説明

通信装置および通信方法

【課題】振幅制御後の複数の第1受信信号に含まれるノイズと、振幅制御後の複数の第2受信信号に含まれるノイズとの差が大きくなった場合であっても、適切なデータを取得することが可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】第1AGC処理部16は、複数の送受信用アンテナ18で受信された複数の第1受信信号の振幅を一律に制御する。第2AGC処理部17は、複数の受信用アンテナ19で受信された複数の第2受信信号の振幅を一律に制御する。受信データ処理部21は、受信用ウェイトが設定された複数の第1ベースバンド信号と、受信用ウェイトが設定された複数の第2ベースバンド信号とを合成して得られる第1合成信号に対して復調処理を行うとともに、受信用ウェイトが設定された複数の第1ベースバンド信号に対して復調処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信相手装置と無線信号を送受信する送受信用アンテナ群と、通信相手装置からの無線信号を受信する受信用アンテナ群とを備える通信装置、および、通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から無線通信に関して様々な技術が提案されている。通信装置には、通信相手装置と無線通信を行う際に、アレイアンテナの指向性を制御するアダプティブアレイアンテナ方式を用いるものがある。特許文献1には、アレイアンテナの各アンテナにおいて無線信号を受信し、その無線信号に基づいてウェイトが生成される技術が開示されている。アダプティブアレイアンテナ方式を用いる通信装置は、受信用ウェイトが設定された複数の受信信号を合成して得られた信号に対して復調処理を行い、その一方で、送信用ウェイトに基づいて、送信信号を無線通信により通信相手装置に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−311780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、通信装置では、通信相手装置からの信号を受信できるエリアを拡大することが求められている。上述のようなアダプティブアレイアンテナ方式を用いた通信装置では、受信エリアの拡大を実現するため、通信相手装置に信号を送信する際には、送受信用アンテナ群を用いて信号を送信し、通信相手装置からの信号を受信する際には、その送受信用アンテナ群に、受信用アンテナ群を追加して信号を受信することが提案されている。
【0005】
提案されている通信装置では、送受信用アンテナ群を構成する複数の送受信用アンテナのそれぞれで受信された、受信用ウェイト設定後の複数の第1受信信号と、受信用アンテナ群を構成する複数の受信用アンテナのそれぞれで受信された、受信用ウェイト設定後の複数の第2の受信信号とが合成され、当該合成により得られた第1合成信号に対して復調処理が行われる。そして、第1合成信号に対して復調処理を行って得られる既知信号に基づいて、受信用ウェイトが算出される。また、この通信装置では、受信用ウェイト設定後の複数の第1受信信号のみが合成され、当該合成により得られた第2合成信号に対して復調処理が行われる。そして、第2合成信号に対して復調処理を行って得られる既知信号に基づいて、送信用ウェイトが算出される。
【0006】
このような通信装置において、複数の第1受信信号の振幅、および、複数の第2受信信号の振幅のうち、最大振幅が最適値となるように、各アンテナでの受信信号の振幅が、AGC(Auto Gain Control)処理により制御されると、送受信用アンテナ群で受信された複数の第1受信信号の振幅が十分な値とならない場合がある。その結果、送信用ウェイトは不十分な振幅の複数の第1受信信号からなる第1合成信号に含まれる既知信号に基づいて算出されることになり、送信用ウェイトの精度が良くない場合がある。そこで、送信用ウェイトの算出に使用される複数の第1受信信号の振幅が大きくなるようにするため、複数の第1受信信号の最大振幅、および、複数の第2受信信号の最大振幅が、それぞれ最適値となるように、複数の第1受信信号の振幅と、複数の第2受信信号の振幅が別々に制御されることが提案されている。
【0007】
しかしながら、このような制御を採用した場合において、送受信用アンテナ群の複数の第1受信信号の振幅が十分に大きく、その一方で、受信用アンテナ群の複数の第2受信信号の振幅が小さい場合には、複数の第1受信信号の増幅率よりも、複数の第2受信信号の増幅率が大きくなる。その結果、振幅増幅およびウェイト設定後の複数の第1受信信号に含まれるノイズに対して、振幅増幅およびウェイト設定後の複数の第2受信信号に含まれるノイズが大きくなる場合がある。つまり、振幅制御およびウェイト設定後の複数の第1受信信号に含まれるノイズと、振幅制御およびウェイト設定後の複数の第2受信信号に含まれるノイズとの間に大きな差が生じる場合がある。この場合に、振幅制御およびウェイト設定後の複数の第1受信信号と、振幅制御およびウェイト設定後の複数の第2受信信号とを合成して得られた第1合成信号に対して復調処理を行うと、その復調処理により得られるデータが受信データとして適切でない場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、振幅制御およびウェイト設定後の複数の第1受信信号に含まれるノイズと、振幅制御およびウェイト設定後の複数の第2受信信号に含まれるノイズとの差が大きくなった場合であっても、適切なデータを受信データとして取得することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る通信装置は、通信相手装置に無線信号を送信し、通信相手装置から無線信号を受信する送受信用アンテナ群と、通信相手装置から無線信号を受信する受信用アンテナ群と、前記送受信用アンテナ群を構成する複数の送受信用アンテナで受信された複数の第1受信信号の振幅のうち、最大振幅が所定値となるように、当該複数の第1受信信号の振幅を一律に制御する第1振幅制御部と、前記受信用アンテナ群を構成する複数の受信用アンテナで受信された複数の第2受信信号の振幅のうち、最大振幅が所定値となるように、当該複数の第2受信信号の振幅を一律に制御する第2振幅制御部と、前記第1振幅制御部により振幅が制御された前記複数の第1受信信号と、前記第2振幅制御部により振幅が制御された前記複数の第2受信信号とに基づいて、受信用ウェイトを算出するとともに、前記第1振幅制御部により振幅が制御された前記複数の第1受信信号のみに基づいて、送信用ウェイトを算出するウェイト算出部と、前記受信用ウェイトが設定された、前記第1振幅制御部により振幅が制御された前記複数の第1受信信号と、前記受信用ウェイトが設定された、前記第2振幅制御部により振幅が制御された前記複数の第2受信信号とを合成して得られる第1合成信号に対して復調処理を行うことにより、当該第1合成信号に含まれる第1データを取得するとともに、前記受信用ウェイトが設定された、前記第1振幅制御部により振幅が制御された前記複数の第1受信信号のみを合成して得られる第2合成信号に対して復調処理を行うことにより、当該第2合成信号に含まれる第2データを取得する復調部と、前記第1データにエラーがあるかないかを判定する判定部と、前記送信用ウェイトに基づいて、前記送受信用アンテナ群から前記通信相手装置に無線信号を送信する送信部とを備え、前記復調部は、前記判定部が、前記第1データにエラーがないと判定した場合には、前記第1データを、前記通信相手装置からの受信データとして採用し、前記判定部が、前記第1データにエラーがあると判定した場合には、前記第2データを、前記通信相手装置からの受信データとして採用する。
【0010】
本発明に係る通信方法は、(a)送受信用アンテナ群および受信用アンテナ群において、通信相手装置から無線信号を受信する工程と、(b)前記送受信用アンテナ群を構成する複数の送受信用アンテナで受信された複数の第1受信信号の振幅のうち、最大振幅が所定値となるように、当該複数の第1受信信号の振幅を一律に制御する工程と、(c)前記受信用アンテナ群を構成する複数の受信用アンテナで受信された複数の第2受信信号の振幅のうち、最大振幅が所定値となるように、当該複数の第2受信信号の振幅を一律に制御する工程と、(d)前記工程(b)により振幅が制御された前記複数の第1受信信号と、前記工程(c)により振幅が制御された前記複数の第2受信信号とに基づいて、受信用ウェイトを算出するとともに、前記工程(b)により振幅が制御された前記複数の第1受信信号のみに基づいて、送信用ウェイトを算出する工程と、(e)前記受信用ウェイトが設定された、前記工程(b)により振幅が制御された前記複数の第1受信信号と、前記受信用ウェイトが設定された、前記工程(c)により振幅が制御された前記複数の第2受信信号とを合成して得られる第1合成信号に対して復調処理を行うことにより、当該第1合成信号に含まれる第1データを取得するとともに、前記受信用ウェイトが設定された、前記工程(b)により振幅が制御された前記複数の第1受信信号のみを合成して得られる第2合成信号に対して復調処理を行うことにより、当該第2合成信号に含まれる第2データを取得する工程と、(f)前記第1データにエラーがあるかないかを判定する工程と、(g)前記工程(f)において、前記第1データにエラーがないと判定された場合には、前記第1データを、前記通信相手装置からの受信データとして採用し、前記工程(f)において、前記第1データにエラーがあると判定された場合には、前記第2データを、前記通信相手装置からの受信データとして採用する工程と、(h)前記送信用ウェイトに基づいて、送受信用アンテナ群から前記通信相手装置に無線信号を送信する工程とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、振幅制御および受信用ウェイト設定後の複数の第1受信信号と、振幅制御および受信用ウェイト設定後の複数の第2受信信号とを合成して得られた第1合成信号に対して復調処理が行われる。そして、第1合成信号に対して復調処理を行うことにより取得される第1データにエラーがないと判定された場合には、第1データが通信相手装置からの受信データとして採用される。これにより、通信相手装置からの無線信号を受信するのに用いられるアンテナの数が、複数の送受信用アンテナの数よりも増えるため、複数の送受信用アンテナのみを用いたときの受信エリアよりも、受信エリアを拡大することができる。
【0012】
また、振幅制御および受信用ウェイト設定後の複数の第1受信信号のみを合成して得られた第2合成信号に対して復調処理が行われることにより、第2データが取得される。そして、第1データにエラーがあると判定された場合には、第2データが通信相手装置からの受信データとして採用される。ここで、振幅制御および受信用ウェイト設定後の複数の第1受信信号に含まれるノイズと、振幅制御および受信用ウェイト設定後の複数の第2受信信号に含まれるノイズとの間に大きな差がある場合には、第1データにエラーがあると判定される場合がある。第2合成信号の元となる複数の信号は、送受信アンテナ群で受信された複数の第1受信信号が一律に振幅制御して得られた信号であるため、当該複数の信号に含まれるノイズ同士の差を小さくすることができる。したがって、ノイズ差の小さい複数の信号を合成して得られた第2合成信号に対して復調処理を行うことにより、適切なデータを受信データとして採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る基地局の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態に係る基地局の動作を示す図である。
【図4】実施の形態に係る基地局の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施の形態>
図1は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。本実施の形態に係る無線通信システムは、基地局1と、複数の通信端末2とを備える。基地局1は、通信端末2と無線信号を送受信することにより、通信端末2と無線通信を行う。基地局1において、通信端末2からの信号に対して復調処理を行って取得されるデータのエラーを調べるCRC(Cyclic Redundancy Check)が行われるようにするため、通信端末2は、基地局1に送信するデータのデータ列に対して、所定の多項式で割った余り(BCC:Block Check Code)を算出する。そして、通信端末2は、データと、そのデータのエラーチェックコードであるBCCとが重畳された無線信号を基地局1に送信する。
【0015】
図2は、本実施の形態に係る基地局1の構成を示す図である。図2に示されるように、本実施の形態に係る基地局1は、送受信用アンテナ群11と、受信用アンテナ群12と、受信部13,14と、送信部15と、第1AGC(Auto Gain Control)処理部16と、第2AGC処理部17と、受信データ処理部21と、ウェイト算出部22と、判定部23と、送信データ生成部24とを備える。送受信用アンテナ群11は、複数の送受信用アンテナ18から構成され、受信用アンテナ群12は、複数の受信用アンテナ19から構成される。
【0016】
受信部13および送信部15は、複数の送受信用アンテナ18のそれぞれに対して設けられている。複数の送受信用アンテナ18のそれぞれは、通信端末2に無線信号を送信し、通信端末2からデータおよびBCCが重畳された無線信号を受信する。複数の受信部13は、複数の送受信用アンテナ18で受信された信号に対してそれぞれダウンコンバートを行う。
【0017】
受信部14は、複数の受信用アンテナ19のそれぞれに対して設けられている。複数の受信用アンテナ19のそれぞれは、通信端末2からデータおよびBCCが重畳された無線信号を受信する。複数の受信部14は、複数の受信用アンテナ19で受信された信号に対してそれぞれダウンコンバートを行う。
【0018】
図3は、第1AGC処理部16および第2AGC処理部17の動作を示す図である。図3では、送受信用アンテナ群11が、4つの送受信用アンテナ18a〜18dで構成され、受信用アンテナ群12が、4つの受信用アンテナ19a〜19dで構成されている場合が示されている。図3の縦方向は、受信信号の振幅の大きさを示す。図3(a)には、第1AGC処理部16および第2AGC処理部17がAGC処理を行う前の複数の信号の振幅の大きさが、アンテナごとに示されている。本実施の形態では、第1AGC処理部16がAGC処理を行う前の複数の信号は、複数の受信部13でダウンコンバートが行われた複数の信号にそれぞれ相当し、第2AGC処理部17がAGC処理を行う前の複数の信号は、複数の受信部14でダウンコンバートが行われた複数の信号にそれぞれ相当する。
【0019】
図3(a)に示すように、各アンテナで受信される信号の振幅の大きさは、アンテナごとに異なる。このように、受信信号の振幅の大きさがアンテナごとに異なるのは、各アンテナと通信端末2との間の距離や、各アンテナの性能などに起因する。図3(a)に示す例では、4つの送受信用アンテナ18a〜18dのそれぞれで受信された第1受信信号の振幅のうち、最大振幅を有する信号は、送受信用アンテナ18bで受信された第1受信信号である。
【0020】
第1AGC処理部16は、図3(b)に示すように、送受信用アンテナ18bで受信された第1受信信号の振幅が最適値となるように、当該第1受信信号の振幅を増幅する。また、第1AGC処理部16は、図3(b)に示すように、送受信用アンテナ18bで受信された第1受信信号を最適値となるように増幅したときの増幅率で、3つの送受信用アンテナ18a,18c,18dのそれぞれで受信された第1受信信号の振幅も一律に増幅する。これにより、各送受信用アンテナ18のノイズレベルが等しくなる。
【0021】
以上のように、第1AGC処理部16は、複数の送受信用アンテナ18で受信された複数の第1受信信号の振幅のうち、最大振幅が最適値となるように、当該複数の第1受信信号の振幅を一律に制御する。なお、図示しないが、複数の第1受信信号の振幅のうち、最大振幅が最適値よりも大きい場合であっても、第1AGC処理部16は、その振幅が最適値となるように、当該複数の第1受信信号の振幅を一律に制御する。
【0022】
第2AGC処理部17は、第1AGC処理部16と同様に、図3(c)に示すように、複数の受信用アンテナ19で受信された複数の第2受信信号の振幅のうち、最大振幅が最適値となるように、当該複数の第2受信信号の振幅を一律に制御する。なお、以下の説明において、第1AGC処理部16でAGC処理された複数の第1受信信号のそれぞれを「第1ベースバンド信号」と記し、第2AGC処理部17でAGC処理された複数の第2受信信号のそれぞれを「第2ベースバンド信号」と記すこともある。以上により、第1AGC処理部16は、複数の第1受信信号に対してAGC処理を行うことにより、複数の第1ベースバンド信号をそれぞれ生成し、第2AGC処理部17は、複数の第2受信信号に対してAGC処理を行うことにより、複数の第2ベースバンド信号をそれぞれ生成する。
【0023】
図2に示される受信データ処理部21は、複数の第1ベースバンド信号および複数の第2ベースバンド信号のそれぞれに対して、後述するウェイト算出部22で算出される第1受信用ウェイトを設定して(重み付けを行って)、各ベースバンド信号の位相および振幅を制御する。そして、受信データ処理部21は、第1受信用ウェイト設定後の複数の第1ベースバンド信号、および、第1受信用ウェイト設定後の複数の第2ベースバンド信号をまとめて合成し、当該合成により第1合成信号を取得する。これにより、送受信用アンテナ群11および受信用アンテナ群12からなるアレイアンテナのビームを希望波に向けることができる。そして、受信データ処理部21は、第1合成信号に対して復調処理を行って、既知信号等の第1復調データおよび上述のBCCを取得する。ここで、第1復調データは、第1合成信号に含まれるデータである。
【0024】
また、受信データ処理部21は、複数の第1ベースバンド信号のそれぞれに対して、後述するウェイト算出部22で算出される第2受信用ウェイトを設定して、各ベースバンド信号の位相および振幅を制御する。そして、受信データ処理部21は、第2受信用ウェイト設定後の複数の第1ベースバンド信号のみを合成し、当該合成により第2合成信号を取得する。そして、受信データ処理部21は、第2合成信号に対して復調処理を行って、既知信号等の第2復調データおよびBCCを取得する。ここで、第2復調データは、第2合成信号に含まれるデータである。
【0025】
ウェイト算出部22は、受信データ処理部21において、第1合成信号に対して復調処理を行うことにより取得された既知信号に基づいて、第1受信用ウェイトを算出する。また、ウェイト算出部22は、受信データ処理部21において、第2合成信号に対して復調処理を行うことにより取得された既知信号に基づいて、第2受信用ウェイトを算出する。そして、ウェイト算出部22は、第2受信用ウェイトに基づいて、送信用ウェイトを算出する。
【0026】
判定部23は、受信データ処理部21で取得された第1復調データのデータ列に対して、上述の所定の多項式と同じ多項式で割った余り、つまり、BCCを算出する。そして、判定部23は、受信データ処理部21で取得されたBCCと、自己が算出したBCCとを比較して両者が一致するか否かを調べる。判定部23は、両者が一致する場合には、第1復調データにエラーがないと判定し、両者が一致しない場合には、第1復調データにエラーがあると判定する。こうして、判定部23は、受信データ処理部21で取得されたBCCに基づいてCRCを行い、第1復調データにエラーがあるかないかを調べる。
【0027】
判定部23が、第1復調データにエラーがないと判定した場合、受信データ処理部21は、第1復調データを、通信端末2からの受信データとして採用し、第1復調データを送信データ生成部24に送信する。判定部23が、第1復調データにエラーがあると判定した場合、判定部23は、第1復調データのエラー判定と同様にして、第2復調データにエラーがないかを調べる。判定部23が、第2復調データにエラーがないと判定した場合、受信データ処理部21は、第2復調データを、通信端末2からの受信データとして採用し、第2復調データを送信データ生成部24に送信する。
【0028】
送信データ生成部24は、受信データ処理部21からの第1,第2復調データ等に基づいて、通信端末2に送信すべき送信データを生成する。そして、送信データ生成部24は、生成した送信データに基づいて、搬送波を変調し、当該搬送波からなるベースバンド信号を生成する。このベースバンド信号は、送受信用アンテナ18の数だけ準備される。そして、送信データ生成部24は、ウェイト算出部22で算出された送信用ウェイトを、自己が生成した複数のベースバンド信号に設定し、送信用ウェイト設定後の複数のベースバンド信号を複数の送信部15にそれぞれ出力する。
【0029】
複数の送信部15は、入力された複数のベースバンド信号を、それぞれアップコンバートおよび増幅処理を行った後、複数の送受信用アンテナ18にそれぞれ出力する。これにより、送受信用アンテナ群11からは、通信端末2に向かって無線信号が送信される。
【0030】
以上のような基地局1によれば、送受信用アンテナ群11で受信された複数の第1受信信号の振幅のうち、最大振幅が最適値となるように、当該複数の第1受信信号の振幅が制御される。したがって、複数の第1受信信号の振幅のうち、最大振幅が、最適値よりも小さい場合には、当該最大振幅が、最適値となるように、複数の第1受信信号の振幅が一律に増幅される。これにより、十分な値に増幅された振幅を有する複数の第1ベースバンド信号が生成され、当該複数の第1ベースバンド信号からなる第1合成信号に含まれる既知信号に基づいて、送信用ウェイトが算出される。その結果、送信用ウェイトの精度を良くすることができる。
【0031】
図4は、基地局1の主要な動作を示すフローチャートである。以下、基地局1の主要な動作について、図4を用いて説明する。まず、送受信用アンテナ群11および受信用アンテナ群12において、通信端末2からの信号を受信する(ステップS1)。ステップS1の後、第1AGC処理部16は、送受信用アンテナ群11を構成する複数の送受信用アンテナ18のそれぞれで受信された複数の第1受信信号の振幅を制御することにより、複数の第1ベースバンド信号を生成する。それと並行して、第2AGC処理部17は、受信用アンテナ群12を構成する複数の受信用アンテナ19のそれぞれで受信された複数の第2受信信号の振幅を制御することにより、複数の第2ベースバンド信号を生成する(ステップS2)。
【0032】
このステップS2により、複数の送受信用アンテナ18で受信された複数の第1受信信号の振幅が十分に大きく、その一方で、複数の受信用アンテナ19で受信された複数の第2受信信号の振幅が小さい場合には、複数の第1受信信号に対する増幅率よりも、複数の第2受信信号に対する増幅率が大きくなる。その結果、第1受信用ウェイト設定後の複数の第1ベースバンド信号に含まれるノイズに対して、第1受信用ウェイト設定後の複数の第2ベースバンド信号に含まれるノイズが大きくなる場合がある。つまり、第1受信用ウェイト設定後の複数の第1ベースバンド信号に含まれるノイズと、第1受信用ウェイト設定後の複数の第2ベースバンド信号に含まれるノイズとの間に大きな差が生じる場合がある。
【0033】
ステップS2の後、受信用ウェイト設定後の複数の第1ベースバンド信号等に対する復調処理、および、第1,第2受信用ウェイトの算出、送信用ウェイトの算出が行われる(ステップS3)。以下、ステップS3について、詳細に説明する。
【0034】
受信データ処理部21は、第1受信用ウェイト設定後の複数の第1ベースバンド信号と、第1受信用ウェイト設定後の複数の第2ベースバンド信号とを合成して得られる第1合成信号に対して復調処理を行う。この復調処理により、受信データ処理部21は、第1受信用ウェイトを算出するのに用いられる既知信号等を含む第1復調データと、第1復調データのエラーをCRCにより調べるためのBCCとを取得する。
【0035】
また、受信データ処理部21は、第2受信用ウェイト設定後の複数の第1ベースバンド信号のみを合成して得られる第2合成信号に対して復調処理を行う。この復調処理により、受信データ処理部21は、第2受信用ウェイトを算出するのに用いられる既知信号等を含む第2復調データと、第2復調データのエラーをCRCにより調べるためのBCCとを取得する。
【0036】
以上の受信データ処理部21の処理と並行して、ウェイト算出部22は、第1合成信号に対して復調処理を行うことにより得られた既知信号に基づいて、第1受信用ウェイトを算出し、第2合成信号に対して復調処理を行うことにより得られた既知信号に基づいて、第2受信用ウェイトを算出する。また、ウェイト算出部22は、算出した第2受信用ウェイトに基づいて、送信用ウェイトを算出する。
【0037】
ステップS3の後、判定部23は、第1復調データにエラーがあるかないかを、CRCにより判定する(ステップS4)。ステップS4において、判定部23が、第1復調データにエラーがないと判定した場合、受信データ処理部21は、第1復調データを通信端末2からの受信データとして採用し、第1復調データを送信データ生成部24に出力する。
【0038】
送信データ生成部24は、受信データ処理部21からの第1復調データ等に基づいて、通信端末2に送信すべき送信データを生成し、当該送信データを含むベースバンド信号を複数生成する。そして、送信データ生成部24は、ウェイト算出部22で算出された送信用ウェイトを、生成した各ベースバンド信号に設定し、送信用ウェイト設定後の複数のベースバンド信号を複数の送信部15にそれぞれ出力する。そして、送信データが重畳された無線信号が、複数の送受信用アンテナ18のそれぞれから通信端末2に向かって送信される(ステップS5)。ステップS6の後、送受信処理が終了される。
【0039】
一方、ステップS2を行うことにより、複数の第1ベースバンド信号に含まれるノイズと、複数の第2ベースバンド信号に含まれるノイズとの差が大きくなった場合には、ステップS4において、第1復調データにエラーがあると判定される。ステップS4において、判定部23が、第1復調データにエラーがあると判定した場合、受信データ処理部21は、第2復調データを通信端末2からの受信データとして採用し、判定部23は、受信データにエラーがあるかないかを判定する(ステップS6)。
【0040】
ステップS6において、判定部23が、受信データにエラーがないと判定した場合、受信データ処理部21は、当該受信データ、つまり、第2復調データを送信データ生成部24に出力する。その後、ステップS5と同様の送信処理が行われることにより、送信データが通信端末2に送信される(ステップS7)。ステップS7の後、送受信処理が終了する。一方、ステップS6において、判定部23が、復調データにエラーがあると判定した場合、基地局1は、通信端末2に再送要求をおこなう(ステップS8)。
【0041】
以上のような本実施の形態に係る基地局1によれば、第1受信用ウェイト設定後の複数の第1ベースバンド信号と、第1受信用ウェイト設定後の複数の第2ベースバンド信号とを合成して得られた第1合成信号に対して復調処理が行われる。そして、第1合成信号に対して復調処理を行うことにより取得される第1復調データにエラーがないと判定された場合には、第1復調データが通信端末2からの受信データとして採用される。これにより、通信端末2からの無線信号を受信するのに用いられるアンテナの数が、複数の送受信用アンテナ18の数よりも増えるため、複数の送受信用アンテナ18のみを用いたときの受信エリアよりも、受信エリアを拡大することができる。
【0042】
また、第2受信用ウェイト設定後の複数の第1ベースバンド信号のみを合成して得られた第2合成信号に対して復調処理が行われることにより、第2復調データが取得される。そして、第1復調データにエラーがある場合には、第2復調データが通信端末2からの受信データとして採用される。ここで、第1受信用ウェイト設定後の複数の第1ベースバンド信号に含まれるノイズと、第1受信用ウェイト設定後の複数の第2ベースバンド信号に含まれるノイズとの間に大きな差がある場合には、第1復調データにエラーがあると判定される場合がある。第2合成信号の元となる複数の第1ベースバンド信号は、複数の第1受信信号が一律に振幅制御して得られた信号であるため、復調処理が行われた合成信号の元となる複数の信号に含まれるノイズ同士の差を小さくすることができる。したがって、ノイズ差の小さい複数の信号を合成して得られた第2合成信号に対して復調処理を行うことにより得られた第2復調データを受信データとして採用することができることによって、エラーのない適切な受信データを取得することができる。
【0043】
なお、第1復調データにエラーがあると判定された場合において、本実施の形態と異なり、ウェイト設定後の複数の第2ベースバンド信号のみを合成して得られる第3合成信号に対して復調処理を行う場合であっても、本実施の形態と同様に、エラーのない適切な第3復調データを取得することができる場合がある。しかしながら、本実施の形態のように、第2ウェイト設定後の第1ベースバンド信号のみを合成して得られる第2合成信号に対して復調処理を行って第2復調データを取得する場合のほうが以下のような利点がある。
【0044】
例えば、送受信用アンテナ群11と通信端末2との間の通信状態が悪く、受信用アンテナ群12と通信端末2との間の通信状態が良い場合には、複数の送受信用アンテナ18では、振幅の小さい複数の第1受信信号が受信され、その一方で、複数の受信用アンテナ19では、振幅の大きい複数の第1受信信号が受信される。そうすると、第1AGC処理部16および第2AGC処理部17においては、複数の受信用アンテナ19で受信される複数の第2受信信号に対する増幅率よりも、複数の送受信用アンテナ18で受信される複数の第1受信信号に対する増幅率が大きくなる。その結果、第1受信用ウェイト設定後の複数の第2ベースバンド信号に含まれるノイズに対して、第1受信用ウェイト設定後の複数の第1ベースバンド信号に含まれるノイズが大きくなる場合がある。これにより、第1受信用ウェイト設定後の複数の第1ベースバンド信号に含まれるノイズと、第1受信用ウェイト設定後の複数の第2ベースバンド信号に含まれるノイズとの間に大きな差が生じ、その結果として第1復調データにエラーが生じる場合がある。
【0045】
ここで、第3合成信号の元となる複数の第2ベースバンド信号は、複数の第2受信信号が一律に振幅制御して得られた信号であるため、復調処理が行われた合成信号の元となる複数の信号に含まれるノイズ同士の差を小さくすることができる。したがって、ノイズ差の小さい複数の信号を合成して得られた第3合成信号に対して復調処理を行うことにより得られた第3復調データを受信データとして採用することによって、エラーのない適切な受信データを取得することができる。
【0046】
しかしながら、このような効果が得られるのは、上述のように、送受信用アンテナ群11と通信端末2との間の通信状態が悪い場合である。この場合には、基地局1は、通信端末2からの無線信号を受信できるが、通信端末2に無線信号を送信できなくなるおそれがある。その結果、基地局1では、通信端末2からの信号は受信できても、通信端末2に信号を送信することができなくなることがある。このことは、双方向通信を行う基地局1と通信端末2との間では不都合である。例えば、2つの通信端末2が基地局1を介して音声情報をやり取りする場合、一方の通信端末2のユーザは、他方の通信端末2のユーザが発する音声を聴くことができるが、他方の通信端末2のユーザは、一方の通信端末2のユーザが発する音声を聴くことができないという不都合が生じる。
【0047】
それに対して、本実施の形態では、送受信用アンテナ群11と通信端末2との間の通信状態が悪い場合には、第1および第2復調データの両方にエラーが生じるため、基地局1は、通信端末2からの信号を受信することも、通信端末2に信号を送信することもできない。例えば、2つの通信端末2が基地局1を介して音声情報をやり取りする場合、一方の通信端末2のユーザと、他方の通信端末2のユーザは、両方とも相手の音声を聴くことができない。このことは、一方の通信端末2のユーザと他方の通信端末2のユーザのどちらか一方のみが相手の音声を聴くことができる場合よりも、無線通信システムとしては望ましい。したがって、本実施の形態のように、第2受信用ウェイト設定後の第1ベースバンド信号のみを合成して得られる第2合成信号に対して復調処理を行って第2復調データを取得するほうが望ましい。
【符号の説明】
【0048】
1 基地局
2 通信端末
11 送受信用アンテナ群
12 受信用アンテナ群
16 第1AGC処理部
17 第2AGC処理部
21 受信データ処理部
22 ウェイト算出部
23 判定部
24 送信データ生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信相手装置に無線信号を送信し、通信相手装置から無線信号を受信する送受信用アンテナ群と、
通信相手装置から無線信号を受信する受信用アンテナ群と、
前記送受信用アンテナ群を構成する複数の送受信用アンテナで受信された複数の第1受信信号の振幅のうち、最大振幅が所定値となるように、当該複数の第1受信信号の振幅を一律に制御する第1振幅制御部と、
前記受信用アンテナ群を構成する複数の受信用アンテナで受信された複数の第2受信信号の振幅のうち、最大振幅が所定値となるように、当該複数の第2受信信号の振幅を一律に制御する第2振幅制御部と、
前記第1振幅制御部により振幅が制御された前記複数の第1受信信号と、前記第2振幅制御部により振幅が制御された前記複数の第2受信信号とに基づいて、受信用ウェイトを算出するとともに、前記第1振幅制御部により振幅が制御された前記複数の第1受信信号のみに基づいて、送信用ウェイトを算出するウェイト算出部と、
前記受信用ウェイトが設定された、前記第1振幅制御部により振幅が制御された前記複数の第1受信信号と、前記受信用ウェイトが設定された、前記第2振幅制御部により振幅が制御された前記複数の第2受信信号とを合成して得られる第1合成信号に対して復調処理を行うことにより、当該第1合成信号に含まれる第1データを取得するとともに、前記受信用ウェイトが設定された、前記第1振幅制御部により振幅が制御された前記複数の第1受信信号のみを合成して得られる第2合成信号に対して復調処理を行うことにより、当該第2合成信号に含まれる第2データを取得する復調部と、
前記第1データにエラーがあるかないかを判定する判定部と、
前記送信用ウェイトに基づいて、前記送受信用アンテナ群から前記通信相手装置に無線信号を送信する送信部と
を備え、
前記復調部は、
前記判定部が、前記第1データにエラーがないと判定した場合には、前記第1データを、前記通信相手装置からの受信データとして採用し、
前記判定部が、前記第1データにエラーがあると判定した場合には、前記第2データを、前記通信相手装置からの受信データとして採用する、通信装置。
【請求項2】
(a)送受信用アンテナ群および受信用アンテナ群において、通信相手装置から無線信号を受信する工程と、
(b)前記送受信用アンテナ群を構成する複数の送受信用アンテナで受信された複数の第1受信信号の振幅のうち、最大振幅が所定値となるように、当該複数の第1受信信号の振幅を一律に制御する工程と、
(c)前記受信用アンテナ群を構成する複数の受信用アンテナで受信された複数の第2受信信号の振幅のうち、最大振幅が所定値となるように、当該複数の第2受信信号の振幅を一律に制御する工程と、
(d)前記工程(b)により振幅が制御された前記複数の第1受信信号と、前記工程(c)により振幅が制御された前記複数の第2受信信号とに基づいて、受信用ウェイトを算出するとともに、前記工程(b)により振幅が制御された前記複数の第1受信信号のみに基づいて、送信用ウェイトを算出する工程と、
(e)前記受信用ウェイトが設定された、前記工程(b)により振幅が制御された前記複数の第1受信信号と、前記受信用ウェイトが設定された、前記工程(c)により振幅が制御された前記複数の第2受信信号とを合成して得られる第1合成信号に対して復調処理を行うことにより、当該第1合成信号に含まれる第1データを取得するとともに、前記受信用ウェイトが設定された、前記工程(b)により振幅が制御された前記複数の第1受信信号のみを合成して得られる第2合成信号に対して復調処理を行うことにより、当該第2合成信号に含まれる第2データを取得する工程と、
(f)前記第1データにエラーがあるかないかを判定する工程と、
(g)前記工程(f)において、前記第1データにエラーがないと判定された場合には、前記第1データを、前記通信相手装置からの受信データとして採用し、前記工程(f)において、前記第1データにエラーがあると判定された場合には、前記第2データを、前記通信相手装置からの受信データとして採用する工程と、
(h)前記送信用ウェイトに基づいて、送受信用アンテナ群から前記通信相手装置に無線信号を送信する工程と
を備える、通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−177864(P2010−177864A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16509(P2009−16509)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】