説明

通気性フレキシブルコンテナ

【課題】 本来要求される高強度、柔軟性、耐クリ−プ性、捕捉性などの特性を保持しながらも、熱処理した粉体の輸送や貯蔵に好適な通気性を有するフレキシブルコンテナを提供する。
【解決手段】 熱可塑性合成樹脂フィルムをスリットし延伸して得られる繊度500〜3,000デニールのフラットヤーンを2〜4層に畳まれた多層フラットヤーンからなる平織組織で織成した織布であって、経糸或いは緯糸の全てに前記フラットヤーンの2〜4倍の厚みを有する多層フラットヤ−ンと縦に空打ち部を含んだ織布とし、この織布をフレキシブルコンテナ本体の上部に用いて通気性を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に加熱粉体 熱処理土壌、チタン、セメントなどの輸送や貯蔵に用いる蒸気飛散性を有するフレキシブルコンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、合成樹脂製のフィルムをスリットして延伸することで高強度を付与したフラットヤ−ンを織成し、その基布を使用したフレキシブルコンテナが、工業原料や食品原材料の粉粒体の輸送や貯蔵に貢献している。このフレキシブルコンテナは、軽量、安価で、不使用時には折り畳んで運搬できる輸送効率上の利点において大量に使用されているのである。
【特許文献1】特願平6−187072
【特許文献2】特願平8−112956
【特許文献3】特開昭57−28780
【特許文献4】実開昭60−47282
【特許文献5】実開昭62−28794
【0003】
織布をそのまま織布として使用するフレキシブルコンテナは、内容物の移送に耐え得るだけの強度を有し、且つ織布の目ズレによる漏洩を防止する目的でフラットヤ−ンを密に経緯に打ち込んだものまたは、フィルムでラミネートしたものが使用される。したがって、ラミネートしないものある程度の通気性は備えているのであるが、例えば加熱処理した土壌など製造後、連続的にしかも熱いうちにコンテナに詰める必要がある。そのとき通常品では梱包状態で上部から水蒸気を放散できない。或いは放熱に長時間を必要とするものであって、そのまま使用することは不適当であった。
【0004】
通気性フレキシブルコンテナとしては、熱収縮差を有する異収縮フィラメント混繊糸を用いて織成したもの(特開昭57-28780号)や、特定の樹脂組成物を用いた糸状物を経緯にからみ織りしたもの(実開昭60-47282号)や、粗い目合の外側網状体と細かい目合の内側網状体により構成されたもの(実開昭62-28794号)などが開示されているが、これらは糸条自体や織り組織が特殊であって生産効率が良好でなかったり、袋として構造が複雑であることなどの問題点が存在し充分満足し得るものとはなっていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明においては、充分な通気性と強度を有しながらも内容物の漏洩がなく、且つ効率よく低廉に製造可能な、特に加熱処理後すぐに充填しなくてはならない特殊土壌、飼料、農産物類の輸送や貯蔵に有効な通気性フレキシブルコンテナを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱可塑性合成樹脂フィルムをスリットし、延伸して得られる繊度500〜3,000デニールのフラットヤーンを2〜4層に畳まれた多層フラットヤーンからなる平織組織で織成した織布であって、経糸或いは緯糸の全てに前記フラットヤーンの2〜4倍厚みを有のする多層フラットヤ−ンと縦に空打ち部を含んだ織布とし、この織布をフレキシブルコンテナ本体の上部に用いて形成したことを特徴とする通気性フレキシブルコンテナ。また通気性織布及びクロス織布、ラミネートクロス織布の3種類からなることを特徴とする通気性フレキシブルコンテナを提供できる。
【0007】
ここで、フラットヤーンに使用される合成樹脂としては連続生産での安定品質と経済的に量産し得ることにおいて、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィンの単独重合体もしくは相互共重合体またはこれらのα−オレフィンと他のコモノマ−の共重合体からなるポリオレフィン系合成樹脂が最も好適であるが、ナイロン等のポリアミド系合成樹脂、ポリエチレンテレフタレ−ト等のポリエステル系合成樹脂、ポリ塩化ビニル系合成樹脂、ポリ塩化ビニリデン−ビニル共重合体系合成樹脂等の熱可塑性合成樹脂などであっても差し支えない。これらの中でプロピレンがもっとも好ましい。
【0008】
ここでフラットヤーンとは、既述の熱可塑性合成樹脂を押出機シリンダ−内で溶融混練してTダイフラット法やインフレ−ション法にて無定形状態で押し出し冷却してフィルムを成形し、約10〜30mm幅に細断した後に熱板や熱ロ−ルによって2〜8倍程度縦方向に一軸延伸配向させ、熱処理を加えて成形される高強度のテ−プ状ヤ−ンである。フレキシブルコンテナの糸材料としてのフラットヤーンは、繊度500〜3,000デニールのものが採用され、より好適には1,000〜2,000デニールである。繊度500デニールより低繊度のものは織布となっての充分な強度が得られず、繊度3,000デニールを超えるものは織成効率が劣りまたコンテナ織布としての耐クリ−プ性が劣る点で問題となるからである。また、通常この程度のフラットヤーンの厚みは、15〜75マイクロメーター程度となっている。
【0009】
次に、多層フラットヤ−ンは、フラットヤーンを4層に畳み込まれた0.5〜2mm幅の高強度のテ−プ状ヤ−ンである。フレキシブルコンテナの糸材料としてのフラットヤーンは、繊度500〜3,000デニールのものが採用され、より好適には1,000〜2,000デニールである。Wに畳み込まれており、1mm幅が好ましい。また、通常多層フラットヤーンの厚みは、15〜75マイクロメーターの4倍程度となっている。
【0010】
フラットヤ−ン織布のなかに全面的に打ち込まれた厚みのある多層フラットヤーンは、多層フラットヤ−ンまたは多層フラットヤ−ンで構成される経緯交差部において厚みによる開口部を発現するものとなる、また縦糸の5本に1本のわりで抜くことにより、最も確実に空隙面積が得られる。織布の強度や耐久性を保持しながら開口部を通しての通気性を向上することができる。
【0011】
空隙のための経糸の抜きは、コンテナ内容物による必要な通気性に応じて適宜選択することができ、例えば、経緯糸の4番目を抜いたもの、経緯糸の6番目を抜いたもの、などの縦糸の抜き具合いにおいて設計することができる。
【0012】
フレキシブルコンテナは、これら通気織布を上部用いて製袋される。一般にフレキシブルコンテナは、上面部、胴部、底面部とから成っており、上面及び底面には内容物を充填、排出するための開口部が開設され、開口部には開閉可能に縛紐を取付けた筒状の部材を垂設し、移送のために吊り手を形成したものである。本発明の通気性フレキシブルコンテナは、少なくとも上面部に既述の通気性の優れた織布を使用するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るフレキシブルコンテナは、織布に用いる糸条に従来のフラットヤ−ンに部分的に厚みのある多層フラットヤーンを置換したものであるから、特殊な素材や工程を必要とせず低廉に効率よく製造することができ、フレキシブルコンテナが本来要求される高強度、柔軟性、耐クリ−プ性などの物性を低下することなく且つ通気性を有するものとして、農作物類の輸送や貯蔵に好適であり、また通気性の設定により内容物をコンテナに詰めた状態で蒸気飛散の可能な通気性フレキシブルコンテナとして有効なものと成り得るのである。
【実施例】
【0014】
以下、実施例にて本発明の構造について説明を加える。
【0015】
実施例熱可塑性合成樹脂にポリプロピレン(MFR=0.8、融点145度)を用い、溶融温度280度で円形ダイスより無定形状態で押し出し、冷却してフィルムを成形し、熱板接触式延伸法にて延伸温度145度、アニ−リング温度150度、延伸倍率5.6倍で繊度1,500デニール(テ−プ幅4.8mm、テ−プ厚57マイクロメーター)のフラットヤーンを得た。
【0016】
フラットヤーンをW型の繊度1,450デニール(テ−プ幅1.2mm、テ−プ厚245マイクロメーター)の偏平多層フィラメントである4層フラットヤーンを得た。
【0017】
この多層フラットヤ−ンを用いて打込密度15X15本/インチで平織組織で織成するにあたり、サ−キュラ−織機(8シャトルタイプ)を使用して、経糸及び緯糸の全てに4層フラットヤーンを用いて、全部に該フラットヤ−ンを打ち込んで織布をなし、また経糸の4本に1本を抜き、これを織布として袋体上部に用いて通気性フレキシブルコンテナを得た。
【0018】
ここで、緯糸を打ち込むシャトル8機のうち数機のシャトルに偏平モノフィラメントである4層フラットヤーンを装着して織機を稼働することで、4層フラットヤーン織布に一定間隔で偏平モノフィラメントを打ち込んだ織布となるものであり、実施例1は経糸全てを4層フラットヤ−ンに置換したもの、実施例2は経糸の1/4を欠損させ、空隙を作製したもの、実施例3は経糸の1/5を欠損させ、空隙を作製したものであり、多層フラットヤ−ン織布中に一定間隔で空隙を配置し、打込密度20X20本/インチのコンテナ織布となった。
【0019】
図1には実施例1で使用される通気性フレキシブルコンテナの側面図を示し、図2には通気性フレキシブルコンテナ同織布の上部からみた図を示すもので、経糸の4本おきに空隙が存在し、経糸緯糸の何れも多層フラットヤーンとの交差部に縦面的な開口部3が開設されている構造を表すものである。
これらフレキシブルコンテナに内容物として土壌を充填して移送したところ、各実施例は比較例と同様に織布を通して土壌のこぼれや露出はなく、各実施例は従来品と同等の物性を有しており実用上何ら問題のないものでありながら、しかも通気性を有するフレキシブルコンテナとなることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、主に加熱粉体、熱処理土壌、チタン、セメントなどの輸送や貯蔵に用いる蒸気飛散性を有するので、産業上の利用の可能性は高く、フレキシブルコンテナとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態のひとつであるフレキシブルコンテナの部分側面図である。
【図2】本発明の実施形態のひとつであるフレキシブルコンテナの上面図である。
【図3】本発明の実施形態のひとつであるフレキシブルコンテナの底面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 吊りベルト
2 投入口
3 投入開閉
4 多層フラットヤーン布
5 補強布
6 本体上部
7 使用注意ラベル
8 本体下部
9 底
10 排出口絞りテープ
11 排出口
12 スライダー
13 底支えロープ
14 排出ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性合成樹脂フィルムをスリットし、延伸して得られる繊度500〜3,000デニールのフラットヤーンを2〜4層に畳み込んだ多層フラットヤーンからなる平織組織で織成した織布であって、経糸或いは緯糸の全てに前記フラットヤーンの2〜4倍の厚みを有する多層フラットヤ−ンと経糸に空打ち部を含んだ通気性織布とし、該通気性織布をフレキシブルコンテナ本体の上部に用いて形成したことを特徴とする通気性フレキシブルコンテナ。
【請求項2】
請求項1記載の通気性織布及びクロス織布、ラミネートクロス織布の3種類からなることを特徴とする通気性フレキシブルコンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−7149(P2008−7149A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178167(P2006−178167)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(399021091)日本製袋株式会社 (7)
【出願人】(504117578)チャイナ パック ジャパン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】