説明

通報装置及び通報システム

【課題】通報装置及び通報システムを簡易に操作すること。
【解決手段】通報装置10は、ユーザによる操作可能なスイッチ部11と、予め設定された所望の通報先情報及びコールセンタ103の通報先情報を記憶する記憶部12と、スイッチ部11の操作に応じて、記憶部12に記憶された所望の通報先情報及びコールセンタ103の通報先情報に基づいて、所望の通報先104及びコールセンタ103のうち少なくとも一方に切り替えて通報を行う制御部13と、を備える。通報装置10が公衆回線102に接続されると、制御部13は、コールセンタ103に通信接続を行い、初期設定を自動的に行うよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、所望の通報先又はコールセンタに通報を行う通報装置及び通報システムに関し、より詳細には、簡易に操作を行うことができる通報装置及び通報システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一人暮らしの高齢者が病気による発作や転倒などの緊急事態により、救助が必要となる場合がある。このとき、本人、自らが救助を呼ぶのが困難となった場合を想定して、所定のコールセンタの電話番号が予め登録され、簡単な操作で居宅外に通報を行うことができる緊急通報装置及び緊急通報システムが提案されている。
【0003】
例えば、高齢者等が携帯可能な腕時計やペンダントなどに無線送信機能が搭載され、そのボタンが押圧されると、公衆電話回線に接続されている緊急通報装置に対して、無線信号が送信される。そして、緊急通報装置は、その無線信号をトリガーとして、予め登録されているコールセンタに対して自動的に接続し、コールセンタとハンズフリーでの会話を可能にするものである。
【0004】
この緊急通報装置は、既に全国多くの地方自治体等で普及しており、多くの高齢者宅等に設置されている。また、緊急通報装置は、例えば、コールセンタやパソコンからのデータのダウンロード等の初期設定が行われて、使用可能な状態となる。なお、このデータのダウンロードは、専門知識を有する設置員等により行われているが、近年、このダウンロードを概ね自動的に行うことができる方法が提案されている。例えば、電話回線を介して緊急通報電話装置に動作パラメータのデータを、自動的にダウンロードするセンタ装置を備える緊急通報システムが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−4312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記緊急通報システムにおけるデータのダウンロード等の初期設定は、完全に自動的に行われるわけでは無く、例えば、外付けの電話機を使用して、センタ装置に電話接続しつつ各種のセットアップ作業を行ったり、ダウンロード開始時に設定ボタンを押圧する等の、ある程度の設定操作が発生している。したがって、機器操作が不慣れな高齢者等は、上記初期設定操作を単独で行うことができないという問題が生じている。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、簡易に操作を行うことができる通報装置及び通報システムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、ユーザによる操作可能なスイッチ部と、予め設定された所望の通報先情報及びコールセンタの通報先情報を記憶する記憶部と、前記スイッチ部の操作に応じて、前記記憶部に記憶された前記所望の通報先情報及びコールセンタの通報先情報に基づいて、前記所望の通報先及びコールセンタのうち少なくとも一方に切り替えて通報を行う制御部と、を備え、当該装置が公衆電話回線に接続されると、前記制御部は、前記コールセンタに通信接続を行い、初期設定を自動的に行うよう構成されている、ことを特徴とする通報装置である。この一態様によれば、通報装置を簡易に操作することができる。
【0008】
この一態様において、前記スイッチ部は、押圧式のボタンスイッチであり、前記制御部は、前記ボタンスイッチにおける押圧操作の回数に応じて、前記所望の通報先及びコールセンタのうちいずれか一方に切り替えて、通報を行ってもよい。
【0009】
この一態様において、前記スイッチ部と、前記記憶部と、前記制御部と、電源部と、を有する携帯無線機と、該携帯無線機と無線で通信接続を行うと共に、公衆電話回線に接続される固定無線機と、を備えていてもよい。
【0010】
この一態様において、前記携帯無線機の制御部は、前記電源部の充電量が所定値以下であると判断したとき、前記固定無線機を介して、前記コールセンタに通報を行ってもよい。
【0011】
この一態様において、前記固定無線機は、充電回路を有しており、前記携帯無線機の電源部は、前記固定無線機の充電回路を介して充電を行ってもよい。
【0012】
他方、上記目的を達成するための本発明の一態様は、コールセンタと、ユーザによる操作可能なスイッチ部と、予め設定された所望の通報先情報及び前記コールセンタの通報先情報を記憶する記憶部と、前記スイッチ部の操作に応じて、前記記憶部に記憶された前記所望の通報先情報及びコールセンタの通報先情報に基づいて、前記所望の通報先及びコールセンタのうち少なくとも一方に切り替えて通報を行う制御部と、を有する通報装置と、を備え、前記通報装置が公衆電話回線に接続されると、前記制御部は、前記コールセンタに通信接続を行い、自動的に初期設定を行うよう構成されている、ことを特徴とする通報システムであってもよい。
【0013】

また、上記目的を達成するための本発明の一態様は、コールセンタと、ユーザによる操作可能なスイッチ部と、所望の通報先情報及びコールセンタの通報先情報を記憶する記憶部と、前記スイッチ部の操作に応じて、前記記憶部に記憶された前記所望の通報先情報及びコールセンタの通報先情報に基づいて、前記所望の通報先及びコールセンタのうち少なくとも一方に切り替えて通報を行う制御部と、を有する通報装置と、を備え、前記コールセンタは、ユーザの申込み申請情報を取得する申請情報取得手段と、前記申請情報取得手段により取得された前記申込み申請情報に基づいて、前記記憶部に前記所望の通報先情報を書込む書込み手段と、を有する、ことを特徴とする通報システムであってもよい。

【0014】
この一態様において、前記コールセンタは、前記通報装置から送信される電話番号情報と、予め記憶したサービスユーザの電話番号リストとに基づいて、そのサービスを利用するユーザから電話されたか否かを判断する判断手段を有していてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通報装置及び通報システムを簡易に操作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施形態を挙げて説明する。
(第1実施形態)
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態に係る通報システムのシステム構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る通報システム100は、例えば、居宅101内にいる高齢者等のユーザが、相談ごとや災害等の異常時に、通報装置10における簡易な操作を行うだけで、在宅介護支援センタ等のコールセンタ103や親族、民生員等の所望の通報先104へ通報を行うことができるものである。
【0018】
図1に示す如く、通報システム100は、通報装置10と、コールセンタ103に設けられたセンタ装置30と、を備えている。通報装置10及びセンタ装置30は、公衆電話回線102を介して通信接続されている。コールセンタ103のセンタ装置30は、通報装置10からの通報に応じて、ユーザを補助するための各種の処理を行う。一方、通報装置10は、例えば、ユーザの居宅101内に設置されており、ユーザは当該装置10を用いて、コールセンタ103、所望の通報先104等に通報を行うことができる。
【0019】
図2は、第1実施形態に係る通報システムの通報装置のシステム構成の一例を示すブロック図である。通報装置10は、ボタンスイッチ11と、記憶部12と、制御部13と、回線接続回路14と、を有している。
【0020】
ボタンスイッチ11は、例えば、高齢者等のユーザがボタンを容易に押圧操作できるように構成されている。また、ボタンスイッチ11は、制御部13に接続されており、ボタンの押圧操作に応じて、その押圧信号を制御部13に対して出力する。
【0021】
記憶部12は、予め設定された所望の通報先104の通報先情報(電話番号等)及び所定のコールセンタ103の通報先情報(電話番号等)が記憶されている。また、記憶部12は、例えば、EEPROM、FRAM等の不揮発性メモリにより構成されており、電源の供給が遮断された場合でも、記憶している情報を保持することができる。なお、記憶部12は、磁気ディク装置、光ディスク装置等により構成されていてもよく、後述のRAM13cに構成されていてもよい。
【0022】
制御部13は、回線接続回路14及び公衆電話回線102を介して、所望の通報先104の電話機もしくはコールセンタ103のセンタ装置30と通信接続を行い、所定の通報を行うものである。また、制御部13は、ボタンスイッチ11からの押圧信号に応じて、記憶部12に記憶された所望の通報先104及びコールセンタ103のセンタ装置30のうちいずれか一方に切り替えて、所定の通報を行う。
【0023】
例えば、ユーザがボタンスイッチ11を1回押圧することで、制御部13はボタンスイッチ11から押圧信号を1回受信して、所望の通報先104に対して通報を行うよう構成されている。一方、ユーザがボタンスイッチ11を複数回(2回等)連続して押圧することで、制御部13はボタンスイッチ11から押圧信号を複数回(2回等)連続で受信して、コールセンタ103のセンタ装置30に対して通報を行うよう構成されている。このように、ユーザは、単一のボタンスイッチ11を押圧操作するだけで、簡易に通報先を切り替えて、自動的に通報を行うことができる。
【0024】
なお、制御部13は、例えば、制御処理、演算処理等と行うCPU(Central Processing Unit)13aと、CPU13aによって実行される制御プログラム、演算プログラム等が記憶されたROM(Read Only Memory)13bと、処理データ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)13cと、を有するマイクロコンピュータを中心にしてハードウェア構成されている。
【0025】
次に、通報装置10の記憶部12に電話番号を書き込む方法について、詳細に説明する。記憶部12は、第1メモリエリア12aと、第2メモリエリア12bと、第3メモリエリア12cと、を有している(図3)。例えば、通報装置10の制御部13には、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置105が接続され、情報処理装置105は、制御部13を介して記憶部12に対して、書き込みコマンドを送信する。このとき、第1メモリエリア12aを、所望の通報先104の通報先情報の記憶用に割り当て、第2メモリエリア12bを、コールセンタ103のセンタ装置30の通報先情報の記憶用に割り当てたとすると、情報処理装置105はユーザの入力操作に応じて、自動的に、第1メモリエリア12aに所望の通報先104の電話番号を書き込み、第2メモリエリア12bにコールセンタ103のセンタ装置30の電話番号を書き込む。
【0026】
なお、所望の通報先104の電話番号は、ユーザ毎に異なるため、ユーザが決定次第、情報処理装置105を介して第1メモリエリア12aに書き込むことができる。一方、コールセンタ103の電話番号は、例えば、一義的に決定しているため、製造時等の事前に、第2メモリエリア12bに書き込んでもよい。
【0027】
また、情報処理装置105を用いて、第1及び第2メモリエリア12a、12bの書き込みを行っているが、これに限らず、例えば、ボタンスイッチ11と外付けの電話機とを用いて、第1及び第2メモリエリア12a、12bの書き込みを行ってもよい。この場合、制御部13は、ボタンスイッチ11が継続的に押圧され、その押圧信号を受信している間、電話機がダイヤルされたときのダイヤル信号に基づいて、そのダイヤル番号を、第1及び第2メモリエリア12a、12bに夫々書き込んでもよい。さらに、上述の第1及び第2メモリエリア12a、12bへの書き込み作業は、例えば、通報装置10が設置される前に、専門者により予め完了しているのが好ましい。
【0028】
図4は、第1実施形態に係る通報システムの通報装置を設置及び初期設定する際の処理フローの一例を示すフローチャートである。
【0029】
まず、例えば、ユーザ又はユーザの親族等は、通報サービスを受ける旨の申請を、コールセンタ103に対して行う(ステップS101)。この申請時に、ユーザは所望の通報先104を指定することができる。ここで、所望の通報先104としては、例えば、親族、民生員等のユーザと関係がある関係者の電話番号であるのが好ましい。
【0030】
また、ユーザは、申請用紙に、自らの氏名、住所、電話番号等のユーザ情報と共に、所望の通報先104の電話番号を記入し、コールセンタ103に対して送付する。コールセンタ103では、申請用紙に記入された所望の通報先104の電話番号を、情報処理装置(申請情報取得手段及び書込み手段)105を用いて、通報装置10の記憶部12の第1メモリエリア12aに書き込む(ステップS102)。
【0031】
さらに、コールセンタ103では、コールセンタ103の電話番号を、情報処理装置105を用いて、通報装置10の記憶部12の第2メモリエリア12bに書き込む(ステップS103)。なお、上述の如く、コールセンタ103の電話番号は、予め、記憶部12の第2メモリエリア12bに書き込まれていてもよい。
【0032】
次に、通報装置10が、記憶部12の第2メモリエリア12bに記憶されたコールセンタ103のセンタ装置30に対して、正常に通報を行うことができるか否かの通報試験を行い、確認を行う(ステップS104)。なお、コールセンタ103のセンタ装置30に対する通報試験は、所望の通報先104に対する通報を意図的に失敗させることで、コールセンタ103のセンタ装置30に通報をさせるようにしてもよい。
【0033】
その後、通報装置10は、ユーザの居宅101に送付される(ステップS105)。ユーザは、送付された通報装置10を居宅101内に設置し(ステップS106)、通報装置10の回線接続回路14を公衆電話回線102に接続する(ステップS107)。
【0034】
さらに、ユーザが、例えば、通報装置10の電源をオン状態にすると、制御部13は、記憶部12の第2メモリエリア12bに記憶されたコールセンタ103のセンタ装置30の電話番号に基づいて、回線接続回路14、および公衆電話回線102を介して、コールセンタ103のセンタ装置30と通信接続を行い(ステップS108)、自動的に初期設定を開始する(ステップS109)。
【0035】
まず、通報装置10の制御部13は、この通報装置10を識別するための個別の識別コード(ID番号)を、記憶部12の第3メモリエリア12cにから読み出し、コールセンタ103のセンタ装置30に対して送信する(ステップS110)。
【0036】
一方で、センタ装置30は、通報装置10の制御部13から識別コードを受信して、確認すると、その識別コードに対応する初期設定用データを準備する(ステップS111)。そして、センタ装置30は、通報装置10の制御部13がダウンロード状態となるよう要求信号を送信する(ステップS112)。
【0037】
通報装置10の制御部13は、センタ装置30から要求信号を受信すると、データのダウンロードが可能なダウンロード状態となり(ステップS113)、その状態であることを通知するための応答信号を、センタ装置30に対して返信する(ステップS114)。
【0038】
センタ装置30は、通報装置10の制御部13から応答信号を受信すると、通報装置10の制御部13に対して、準備した初期設定用データを送信する(ステップS115)。通報装置10の制御部13は、センタ装置30から初期設定用データを受信すると、この初期設定用データを記憶部12の第3メモリエリア12cに記憶させる(ステップS116)。
【0039】
通報装置10の制御部13は、記憶部12の第3メモリエリア12cに記憶された初期設定用データに基づいて、必要なパラメータのデータ等を自動的に初期設定する(ステップS117)。このように、ユーザは何ら設定操作を行うことなく、通報装置10の初期設定が完全に自動的に行われ、通報装置10は直に通報が可能な状態となる。
【0040】
最後に、ユーザがボタンスイッチ11を押圧すると、通報装置10の制御部13は、ボタンスイッチ11からの押圧信号に応じて、記憶部12の第1メモリエリア12aに記憶された所望の通報先104の電話番号を読み出し、この所望の通報先104と通信接続を行い、通報試験を行う(ステップS118)。なお、通報装置10は、上記(ステップS115)の完了後、ボタンスイッチ11からの押圧信号を受信することなく、自動的に上記通報試験を行ってもよい。
【0041】
以上、述べたように、第1実施形態に係る通報システム10において、通報装置10の公衆電話回線102への接続、および単一のボタンスイッチ11の操作のみによって、通報装置10の初期設定及び通報が自動的に可能となるように構成されている。したがって、機器操作が不慣れな高齢者等でも、通報装置10を簡易に操作し、通報することができる。
【0042】
また、従来の通報装置のように、専門の設置者によるデータのダウンロード等の初期設定が不要となり、例えば、設置者をユーザの居宅に派遣する人件費を大幅に抑制することができる。さらに、所望の通報先104をユーザとの関係者に設定することで、ユーザは常日頃から気兼ねなく、相談などで通報でき、その結果、緊急時にも容易に操作することができる。
【0043】
ここで、従来の通報装置において、例えば、複数の通報先が記憶され、第1の通報先への通報が失敗した場合でも、別の通報先(第2の通報先等)へ通報できるように構成されているが、ユーザはその通報先を自らの意思で選定することができない場合が存在する。例えば、通報先を、昼間はケアを専門としたコールセンタに設定し、夜間は警備会社などに設定している場合において、昼間、緊急事態が発生して警備会社に直接通報したいのにもかかわらず、上記設定により、コールセンタに接続され、ユーザが意図しない通報先に通報されてしまう問題が生じている。
【0044】
一方で、本実施形態に係る通報装置10は、ユーザによる単一のボタンスイッチ11の操作に応じて、所望の通報先104とコールセンタ103とに、簡易に切り替え自動的に通報を行うことができる。これにより、ユーザが意図した通報先に対して簡易かつ確実に通報することができる。
【0045】
なお、上述の如く、例えば、ボタンスイッチ11が1回押圧されると、通報装置10は所望の通報先104に対して自動的に通報を行う。この状態で、さらに、ボタンスイッチ11が複数回(2回もしくは3回以上)連続して押圧されると、通報装置10は所望の通報先104への通報を中断し、コールセンタ103に対して通報を行う。このように、簡易なボタンスイッチ11の操作だけで、通報先を簡易に切り替えることができる。なお、健康の悩みに関する相談の場合、ユーザの親族等ではなく、ボタンスイッチ11を複数回、押圧して看護師等が常駐するコールセンタ103に通報を行うのが好ましい。ここで、通報装置10は、複数のボタンスイッチを有する構成でもよいが、高齢者等が緊急時に容易に押圧操作できること、及び小型軽量化を考慮すると、本実施形態のように、単一のボタンスイッチ11を有する構成がより好ましい。
【0046】
また、従来、高齢者等のユーザは通報に対して遠慮がちとなり、通報自体をしない場合が多く、さらに、緊急事態の場合にも通報を遠慮したり、普段から通報装置を使用していないためその使用方法が分からず、必要時に使用出来ない等の問題が生じている。一方、本実施形態に係る通報装置10は、簡易に操作を行うことができることから、普段から通報を行う習慣を身に付けることが可能となり、また、たとえ少ない使用経験でも機器操作の習熟度を効率的に高めることができる。したがって、緊急時の操作をより確実かつスムーズに行うことができることから、例えば、救命率を向上させることが可能となるという多大な効果を奏する。
(第2実施形態)
【0047】
従来の通報装置において、例えば、ペンダント型送信機の無線による通報時に、無線の到達距離(数十m程度)と比較して、ハンズフリー会話が可能となる距離(数m程度)が極端に短い傾向にある。したがって、例えば、ユーザが有するハンズフリー用の送信機と通報装置との間の距離が遠過ぎて、ハンズフリー会話が不能もしくは困難となる問題が生じている。したがって、ユーザの居宅内のより広範囲でハンズフリー会話が可能となるような、通報装置の設置場所を選定するために、専門の設置者を派遣しなければならない事態が生じている。
【0048】
そこで、第2実施形態に係る通報システム200の通報装置20は、通常の通話機能を有する携帯無線機21と、この携帯無線機21と無線で通信接続される固定無線機22と、を備えている(図5)。ここで、例えば、所望の通報先104をユーザの関係者とした場合に、その主目的は、相談などの日常会話を気兼ねなく行うことであるため、携帯無線機21は、主として通常の通話機能を有する構成となっている。
【0049】
図5に示すように、携帯無線機21は、制御部21aと、記憶部21bと、ボタンスイッチ21cと、スピーカ21dと、マイク21eと、無線回路21fと、電池21gと、を有している。また、固定無線機22は、制御部22aと、無線回路22bと、充電回路22cと、回線接続回路22dと、を有している。
【0050】
ユーザが携帯無線機21のボタンスイッチ21cを押圧すると、制御部21aは、ボタンスイッチ21dからの押圧信号に応じて、記憶部21bに記憶された所望の通報先104の電話番号を読み出し、この電話番号の発信信号を、無線回路21fを介して固定無線機22に対して送信する。
【0051】
一方、固定無線機22は、無線回路22bを介して、携帯無線機21から受信した電話番号の発信信号に基づいて、所望の通報先104の電話機と通信接続を、公衆電話回線102を介して行う。携帯無線機21の制御部21aは、所望の通報先104の電話機から固定無線機22及び公衆電話回線102を介して受信した音声信号を、スピーカ21dから音声として出力させる。また、携帯無線機21の制御部21aは、マイク21eにより収集したユーザの音声を、音声情報として、無線回路21f、固定無線機22、及び公衆電話回線102を介して、所望の通報先104の電話機に対して送信する。このようにして、携帯無線機21のユーザと、遠隔地にいる所望の通報先104との間で、双方向の会話が可能となる。
【0052】
なお、携帯無線機21は、例えば、小型軽量化が図られ、充電式電池21gにより、ユーザが容易に携帯できる構成となっている。また、携帯無線機21と固定無線機22とを合体することで、携帯無線機21の充電式電池21gと固定無線機22の充電回路22cとが接続されるように構成してもよい。これにより、固定無線機22の充電回路22cによって、携帯無線機21の充電式電池21gを、容易に充電することができる。なお、充電式電池21gの電池容量は、例えば、夜間に充電した場合に(8時間程度の充電で)、1日2回程度以上(2時間程度/1回)の会話が日中できる容量であるのが好ましい。
【0053】
また、携帯無線機21の無線回路21fと固定無線機22の無線回路22bとの間で音声信号の送受信が可能となる距離は、ユーザが居宅101内のどこにいても送受信が可能となる距離以上であるのが好ましく、例えば、数十m程度であるのが好ましい。
【0054】
さらに、携帯無線機21の制御部21aは、電池21gの充電量が所定量以下となり低下していると判断したとき、その旨を知らせる報知信号を、無線回路21fを介して固定無線機22に送信してもよい。固定無線機22の制御部22aは、携帯無線機21からの報知信号に応じて、電池切れであることを示す合成音声信号を生成し、その合成音声信号を無線回路22b及び公衆電話回線102を介して、コールセンタ103のセンタ装置30に送信し、自動的に通報を行う。
【0055】
なお、第2実施形態に係る通報システム200において、他の構成は第1実施形態に係る通報システム100と略同一である。したがって、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
以上、第2実施形態に係る通報システム200の通報装置20において、携帯無線機21と固定無線機22とは、音声情報を無線により送受信する。これにより、本実施形態に係る通報装置20は、従来のような、例えば、居宅内においてハンズフリー会話が可能となる範囲内に通報装置を設置しなければならないという制約を受けることなく、単に、公衆電話回線102の接続部付近に固定無線機22を設置し、この接続部と回線接続回路22dとを接続するだけ、ユーザは居宅101内で携帯無線機21を用いて、所望の通報先104等と会話を行うことができる。したがって、通報装置20を設置するための専門の設置者を派遣する必要がなくなるため、人件費等のコスト低減に繋がる。
(第3実施形態)
【0057】
上述の如く、第1実施形態に係る通報装置10は、例えば、記憶部12の第3メモリエリア12cに個別の識別コードを予め記憶しており、センタ装置30は専用の受信器によって、通報装置10から送信される識別コードを受信する。また、通報装置10の製造メーカ毎に、識別コードを送信する際の通信プロトコルが異なるため、通信装置10の種類毎に、センタ装置30に専用の受信器が必要となっている。そこで、第3実施形態に係る通報システム300のセンタ装置40は、専用の受信器を必要としない構成となっており、ナンバーディスプレイ判断機41と、パソコン等の情報処理装置42と、を備えている(図6)。
【0058】
ナンバーディスプレイ判断機41は、公衆電話回線102を介して受信した信号から、電話番号を取得し、取得した電話番号を情報処理装置42に対して出力する。情報処理装置(判断手段)42は、ナンバーディスプレイ判断機41からの電話番号が、予め記憶した通報サービスを利用するサービスユーザの電話番号リストに登録されているか否かを判断する。ここで、情報処理装置42の電話番号リストには、ユーザから通報サービスの利用申請があったときに、ユーザの居宅101の電話番号が登録されている。
【0059】
情報処理装置42は、ナンバーディスプレイ判断機41からの電話番号が、予め記憶したサービスユーザの電話番号リストに登録されていないと判断したとき、間違い電話であると判断し、センタ装置40に通信接続されたその電話回線を切断する。一方、情報処理装置42は、ナンバーディスプレイ判断機41からの電話番号が、予め記憶したサービスユーザの電話番号リストに登録されていると判断したとき、情報処理装置42の表示画面上に、予め登録されたサービスユーザ情報(氏名、電話番号等)を自動的に表示させる。そして、情報処理装置42は、センタ装置40に通信接続されたその電話回線を、所定のオペレータの電話機43に接続して、会話が可能な状態にする。
【0060】
なお、第3実施形態に係る通報システム300において、他の構成は第1実施形態に係る通報システム100と略同一である。したがって、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0061】
以上、第3実施形態に係る通報システム300において、通報装置50には個別の識別コードが不要となり、センタ装置40側での識別コードの割り当て作業や通報装置50の識別コードの設定作業が不要となる。したがって、専門の設置者を派遣する必要のないより簡易な通報システム300を構築することができる。
【0062】
なお、本発明を実施するための最良の形態について上記実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1実施形態に係る通報システムのシステム構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る通報システムの通報装置のシステム構成の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る通報装置の記憶部の一構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る通報システムの通報装置を設置及び初期設定する際の処理フローの一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る通報システムのシステム構成の一例を示すブロック図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る通報システムのシステム構成の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0064】
10、20、50 通報装置
11 ボタンスイッチ
12 記憶部
13 制御部
14 回線接続回路
21 携帯無線機
22 固定無線機
30、40 センタ装置
100、200、300 通報システム
103 コールセンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによる操作可能なスイッチ部と、
予め設定された所望の通報先情報及びコールセンタの通報先情報を記憶する記憶部と、
前記スイッチ部の操作に応じて、前記記憶部に記憶された前記所望の通報先情報及びコールセンタの通報先情報に基づいて、前記所望の通報先及びコールセンタのうち少なくとも一方に切り替えて通報を行う制御部と、を備え、
当該装置が公衆電話回線に接続されると、前記制御部は、前記コールセンタに通信接続を行い、初期設定を自動的に行うよう構成されている、ことを特徴とする通報装置。
【請求項2】
請求項1記載の通報装置であって、
前記スイッチ部は、押圧式のボタンスイッチであり、
前記制御部は、前記ボタンスイッチにおける押圧操作の回数に応じて、前記所望の通報先及びコールセンタのうちいずれか一方に切り替えて、通報を行う、ことを特徴とする通報装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の通報装置であって、
前記スイッチ部と、前記記憶部と、前記制御部と、電源部と、を有する携帯無線機と、
該携帯無線機と無線で通信接続を行うと共に、公衆電話回線に接続される固定無線機と、を備える、ことを特徴とする通報装置。
【請求項4】
請求項3記載の通報装置であって、
前記携帯無線機の制御部は、前記電源部の充電量が所定値以下であると判断したとき、前記固定無線機を介して、前記コールセンタに通報を行う、ことを特徴とする通報装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の通報装置であって、
前記固定無線機は、充電回路を有しており、
前記携帯無線機の電源部は、前記固定無線機の充電回路を介して充電を行う、ことを特徴とする通報装置。
【請求項6】
コールセンタと、
ユーザによる操作可能なスイッチ部と、予め設定された所望の通報先情報及び前記コールセンタの通報先情報を記憶する記憶部と、前記スイッチ部の操作に応じて、前記記憶部に記憶された前記所望の通報先情報及びコールセンタの通報先情報に基づいて、前記所望の通報先及びコールセンタのうち少なくとも一方に切り替えて通報を行う制御部と、を有する通報装置と、を備え、
前記通報装置が公衆電話回線に接続されると、前記制御部は、前記コールセンタに通信接続を行い、自動的に初期設定を行うよう構成されている、ことを特徴とする通報システム。
【請求項7】
コールセンタと、
ユーザによる操作可能なスイッチ部と、
所望の通報先情報及びコールセンタの通報先情報を記憶する記憶部と、前記スイッチ部の操作に応じて、前記記憶部に記憶された前記所望の通報先情報及びコールセンタの通報先情報に基づいて、前記所望の通報先及びコールセンタのうち少なくとも一方に切り替えて通報を行う制御部と、を有する通報装置と、を備え、
前記コールセンタは、
ユーザの申込み申請情報を取得する申請情報取得手段と、
前記申請情報取得手段により取得された前記申込み申請情報に基づいて、前記記憶部に前記所望の通報先情報を書込む書込み手段と、を有する、ことを特徴とする通報システム。
【請求項8】
請求項6又は7記載の通報システムであって、
前記コールセンタは、前記通報装置から送信される電話番号情報と、予め記憶したサービスユーザの電話番号リストとに基づいて、そのサービスを利用するユーザから電話されたか否かを判断する判断手段を有する、ことを特徴とする通報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−130035(P2010−130035A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299125(P2008−299125)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】