説明

通信装置

【課題】 アースが取れていないような環境においても、安定した電圧を取り込むことができる通信装置を提供すること。
【解決手段】 オンフックの電圧を測定し(S10)、一定時間毎に回線データを取得する(S11)。そして、取得したデータを平均化し(S12)、オンフック電圧を確定する(S13)。その後、スレッシュ電圧を算出する(S14)。ここで、一定時間毎に回線データを取得し(S15)、取得したデータを平均化して、その値をステップ14で算出したスレッシュ電圧と比較する(S17)。その結果、スレッシュ電圧の方が大きければ、並列電話オフフックと判定する(S18)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiDAAを使用した通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、技術の向上により、通信機器において、半導体によって回線制御を行う半導体DAA(以降SiDAAとする)が使用されている。この半導体DAAを用いて電話とファクシミリの自動切り替えを行う技術、および省エネモード時にDSPを介さずにオフフックを検出する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−171360公報
【特許文献2】特開2004−112679公報
【0003】
特許文献1には、電話機とFAXの切替機能を有し、全体制御手段から切替を行うことでTEL接続を可能としたDAA回路によるファクシミリ装置が開示されている。
また、特許文献2では、回線電圧を認識することで省エネ状態にて外付け電話のオフフックを検出するDAA回路が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、従来の大型のトランスに代り集積化されたアナログ回路(DAA)による並列電話の接続が挙げられている。DAAは、本来データモデムを対象としてきたものであり、FAX特有である電話の並列接続の対応は不向きである。
また、上記特許文献2では、回線電圧のモニタ機能を用いて電話のオフフックを検出するようにしているが、アースを取らないような環境では、電源によって電圧が変動することがあり回線電圧のモニタ機能が安定しないという課題がある。さらに、例えば、CPUがスリープしてしまうような省エネモードの場合には、正確な計測ができなくなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の第1の目的は、アースが取れていないような環境においても、安定した電圧を取り込むことができる通信装置を提供することである。
本発明の第2の目的は、電源周波数等の異なる(50/60Hz)環境によらず、並列に接続された電話のオフフックの検出が可能な通信装置を提供することである。
本発明の第3の目的は、CPUがスリープしてしまうような省エネモードでも並列に接続された電話のオフフックの検出が可能となる通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明では、1次側回線制御部と、2次側シリアルインターフェイス部と、前記1次側回線制御部と2次側シリアルインターフェイス部とを接続するデータ受け渡し回路とからなるSiDAAを使用した通信装置において、前記2次側シリアルインターフェイス部にて回線電圧モニタのレジスタ値を信号出力に変換する回線電圧信号出力部と、この回線電圧信号出力部の出力を基に、回線電圧を一定時間ごとにサンプリングしたデータを記憶する回線電圧データ記憶部と、記憶したデータの平均を計算する平均データ算出部とを備え、回線電圧のモニタを平均電圧によって算出することにより、前記第1の目的を達成する。
【0007】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、並列電話のオンフック時の平均電圧を記憶するオンフック電圧記憶手段と、オフフック判定のためのスレッシュ電圧を算出するスレッシュ算出手段とをさらに備え、前記オンフック電圧記憶手段に記憶されたオンフック時の平均電圧と前記スレッシュ算出手段により算出されたスレッシュ電圧を比較する比較手段と、をさらに備え、前記比較手段での比較結果により、回線電圧の低下によって並列に接続された電話のオフフックを検出することにより、前記第1の目的を達成する。
請求項3記載の発明では、請求項2記載の発明において、前記オンフック電圧記憶手段に記憶するオンフック時の平均電圧を取る間隔、回数を可変とするデータサンプリング可変手段をさらに備えたことにより、前記第2の目的を達成する。
【0008】
請求項4記載の発明では、請求項1、請求項2または請求項3記載の発明において、前記平均データ算出部をDAAに備えたことにより、前記第3の目的を達成する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明では、アースの取れていないような環境においても、安定した電圧を取り込むことができる。
請求項2記載の発明では、アースが取れていないような環境においても、並列に接続された電話のオフフックの検出が可能となる。
請求項3記載の発明では、電源周波数等の異なる環境によらず、並列に接続された電話のオフフックの検出が可能となる。
請求項4記載の発明では、ホストの条件によらず、省エネ中でも並列に接続された電話のオフフックの検出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態を図1ないし図3を参照して、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例に係る通信装置の構成を示したブロック図である。回線の1次側に配置され、局給電により動作し、2次側とデータの受け渡しを行うことによって回線制御、送受信データのやりとりを実施する1次側回線制御部10と、2次側に配置され、回線制御回路とシリアルI/F(インターフェイス)にてデータの受け渡し・処理を行う2次側シリアルI/F部12と、1次−2次間を絶縁状態にてデータを送受信するためのデータ受け渡し回路(絶縁)(リニアカプラ、トランス、コンデンサ等)14と、回線電流を整流するダイオードブリッジ20と、データの送受信を司るDSP30と、ファクシミリの全体制御を司るメイン制御部32とより構成されている。
メイン制御部32には、電圧監視回路34、回線電圧データ記憶部36、平均化データ算出部38、スレッシュ算出部40およびCPU(中央演算処理装置)42が設けられている。
【0011】
まず、第1の実施例から説明する。
SiDAAでは、回線からの着呼検出、発呼処理・状態検出等の網制御機能と、回線と授受するアナログ信号を、送信・受信するという二つの機能を担っている。このために、SiDAAの2次側デバイスは、通常変復調を担うDSP30と接続される。網制御機能は、ホストCPU(中央演算処理装置)42がモデムの外部ホストI/F経由で指示、あるいは確認することで実現される。
ファクシミリでは並列に電話が接続されることがあり、電話使用中に閉結しないように、回線の使用状況を検出している。受動素子で構成されたNCU等ではフォトカプラ等で電流検出をして2次側ホストで状況を確認する。
【0012】
DAAで検出する場合、半導体素子であるため回線間の電圧を検出する方式を取っているものがある。分圧して素子内部のA/D(アナログ/デジタル)変換回路等での認識となるが、DAAでは回線はコンデンサにて接地されているものがほとんどである(図1のC1、C2)。このように接地されていると筐体のアースの取れない環境では、筐体が電源周波数で変動するために回線も同様に変動し、分圧回路の回路構成によっては電圧が安定しないことが考えられる。
本実施例では、電圧の認識を平均化データにて算出するものである。DAAから得られた回線電圧信号を回線電圧データ記憶部36に記憶する。そして、平均化データ算出部38にて記憶したデータの平均を計算することで、回線間の電圧を正しく認識することが可能となる。
【0013】
次に、第2の実施例について説明する。
第1の実施例においては、環境によらず回線間電圧の認識が可能となる。そこで、オンフック時の電圧をオンフック電圧記憶手段に取り込む。取り込んだ電圧からオフフック判定のための電圧をスレッシュ算出部40にて算出する。
オンフック時の電圧は交換機にもよるが+48V、+24V程度、オフフック時は6V程度となるためこの電圧が十分に認識できるようにスレッシュを決める。平均化データがスレッシュを下まわることで並列電話のオフフックを検出することができる。
【0014】
次に、第1の実施例、第2の実施例の処理手順を図2のフローチャートを参照して説明する。
まず、オンフックの電圧を測定し(ステップ10)、一定時間毎に回線データを取得する(ステップ11)。そして、取得したデータを平均化し(ステップ12)、オンフック電圧を確定する(ステップ13)。その後、スレッシュ電圧を算出する(ステップ14)。
ここで、一定時間毎に回線データを取得し(ステップ15)、取得したデータを平均化して(ステップ16)、その値をステップ14で算出したスレッシュ電圧と比較する(ステップ17)。その結果、スレッシュ電圧の方が大きければ(ステップ17;Y)、並列電話オフフックと判定する(ステップ18)。一方、スレッシュ電圧の方が小さければ(ステップ17;N)、ステップ15に戻り、処理を継続する。
【0015】
次に、第3の実施例を説明する。
回線電圧に影響を与えるのは電源周波数であり、電圧データの取り込み周期・回数によっては平均化データにずれが生じることが考えられる。そこで、この実施例では、データの取得間隔/回数を変更する手段をさらに設ける。電源周波数に一致し、1周期内で十分な回数のデータの取得が可能な値に設定することで平均化データの誤差を無くすることができる。
【0016】
次に、第4の実施例を説明する。
上記第3の実施例では、ホスト側にて平均化データを算出している。しかし、省エネモード等でCPU(中央演算処理装置)がスリープするような場合は算出が困難となる。そこで、この実施例では、平均化機能をDAA内部に持たせることとする。DAA内部で平均化して出力することでホスト側の処理が必要なくこの機能を達成することができる。
【0017】
ここで、第3および第4の実施例の処理手順を図3のフローチャートを参照して説明する。
まず、オンフックの電圧を測定し(ステップ20)、設定回数を取得する(ステップ21)。取得したら(ステップ21;Y)、取得したデータを平均化し(ステップ22)、オンフック電圧を確定する(ステップ23)。その後、スレッシュ電圧を算出する(ステップ24)。
そして、回線電圧の測定を行い(ステップ25)、設定回数を取得する(ステップ26)。設定回数を取得すれば(ステップ26;Y)、取得したデータを平均化し(ステップ27)、その値をステップ24で取得したスレッシュ電圧と比較する(ステップ28)。
その結果、スレッシュ電圧の方が大きければ(ステップ28;Y)、並列電話オフフックと判定する(ステップ29)。一方、スレッシュ電圧の方が小さければ(ステップ28;N)、ステップ25に戻り、処理を継続する。
なお、ステップ21およびステップ26では、何回かデータをサンプリングしてから取得データを平均化している(ステップ30、ステップ31、ステップ32、ステップ33
)。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例に係るSi(シリコン)DAA構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施例の処理手順を示したフローチャートである。
【図3】本発明の実施例の処理手順を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0019】
10 1次側回線制御部
12 2次側シリアルインターフェイス部
14 データ受け渡し回路
20 ダイオードブリッジ
30 DSP
32 メイン制御部
34 電圧監視回路
36 回線電圧データ記憶部
38 平均化データ算出部
40 スレッシュ算出部
42 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次側回線制御部と、2次側シリアルインターフェイス部と、前記1次側回線制御部と2次側シリアルインターフェイス部とを接続するデータ受け渡し回路とからなるSiDAAを使用した通信装置において、
前記2次側シリアルインターフェイス部にて回線電圧モニタのレジスタ値を信号出力に変換する回線電圧信号出力部と、
この回線電圧信号出力部の出力を基に、回線電圧を一定時間ごとにサンプリングしたデータを記憶する回線電圧データ記憶部と、
記憶したデータの平均を計算する平均データ算出部とを備え、
回線電圧のモニタを平均電圧によって算出することを特徴とした通信装置。
【請求項2】
並列電話のオンフック時の平均電圧を記憶するオンフック電圧記憶手段と、
オフフック判定のためのスレッシュ電圧を算出するスレッシュ算出手段とをさらに備え、
前記オンフック電圧記憶手段に記憶されたオンフック時の平均電圧と前記スレッシュ算出手段により算出されたスレッシュ電圧を比較する比較手段と、をさらに備え、
前記比較手段での比較結果により、回線電圧の低下によって並列に接続された電話のオフフックを検出することを特徴とした請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記オンフック電圧記憶手段に記憶するオンフック時の平均電圧を取る間隔、回数を可変とするデータサンプリング可変手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2記載の通信装置。
【請求項4】
前記平均データ算出部をDAAに備えたことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−203332(P2006−203332A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10441(P2005−10441)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】