説明

通信装置

【課題】クイックメモリ送信において、原稿の1ページ目の送信データの送信完了と、2ページ目の送信データの送信開始との間に発生する待ち時間を短縮させる通信装置を提供する。
【解決手段】通信装置20は、複数ページの原稿を順次読み取り、読み取り動作と並行して、原稿を読み取って得た画像データから前記原稿の送信データを作成し、送信データを記憶する記憶し、少なくとも、原稿の2ページ分の送信データを作成した後に、原稿の送信データの送信を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク通信等による画像データの送信を行うための通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ装置やファクシミリ通信機能を有する画像形成装置には、ユーザにとって利便性の高い様々な機能が備えられている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、自動原稿搬送装置(以下、ADF(Auto Document Feeder)という)に原稿の枚数を予測するADFコントローラを有する画像形成装置が開示されている。このADFコントローラが予測した原稿の枚数等に基づいて、画像形成装置は、原稿の読み取りおよび画像形成を行う前に、原稿の綴じ等の後処理の可否を判断する。
【0004】
特許文献2には、イメージスキャナに装填された原稿のページ数等を検出し、原稿のページ数等から通信時間を算出するファクシミリ装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、原稿を読み取ることで作成された送信データのデータ量から通信時間を算出し、この通信時間と相手先の電話番号などから通信料金を予測するファクシミリ装置が開示されている。
【0006】
特許文献4には、画像読取手段、データ通信手段、ファクシミリ手段及び画像記憶手段の組み合わせによって具現化される諸機能に対して、予め定められた優先順位に基づいて画像形成手段を使用させるようにした画像形成装置が開示されている。この画像形成装置によれば、原稿読み取り中に、画像形成及び画像通信できるようにし、又は、画像形成中に、画像読み取り及び画像通信できるようにし、あるいは、画像通信中に、画像読み取り及び画像形成できるようにすると共に、画像記憶手段を効率良く使用できるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−163139号公報
【特許文献2】特開平2−260870号公報
【特許文献3】特開平6−217105号公報
【特許文献4】特開2000−134391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、次世代ネットワーク(NGN…New Generation Network)を利用した通信装置が開発されている。本明細書におけるNGNとは、インターネットで利用されているIP(Internet Protocol)と呼ばれる通信規約を使って電話回線やデータ通信等を構築した統合ネットワークのことであって、我が国では、2008年3月に商用サービスが開始された通信網のことをいう。このNGNでは、通常、SIP(Session Initiation Protocol)サーバが両端末間の呼制御を行うことで、両端末間のファクシミリ通信や通話などが行われる。
【0009】
このNGNを利用した送信データ等の通信では、G3ファクシミリ通信など、従来のネットワークを利用した通信と比較して、格段に送信データ等の通信速度が高いことが知られている。従来のネットワークを利用した通信では、原稿を読み取ることで原稿の送信データを作成する時間よりも、作成された送信データを送信する時間が長いことが多い。一方、NGNを利用した通信では、上記送信データを作成する時間よりも、送信データを送信する時間が短いことが多い。
【0010】
原稿のあるページを読み取り、そのページの送信データを作成している間に、すでに読み取ることで作成された他のページの送信データを送信する方式、いわゆる、クイックメモリ送信の場合、NGNを利用した通信では、1ページ目の送信データの送信完了と、2ページ目の送信データの送信開始との間に、2ページ目の送信データ作成を含むジョブ生成のための待ち時間が発生する問題があった(図5参照)。
【0011】
また、NGNを利用した通信の場合、NGNの利用料金は、送信される送信データ等のデータ量によって決定されるのではなく、データ送信のための帯域を確保する時間によって決定される。
【0012】
従って、上記待ち時間が発生することによって、データ送信のための帯域を確保する時間が長くなり、NGNの利用料金が増大するといった問題があった。
【0013】
しかしながら、上記特許文献には、上記待ち時間を短縮させるための具体的な手段等が開示されていない。
【0014】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、クイックメモリ送信において、原稿の1ページ目の送信データの送信完了と、2ページ目の送信データの送信開始との間に発生する待ち時間を短縮させる通信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0016】
[1]複数ページの原稿を順次読み取る読取部と、
前記読取部での読み取り動作と並行して、前記読取部で前記原稿を読み取って得た画像データから前記原稿の送信データを作成するデータ作成部と、
前記データ作成部の作成した送信データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている送信データを送信する送信部と、
を備え、
前記送信部は、前記原稿の送信データが少なくとも2ページ分作成された後であって、前記原稿の全てのページの送信データが作成される前に、前記原稿の送信データの送信を開始する
ことを特徴とする通信装置。
【0017】
上記発明では、少なくとも、前記データ作成部が前記原稿の2ページ分の送信データを作成した後に、送信部は原稿の送信データの送信を開始する。
【0018】
したがって、NGNなどの通信速度が速い回線を利用した場合のクイックメモリ送信において、少なくとも、原稿の1ページ目の送信データの送信完了と、2ページ目の送信データの送信開始との間に発生する待ち時間を短縮することができる。
【0019】
[2]前記原稿の全てのページの送信データが作成されるまでの時間を推測する送信データ作成時間推測部と、
前記原稿の全てのページの送信データの送信に要する通信時間を推測する通信時間推測部と、
を備え、
前記送信部は、前記通信時間推測部が推測した前記通信時間と、前記送信データ作成時間推測部が推測した時間とから、前記原稿の送信データの送信を開始するタイミングを決定する
ことを特徴とする[1]に記載の通信装置。
【0020】
[3]前記データ作成部が作成する前記原稿の全てのページの送信データの総データ量を推測するデータ量推測部をさらに有し、
前記送信データ作成時間推測部は、前記原稿の全てのページの送信データが作成されるまでの残りの時間である送信データ作成時間を繰り返し推測し、
前記通信時間推測部は、前記データ量推測部が推測した前記総データ量から前記原稿の全てのページの送信データの送信に要する通信時間を推測し、
前記送信部は、前記通信時間推測部が推測した前記通信時間が、前記送信データ作成時間推測部が推測した最新の送信データ作成時間以上になったとき、前記原稿の送信データの送信を開始する
ことを特徴とする[1]に記載の通信装置。
【0021】
上記発明では、通信時間が残りの送信データ作成時間以上であるときに送信データの通信を開始するので、上記待ち時間を短縮するとともに、原稿の読み取り完了と、送信データの送信完了とをほぼ同時刻にすることができる。
【0022】
[4]さらに、前記原稿の枚数情報を取得する原稿枚数情報取得部を有し、
前記データ量推測部は、前記原稿枚数情報取得部が取得した前記原稿の枚数情報に基づいて、前記原稿の全てのページの送信データの総データ量を推測し、
前記送信データ作成時間推測部は、前記原稿枚数情報取得部が取得した前記原稿の枚数情報に基づいて、前記送信データ作成時間を推測する
ことを特徴とする[2]または[3]に記載の通信装置。
【0023】
上記発明では、原稿の枚数情報を取得するので、より正確に、原稿の全てのページの送信データの総データ量と送信データ作成時間を推測することができる。
【0024】
[5]さらに、前記原稿の種別に関する情報の入力を受け付ける原稿種別情報入力部を有し、
前記データ量推測部は、前記原稿の種別を加味して前記原稿の全てのページの送信データの総データ量を推測し、
前記送信データ作成時間推測部は、前記原稿の種別を加味して前記送信データ作成時間を推測する
ことを特徴とする[4]に記載の通信装置。
【0025】
ここで、原稿の種別は、たとえば、原稿がカラー印刷されているか、または、モノクロ印刷されているか、原稿に写真が含まれているか否か、原稿の解像度、原稿の送信データの符号化方式など、原稿の送信データのデータ量が変化する要因で分類される原稿の種類のことである。
【0026】
上記発明では、原稿の種別を加味して、原稿の送信データの総データ量と送信データ作成時間を推測しているので、より正確に、原稿の送信データの総データ量と送信データ作成時間を推測することができる。
【0027】
[6]前記原稿枚数情報取得部は、前記通信装置の操作者からの前記原稿の枚数情報の入力を受け付ける操作部である
ことを特徴とする[4]または[5]に記載の通信装置。
【0028】
上記発明では、ユーザ等の操作者から原稿の枚数情報を取得するので、より正確に、原稿の送信データの総データ量と送信データ作成時間を推測することができる。
【0029】
ここで、通信装置の操作者は、通信装置のユーザや、管理者などを含む。
【0030】
[7]前記原稿枚数情報取得部は、
前記読取部に載置される原稿の高さを検出する原稿高さ検出部と、
前記原稿高さ検出部が検出した原稿の高さから、前記読取部が未だ読み取っていない原稿の残りの枚数を推測する原稿枚数推測部と、
を有する
ことを特徴とする[4]または[5]に記載の通信装置。
【0031】
上記発明では、読取部に載置されている原稿の高さから、残りの枚数を推測しているので、より正確に、原稿の送信データの総データ量と送信データ作成時間を推測することができる。
【0032】
[8]前記原稿枚数情報取得部は、さらに、前記読取部が前記原稿を読み取ることによって発生する前記読取部に載置されている原稿の高さの変化量を取得し、
前記原稿枚数推測部は、前記原稿高さ検出部が検出した原稿の高さと、前記原稿枚数情報取得部が取得した前記変化量と、この変化量が発生している間に読み取られた原稿の枚数から、前記読取部が未だ読み取っていない原稿の残りの枚数を補正し、
前記データ量推測部は、前記読取部がすでに読み取った前記原稿の枚数と、前記データ作成部がすでに作成した分の送信データのデータ量と、前記原稿枚数推測部が補正した前記原稿の残りの枚数から、前記総データ量を補正し、
前記通信時間推測部は、前記データ量推測部が補正した総データ量から、前記通信時間を補正する
ことを特徴とする[7]に記載の通信装置。
【0033】
上記発明により、原稿枚数推測部は、読取部が原稿を読み取る毎に、読取部が未だ読み取っていない原稿の残りの枚数を補正することができる。また、データ量推測部は、補正された原稿の残りの枚数などから、原稿の全てのページの送信データの総データ量を補正することができる。さらに、通信時間推測部は、前記データ量推測部が補正した総データ量から、前記通信時間を補正することができる。
【0034】
[9]前記原稿高さ検出部は、前記読取部に設けられている
ことを特徴とする[8]に記載の通信装置。
【0035】
[10]前記通信装置の操作者から、送信開始タイミングとして、前記データ作成部による送信データ作成済みの原稿のページ数、もしくは、前記原稿の全てのページ数に対する前記送信データ作成済みの原稿のページ数の割合の指定を受け付ける通信開始時期設定部を有し、
前記送信部は、前記データ作成部による送信データ作成済みの原稿のページ数、または、前記割合が、前記通信開始時期設定部で設定された送信開始タイミングになったとき、前記原稿の送信データの送信を開始する
ことを特徴とする[1]乃至[9]のいずれか1項に記載の通信装置。
【0036】
[11]前記通信装置は、ITU−T勧告T.38に準拠したファクシミリ通信を行う
ことを特徴とする[1]乃至[10]のいずれか1項に記載の通信装置。
【0037】
ITU−T勧告T.38に準拠したファクシミリ通信とは、ITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector:国際電気通信連合電気通信標準化セクタ)勧告T.38で規定されたファクシミリ伝送手順に関するプロトコル制御を実行し、ファクシミリ通信における送信データの送受信を行うことである。
【0038】
[12]前記送信データの送信中に通信エラーが発生した後も、前記読取部によって前記原稿を読み取り、前記データ作成部でその送信データを作成して前記記憶部に記憶する処理を継続して行い、
前記送信部は、リダイヤルによって相手側の通信装置との通信が回復した後に、前記通信エラーの発生後に作成した前記送信データを送信する
ことを特徴とする[1]乃至[11]のいずれか1項に記載の通信装置。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る通信装置によれば、NGNなどの通信速度が速い回線を利用した場合のクイックメモリ送信において、少なくとも、原稿の1ページ目の送信データの送信完了と、2ページ目の送信データの送信開始との間に発生する待ち時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】NGNにおけるSIPセッションを示す説明図である。
【図2】NGNにおいて、発端末のユーザがSIPセッション内のメディアストリームを利用するときに課金される料金例を示す表である。
【図3】本実施形態に係る通信装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】送信データの通信開始時刻を設定する基本的な手順を示すフローチャートである。
【図5】NGNを利用したクイックメモリ送信における、原稿の読み取り、ジョブ生成および通信時間を示すタイムチャートである。
【図6】読取部の自動搬送装置の断面図である。
【図7】原稿高さ検知機構を概略的に示した説明図である。
【図8】原稿枚数を自動的に推測する手順を示すフローチャートである。
【図9】送受信方法設定を行うための画面例である。
【図10】原稿枚数指定選択を行うための画面例である。
【図11】原稿枚数情報を入力するための画面例である。
【図12】送受信方法設定を行うための画面例である。
【図13】通信開始枚数指定選択を行うための画面例である。
【図14】通信開始枚数を指定するための画面例である。
【図15】管理者メニューにおいて機能設定を変更するための画面例である。
【図16】送信開始時期指定選択を行うための画面例である。
【図17】送信開始時期を指定するための画面例である。
【図18】送受信方法設定を行うための画面例である。
【図19】原稿種別指定選択を行うための画面例である。
【図20】原稿の種別を指定するための画面例である。
【図21】送信データの通信開始時刻を補正する手順を示すフローチャートである。
【図22】通信エラー発生時における通信装置のリダイヤル動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0042】
図1は、NGN1におけるSIPセッションを示す説明図である。図1では、NGN1上にSIPサーバ2が存在している。このSIPサーバ2を介して、SIPと呼ばれるプロトコルに従って、発端末3と着端末4との間にSIPセッション5が確立される。本実施形態では、発端末3および着端末4として、後述する通信装置20が使用される。
【0043】
SIPセッション5には、種別の異なるメディアセッションが、最大5本存在する。各メディアセッションの帯域の上限は、1Mbpsである。図1の例では、SIPセッション5には、音声用メディアストリーム6と、映像用メディアストリーム7とデータ用メディアストリーム8が存在する。
【0044】
発端末3と着端末4との間にSIPセッション5が確立されるときに、発端末3は、音声データや映像データなどのメディアの種類と、データ通信に使用される帯域をSIPサーバ2に通知する。SIPサーバ2は、発端末3からの通知に基づいて、通知されたメディアの種類に対応するメディアストリーム内の上記帯域を確保する。各メディアストリームでは、確保された帯域内で、データが発端末3から着端末4へとルータ9を介して送信される。
【0045】
図2は、NGN1において、発端末3のユーザがSIPセッション内のメディアストリームを利用するときに課金される料金例を示す表である。
【0046】
通常、NGN1では、メディアストリームを利用する際に課金される料金は、送信されるデータ量によって決定されるのではなく、データ送信に使用される帯域の広狭と、当該帯域を確保する時間によって決定される。図2の例では、確保される帯域が512kbps〜1Mbpsである場合、料金は30秒あたり2円である。送信されるデータの量およびネットワークの利用料金を考慮すると、ファクシミリ通信における送信データの送信に使用される帯域は、通常、64kbps〜1Mbpsであることが好ましい。
【0047】
図3は、本実施形態に係る通信装置20の概略構成を示すブロック図である。本実施形態では、通信装置20は、NGNを利用した通信であって、ITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector:国際電気通信連合電気通信標準化セクタ)勧告T.38で規定されたファクシミリ伝送手順に関するプロトコル制御を実行し、ファクシミリ通信における画像データの送受信を行う。
【0048】
通信装置20は、この通信装置20の動作を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)21と、このCPU21に接続されたROM(Read Only Memory)22と、RAM(Random Access Memory)23と、HDD(Hard Disk Drive)24と、入出力バッファ25と、表示部26と、操作部27と、ネットワークI/F(Interface)部28と、読取部29とを備えている。
【0049】
CPU21は、OS(Operating System)プログラムをベースとし、その上で、ミドルウェアやアプリケーションプログラムなどを実行する。また、CPU21は、読取部29が読み取ることで得られた原稿の画像データから、相手側の通信装置20へ送信するための送信データを作成するとともに、この送信のためのジョブを生成する。また、CPU21は、後述する原稿の送信データの総データ量や、残りの送信データ作成時間、送信データの通信時間を推測し、推定した総データ量等に基づいて送信データの通信開始時刻を設定する。
【0050】
ROM22には、各種のプログラムが格納されており、これらのプログラムに従ってCPU21が各種処理を実行することで通信装置20の各機能が実現される。
【0051】
RAM23は、CPU21がプログラムに基づいて処理を実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリや画像データを格納する画像メモリなどとして使用される。
【0052】
HDD24は、各種の保存データを格納するほか、入力された各種のデータなども保存する。HDD24内には、送信データを保存するための内部保存用のBOX(フォルダ)が作成される。
【0053】
入出力バッファ25は、通信装置20内の各部でデータがやり取りされるときの処理速度や転送速度の差を補うために、入力されたデータや出力するデータを一時的に記憶するバッファ機能を果たす。
【0054】
表示部26は、液晶ディスプレイ(LCD…Liquid Crystal Display)などで構成され、各種の操作画面、設定画面などを表示する機能を果たす。
【0055】
操作部27は、スタートボタン、ストップボタン、テンキーなどの各種のボタン類と、表示部26の表面に設けられて押下された座標位置を検出するタッチパネルなどで構成され、ユーザが通信装置20に対して行う各種の操作を受け付ける。また、操作部27は、ユーザ等から原稿の枚数情報の入力、送信データの送信開始タイミングの入力、原稿の種別に関する情報の入力等を受け付ける。
【0056】
ネットワークI/F部28は、NGN1などのネットワークを通じて情報処理端末やサーバなどと通信を行う際のインターフェースとしての機能を果たす。
【0057】
読取部29は、原稿を光学的に読み取って画像データを取得する。読取部29は、たとえば、原稿に光を照射する光源と、その反射光を受けて原稿を幅方向に1ライン分読み取るラインイメージセンサと、ライン単位の読取位置を原稿の長さ方向に順次移動させる移動手段と、原稿からの反射光をラインイメージセンサに導いて結像させるレンズやミラーなどからなる光学経路と、ラインイメージセンサの出力するアナログ画像信号をデジタルの画像データに変換する変換部などを備えて構成される。また、読取部29には、原稿の枚数を検知するための原稿枚数検知部30が備えられている。
【0058】
また、通信装置20は、その他に、画像データに対して各種の画像処理を施す画像処理部(図示せず)や、記録紙上に画像を形成するプリンタ部(図示せず)を有する。
【0059】
次に、原稿の送信データを通信するタイミングの設定手順について説明する。
【0060】
図4は、送信データの通信開始時刻を設定する基本的な手順を示すフローチャートである。
【0061】
まず、ユーザが読取部29のトレイ40(図6参照)に原稿を載置するとき、ユーザが操作部27に原稿の枚数を入力するか、読取部29に備えられる原稿枚数検知部30が原稿の高さ(厚さ)を検知することなどによって、通信装置20は原稿の枚数情報を取得する(ステップS101)。
【0062】
CPU21は、ユーザや通信装置20の管理者等が予め原稿の送信データの通信開始タイミングを設定しているか否かを判断する(ステップS102)。上記通信開始タイミングの設定については後述する。
【0063】
上記通信開始タイミングが設定されていないとCPU21が判断すると(ステップS102;No)、読取部29は原稿の読み取りを開始する(ステップS103)。
【0064】
読取部29が原稿の読み取りを行っている間、CPU21は、読取部29がすでに読み取って得られた画像データから、相手側の通信装置20へ送信するための送信データを作成する。そして、CPU21は、その送信データのデータ量を算出し、算出した上記データ量と、ステップS101で取得した原稿の枚数情報などから、原稿の全てのページの送信データの総データ量を推測する(ステップS104)。具体的な総データ量の推測方法については後述する。
【0065】
CPU21は、推測した上記総データ量から、原稿の全てのページの送信データの通信時間を推測する(ステップS105)。
【0066】
さらに、CPU21は、原稿の全てのページの送信データを作成するのに要する残りの送信データ作成時間を推測する(ステップS106)。
【0067】
CPU21は、上記推測した通信時間が上記残り送信データ作成時間以上であると判定したとき(ステップS107;Yes)、原稿の送信データの送信を開始するよう自装置を制御する(ステップS110)。一方、CPU21は、上記推測した通信時間が上記残りの送信データ作成時間より短いと判定したとき(ステップS107;No)、ステップS103〜S107の工程を繰り返し実行する。
【0068】
ステップS102において、上記通信開始タイミングが設定されているとCPU21が判断すると(ステップS102;Yes)、ステップS103と同様に、読取部29は原稿の読み取りを開始する(ステップS108)。
【0069】
読取部29が原稿の読み取りを行っている間、CPU21は、設定された通信開始タイミングが到来するか否かを監視する(ステップS109;No)。
【0070】
CPU21は、上記通信開始タイミングが到来したと判断すると(ステップS109;Yes)、原稿の送信データの送信を開始するよう自装置を制御する(ステップS110)。
【0071】
図5は、NGN1を利用したクイックメモリ送信における、原稿の読み取り、ジョブ生成および通信時間を示すタイムチャートである。
【0072】
また、図5では、本実施形態のクイックメモリ送信との比較のため、従来のクイックメモリ送信における通信時間もあわせて示されている。
【0073】
読取部29が原稿の1ページ目を読み取る間に、CPU21は、この1ページ目の送信データ作成を含む、1ページ目の送信データの送信に関するジョブの生成を開始する。
【0074】
従来のクイックメモリ送信では、この1ページ目の送信データの送信に関するジョブの生成が終了した時点で、1ページ目の送信データの送信が開始される。
【0075】
NGN1を利用したクイックメモリ送信においては、G3ファクシミリ通信など、従来のネットワークを利用した通信と比較して、通信速度が高いので、送信データの送信時間は、送信データ作成を含むジョブ生成時間よりも短くなる。したがって、従来のクイックメモリ送信では、1ページ目の送信データの送信完了と、2ページ目の送信データの送信開始との間に、2ページ目の送信データ作成のための待ち時間が発生する。
【0076】
さらに、従来のクイックメモリ送信では、2ページ目の送信データの送信に関するジョブ生成以後も同様に、送信データの送信完了と次ページの送信データの送信開始との間に、同様の待ち時間が発生する。
【0077】
一方、本実施形態の通信装置20は、CPU21が推測した通信時間が残りの送信データ作成時間以上であると判定するまで、送信データの送信を行わない。したがって、通信装置20は、1ページ目の送信データの送信開始の時刻を従来のクイックメモリ送信よりも遅らすことができ、上記待ち時間を短縮することができる。
【0078】
その結果、NGN1内の帯域を確保する時間を短縮することができるので、上述のように、NGN1の利用料金を低く抑えることができる。
【0079】
次に、原稿の枚数情報の取得方法について説明する。まず、原稿の枚数情報を自動で取得する方法について説明する。
【0080】
図6は、読取部29の自動搬送装置の断面図である。図7(a)および(b)は、原稿高さ検知機構を概略的に示した説明図である。
【0081】
読取部29は、原稿を載置するためのトレイ40と、原稿を1枚ごとに原稿読取位置や、原稿排出位置へと自動搬送するための複数のローラ41を備える。また、上述のように、読取部29は、原稿枚数検知部30を備えている。この原稿枚数検知部30は、LED(Light Emitting Diode)30aと、ラインセンサ30bを有する。
【0082】
LED30aは、トレイ40の下方に備えられている。ラインセンサ30bは、原稿の重なり方向に沿うように、トレイ40の原稿搬送方向の先端側に配置されており、LED30aからの光を受光する。原稿枚数検知部30は、ラインセンサ30bがLED30aからの光を受光する幅(受光幅)やこの受光幅の変化量から、トレイ40に載置される原稿の枚数を検知することができる。
【0083】
図7(a)は、読取部29が原稿を読み取る前の状態の原稿枚数検知部30を示す。
【0084】
原稿がトレイ40に載置されるとき、トレイ40は、原稿の最上の面が規制板に到達するように上方に移動する。これにより、ラインセンサ30bの受光幅は、図7(a)のように狭くなる。原稿枚数検知部30は、この狭くなった受光幅により、原稿の高さ(厚さ)を検知する。
【0085】
読取部29が原稿の読み取りを開始すると、トレイ40に載置されている原稿の枚数が減少する。この原稿の枚数の減少に伴って、図7(b)のように、トレイ40が上方へ移動し、上記受光幅は増加する。原稿枚数検知部30がこの受光幅の増加量を検知すると、CPU21は、受光幅の増加量と、読取部29がすでに読み取った原稿の枚数から、原稿の1枚当たりの厚さと、読取部29が未だ読み取っていない残りの原稿の枚数を推測する。さらに、CPU21は、推測した原稿の1枚当たりの厚さと、読取部29による読取開始前の原稿枚数検知部30が検知した原稿の高さ(厚さ)から、原稿全体の総枚数を推測する。
【0086】
図8は、原稿枚数を自動的に推測する手順を示すフローチャートである。
【0087】
まず、原稿枚数検知部30は、読取部29が原稿を読み取る前に、原稿の高さを検知し、この原稿の高さを初期値としてRAM23等に一時保存する(ステップS201)。
【0088】
CPU21は、読取部29が現時点で読み取ろうとする原稿のページが1枚目か否かを判断する(ステップS202)。
【0089】
CPU21は、このページが1枚目であると判断すると(ステップS202;Yes)、読取部29は、原稿の読み取りを開始する(ステップS203)。
【0090】
その後、CPU21は、予めROM22などに記憶されている標準的な紙の厚さを引用し、読取部29が未だ読み取っていない残りの原稿の枚数を算出する(ステップS204)。
【0091】
CPU21は、ステップS203において読取部29が読み取った原稿のページが最終ページであるか否かを判断する(ステップS209)。
【0092】
CPU21は、このページが最終ページであると判断したとき(ステップS209;Yes)、原稿枚数を推測する手順を終了する。一方、CPU21は、このページが最終ページでないと判断したとき(ステップS209;No)、ステップS202へ戻る。
【0093】
CPU21は、読取部29が現時点で読み取ろうとする原稿のページが1枚目でないと判断すると(ステップS202;No)、読取部29は、当該ページの読み取りを開始する(ステップS205)。
【0094】
読取部29が当該ページをトレイ40から搬送した後、原稿枚数検知部30は、現時点での原稿の高さを検知し、この原稿の高さをRAM23等に一時保存する(ステップS206)。
【0095】
また、原稿枚数検知部30は、トレイ40に載置される原稿の高さの変化量を検知する。あるいは、CPU21は、原稿枚数検知部30がステップS201で取得した初期値と、ステップS206で検知した現時点での原稿の高さから、上記変化量を算出する。さらに、CPU21は、上記変化量から原稿の1枚当たりの紙厚を算出する(ステップS207)。具体的には、CPU21は、次の式(1)から原稿の1枚当たりの紙厚を算出する。
(ステップS201で取得した「初期値」−ステップS206で検知した「原稿の高さ」)÷(読取部29がすでに読み取った原稿の枚数) …(1)
【0096】
CPU21は、CPU21がステップS207で算出した原稿の1枚当たりの紙厚と、原稿枚数検知部30がステップS206で検知した現時点での原稿の高さから、読取部29が未だ読み取っていない残りの原稿の枚数を算出する(ステップS208)。具体的には、CPU21は、次の式(2)から上記残りの原稿の枚数を算出する。
(ステップS206で検知した「原稿の高さ」)÷(ステップS207で算出した「原稿の1枚当たりの紙厚」) …(2)
【0097】
さらに、CPU21は、必要に応じて、原稿枚数検知部30がステップS201で取得した初期値と、CPU21がステップS207で算出した原稿の1枚当たりの紙厚から、原稿全体の総枚数を算出する。
【0098】
CPU21は、このページが最終ページでないと判断したとき(ステップS209;No)、ステップS202へ戻る。一方、CPU21は、このページが最終ページであると判断したとき(ステップS209;Yes)、原稿枚数を推測する手順を終了する。
【0099】
また、上記実施形態では、原稿の枚数は、LED30aとラインセンサ30bを使用して求められたが、原稿の枚数の算出方法はこれに限らない。
【0100】
たとえば、原稿給紙トレイを上昇させるためのリフトアップモータの駆動パルス数から原稿の枚数を算出する方法がある。これによると、原稿上面が原稿給紙ローラに圧接される上限センサを遮光するまで、リフトアップモータが原稿給紙トレイを上昇させる。このときのリフトアップモータの駆動パルス数から原稿の厚さが算出される。
【0101】
その後、原稿が給紙されるごとに、モータの駆動によりトレイがさらに上昇する。原稿が所定枚数給紙されると、この枚数と駆動パルス数からトレイの上昇量が算出される。また、算出された上昇量から、原稿の1枚当たりの紙厚が算出される。そして、この算出された1枚当たりの紙厚と、上記原稿の厚さから、原稿の枚数が算出される。
【0102】
また、その他に、原稿にRFID(Radio Frequency Identification)付きの用紙を使用することで原稿枚数情報を取得してもよい。また、ファクシミリ通信であれば、原稿の最初のページに送付票が付されることが多いので、この送付票に記載のページ情報をOCR(Optical Character Reader)で読み取ることで原稿枚数情報を取得してもよい。さらに、原稿に記載されているページ番号をOCRで読み取ることで原稿枚数情報を取得してもよい。
【0103】
次に、ユーザが原稿枚数情報を入力することで、当該原稿枚数情報を取得する方法について説明する。
【0104】
図9から図11は、原稿枚数情報を入力するための画面遷移例である。これら画面は、表示部26に表示される。また、ユーザは、操作部27を使用して、原稿枚数情報や通信を行うのに必要な設定を入力する。
【0105】
図9は、送受信方法設定を行うための画面例である。ユーザは、送受信方法として、クイックメモリ送信ボタン50を押下することによりクイックメモリ送信を選択し、OKボタン51を押下することによりクイックメモリ送信を確定する。その後、表示部26は、図10のような画面を表示する。
【0106】
図10は、原稿枚数指定選択を行うための画面例である。ユーザは、原稿枚数指定を行うために、すなわち、原稿枚数情報を入力するために、「する」と表示されたボタン52を押下する。そして、ユーザは、原稿枚数指定を確定するためにOKボタン53を押下する。その後、表示部26は、図11のような画面を表示する。
【0107】
図11は、原稿枚数情報を入力するための画面例である。ユーザは、操作部27に設けられるテンキーなどで、送信データとして送信される原稿の枚数を入力する。そして、ユーザは、入力した原稿の枚数を確定するために、OKボタン54を押下する。その後、表示部26は、通信設定のための画面を表示する。
【0108】
この原稿枚数の入力によって、通信装置20は当該原稿の送信データの送信時間を推測することができる。さらに、通信装置20は、クイックメモリ送信などを行うとき、発信元記録の「ページ番号」の部分に原稿の総枚数(たとえば、「ページ番号/総枚数」など)を表示することができる。
【0109】
次に、通信開始タイミングの設定方法について説明する。まず、ユーザによるワンタイム指定における通信開始タイミングの設定方法について説明する。ここでは、CPU21が原稿の特定のページの送信データを作成したときに原稿の送信データの送信を開始するように、ユーザが通信装置20に設定する場合について説明する。この場合、ユーザは、通信開始タイミングとして、その特定のページ、すなわち、通信開始枚数を指定する。
【0110】
図12から図14は、通信開始タイミングとして、通信開始枚数を指定するための画面遷移例である。
【0111】
図12は、送受信方法設定を行うための画面例である。図12は、図9とほぼ同様である。また、図12に関する説明も、図9に関するものと同一であるので、図12に関する詳細な説明を省略する。
【0112】
図13は、通信開始枚数指定選択を行うための画面例である。ユーザは、通信開始枚数指定を行うために、通信開始枚数指定ボタン55を押下する。そして、ユーザは、通信開始枚数指定を確定するためにOKボタン56を押下する。その後、表示部26は、図14のような画面を表示する。
【0113】
図14は、通信開始枚数を指定するための画面例である。ユーザは、操作部27に設けられるテンキーなどで、通信開始枚数を入力する。そして、ユーザは、入力した通信開始枚数を確定するために、OKボタン57を押下する。その後、表示部26は、通信設定のための画面を表示する。
【0114】
これにより、図4のステップS102で、CPU21は通信開始タイミングの指定があると判断する。また、ステップS109において、CPU21は、通信開始タイミングが到来したと判断すると、すなわち、CPU21がユーザによって指定された通信開始枚数に対応するページの送信データを作成したと判断すると、原稿の送信データの送信を開始するように自装置を制御する。
【0115】
次に、通信装置20の管理者による通信開始タイミングの設定方法について説明する。ここでは、読取部29が原稿全体に対して特定の割合だけ送信データを作成したときに原稿の送信データの送信を開始するように、管理者が通信装置20に設定する場合について説明する。この場合、管理者は、通信開始タイミングとして、その特定の割合、すなわち、通信開始時期を指定する。
【0116】
図15から図17は、通信開始タイミングとして、通信開始時期を指定するための画面遷移例である。
【0117】
図15は、管理者メニューにおいて機能設定を変更するための画面例である。管理者は、クイックメモリ送信に関する設定を行うので、クイックメモリ送信設定ボタン58を押下することによりクイックメモリ送信設定を選択する。そして、管理者は、OKボタン59を押下することによりクイックメモリ送信設定を確定する。その後、表示部26は、図16のような画面を表示する。
【0118】
図16は、送信開始時期指定選択を行うための画面例である。管理者は、送信開始時期指定を行うために、送信開始時期指定ボタン60を押下する。そして、ユーザは、送信開始時期指定を確定するためにOKボタン61を押下する。その後、表示部26は、図17のような画面を表示する。
【0119】
図17は、送信開始時期を指定するための画面例である。ユーザは、操作部27に設けられるテンキーなどで、送信開始時期を入力する。そして、ユーザは、入力した送信開始時期を確定するために、OKボタン62を押下する。その後、表示部26は、管理者メニューの画面を表示する。
【0120】
これにより、図4のステップS102で、CPU21は通信開始タイミングの指定があると判断する。また、ステップS109において、CPU21は、通信開始タイミングが到来したと判断すると、すなわち、管理者によって指定された送信開始時期である特定の割合だけCPU21が原稿の送信データを作成したと判断すると、通信装置20に原稿の送信データの送信を開始するように自装置を制御する。
【0121】
次に、原稿の種別の指定方法について説明する。ここで、原稿の種別とは、原稿の送信データのデータ量が変化する要因で分類される原稿の種類のことである。本実施形態では、原稿がカラーおよび/またはモノクロ印刷されているか、原稿に文字および/または写真が含まれているか、原稿の解像度によって、原稿の種別が指定される。この原稿の種別に関する情報から、より正確に、原稿の全てのページの送信データの総データ量と、原稿の全てのページの送信データの作成に要する残りの送信データ作成時間を推測することができる。
【0122】
図18から図20は、原稿の種別を指定するための画面遷移例である。
【0123】
図18は、送受信方法設定を行うための画面例である。図18は、図9とほぼ同様である。また、図18に関する説明も、図9に関するものと同一であるので、図18に関する詳細な説明を省略する。
【0124】
図19は、原稿種別指定選択を行うための画面例である。ユーザは、原稿種別指定を行うために、原稿種別指定ボタン63を押下する。そして、ユーザは、原稿種別指定を確定するためにOKボタン64を押下する。その後、表示部26は、図20のような画面を表示する。
【0125】
図20は、原稿の種別を指定するための画面例である。ユーザは、操作部27を使用して、原稿の種別を入力する。図20の例では、デフォルトとして、CPU21が原稿の送信データの総データ量を最も小さく推定する原稿の種別のパラメータが選択されている。ユーザは、原稿の種別を入力した後、原稿の種別を確定するためにOKボタン65を押下する。その後、表示部26は、通信設定のための画面を表示する。
【0126】
次に、原稿の送信データの通信開始時刻の補正手順について説明する。ここでは、ユーザによる上記通信開始枚数の指定および管理者による上記通信開始時期の指定がない場合についての通信開始時刻の補正手順を説明する。
【0127】
図21は、送信データの通信開始時刻を補正する手順を示すフローチャートである。
【0128】
まず、ユーザが読取部29のトレイ40に原稿を載置するとき、ユーザが操作部27に原稿の枚数情報を入力するか、読取部29に備えられる原稿枚数検知部30が原稿の高さ(厚さ)を検知することによって、通信装置20は原稿の枚数情報を取得する(ステップS301)。
【0129】
CPU21は、読取部29が現時点で読み取ろうとする原稿のページが1枚目か否かを判断する(ステップS302)。
【0130】
CPU21は、このページが1枚目であると判断すると(ステップS302;Yes)、読取部29は、原稿の読み取りを開始する(ステップS303)。
【0131】
その後、CPU21は、図20の画面例からユーザが指定した原稿の種別に基づいて、標準的な1枚当たりの送信データのデータ量を引用する(ステップS304)。また、ステップS301において、原稿枚数検知部30が原稿の高さ(厚さ)を検知することによって、通信装置20が原稿の枚数情報を取得した場合、さらに、図8のステップS204のように、CPU21は残りの原稿枚数を算出する。
【0132】
CPU21は、ステップS304で引用した標準的な1枚当たりの送信データのデータ量と、ステップS303で読取部29が原稿の1ページ目を読み取って得られた画像データから作成された送信データのデータ量と、読取部29が未だ読み取っていない残りの原稿枚数から、原稿全体の送信データの総データ量を算出する(ステップS310)。具体的には、CPU21は、次の式(3)から上記総データ量を算出する。
(すでに作成した分の送信データのデータ量)+(読取部29が未だ読み取っていない残りの原稿枚数)×(1枚当たりの送信データのデータ量) …(3)
【0133】
CPU21は、ステップS310で算出した上記総データ量から、原稿の全てのページの送信データの通信時間を算出する(ステップS311)。具体的には、CPU21は、次の式(4)から上記通信時間を算出する。
(上記総データ量)÷(通信速度) …(4)
【0134】
CPU21は、原稿の全てのページの送信データを作成するのに要する残りの送信データ作成時間を推測する。具体的に、CPU21は、CPU21の送信データ作成能力、上述した読取部29が未だ読み取っていない残りの原稿の枚数、図20の画面例からユーザが指定した原稿の種別などに基づいて、残りの送信データ作成時間を算出する。さらに、CPU21は、上記算出した通信時間が上記残りの送信データ作成時間以上であるか否かを判断する(ステップS312)。
【0135】
CPU21は、上記算出した通信時間が上記残りの送信データ作成時間より短いと判断したとき(ステップS312;No)、ステップS302へ戻る。
【0136】
CPU21は、読取部29が現時点で読み取ろうとする原稿のページが1枚目でないと判断すると(ステップS302;No)、読取部29は、当該ページの読み取りを開始する(ステップS305)。
【0137】
CPU21は、原稿枚数予測処理を行う(ステップS306)。ステップS301においてユーザが原稿枚数情報を入力した場合、CPU21は、この原稿枚数情報に基づいて、読取部29が未だ読み取っていない原稿の残りの枚数を取得する。
【0138】
一方、ステップS301において、原稿枚数検知部30が原稿の高さ(厚さ)を検知することによって、通信装置20が原稿の枚数情報を取得した場合、図8に示されたステップS206からS208までの工程を行うことで、CPU21は上記残りの原稿の枚数を推測する。
【0139】
CPU21は、読取部29がステップS305において読み取ることで得られた当該ページの画像データから送信データを作成し、この送信データの送信に関するジョブの生成を開始する。さらに、CPU21は、当該ページの送信データのデータ量を算出する(ステップS307)。
【0140】
CPU21は、すでに作成した分の原稿の送信データのデータ量を算出する(ステップS308)。
【0141】
CPU21は、ステップS308において算出した上記データ量から、1枚当たりの送信データのデータ量を算出する(ステップS309)。具体的には、CPU21は、次の式(5)から1枚当たりの送信データのデータ量を算出する。
(すでに作成した分の原稿の送信データのデータ量)÷(読取部29がすでに読み取った原稿の枚数) …(5)
【0142】
CPU21は、再びステップS310において、上記式(3)を使って原稿全体の送信データの総データ量を算出する。このとき、すでに作成した分の送信データのデータ量については、ステップS308においてCPU21が算出したものが使用される。1枚当たりの送信データのデータ量については、ステップS309においてCPU21が算出したものが使用される。さらに、読取部29が未だ読み取っていない残りの原稿枚数については、ステップS306においてCPU21が算出したものが使用される。これにより、CPU21は、原稿全体の送信データの総データ量を補正する。
【0143】
また、CPU21は、ステップS311において、上記式(4)を使って通信時間を算出する。このとき、上記総データ量については、ステップS310において補正した上記総データ量が使用される。これにより、CPU21は、上記総データ量を補正する。
【0144】
さらに、CPU21は、残りの送信データ作成時間を補正し、上記補正した通信時間が上記残りの送信データ作成時間以上であるか否かを判断する(ステップS312)。このとき、CPU21は、ステップS306で推測した原稿の残りの枚数を使って、残りの送信データ作成時間を補正する。
【0145】
CPU21は、上記推測した通信時間が上記残りの送信データ作成時間より短いと判定したとき(ステップS312;No)、ステップS302〜S312の工程を繰り返し実行する。一方、CPU21は、上記推測した通信時間が上記残りの送信データ作成時間以上であると判定したとき(ステップS312;Yes)、原稿の送信データの送信を開始するよう通信装置20に指示する(ステップS313)。その後、CPU21は、原稿の送信データの通信開始時刻の補正手順を終了させる。
【0146】
なお、図21に示された手順のステップS309において、CPU21は、原稿1枚当たりの送信データのデータ量を上記式(5)を使用して算出したが、図20の画面に入力された原稿の種別に基づいて、上記1枚当たりの送信データのデータ量を算出してもよい。
【0147】
次に、原稿の送信データの通信開始時または通信中に通信エラーが発生した場合における通信装置20のリダイヤル動作について説明する。
【0148】
図22は、通信エラー発生時における通信装置20のリダイヤル動作を示すフローチャートである。
【0149】
CPU21は、相手側の通信装置20との通信にエラーが発生しているか否かを監視する(ステップS401;No)。一方、CPU21は、通信エラーが発生したと判断したとき(ステップS401;Yes)、読取部29が未だ読み取っていない原稿の残りのページが存在するか否かを判断する(ステップS402)。
【0150】
CPU21は、未だ読み取っていない原稿の残りのページが存在すると判断した場合(ステップS402;Yes)、読取部29は、引き続き、残りのページを読み取り、その送信データを作成する(ステップS403)。
【0151】
CPU21は、上記残りの原稿の枚数がN枚(たとえば、10枚)以上か否かを判断する(ステップS404)。CPU21は、残りの枚数がN枚以上であると判断すると(ステップS404;Yes)、読取部29が原稿をN枚読み取った後に、相手側の通信装置20へのリダイヤルの指示を行う(ステップS405)。上記Nは、予め通信装置20に設定されており、管理者等はこの設定を変更することができる。
【0152】
CPU21は、相手側の通信装置20との接続が成功したか否かを判断する(ステップS406)。CPU21は、相手側の通信装置20との接続が成功したと判断すると(ステップS406;Yes)、CPU21は、ネットワークI/F部28を介して、原稿の送信データの送信を再開する(ステップS407)。その後、通信装置20のリダイヤル動作は終了する。
【0153】
これにより、通信エラーが発生してから通信が再開されるまでの間に、原稿の残りのページの読み取りが行われるので、送信データの通信完了までの待ち時間を短縮することができる。
【0154】
一方、CPU21は、相手側の通信装置20との接続が成功しなかったと判断すると(ステップS406;No)、ステップS402へ戻る。
【0155】
また、ステップS402において、上記残りの原稿のページが存在しないとCPU21が判断した場合(ステップS402;No)、または、ステップS404において、上記原稿の残りの枚数がN枚未満であるとCPU21が判断した場合、CPU21は、通信エラー発生からM分(たとえば、5分)経過後に、または、前回のリダイヤルからM分経過後に、相手側の通信装置20へのリダイヤルの指示を行う(ステップS408)。このとき、上記残りの原稿のページが存在している場合には、読取部29は、引き続き残りのページを読み取る。上記Mは、予め通信装置20に設定されており、管理者等はこの設定を変更することができる。
【0156】
CPU21は、相手側の通信装置20との接続が成功したか否かを判断する(ステップS409)。CPU21は、相手側の通信装置20との接続が成功したと判断すると(ステップS409;Yes)、CPU21は、ネットワークI/F部28を介して、原稿の送信データの送信を再開する(ステップS410)。その後、通信装置20のリダイヤル動作は終了する。
【0157】
一方、CPU21は、相手側の通信装置20との接続が成功しなかったと判断すると(ステップS409;No)、通信エラー発生からの相手側の通信装置20へのリダイヤルの回数が所定回数以上か否かを判断する(ステップS411)。
【0158】
CPU21は、上記リダイヤルの回数が所定回数未満であると判断すると(ステップS411;No)、ステップS408へ戻る。一方、CPU21は、上記リダイヤルの回数が所定回数以上であると判断すると(ステップS411;Yes)、通信装置20のリダイヤル動作は強制終了する。
【0159】
上記リダイヤルにより、通信が再開されるまでに作成された送信データを通信再開後に送信することができるので、これら送信データは無駄にならずに済む。
【0160】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0161】
本実施形態では、推定の通信時間が推定の残りの送信データ作成時間以上である場合、通信装置20は送信データの通信を開始していたが、本発明はこれに限らない。通信装置は、少なくとも、原稿の送信データが少なくとも2ページ分作成された後であって、原稿の全てのページの送信データが作成される前に、原稿の送信データの送信を開始する。これにより、NGN1などの通信速度が速い回線を利用したクイックメモリ送信において、少なくとも、原稿の1ページ目の送信データの送信完了と、2ページ目の送信データの送信開始との間に発生する待ち時間を短縮することができる。
【0162】
本実施形態では、NGN1を利用した場合の通信について説明したが、クイックメモリ送信において上記待ち時間が発生するネットワークを利用した通信であれば、上記通信装置20は適用可能である。
【符号の説明】
【0163】
1…NGN
2…SIPサーバ
3…発端末
4…着端末
5…SIPセッション
6…音声用メディアストリーム
7…映像用メディアストリーム
8…データ用メディアストリーム
9…ルータ
20…通信装置
21…CPU
22…ROM
23…RAM
24…HDD
25…入出力バッファ
26…表示部
27…操作部
28…ネットワークI/F部
29…読取部
30…原稿枚数検知部
30a…LED
30b…ラインセンサ
40…トレイ
41…ローラ
50…クイックメモリ送信ボタン
51…OKボタン
52…ボタン
53…OKボタン
54…OKボタン
55…通信開始枚数指定ボタン
56…OKボタン
57…OKボタン
58…クイックメモリ送信設定ボタン
59…OKボタン
60…送信開始時期指定ボタン
61…OKボタン
62…OKボタン
63…原稿種別指定ボタン
64…OKボタン
65…OKボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数ページの原稿を順次読み取る読取部と、
前記読取部での読み取り動作と並行して、前記読取部で前記原稿を読み取って得た画像データから前記原稿の送信データを作成するデータ作成部と、
前記データ作成部の作成した送信データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている送信データを送信する送信部と、
を備え、
前記送信部は、前記原稿の送信データが少なくとも2ページ分作成された後であって、前記原稿の全てのページの送信データが作成される前に、前記原稿の送信データの送信を開始する
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記原稿の全てのページの送信データが作成されるまでの時間を推測する送信データ作成時間推測部と、
前記原稿の全てのページの送信データの送信に要する通信時間を推測する通信時間推測部と、
を備え、
前記送信部は、前記通信時間推測部が推測した前記通信時間と、前記送信データ作成時間推測部が推測した時間とから、前記原稿の送信データの送信を開始するタイミングを決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記データ作成部が作成する前記原稿の全てのページの送信データの総データ量を推測するデータ量推測部をさらに有し、
前記送信データ作成時間推測部は、前記原稿の全てのページの送信データが作成されるまでの残りの時間である送信データ作成時間を繰り返し推測し、
前記通信時間推測部は、前記データ量推測部が推測した前記総データ量から前記原稿の全てのページの送信データの送信に要する通信時間を推測し、
前記送信部は、前記通信時間推測部が推測した前記通信時間が、前記送信データ作成時間推測部が推測した最新の送信データ作成時間以上になったとき、前記原稿の送信データの送信を開始する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
さらに、前記原稿の枚数情報を取得する原稿枚数情報取得部を有し、
前記データ量推測部は、前記原稿枚数情報取得部が取得した前記原稿の枚数情報に基づいて、前記原稿の全てのページの送信データの総データ量を推測し、
前記送信データ作成時間推測部は、前記原稿枚数情報取得部が取得した前記原稿の枚数情報に基づいて、前記送信データ作成時間を推測する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の通信装置。
【請求項5】
さらに、前記原稿の種別に関する情報の入力を受け付ける原稿種別情報入力部を有し、
前記データ量推測部は、前記原稿の種別を加味して前記原稿の全てのページの送信データの総データ量を推測し、
前記送信データ作成時間推測部は、前記原稿の種別を加味して前記送信データ作成時間を推測する
ことを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記原稿枚数情報取得部は、前記通信装置の操作者からの前記原稿の枚数情報の入力を受け付ける操作部である
ことを特徴とする請求項4または5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記原稿枚数情報取得部は、
前記読取部に載置される原稿の高さを検出する原稿高さ検出部と、
前記原稿高さ検出部が検出した原稿の高さから、前記読取部が未だ読み取っていない原稿の残りの枚数を推測する原稿枚数推測部と、
を有する
ことを特徴とする請求項4または5に記載の通信装置。
【請求項8】
前記原稿枚数情報取得部は、さらに、前記読取部が前記原稿を読み取ることによって発生する前記読取部に載置されている原稿の高さの変化量を取得し、
前記原稿枚数推測部は、前記原稿高さ検出部が検出した原稿の高さと、前記原稿枚数情報取得部が取得した前記変化量と、この変化量が発生している間に読み取られた原稿の枚数から、前記読取部が未だ読み取っていない原稿の残りの枚数を補正し、
前記データ量推測部は、前記読取部がすでに読み取った前記原稿の枚数と、前記データ作成部がすでに作成した分の送信データのデータ量と、前記原稿枚数推測部が補正した前記原稿の残りの枚数から、前記総データ量を補正し、
前記通信時間推測部は、前記データ量推測部が補正した総データ量から、前記通信時間を補正する
ことを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記原稿高さ検出部は、前記読取部に設けられている
ことを特徴とする請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
前記通信装置の操作者から、送信開始タイミングとして、前記データ作成部による送信データ作成済みの原稿のページ数、もしくは、前記原稿の全てのページ数に対する前記送信データ作成済みの原稿のページ数の割合の指定を受け付ける通信開始時期設定部を有し、
前記送信部は、前記データ作成部による送信データ作成済みの原稿のページ数、または、前記割合が、前記通信開始時期設定部で設定された送信開始タイミングになったとき、前記原稿の送信データの送信を開始する
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項11】
前記通信装置は、ITU−T勧告T.38に準拠したファクシミリ通信を行う
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項12】
前記送信データの送信中に通信エラーが発生した後も、前記読取部によって前記原稿を読み取り、前記データ作成部でその送信データを作成して前記記憶部に記憶する処理を継続して行い、
前記送信部は、リダイヤルによって相手側の通信装置との通信が回復した後に、前記通信エラーの発生後に作成した前記送信データを送信する
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−70115(P2013−70115A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205018(P2011−205018)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】