の位置が送信元の送信エリア内に含まれないと判定する。一方、通信制御部130は、到達距離が転送距離閾値Ltを超えていない場合、かつ、転送角度が角度閾値θtを超えていない場合には、自車両の位置が送信元の送信エリア内に含まれると判定する。
【0052】
なお、通信制御部130は、転送情報が含む基準位置Pbに「送信元の高度」が示されている場合には、送信元の高度と、位置情報の示す自車両の高度と、の高度差が高度差閾値を超えているか否かを判断してもよい。そして通信制御部130は、高度差が高度閾値を超えている場合には、自車両と送信元の車両とが同じ道路上に存在しないと判断し、自車両の位置が送信元の送信エリア内に含まれないと判定する。この場合、高度差閾値は、例えば通信制御部130に予め記憶される。
【0053】
自車両の位置が送信元の送信エリア内に含まれると判定された場合には通信制御部130は、パケットに含まれる転送情報と、位置情報と、進行方向情報と、を情報処理部140に供給する。
【0054】
情報処理部140は、一般的に変更手段と呼ぶことができる。
【0055】
情報処理部140は、通信制御部130から、送信元の基準方向Dbとして示された送信元の進行方向と基準位置Pbとして示された送信元の位置とが含まれた転送情報と、自車両の位置を示す位置情報と、自車両の進行方向を示す進行方向情報と、を受け付ける。すると情報処理部140は、転送情報の示す送信元の基準方向Dbを、送信元の進行方向から自車両の進行方向を示す進行方向情報に変更し、かつ、転送情報の示す基準位置Pbを、送信元の位置から自車両の位置を示す位置情報に変更する。
【0056】
情報処理部140は、転送情報の示す基準方向Dbおよび基準位置Pbの両者を変更すると、変更後の転送情報を通信制御部130に出力し、通信制御部130は、その変更後の転送情報を含むパケットを生成し、変更後の転送情報が含まれたパケットを送信部150に出力する。また、情報処理部140は、転送情報が含まれたパケット内に、例えば、緊急車両が接近中である旨を示す緊急情報が含まれている場合には、その緊急情報を車両部200に供給する。
【0057】
送信部150は、一般的に送信手段と呼ぶことができる。
【0058】
送信部150は、通信制御部130から、変更後の転送情報が含まれたパケットを受け付けると、アンテナ102を介して無線信号により自車両から全方向にパケットが送信されるように、変更後の転送情報が含まれたパケットを送信する。
【0059】
車両部200は、情報処理部140から緊急情報を受け付けると、その緊急情報を運転者に通知する。本実施形態では、車両部200は、車両本体部210と、車両情報取得部220と、HMI部230と、を備える。
【0060】
車両本体部210は、運転者の運転により道路上を走行する自動車である。
【0061】
車両情報取得部220は、車両本体部210の状態に関する車両情報を取得する。車両情報取得部220は、その車両情報を情報処理部140に供給する。
【0062】
HMI(Human Machine Interface)部230は、情報処理部140から緊急情報を受け付けると、その緊急情報を運転者に通知する。
【0063】
次に、複数の通信装置100を有する通信システムにおけるパケットの転送手法について説明する。
【0064】
図3は、通信装置100が設置された車両A〜Cにより構成される通信システムのパケット転送に関する図である。車両Aは緊急車両であり、車両BおよびCは一般車両である。
【0065】
図3には、道路のカーブ手前を走行中の車両Aの位置座標P1と、カーブしている道路を走行中の車両Bおよび車両Cの位置座標P2およびP3と、がそれぞれ示されている。
【0066】
車両Aの通信装置100は、転送情報が含まれたパケットを最初に送信する発信元である。
【0067】
車両Aの通信装置100では、緊急車両が接近中である旨を示す緊急情報を送信するため、情報処理部140が、緊急情報と緊急情報の送信エリアを規定する送信方向情報と角度閾値θtと転送距離閾値Ltとを出力する。ここでは、情報処理部140は、「車両の前方向Df」を示す送信方向情報を出力する。よって、車両Aの送信方向は、車両Aの進行方向D1と同じ方向に設定されることになる。
【0068】
通信制御部130が、情報処理部140から、緊急情報と送信方向情報と角度閾値θtと転送距離閾値Ltとを受け付けると、通信制御部130の指示に従って位置情報取得部110は、車両Aの位置P1を示す位置情報と、車両Aの進行方向D1を示す進行方向情報と、を通信制御部130に供給する。
【0069】
そして通信制御部130は、転送情報内の発信元の位置P1および基準位置Dbのそれぞれの欄に車両Aの位置P1を示す位置情報を格納し、転送情報内の基準方向Dbの欄に車両Aの進行方向D1を示す進行方向情報を格納し、転送情報内のパケットの送信方向Drの欄に送信方向情報を格納し、さらに角度閾値θtおよび転送距離閾値Ltをそれぞれ格納する。これにより、通信制御部130は、車両Aの送信エリア10を特定するための転送情報を生成する。さらに通信制御部130は、その転送情報と緊急情報とを含むパケットを生成し、送信部150が、転送情報と緊急情報とが含まれたパケットを送信する。
【0070】
図4は、車両Aの通信装置100が送信した転送情報を含むパケット510を示す。
【0071】
車両Bの通信装置100では、受信部120が、車両Aの送信エリア10を特定するための転送情報が含まれたパケットを受信すると、通信制御部130の指示に従って位置情報取得部110は、車両Bの位置P2を示す位置情報と、車両Bの進行方向D2を示す進行方向情報と、を通信制御部130に供給する。
【0072】
通信制御部130は、受信部120から転送情報が含まれたパケットを受け付け、位置情報取得部110から、車両Bの位置P2を示す位置情報と車両Bの進行方向D2を示す進行方向情報とを受け付けると、位置情報の示す車両Bの位置P2が、転送情報にて特定される車両Aの送信エリア10内に含まれるか否かを判定する。
【0073】
具体的には、通信制御部130は、パケット内の転送情報の示す送信元の位置P1から、位置情報の示す自車両の位置P2へのパケットの転送方向Dtを求める。さらに通信制御部130は、パケットの転送方向Dtと、転送情報にて特定される車両Aの送信方向D1と、の成す転送角度θ1を求め、その転送角度θ1が、転送情報が含む角度閾値θtを超えるか否かを判断する。
【0074】
図3では転送角度θ1が角度閾値θtを超えないため、通信制御部130は、転送情報の示す発信元の位置P1から、位置情報の示す車両Bの位置P2までのパケットの到達距離を算出し、その到達距離が、転送情報が含む転送距離閾値Ltを超えるか否かを判断する。
【0075】
図3ではパケットの到達距離が転送距離閾値Ltを超えないため、通信制御部130は、車両Bの位置が、車両Aの送信エリア10内に含まれると判定する。
【0076】
車両Bの位置が車両Aの送信エリア10内に含まれると判定されると、情報処理部140は、基準位置として示された車両Aの位置P1と、基準方向として示された車両Aの進行方向D1と、が含まれた転送情報と、車両Bの位置P2を示す位置情報と車両Bの進行方向D2を示す進行方向情報とを受け付ける。そして情報処理部140は、転送情報の示す基準位置Pbを、車両Aの位置P1から車両Bの位置P2を示す位置情報に変更する。さらに情報処理部140は、転送情報の示す基準方向Dbを、車両Aの進行方向D1から車両Bの進行方向D2を示す進行方向情報に変更する。よって、車両Aの送信エリア10は、車両Bの送信エリア20に変更されることになる。
【0077】
転送情報の示す基準位置Pbおよび基準方向Dbの両者が変更されると情報処理部140は、変更後の転送情報を通信制御部130に供給する。通信制御部130は、変更後の転送情報を含むパケットを生成し、送信部150は、変更後の転送情報が含まれたパケットを送信する。
【0078】
図4は、車両Bの通信装置100が送信した転送情報を含むパケット520を示す。
【0079】
車両Cの通信装置100では、受信部120が、車両Bの送信エリア20を特定するための転送情報が含まれたパケットを受信すると、通信制御部130の制御に従って位置情報取得部110は、車両Cの位置P3を示す位置情報と、車両Cの進行方向D3を示す進行方向情報と、を通信制御部130に供給する。
【0080】
通信制御部130は、受信部120から、車両Bの送信エリア20を特定するための転送情報が含まれたパケットを受け付け、位置情報取得部110から車両Cの位置P3を示す位置情報と車両Cの進行方向D3を示す進行方向情報とを受け付けると、位置情報の示す自車両Cの位置P3が、転送情報にて特定される車両Bの送信エリア20内に含まれるか否かを判定する。
【0081】
具体的には、通信制御部130は、パケットに内の転送情報の示す送信元の位置P2から、位置情報の示す自車両の位置P3へのパケットの転送方向を求める。さらに通信制御部130は、転送情報の示す基準方向D2を基準に車両Bの送信方向D2を特定する。そして通信制御部130は、車両Bの送信方向D2とパケットの転送方向との成す転送角度を求め、その転送角度が、転送情報内の角度閾値θtを超えるか否かを判断する。
【0082】
図3ではパケットの転送角度が角度閾値θtを超えないため、通信制御部130は、転送情報の示す発信元の位置P1と、位置情報の示す自車両の位置P3との間のパケットの到達距離を算出し、その到達距離が、転送情報の示す転送距離閾値Ltを超えるか否かを判断する。
【0083】
図3では到達距離が転送距離閾値Ltを超えないため、通信制御部130は、車両Cの位置P3が、車両Bの送信エリア20内に含まれると判定する。車両Cの位置P3が車両Bの送信エリア20内に含まれると判定されると情報処理部140は、基準方向Dbとして示された車両Bの進行方向D2と、基準位置Pbとして示された車両Bの位置P2とが含まれた転送情報と、車両Cの位置P3を示す位置情報と、車両Cの進行方向D3を示す進行方向情報と、を受け付ける。
【0084】
そして通信制御部130は、転送情報が含む基準位置Pbを、車両Bの位置P2から車両Cの位置P3を示す位置情報に変更し、かつ、転送情報が含む基準方向Dbを、車両Bの進行方向D2から車両Cの進行方向D3を示す進行方向情報に変更する。よって、車両Bの送信エリア20は、車両Cの送信エリアに変更されることになる。
【0085】
転送情報の示す基準位置Pbおよび基準方向Dbの両者が変更されると情報処理部140は、変更後の転送情報を通信制御部130に供給する。通信制御部130は、変更後の転送情報を含むパケットを生成し、送信部150は、変更後の転送情報が含まれたパケットを送信する。
【0086】
図4は、車両Cの通信装置100が送信した転送情報を含むパケット530を示す。
【0087】
次に、通信装置100の動作について説明する。
【0088】
図5は、通信装置100における通信方法の処理手順例を示すフローチャートである。
【0089】
まず、受信部120は、パケットの送信元の進行方向を基準に設定されたパケットの送信エリアを特定するための転送情報が含まれたパケットを送信元から受信する(ステップS901)。受信部120が、転送情報が含まれたパケットを受信すると、通信制御部130の指示に従って位置情報取得部110は、自車両の位置を示す位置情報と、自車両の進行方向を示す進行方向情報と、を出力する。通信制御部130は、受信部120から、転送情報が含まれたパケットを受け付け、位置情報取得部110から位置情報と進行方向情報とを受け付ける。
【0090】
通信制御部130は、パケット内の転送情報の示す基準方向Dbを基準に送信元の送信方向を求める(ステップS902)。さらに通信制御部130は、転送情報の示す送信元の位置から、位置情報の示す自車両の位置へのパケットの転送方向を求める(ステップS903)。
【0091】
通信制御部130は、パケットの転送方向と、転送情報の示す送信元の送信方向との成す転送角度θ1が、転送情報内の角度閾値θtを超えているか否かを判断する(ステップS904)。
【0092】
通信制御部130は、転送角度θ1が角度閾値θtを超えている場合には、自車両の位置がパケットの送信元の送信エリア内に含まれないと判定し、パケットの転送を中止(抑制)する(ステップS910)。
【0093】
一方、通信制御部130は、転送角度θ1が角度閾値θtを超えていない場合には、転送情報の示す発信元の位置P1から、位置情報の示す自車両の位置までの到達距離を求める(ステップS905)。そして通信制御部130は、パケットの到達距離が転送距離閾値Ltを超えるか否かを判断する(ステップS906)。通信制御部130は、パケットの到達距離が転送距離閾値Ltを超えている場合には、自車両の位置が送信元の送信エリア内に含まれないと判定し、パケットの転送を中止する(ステップS910)。
【0094】
一方、通信制御部130は、パケットの到達距離が転送距離閾値Ltを超えていない場合、かつ、転送角度θ1が角度閾値θtを超えていない場合には、自車両の位置が送信元の送信エリア内に含まれると判定し、パケットに含まれた転送情報と、自車両の位置を示す位置情報と、自車両の進行方向を示す進行方向情報とを情報処理部140に供給する。
【0095】
情報処理部140は、転送情報の示す基準方向Dbを、送信元の進行方向から自車両の進行方向を示す進行方向情報に変更し(ステップS907)、かつ、転送情報の示す基準位置Pbを、送信元の位置から自車両の位置を示す位置情報に変更する(ステップS908)。その後、送信部150は、変更後の転送情報が含まれたパケットを転送して(ステップS909)、通信装置100の処理方法を終了する。
【0096】
次に送信元の車両に対し反対車線を走行中の車両の通信装置100の動作の一例について説明する。
【0097】
受信部120が、転送情報が含まれたパケットを送信元から受信すると、通信制御部130の制御に従って位置情報取得部110は、自車両の位置を示す位置情報と、自車両の進行方向を示す進行方向情報を通信制御部130に出力する。
【0098】
通信制御部130は、転送情報の示す送信元の位置から位置情報の示す自車両の位置へのパケットの転送方向を求め、パケットの転送方向と、転送情報にて特定される送信元の送信方向との成す転送角度θが、例えば、式1に示す条件を満足しているか否かを判断する。
【0099】
θ < θt または 180−θ < θt ・・・式1
転送角度θが式1を満足している場合において進行方向情報の示す自車両の進行方向よりも自車両の進行方向と反対の方向が、送信元の送信方向に近いときは、通信制御部130は自車両の進行方向と反対の方向を示す基準方向情報を生成する。
【0100】
そして転送角度θが式1を満足している場合、かつ、パケットの到達距離が転送距離閾値Ltを超えていない場合には通信制御部130は、自車両の位置が送信元の送信エリア内に含まれていると判定し、基準方向として示された送信元の進行方向と基準位置として示された送信元の位置とを含む転送情報と、自車両の進行方向と反対の方向を示す基準方向情報と、自車両の位置を示す位置情報と、を情報処理部140に出力する。
【0101】
情報処理部140は、転送情報が含む基準方向を、送信元の進行方向から自車両の進行方向と反対の方向を示す基準方向情報に変更し、転送情報が含む基準位置を、送信元の位置から自車両の位置を示す位置情報に変更する。そして送信部150は、変更後の転送情報が含まれたパケットを転送する。
【0102】
本実施形態によれば、車両部200に設置された通信装置100では、受信部120が、パケットの送信元の進行方向である基準方向を基準に設定されるパケットの送信エリアを特定するための転送情報が含まれたパケットを送信元から受信すると、位置情報取得部110は、自車両の進行方向を取得する。そして、処理部160は、自車両の進行方向を基準方向とし、転送情報が含まれたパケットを、自車両の進行方向を基準に設定したパケットの送信エリアに少なくとも送信する。
【0103】
よって、通信装置100は、パケットの送信元の進行方向を基準に設定された送信元の送信エリアを自車両の進行方向を基準に変更することにより、パケットの送信エリアを道路線形に合った送信エリアに変更することが可能となる。このため、通信装置100は、地図情報などの道路線形情報を用いることなく、道路線形に応じてパケットの送信エリアを補正することができる。
【0104】
また、本実施形態では、受信部120が、パケットの送信元の基準方向として示された送信元の進行方向を含む転送情報を送信元から受信すると、位置情報取得部110が、自車両の位置を示す位置情報を取得する。そして通信制御部130は、位置情報の示す自車両の位置が、送信元からのパケット内の転送情報にて特定される送信元の送信エリア内に含まれるか否かを判定し、自車両の位置が送信元の送信エリア内に含まれない場合にはパケットの転送を抑制する。一方、自車両の位置が、送信元の送信エリア内に含まれている場合には、情報処理部140は、転送情報が含む送信元の基準方向を、送信元の進行方向から自車両の進行方向に変更し、送信部150が、変更後の転送情報が含まれたパケットを、自車両の進行方向を基準に設定したパケットの送信エリアに少なくとも送信する。
【0105】
このため、通信装置100は、自車両の位置が送信元の送信エリア内に含まれている場合に、自車両の進行方向を基準に転送情報を変更し、変更後の転送情報が含まれたパケットを送信する。よって、通信装置100は、送信元から、道路線形に合わない送信エリアが設定された転送情報を含むパケットが送信された場合でも、道路線形に合わせたパケットの転送を行うことが可能となる。このため、通信装置100は、道路線形情報を用いて送信エリアと道路線形との複雑なマッチング処理を行うことなく、簡易な処理でパケットの転送を行うことができる。
【0106】
したがって、通信装置100は、パケットの不要な転送を抑制しつつ、道路線形に応じたパケットの転送を行うことが可能となる。さらに、送信元の通信装置100は、転送情報が含まれたパケットを送信する際に、道路線形を考慮した送信エリアを設定することなく、簡易な設定で本来伝達したい送信エリアに情報を伝達することができる。
【0107】
また、本実施形態では、受信部120は、送信元の基準方向として示された送信元の進行方向に加え、送信元によるパケットの送信方向である送信元の送信方向と、送信元の送信方向に対する角度閾値と、送信元の位置と、を含む転送情報が含まれたパケットを送信元から受信する。すると通信制御部130は、転送情報が含む送信元の位置から、自車両の位置へのパケットの転送方向を求め、その転送方向と送信元の送信方向との成す転送角度が角度閾値を超えている場合にはパケットの転送を抑制する。一方、転送角度が角度閾値を超えていない場合には情報処理部140は、転送情報が含む送信元の基準方向を、送信元の進行方向から自車両の進行方向に変更し、かつ、転送情報が含む送信元の位置を自車両の位置に変更する。
【0108】
このため、中継車両の通信装置100は、送信元の送信方向に対する転送角度が角度閾値を超えている場合にはパケットの転送を抑制する。よって、送信元の通信装置100は、転送情報の示す角度閾値の設定によってパケットの送信エリアの広さを限定することが可能となる。このため、送信元の通信装置100では、小さな角度閾値が用いられることにより、不要なパケットの転送を低減し、パケットの輻輳を抑制することが可能となる。
【0109】
また、本実施形態では、受信部120は、パケットの送信元の位置に加え、パケットの転送距離閾値を含む転送情報が含まれたパケットを受信すると、通信制御部130は、転送情報が含む送信元の位置から自車両の位置までの到達距離が転送距離閾値を超える場合にはパケットの転送を抑制する。
【0110】
このため、通信装置100は、送信元の位置からのパケットの転送距離が転送距離閾値を超える場合にはパケットの転送を抑制するので、パケットの不要な転送を低減することができる。
【0111】
また、本実施形態では、処理部160は、自車両の進行方向が、転送情報が含む送信元の進行方向と反対方向である場合にはパケットの転送を抑制する。よって、反対車線を走行中の車両の通信装置100は、自車両の進行方向を基準に変更した転送情報が含まれたパケットの送信を抑制することが可能となる。
【0112】
また、本実施形態では、パケットの転送回数に応じたカウント値と、パケットの転送回数閾値と、が含まれた転送情報を含むパケットが用いられてもよい。
【0113】
図6は、パケットの転送回数に応じたカウント値Cvとパケットの転送回数閾値Htとが含まれた転送情報を含むパケットを示す図である。
【0114】
図6では、送信元の通信装置100において、情報処理部140が、緊急情報と送信方向情報と角度閾値θtと転送距離閾値Ltとに加え、パケットの転送回数の最大値(例えば5回)と、転送回数閾値Ht(例えば0回)と、を出力する。
【0115】
通信制御部130が、緊急情報と送信方向情報と角度閾値θtと転送距離閾値Ltと転送回数の最大値と転送回数閾値Htとを受け付けると、通信制御部130の指示に従って位置情報取得部110は、自車両の位置を示す位置情報と、自車両の進行方向を示す進行方向情報と、を通信制御部130に供給する。
【0116】
そして通信制御部130は、転送情報内の発信元の位置Dbおよび基準位置Pbの欄に自車両の位置を示す位置情報をそれぞれ格納し、転送情報内の基準方向の欄に自車両の進行方向を示す進行方向情報を格納し、転送情報内のパケットの送信方向Drの欄に送信方向情報を格納し、角度閾値θtおよび転送距離閾値Ltをそれぞれ格納する。さらに通信制御部130は、転送情報内のカウント値Cvとして転送回数の最大値を格納し、転送回数閾値Htを格納する。つまり、カウント値Cvは、転送回数閾値Htよりも大きな値である。
【0117】
これにより、通信制御部130は、送信元の送信エリアを特定するための転送情報を生成する。その後、通信制御部130は、その転送情報と緊急情報とを含むパケットを生成し、送信部150が、転送情報と緊急情報とが含まれたパケットを送信する。
【0118】
中継車両の通信装置100では、受信部120が、送信元の送信エリアを特定するための転送情報が含まれたパケットを受信すると、通信制御部130の指示に従って位置情報取得部110は、自車両の位置を示す位置情報と、自車両の進行方向を示す進行方向情報と、を通信制御部130に供給する。
【0119】
通信制御部130は、受信部120から転送情報が含まれたパケットを受け付け、位置情報取得部110から位置情報と進行方向情報とを受け付けると、位置情報の示す自車両の位置が、転送情報にて特定される送信元の送信エリア内に含まれるか否かを判定する。
【0120】
通信制御部130は、転送情報が含む送信元の位置Pbから位置情報の示す自車両の位置へのパケットの転送方向を求め、その転送方向と、転送情報が含む送信元の送信方向との成す転送角度が、転送情報が含む角度閾値θtを超える場合と、転送情報が含む発信元の位置P1から位置情報の示す自車両の位置までの到達距離が、転送情報が含む転送距離閾値Ltを超える場合と、転送情報が含むカウント値Cvが、転送情報が含む転送回数閾値Htに達した場合と、のうちいずれの場合にも、自車両の位置が送信元の送信エリア内に含まれないと判定し、パケットの転送を抑制する。
【0121】
一方、通信制御部130は、転送角度が角度閾値θtを超えていない場合、かつ、到達距離が転送距離閾値Ltを超えていない場合において、転送情報が含むカウント値Cvが転送回数閾値Htに達していないときは、自車両の位置が送信元の送信エリア内に含まれると判定する。そして通信制御部130は、送信元の位置Pbと送信元の進行方向Dbとを含む転送情報と、自車両の位置を示す位置情報と、自車両の進行方向を示す進行方向情報と、を情報処理部140に供給する。
【0122】
すると情報処理部140は、転送情報が含む送信元の位置Pbを、自車両の位置を示す位置情報に変更し、かつ、転送情報が含む送信元の進行方向Dbを、送信元の進行方向を示す進行方向情報に変更する。さらに情報処理部140は、転送情報が含むカウント値Cvが転送回数閾値Htよりも大きいため、転送情報が含むカウント値Cvを1だけカウントダウンする。なお、パケットの転送回数に応じたカウント値Cvが、転送回数閾値Htよりも小さいときは、情報処理部140は、転送情報が含むカウント値Cvを1だけカウントアップする。
【0123】
このため、複数の通信装置100を有する通信システムでは、パケットの転送回数に応じたカウント値Cvと転送回数閾値Htとを含む転送情報が含まれたパケットが用いられることにより、転送情報が含まれたパケットの転送回数を制限することが可能となる。よって、渋滞が発生している道路の渋滞区間内を走行中の車両の通信装置100が、転送情報が含まれたパケットを送信した状況では、その転送情報が含まれたパケットの転送が渋滞区間で必要以上に行われることを防止することが可能となる。なお、本実施形態では、角度閾値θtと転送距離閾値Ltと転送回数閾値Htとのうちいずれかの閾値を含む転送情報が用いられてもよい。
【0124】
また、本実施形態では、発信元の通信装置100が、自車両の進行方向の前方に存在する前方車両に、転送情報が含まれたパケットを送信する例について説明したが、自車両の進行方向の後方に存在する後方車両に、転送情報が含まれたパケットを送信してもよい。
【0125】
例えば、車車間通信を用いた安全運転支援システムでは、各車両が自車両の状態を示す安全運転支援情報を周辺車両に送信し、受信車両が、出会い頭の衝突などの事故の危険性があるか否かを安全支援情報に基づいて判断し、事故の危険性があると判断した場合にはその旨をドライバへ通知する。この場合、発信元の通信装置100は、通常は、自車両の存在を周辺の車両に知らせるため、前方車両に安全運転支援情報を送信する。一方、急ブレーキなどに起因する追突事故を防止するには、後方車両への情報伝達が望まれる。
【0126】
したがって、発信元の通信装置100は、通常は、パケットの送信方向を自車両の前方方向に設定しておき、ドライバによりブレーキペダルが踏まれたとき、または、一定の閾値以上の速度の減少を検知したときに限り、パケットの送信方向を車両の前方から後方に切り替えてもよい。これにより、各車両が、安全運転支援情報を常に前方および後方の車両に送信する場合と比べてパケットの輻輳を低減することができる。
【0127】
なお、本実施形態では、送信元の進行方向が基準方向として示された転送情報が用いられる例について説明したが、パケットに含まれる転送情報内の基準位置として示された送信元の位置を用いて送信元の進行方向を算出してもよい。この場合、送信元の通信装置100は所定期間間隔ごとに、転送情報が含まれたパケットを送信し、中継車両の通信装置100では、受信部120が、送信元から所定時間間隔で送信されるパケットを受信すると、通信制御部130は、受信部120が受信したパケット内の転送情報が含む送信元の位置と、そのパケットが受信される前に受信部120が受信したパケット内の転送情報が含む送信元の位置とに基づいて送信元の進行方向を基準方向として計算する。
【0128】
以上説明した実施形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0129】
100 通信装置
110 位置情報取得部
120 受信部
130 通信制御部
140 情報処理部
150 送信部
160 処理部
200 車両部
210 車両本体部
220 車両情報取得部
230 HMI部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置された通信装置であって、
基準方向を基準に設定されるパケットの送信エリアを特定するための転送情報が含まれるパケットを送信元から受信する受信手段と、
自車両の進行方向を取得する取得手段と、
前記自車両の進行方向を自装置の前記基準方向とし、前記転送情報が含まれるパケットを、前記自車両の進行方向を基準に設定したパケットの送信エリアに少なくとも送信する処理手段と、を含む通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置において、
前記転送情報は、前記送信元の前記基準方向として示された前記送信元の進行方向を含み、
前記取得手段は、自車両の位置を取得し、
前記処理手段は、
前記自車両の位置が、前記送信元からのパケット内の転送情報にて特定される前記送信元の送信エリア内に含まれるか否かを判定し、前記自車両の位置が前記送信元の送信エリア内に含まれない場合には前記パケットの転送を抑制する制御手段と、
前記自車両の位置が前記送信元の送信エリア内に含まれている場合には、前記転送情報が含む前記送信元の基準方向を前記送信元の進行方向から前記自車両の進行方向に変更する変更手段と、
前記変更手段が変更した後の転送情報が含まれたパケットを、前記自車両の進行方向を基準に設定したパケットの送信エリアに少なくとも送信する送信手段と、を含む、通信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の通信装置において、
前記転送情報は、さらに、前記送信元による前記パケットの送信方向である送信元の送信方向と、前記送信元の送信方向に対する角度閾値と、前記送信元の位置と、を含み、
前記制御手段は、前記転送情報が含む前記送信元の位置から前記自車両の位置へのパケットの転送方向を求め、当該転送方向と、前記転送情報が含む前記送信元の送信方向と、の成す角度が、前記転送情報が含む前記角度閾値を超える場合には前記パケットの転送を抑制し、
前記変更手段は、前記成す角度が前記角度閾値を超えない場合には、前記転送情報が含む前記送信元の基準方向を前記送信元の進行方向から前記自車両の進行方向に変更し、かつ、前記転送情報が含む送信元の位置を前記自車両の位置に変更する、通信装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の通信装置において、
前記転送情報は、さらに、前記送信元の位置と、前記パケットの転送距離閾値と、を含み、
前記制御手段は、前記転送情報が含む前記送信元の位置から前記自車両の位置までの到達距離が前記転送距離閾値を超える場合には前記パケットの転送を抑制する、通信装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の通信装置において、
前記転送情報は、さらに、前記パケットの転送回数に応じたカウント値と、前記パケットの転送回数閾値と、を含み、
前記制御手段は、前記転送情報が含む前記カウント値が、前記転送情報が含む前記転送回数閾値に達した場合には前記パケットの転送を抑制する、通信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の通信装置において、
前記変更手段は、前記転送情報が含む前記カウント値が前記転送回数閾値に達していない場合には、前記転送情報が含む前記カウント値を変更する、通信装置。
【請求項7】
請求項2に記載の通信装置において、
前記転送情報は、さらに、前記送信元による前記パケットの送信方向である送信元の送信方向と、前記送信元の送信方向に対する角度閾値と、前記送信元の位置と、前記パケットの転送距離閾値と、前記パケットの転送回数に応じたカウント値と、前記パケットの転送回数閾値と、を含み、
前記制御手段は、前記転送情報が含む前記送信元の位置から前記自車両の位置への前記パケットの転送方向を求め、当該転送方向と前記転送情報が含む前記送信元の送信方向との成す角度が、前記転送情報が含む前記角度閾値を超える場合と、前記転送情報が含む前記送信元の位置から前記自車両の位置までの到達距離が、前記転送情報が含む前記転送距離閾値を超える場合と、前記転送情報が含む前記カウント値が、前記転送情報が含む転送回数閾値に達した場合と、のうちいずれの場合にも前記パケットの転送を抑制する、通信装置。
【請求項8】
請求項2から4のいずれか1項に記載の通信装置において、
前記処理手段は、前記自車両の進行方向が、前記転送情報が含む前記送信元の進行方向と反対方向である場合には前記パケットの転送を抑制する、通信装置。
【請求項9】
車両に設置された通信装置を複数有する通信システムであって、
前記複数の通信装置のうち送信元の通信装置は、基準方向を基準に設定されるパケットの送信エリアを特定するための転送情報が含まれるパケットを送信し、
前記複数の通信装置のうち他の通信装置は、
前記転送情報が含まれるパケットを前記送信元から受信する受信手段と、
自車両の進行方向を取得する取得手段と、
前記自車両の進行方向を自装置の前記基準方向とし、前記転送情報が含まれるパケットを、前記自車両の進行方向を基準に設定したパケットの送信エリアに少なくとも送信する処理手段と、を含む、通信システム。
【請求項10】
車両に設置された通信装置の通信方法であって、
基準方向を基準に設定されるパケットの送信エリアを特定するための転送情報が含まれるパケットを送信元から受信する受信ステップと、
自車両の進行方向を取得する取得ステップと、
前記自車両の進行方向を自装置の前記基準方向とし、前記転送情報が含まれるパケットを、前記自車両の進行方向を基準に設定したパケットの送信エリアに少なくとも送信する処理ステップと、を含む通信方法。
【請求項11】
車両に設置された通信装置を複数有する通信システムの通信方法であって、
前記複数の通信装置のうち送信元の通信装置が、基準方向を基準に設定されるパケットの送信エリアを特定するための転送情報が含まれるパケットを送信する送信ステップと、
前記複数の通信装置のうち他の通信装置が、前記転送情報が含まれるパケットを前記送信元から受信する受信ステップと、
前記他の通信装置が、自車両の進行方向を取得する取得ステップと、
前記他の通信装置が、前記自車両の進行方向を自装置の前記基準方向とし、前記転送情報が含まれるパケットを、前記自車両の進行方向を基準に設定したパケットの送信エリアに少なくとも送信する処理ステップと、を含む通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−159967(P2012−159967A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18532(P2011−18532)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】