通気部材および通気構造
【課題】通気膜に向かって水滴等が流れていくことを防止でき、通気性能を確実に維持できる通気部材と通気構造を提供する。
【解決手段】本発明の通気構造100Aは、筐体91と、筐体91の開口部91kに取り付けられた通気部材13Aとを含む。通気部材13Aは、筐体91の内外の通気経路となる貫通孔11hを有する支持体11と、貫通孔11hを塞ぐように支持体11に固定された通気膜6とを備えている。通気膜6の厚さ方向を高さ方向と定義したとき、支持体11は、筐体91側の開口端面である第2開口端面11q(筐体91の外表面91pに一致する)から他方の第1開口端面11pまでの高さH1が4mm以上に調整されている。
【解決手段】本発明の通気構造100Aは、筐体91と、筐体91の開口部91kに取り付けられた通気部材13Aとを含む。通気部材13Aは、筐体91の内外の通気経路となる貫通孔11hを有する支持体11と、貫通孔11hを塞ぐように支持体11に固定された通気膜6とを備えている。通気膜6の厚さ方向を高さ方向と定義したとき、支持体11は、筐体91側の開口端面である第2開口端面11q(筐体91の外表面91pに一致する)から他方の第1開口端面11pまでの高さH1が4mm以上に調整されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車部品、電子部品等を収容する筐体に装着される通気部材に関する。また、通気部材を用いた通気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ランプ、センサ、ECU(electronic control unit)のような自動車の電装部品を収容する筐体には、筐体の内部と外部との通気を確保するとともに、筐体内部への異物の侵入を阻止する通気部材が取り付けられている。そのような通気部材の一例が特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている通気部材は、図13に示すごとく、通気膜202が配置された支持体203と、通気膜202を覆うように支持体203に取り付けられたカバー部品204とを備えている。このような通気部材201を、Oリング205を介して筐体206の開口部207に固定する。通気膜202を気体が透過することにより、筐体206の内外の通気を確保できる。カバー部品204は、外力によって通気膜202が損傷したり、塵芥の堆積によって通気膜202の通気性能が低下したりすることを防止する。
【特許文献1】特開2004−47425号公報
【特許文献2】特開2003−336874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図13で説明した通気部材は、筐体の開口部に簡単に取り付けることが可能である。また、筐体の外表面からの突出高さが比較的小さい。このことは、一見すると、通気部材が余分なスペースを取らないので好ましいと考えられる。しかしながら、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、常にそうとは限らないことが判明した。
【0005】
具体的には、通気部材を筐体の開口部に取り付けた状態で、通気部材の通気膜と、筐体の外表面との距離が近接している場合を考える。このような場合において、筐体の外表面に水滴や油滴が付着すると、通気膜を固定している支持体の側面を伝って水滴等が簡単に通気膜の表面に向かって流れていく可能性があることが分かった。こうした現象は、通気部材と筐体との境界近傍に水滴や油滴が滞留している状態で、筐体内の気圧が外気圧よりも急に低くなった場合に顕著に現れると考えられる。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明は、筐体の外表面に水滴等が付着した場合であっても、通気膜に向かって水滴等が流れていくことを防止でき、通気性能を確実に維持できる通気部材を提供することを目的とする。また、その通気部材を用いた通気構造を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
換気を行うべき筐体に取り付けられる通気部材であって、
筐体の内外の通気経路としての貫通孔を有する支持体と、貫通孔を塞ぐように支持体に固定された通気膜とを備え、
通気膜の厚さ方向を高さ方向と定義したとき、
支持体は、一方の開口端面から他方の開口端面に至るまで貫通孔が高さ方向に延びるように形成され、一方の開口端面から他方の開口端面までの高さが4mm以上に調整されている、通気部材を提供する。
【0008】
また、他の側面において、本発明は、
換気を行うべき筐体に取り付けられる通気部材であって、
筐体の内外の通気経路としての貫通孔を有する支持体と、貫通孔を塞ぐように支持体に固定された通気膜とを備え、
支持体は、筐体に接続されるべき部分であって、通気膜が配置されている側から筐体に接続される側に向かうにつれて、通気膜の厚さ方向と直交する横方向の断面に現れる外形のなす面積が連続的または段階的に拡大している基体部を含む、通気部材を提供する。
【0009】
さらに、他の側面において、本発明は、
換気を行うべき筐体に取り付けられる通気部材であって、
筐体の内外の通気経路としての内部空間と、内部空間と外部とを連通する開口部とを有する支持体と、開口部を塞ぐように支持体に固定された通気膜とを備え、
通気膜の厚さ方向を高さ方向と定義したとき、高さ方向における支持体の一方の端面が、筐体に直接または他部材を介して固定される固定予定面とされ、固定予定面から開口部が形成されている他方の端面までの高さが4mm以上に調整されている、通気部材を提供する。
【0010】
他の側面において、本発明は、換気を行うべき筐体と、筐体の開口部に取り付けられた上述の通気部材とを含む、通気構造を提供する。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明の通気部材(または通気構造)は、筐体の外表面から反対側の開口端面までの高さが4mm以上と十分に確保されている。したがって、通気部材と筐体との接続箇所等に水滴等が滞留した場合であっても、水滴等が通気膜上に簡単に流れていくことを防止できる。すなわち、筐体の外表面に水滴等が付着した場合でも、通気性能を確実に維持できる通気部材を実現できる。
【0012】
また、他の側面における本発明の通気部材(または通気構造)は、通気膜を固定する支持体に含まれる基体部の横断面積が、筐体に近づくにつれて連続的または段階的に拡大している。このような構造によれば、通気部材と筐体との境界付近に水滴等が滞留しにくくなる。この結果、筐体の外表面に水滴等が付着した場合でも、水滴等が通気膜の上に流れていくことを防止でき、ひいては通気性能を確実に維持できる通気部材を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1Aは、本発明にかかる第1実施形態の通気部材の斜視図であり、図1Bは、その断面斜視図である。図12は、図1Aの通気部材を取り付けた筐体の全体図である。図12に示すように、図1A,1Bに示す通気部材13Aは、例えば自動車の電装部品の筐体91の開口部91kに取り付けられて、筐体91の内外の換気を行うための通気構造100Aを構成する。なお、筐体は、図12に示すような箱形のものに限定されるわけではなく、換気を必要とする空間を内部に有する部品や物品であれば、本発明の通気部材の取り付け対象としての筐体になりうる。
【0014】
図1A,1Bに示すごとく、通気部材13Aは、筐体91の内外の通気経路としての貫通孔11hを有する支持体11と、貫通孔11hの一方の開口を塞ぐように支持体11上に配置された通気膜6とを備えている。支持体11は、略円筒形状である。円筒形状の支持体11の一方の開口端面である第1開口端面11p上に、円形状の通気膜6を配置している。通気膜6の直径は、第1開口端面11pにおける支持体11の外径よりも小さく内径よりも大きい。支持体11の貫通孔11hと、通気膜6と、筐体91の開口部91kとが同心状の配置となるように、通気部材13Aを筐体91の開口部91kに固定している。つまり、支持体11に形成されている貫通孔11hの一方の開口が通気膜6によって塞がれ、他方の開口が筐体91内に向けて開放している。通気膜6は、気体の透過を許容し、筐体91内に水滴や塵芥等の異物が侵入することを阻止する。通気膜6の気体透過作用により、筐体91内の圧力は外部の圧力に等しく保たれる。
【0015】
また、通気部材13Aの支持体11は、筐体91の開口部91kに取り付けられる側とは反対側において、通気膜6との間に隙間を形成するとともに通気膜6を覆う屋根部16を含む。つまり、支持体11の2つの開口端面11p,11qのうち、筐体91に接する第2開口端面11qとは反対側に位置する第1開口端面11pは、屋根部16に覆われている。第1開口端面11pと屋根部16との間には隙間が形成されており、その隙間が、通気膜6の面内と平行な方向に開放する開口16hに連通している。このような構造により、通気膜6を水滴や塵芥から保護し、通気膜6を介して筐体91の内外の通気が確保されている。なお、本実施形態においては、貫通孔11hを有する支持体11とは別部品として屋根部16を作製し、第1開口端面11p上に通気膜6を固定したのちに、その屋根部16を支持体11に合体させている。
【0016】
上記のような支持体11は、射出成形、圧縮成形、切削等の一般的な成形手法により作製することができる。支持体11の材料には、成型性の観点から熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。具体的には、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PA(ナイロン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂や、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、シリコーンゴム等の熱可塑性エラストマーを用いることができる。また、支持体11の材料は、カーボンブラック、チタンホワイト等の顔料類、ガラス粒子、ガラス繊維等の補強用フィラー類、撥水材等を含んでいてもよい。また、支持体11は、その表面に撥液処理を施すことにより、液体(水や油)を排除しやすくなる。易接着処理、絶縁処理、半導体処理、導電処理等の他の処理を支持体11に施してもよい。
【0017】
一方、通気膜6は、気体の透過を許容し、液体の透過を阻止する膜であれば、構造や材料は特に限定されない。本実施形態では、樹脂多孔質膜に補強層を積層した通気膜6、より詳細には、補強層の上下に樹脂多孔質膜を積層した3層構造の通気膜6(例えば、日東電工社より入手可能なTEMISH(登録商標))を例示している。補強層を設けることにより、高強度の通気膜6とすることができる。
【0018】
樹脂多孔質膜の材料には、公知の延伸法、抽出法によって製造することができるフッ素樹脂多孔体やポリオレフィン多孔体を用いることができる。フッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等が挙げられる。ポリオレフィンを構成するモノマーとしては、エチレン、プロピレン、4−メチルペンテン−1,1ブテン等が挙げられ、これらのモノマーを単体で重合した、または共重合して得たポリオレフィンを使用することができる。また、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリ乳酸を用いたナノファイバーフィルム多孔体等を用いることもできる。中でも、小面積で通気性が確保でき、筐体内部への異物の侵入を阻止する機能の高いPTFE多孔体が好ましい。
【0019】
また、通気膜6を構成する樹脂多孔質膜には、筐体の用途に応じて撥液処理を施してもよい。撥液処理は、表面張力の小さな物質を樹脂多孔質膜に塗布し、乾燥後、キュアすることにより行うことができる。撥液処理に用いる撥液剤は、樹脂多孔質膜よりも低い表面張力の被膜を形成できればよく、例えば、パーフルオロアルキル基を有する高分子を含む撥液剤が好適である。撥液剤の塗布は、含浸、スプレー等で行うことができる。また、十分な防水性を確保するという観点から、樹脂多孔質膜の平均孔径は、0.01μm以上10μm以下であることが望ましい。
【0020】
通気膜6を構成する補強層の材料としては、樹脂多孔質膜よりも通気性に優れることが好ましい。具体的には、樹脂または金属からなる、織布、不織布、メッシュ、ネット、スポンジ、フォーム、多孔体(例えば、日東電工社より入手可能なサンマップ)等を用いることができる。樹脂多孔質膜と補強層とを接合する方法としては、接着剤ラミネート、熱ラミネート、加熱溶着、レーザー溶着、超音波溶着、接着剤の使用等の方法がある。
【0021】
また、通気膜6の厚さは、強度および支持体11への固定のしやすさを考慮して、例えば、1μm〜5mmの範囲で調整するとよい。通気膜6の通気度は、ガーレー値にて0.1〜300sec/100cm3であることが好ましい。なお、本実施形態では通気膜6を支持体11に熱溶着しているが、超音波溶着法や接着剤を用いる方法等の他の方法で通気膜6を支持体11に固定してもよい。
【0022】
なお、支持体や通気膜に関する説明は、後述する他の実施形態に援用する。
【0023】
以下、他の実施形態を含めて、通気膜6の厚さ方向を高さ方向と定義する。また、通気膜6について、筐体91側に位置する面を下面、これと反対側を上面とする。
【0024】
図1A,1Bに示すごとく、本実施形態において、通気部材13Aを取り囲む筐体91の外表面91pは、通気膜6の主面に略平行な平坦面となっている。図1Bに示すごとく、通気膜6が固定されている第1開口端面11pとは反対側の開口端面である第2開口端面11qは、筐体91の開口部91kに直接接合された接合面となっている。また、貫通孔11hは、第2開口端面11qから第1開口端面11pに至るまで、高さ方向にほぼ真っ直ぐ延びるように形成されている。
【0025】
支持体11は、第2開口端面11qから通気膜6までの高さH1、換言すれば、通気部材13Aを取り囲む筐体91の外表面91pから通気膜6までの高さH1が、4mm以上となるように寸法調整がなされている。このようにすれば、筐体91の外表面91pに付着した水滴等が通気膜6上に流れていくことを防止する効果を十分に得ることができる。上記高さH1を4mm以上とすれば、通常の条件下で筐体91に付着する水滴等が通気膜6に到達しにくい。より確実に水滴等と通気膜6との接触を防止するために、上記の高さH1は、6mm以上に調整することが好ましく、より好ましくは10mm以上に調整することである。ただし、筐体91の外表面91pからの通気部材13Aの突出量が大きくなりすぎないように、上記の高さH1は30mm以下とすることが望ましい。なお、これらの寸法は、後述する実施形態にも援用する。
【0026】
通気部材13Aを筐体91の開口部91kに固定する方法としては、熱溶着による方法、超音波溶着による方法、レーザー溶着による方法、粘着テープを用いる方法、接着剤を用いる方法等を採用することができる。図1A,1Bに示す通気部材13Aにおいては、筐体91の外表面91pから通気膜6の下面までの支持体11の高さH1が、高さ方向と垂直な断面における支持体11の外径よりも小さく調整されている。このようにすれば、通気部材13Aを筐体91の開口部91kに固定したときの安定性が十分に得られ、異物等による衝撃が加わった場合に通気部材13Aが筐体91から脱落する可能性を小さくできる。
【0027】
また、図2Aに示す通気部材13Bのように、第2開口端面11q側における周方向の複数箇所に、半径方向外向きに突出するリブ14,14を設けるようにしてもよい。リブ14,14は、筐体91の外表面91pに接合されている。このような通気部材13Bを筐体91の開口部91kに取り付けた通気構造100Bによれば、通気部材13Bと筐体91との接合強度を容易に高めることが可能である。このようなリブ14,14は、後述するいずれの実施形態にも適用することが可能である。
【0028】
ところで、本発明の通気部材は、筐体を成形するための金型にインサートされ、筐体を構成するべき樹脂と一体化される、いわゆるインサート成形に供される場合がある。そのようなインサート成形法によれば、通気部材を筐体に取り付ける工程を省略することができるので生産性に優れる。しかしながら、工程数の減少と引き替えに、不良品の発生率が高くなる恐れがある。なぜなら、インサート成形の実施時において、通気部材の通気膜に高い空気圧が加わり、通気膜が支持体から剥離したり破れたりすることがあるからである。このような問題に対しては、下記のような改良が有効である。
【0029】
すなわち、図2Bに示す通気構造100Bに含まれる通気部材13Cのごとく、樹脂多孔質膜を含む膜本体6と、膜本体6の少なくとも一方の主面を覆うように膜本体6に取り付けられた通気性を有する補強材7とを含み、補強材7によって膜本体6が補強された通気膜8を用いることができる。このようにすれば、筐体91の成形時における膜本体6の剥離・破断といった不具合の発生を防止ないし抑制することができる。膜本体6は、同一の参照符号を付与していることから分かるように、図1A,1Bで説明した通気膜そのものである。
【0030】
補強材7は、膜本体6の通気性を確保できるとともに、膜本体6よりも剥離や破断が容易に生じにくい特性が要求される。したがって、補強材7が、金属製または樹脂製のメッシュを含むことが好ましい。より好ましくは、補強材7がメッシュからなっていることである。膜本体6と補強材7とは、溶着や接着剤の使用によって接合され、一体化されていることが好ましい。また、補強材7が、実質的に、支持体11を構成する樹脂と同一組成の樹脂からなっていると、熱溶着、超音波溶着、レーザー溶着等の溶着方法によって支持体11と補強材7とを一層強固に接合することが可能なので好ましい。金属製や樹脂製のメッシュは、金属や樹脂の線材を編み込んだものであってもよいし、公知のパンチングメタルのように多数の孔が穿孔されたシートであってもよいし、金型を用いた公知の成形法によって製造された成形体であってもよく、さらには、剛性の高い格子のようなものであってもよい。なお、図2Bの例では、補強材7が膜本体6の片面にのみ接合されているが、膜本体6の両面に補強材7を配置してもよい。また、「実質的に同一組成」とは、不可避不純物を含む場合や、特性に有意な影響を与えない微差がある場合までも排除するものではないという趣旨である。
【0031】
なお、本実施形態ならびに他の実施形態で説明する通気部材は、屋根部以外の部分で支持体が上下に分割可能であってもよい。また、屋根部を有さずに通気膜が上方に露出する形態の支持体を備えた通気部材を採用してもよい。
【0032】
(第2実施形態)
図3Aは、第2実施形態の通気部材の斜視図であり、図3Bは、その断面斜視図である。図3A,3Bに示す通気部材23を筐体91の開口部91kに取り付けることにより、筐体91の内外の換気を行うための通気構造102が構成されている。
【0033】
通気部材23は、筐体91の内外の通気経路としての貫通孔21h,21iを有する支持体21と、貫通孔21h,21iを塞ぐように支持体21に固定された通気膜6とを備えている。第2開口端面21qが、筐体91に直接接合された接合面となっている。支持体21は、通気膜6を覆う屋根部26を含む。通気膜6と屋根部26との間の隙間が、通気膜6の面内と平行な方向に開放する開口26hに連通している。こうした点については、第1実施形態の通気部材13と共通である。
【0034】
一方、筐体91から遠い側に位置する第1開口端面21pは、屋根部26を固定している端面となっている。この第1開口端面21pに通気膜6は配置されていない。本実施形態において、通気膜6は、貫通孔21h,21i内に配置されている。支持体21の貫通孔21h,21iは、筐体91の外部側となる第1部分21hと、筐体91の内部側となる第2部分21iとから構成され、通気膜6によって互いに隔てられている。このように、通気膜6を貫通孔21h,21i内に配置する場合には、第2開口端面21q(筐体91の外表面91pに一致する端面)から反対側の第1開口端面21pまでの支持体21の高さH3を4mm以上に調整すればよい。そうすれば、筐体91の外表面91pに付着した水滴等が、支持体21を乗り越えて貫通孔21hに侵入することを防止する効果を十分得られる。
【0035】
より好ましくは、第2開口端面21qから通気膜6の下面までの支持体21の高さH2を4mm以上とすることである。このようにすれば、筐体91の内部側となる貫通孔21iの長さを十分に確保することができる。貫通孔21iに適度な長さがある場合、筐体91内に結露が生じたときでも、水滴は貫通孔21i内をゆっくり流れていくため、水滴が直ちに通気膜6に付着することを防止できるという利点がある。また、筐体91の外表面91pから通気膜6までの高さH2を4mm以上とすることにより、筐体91の外表面91pから第1開口端面21pまでの高さH3は、必然的に4mm以上となるので好ましい。
【0036】
また、支持体21は、貫通孔21h,21iの周方向全域にわたって形成され、高さ方向と直交する横方向に関する貫通孔21h,21iの断面積が不連続に変化する段付き部211を含んでいる。つまり、段付き部211は、貫通孔21h,21iの第1部分21hと第2部分21iとの境界を含んでいる。そして、この段付き部211に通気膜6を配置している。このような構造によれば、通気膜6を貫通孔21h,21i内に簡単かつ確実に配置することができる。貫通孔21h,21i内に通気膜6を配置することにより、横方向から飛来する水滴や塵芥から通気膜6を保護できる。なお、本実施形態では、筐体91の外部側となる貫通孔21hの直径を通気膜6の直径よりも大きく設定し、その貫通孔21hから通気膜6を挿入して段付き部211に固定にしている。このようにすれば、通気膜6を簡単に段付き部211に固定することができる。
【0037】
なお、通気膜6に代えて、補強された通気膜8(図2B参照)を用いてもよい。その場合、補強材7または膜本体6が段付き部211の座面に接触するように、支持体21に通気膜8が固定されることになる。
【0038】
(第3実施形態)
図4Aに示す第3実施形態の通気部材43Aは、第2実施形態の通気部材23の変形例である。通気部材43Aを筐体91の開口部91kに取り付けることにより、通気構造106Aが構成されている。支持体41の貫通孔41h,41iが通気膜6によって上下に隔てられている点、支持体41が屋根部46を含む点、筐体91の外表面91pから第1開口端面41pまでの高さH7が4mm以上に調整されている点等は先の実施形態と共通である。相違する点は、通気膜6を支持体41とインサート成形により一体化している点である。
【0039】
図4Aに示すごとく、通気膜6は、貫通孔41h,41i内において、支持体41を構成する樹脂に周縁部6kを一体化することにより、その支持体41に固定されている。つまり、通気膜6の周縁部6kが支持体41の内部に埋め込まれている。このようにすれば、通気膜6を支持体41に強固に固定することが可能である。万が一、通気部材43Aが強い水流に晒されたりした場合であっても、通気膜6が支持体41から剥がれ落ちたりしない。なお、本実施形態においても、通気部材43Aの支持体41は、筐体91の外表面91p(第2開口端面41qに一致する)から通気膜6までの高さH6が4mm以上であることがより好ましい。
【0040】
また、本実施形態の通気部材43Aにおいて、筐体91に接合される側の開口部41Lの外径が、反対側の開口部の外径よりも大きくなっている。このような開口部41Lを含む支持体41によれば、接合面41qの面積が大きくなるので、通気部材43Aと筐体91との接合強度が向上する。もちろん、このような開口部41Lを、他の実施形態の通気部材に適用してもよい。
【0041】
また、図4Bに示す通気構造106Bに含まれる通気部材43Bのように、膜本体6と補強材7とを含む通気膜8を用いることもできる。この場合、膜本体6と補強材7の双方の周縁部が、支持体41の内部に埋め込まれる。補強材7による補強効果と、支持体41の内部への埋め込み効果とが相俟って、支持体41に通気膜8をより強固に固定することが可能となる。
【0042】
(第4実施形態)
図5Aは、第4実施形態の通気部材の斜視図であり、図5Bは、その断面斜視図である。図5A,図5Bに示す通気部材53Aは、第2実施形態の変形例である。支持体51の貫通孔51h,51i内に通気膜6を配置している点、支持体51が屋根部51aを含む点、筐体91の外表面91pから第1開口端面51pまでの高さH8が4mm以上に調整されている点は、図3A,3Bに示す通気部材23および通気構造102と共通である。支持体51の第2開口端面51qを筐体91に対する接合面とし、通気部材53Aを筐体91の開口部91kに取り付けることによって通気構造108Aが構成されている点も同様である。
【0043】
図5Bに示すごとく、支持体51は、貫通孔51h,51i内の周方向全域にわたって形成され、高さ方向と直交する横方向に関する貫通孔51h,51iの断面積が不連続に変化する段付き部511を含んでいる。つまり、段付き部511は、貫通孔51h,51iの第1部分51hと第2部分51iとの境界を含んでいる。そして、この段付き部511に通気膜6を配置している。ただし、通気部材53Aは、支持体51の貫通孔51h,51iのうち、筐体91の外側に露出する貫通孔51hが、筐体91の内部側となる貫通孔51iよりも小径になっている。つまり、通気膜6を筐体91の開口部91kに接続する第2開口端面51q側から貫通孔51i内に挿入し、これを段付き部511に配置するようにしている。
【0044】
この通気部材53Aによれば、支持体51の段付き部511において、横方向に関する貫通孔51h,51iの断面積が、筐体91に取り付けられる側から反対側に進むにつれて不連続に縮小しているので、筐体91側から反対側に向かう方向の空気圧が加わったとき、通気膜6が段付き部511の座面に押し付けられる。したがって、通気部材53A付きの筐体91をインサート成形法によって製造する場合における、通気膜6の剥離や破れの発生率を低減することができる。
【0045】
より好ましくは、図5Cに示す通気構造108Bに含まれる通気部材53Bのごとく、補強材7で補強された通気膜8を用いることである。この場合は、補強材7が段付き部511の座面に接触するように、支持体51に通気膜8が固定される。この通気部材53bによれば、筐体91側から反対側に向かう方向の空気圧が加わったとき、膜本体6が補強材7に押し付けられる。好ましい補強材7は、金属製または樹脂製のメッシュ、もしくは多孔体(例えば、日東電工社より入手可能なサンマップ)を含み、膜本体6よりも高い剛性を有する。このような補強材7によれば、インサート成形時に加わる空気圧によって支持体51から剥離したり破断したりする可能性は低く、膜本体6を常にしっかりと支える。また、先にも説明したように、補強材7が、実質的に、支持体51を構成する樹脂と同一組成の樹脂からなっていることが好ましい。
【0046】
なお、本実施形態においても、通気部材53A,53Bの支持体51は、筐体91の外表面91pから通気膜6までの高さH9が4mm以上であることが好ましい。
【0047】
また、本実施形態では、射出成形により、支持体51の屋根部51aを貫通孔51h,51iが形成されている本体部と一体に作製している。ただし、通気膜6と屋根部51aとの間の隙間が、通気膜6の面内と平行な方向に開放する開口52に連通していることには変わりない。
【0048】
また、図5Dに示す通気部材53Dも好適である。すなわち、通気部材53Dの支持体51Dは、通気膜6から筐体91に向かう通気経路上に配置されるとともに、貫通孔51i内における気体または液体の高さ方向に関する直進を妨げる邪魔板51e,51fを含む。このような邪魔板51e,51fを貫通孔51i内に配置することにより、筐体91内に結露が生じた場合であっても、水滴が通気膜6に向かってダイレクトに流れていくことを防止できる。そうすると、通気膜6の通気性を常時確保でき、筐体91内の結露をスムーズに解消することができる。なお、このような邪魔板51e,51fは、他のいずれの実施形態にも採用することが可能である。
【0049】
(第5実施形態)
図6A,6Bに示す通気部材63の支持体61は、筐体91に接続されるべき部分であって、通気膜6が配置されている側から筐体91に接続される側に向かうにつれて、通気膜6の厚さ方向と直交する横方向の断面に現れる外形のなす面積が連続的または段階的に拡大している基体部611を含む。支持体61の基体部611が筐体91の開口部91kに固定されている。基体部611に隣接する上側部分(筐体91とは反対側)は、外径が一定の定径部610となっている。通気膜6を覆う屋根部61aは、その定径部610に含まれる。通気膜6と屋根部61aとの間の隙間が、通気膜6の面内と平行な方向に開放する開口62に連通している。このような通気部材63を筐体91の開口部91kに取り付けることにより、通気構造110が構成されている。支持体61の基体部611は、筐体91の外表面91pに付着した水滴等が通気部材63の周囲に水滴等が貯まることを防止する。
【0050】
図6C,6Dは、本実施形態の通気部材と従来の通気部材の作用説明図である。まず、図6Cに示すごとく、筐体91に向かって末広がりとなるように側面が傾斜面になっている本実施形態の通気部材63によれば、通気部材63と筐体91の外表面91pとの間に水滴Wが貯まろうとすると、水滴Wは表面積を大きくせざるを得ず、安定性が悪い。したがって、水滴Wは、通気部材63の周囲からスムーズに排除される。これに対し、図6Dに示すごとく、従来の通気部材201は、側面がまっすぐ切り立った形状になっている。このような通気部材201と筐体91の外表面91pとの間に貯まる水滴Wは、表面積を小さくすることができるので安定する。この結果、水滴Wは、通気部材201の周囲に留まり易く、通気膜6の上に流れていく可能性が高まる。特に、通気膜までの高さが不足している従来の通気部材201(図13)で顕著となる。
【0051】
図6A,6Bに示すごとく、通気部材63の基体部611は、上記断面に現れる外形が略円形であり、かつ直径が連続的に拡大している。基体部611の径大側の端面61qから径小側の開口端面61pに至るまで貫通孔61h,61iが高さ方向に延びるように形成されている。通気膜6は、その貫通孔61h,61i内に配置されている。円形断面の基体部611とすることにより、通気部材63の周囲に水滴等が貯まることを防止する効果がいっそう高まる。
【0052】
さらに、基体部611の径大側の端面61q(第2開口端面61q;筐体91の外表面91pに一致する端面)から径小側の開口端面61p(第1開口端面61p)までの高さH10が4mm以上に調整されていることが好ましい。より好ましくは、基体部611の径大側の端面61qから通気膜6までの高さH11が、先の実施形態と同様、4mm以上に調整されていることである。このようにすれば、筐体91の外表面91pに付着した水滴等が通気膜6に向かって流れていくことを防止でき、非常に防水性の高い通気構造110を実現することができる。
【0053】
なお、図6A,6Bの実施形態では、筐体91側に近づくにつれて外径が連続的に拡大する形態の基体部611としたが、例えば階段状に外径が拡大するような形状の基体部を設けることが可能である。また、側面が傾斜面になっている構造を他の実施形態に適用してもよい。例えば、屋根部61aを取り除き、通気膜6を開口端面61p上に配置すれば、非常にシンプルな構造の通気部材とすることが可能である。また、通気膜6に代えて、補強された通気膜8(図5C参照)を好適に採用することができる。
【0054】
(第6実施形態)
図7A,7Bに示す通気部材73は、箱形の支持体71と、その箱形の支持体71の開口部71kを塞ぐように支持体71に固定された通気膜6とを備えている。箱形の支持体71は、筐体91の内外の通気経路としての内部空間SHと、その内部空間SHと当該支持体71の外部とを連通する開口部71kとを有する。通気膜6の厚さ方向を高さ方向と定義したとき、高さ方向における支持体71の一方の端面71qは、筐体91に直接接合された接合面71qとなっている。筐体91の開口部91kが支持体71の内部空間SHに露出するように、通気部材73を筐体91に直接固定している。支持体71は、接合面71qから開口部71kが形成されている端面71pまでの高さH12が4mm以上に調整されている。これにより、筐体91の外表面91pに付着した水滴等が通気膜6の上に流れていくことを防ぐことができる。
【0055】
本実施形態の通気部材73において、筐体91の開口部91kと通気膜6とは、高さ方向に垂直な面内方向(横方向)において、互い違いの位置関係になっている。具体的には、円形の通気膜6の中心軸O1と、筐体91の開口部91k(同じく円形)の中心軸O2とが、一致していない。また、高さ方向の投影図において、支持体71の開口部71kと、筐体91の開口部91kとが、面内で重なり合わない位置関係となっている。このような位置関係によれば、通気部材73の内部空間SHが面内方向に拡大し、水滴等が通気膜6により到達しにくくなる。
【0056】
また、図8A,8Bに示すごとく、複数の開口部76k,76kを有する支持体76と、それら開口部76k,76kの各々を塞ぐように支持体76に固定された複数の通気膜6,6とを含む通気部材78を採用することができる。支持体76の隣り合う開口部76k,76kのほぼ中間に筐体91の開口部91kが位置するような配置で、通気部材78を筐体91に固定することにより、通気構造115が構成されている。通気膜6,6の中心軸O1,O3は、筐体91の開口部91kの中心軸O2と一致していない。このような通気構造115によれば、筐体91内の通気度合いが極めて良好である。
【0057】
通気膜6,6を配置している側の端面76pとは反対側の端面76qは、筐体91の外表面91pに接する接合面となっている。筐体91の外表面91pから、開口部76k,76kが形成されている端面76pまでの高さH12は、これまでに説明してきた実施形態と同様に、4mm以上となっている。これにより、筐体91の外表面91pに付着した水滴等が通気膜6,6の上に流れていくことを防止できる。
【0058】
また、図8C,8Dに示す通気部材78Aおよび通気構造115Aのように、開口部76k,76kを塞ぐ通気膜6,6を箱形の支持体76の内部空間SH側から配置するようにしてもよい。また、図8Eに示す通気構造115Bでは、通気膜6,6を覆う屋根部76aを備えた通気部材78Bを採用している。通気部材78Bは、筐体91に取り付けられる側とは反対側において、通気膜6,6との間に隙間を形成するとともにその通気膜6,6を覆う屋根部76aを備えている。このような屋根部76aを設けることにより、通気膜6,6を強い水流や塵芥から確実に保護できる。屋根部76aは、通気膜6の面内に平行な方向に開放しているので、通気膜6の通気度合いを低下させる心配もない。
【0059】
(第7実施形態)
図9A,9Bに示す通気構造117は、異なる高さの上面を含む通気部材83を採用したものである。具体的に、通気部材83の支持体81は、通気膜6を配置する筒状部81aと、その筒状部81aに連通する内部空間SHを有した箱状部81bとから構成されている。筒状部81aは、通気経路としての貫通孔81hを有している。通気膜6は筒状部81aの開口端面81pに配置されており、貫通孔81hを箱状部81bに隣接する側とは反対側から塞いでいる。筐体91の外表面91pから通気膜6までの高さH13は、先の実施形態と同様、4mm以上となっている。さらに、筒状部81aと箱状部81bとは階段状になっている。このような構造とすることにより、筐体91の外表面91pに付着した水滴等が通気膜6に向かって流れていきにくくなる。また、通気構造117を構築するためのスペースが部分的に不足しているような場合には、本実施形態のように、位置によって高さが異なる通気部材83を採用することで対応できる。つまり、スペースが十分に取れる箇所に通気膜6を配置した筒状部81aを位置させる一方、スペースが十分に取れない箇所には、低背化を図った箱状部81bを位置させるとよい。
【0060】
(第8実施形態)
図10A,10Bに示す通気部材153は、形状は相違しているが、主要な特徴は図5Cに示す通気部材53Bと共通である。すなわち、通気部材153の支持体151は、通気経路としての貫通孔152hの横断面が非円形(本実施形態では方形)であり、通気膜8が配置される段付き部512と、貫通孔151hが上方に直接露出することを防ぐ屋根部151aとを含む。貫通孔151hは、横方向に開放する開口152につながっている。また、支持体151の段付き部512には、通気膜8(具体的には補強材7の部分)を嵌め込むための座ぐり512gが設けられているので、支持体151に対する通気膜8の位置決めを行いやすくなっている。本実施形態の通気部材153によれば、方形状の通気膜8を採用することが可能であるため、材料の無駄を最小化することができる。
【0061】
また、通気部材153の支持体151は、超音波溶着用のリブ154を含む。通気部材153を筐体に接合する際には、このリブ154に超音波に基づく摩擦が集中して素早く溶融するので、接合工程に費やされる時間を短縮化することができる。もちろん、このようなリブ154を他の実施形態の支持体に設けてもよい。
【0062】
(第9実施形態)
インサート成形時に通気膜が剥離したり破れたりする問題は、図11に示す通気構造160に含まれる通気部材163によっても防ぐことが可能である。通気部材163は、通気膜6と、通気膜6が一方の開口端面上に配置された円筒状の支持体161と、自身と支持体161との間に通気膜6を挟むように、支持体161に周縁部9sが固定された補強材9とを備えている。補強材9の周縁部9sは、通気膜6が配置されている側における支持体161の開口端面よりも外向きに延出している。その周縁部9sが支持体161の側面に回り込み、支持体161に固定されている。このようにすれば、筐体91側から強い空気圧が加わった場合でも、通気膜6が支持体161から剥離したり破れたりすることを防止できる。
【0063】
先の実施形態で説明した補強材7と同様に、補強材9が多孔体やメッシュを含むことが好ましく、補強材9が金属製や樹脂製のメッシュからなっていることがより好ましい。また、補強材9が可撓性を有していると、周縁部9sを支持体161の側面に容易に沿わせることができ、ひいては補強材9を支持体161に確実に固定できるので好ましい。例えば、樹脂製のメッシュは可撓性に優れ、強度にも優れるので補強材9として好適である。また、補強材9と通気膜6とは、直接接合されていてもよいし、されていなくてもよい。すなわち、補強材9を通気膜6に被せるだけでもよい。補強材9の周縁部9sを支持体161に固定する方法は特に限定されず、溶着、接着剤の使用、接着テープの使用等を採用することができる。
【0064】
以上、本明細書で説明したいくつかの実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で相互に組み合わせ可能であることを言及しておく。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の通気部材は、ランプ、モーター、センサ、スイッチ、ECU、ギアボックス等の自動車部品の筐体に好適である。中でも、内部に結露が生じやすかったり、直接風雨に晒されたり、洗車の際に水流を受けたりする筐体に、本発明の通気部材を取り付ける場合に高い効果を得ることができる。また、自動車部品以外にも、移動体通信機器、カメラ、電気剃刀、電動歯ブラシ等の電気製品の筐体に本発明の通気部材を好適に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1A】図1Aは、本発明にかかる第1実施形態の通気部材の斜視図である。
【図1B】図1Bは、図1Aの通気部材の断面斜視図である。
【図2A】図2Aは、図1Aの通気部材の変形例の断面斜視図である。
【図2B】図2Bは、図1Aの通気部材の別の変形例の断面斜視図である。
【図3A】図3Aは、第2実施形態の通気部材の斜視図である。
【図3B】図3Bは、図3Aの通気部材の断面斜視図である。
【図4A】図4Aは、第3実施形態の通気部材の断面斜視図である。
【図4B】図4Bは、図4Aの通気部材の変形例の断面斜視図である。
【図5A】図5Aは、第4実施形態の通気部材の斜視図である。
【図5B】図5Bは、図5Aの通気部材の断面斜視図である。
【図5C】図5Cは、図5Aの通気部材の変形例の断面斜視図である。
【図5D】図5Dは、図5Aに示す通気部材の別の変形例の断面斜視図である。
【図6A】図6Aは、第5実施形態の通気部材の斜視図である。
【図6B】図6Bは、図6Aの通気部材の断面斜視図である。
【図6C】図6Cは、図6Aの通気部材の作用説明図である。
【図6D】図6Dは、従来の通気部材の作用説明図である。
【図7A】図7Aは、第6実施形態の通気部材の斜視図である。
【図7B】図7Bは、図7Aの通気部材の断面斜視図である。
【図8A】図8Aは、図7Aに示す通気部材の変形例の斜視図である。
【図8B】図8Bは、図8Aの通気部材の断面斜視図である。
【図8C】図8Cは、図7Aに示す通気部材の他の変形例の斜視図である。
【図8D】図8Dは、図8Cの通気部材の断面斜視図である。
【図8E】図8Eは、図7Aに示す通気部材の更なる変形例の断面斜視図である。
【図9A】図9Aは、第7実施形態の通気部材の斜視図である。
【図9B】図9Bは、図9Aの通気部材の断面斜視図である。
【図10A】図10Aは、第8実施形態の通気部材の斜視図である。
【図10B】図10Bは、図10Aの通気部材の断面斜視図である。
【図11】図11は、第9実施形態の通気部材の斜視図である。
【図12】図12は、通気部材を取り付けた筐体の全体図である。
【図13】図13は、従来の通気部材の側面図である。
【符号の説明】
【0067】
6 通気膜
7 補強材
8 補強された通気膜
7,9 補強材
11,21,41,51,51D,61,71,76,76B,81,151,161 支持体
11p,21p,41p,51p,61p,71p,81p 第1開口端面
11q,21q,41q,51q,61q,71q 第2開口端面
11h,21h,21i,41h,41i,51h,51i,61h,61i,153h 貫通孔
13A,13B,13C,23,43A,43B,53A,53B,53C,63,73,78,78A,83,153,163 通気部材
16,26,46,51a,61a,76a,151a 屋根部
71k,76k 支持体の開口部
91 筐体
91p 筐体の外表面
91k 筐体の開口部
100A,100B,100C,102,106A,106B,108A,108B,110,113,115,115A,117,160 通気構造
211,511,512 段付き部
SH 内部空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車部品、電子部品等を収容する筐体に装着される通気部材に関する。また、通気部材を用いた通気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ランプ、センサ、ECU(electronic control unit)のような自動車の電装部品を収容する筐体には、筐体の内部と外部との通気を確保するとともに、筐体内部への異物の侵入を阻止する通気部材が取り付けられている。そのような通気部材の一例が特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている通気部材は、図13に示すごとく、通気膜202が配置された支持体203と、通気膜202を覆うように支持体203に取り付けられたカバー部品204とを備えている。このような通気部材201を、Oリング205を介して筐体206の開口部207に固定する。通気膜202を気体が透過することにより、筐体206の内外の通気を確保できる。カバー部品204は、外力によって通気膜202が損傷したり、塵芥の堆積によって通気膜202の通気性能が低下したりすることを防止する。
【特許文献1】特開2004−47425号公報
【特許文献2】特開2003−336874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図13で説明した通気部材は、筐体の開口部に簡単に取り付けることが可能である。また、筐体の外表面からの突出高さが比較的小さい。このことは、一見すると、通気部材が余分なスペースを取らないので好ましいと考えられる。しかしながら、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、常にそうとは限らないことが判明した。
【0005】
具体的には、通気部材を筐体の開口部に取り付けた状態で、通気部材の通気膜と、筐体の外表面との距離が近接している場合を考える。このような場合において、筐体の外表面に水滴や油滴が付着すると、通気膜を固定している支持体の側面を伝って水滴等が簡単に通気膜の表面に向かって流れていく可能性があることが分かった。こうした現象は、通気部材と筐体との境界近傍に水滴や油滴が滞留している状態で、筐体内の気圧が外気圧よりも急に低くなった場合に顕著に現れると考えられる。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明は、筐体の外表面に水滴等が付着した場合であっても、通気膜に向かって水滴等が流れていくことを防止でき、通気性能を確実に維持できる通気部材を提供することを目的とする。また、その通気部材を用いた通気構造を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
換気を行うべき筐体に取り付けられる通気部材であって、
筐体の内外の通気経路としての貫通孔を有する支持体と、貫通孔を塞ぐように支持体に固定された通気膜とを備え、
通気膜の厚さ方向を高さ方向と定義したとき、
支持体は、一方の開口端面から他方の開口端面に至るまで貫通孔が高さ方向に延びるように形成され、一方の開口端面から他方の開口端面までの高さが4mm以上に調整されている、通気部材を提供する。
【0008】
また、他の側面において、本発明は、
換気を行うべき筐体に取り付けられる通気部材であって、
筐体の内外の通気経路としての貫通孔を有する支持体と、貫通孔を塞ぐように支持体に固定された通気膜とを備え、
支持体は、筐体に接続されるべき部分であって、通気膜が配置されている側から筐体に接続される側に向かうにつれて、通気膜の厚さ方向と直交する横方向の断面に現れる外形のなす面積が連続的または段階的に拡大している基体部を含む、通気部材を提供する。
【0009】
さらに、他の側面において、本発明は、
換気を行うべき筐体に取り付けられる通気部材であって、
筐体の内外の通気経路としての内部空間と、内部空間と外部とを連通する開口部とを有する支持体と、開口部を塞ぐように支持体に固定された通気膜とを備え、
通気膜の厚さ方向を高さ方向と定義したとき、高さ方向における支持体の一方の端面が、筐体に直接または他部材を介して固定される固定予定面とされ、固定予定面から開口部が形成されている他方の端面までの高さが4mm以上に調整されている、通気部材を提供する。
【0010】
他の側面において、本発明は、換気を行うべき筐体と、筐体の開口部に取り付けられた上述の通気部材とを含む、通気構造を提供する。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明の通気部材(または通気構造)は、筐体の外表面から反対側の開口端面までの高さが4mm以上と十分に確保されている。したがって、通気部材と筐体との接続箇所等に水滴等が滞留した場合であっても、水滴等が通気膜上に簡単に流れていくことを防止できる。すなわち、筐体の外表面に水滴等が付着した場合でも、通気性能を確実に維持できる通気部材を実現できる。
【0012】
また、他の側面における本発明の通気部材(または通気構造)は、通気膜を固定する支持体に含まれる基体部の横断面積が、筐体に近づくにつれて連続的または段階的に拡大している。このような構造によれば、通気部材と筐体との境界付近に水滴等が滞留しにくくなる。この結果、筐体の外表面に水滴等が付着した場合でも、水滴等が通気膜の上に流れていくことを防止でき、ひいては通気性能を確実に維持できる通気部材を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1Aは、本発明にかかる第1実施形態の通気部材の斜視図であり、図1Bは、その断面斜視図である。図12は、図1Aの通気部材を取り付けた筐体の全体図である。図12に示すように、図1A,1Bに示す通気部材13Aは、例えば自動車の電装部品の筐体91の開口部91kに取り付けられて、筐体91の内外の換気を行うための通気構造100Aを構成する。なお、筐体は、図12に示すような箱形のものに限定されるわけではなく、換気を必要とする空間を内部に有する部品や物品であれば、本発明の通気部材の取り付け対象としての筐体になりうる。
【0014】
図1A,1Bに示すごとく、通気部材13Aは、筐体91の内外の通気経路としての貫通孔11hを有する支持体11と、貫通孔11hの一方の開口を塞ぐように支持体11上に配置された通気膜6とを備えている。支持体11は、略円筒形状である。円筒形状の支持体11の一方の開口端面である第1開口端面11p上に、円形状の通気膜6を配置している。通気膜6の直径は、第1開口端面11pにおける支持体11の外径よりも小さく内径よりも大きい。支持体11の貫通孔11hと、通気膜6と、筐体91の開口部91kとが同心状の配置となるように、通気部材13Aを筐体91の開口部91kに固定している。つまり、支持体11に形成されている貫通孔11hの一方の開口が通気膜6によって塞がれ、他方の開口が筐体91内に向けて開放している。通気膜6は、気体の透過を許容し、筐体91内に水滴や塵芥等の異物が侵入することを阻止する。通気膜6の気体透過作用により、筐体91内の圧力は外部の圧力に等しく保たれる。
【0015】
また、通気部材13Aの支持体11は、筐体91の開口部91kに取り付けられる側とは反対側において、通気膜6との間に隙間を形成するとともに通気膜6を覆う屋根部16を含む。つまり、支持体11の2つの開口端面11p,11qのうち、筐体91に接する第2開口端面11qとは反対側に位置する第1開口端面11pは、屋根部16に覆われている。第1開口端面11pと屋根部16との間には隙間が形成されており、その隙間が、通気膜6の面内と平行な方向に開放する開口16hに連通している。このような構造により、通気膜6を水滴や塵芥から保護し、通気膜6を介して筐体91の内外の通気が確保されている。なお、本実施形態においては、貫通孔11hを有する支持体11とは別部品として屋根部16を作製し、第1開口端面11p上に通気膜6を固定したのちに、その屋根部16を支持体11に合体させている。
【0016】
上記のような支持体11は、射出成形、圧縮成形、切削等の一般的な成形手法により作製することができる。支持体11の材料には、成型性の観点から熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。具体的には、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PA(ナイロン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂や、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、シリコーンゴム等の熱可塑性エラストマーを用いることができる。また、支持体11の材料は、カーボンブラック、チタンホワイト等の顔料類、ガラス粒子、ガラス繊維等の補強用フィラー類、撥水材等を含んでいてもよい。また、支持体11は、その表面に撥液処理を施すことにより、液体(水や油)を排除しやすくなる。易接着処理、絶縁処理、半導体処理、導電処理等の他の処理を支持体11に施してもよい。
【0017】
一方、通気膜6は、気体の透過を許容し、液体の透過を阻止する膜であれば、構造や材料は特に限定されない。本実施形態では、樹脂多孔質膜に補強層を積層した通気膜6、より詳細には、補強層の上下に樹脂多孔質膜を積層した3層構造の通気膜6(例えば、日東電工社より入手可能なTEMISH(登録商標))を例示している。補強層を設けることにより、高強度の通気膜6とすることができる。
【0018】
樹脂多孔質膜の材料には、公知の延伸法、抽出法によって製造することができるフッ素樹脂多孔体やポリオレフィン多孔体を用いることができる。フッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等が挙げられる。ポリオレフィンを構成するモノマーとしては、エチレン、プロピレン、4−メチルペンテン−1,1ブテン等が挙げられ、これらのモノマーを単体で重合した、または共重合して得たポリオレフィンを使用することができる。また、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリ乳酸を用いたナノファイバーフィルム多孔体等を用いることもできる。中でも、小面積で通気性が確保でき、筐体内部への異物の侵入を阻止する機能の高いPTFE多孔体が好ましい。
【0019】
また、通気膜6を構成する樹脂多孔質膜には、筐体の用途に応じて撥液処理を施してもよい。撥液処理は、表面張力の小さな物質を樹脂多孔質膜に塗布し、乾燥後、キュアすることにより行うことができる。撥液処理に用いる撥液剤は、樹脂多孔質膜よりも低い表面張力の被膜を形成できればよく、例えば、パーフルオロアルキル基を有する高分子を含む撥液剤が好適である。撥液剤の塗布は、含浸、スプレー等で行うことができる。また、十分な防水性を確保するという観点から、樹脂多孔質膜の平均孔径は、0.01μm以上10μm以下であることが望ましい。
【0020】
通気膜6を構成する補強層の材料としては、樹脂多孔質膜よりも通気性に優れることが好ましい。具体的には、樹脂または金属からなる、織布、不織布、メッシュ、ネット、スポンジ、フォーム、多孔体(例えば、日東電工社より入手可能なサンマップ)等を用いることができる。樹脂多孔質膜と補強層とを接合する方法としては、接着剤ラミネート、熱ラミネート、加熱溶着、レーザー溶着、超音波溶着、接着剤の使用等の方法がある。
【0021】
また、通気膜6の厚さは、強度および支持体11への固定のしやすさを考慮して、例えば、1μm〜5mmの範囲で調整するとよい。通気膜6の通気度は、ガーレー値にて0.1〜300sec/100cm3であることが好ましい。なお、本実施形態では通気膜6を支持体11に熱溶着しているが、超音波溶着法や接着剤を用いる方法等の他の方法で通気膜6を支持体11に固定してもよい。
【0022】
なお、支持体や通気膜に関する説明は、後述する他の実施形態に援用する。
【0023】
以下、他の実施形態を含めて、通気膜6の厚さ方向を高さ方向と定義する。また、通気膜6について、筐体91側に位置する面を下面、これと反対側を上面とする。
【0024】
図1A,1Bに示すごとく、本実施形態において、通気部材13Aを取り囲む筐体91の外表面91pは、通気膜6の主面に略平行な平坦面となっている。図1Bに示すごとく、通気膜6が固定されている第1開口端面11pとは反対側の開口端面である第2開口端面11qは、筐体91の開口部91kに直接接合された接合面となっている。また、貫通孔11hは、第2開口端面11qから第1開口端面11pに至るまで、高さ方向にほぼ真っ直ぐ延びるように形成されている。
【0025】
支持体11は、第2開口端面11qから通気膜6までの高さH1、換言すれば、通気部材13Aを取り囲む筐体91の外表面91pから通気膜6までの高さH1が、4mm以上となるように寸法調整がなされている。このようにすれば、筐体91の外表面91pに付着した水滴等が通気膜6上に流れていくことを防止する効果を十分に得ることができる。上記高さH1を4mm以上とすれば、通常の条件下で筐体91に付着する水滴等が通気膜6に到達しにくい。より確実に水滴等と通気膜6との接触を防止するために、上記の高さH1は、6mm以上に調整することが好ましく、より好ましくは10mm以上に調整することである。ただし、筐体91の外表面91pからの通気部材13Aの突出量が大きくなりすぎないように、上記の高さH1は30mm以下とすることが望ましい。なお、これらの寸法は、後述する実施形態にも援用する。
【0026】
通気部材13Aを筐体91の開口部91kに固定する方法としては、熱溶着による方法、超音波溶着による方法、レーザー溶着による方法、粘着テープを用いる方法、接着剤を用いる方法等を採用することができる。図1A,1Bに示す通気部材13Aにおいては、筐体91の外表面91pから通気膜6の下面までの支持体11の高さH1が、高さ方向と垂直な断面における支持体11の外径よりも小さく調整されている。このようにすれば、通気部材13Aを筐体91の開口部91kに固定したときの安定性が十分に得られ、異物等による衝撃が加わった場合に通気部材13Aが筐体91から脱落する可能性を小さくできる。
【0027】
また、図2Aに示す通気部材13Bのように、第2開口端面11q側における周方向の複数箇所に、半径方向外向きに突出するリブ14,14を設けるようにしてもよい。リブ14,14は、筐体91の外表面91pに接合されている。このような通気部材13Bを筐体91の開口部91kに取り付けた通気構造100Bによれば、通気部材13Bと筐体91との接合強度を容易に高めることが可能である。このようなリブ14,14は、後述するいずれの実施形態にも適用することが可能である。
【0028】
ところで、本発明の通気部材は、筐体を成形するための金型にインサートされ、筐体を構成するべき樹脂と一体化される、いわゆるインサート成形に供される場合がある。そのようなインサート成形法によれば、通気部材を筐体に取り付ける工程を省略することができるので生産性に優れる。しかしながら、工程数の減少と引き替えに、不良品の発生率が高くなる恐れがある。なぜなら、インサート成形の実施時において、通気部材の通気膜に高い空気圧が加わり、通気膜が支持体から剥離したり破れたりすることがあるからである。このような問題に対しては、下記のような改良が有効である。
【0029】
すなわち、図2Bに示す通気構造100Bに含まれる通気部材13Cのごとく、樹脂多孔質膜を含む膜本体6と、膜本体6の少なくとも一方の主面を覆うように膜本体6に取り付けられた通気性を有する補強材7とを含み、補強材7によって膜本体6が補強された通気膜8を用いることができる。このようにすれば、筐体91の成形時における膜本体6の剥離・破断といった不具合の発生を防止ないし抑制することができる。膜本体6は、同一の参照符号を付与していることから分かるように、図1A,1Bで説明した通気膜そのものである。
【0030】
補強材7は、膜本体6の通気性を確保できるとともに、膜本体6よりも剥離や破断が容易に生じにくい特性が要求される。したがって、補強材7が、金属製または樹脂製のメッシュを含むことが好ましい。より好ましくは、補強材7がメッシュからなっていることである。膜本体6と補強材7とは、溶着や接着剤の使用によって接合され、一体化されていることが好ましい。また、補強材7が、実質的に、支持体11を構成する樹脂と同一組成の樹脂からなっていると、熱溶着、超音波溶着、レーザー溶着等の溶着方法によって支持体11と補強材7とを一層強固に接合することが可能なので好ましい。金属製や樹脂製のメッシュは、金属や樹脂の線材を編み込んだものであってもよいし、公知のパンチングメタルのように多数の孔が穿孔されたシートであってもよいし、金型を用いた公知の成形法によって製造された成形体であってもよく、さらには、剛性の高い格子のようなものであってもよい。なお、図2Bの例では、補強材7が膜本体6の片面にのみ接合されているが、膜本体6の両面に補強材7を配置してもよい。また、「実質的に同一組成」とは、不可避不純物を含む場合や、特性に有意な影響を与えない微差がある場合までも排除するものではないという趣旨である。
【0031】
なお、本実施形態ならびに他の実施形態で説明する通気部材は、屋根部以外の部分で支持体が上下に分割可能であってもよい。また、屋根部を有さずに通気膜が上方に露出する形態の支持体を備えた通気部材を採用してもよい。
【0032】
(第2実施形態)
図3Aは、第2実施形態の通気部材の斜視図であり、図3Bは、その断面斜視図である。図3A,3Bに示す通気部材23を筐体91の開口部91kに取り付けることにより、筐体91の内外の換気を行うための通気構造102が構成されている。
【0033】
通気部材23は、筐体91の内外の通気経路としての貫通孔21h,21iを有する支持体21と、貫通孔21h,21iを塞ぐように支持体21に固定された通気膜6とを備えている。第2開口端面21qが、筐体91に直接接合された接合面となっている。支持体21は、通気膜6を覆う屋根部26を含む。通気膜6と屋根部26との間の隙間が、通気膜6の面内と平行な方向に開放する開口26hに連通している。こうした点については、第1実施形態の通気部材13と共通である。
【0034】
一方、筐体91から遠い側に位置する第1開口端面21pは、屋根部26を固定している端面となっている。この第1開口端面21pに通気膜6は配置されていない。本実施形態において、通気膜6は、貫通孔21h,21i内に配置されている。支持体21の貫通孔21h,21iは、筐体91の外部側となる第1部分21hと、筐体91の内部側となる第2部分21iとから構成され、通気膜6によって互いに隔てられている。このように、通気膜6を貫通孔21h,21i内に配置する場合には、第2開口端面21q(筐体91の外表面91pに一致する端面)から反対側の第1開口端面21pまでの支持体21の高さH3を4mm以上に調整すればよい。そうすれば、筐体91の外表面91pに付着した水滴等が、支持体21を乗り越えて貫通孔21hに侵入することを防止する効果を十分得られる。
【0035】
より好ましくは、第2開口端面21qから通気膜6の下面までの支持体21の高さH2を4mm以上とすることである。このようにすれば、筐体91の内部側となる貫通孔21iの長さを十分に確保することができる。貫通孔21iに適度な長さがある場合、筐体91内に結露が生じたときでも、水滴は貫通孔21i内をゆっくり流れていくため、水滴が直ちに通気膜6に付着することを防止できるという利点がある。また、筐体91の外表面91pから通気膜6までの高さH2を4mm以上とすることにより、筐体91の外表面91pから第1開口端面21pまでの高さH3は、必然的に4mm以上となるので好ましい。
【0036】
また、支持体21は、貫通孔21h,21iの周方向全域にわたって形成され、高さ方向と直交する横方向に関する貫通孔21h,21iの断面積が不連続に変化する段付き部211を含んでいる。つまり、段付き部211は、貫通孔21h,21iの第1部分21hと第2部分21iとの境界を含んでいる。そして、この段付き部211に通気膜6を配置している。このような構造によれば、通気膜6を貫通孔21h,21i内に簡単かつ確実に配置することができる。貫通孔21h,21i内に通気膜6を配置することにより、横方向から飛来する水滴や塵芥から通気膜6を保護できる。なお、本実施形態では、筐体91の外部側となる貫通孔21hの直径を通気膜6の直径よりも大きく設定し、その貫通孔21hから通気膜6を挿入して段付き部211に固定にしている。このようにすれば、通気膜6を簡単に段付き部211に固定することができる。
【0037】
なお、通気膜6に代えて、補強された通気膜8(図2B参照)を用いてもよい。その場合、補強材7または膜本体6が段付き部211の座面に接触するように、支持体21に通気膜8が固定されることになる。
【0038】
(第3実施形態)
図4Aに示す第3実施形態の通気部材43Aは、第2実施形態の通気部材23の変形例である。通気部材43Aを筐体91の開口部91kに取り付けることにより、通気構造106Aが構成されている。支持体41の貫通孔41h,41iが通気膜6によって上下に隔てられている点、支持体41が屋根部46を含む点、筐体91の外表面91pから第1開口端面41pまでの高さH7が4mm以上に調整されている点等は先の実施形態と共通である。相違する点は、通気膜6を支持体41とインサート成形により一体化している点である。
【0039】
図4Aに示すごとく、通気膜6は、貫通孔41h,41i内において、支持体41を構成する樹脂に周縁部6kを一体化することにより、その支持体41に固定されている。つまり、通気膜6の周縁部6kが支持体41の内部に埋め込まれている。このようにすれば、通気膜6を支持体41に強固に固定することが可能である。万が一、通気部材43Aが強い水流に晒されたりした場合であっても、通気膜6が支持体41から剥がれ落ちたりしない。なお、本実施形態においても、通気部材43Aの支持体41は、筐体91の外表面91p(第2開口端面41qに一致する)から通気膜6までの高さH6が4mm以上であることがより好ましい。
【0040】
また、本実施形態の通気部材43Aにおいて、筐体91に接合される側の開口部41Lの外径が、反対側の開口部の外径よりも大きくなっている。このような開口部41Lを含む支持体41によれば、接合面41qの面積が大きくなるので、通気部材43Aと筐体91との接合強度が向上する。もちろん、このような開口部41Lを、他の実施形態の通気部材に適用してもよい。
【0041】
また、図4Bに示す通気構造106Bに含まれる通気部材43Bのように、膜本体6と補強材7とを含む通気膜8を用いることもできる。この場合、膜本体6と補強材7の双方の周縁部が、支持体41の内部に埋め込まれる。補強材7による補強効果と、支持体41の内部への埋め込み効果とが相俟って、支持体41に通気膜8をより強固に固定することが可能となる。
【0042】
(第4実施形態)
図5Aは、第4実施形態の通気部材の斜視図であり、図5Bは、その断面斜視図である。図5A,図5Bに示す通気部材53Aは、第2実施形態の変形例である。支持体51の貫通孔51h,51i内に通気膜6を配置している点、支持体51が屋根部51aを含む点、筐体91の外表面91pから第1開口端面51pまでの高さH8が4mm以上に調整されている点は、図3A,3Bに示す通気部材23および通気構造102と共通である。支持体51の第2開口端面51qを筐体91に対する接合面とし、通気部材53Aを筐体91の開口部91kに取り付けることによって通気構造108Aが構成されている点も同様である。
【0043】
図5Bに示すごとく、支持体51は、貫通孔51h,51i内の周方向全域にわたって形成され、高さ方向と直交する横方向に関する貫通孔51h,51iの断面積が不連続に変化する段付き部511を含んでいる。つまり、段付き部511は、貫通孔51h,51iの第1部分51hと第2部分51iとの境界を含んでいる。そして、この段付き部511に通気膜6を配置している。ただし、通気部材53Aは、支持体51の貫通孔51h,51iのうち、筐体91の外側に露出する貫通孔51hが、筐体91の内部側となる貫通孔51iよりも小径になっている。つまり、通気膜6を筐体91の開口部91kに接続する第2開口端面51q側から貫通孔51i内に挿入し、これを段付き部511に配置するようにしている。
【0044】
この通気部材53Aによれば、支持体51の段付き部511において、横方向に関する貫通孔51h,51iの断面積が、筐体91に取り付けられる側から反対側に進むにつれて不連続に縮小しているので、筐体91側から反対側に向かう方向の空気圧が加わったとき、通気膜6が段付き部511の座面に押し付けられる。したがって、通気部材53A付きの筐体91をインサート成形法によって製造する場合における、通気膜6の剥離や破れの発生率を低減することができる。
【0045】
より好ましくは、図5Cに示す通気構造108Bに含まれる通気部材53Bのごとく、補強材7で補強された通気膜8を用いることである。この場合は、補強材7が段付き部511の座面に接触するように、支持体51に通気膜8が固定される。この通気部材53bによれば、筐体91側から反対側に向かう方向の空気圧が加わったとき、膜本体6が補強材7に押し付けられる。好ましい補強材7は、金属製または樹脂製のメッシュ、もしくは多孔体(例えば、日東電工社より入手可能なサンマップ)を含み、膜本体6よりも高い剛性を有する。このような補強材7によれば、インサート成形時に加わる空気圧によって支持体51から剥離したり破断したりする可能性は低く、膜本体6を常にしっかりと支える。また、先にも説明したように、補強材7が、実質的に、支持体51を構成する樹脂と同一組成の樹脂からなっていることが好ましい。
【0046】
なお、本実施形態においても、通気部材53A,53Bの支持体51は、筐体91の外表面91pから通気膜6までの高さH9が4mm以上であることが好ましい。
【0047】
また、本実施形態では、射出成形により、支持体51の屋根部51aを貫通孔51h,51iが形成されている本体部と一体に作製している。ただし、通気膜6と屋根部51aとの間の隙間が、通気膜6の面内と平行な方向に開放する開口52に連通していることには変わりない。
【0048】
また、図5Dに示す通気部材53Dも好適である。すなわち、通気部材53Dの支持体51Dは、通気膜6から筐体91に向かう通気経路上に配置されるとともに、貫通孔51i内における気体または液体の高さ方向に関する直進を妨げる邪魔板51e,51fを含む。このような邪魔板51e,51fを貫通孔51i内に配置することにより、筐体91内に結露が生じた場合であっても、水滴が通気膜6に向かってダイレクトに流れていくことを防止できる。そうすると、通気膜6の通気性を常時確保でき、筐体91内の結露をスムーズに解消することができる。なお、このような邪魔板51e,51fは、他のいずれの実施形態にも採用することが可能である。
【0049】
(第5実施形態)
図6A,6Bに示す通気部材63の支持体61は、筐体91に接続されるべき部分であって、通気膜6が配置されている側から筐体91に接続される側に向かうにつれて、通気膜6の厚さ方向と直交する横方向の断面に現れる外形のなす面積が連続的または段階的に拡大している基体部611を含む。支持体61の基体部611が筐体91の開口部91kに固定されている。基体部611に隣接する上側部分(筐体91とは反対側)は、外径が一定の定径部610となっている。通気膜6を覆う屋根部61aは、その定径部610に含まれる。通気膜6と屋根部61aとの間の隙間が、通気膜6の面内と平行な方向に開放する開口62に連通している。このような通気部材63を筐体91の開口部91kに取り付けることにより、通気構造110が構成されている。支持体61の基体部611は、筐体91の外表面91pに付着した水滴等が通気部材63の周囲に水滴等が貯まることを防止する。
【0050】
図6C,6Dは、本実施形態の通気部材と従来の通気部材の作用説明図である。まず、図6Cに示すごとく、筐体91に向かって末広がりとなるように側面が傾斜面になっている本実施形態の通気部材63によれば、通気部材63と筐体91の外表面91pとの間に水滴Wが貯まろうとすると、水滴Wは表面積を大きくせざるを得ず、安定性が悪い。したがって、水滴Wは、通気部材63の周囲からスムーズに排除される。これに対し、図6Dに示すごとく、従来の通気部材201は、側面がまっすぐ切り立った形状になっている。このような通気部材201と筐体91の外表面91pとの間に貯まる水滴Wは、表面積を小さくすることができるので安定する。この結果、水滴Wは、通気部材201の周囲に留まり易く、通気膜6の上に流れていく可能性が高まる。特に、通気膜までの高さが不足している従来の通気部材201(図13)で顕著となる。
【0051】
図6A,6Bに示すごとく、通気部材63の基体部611は、上記断面に現れる外形が略円形であり、かつ直径が連続的に拡大している。基体部611の径大側の端面61qから径小側の開口端面61pに至るまで貫通孔61h,61iが高さ方向に延びるように形成されている。通気膜6は、その貫通孔61h,61i内に配置されている。円形断面の基体部611とすることにより、通気部材63の周囲に水滴等が貯まることを防止する効果がいっそう高まる。
【0052】
さらに、基体部611の径大側の端面61q(第2開口端面61q;筐体91の外表面91pに一致する端面)から径小側の開口端面61p(第1開口端面61p)までの高さH10が4mm以上に調整されていることが好ましい。より好ましくは、基体部611の径大側の端面61qから通気膜6までの高さH11が、先の実施形態と同様、4mm以上に調整されていることである。このようにすれば、筐体91の外表面91pに付着した水滴等が通気膜6に向かって流れていくことを防止でき、非常に防水性の高い通気構造110を実現することができる。
【0053】
なお、図6A,6Bの実施形態では、筐体91側に近づくにつれて外径が連続的に拡大する形態の基体部611としたが、例えば階段状に外径が拡大するような形状の基体部を設けることが可能である。また、側面が傾斜面になっている構造を他の実施形態に適用してもよい。例えば、屋根部61aを取り除き、通気膜6を開口端面61p上に配置すれば、非常にシンプルな構造の通気部材とすることが可能である。また、通気膜6に代えて、補強された通気膜8(図5C参照)を好適に採用することができる。
【0054】
(第6実施形態)
図7A,7Bに示す通気部材73は、箱形の支持体71と、その箱形の支持体71の開口部71kを塞ぐように支持体71に固定された通気膜6とを備えている。箱形の支持体71は、筐体91の内外の通気経路としての内部空間SHと、その内部空間SHと当該支持体71の外部とを連通する開口部71kとを有する。通気膜6の厚さ方向を高さ方向と定義したとき、高さ方向における支持体71の一方の端面71qは、筐体91に直接接合された接合面71qとなっている。筐体91の開口部91kが支持体71の内部空間SHに露出するように、通気部材73を筐体91に直接固定している。支持体71は、接合面71qから開口部71kが形成されている端面71pまでの高さH12が4mm以上に調整されている。これにより、筐体91の外表面91pに付着した水滴等が通気膜6の上に流れていくことを防ぐことができる。
【0055】
本実施形態の通気部材73において、筐体91の開口部91kと通気膜6とは、高さ方向に垂直な面内方向(横方向)において、互い違いの位置関係になっている。具体的には、円形の通気膜6の中心軸O1と、筐体91の開口部91k(同じく円形)の中心軸O2とが、一致していない。また、高さ方向の投影図において、支持体71の開口部71kと、筐体91の開口部91kとが、面内で重なり合わない位置関係となっている。このような位置関係によれば、通気部材73の内部空間SHが面内方向に拡大し、水滴等が通気膜6により到達しにくくなる。
【0056】
また、図8A,8Bに示すごとく、複数の開口部76k,76kを有する支持体76と、それら開口部76k,76kの各々を塞ぐように支持体76に固定された複数の通気膜6,6とを含む通気部材78を採用することができる。支持体76の隣り合う開口部76k,76kのほぼ中間に筐体91の開口部91kが位置するような配置で、通気部材78を筐体91に固定することにより、通気構造115が構成されている。通気膜6,6の中心軸O1,O3は、筐体91の開口部91kの中心軸O2と一致していない。このような通気構造115によれば、筐体91内の通気度合いが極めて良好である。
【0057】
通気膜6,6を配置している側の端面76pとは反対側の端面76qは、筐体91の外表面91pに接する接合面となっている。筐体91の外表面91pから、開口部76k,76kが形成されている端面76pまでの高さH12は、これまでに説明してきた実施形態と同様に、4mm以上となっている。これにより、筐体91の外表面91pに付着した水滴等が通気膜6,6の上に流れていくことを防止できる。
【0058】
また、図8C,8Dに示す通気部材78Aおよび通気構造115Aのように、開口部76k,76kを塞ぐ通気膜6,6を箱形の支持体76の内部空間SH側から配置するようにしてもよい。また、図8Eに示す通気構造115Bでは、通気膜6,6を覆う屋根部76aを備えた通気部材78Bを採用している。通気部材78Bは、筐体91に取り付けられる側とは反対側において、通気膜6,6との間に隙間を形成するとともにその通気膜6,6を覆う屋根部76aを備えている。このような屋根部76aを設けることにより、通気膜6,6を強い水流や塵芥から確実に保護できる。屋根部76aは、通気膜6の面内に平行な方向に開放しているので、通気膜6の通気度合いを低下させる心配もない。
【0059】
(第7実施形態)
図9A,9Bに示す通気構造117は、異なる高さの上面を含む通気部材83を採用したものである。具体的に、通気部材83の支持体81は、通気膜6を配置する筒状部81aと、その筒状部81aに連通する内部空間SHを有した箱状部81bとから構成されている。筒状部81aは、通気経路としての貫通孔81hを有している。通気膜6は筒状部81aの開口端面81pに配置されており、貫通孔81hを箱状部81bに隣接する側とは反対側から塞いでいる。筐体91の外表面91pから通気膜6までの高さH13は、先の実施形態と同様、4mm以上となっている。さらに、筒状部81aと箱状部81bとは階段状になっている。このような構造とすることにより、筐体91の外表面91pに付着した水滴等が通気膜6に向かって流れていきにくくなる。また、通気構造117を構築するためのスペースが部分的に不足しているような場合には、本実施形態のように、位置によって高さが異なる通気部材83を採用することで対応できる。つまり、スペースが十分に取れる箇所に通気膜6を配置した筒状部81aを位置させる一方、スペースが十分に取れない箇所には、低背化を図った箱状部81bを位置させるとよい。
【0060】
(第8実施形態)
図10A,10Bに示す通気部材153は、形状は相違しているが、主要な特徴は図5Cに示す通気部材53Bと共通である。すなわち、通気部材153の支持体151は、通気経路としての貫通孔152hの横断面が非円形(本実施形態では方形)であり、通気膜8が配置される段付き部512と、貫通孔151hが上方に直接露出することを防ぐ屋根部151aとを含む。貫通孔151hは、横方向に開放する開口152につながっている。また、支持体151の段付き部512には、通気膜8(具体的には補強材7の部分)を嵌め込むための座ぐり512gが設けられているので、支持体151に対する通気膜8の位置決めを行いやすくなっている。本実施形態の通気部材153によれば、方形状の通気膜8を採用することが可能であるため、材料の無駄を最小化することができる。
【0061】
また、通気部材153の支持体151は、超音波溶着用のリブ154を含む。通気部材153を筐体に接合する際には、このリブ154に超音波に基づく摩擦が集中して素早く溶融するので、接合工程に費やされる時間を短縮化することができる。もちろん、このようなリブ154を他の実施形態の支持体に設けてもよい。
【0062】
(第9実施形態)
インサート成形時に通気膜が剥離したり破れたりする問題は、図11に示す通気構造160に含まれる通気部材163によっても防ぐことが可能である。通気部材163は、通気膜6と、通気膜6が一方の開口端面上に配置された円筒状の支持体161と、自身と支持体161との間に通気膜6を挟むように、支持体161に周縁部9sが固定された補強材9とを備えている。補強材9の周縁部9sは、通気膜6が配置されている側における支持体161の開口端面よりも外向きに延出している。その周縁部9sが支持体161の側面に回り込み、支持体161に固定されている。このようにすれば、筐体91側から強い空気圧が加わった場合でも、通気膜6が支持体161から剥離したり破れたりすることを防止できる。
【0063】
先の実施形態で説明した補強材7と同様に、補強材9が多孔体やメッシュを含むことが好ましく、補強材9が金属製や樹脂製のメッシュからなっていることがより好ましい。また、補強材9が可撓性を有していると、周縁部9sを支持体161の側面に容易に沿わせることができ、ひいては補強材9を支持体161に確実に固定できるので好ましい。例えば、樹脂製のメッシュは可撓性に優れ、強度にも優れるので補強材9として好適である。また、補強材9と通気膜6とは、直接接合されていてもよいし、されていなくてもよい。すなわち、補強材9を通気膜6に被せるだけでもよい。補強材9の周縁部9sを支持体161に固定する方法は特に限定されず、溶着、接着剤の使用、接着テープの使用等を採用することができる。
【0064】
以上、本明細書で説明したいくつかの実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で相互に組み合わせ可能であることを言及しておく。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の通気部材は、ランプ、モーター、センサ、スイッチ、ECU、ギアボックス等の自動車部品の筐体に好適である。中でも、内部に結露が生じやすかったり、直接風雨に晒されたり、洗車の際に水流を受けたりする筐体に、本発明の通気部材を取り付ける場合に高い効果を得ることができる。また、自動車部品以外にも、移動体通信機器、カメラ、電気剃刀、電動歯ブラシ等の電気製品の筐体に本発明の通気部材を好適に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1A】図1Aは、本発明にかかる第1実施形態の通気部材の斜視図である。
【図1B】図1Bは、図1Aの通気部材の断面斜視図である。
【図2A】図2Aは、図1Aの通気部材の変形例の断面斜視図である。
【図2B】図2Bは、図1Aの通気部材の別の変形例の断面斜視図である。
【図3A】図3Aは、第2実施形態の通気部材の斜視図である。
【図3B】図3Bは、図3Aの通気部材の断面斜視図である。
【図4A】図4Aは、第3実施形態の通気部材の断面斜視図である。
【図4B】図4Bは、図4Aの通気部材の変形例の断面斜視図である。
【図5A】図5Aは、第4実施形態の通気部材の斜視図である。
【図5B】図5Bは、図5Aの通気部材の断面斜視図である。
【図5C】図5Cは、図5Aの通気部材の変形例の断面斜視図である。
【図5D】図5Dは、図5Aに示す通気部材の別の変形例の断面斜視図である。
【図6A】図6Aは、第5実施形態の通気部材の斜視図である。
【図6B】図6Bは、図6Aの通気部材の断面斜視図である。
【図6C】図6Cは、図6Aの通気部材の作用説明図である。
【図6D】図6Dは、従来の通気部材の作用説明図である。
【図7A】図7Aは、第6実施形態の通気部材の斜視図である。
【図7B】図7Bは、図7Aの通気部材の断面斜視図である。
【図8A】図8Aは、図7Aに示す通気部材の変形例の斜視図である。
【図8B】図8Bは、図8Aの通気部材の断面斜視図である。
【図8C】図8Cは、図7Aに示す通気部材の他の変形例の斜視図である。
【図8D】図8Dは、図8Cの通気部材の断面斜視図である。
【図8E】図8Eは、図7Aに示す通気部材の更なる変形例の断面斜視図である。
【図9A】図9Aは、第7実施形態の通気部材の斜視図である。
【図9B】図9Bは、図9Aの通気部材の断面斜視図である。
【図10A】図10Aは、第8実施形態の通気部材の斜視図である。
【図10B】図10Bは、図10Aの通気部材の断面斜視図である。
【図11】図11は、第9実施形態の通気部材の斜視図である。
【図12】図12は、通気部材を取り付けた筐体の全体図である。
【図13】図13は、従来の通気部材の側面図である。
【符号の説明】
【0067】
6 通気膜
7 補強材
8 補強された通気膜
7,9 補強材
11,21,41,51,51D,61,71,76,76B,81,151,161 支持体
11p,21p,41p,51p,61p,71p,81p 第1開口端面
11q,21q,41q,51q,61q,71q 第2開口端面
11h,21h,21i,41h,41i,51h,51i,61h,61i,153h 貫通孔
13A,13B,13C,23,43A,43B,53A,53B,53C,63,73,78,78A,83,153,163 通気部材
16,26,46,51a,61a,76a,151a 屋根部
71k,76k 支持体の開口部
91 筐体
91p 筐体の外表面
91k 筐体の開口部
100A,100B,100C,102,106A,106B,108A,108B,110,113,115,115A,117,160 通気構造
211,511,512 段付き部
SH 内部空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
換気を行うべき筐体に取り付けられる通気部材であって、
前記筐体の内外の通気経路としての貫通孔を有する支持体と、前記貫通孔を塞ぐように前記支持体に固定された通気膜とを備え、
前記通気膜の厚さ方向を高さ方向と定義したとき、
前記支持体は、一方の開口端面から他方の開口端面に至るまで前記貫通孔が前記高さ方向に延びるように形成され、前記一方の開口端面から前記他方の開口端面までの高さが4mm以上に調整されている、通気部材。
【請求項2】
前記通気膜が、前記一方の開口端面上に配置されている、請求項1記載の通気部材。
【請求項3】
前記支持体は、前記筐体に取り付けられる側とは反対側において、前記通気膜との間に隙間を形成するとともに前記通気膜を覆う屋根部を含む、請求項1記載の通気部材。
【請求項4】
前記通気膜が、前記貫通孔内に配置されている、請求項1記載の通気部材。
【請求項5】
前記他方の開口端面から前記通気膜までの高さが4mm以上に調整されている、請求項4記載の通気部材。
【請求項6】
前記通気膜は、前記支持体の前記貫通孔内において、前記支持体を構成する樹脂に周縁部を一体化することにより、前記支持体に固定されている、請求項4記載の通気部材。
【請求項7】
前記通気膜の前記周縁部が前記支持体の内部に埋め込まれている、請求項6記載の通気部材。
【請求項8】
前記通気膜が、樹脂多孔質膜を含む膜本体と、前記膜本体の少なくとも一方の主面を覆うように前記膜本体に取り付けられた通気性を有する補強材とを含み、前記膜本体と前記補強材の双方の周縁部が、前記支持体の内部に埋め込まれている、請求項7記載の通気部材。
【請求項9】
前記補強材が、金属製または樹脂製のメッシュを含む、請求項8記載の通気部材。
【請求項10】
前記支持体は、前記貫通孔内の周方向全域にわたって形成され、前記高さ方向と直交する横方向に関する前記貫通孔の断面積が不連続に変化する段付き部を含み、その段付き部に前記通気膜が配置されている、請求項1記載の通気部材。
【請求項11】
前記通気膜が、樹脂多孔質膜を含む膜本体と、前記膜本体の少なくとも一方の主面を覆うように前記膜本体に取り付けられた通気性を有する補強材とを含み、前記補強材が前記段付き部の座面に接触するように、前記支持体に前記通気膜が固定されている、請求項10記載の通気部材。
【請求項12】
前記段付き部において、前記横方向に関する前記貫通孔の断面積が、前記筐体に取り付けられる側から反対側に進むにつれて不連続に縮小する、請求項10記載の通気部材。
【請求項13】
前記補強材がメッシュを含む、請求項11記載の通気部材。
【請求項14】
前記メッシュが、実質的に、前記支持体を構成する樹脂と同一組成の樹脂からなり、溶着によって前記支持体の前記段付き部に固定されている、請求項13記載の通気部材。
【請求項15】
前記支持体は、前記貫通孔内に配置されるとともに、前記貫通孔内における気体または液体の直進を妨げる邪魔板を含む、請求項1記載の通気部材。
【請求項16】
自身と前記支持体との間に前記通気膜を挟むように、前記支持体に周縁部が固定された補強材をさらに備える、請求項2記載の通気部材。
【請求項17】
前記補強材の前記周縁部は、前記通気膜が配置されている側における前記支持体の開口端面よりも外向きに延出して前記支持体の側面に回り込み、前記支持体に固定されている、請求項16記載の通気部材。
【請求項18】
前記補強材が、金属製または樹脂製のメッシュを含む、請求項16記載の通気部材。
【請求項19】
換気を行うべき筐体に取り付けられる通気部材であって、
前記筐体の内外の通気経路としての貫通孔を有する支持体と、前記貫通孔を塞ぐように前記支持体に固定された通気膜とを備え、
前記支持体は、前記筐体に接続されるべき部分であって、前記通気膜が配置されている側から前記筐体に接続される側に向かうにつれて、前記通気膜の厚さ方向と直交する横方向の断面に現れる外形のなす面積が連続的または段階的に拡大している基体部を含む、通気部材。
【請求項20】
前記基体部は、前記横方向の断面に現れる外形が略円形であり、かつ外径が連続的に拡大しており、前記基体部の径大側の端面から径小側の開口端面に至るまで前記貫通孔が前記通気膜の厚さ方向に延びるように形成されている、請求項19記載の通気部材。
【請求項21】
前記基体部の径大側の端面から前記径小側の開口端面までの高さが4mm以上に調整されている、請求項20記載の通気部材。
【請求項22】
換気を行うべき筐体に取り付けられる通気部材であって、
前記筐体の内外の通気経路としての内部空間と、前記内部空間と外部とを連通する開口部とを有する支持体と、前記開口部を塞ぐように前記支持体に固定された通気膜とを備え、
前記通気膜の厚さ方向を高さ方向と定義したとき、前記高さ方向における前記支持体の一方の端面が、前記筐体に直接または他部材を介して接合される接合予定面とされ、前記固定予定面から前記開口部が形成されている他方の端面までの高さが4mm以上に調整されている、通気部材。
【請求項23】
前記支持体は、複数の前記開口部を含み、それら開口部の各々を塞ぐように複数の前記通気膜が前記支持体に固定されている、請求項22記載の通気部材。
【請求項24】
換気を行うべき筐体と、前記筐体の開口部に取り付けられた請求項1、請求項19または請求項22記載の通気部材とを含む、通気構造。
【請求項1】
換気を行うべき筐体に取り付けられる通気部材であって、
前記筐体の内外の通気経路としての貫通孔を有する支持体と、前記貫通孔を塞ぐように前記支持体に固定された通気膜とを備え、
前記通気膜の厚さ方向を高さ方向と定義したとき、
前記支持体は、一方の開口端面から他方の開口端面に至るまで前記貫通孔が前記高さ方向に延びるように形成され、前記一方の開口端面から前記他方の開口端面までの高さが4mm以上に調整されている、通気部材。
【請求項2】
前記通気膜が、前記一方の開口端面上に配置されている、請求項1記載の通気部材。
【請求項3】
前記支持体は、前記筐体に取り付けられる側とは反対側において、前記通気膜との間に隙間を形成するとともに前記通気膜を覆う屋根部を含む、請求項1記載の通気部材。
【請求項4】
前記通気膜が、前記貫通孔内に配置されている、請求項1記載の通気部材。
【請求項5】
前記他方の開口端面から前記通気膜までの高さが4mm以上に調整されている、請求項4記載の通気部材。
【請求項6】
前記通気膜は、前記支持体の前記貫通孔内において、前記支持体を構成する樹脂に周縁部を一体化することにより、前記支持体に固定されている、請求項4記載の通気部材。
【請求項7】
前記通気膜の前記周縁部が前記支持体の内部に埋め込まれている、請求項6記載の通気部材。
【請求項8】
前記通気膜が、樹脂多孔質膜を含む膜本体と、前記膜本体の少なくとも一方の主面を覆うように前記膜本体に取り付けられた通気性を有する補強材とを含み、前記膜本体と前記補強材の双方の周縁部が、前記支持体の内部に埋め込まれている、請求項7記載の通気部材。
【請求項9】
前記補強材が、金属製または樹脂製のメッシュを含む、請求項8記載の通気部材。
【請求項10】
前記支持体は、前記貫通孔内の周方向全域にわたって形成され、前記高さ方向と直交する横方向に関する前記貫通孔の断面積が不連続に変化する段付き部を含み、その段付き部に前記通気膜が配置されている、請求項1記載の通気部材。
【請求項11】
前記通気膜が、樹脂多孔質膜を含む膜本体と、前記膜本体の少なくとも一方の主面を覆うように前記膜本体に取り付けられた通気性を有する補強材とを含み、前記補強材が前記段付き部の座面に接触するように、前記支持体に前記通気膜が固定されている、請求項10記載の通気部材。
【請求項12】
前記段付き部において、前記横方向に関する前記貫通孔の断面積が、前記筐体に取り付けられる側から反対側に進むにつれて不連続に縮小する、請求項10記載の通気部材。
【請求項13】
前記補強材がメッシュを含む、請求項11記載の通気部材。
【請求項14】
前記メッシュが、実質的に、前記支持体を構成する樹脂と同一組成の樹脂からなり、溶着によって前記支持体の前記段付き部に固定されている、請求項13記載の通気部材。
【請求項15】
前記支持体は、前記貫通孔内に配置されるとともに、前記貫通孔内における気体または液体の直進を妨げる邪魔板を含む、請求項1記載の通気部材。
【請求項16】
自身と前記支持体との間に前記通気膜を挟むように、前記支持体に周縁部が固定された補強材をさらに備える、請求項2記載の通気部材。
【請求項17】
前記補強材の前記周縁部は、前記通気膜が配置されている側における前記支持体の開口端面よりも外向きに延出して前記支持体の側面に回り込み、前記支持体に固定されている、請求項16記載の通気部材。
【請求項18】
前記補強材が、金属製または樹脂製のメッシュを含む、請求項16記載の通気部材。
【請求項19】
換気を行うべき筐体に取り付けられる通気部材であって、
前記筐体の内外の通気経路としての貫通孔を有する支持体と、前記貫通孔を塞ぐように前記支持体に固定された通気膜とを備え、
前記支持体は、前記筐体に接続されるべき部分であって、前記通気膜が配置されている側から前記筐体に接続される側に向かうにつれて、前記通気膜の厚さ方向と直交する横方向の断面に現れる外形のなす面積が連続的または段階的に拡大している基体部を含む、通気部材。
【請求項20】
前記基体部は、前記横方向の断面に現れる外形が略円形であり、かつ外径が連続的に拡大しており、前記基体部の径大側の端面から径小側の開口端面に至るまで前記貫通孔が前記通気膜の厚さ方向に延びるように形成されている、請求項19記載の通気部材。
【請求項21】
前記基体部の径大側の端面から前記径小側の開口端面までの高さが4mm以上に調整されている、請求項20記載の通気部材。
【請求項22】
換気を行うべき筐体に取り付けられる通気部材であって、
前記筐体の内外の通気経路としての内部空間と、前記内部空間と外部とを連通する開口部とを有する支持体と、前記開口部を塞ぐように前記支持体に固定された通気膜とを備え、
前記通気膜の厚さ方向を高さ方向と定義したとき、前記高さ方向における前記支持体の一方の端面が、前記筐体に直接または他部材を介して接合される接合予定面とされ、前記固定予定面から前記開口部が形成されている他方の端面までの高さが4mm以上に調整されている、通気部材。
【請求項23】
前記支持体は、複数の前記開口部を含み、それら開口部の各々を塞ぐように複数の前記通気膜が前記支持体に固定されている、請求項22記載の通気部材。
【請求項24】
換気を行うべき筐体と、前記筐体の開口部に取り付けられた請求項1、請求項19または請求項22記載の通気部材とを含む、通気構造。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−186189(P2007−186189A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279185(P2006−279185)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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