説明

速度表示装置

【課題】 移動速度検出精度を向上させた速度表示装置を提供すること。
【解決手段】 移動体において移動速度を検出して表示する速度表示装置が、例えばGPSなどを利用して当該移動体の位置を検出する位置検出手段と、移動体位置の時間変化から当該移動体の移動速度を算出する第一の速度算出手段と、当該移動体の移動に伴って生成されたパルス信号から当該移動体の移動速度を算出する第二の速度算出手段と、第一又は第二の速度算出手段のいずれかによって算出された当該移動体の移動速度を所定の規則に従って選択的に表示する表示手段とを備える。表示手段は、1)第一の速度算出手段によって算出された当該移動体の速度と第二の速度算出手段によって算出された当該移動体の速度との差が所定時間内に所定値を超えたとき、又は、2)当該移動体の速度が所定速度以下となったとき、第一の速度算出手段によって算出された当該移動体の速度を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、移動体において移動速度を検出して表示する速度表示装置に係り、特に、移動速度検出精度を向上させた速度表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体において移動速度を検出して表示する速度表示装置が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1及び2には、移動速度を算出するのに利用する距離データを求める際に、移動体の移動に伴って生成されたパルス信号から算出された距離データをGPSを利用して算出した距離データで補正する装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−185466号公報
【特許文献2】特開平9−119842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示された従来装置によれば、状況によっては正確な距離データを得られず、実際の速度とは異なる速度が表示されてしまう可能性がある。
【0005】
例えば、車輪パルスセンサの出力信号(=回転量)から移動距離を求める場合にはタイヤ径の値が必要となるため、タイヤの磨耗やユーザによる異なる径のタイヤの装着などによってタイヤ径が変化したときに正確な移動距離を算出できなくなる。
【0006】
また、例えば、車輪パルスセンサが電磁ピックアップ方式の場合、極低速時にはパルスが検出できず、正確な移動距離を算出できなくなる。
【0007】
このように、従来装置には、移動距離を精度良く算出できないために移動速度の算出精度が低下する可能性がある。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、移動距離の算出精度を向上させることによって移動速度検出精度を向上させた速度表示装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、移動体(例えば、車両)において移動速度(例えば、車速)を検出して表示する速度表示装置であって、例えばGPSなどを利用して当該移動体の位置を検出する位置検出手段と、この位置検出手段によって検出された当該移動体の位置の時間変化から当該移動体の移動速度を算出する第一の速度算出手段と、当該移動体の移動に伴って生成されたパルス信号から当該移動体の移動速度を算出する第二の速度算出手段と、上記第一の速度算出手段又は該第二の速度算出手段のいずれかによって算出された当該移動体の移動速度を所定の規則に従って選択的に表示する表示手段とを有する速度表示装置である。
【0010】
この一態様において、上記表示手段は、当該移動体がスリップ状態にあるときにはパルス信号を利用する上記第二の速度算出手段によって算出された当該移動体の速度には比較的多くの誤差が含まれている可能性が高いとの観点から、上記第一の速度算出手段によって算出された当該移動体の速度と上記第二の速度算出手段によって算出された当該移動体の速度との差が所定時間内に所定値を超えたとき、当該移動体がスリップ状態にあると判断して、上記第一の速度算出手段によって算出された当該移動体の速度を表示する。
【0011】
また、この一態様において、上記表示手段は、当該移動体の速度が例えば時速5キロメートル(5km/h)程度の極低速と言える速度であるときにはパルス信号を利用する上記第二の速度算出手段によっては良好な精度で当該移動体の速度を算出できない可能性が高いとの観点から、当該移動体の速度が(極低速であるか否かの閾値として設定された)所定速度以下となったとき、上記第一の速度算出手段によって算出された当該移動体の速度を表示する。
【0012】
また、この一態様において、上記表示手段は、上記位置検出手段による当該移動体の位置の検出精度が所定レベル以下となったとき、上記第一の速度算出手段によっては良好な精度で当該移動体の速度を算出できない可能性が高いとの観点から、上記第二の速度算出手段によって算出された当該移動体の速度を表示する。
【0013】
この一態様によれば、当該移動体の移動に伴って生成されたパルス信号を利用して当該移動体の速度を算出する手法によれば良好な精度が得られないと判断される車両状態下では例えばGPSなどの既知の位置検出装置を利用して取得した当該移動体の位置の変化から算出した当該移動体の速度が表示されるため、幅広い車両状態下で精度良く移動体の速度を算出・表示することができる。
【0014】
なお、この一態様において、上記第二の速度算出手段は、タイヤ磨耗やタイヤ履き替えなどによるタイヤ径の恒常的な変化に対応するために、上記第一の速度算出手段によって算出された当該移動体の速度を用いて、例えば定期的に、該第二の速度算出手段により算出された当該移動体の速度を補正することが好ましい。
【0015】
具体的には、上記第一の速度算出手段によって算出された当該移動体の速度と上記第二の速度算出手段によって算出された当該移動体の速度との差分を監視し、所定レベル以上の差が定常的に継続している場合には、例えば監視された上記差分の平均値を用いて、上記第二の速度算出手段によって算出された当該移動体の速度を上記第一の速度算出手段によって算出された当該移動体の速度へ補正するための補正係数を算出し、以降、上記第二の速度算出手段によって算出された当該移動体の速度はこの補正係数が乗ぜられてから上記表示手段へ出力されるようにする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、移動速度検出精度を向上させた速度表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。なお、電磁ピックアップ式の車輪パルスセンサやGPSを利用した位置検出器の基本概念、主要なハードウェア構成、作動原理、及び基本的な制御手法等については当業者には既知であるため、詳しい説明を省略する。
【実施例】
【0018】
以下、図1を用いて、本発明の一実施例に係る速度表示装置について説明する。図1は、本実施例に係る速度表示装置100の概略構成図である。本実施例に係る速度表示装置100は、一例として、四輪車両に搭載されるものとする。
【0019】
速度表示装置100は、電磁ピックアップ式の車輪パルスセンサを備え、この車輪パルスセンサの出力パルスから自車両の移動距離及び速度を算出する車輪速検出部101を有する。図示しない車輪パルスセンサは、例えばABS(Antilock Brake System)用のものと兼用であってもよく、各輪に装着される。あるいは、通常ABSを搭載した車両ではABS−ECUにおいて車速が算出される場合が多いため、車輪速検出部101はABS−ECUそのものであってもよい。
【0020】
車輪速検出部101は、タイヤ径の数値を予め保持しており、所定時間t内の出力パルス数(すなわち、タイヤ回転数)を計数することによって、(タイヤ径から算出した)タイヤ外周長さ×回転数/tにより自車両の車速を求めることができる。
【0021】
車輪速検出部101は、各輪について検出されたパルス数(回転数)を例えば四輪について平均して、その平均回転数に基づいて車速を算出してもよく、或いは、各輪について回転数から車速を算出して、これら車速を例えば四輪について平均して車速を算出してもよい。
【0022】
速度表示装置100は、更に、GPS(Global Positioning System;全地球測位システム)を利用して自車両の現在位置を取得すると共に、取得した自車両位置を所定時間観測してその間の移動距離から自車両の車速を算出するGPSユニット102を有する。GPSユニット102は、例えばRTK(Real Time Kinematic)−GPSなどの高精度GPS機能を備えていることが好ましい。
【0023】
速度表示装置100は、更に、算出された自車両の車速を自車両乗員(特に、運転者)に対して表示する車速メータ103と、車速メータ103を制御して、車輪速検出部101又はGPSユニット102のいずれかによって算出された車速を選択的に車速メータ103に表示させるメータ制御部104とを有する。本実施例において、車速メータ103は、デジタル式であっても、アナログ式であってもよい。また、メータ制御部104は、例えばメータECU(Electronic Control Unit;電子制御装置)である。
【0024】
次いで、このような構成の速度表示装置100の動作について説明する。
【0025】
まず、車輪速検出部101及びGPSユニット102はそれぞれの手法で自車両の車速を検出・算出する。
【0026】
GPSユニット102により算出された車速は、補正用に車輪速検出部101へ出力される。車輪速検出部101は、各輪について算出された車速の各々又は四輪の回転数から算出された車速と、GPSユニット102により算出された車速とを比較して、両者の間の差分の大きさを監視する。
【0027】
車輪速検出部101は、所定のレベルを超える上記差分が所定時間以上継続した場合、タイヤ径が変化したことにより、車輪速検出部101によって算出される車速に定常的に誤差が含まれる状態になっていると判断して、GPSユニット102により算出された車速を用いて補正係数を算出する。
【0028】
ここで、補正係数は、各輪について算出された車速に対して個々に決定されてもよく、或いは、四輪の回転数から算出された車速に対して決定されてもよい。また、ここで、タイヤ径が当所設定されていた値から変化する場合とは、タイヤが磨耗した場合や径が異なるタイヤ(例えば、テンパタイヤなど)が装着された場合だけでなく、例えばタイヤ及び/又はホイールの個体差などによっても生じ得る。
【0029】
車輪速検出部101は、GPSユニット102から取得した車速を利用して補正係数を算出した場合、以降、新たな補正係数が設定されるまで、算出した車速に補正係数を乗じた値を算出された車速値としてメータ制御部104へ出力する。
【0030】
他方、GPSユニット102も、算出した車速をメータ制御部104へ出力する。この際、GPS信号の受信状態についてもメータ制御部104へ併せて伝達することが好ましい。
【0031】
メータ制御部104は、所定のアルゴリズム(若しくは規則)に従って、車輪速検出部101から取得した車速か、又は、GPSユニット102から取得した車速のいずれかを選択する。
【0032】
本実施例において、上記所定のアルゴリズムは、以下の2つのパターンのいずれかが適宜採用される。
【0033】
第一のパターンは、メータ制御部104が車輪速検出部101から取得した車速をデフォルトとし、所定のイベントが発生した場合のみGPSユニット102から取得した車速を選択するものである。
【0034】
この第一のパターンにおいて、GPSユニット102から取得した車速が選択される場合とは、例えば、1)自車両が(左右方向又は/前後方向に)スリップ状態にあると判断された場合、及び、2)車速が極低速(例えば5km/h以下)になった場合、などである。
【0035】
1)自車両がスリップ状態にある場合、電磁ピックアップ式のパルスセンサでは車輪速を精度良く検出できない可能性が高い。そこで、メータ制御部104は、車両スリップ時にはGPSユニット102から取得した車速を選択する。メータ制御部104は、例えば、a)予め設定された閾値判定により車輪速検出部101から取得した車速とGPSユニット102から取得した車速との差が短い時間内に急激に増加したと判断されたとき、又は、b)他の車載システム(例えば、ABS、トラクションコントロールなど)によってスリップの発生が検出されたときに、自車両がスリップ状態に入ったと判断する。
【0036】
2)車速が極低速となった場合、電磁ピックアップ式のパルスセンサでは車輪速を精度良く検出できない可能性が高い。そこで、メータ制御部104は、極低速時にはGPSユニット102から取得した車速を選択する。
【0037】
第二のパターンは、メータ制御部104がGPSユニット102から取得した車速をデフォルトとし、所定のイベントが発生した場合のみ車輪速検出部101から取得した車速を選択するものである。
【0038】
この第二のパターンにおいて、車輪速検出部101から取得した車速が選択される場合とは、例えば、予め設定された閾値判定によりGPSユニット102から伝達された受信状態が所定レベル以下に劣化したと判断された場合、などである。これは、例えばトンネル内を走行中などに生じ得る。
【0039】
なお、この第二のパターンにおいても、上述のGPSユニット102により算出された車速に基づく車輪速検出部101により算出された車速の補正は、GPSユニット102により算出された車速がデフォルトとして使用されている間であっても適宜バックグラウンドで行われていることが好ましい。
【0040】
このようなアルゴリズムに基づいて選択された車速を、メータ制御部104は車速メータ103を制御して表示させる。
【0041】
このように、本実施例によれば、電磁ピックアップ式のパルスセンサを利用した車速の算出とGPSを利用した車速の算出とをこれら両手法の長所・短所が互いに補完され合うように適切に組み合わせて利用することによって、あらゆる状況において精度良い車速を算出し、表示することができる。
【0042】
なお、上記一実施例においては、一例として、電磁ピックアップ式のパルスセンサを利用して算出された車速とGPSを利用して算出された車速とのいずれを車速メータ103に表示させるかの判断を車速メータ103を制御するメータ制御部104が実行するものとした、本発明はこれに限定されず、例えば、車輪速検出部101にこの判断機能を担わせ、メータ制御部104は車速メータ103の制御機能に特化するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、移動体の速度表示装置に利用できる。搭載される移動体としては典型例である四輪車両に加えて二輪車も可能である。搭載される車両の外観、重量、サイズ、走行性能等は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例に係る速度表示装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0045】
100 速度表示装置
101 車輪速検出部
102 GPSユニット
103 車速メータ
104 メータ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体において移動速度を検出して表示する速度表示装置であって、
前記移動体の位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段によって検出された前記移動体の位置の時間変化から該移動体の移動速度を算出する第一の速度算出手段と、
前記移動体の移動に伴って生成されたパルス信号から該移動体の移動速度を算出する第二の速度算出手段と、
前記第一の速度算出手段又は前記第二の速度算出手段のいずれかによって算出された前記移動体の移動速度を所定の規則に従って選択的に表示する表示手段と、を有することを特徴とする速度表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の速度表示装置であって、
前記表示手段は、前記第一の速度算出手段によって算出された前記移動体の速度と前記第二の速度算出手段によって算出された前記移動体の速度との差が所定時間内に所定値を超えたとき、前記第一の速度算出手段によって算出された前記移動体の速度を表示する、ことを特徴とする速度表示装置。
【請求項3】
請求項1記載の速度表示装置であって、
前記表示手段は、前記移動体の速度が所定速度以下となったとき、前記第一の速度算出手段によって算出された前記移動体の速度を表示する、ことを特徴とする速度表示装置。
【請求項4】
請求項1記載の速度表示装置であって、
前記表示手段は、前記位置検出手段による前記移動体の位置の検出精度が所定レベル以下となったとき、前記第二の速度算出手段によって算出された前記移動体の速度を表示する、ことを特徴とする速度表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項記載の速度表示装置であって、
前記第二の速度算出手段は、前記第一の速度算出手段によって算出された前記移動体の速度を用いて、該第二の速度算出手段により算出された前記移動体の速度を補正する、ことを特徴とする速度表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−64880(P2007−64880A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253644(P2005−253644)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】