説明

通気溝付き外断熱パネル

【課題】 外壁面に開口部などがあっても通気性を確保でき、流路抵抗が小さく湿気などを円滑に排出することができる通気溝付き外断熱パネルを提供すること。
【解決手段】 合成樹脂発泡体の板状の断熱材11の屋外側となる表面に上下方向に沿う縦通機溝12を形成するとともに、この縦通気溝12に交差する斜め通気溝13を形成し、この断熱材11の屋外側に外装材または外装下地材14を設ける。
これにより、縦通気溝12と斜め通気溝13との組み合わせによって開口部7などでパネル天端開口が塞がれる場合でも、最小限の斜め通気溝13から縦通気溝12を介して湿気などを排出することが可能となり、圧力損失を低減し、効率的に湿気を排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通気溝付き外断熱パネルに関し、流路抵抗が小さく湿気などを円滑に排出できるとともに、外壁面に窓などの開口部などがあっても通気性を確保できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の外断熱工法は、従来の充填断熱工法に比べて断熱材で建築物を切れ目なく覆うことができ、断熱性能に優れることから、近年普及が進んでいる。
また、この外断熱工法では、断熱材の屋外側に通気層を設けることで、建築物の壁体内に冬季の高温高湿の室内から屋外側へ湿気を排出させ、断熱材の内部での結露を防止することが行われつつある。
【0003】
このような通気層を備えた外断熱を施工できるパネルとして、例えば図5に示すように、外断熱パネル1が用いられ、断熱材2の屋外側の表面に上下方向に沿う通気溝3を設け、断熱材2の外側に外装材4を接着して構成されたものが提案されている(特許文献1中の従来技術など参照)。この外断熱パネル1によれば、複数の通気溝3で通気層を構成し、各通気溝3に流入した室内からの湿気を含んだ空気が、同温度の乾燥した空気より軽いため、浮力により通気溝内を上昇し、通気溝の天端開口から排出させることで結露を防止するようにしている。
【0004】
ところが、建築物の外壁面に開口部などがあると、外断熱パネルの天端開口が塞がれることになり、通気溝に流入した湿気を含む空気を排出することができなくなる。
そこで、外断熱パネルの通気溝の天端開口が塞がれた場合でも外壁面の開口部に隣接して取り付ける外断熱パネルの通気溝に連通させることで通気性を確保できるようにした外断熱パネルが考えられ、種々提案されている(特許文献1、2参照)。
【0005】
例えば図6に示す外断熱パネル1Aでは、縦方向の通気溝3に加えて横方向の通気溝3aを形成したものである。
また、図7に示す外断熱パネル1Bでは、通気層用突起5をひし形状に形成することで、直交する斜め方向の通気溝3bを形成したものである。
さらに、図8に示す外断熱パネル1Cでは、通気層用突起6を6角形状に形成することで、直線状の通気溝3と斜線状の通気溝3bとを組み合わせた通気溝を形成したものである。
【特許文献1】特開2005−188050号公報
【特許文献2】特開2006−169892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような外断熱パネル1A,1B,1Cの何れでも縦方向の通気溝3と横方向の通気溝3aを形成したり、交差する斜め方向の通気溝3b,3bを形成することで、例え外壁面に開口部7があり、裁断したパネル1A´〜1C´の天端開口8が塞がれても隣接するパネル1A〜1Cに横方向の通気溝3aあるいは斜め方向の通気溝3bを介して通気溝同士を連通させることができ、図中の矢印A,A´、B,B´、C,C´に示すように、湿気を排出し、通気性を確保することができるようにしている。
【0007】
しかし、これら外断熱パネルの通気性に付いては、必ずしも十分でない。すなわち、横方向の通気溝3aを形成した外断熱パネル1Aでは、隣接パネル1A´への湿気の移動が水平方向になり、湿気に作用する浮力だけでは、十分な移動が起こらず、湿気を排出できない虞があるという問題がある。
また、ひし形状の通気層用突起5を形成することで、交差する斜め方向の通気溝3b,3bを形成したパネル1Bでは、斜め方向の通気溝3bで隣接パネル1Bへの湿気の移動は横方向の通気溝に比べ容易になるものの、上方にはジグザグ状の通気溝3b,3bとなり、直線状の通気溝に比べその長さが√2倍に長くなって圧力損失の増大を招いてしまうという問題がある。
さらに、6角形状の通気層用突起6を形成したパネル1Cでも直線状の通気溝3とジグザグ状の通気溝3b、3bとなり、ひし形状に比べ、わずかに圧力損失を低減できるものの湿気の排出性能としては改良の余地がある。
また、裁断したパネル1A´〜1C´を使用する場合に、隣接するパネル1A〜1Cと通気溝同士を確実に連通させる必要がある。
【0008】
この発明は、かかる従来技術の問題点と要望に鑑みてなされたもので、外壁面に開口部などがあっても通気性を確保でき、流路抵抗が小さく湿気などを円滑に排出することができる通気溝付き外断熱パネルを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来技術が有する課題を解決するこの発明の請求項1記載の通気溝付き外断熱パネルは、合成樹脂発泡体の板状の断熱材の屋外側となる表面に上下方向に沿う縦通機溝を形成するとともに、この縦通気溝に交差する斜め通気溝を形成し、この断熱材の屋外側に外装材または外装下地材を設けてなることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、この発明の請求項2記載の通気溝付き外断熱パネルは、合成樹脂発泡体の板状の断熱材の屋外側となる表面に上下方向に沿う縦通機溝を形成するとともに、この縦通気溝に交差する斜め通気溝を形成し、この断熱材の屋外側に前記縦通気溝および斜め通気溝を覆うスチレンペーパーを設けてなることを特徴とするものである。
【0011】
また、この発明の請求項3記載の通気溝付き外断熱パネルは、請求項1または2記載の構成に加え、前記斜め通気溝を前記縦通気溝に対して45度で交差するとともに、当該縦通気溝に対して線対称に形成してなることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、この発明の請求項4記載の通気溝付き外断熱パネルは、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記縦通気溝および前記斜め通気溝に交差して前記断熱材の屋外側となる表面に左右方向に沿う横通気溝を形成してなることを特徴とするものである。
【0013】
また、この発明の請求項5記載の通気溝付き外断熱パネルは、請求項4記載の構成に加え、前記縦通気溝と前記横通気溝を90度回転対称に形成してパネルの上下・左右を任意に配置可能に構成してなることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、この発明の請求項6記載の通気溝付き外断熱パネルは、前記請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、通気溝付き外断熱パネルの屋外側に、前記縦通気溝、前記斜め通気溝、前記横通気溝の配置を表示する表示部を設けてなることを特徴とするものである
【0015】
また、この発明の請求項7記載の通気溝付き外断熱パネルは、請求項6記載の構成に加え、前記表示部を、スチレンペーパー、外装下地材あるいは外装材に直接設け、あるいは外装材に表示部材を介して設けて構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明の請求項1記載の通気溝付き外断熱パネルによれば、合成樹脂発泡体の板状の断熱材の屋外側となる表面に上下方向に沿う縦通機溝を形成するとともに、この縦通気溝に交差する斜め通気溝を形成し、この断熱材の屋外側に外装材または外装下地材を設けたので、縦通気溝と斜め通気溝との組み合わせによって最小限の斜め通気溝から縦通気溝を介して湿気などを排出することが可能となり、圧力損失を低減し、効率的に湿気を排出することができる。
これにより、開口部などでパネル天端開口が塞がれる場合でも、通気性を確保でき、流路抵抗を抑えて湿気などを円滑に排出することができる
【0017】
この発明の請求項2記載の通気溝付き外断熱パネルによれば、合成樹脂発泡体の板状の断熱材の屋外側となる表面に上下方向に沿う縦通機溝を形成するとともに、この縦通気溝に交差する斜め通気溝を形成し、この断熱材の屋外側に前記縦通気溝および斜め通気溝を覆うスチレンペーパーを設けたので、縦通気溝と斜め通気溝との組み合わせによって最小限の斜め通気溝から縦通気溝を介して湿気などを排出することが可能となり、圧力損失を低減し、効率的に湿気を排出することができる。
これにより、スチレンペーパーの外側にモルタルなどの湿式の外装仕上げを施工する場合でも、通気溝を埋めることがなく、しかも開口部などでパネル天端開口が塞がれる場合でも、通気性を確保でき、流路抵抗を抑えて湿気などを円滑に排出することができる
【0018】
また、この発明の請求項3記載の通気溝付き外断熱パネルによれば、前記斜め通気溝を前記縦通気溝に対して45度で交差するとともに、当該縦通気溝に対して線対称に形成したので、斜め通気溝が縦通気溝に対して45度で交差するとともに、斜め通気溝同士が直交することになり、パネルのどの部分が塞がれても最小限の斜め通気溝を介して縦通気溝から湿気を一層効率的に排出することができる。
【0019】
さらに、この発明の請求項4記載の通気溝付き外断熱パネルによれば、前記縦通気溝および前記斜め通気溝に交差して前記断熱材の屋外側となる表面に左右方向に沿う横通気溝を形成したので、パネルを切断して使用する場合に横通気溝が縦に配置されても通気性を確保して湿気を排出することができる。
【0020】
また、この発明の請求項5記載の通気溝付き外断熱パネルによれば、前記縦通気溝と前記横通気溝を90度回転対称に形成してパネルの上下・左右を任意に配置可能に構成したので、パネルを切断して使用する場合に横通気溝が縦に配置されても隣接するパネルの縦通気溝と同一位置で連通させることができ、一層確実に通気性を確保して湿気を排出することができる。
【0021】
さらに、この発明の請求項6記載の通気溝付き外断熱パネルによれば、前記請求項1〜5のいずれかに記載の通気溝付き外断熱パネルの屋外側に、前記縦通気溝、前記斜め通気溝、前記横通気溝の配置を表示する表示部を設けたので、開口部などのため裁断したパネルを使用する場合でも隣接するパネルの通気溝と連通状態となることを表示部によって簡単に確認することができる。
【0022】
また、この発明の請求項7記載の通気溝付き外断熱パネルによれば、前記表示部を、スチレンペーパー、外装下地材または外装材に直接設け、あるいは外装材に表示部材を介して設けて構成したので、スチレンペーパー、外装下地材または外装材に連続した線や断続した破線などを描いたり、印刷などによる表示部や外装下地材や外装材に形成する凹状または凸状の表示部とすること、あるいは外装材に紙やフィルムなどの表示部材を介して表示部を設けることで、裁断したパネルと隣接するパネルの通気溝を確実に連通させることができ、外装仕上げ塗装などに支障のない表示部としたり、表示部材を用いてこれを取り除くことで、外装表面への影響をなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の最良の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1および図2はこの発明の通気溝付き外断熱パネルを乾式の外断熱パネルに適用した一実施の形態にかかり、図1(a)はパネルの底面図、図1(b)は裁断したパネルとともに示す外装材を省略した正面図、図2は裁断したパネルとともに示す正面図である。
【0024】
この通気溝付き外断熱パネルは、コンクリート建築物の外断熱用の型枠兼用の外断熱パネルとして使用し、外型枠として内型枠と対向させて組み立てコンクリートを打設した後そのまま残すことで、コンクリートの外壁面に外装下地材や外装材および板状の断熱材を取り付けた状態としたり、あるいは既設のコンクリート建築物に取り付けることで、板状の断熱材の取り付けと同時に外装下地材や外装材の取り付けができるようにするものである。
また、乾式の外装仕上げに加え、スチレンペーパーを取り付けたパネルでは、モルタルなどによる湿式の外装仕上げもできる。
さらに、この通気溝付き外断熱パネルの外装下地材と板状の断熱材との間には、通気溝を備えるとともに、特に窓などの開口部があってパネルの天端開口が塞がれる場合でも隣接するパネルと通気溝を連通させて通気性を確保できるようにしたものである。
【0025】
この通気溝付き外断熱パネル10では、例えば図1に示すように、開口部7の下方に配置した、裁断した通気溝付き外断熱パネル10´から隣接する通気溝付き外断熱パネル10に湿気が移動する際に、湿気の浮力の効果を阻害せず、しかも隣接する通気溝付き外断熱パネル10に移動した湿気が最短距離の通気溝を流路として排出できる通気溝について、鋭意検討し、実験を行った結果(表1参照)、板状の断熱材11の屋外側の表面に、上下方向の縦通気溝12と、この縦通気溝12に交差する斜め通気溝13を形成する必要があることが分かった。
【0026】
そこで、この通気溝付き外断熱パネル10では、硬質発泡プラスチックの板状の断熱材11を備え、この板状の断熱材11の屋外側となる表面には、上下方向に沿う縦通気溝12が複数本平行に形成されるとともに、この縦通気溝12に交差する斜め通気溝13が複数本平行に形成してある。
そして、この通気溝付き外断熱パネル10では、これら縦通気溝12および斜め通気溝13を覆って断熱材11の屋外側に外装下地材14(、あるいは外装材)が取り付けてある。
【0027】
この通気溝付き外断熱パネル10では、斜め通気溝13が縦通気溝12に対して45度の角度で交差するとともに、縦通気溝12に対して線対称に形成され、互いに直交するように形成してあり、隣接する斜め通気溝13,13同士ではジグザグの通気流路となっている。
これにより、この通気溝付き外断熱パネル10では、最小の構成単位として、2本の縦通気溝12の間にジグザグに直交する斜め通気溝13,13が配置され、上下2つのひし形状の突起15の間に上下方向に底辺が位置する左右2つの直角二等辺3角形状の突起16,16が位置するようになっている。
【0028】
したがって、この通気溝付き外断熱パネル10を用い、建築物の開口部7の下部に裁断した通気溝付き外断熱パネル10´を配置する場合には、図1(b)に示すように、斜め通気溝13がそれぞれ隣接する通気溝付き外断熱パネル10の斜め通気溝13と連通するように取り付けることで、例えば裁断した通気溝付き外断熱パネル10´の縦通気溝12中の湿気は、図中の矢印W1で示すように、斜め通気溝13を介して最短距離の縦通気溝12を経て外部に排出されることになる。なお、図中の矢印Wは通常のパネルでの湿気の流れを示す。
これにより、裁断した通気溝付き外断熱パネル10´から隣接する通気溝付き外断熱パネル10に斜め通気溝13を介して斜め連通溝13同士を連通させることができ、しかも移動する湿気は、斜め方向の上昇流路(斜め通気溝13)から開口部7に最も近い縦通気溝12を移動することになり、流路抵抗や圧力損失を抑え、湿気に作用する浮力だけで効率的に排出することができる。
【0029】
この通気溝付き外断熱パネル10を構成する合成樹脂発泡体の板状の断熱材11は、断熱効果の高い熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂素材で形成された発泡プラスチックのボードで、例えばポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、フェノールフォームなどが用いられる。
なかでも断熱材11としては、外断熱工法としてコンクリートの外面に取り付けられることから、コンクリートに含まれる湿度分を透過させることができる、透湿性に優れたものが好ましく、金型成形により縦通気溝12および斜め通気溝13の溝加工が容易な硬質ポリスチレンフォームのビーズ法によるものが好ましい。
【0030】
このビーズ法の硬質ポリスチレンフォームは、水は通さないが、水蒸気(湿度分)は通し、その透湿係数は、100〜300ng/m2sPa程度であり、コンクリートの透湿係数が15〜30ng/m2sPaであるのに比べ、透湿性に優れる。
【0031】
この硬質発泡プラスチックの断熱材11としては、密度が20kg/m3以上のものが熱伝導率の点で好ましく、より好ましくは密度が27kg/m3以上のものであり、厚さは30〜60mm以上必要であり、好ましくは次世代省エネの点から厚さは40〜60mm以上必要である。
【0032】
また、断熱材11の屋外側に縦通気溝12および斜め通気溝13を覆うように設ける外装下地材14あるいは、外装材としては、セメント板、ALC板、石板、サイディング材、金属板など、通常、建築物に使用される外装下地材や外装材が使用することができ、例えば外装下地材12として軽量モルタル板(透湿係数:243ng/m2sPa)を、外装材として塗装材(透湿係数:500ng/m2sPa)を挙げることができる。
【0033】
なお、湿式の外装仕上げとしてモルタルなどを施工する場合には、通気溝付き外断熱パネル10としては、図示省略したが、例えば図1に示す断熱材11の縦通気溝12および斜め通気溝13の溝にモルタルが入り込むことがないようにすれば良く、外装下地材14や外装材に替え、スチレンペーパーを接着などで設けることで構成したものを使用する。
特に、合成樹脂発泡体の板状の断熱材11として硬質ポリスチレンフォームを用い、これにスチレンペーパーを熱融着することで、湿式の外装仕上げ用の通気溝付き外断熱パネルを構成すれば、その製作が容易となる。
【0034】
このような断熱材11の縦通気溝12および斜め通気溝13の溝をスチレンペーパーを接着などで設けた通気溝付き外断熱パネルにおいても、建築物の開口部の下部に裁断した通気溝付き外断熱パネルを配置し、斜め通気溝13がそれぞれ隣接する通気溝付き外断熱パネルの斜め通気溝と連通するように取り付けることで、湿気を斜め通気溝を介して最短距離の縦通気溝から外部に排出することができる。
【0035】
このような通気溝付き外断熱パネル10では、建築物に開口部7などがあり、裁断した通気溝付き外断熱パネル10´を開口部7に天端開口が塞がれる状態で設置され、隣接する通常の通気溝付き外断熱パネル10と斜め通気溝13,13同士を連通させる必要がある。
そこで、通気溝付き外断熱パネル10の表面に、図2に示すように、縦通気溝12および斜め通気溝13の位置が分かるように表示部17を設けてあり、外装下地材14の表面に線を描くことで表示し、位置が目視できるようにしてある。
これにより、図3に示すように、斜め通気溝13,13同士が、裁断した通気溝付き外断熱パネル10´と通常の通気溝付き外断熱パネル10とで連通しない状態で施工されることを防止できる。
【0036】
このような通気溝付き外断熱パネル10に設ける表示部17としては、外装下地材やスチレンペーパーのなどのように、外装仕上げをその上に施す場合には、外装仕上げに支障のない表示方法であれば良く、例えば薄い彩色の線や破線を描いたり、直接印刷することで構成しても良い。
また、外装下地材やスチレンペーパーなどに浅い凹部や低い凸部を一体または別体に形成しても良く、外側から目視でき、外装仕上げに支障がないものであれば良い。
さらに、外装材に設ける表示部17としては、その表面自体が外装仕上げ面になることから、表示部材を介して表示部を設けるようにすれば良く、例えば紙やフィルムなどに描いたり、印刷したものを貼り合わせ、使用後に取り除く使い捨てとしたり、型紙やパターンゲージのように当てて使用するものを別に用意し、繰り返し使用することで通気溝の配置を確認できるようにすることもできる。
【0037】
このような通気溝付き外断熱パネル10では、縦通気溝12と斜め通気溝13によって断熱材11の外装下地材14など(外装材やスチレンペーパー)との接着面積が変化し、これによって接着強度が変化することになることから、縦通気溝12および斜め通気溝13を通気に必要な流路面積と接着強度を考慮して設定する。
なお、縦通気溝12および斜め通気溝13の深さについては、溝深さが大きくなると、通気溝部分の断熱材11が薄くなって断熱効果が小さくなり、しかもコンクリートの側圧に対する強度も低下することを考慮して設定すれば良い。
【0038】
このような通気溝付き外断熱パネル10は、これまでの型枠兼用断熱パネルと同様にして外枠として組み立てることで施工したり、既設のコンクリート壁面に取り付けることで施工する。そして、コンクリート壁面に開口部がある場合には、開口部の幅に合わせるとともに、隣接する通気溝付き外断熱パネル10の連結部(目地部)に合わせた長さに裁断した通気溝付き外断熱パネル10´を用意し、通気溝を表示した表示部17を利用して斜め通気溝13,13同士が連通するように施工すれば良い。
【0039】
この通気溝付き外断熱パネル10によれば、合成樹脂発泡体の板状の断熱材11の屋外側となる表面に上下方向に沿う縦通機溝12を形成するとともに、この縦通気溝12に交差する斜め通気溝13を形成し、この断熱材11の屋外側に外装材または外装下地材14を設けたので、縦通気溝12と斜め通気溝13との組み合わせによって最小限の斜め通気溝13から縦通気溝12を介して湿気などを排出することが可能となり、圧力損失を低減し、効率的に湿気を排出することができる。
これにより、開口部7などでパネル天端開口が塞がれる場合でも、通気性を確保でき、流路抵抗を抑えて湿気などを円滑に排出することができる
【0040】
この通気溝付き外断熱パネルによれば、図示省略したが、合成樹脂発泡体の板状の断熱材の屋外側となる表面に上下方向に沿う縦通機溝を形成するとともに、この縦通気溝に交差する斜め通気溝を形成し、この断熱材の屋外側に前記縦通気溝および斜め通気溝を覆うスチレンペーパーを設けたので、スチレンペーパーの外側にモルタルなどの湿式の外装仕上げを施工する場合でも、通気溝を埋めることがなく、しかも開口部などでパネル天端開口が塞がれる場合でも、通気性を確保でき、流路抵抗を抑えて湿気などを円滑に排出することができる
【0041】
また、この通気溝付き外断熱パネル10によれば、斜め通気溝13を縦通気溝12に対して45度で交差するとともに、縦通気溝12に対して線対称に形成したので、斜め通気溝13,13が縦通気溝12に対して45度で交差するとともに、斜め通気溝13,13同士が直交することになり、パネル10のどの部分が塞がれても最小限の斜め通気溝13を介して縦通気溝12から湿気を一層効率的に排出することができる。
【0042】
さらに、この通気溝付き外断熱パネル10によれば、通気溝付き外断熱パネル10の屋外側である外装下地材14やスチレンペーパーに、縦通気溝12、斜め通気溝13の配置を表示する表示部17を設けたので、開口部7などのため裁断したパネル10´を使用する場合でも隣接するパネル10の通気溝13と連通状態となることを表示部17によって簡単に確認することができる。
【0043】
また、この通気溝付き外断熱パネル10によれば、表示部17を、スチレンペーパー、外装下地材14または外装材に直接設け、あるいは外装材に表示部材を介して設けて構成したので、スチレンペーパー、外装下地材14または外装材に連続した線や断続した破線などを描いたり、印刷などによる表示部17や外装下地材や外装材に形成する凹状または凸状の表示部17とすること、あるいは外装材に紙やフィルムなどの表示部材を介して表示部を設けることで、裁断したパネル10´と隣接するパネル10の通気溝を確実に連通させることができ、外装仕上げ塗装などに支障のない表示部17としたり、表示部材を用いてこれを取り除くことで、外装表面への影響をなくすことができる。
【0044】
次に、この発明の他の一実施の形態について、図4に基づいて説明するが、すでに説明した通気溝付き外断熱パネル10と同一部分には、同一記号を記し、説明は省略する。
この通気溝付き外断熱パネル10Aは、すでに説明した通気溝付き外断熱パネル10のパネル、特に裁断して使用するパネルの上下・左右を任意として施工することができるようにしたものである。
すなわち、この通気溝付き外断熱パネル10Aでは、縦通気溝12および斜め通気溝13に交差して断熱材11の屋外側となる表面に左右方向に沿う横通気溝18を形成してある。そして、この横通気溝18を縦通気溝12と90度回転対称に形成してある。
【0045】
これにより、通気溝付き外断熱パネル10Aを90度回転しても縦通気溝12と横通気溝18とが回転前と同一の配置となり、さらに90回転して上下を反転しても同一の配置になることから、パネル10Aは上下・左右を任意に配置することが可能となる。
したがって、パネルを裁断して使用する通気溝付き外断熱パネル10A´では、横通気溝18が縦に配置されても隣接するパネル10の縦通気溝12と同一位置で連通させることができ、図4中、矢印W2で示すように、湿気が排出でき、一層確実に通気性を確保して湿気を排出することができる。
【0046】
この通気溝付き外断熱パネル10Aにおいても表示部17を設けることで、通気溝同士の連通状態を簡単に確認できるとともに、紙やフィルムなどの表示部材を介して表示部を設け、表示部材を取り除くことで、外装仕上げに支障のない外装表面を確保することができる。
【0047】
このように構成した通気溝付き外断熱パネル10Aによれば、縦通気溝12および斜め通気溝13に交差して断熱材11の屋外側となる表面に左右方向に沿う横通気溝18を形成したので、パネル10Aを切断して使用する場合に横通気溝18が縦に配置されても通気性を確保して湿気を排出することができる。
また、この通気溝付き外断熱パネル10Aによれば、縦通気溝12と横通気溝13を90度回転対称に形成してパネル10Aの上下・左右を任意に配置可能に構成したので、パネル10Aを切断して使用する場合に横通気溝18が縦に配置されても隣接するパネル10Aの縦通気溝12と同一位置で連通させることができ、一層確実に通気性を確保して湿気を排出することができる。
【実施例】
【0048】
以下にこの発明の実施例について、比較例とともに説明する。
この実施例は、建築物の開口部で天端開口が塞がれた通気溝付き外断熱パネル10´から隣接する通気溝付き外断熱パネル10への通気性を確認するため、温風を入れ、風速を測定したものである。
実施例では、図1(b)に示した開口部7の下に設置する裁断した通気溝付き外断熱パネル10´とこれに隣接して同一幅(図1の半分の幅)の通気溝付き外断熱パネル10を連結した場合において、図中の矢印W1で示すパネル下部の入口からドライヤーで温風を送り、パネル入口の風速およびパネル上部の出口での風速をパネルを垂直にした状態で測定した。
なお、通気溝の幅は20mm,深さは10mm、通常のパネルの長さを910mm、裁断したパネルの長さを450mmとした。
その結果を表1に示した。同表から明らかなように、縦通気溝と斜め通気溝を設けた実施例のパネルでは、入口風速が平均6.3m/secであり、これに対する出口風速が平均で6.1m/secとほとんど変化がなく、通気性が十分確保できることが分かる。
【0049】
(比較例1)
比較例1として、図6に示したパネルのように、縦通気溝3と横通気溝3aを形成した以外は、実施例と同一にして矢印A´の入口と出口の風速を測定した。
その結果は、表1に示すように、入口風速が平均6.3m/secであるのに対し、出口風速の平均が5.0m/secとなり、流路抵抗が大きくなった。
【0050】
(比較例2)
比較例2として、図7に示したパネルのように、互いに直交する斜め通気溝3b,3baを形成した以外は、実施例と同一にして矢印B´の入口と出口の風速を測定した。
その結果は、表1に示すように、入口風速が平均6.3m/secであるのに対し、出口風速の平均が4.7m/secとなり、流路抵抗がさらに大きくなった。
【0051】
(結果の考察)
このような実施例および比較例から裁断したパネルとこれに隣接するパネルとの通気性を確保するためには、斜め通気溝や横通気溝を形成して隣接するパネルと連通させるだけでは足りず、縦通気溝が必ず必要であり、この縦通気溝がないと、通気流路が長くなるとともに、流路抵抗が増大し、湿気に作用する浮力だけで湿気を上昇させ、パネルの上端開口から排出することができなくなってしまう。
なお、この場合の横通気溝は通気性の確保の観点よりもパネルの上下・左右を任意に選んで施工したり、裁断できるようにすることに有効となるものである。
【0052】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の通気溝付き外断熱パネルを乾式の外断熱パネルに適用した一実施の形態にかかり、(a)はパネルの底面図、(b)は裁断したパネルとともに示す外装材を省略した正面図である。
【図2】この発明の通気溝付き外断熱パネルを乾式の外断熱パネルに適用した一実施の形態にかかる裁断したパネルとともに示す正面図である。
【図3】通気溝の連通不良状態の説明図である。
【図4】この発明の通気溝付き外断熱パネルを乾式の外断熱パネルに適用した他の一実施の形態にかかる裁断したパネルとともに示す外装材を省略した正面図である。
【図5】従来の外断熱パネルの底面図および正面図である。
【図6】従来の他の外断熱パネルの底面図および正面図である。
【図7】従来の外断熱パネルの底面図および正面図である。
【図8】従来の他の外断熱パネルの底面図および正面図である。
【符号の説明】
【0054】
10,10A 通気溝付き外断熱パネル
11 板状の断熱材
12 縦通気溝
13 斜め通気溝
14 外装下地材
15 ひし形状の突起
16 直角二等辺3角形状の突起
17 表示部
18 横通気溝
W,W1,W2 湿気の流れ
7 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂発泡体の板状の断熱材の屋外側となる表面に上下方向に沿う縦通機溝を形成するとともに、この縦通気溝に交差する斜め通気溝を形成し、この断熱材の屋外側に外装材または外装下地材を設けてなることを特徴とする通気溝付き外断熱パネル。
【請求項2】
合成樹脂発泡体の板状の断熱材の屋外側となる表面に上下方向に沿う縦通機溝を形成するとともに、この縦通気溝に交差する斜め通気溝を形成し、この断熱材の屋外側に前記縦通気溝および斜め通気溝を覆うスチレンペーパーを設けてなることを特徴とする通気溝付き外断熱パネル。
【請求項3】
前記斜め通気溝を前記縦通気溝に対して45度で交差するとともに、当該縦通気溝に対して線対称に形成してなることを特徴とする請求項1または2記載の通気溝付き外断熱パネル。
【請求項4】
前記縦通気溝および前記斜め通気溝に交差して前記断熱材の屋外側となる表面に左右方向に沿う横通気溝を形成してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の通気溝付き外断熱パネル。
【請求項5】
前記縦通気溝と前記横通気溝を90度回転対称に形成してパネルの上下・左右を任意に配置可能に構成してなることを特徴とする請求項4記載の通気溝付き外断熱パネル。
【請求項6】
前記請求項1〜5のいずれかに記載の通気溝付き外断熱パネルの屋外側に、前記縦通気溝、前記斜め通気溝、前記横通気溝の配置を表示する表示部を設けてなることを特徴とする通気溝付き外断熱パネル。
【請求項7】
前記表示部を、スチレンペーパー、外装下地材または外装材に直接設け、あるいは外装材に表示部材を介して設けて構成したことを特徴とする請求項6記載の通気溝付き外断熱パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−263958(P2009−263958A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113695(P2008−113695)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】