説明

通気性ポリオレフィンフィルムの農業用途での使用

本発明は、CaCO及び/又はMgO系充填剤を充填され、ASTM D6701−01規格に準拠した少なくとも500g/mO/24時間の水蒸気透過性を有し、ATICELCA MC19−74及びTAPPI T460 om−88規格に準拠した空気100分/cc未満の透気度を有し、平均坪量10から60g/mを有している通気性ポリオレフィンフィルムの農業での使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
通気性ポリオレフィンフィルム、特には通気性積層ポリオレフィンフィルム、及びその農業での使用についてここで開示する。
【0002】
本願で使用するところの「農業での使用」という用語は、とりわけ温室、農作物、植物及び花用のカバーの製造、及び摘み立ての花の包装を意図したものである。
【背景技術】
【0003】
通常はポリエチレンフィルムであるポリオレフィンフィルムの農業での使用は業界で知られている。
【0004】
しかしながら、農業で使用した場合、慣用のポリオレフィンフィルムにはある欠点があった。
【0005】
例えば、温室は昼と夜とで高い微気候変動に晒される。
【0006】
又、ポリエチレンフィルムは摘みたての花の保存には適していない。
【0007】
特に広範囲に亘って大気因子に晒される設計のフィルムの場合、更なる欠点としてポリエチレンの脆性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術での欠点、特には上述の欠点を未然に防ぐことであり、温度、湿度、二酸化炭素濃度及び光強度条件を植物(葉付き葉無しの双方)、野菜及び花の適切な成長又は保存に最適な範囲内に受動的に維持することを可能とするフィルム材料の使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
こういった目的は、請求項1及び請求項6で定義のフィルムの使用により果たされる。
【0010】
更なる利点は、従属請求項の特徴により達成される。
【0011】
第一の実施形態(図1)では、CaCO充填フィルムから得られ、かつ製造中に縦方向(製造ライン流れ方向)及び/又は横方向へと延伸された通気性ポリオレフィンフィルム1を用いている。
【0012】
CaCO充填剤の平均粒子径は0.5から6μmであり、好ましくはその表面が疎水性となるように加工されている。
【0013】
充填剤はポリオレフィンフィルムの30重量%から70重量%であり、より好ましくは充填剤の量はフィルム重量に対して40%から65%である。
【0014】
当然ながら、CaCO充填剤をその他の無機充填剤、例えばMgOと混合してもよい。
【0015】
所望の通気性を得るための縦方向延伸比は1:1.5から1:2.5の範囲であってもよい。
【0016】
又、横方向の延伸比は1:1.5から1:2.5であってもよい。
【0017】
好ましくは、ポリオレフィンフィルム1は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)から形成される。
【0018】
或いは、ポリオレフィンフィルム1を低密度ポリエチレン(LDPE)又は中密度ポリエチレン(MDPE)から形成してもよい。
【0019】
ポリエチレン共重合体を使用することもでき、4から10個の炭素原子を有するα−オレフィンを有している(1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン)。
【0020】
通気性ポリオレフィンフィルム1は少なくとも500g/mO/24時間の水蒸気透過性(MOCON社製のPERMATRAN 100K分析装置を用い、ASTM D6701−01規格に準拠して測定)を有している。
【0021】
好ましくは、通気性ポリオレフィンフィルム1は少なくとも1,000g/mO/24時間、より好ましくは少なくとも20,000g/mO/24時間の水蒸気透過性を有している。
【0022】
通気性ポリオレフィンフィルム1は平均坪量10から60g/m、好ましくは25から40g/mを有している。
【0023】
透気度(ガーレーポロシメータを用いて、ATICELCA MC18−74及びTAPPI T460 om−88規格に準拠して測定)は空気100分/cc未満であり、好ましくは空気50分/cc未満である。
【0024】
通気性ポリオレフィンフィルム1の使用により、従来のポリオレフィンフィルムと比較して非常に大きな利点が得られる。
【0025】
その通気性と水蒸気透過性により、フィルム1による、日中の日射中に植物から放出される水蒸気の排出が可能となり、これにより限られた範囲をフィルムによって取り囲まれた環境内の湿度が維持される。
【0026】
フィルムによって取り囲まれた環境内での過剰な水蒸気を回避することで、夜間に植物の表面に有害な氷が形成されるのを回避又は少なくとも軽減することができる。
【0027】
切りたての花や植物である「生鮮物」を包装する場合、フィルムの通気性により二酸化炭素と酸素濃度が正常な範囲に維持され、これらの生産物のより長期に亘る保存が可能となる。
【0028】
更に、本発明の通気性ポリオレフィンフィルム1により(フィルムによって取り囲まれた環境内での低湿度変動に加えて)、温度変動も低下することが実験で実証された。
【0029】
特に、そのカバーが通気性ポリオレフィンフィルム1から成る温室では、日中の加熱と夜間の冷却が緩和される。
【0030】
発明者は実験で実証された結果について科学的な説明をするつもりはないが、日中の加熱と夜間の冷却の緩和は、ポリオレフィンフィルムが有する赤外線を反射する能力の結果であると信じている。
【0031】
日中、ポリオレフィンフィルムは光合成には関係のない赤外線の通過を大幅に減衰させることで温室内での温度の過剰な上昇を防止している。
【0032】
夜間、地面から放射された赤外線はポリオレフィンフィルムによって反射され、温室内に留まり、熱がその内部で維持される。
【0033】
発明者は、この部分的な赤外線遮蔽効果は、ポリオレフィン層内の充填剤、特には延伸工程中に細孔形成を促進するために使用した炭酸カルシウム(CaCO)充填剤の存在によって引き起こされると信じている。
【0034】
しかしながら、光合成で使用される放射線、つまり波長400から575nmを有する放射線は過度に減衰されることなくポリオレフィンフィルムを通過可能である。
【0035】
必要ならば、通気性ポリオレフィンフィルム1には、紫外線を取り除く又は少なくともフィルムが継続的に大気因子に曝露される際に生じるフィルムの劣化を減速可能な添加物を含有させてもよい。
【0036】
通気性ポリオレフィンフィルム1は更にスチレン熱可塑性エラストマーを含有していてもよい。
【0037】
この場合、スチレン熱可塑性エラストマーの量は10重量%から35重量%であり、充填剤の量は45重量%から55重量%であり、オレフィンの量は10重量%から35重量%である。
【0038】
考えられ得る実施形態において、スチレン熱可塑性エラストマーはKRATON(登録商標)(ベルギー、KRATON POLYMERS RESEARCH S.A.から入手可能)又はSEPTON(登録商標)(KURURAY Co.,Ltd.,Japanから入手可能)であってもよい。
【0039】
スチレン熱可塑性エラストマーの添加により、通気性ポリオレフィンフィルムに弾性特性が付与される。
【0040】
この特性は、フィルムが製品を痛めることなくその輪郭に沿うことから、花等の繊細な生産物をラッピングする際に高く評価される。
【0041】
第二のより好ましい実施形態においては、通気性ポリオレフィンフィルム1(場合によってはスチレン熱可塑性エラストマーを添加)を不織布2に接合し、積層フィルムを形成している(図2を参照のこと)。
【0042】
この接合処理は、熱溶融性接着剤又はヒートシール等の周知の技法で行うことができる。
【0043】
好ましくは、不織布はスパンボンドポリプロピレン系不織布である。
【0044】
こうして得られた積層フィルムは少なくとも500g/mO/24時間の水蒸気透過性を有している(MOCON社製のPERMATRAN 100K分析装置を用い、ASTM D6701−01規格に準拠して測定)。
【0045】
好ましくは、積層フィルムの水蒸気透過性は少なくとも1,000g/mO/24時間であり、より好ましくは少なくとも20,000g/mO/24時間である。
【0046】
透気度(ガーレーポロシメータを用いて、ATICELCA MC18−74及びTAPPI T460 om−88規格に準拠して測定)は空気100分/cc未満であり、好ましくは空気50分/cc未満である。
【0047】
通気性ポリオレフィンフィルム1の平均坪量は10から60g/m、より好ましくは25から40g/mである。
【0048】
通気性ポリオレフィン層1により上記の利点が得られる。
【0049】
不織層2により更なる利点が得られる。
【0050】
第一に、不織層により張力という点で強みが加わり、フィルム材料の縦横の両方向での機械的強度が上昇する。
【0051】
更に、不織布層2は通気性ポリオレフィンフィルム1と協同して積層フィルムで取り囲まれた空間内に拡散照明状態を作り出し、これにより温室内でのその位置を問うことなく、植物の均等な成長が促進される。
【0052】
更に、不織布2によりフィルムの断熱性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
同封の請求項で請求するように、考えられ得る実施形態の一部を図面を参照しながら以下にて説明する。
【図1】炭酸カルシウム及び/又は酸化マグネシウムを充填した通気性ポリオレフィンフィルムを図示している。
【図2】不織層に接合された通気性ポリオレフィン層を備えた積層フィルムを図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性ポリオレフィンフィルム(1)の農業での使用であり、フィルムはCaCO及び/又はMgO系充填剤を充填され、ASTM D6701−01規格に準拠した少なくとも500g/mO/24時間の水蒸気透過性を有し、ATICELCA MC19−74及びTAPPI T460 om−88規格に準拠した空気100分/cc未満の透気度を有し、平均坪量10から60g/mを有している、通気性ポリオレフィンフィルム(1)の農業での使用。
【請求項2】
ASTM D6701−01規格に準拠した水蒸気透過性が少なくとも1,000g/mO/24時間である点で変更された、請求項1に記載のフィルムの農業での使用。
【請求項3】
ASTM D6701−01規格に準拠した水蒸気透過性が少なくとも20,000g/mO/24時間である点で変更された、請求項1に記載のフィルムの農業での使用。
【請求項4】
ATICELCA MC18−74及びTAPPI T460 om−88規格に準拠した透気度が空気50分/cc未満である点で変更された、請求項1から3のいずれか1つに記載されたフィルムの農業での使用。
【請求項5】
フィルムが平均坪量25から40g/mを有する点で変更された、請求項1から4のいずれか1つに記載のフィルムの農業での使用。
【請求項6】
スチレン熱可塑性エラストマーを添加した点で変更された、請求項1から5のいずれか1つに記載の通気性ポリオレフィンフィルムの農業での使用。
【請求項7】
通気性積層フィルム(1、2)の農業での使用であり、積層フィルムはCaCO及び/又はMgO系充填剤を充填され、かつ不織布(2)に接合された通気性ポリオレフィンフィルム(1)を備え、前記積層フィルム(1、2)がASTM D6701−01規格に準拠した少なくとも500g/mO/24時間の水蒸気透過性を有し、ATICELCA MC19−74及びTAPPI T460 om−88規格に準拠した空気100分/cc未満の透気度を有し、全平均坪量10から60g/mを有している、通気性積層フィルムの農業での使用。
【請求項8】
ASTM D6701−01規格に準拠した水蒸気透過性が少なくとも1,000g/mO/24時間である点で変更された、請求項7に記載のフィルムの農業での使用。
【請求項9】
ASTM D6701−01規格に準拠した水蒸気透過性が少なくとも1,000g/mO/24時間である点で変更された、請求項7に記載の通気性積層フィルム(1、2)の農業での使用。
【請求項10】
ASTM D6701−01規格に準拠した水蒸気透過性が少なくとも20,000g/mO/24時間である点で変更された、請求項7に記載の通気性積層フィルム(1、2)の農業での使用。
【請求項11】
ATICELCA MC18−74及びTAPPI T460 om−88規格に準拠した透気度が空気50分/cc未満である点で変更された、請求項7又は8又は9に記載の通気性積層フィルム(1、2)の農業での使用。
【請求項12】
フィルムが平均坪量25から40g/mを有する点で変更された、請求項7又は8又は9又は10に記載の通気性積層フィルム(1、2)の農業での使用。
【請求項13】
前記通気性ポリオレフィンフィルム(1)にスチレン熱可塑性エラストマーを添加した点で変更された、請求項1から12のいずれか1つに記載の通気性積層フィルム(1、2)の農業での使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−520047(P2009−520047A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544895(P2008−544895)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012207
【国際公開番号】WO2007/071364
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(508149917)
【Fターム(参考)】