説明

通信装置

【課題】電波干渉を防止することで、通信速度や通信品質の低下を防止することが可能な通信装置を提供すること。
【解決手段】分散構成多機能周辺装置1は、データ信号を送受信して各種機能処理を行うMFPと、音声信号を送受信して音声通話を行う子機と、BOXとを備える。BOXは、MFPとデータ信号の無線通信を行う無線LANアンテナ部と、子機と音声信号の無線通信を行うDCLアンテナ部を有する。BOXは、子機で音声通話を開始することを検出することに応じて、無線LANアンテナ部からの電波の送出を停止する。BOXは、DCLアンテナ部を用いて子機との音声信号の無線通信を行うことで、音声通話を実現する。BOXは、音声通話の終了を契機として、無線LANアンテナ部からの電波の送出を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電波干渉を抑えることで通信品質を高品質に維持することが可能な通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(WI−FI)機器、デジタルコードレス機器、Bluetooth機器など、異なる規格で同一周波数帯を使用する無線機器が多数存在する。また、これらの無線機器を複数搭載した通信装置が製造されている。このような通信装置において、同一周波数帯を用いる無線機器を同時に使用すると、電波干渉によって通信速度が遅くなる場合がある。通信速度が低下すると、リアルタイム性が必要な音声信号を取り扱う場合には音声が途切れることがあり、問題である。そこで従来では、通信チャンネルを干渉しないチャンネルに意図的に変更する技術や、周波数ホッピング技術や、送信信号を減衰させる技術等を用いて、電波干渉の防止が試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−179975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同一周波数帯を使用する無線機器を複数搭載した通信装置において、通信装置の筐体の小型化が進むと、無線機器のアンテナ同士がより近接することになる。すると、干渉電波の強度が大きくなる。また、高調波による電波干渉が発生しやすくなる。よって、電波干渉を防止することが困難となるため、通信速度や通信品質の低下を招く可能性がある。また、音声信号を取り扱う場合には、音声に乱れが発生する可能性がある。本明細書では、このような不便性を解消することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の通信装置は、
データ信号を送受信して各種機能処理を行う多機能通信装置を備える。また、音声信号を送受信して音声通話を行う無線通信端末を備える。また、多機能通信装置とデータ信号の無線通信を行う第1通信部、および、無線通信端末と音声信号の無線通信を行う第2通信部を有し、第1通信部を用いて多機能通信装置と通信回線との間のデータ信号の中継を行い、第2通信部を用いて無線通信端末と通信回線との間の音声信号の中継を行う回線制御装置を備える。回線制御装置は、無線通信端末で音声通話を開始することを検出することに応じて、第1通信部からの電波の送出を停止する送信停止手段を備える。また、第2通信部を用いて無線通信端末と音声信号の無線通信を行うことで、無線通信端末と通信回線との間の音声信号の中継を行い、音声通話先との音声通話を実現する音声通話手段を備える。また、音声通話の終了を契機として、第1通信部からの電波の送出を再開する送信再開手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
多機能通信装置の例としては、FAX機能、印刷機能、スキャナ機能などを備えた多機能機が挙げられる。回線制御装置は、第1通信部および第2通信部を有している。第1通信部は、データ信号の無線通信を行う。第1通信部からは、データ信号の通信用の電波と、ビーコン用の電波が送出される。ビーコンは、無線機器が存在することを伝える信号である。ビーコン用の電波は、データ量が少ない(使用する周波数帯を占有する時間が短い)電波であり、第1通信部から所定時間間隔で送出される。データ信号の通信用の電波は、データ量の大きな(使用する周波数帯を占有する時間が長い)電波である。データ信号は、通信エラー時に再送可能な信号である。よってデータ信号の無線通信では、リアルタイム性が要求されない。第2通信部は、音声信号の無線通信を行う。音声信号は、通信エラー時に再送することが出来ない信号である。よって音声信号の無線通信では、リアルタイム性が必要とされる。
【0007】
ビーコンのような小さなデータを送信する電波は、電波の放射が少ないため、電波干渉が発生しにくい。しかし、回線制御装置の筐体が非常に小さい場合などには、第1通信部と第2通信部とが近接して配置される必要がある。この場合には、干渉電波の強度が大きくなる。また、高調波による電波干渉が発生しやすくなる。よって、ビーコンのような放射が少ない電波であっても、電波干渉の影響が無視できなくなる。
【0008】
本願の通信装置では、第2通信部を用いた音声通話の開始を検出することに応じて、第1通信部からの電波の送出が停止される。よって、ビーコン用の電波の送出も停止されるため、第1通信部と第2通信部が近接している場合においても、電波干渉の発生を防止することができる。これにより、第2通信部を用いた音声通話において、電波干渉を抑えることで通信品質を高品質に維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】分散構成多機能周辺装置1のブロック図である。
【図2】BOXの動作フロー図(その1)である。
【図3】BOXの動作フロー図(その2)である。
【図4】BOXの動作フロー図(その3)である。
【図5】BOXの動作フロー図(その4)である。
【図6】BOXの動作フロー図(その5)である。
【図7】MFPの動作フロー図である。
【図8】分散構成多機能周辺装置1のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、本願に係る実施例として例示される分散構成多機能周辺装置1のブロック図を示す。分散構成多機能周辺装置1は、多機能周辺装置(以下「MFP」と称す)10と、回線制御装置(以下「BOX」と称す)31とを備える。BOX31は、電話回線47を使用した通信の制御を行う通信装置である。MFP10は、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能などを備える。また、MFP10とBOX31とは、アドホックモードの無線LAN接続方式により、TCP/IP通信の無線通信202を直接に行うことが可能とされる。
【0011】
MFP10の構成について説明する。MFP10は、CPU11、ROM12、RAM13、EEPROM14、無線LAN送受信部15、無線LANアンテナ部16、ボタン入力部17、パネル18、プリンタ19、スキャナ20、スロット部21を主に備えている。これらの構成要素は、入出力ポート22を介して互いに通信可能に接続されている。
【0012】
CPU11は、ROM12等に記憶されるプログラムや、無線LAN送受信部15を介して送受信される各種信号などに従って、各機能の制御を行う。ROM12は、MFP10で実行される制御プログラムなどを格納した書換不能なメモリであり、各種のプログラムが格納されている。RAM13は、書換可能な揮発性のメモリである。EEPROM14は、書換可能な不揮発性のメモリである。
【0013】
無線LAN送受信部15は、無線LANアンテナ部16を介して、アドホックモードの無線通信202を行う。そして、無線LAN送受信部15により、各種のデータを構成するデータ信号が送受信される。ボタン入力部17は、MFP10の各機能を実行するためのキーである。パネル18は、MFP10の各種機能情報を表示する。プリンタ19は、印刷を実行する部位である。スキャナ20は、読み取りを実行する部位である。スロット部21は、メモリカードなどの外部記憶装置が接続される部位である。
【0014】
BOX31の構成について説明する。BOX31は、CPU32、ROM33、RAM34、EEPROM35、無線LAN送受信部36、無線LANアンテナ部37、操作キー38、パネル39、モデム40、電話回線接続部41、DCL送受信部45、DCLアンテナ部46を主に備えている。
【0015】
モデム40は、電話回線接続部41および電話回線47を介して、電話回線網100に接続されている。モデム40は、ファクシミリ機能によって送信する原稿データを、電話回線47に伝送可能な信号に変調して電話回線接続部41を介して送信したり、電話回線47から電話回線接続部41を介して入力された信号を受信し、原稿データへ復調するものである。
【0016】
BOX31は、無線LANアンテナ部37およびDCLアンテナ部46を備える。これらは、2.4(GHz)帯の同一周波数帯を使用する装置である。無線LAN送受信部36は、無線LANアンテナ部37を介して、アドホックモードの無線通信202を行う。これにより、MFP10と電話回線47との間のデータ信号の中継が行われる。無線LANアンテナ部37からは、データ信号の通信用の電波と、ビーコン用の電波が送出される。ビーコンは、無線LAN規格(IEEE802.11)の電波である。ビーコンは、定期的(100(ms)ごと)に送信される、管理用フレームである。ビーコンによって、BOX31が存在することが、ネットワークに対してブロードキャストされる。ビーコン用の電波は、データ量が少ない(使用する周波数帯を含有する時間が短い)電波である。一方、データ信号の通信用の電波は、データ量の大きな(使用する周波数帯を含有する時間が長い)電波である。データ信号は、通信エラー時に再送可能な信号である。よってデータ信号の無線通信202では、リアルタイム性が要求されない。
【0017】
また、DCL送受信部45は、DCLアンテナ部46を介して、子機60と無線通信203を行い、子機60aと無線通信203aを行う。これにより、子機60または子機60aと、電話回線47との間の音声信号の中継が行われる。音声信号は、通信エラー時に再送することが出来ない信号である。よって音声信号の無線通信203では、リアルタイム性が必要とされる。
【0018】
また、BOX31の筐体が非常に小さい場合などには、無線LANアンテナ部37とDCLアンテナ部46とが近接して配置されることになる。この場合には、両アンテナ間における、干渉電波の強度が大きくなる。また、高調波による電波干渉が発生しやすくなる。高調波とは、使用帯域の周波数成分に対して、その整数倍の高次の周波数成分のことである。
【0019】
また、データ信号の無線通信には、OSI参照モデルの階層構造に対応した、様々な通信機能(通信プロトコル)が使用される。OSI参照モデルでは、通信プロトコルが、7つの階層に分けて定義されている。各階層は、下位の層から順に、第1層(物理層)、第2層(データリンク層)、第3層(ネットワーク層)、第4層(トランスポート層)、第5層(セッション層)、第6層(プレゼンテーション層)、第7層(アプリケーション層)、である。アプリケーション層に属する通信プロトコルの例としては、HTTP(HyperText Transfer Protocol)、FTP(File Transfer Protocol)などが挙げられる。また、データリンク層に属する通信プロトコルの例としては、管理フレーム(ビーコンなど)が挙げられる。
【0020】
EEPROM35には、ユーザ等によって、着信モードが予め記憶される。着信モードには、F/T(FAX/TEL)着信設定、FAX専用設定、留守設定の3種類の設定がある。F/T着信設定は、着信とともに回線を閉結して着信音を鳴動させる設定である。着信音が鳴動している状態で子機60をオフフックすると、子機60との無線通信203が開始され、外線通話が行われる。FAX専用設定は、着信があると子機を鳴動させずに回線閉結し、FAX受信する設定である。FAX専用設定では、着信回数が「0」に設定される。FAX専用設定では、子機60との間の無線通信203が用いられることはない。留守設定は、着信があると子機60および60aを鳴動させ、所定の回数鳴動させても子機60および60aがオフフックされない場合には、相手先のメッセージを録音開始する設定である。留守設定では、子機60との間の無線通信203および子機60aとの間の無線通信203aが用いられることはない。
【0021】
RAM34には、未転送データフラグが記憶される。未転送データフラグは、MFP10とBOX31との間のデータ信号の転送処理において、未転送とされているデータが残っているか否かを表すフラグである。未転送とされているデータが残っている場合には、未転送データフラグが「データあり」にセットされる。また、未転送データフラグは、データ信号の無線通信202を中断した中断ポイントを示すポインタ情報を含んでいる。ポインタ情報の例としては、データ信号が複数のパケットからなる場合には、どのパケットまで送信済みであるかを示す情報が挙げられる。なお、BOX31のその他の構成は、上述したMFP10の構成と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0022】
子機60の構成について説明する。子機60は、CPU62、ROM63、ボタン入力部68、パネル69、DCL送受信部65、DCLアンテナ部66、入出力ポート64、を主に備えている。なお、子機60のその他の構成は、上述したMFP10およびBOX31の構成と同様である。また、子機60aの構成は、子機60の構成と同様である。よって、ここでは詳細な説明は省略する。
【0023】
分散構成多機能周辺装置1について説明する。分散構成多機能周辺装置1は、BOX31およびMFP10を備えることによって、物理的に分離した構成とされる。これにより、電話回線47のコネクタ部にMFP10を直接に接続する必要がないため、MFP10のレイアウト性を高めることができ、ユーザの利便性を高めることができる。
【0024】
また例えば、分散構成多機能周辺装置1でファクシミリ機能を実行する場合には、MFP10のスキャナ20で生成されたFAXデータが、BOX31を介して電話回線47へ送信される。また、BOX31が電話回線47から受信したFAXデータが、MFP10へ転送され、プリンタ19で印刷される。また、分散構成多機能周辺装置1で電話機能を実行する場合には、子機60または60aと電話回線網100との間の音声データの送受信が、BOX31を介して行なわれる。
【0025】
BOX31での動作を、図2ないし図6のフローを用いて説明する。図2のフローは、BOX31が音声通話処理を実行していない期間中に、繰り返し実行されるフローである。図2のフローでは、外線着信処理(図3)、無線LAN通信処理(図4)、外線発信時の無線LAN停止処理(図6)、の3つの処理について、実行の可否が判断される。なお以下のフローの説明では、説明の簡略化のため、子機60が用いられる場合を説明する。しかし、以下のフローにおいて、子機60aを用いることも可能である。
【0026】
図2のフローにおける、1つ目の処理(外線着信処理)を説明する。S11において、CPU32は、外線着信があるか否かを判断する。着信ありと判断される場合(S11:YES)には、S13へ進み、外線着信処理が行われる。
【0027】
図3を用いて、S13で行われる外線着信処理を説明する。S41において、CPU32は、着信モードを判断する。具体的には、EEPROM35から着信モードの設定を読み出す。着信モードがF/T着信設定である場合には、S43へ進む。S43において、CPU32は、子機60を鳴動させる。
【0028】
S45において、CPU32は、子機60での外線通話開始を検知したか否かを判断する。具体的には、オフフックした旨の信号を子機60から受信したか否かによって、外線通話が開始されたか否かが判断される。外線通話開始が検知されていない場合(S45:NO)にはS45へ戻り待機し、外線通話開始が検知された場合(S45:YES)にはS47へ進む。S47において、CPU32は、外線着信時の無線LAN停止処理を実行する。
【0029】
図5を用いて、外線着信時の無線LAN停止処理を説明する。図5のフローでは、外線着信時に無線通信202を停止する動作が行われる。S105において、CPU32は、回線を閉結する。S111において、CPU32は、無線通信202によってMFP10に電波停止情報を通知する。電波停止情報は、無線LANアンテナ部37からの電波送出を停止する旨を報知するための情報である。これによって、MFP10のCPU11は、アプリケーション層に属するプロトコル(HTTP、FTPなど)を利用した通信が使用できなくなることを認識できる。
【0030】
S112においてCPU32は、電波停止情報に対する応答信号を、MFP10から受信したか否かを判断する。受信していない場合(S112:NO)にはS112へ戻り待機し、受信した場合(S112:YES)にはS113へ進む。
【0031】
S113において、CPU32は、ネットワークグループからBOX31を抜けさせる(Disassociateする)。具体的には、「Disassociate」フレームの管理フレームを用いることで、ネットワーク層以上のデータの送出を停止する。これにより、ネットワーク層以上(ネットワーク層、トランスポート層、セッション層、プレゼンテーション層、アプリケーション層)のプロトコルを使用するデータ送出が停止される。これにより、BOX31とMFC10との間のネットワークからBOX31が抜けるため、BOX31−MFC10間で不要な通信が発生しないようにすることができる。なお、ビーコンはデータリンク層以下のプロトコルが使用される。よって、S112を実行した段階では、無線LANアンテナ部37からのビーコン電波の送出は停止されない。
【0032】
S115において、CPU32は、無線LANアンテナ部37からの電波の送出を完全に停止する。具体的には、データリンク層以下に属するプロトコルを利用した通信を停止する。これにより、ビーコン電波を含む全ての電波が、無線LANアンテナ部37から送出されることが停止される。よって、ビーコン電波によって、子機60での音声通話が影響を受けてしまう事態が防止される。
【0033】
そして、S113とS115を順次実行することで、OSI参照モデルの上位層から順番に通信を停止することができる。よって、無線通信202が使用できなくなることをMFP10が予め認識できるため、通信エラーが発生したとMFP10に誤って認識される事態を防止することができる。
【0034】
S123において、CPU32は、子機60の外線通話処理を行う。具体的には、無線通信203によって、子機60と電話回線47との間の音声信号の中継を行い、音声通話先との音声通話を実現する。
【0035】
S125において、CPU32は、子機60での通話終了を検知したか否かを判断する。検知していない場合(S125:NO)にはS123へ戻り、検知した場合(S125:YES)にはS127へ進む。S127において、CPU32は、全ての子機(子機60および60a)の外線通話が終了状態となったか否かを判断する。全ての子機が終了状態となっていない場合(S127:NO)にはS123へ戻り、終了状態となった場合(S127:YES)にはS128へ進む。
【0036】
S128において、CPU32は、回線を開放する。S129において、CPU32は、無線LANアンテナ部37からのビーコン電波の送出を再開する。ビーコン電波の送出によって、BOX31が存在することをMFP10にブロードキャストすることができる。S131において、CPU32は、ネットワークグループにBOX31を加わらせる(Associateする) 。具体的には、「Associate」フレームの管理フレームを用いることで、ネットワーク層以上のデータの送出を開始する。よって、ネットワーク層以上のプロトコルを用いたTCP/IPの無線通信202が実行可能となる。
【0037】
S133においてCPU32は、無線通信202によって、MFP10に電波送信情報を通知する。電波送信情報は、無線LANアンテナ部37からの電波送出を再開する旨の情報である。これによって、MFP10のCPU11は、アプリケーション層に属するプロトコルを利用した通信が使用できるようになることを認識できる。
【0038】
S135においてCPU32は、電波送信情報に対する応答信号を、MFP10から受信したか否かを判断する。受信していない場合(S135:NO)にはS135へ戻り待機し、受信した場合(S135:YES)にはフローを終了する。そしてS23(図2)へ進む。
【0039】
一方、S41において、EEPROM35から読み出した着信モードがFAX専用設定である場合には、S51へ進む。FAX専用設定で着信した場合には、子機60との間の無線通信203が使用されない。よって、無線LANアンテナ部37から送出される電波を停止する必要がない場合である。
【0040】
S51において、CPU32は、FAXデータを受信する。S53において、CPU32は、子機外線発信要求を検知したか、または無線通信202のエラーの発生を検知したかを判断する。子機外線発信要求は、子機60を用いてユーザが外線通話を開始する旨の要求である。子機外線発信要求および無線通信202のエラーが検知されていない場合(S53:NO)にはS55へ進み、CPU32は、無線通信202を用いてFAXデータをMFP10へ転送する。一方、子機外線発信要求または無線通信202のエラーが検知された場合(S53:YES)には、S57へ進む。S57において、CPU32は、未転送データフラグを「データあり」にセットしてRAM34に記憶させると共に、無線通信202を中断した中断ポイントを示すポインタ情報をRAM34に記憶させる。そして図3のフローを終了し、S23(図2)へ進む。
【0041】
また、S41において、EEPROM35から読み出した着信モードが留守設定である場合には、S61へ進む。S61において、CPU32は、留守録音を実行する。留守設定で着信した場合には、子機60との間の無線通信203が使用されない。よって、無線LANアンテナ部37から送出される電波を停止する必要がない場合である。留守録音が終了すると、図3のフローを終了し、S23(図2)へ進む。
【0042】
図2における、S23以降のフローを説明する。S23において、CPU32は、RAM34に記憶されている未転送データフラグが「データあり」にセットされているか否かを判断する。セットされていない場合(S23:NO)には、S25をスキップしてフローを終了する。一方、セットされている場合(S23:YES)には、S25へ進む。
【0043】
S25において、CPU32は、未転送のデータ信号の通信を再開する。このとき、CPU32は、未転送データフラグに含まれるポインタ情報に基づいて、データ信号の無線通信202を中断ポイントから再開する。未転送のデータ信号を通信し終えると、フローを終了する。
【0044】
図2のフローにおける、2つ目の処理(無線LAN通信処理)を説明する。図2のS11において、外線着信なしと判断される場合(S11:NO)には、S15へ進む。S15において、CPU32は、無線通信202を用いたデータ信号の通信中か否かを判断する。通信中である場合(S15:YES)には、S17へ進み、無線LAN通信処理を実行する。
【0045】
図4を用いて、S17で行われる無線LAN通信処理を説明する。S81において、CPU32は、子機外線発信要求があるか否かを判断する。子機外線発信要求がないと判断される場合(S81:NO)には、S91へ進む。S91において、CPU32は、FAX受信データ要求があるか否かを判断する。FAX受信データ要求は、BOX31が電話回線47から受信したデータを、MFP10へ転送する旨の要求である。FAX受信データ要求がある場合(S91:YES)にはS93に進み、CPU32は、無線通信202を用いてFAXデータをMFP10へ転送する。一方、FAX受信データ要求がない場合(S91:NO)には、FAXデータ以外のデータ信号を通信中であると判断され、フローが終了する。FAXデータ以外のデータ信号の例としては、例えば、BOX31の設定データや、BOX31での通信履歴などが挙げられる。
【0046】
一方、S81において、子機外線発信要求があると判断される場合(S81:YES)には、S83へ進む。S83において、CPU32は、MFP10からBOX31にFAXデータを転送中であるか否かを判断する。転送中でない場合(S83:NO)にはS85をスキップしてS87へ進み、転送中である場合(S83:YES)にはS85へ進む。S85において、CPU32は、未転送データフラグを「データあり」にセットしてRAM34に記憶させると共に、無線通信202を中断した中断ポイントを示すポインタ情報をRAM34に記憶させる。そして、S87へ進む。S87において、CPU32は、外線発信時の無線LAN停止処理を実行する。
【0047】
図6を用いて、S87で行われる、外線発信時の無線LAN停止処理を説明する。S305において、CPU32は、回線を閉結する。S307において、CPU32は、子機60の発信ダイヤル番号を検知したか否かを判断する。検知していない場合(S307:NO)には、子機60がオフフック状態とされただけの場合であると判断され、S305へ戻る。一方、発信ダイヤル番号を検知した場合(S307:YES)には、ユーザが外線発信をする場合であると判断され、S309へ進む。これにより、正しく子機の発信通話を検知した上で、無線LANアンテナ部37からの電波送出を停止する動作へ移行することができる。
【0048】
S309において、CPU32は、リングバックトーン(呼び出し音)を検知したか否かを判断する。検知しない場合(S309:NO)には、電話番号が不明であり、通信相手がいないと判断され、S305へ戻る。一方、検知した場合(S305:YES)には、通信相手がいると判断され、S311以降のステップへ進み、電波を停止する動作へ移行する。これにより、通信相手がいることを確認した上で、無線LANアンテナ部37からの電波送出を停止する動作へ移行することができる。以上より、S307およびS309によって、電波送出を停止する必要がない場合(内線通話のために子機を持ち上げた場合や、子機が外れてしまった場合など)においても、誤って電波送出が停止されてしまう事態を防止できる。よって、不要に無線通信202が途切れてしまうことを防止することができる。
【0049】
なお、図6におけるS311ないしS335のステップの各々は、図5におけるS111ないしS135のステップの各々と同様である。よって、ここでは詳細な説明は省略する。図6の外線発信時の無線LAN停止処理が終了すると、S23(図2)へ進む。S23以降のフローは、前述の動作と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0050】
図2のフローにおける、3つ目の処理(外線発信時の無線LAN停止処理)を説明する。図2のS15において、無線LAN通信中ではないと判断される場合(S15:NO)には、S19へ進む。S19において、CPU32は、子機外線発信要求があるか否かを判断する。子機外線発信要求がないと判断される場合(S19:NO)には、S21をスキップしてS23へ進む。一方、子機外線発信要求がある場合(S19:YES)には、S21へ進み、外線発信時の無線LAN停止処理が行われる。なお、S21で行われる外線発信時の無線LAN停止処理は、前述したS87での処理(図6)と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。図6の外線発信時の無線LAN停止処理が終了すると、S23(図2)へ進む。S23以降のフローは、前述の動作と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0051】
MFP10での動作を、図7のフローを用いて説明する。図7のフローは、子機60を用いた通話期間中に実行されるフローである。S207において、CPU11は、BOX31から電波停止情報を受信したか否かを判断する。受信していない場合(S207:NO)にはS207へ戻り待機し、受信した場合(S207:YES)にはS209へ進む。S209においてCPU11は、電波停止情報に対する応答信号をBOX31へ返信する。S211において、CPU11は、子機通話中のためにMFP10−BOX31間の無線通信202が使用不可状態である旨の警告を、パネル18へ表示する。これにより、データ信号の無線通信202が停止されている旨が、ユーザに通知される。
【0052】
S217において、CPU11は、電波送信情報を受信したか否かを判断する。受信していない場合(S217:NO)にはS211へ戻り、受信した場合(S217:YES)にはS219へ進む。S219において、CPU11は、MFP10−BOX31間の無線通信202の接続が成功したか否かを判断する。通信接続が成功していない場合(S219:NO)にはS211へ戻り、通信接続が成功した場合(S219:YES)にはS220へ進む。
【0053】
S220において、CPU11は、電波送信情報に対する応答信号を、無線通信202を用いてBOX31へ返信する。S221において、CPU11は、無線通信202が使用不可状態である旨の警告の表示を終了し、パネル18を通常の表示状態へ戻す。そしてフローが終了する。
【0054】
第1実施形態に係る分散構成多機能周辺装置1の動作の具体例を、図8のシーケンス図を用いて説明する。図8では、例として、着信モードがF/T着信設定とされている場合に、外信着信が行われた場合を説明する。また、子機60が用いられる場合を説明する。
【0055】
BOX31において、外線着信がありと判断されると(S11:YES)、BOX31は子機60を鳴動させる(S43)。ユーザが子機60の電話に出ると、BOX31は子機外線通話開始を検知し(S45)、回線を閉結する(S105)。BOX31は、無線通信202によって、MFP10に電波停止情報を通知する(S111)。MFP10は、電波停止情報を受信すると(S207:YES)、電波停止情報に対する応答信号をBOX31へ返信する(S209)。またMFP10は、子機通話中のため、MFP10−BOX31間の無線通信202が使用不可状態である旨を、パネル18へ表示する。BOX31は、電波停止情報に対する応答信号をMFP10から受信すると(S112:Y)、ネットワーク層以上のデータの送出を停止する(S113)。よって、BOX31−MFC10間で不要な通信が発生しないようにすることができる。またBOX31は、無線LANアンテナ部37からの電波の送出を完全に停止する(S115)。よって、ビーコン電波を含む全ての電波送出が停止される。
【0056】
ユーザが子機60の電話を切ると、BOX31は通話終了を検知し(S125:Y)、回線を開放する(S128)。BOX31は、無線LANアンテナ部37からのビーコン電波の送出を再開する(S129)。そしてBOX31は、ネットワーク層以上のデータの送出を開始する(S131)。よって、BOX31−MFC10間で、TCP/IPの無線通信202を実行することが可能となる。
【0057】
BOX31は、無線通信202によって、MFP10に電波送信情報を通知する(S133)。MFP10は、電波送信情報を受信すると(S217:YES)、電波送信情報に対する応答信号をBOX31へ返信する(S220)。そしてMFP10は、無線通信202が使用不可状態である旨の表示を解除する(S221)。またBOX31は、電波送信情報に対する応答信号をMFP10から受信すると(S135:Y)、フローを終了する。
【0058】
以上説明した、本実施形態の説明例に係る分散構成多機能周辺装置1の効果を説明する。ビーコンのような小さなデータを送信する電波は、電波の放射が少ないため、電波干渉が発生しにくい。しかし、BOX31の筐体が非常に小さい場合などには、無線LANアンテナ部37とDCLアンテナ部46とが近接して配置される必要がある。この場合には、干渉電波の強度が大きくなる。また、高調波による電波干渉が発生しやすくなる。よって、ビーコンのような放射が少ない電波であっても、電波干渉の影響が無視できなくなる。
【0059】
本願の分散構成多機能周辺装置1では、DCLアンテナ部46を用いた音声通話の開始を検出することに応じて、無線LANアンテナ部37からの電波の送出が停止される。よって、無線LANアンテナ部37からのビーコン用の電波の送出も停止されるため、無線LANアンテナ部37とDCLアンテナ部46が近接している場合においても、電波干渉の発生を防止することができる。これにより、子機60を用いた音声通話において、無線LANアンテナ部37とDCLアンテナ部46との間の電波干渉を抑えることで、通信品質を高品質に維持することが可能となる。
【0060】
また、本願の分散構成多機能周辺装置1では、データ信号の無線通信202を実行中の期間に、子機60での音声通話の開始が検出された場合には、データ信号の通信が中断される。そして、子機60での音声通話の終了後に、中断されていたデータ信号の無線通信202が自動で再開される。よってユーザは、停止されていたデータ信号の送信動作を再開する旨の指示を行なう必要がないため、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0061】
また、本願の分散構成多機能周辺装置1では、MFP10では、電波停止情報を受信すると、データ信号の無線通信202が停止されている旨をパネル18に表示する。これにより、ユーザは、データ信号の無線通信202が停止されたことを知ることができるため、ユーザの利便性を向上させることができる。また、通信エラーによってデータ信号の無線通信202を行うことができないとユーザが誤解することを防止できるため、不要な通信エラーの解析をユーザに行わせてしまう事態を防止できる。
【0062】
また、本願の分散構成多機能周辺装置1では、ポインタ情報により、データ信号の無線通信202を中断した中断ポイントを記憶させることができる。これにより、データ信号の無線通信202を、中断していたポイントから再開することができる。よって、データ信号の通信が中断されるまでにすでに送信されたデータ信号については、重複して送信されることが防止できる。これにより、データ信号の再送時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0063】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0064】
また本実施例では、スキャナ20を動作させて画像データを生成する場合を説明したが、この形態に限られない。画像データが記憶されているメモリカード等の外部記憶装置がスロット部21に接続され、CPU11が外部記憶装置から画像データを読み出してFAXデータを生成する形態であってもよい。
【0065】
また本実施例では、FAXデータを送信する場合を例として説明したが、この形態に限られず、各種のデータを送信する場合においても本願を適用可能である。
【0066】
なお、MFP10は多機能通信装置の一例、BOX31は回線制御装置の一例、無線LANアンテナ部37は第1通信部の一例、DCLアンテナ部46は第2通信部の一例、子機60および60aは無線通信端末の一例、パネル18は表示部の一例、電話回線47は通信回線の一例、未転送データフラグは通信中断情報の一例、RAM34は記憶部の一例、である。
【0067】
また、S115、S315、S85、S57、S111、S311を実行する制御部は送信停止手段の一例である。S123、S323を実行する制御部は音声通話手段の一例である。S129、S329、S25、S133、S333を実行する制御部は送信再開手段の一例である。S113を実行する制御部は第1停止手段の一例である。S115を実行する制御部は第2停止手段の一例である。S211、S221を実行する制御部は表示制御手段の一例である。
【符号の説明】
【0068】
1:分散構成多機能周辺装置、10:MFP、18:パネル、11および32および62:CPU、13および34:RAM、31:BOX、37:無線LANアンテナ部、46:DCLアンテナ部、47:電話回線、60および60a:子機、202および203:無線通信

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ信号を送受信して各種機能処理を行う多機能通信装置と、
音声信号を送受信して音声通話を行う無線通信端末と、
前記多機能通信装置と前記データ信号の無線通信を行う第1通信部、および、前記無線通信端末と前記音声信号の無線通信を行う第2通信部を有し、前記第1通信部を用いて前記多機能通信装置と通信回線との間の前記データ信号の中継を行い、前記第2通信部を用いて前記無線通信端末と前記通信回線との間の前記音声信号の中継を行う回線制御装置と、
を備える通信装置において、
前記回線制御装置は、
前記無線通信端末で音声通話を開始することを検出することに応じて、前記第1通信部からの電波の送出を停止する送信停止手段と、
第2通信部を用いて前記無線通信端末と前記音声信号の無線通信を行うことで、前記無線通信端末と前記通信回線との間の前記音声信号の中継を行い、音声通話先との音声通話を実現する音声通話手段と、
前記音声通話の終了を契機として、前記第1通信部からの電波の送出を再開する送信再開手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記送信停止手段は、
ネットワーク層以上のデータの送出を停止する第1停止手段と、
前記第1通信部からの電波送出を停止する第2停止手段と、を備え、
前記第1停止手段と前記第2停止手段を順次実行することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記送信停止手段は、
前記多機能通信装置との間の前記データ信号の無線通信中に前記音声通話の開始を検出した場合には、前記データ信号の無線通信を中断する旨の通信中断情報を記憶部に記憶させ、
前記送信再開手段は、前記通信中断情報が前記記憶部に記憶されている場合には、前記多機能通信装置との間の前記データ信号の無線通信を再開することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記送信停止手段は、前記第1通信部からの電波の送出を停止するに先立ち、前記第1通信部を用いて電波停止情報を前記多機能通信装置へ送信し、
前記送信再開手段は、前記第1通信部からの電波の送出を再開した後に、前記第1通信部を用いて電波送信情報を前記多機能通信装置へ送信し、
前記多機能通信装置は、前記電波停止情報を受信することに応じて、前記データ信号の無線通信が停止された旨の停止表示を表示部に表示し、前記電波送信情報を受信することに応じて、前記停止表示の前記表示部への表示を終了する表示制御手段を備えることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信中断情報は、前記データ信号の無線通信を中断した中断ポイントを示すポインタ情報を含んでおり、
前記送信再開手段は、前記ポインタ情報に基づいて、前記データ信号の無線通信を前記中断ポイントから再開することを特徴とする請求項3に記載の通信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−234081(P2011−234081A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101970(P2010−101970)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】