説明

速硬化性有機ボラン開始重合性組成物

本発明は、一方の液に、遊離基発生種を生成することができる有機ホウ素化合物を含み、第二の液に、1種またはそれ以上の遊離基重合することができる化合物、および第二の液の質量を基準として約20〜約30質量部のi)ハロスルホニル基を有するハロゲン化ポリオレフィンまたはii)ハロゲン化ポリオレフィンと有機ハロゲン化スルホニルの混合物を含む二液型重合性組成物である。第二の液は、さらに、2つの液を接触させたときに、有機ホウ素化合物に遊離基発生種を生成させることができる化合物を含有してもよい。第一の液は、さらに、1種またはそれ以上の遊離基重合することができる化合物を含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離基重合することができる基を含有する化合物、遊離基重合を開始させることができる遊離基発生種を生成することができる有機ホウ素化合物を含む速硬化性重合性組成物、およびその組成物を主成分とする接着剤に関する。別の実施態様において、本発明は、遊離基重合することができる基を含有する化合物を重合する方法、およびその組成物を用いて支持体を接着する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリテトラフルオロエチレンのような低表面エネルギーオレフィンは、玩具、自動車部品および家具用途などのような様々な用途において様々な魅力的な特性を有している。これらのプラスチック材料の低表面エネルギーのために、これらの材料に接着する接着剤組成物を見つけるのは非常に難しい。これらのプラスチックに接着する接着剤が開発されてきた。スクールチ(Skoultchi)に発行された一連の特許である米国特許第5,106,928号明細書、米国特許第5,143,884号明細書、米国特許第5,286,821号明細書、米国特許第5,310,835号明細書および米国特許第5,376,746号明細書、ジャーロフ(Zharov)らの米国特許第5,539,070号明細書、米国特許第5,690,780号明細書および米国特許第5,691,065号明細書、ポシウス(Pocius)の米国特許第5,616,796号明細書、米国特許第5,621,143号明細書、米国特許第5,681,910号明細書、米国特許第5,686,544号明細書、米国特許第5,718,977号明細書および米国特許第5,795,657号明細書、ならびにソネンシャイン(Sonnenschein)らの米国特許第6,806,330号明細書、米国特許第6,730,759号明細書、米国特許第6,706,831号明細書、米国特許第6,713,578号明細書、米国特許第6,713,579号明細書および米国特許第6,710,145号明細書(すべて参照によってこの明細書に含められる。)は、硬化を開始するために有機ホウ素アミン錯体が用いられる、接着剤として特に有用な重合性アクリル組成物を開示している。これらの錯体が低表面エネルギー支持体に接着する接着剤の重合を開始するのに有用であることが開示されている。
【0003】
開示された組成物の多くは、工業プロセスで使用するために望まれるよりもゆっくり重合する。これは低生産性を示すプロセスに帰着する。ジアラネラ(Jialanella)の米国特許出願公開第2005−0137370号明細書は、上記の組成物への硬化促進剤の添加を開示しており、その硬化促進剤は、キノン構造を含有する化合物、または少なくとも1つの芳香環および少なくとも1つ、好ましくは2つの芳香環上の置換基を含有する化合物(ただし、置換基は水酸基、エーテルおよびそれらの両方から選択され、2つの置換基は互いにオルトまたはパラ位にある。)およびペルオキシ基を有する化合物を含む。その記載された促進剤は十分に機能するが、その化合物の使用が配合物に追加の成分を加えることになるという欠点がある。追加の成分の使用は配合物の原価を増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、迅速に硬化し、別の成分の添加を必要としない低表面エネルギー支持体に接着することができる接着剤系に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、二液型重合性組成物であって、一方の液に遊離基発生種を生成することができる1種またはそれ以上の有機ホウ素化合物を含み、第二の液に、1種またはそれ以上の遊離基重合することができる化合物、および第二の液100質量部を基準として約20〜約30質量部のi)ハロスルホニル基を有するハロゲン化ポリオレフィンまたはii)ハロゲン化ポリオレフィンと有機ハロゲン化スルホニルの混合物を含む。第二の液は、二液を接触させたときに、有機ホウ素化合物に遊離基発生種を生成させることができる化合物をさらに含んでもよい。第一の液は遊離基重合することができる1種またはそれ以上の化合物をさらに含んでもよい。これは二液の商業的に望ましい体積比を有する組成物を配合するのを容易にする。本発明の配合の接着剤組成物は、プラスチックのような低表面エネルギー支持体に優れた接着を提供し、より迅速な硬化プロフィールを示す。
【0006】
また、本発明は、重合性化合物が重合するような条件下で重合性組成物の成分を接触させる工程を含む重合方法である。1つの実施態様においては、その接触は、外界温度でまたは外界温度近傍で起こる。別の実施態様においては、その方法は、有機ホウ素化合物が遊離基発生種を生成するような条件下で高温に重合性組成物を加熱する工程をさらに含む。
【0007】
さらに別の実施態様において、本発明は、重合が開始されるような条件下で重合性組成物の複数の成分を一緒に接触させる工程、重合性組成物を2つまたはそれ以上の支持体と接触させる工程、重合性組成物が2つまたはそれ以上の支持体の間に位置するように、2つまたはそれ以上の支持体を配置する工程、および重合性組成物を重合させそして2つまたはそれ以上の支持体を一緒に接着させる工程を含む、2つまたはそれ以上の支持体を一緒に接着する方法である。さらに別の実施態様において、本発明は、本発明の組成物を支持体の1つまたはそれ以上の表面と接触させる工程、および本発明の組成物の重合を開始させる工程を含む、支持体を被覆する方法である。別の実施態様において、本発明は、2つの支持体を含む積層体であって、本発明の組成物がそれらの支持体の間に配置されかつ各支持体にくっついている、積層体である。
【0008】
本発明の重合性組成物は、外界温度でまたは外界温度近傍で安定であり、要求に応じて、組成物の二液を接触させることによって、あるいは組成物の二液を接触させた後、有機ホウ素化合物が遊離基発生種を生成する温度以上に組成物を加熱することによって、硬化させることができる。さらに、本発明の重合性組成物は、特に低温で、下塗剤または表面処理を必要とせずに、低表面エネルギー支持体に良好な接着を形成することができる。本発明の重合性組成物は、二液の体積比が4/1以下で業務用機器において分配されるように配合することができる。重合した組成物は、高温で優れた凝集強さおよび接着強さを示し、したがって高温で優れた安定性を示す。本発明の重合性組成物は、迅速な硬化を示し、好ましくは塗布の1時間後にASTM 03165−91による重ね剪断強さが50psi(0.34mPa)以上を示す。好ましくは、重合性組成物は、すでに述べたように迅速な硬化とともに支持体に優れた接着を示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は実施例で得られたデータのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
重合開始剤は、三価の有機ホウ素化合物を生成することができる1種またはそれ以上の有機ホウ素を含有する化合物である。好ましい実施態様においては、遊離基発生種は三価の有機ホウ素化合物である。好ましいホウ素含有化合物は、ホウ素に4つの結合を有する4価であり、4つの結合のうち少なくとも3つは共有結合であり、1つは共有結合であってもよいし、または錯化剤と電子的会合の形であってもよい。三価のホウ素化合物のような遊離基発生種は、ホウ素含有化合物が別の物質と接触したときに生成される(そのような別の物質を、ここでは遊離化化合物と呼ぶ。)。遊離基発生種は、環境の酸素と反応することによって遊離基を発生する。ホウ素含有化合物が4価であるような実施態様においては、その接触によって、ホウ素原子に結合したまたはホウ素原子と錯体を形成した配位子の1つが引き抜かれ、三価のボランに変わる。遊離基発生種は、重合条件下で遊離基を含有するまたは発生させる化合物である。遊離化化合物は、錯化剤と反応するまたはホウ素含有化合物から陽イオンを引き抜くいかなる化合物であってもよい。好ましくは、ホウ素含有化合物は、有機ホウ酸塩、有機ホウ素アミン錯体またはアミド有機ホウ酸塩である。
【0011】
有機ホウ酸塩は、陽イオンと4価ホウ素陰イオンとの塩である。遊離化化合物との接触によって有機ホウ素に変換され得るいかなる有機ホウ酸塩も使用することができる。好ましい有機ホウ酸塩の1種(第四級ホウ素塩としても知られている。)は、ニーフゼイ(Kneafsey)らの米国特許出願公開第2003/0226472号明細書およびニーフゼイらの米国特許出願公開第2004/0068067号明細書(これらは両方とも参照によってこの明細書に含められる。)に開示されている。これらの2つの米国特許出願に開示された好ましい有機ホウ酸塩は、次の式によって表される。
【0012】
【化1】

【0013】
ここで、
はC−C10アルキルであり、
は、出現毎に独立して、C−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、フェニル、フェニル置換C−C10アルキルまたはフェニル置換C−C10シクロアルキルであり(ただしRおよび/またはRの任意の2つが炭素環の一部であってもよい。)、そして
は金属イオンまたは第四級アンモニウムイオンである。
有機ホウ酸塩の好ましい具体例としては、テトラエチルホウ酸ナトリウム、テトラエチルホウ酸リチウム、フェニルトリエチルホウ酸リチウムおよびフェニルトリエチルホウ酸テトラメチルアンモニウムが挙げられる。
【0014】
別の実施態様において、有機ホウ酸塩は、ケンダル(Kendall)らの米国特許第6,630,555号明細書(参照によってこの明細書に含められる。)に開示されているような内部ブロックされたホウ酸塩である。この特許に開示されているのは、ホウ素原子が環構造の一部であり、さらにオキサまたはチオ部分を含有する、4配位内部ブロックホウ酸塩である。内部ブロック複素環ホウ酸塩は、好ましくは、次の構造を有する。
【0015】
【化2】

【0016】
または
【0017】
【化3】

【0018】
ここで、Jは酸素または硫黄であり、Jが酸素を表わすときは、nは整数2、3、4または5であり、Jが硫黄を表わすときは、nは整数1、2、3、4または5であり、
、R、RおよびRは、独立に、置換されたまたは非置換の、1〜10個の炭素原子を含有するアルキルまたはアルキレン基、7〜12個の炭素原子を有する置換されたアリール基または非置換のアリール基であり、R、RおよびRは水素であってもよく、Rは第二の非置換または置換された環状ホウ酸塩の一部であってもよく、Rはスピロ環またはスピロエーテル環を含んでもよく、RはRと連結して脂環式の環を形成してもよく、またはRはRと一緒になって環状エーテル環を含んでもよく、そして
Mはこの明細書において任意の正荷電化学種であり、
mは0を超える数である。
【0019】
この明細書において有機ホウ酸塩に関して用いられる用語「内部ブロック」とは、4配位ホウ素原子が4つのホウ素の配位または原子価の2つを橋かけする内部環構造の一部であることを意味する。内部ブロックは、ホウ素が1つまたは複数の環構造の一部であるような、単環または多環構造を含む。
【0020】
有機ホウ素化合物がアミン錯体の形をしている実施態様においては、本発明に使用される遊離基発生種はトリアルキルボランまたはアルキルシクロアルキルボランである。錯体に使用される有機ホウ素は、トリアルキルボランまたはアルキルシクロアルキルボランである。好ましくは、そのようなボランは次式に相当する。
【0021】
【化4】

【0022】
ここで、Bはホウ素を表わし、そして、Rは、出現毎に別々に、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキルであり、またはRの2つ以上が結合して脂環式の環を形成していてもよい。好ましくは、RはC1−4アルキルであり、さらに好ましくはC2−4アルキルであり、最も好ましくはC3−4アルキルである。好ましい有機ホウ素の中には、トリエチルボラン、トリイソプロピルボランおよびトリ−n−ブチルボランがある。
【0023】
有機ホウ素化合物が有機ホウ素アミン錯体である実施態様においては、有機ホウ素は三価の有機ホウ素であり、そしてアミンは有機ホウ素と可逆的に錯体を形成するいかなるアミンであってもよい。そのような錯体は次式によって表わされる。
【0024】
【化5】

【0025】
ここで、Rは前記したとおりであり、そしてAmはアミンである。
【0026】
有機ホウ素化合物と錯体を形成するのに使用されるアミンは、有機ホウ素と錯体を形成しそして遊離化化合物に接触したときには錯体ではなくなることができる、いかなるアミンまたはアミン混合物であってもよい。アミン/有機ホウ素錯体中の所与のアミンの使用の望ましさは、結合エネルギーとして知られている、ルイス酸−塩基錯体と、分離されたルイス酸(有機ホウ素)および塩基(アミン)のエネルギーの合計との間のエネルギー差から計算することができる。結合エネルギーが負であればあるほど、錯体はより安定である。結合エネルギーの計算および好ましい結合エネルギーは、ソネンシャイン(Sonnenschein)らの米国特許第6,706,831号明細書第4欄第36行〜第57行(参照によってこの明細書に含められる。)に記載されている。
【0027】
好ましいアミンとしては、ジャーロフ(Zharov)の米国特許第5,539,070号明細書第5欄第41行〜第53行(参照によってこの明細書に含められる。)、スクールチの米国特許第5,106,928号明細書第2欄第29行〜第58行(参照によってこの明細書に含められる。)、およびポシウス(Pocius)の米国特許第5,686,544号明細書第7欄第29行〜第10欄第36行(参照によってこの明細書に含められる。)に開示されているように、第一級もしくは第二級アミン、または第一級もしくは第二級アミン基を含有するポリアミンまたはアンモニア;エタノールアミン、第二級ジアルキルジアミンまたはポリオキシアルキレンポリアミン;およびデビニー(Deviny)の米国特許第5,883,208号明細書第7欄第30行〜第8欄第56行(参照によってこの明細書に含められる。)に開示されているような、ジアミンと、アミンと反応する2つ以上の基を有する化合物とのアミン末端反応生成物が挙げられる。デビニーに記載された反応生成物に関し、好ましいジ第一級アミンとしては、アルキルジ第一級アミン、アリールジ第一級アミン、アルキルアリールジ第一級アミンおよびポリオキシアルキレンジアミンが挙げられ、そしてアミンと反応する化合物としては、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸ハロゲン化物、アルデヒド、エポキシド、アルコールおよびアクリレート基の2つ以上の部分を含有する化合物が挙げられる。デビニーに記載された好ましいアミンとしては、n−オクチルアミン、1,6−ジアミノヘキサン(1,6−ヘキサンジアミン)、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン(1,3−プロパンジアミン)、1,2−プロピレンジアミン、1,2−エタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリエチレンテトラアミンおよびジエチレントリアミンが挙げられる。好ましいポリオキシアルキレンポリアミンとしては、ポリエチレンオキシドジアミン、ポリプロピレンオキシドジアミン、トリエチレングリコールプロピレンジアミン、ポリテトラメチレンオキシドジアミンおよびポリエチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシドジアミンが挙げられる。
【0028】
1つの好ましい実施態様においては、アミンは、第一級アミンおよび1つ以上の水素結合受容基を有し、第一級アミンと水素結合受容基の間に少なくとも2個の炭素原子、好ましくは少なくとも約3個の炭素原子がある化合物を含む。好ましくは、アルキレン部分は、第一級アミンと水素結合受容基の間に位置する。水素結合受容基とは、ここでは、ボランと錯体を形成するアミンの水素との分子間または分子内相互作用によって、ボランと錯体を形成するアミン基の窒素の電子密度を増加させる官能基を意味する。好ましい水素結合受容基としては、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、エーテル、ハロゲン、ポリエーテル、チオエーテルおよびポリアミンが挙げられる。好ましい第一級アミンおよび1つ以上の水素結合受容基を有する化合物は、ソネンシャインらの米国特許第6,730,759号明細書(第4欄第60行〜第5欄第67行)、米国特許第6,706,831号明細書、米国特許第6,713,578号明細書、米国特許第6,713,579号明細書および米国特許第6,710,145号明細書の関連部分(参照によってこの明細書に含められる。)に記載されている。
【0029】
別の実施態様において、アミンは、複素環の中に少なくとも1つの窒素を有する脂肪族複素環である。複素環式化合物は、1つ以上の窒素、酸素、硫黄または二重結合をも含有することができる。さらに、複素環は、複数の環を含み、環の少なくとも1つが環の中に窒素を有するものであってもよい。好ましい脂肪族の複素環式アミンは、ソネンシャインらの米国特許第6,730,759号明細書(第6欄第1行〜第45行)、米国特許第6,706,831号明細書、米国特許第6,713,578号明細書、米国特許第6,713,579号明細書および米国特許第6,710,145号明細書の関連部分(参照によってこの明細書に含められる。)に記載されている。
【0030】
さらに別の実施態様において、有機ホウ素と錯体を形成するアミンはアミジンである。アミジンが有機ホウ素と前記の十分な結合エネルギーを有する限り、アミジン構造を有するいかなる化合物も使用することができる。好ましいアミジン化合物は、ソネンシャインらの米国特許第6,730,759号明細書(第6欄第4行〜第7欄第21行)、米国特許第6,706,831号明細書、米国特許第6,713,578号明細書、米国特許第6,713,579号明細書および米国特許第6,710,145号明細書の関連部分(参照によってこの明細書に含められる。)に記載されている。
【0031】
さらに別の実施態様において、有機ホウ素と錯体を形成するアミンは共役イミンである。イミンが有機ホウ素と前記の十分な結合エネルギーを有する限り、共役イミン構造を有するいかなる化合物も使用することができる。共役イミンは直鎖または枝分れ鎖イミンでもよいし、環状イミンでもよい。好ましいイミン化合物は、ソネンシャインらの米国特許第6,730,759号明細書(第7欄第22行〜第8欄第24行)、米国特許第6,706,831号明細書、米国特許第6,713,578号明細書、米国特許第6,713,579号明細書および米国特許第6,710,145号明細書の関連部分(参照によってこの明細書に含められる。)に記載されている。
【0032】
別の実施態様において、アミンは、脂環式の環に結び付いた、アミン部分を含有する置換基を有する脂環式化合物であってもよい。アミン含有脂環式化合物は、1つ以上の窒素、酸素、硫黄原子または二重結合を含有する第二の置換基を有していてもよい。脂環式の環は1つまたは2つの二重結合を含有することができる。脂環式化合物は、単環構造であってもよいし、多環構造であってもよい。好ましくは、第一の置換基上のアミンは第一級または第二級である。好ましくは、脂環式の環は5員環または6員環である。好ましくは、第二の置換基上の官能基はアミン、エーテル、チオエーテルまたはハロゲンである。好ましい1つ以上のアミン含有置換基を有する脂環式化合物は、ソネンシャインらの米国特許第6,730,759号明細書(第8欄第25行〜第59行)、米国特許第6,706,831号明細書、米国特許第6,713,578号明細書、米国特許第6,713,579号明細書および米国特許第6,710,145号明細書の関連部分(参照によってこの明細書に含められる。)に記載されている。
【0033】
別の好ましい実施態様において、アミンはさらにシロキサンを含有する、すなわちアミノシロキサンである。アミンが有機ホウ素と前記の十分な結合エネルギーを有する限り、アミンおよびシロキサン単位の両方を有するいかなる化合物も使用することができる。好ましいシロキサン部分を有するアミンは、さらに、米国特許第6,777,512号明細書(発明の名称:シロキサン重合性成分を含むアミン有機ボラン錯体開始重合性組成物)(第10欄第14行〜第11欄第29行)(参照によってこの明細書に含められる。)に記載されている。
【0034】
有機ホウ素化合物が有機ホウ素アミン錯体である実施態様においては、錯体中のボラン化合物に対するアミン化合物の当量比が比較的重要である。過剰のアミンは、錯体の安定性を強めるために、そして遊離化化合物がイソシアナート官能性化合物である実施態様においては、イソシアナート官能性化合物と反応し、それによって最終生成物中にポリ尿素が存在する状態をもたらすために、好ましい。ポリ尿素の存在は、組成物の高温特性を向上させる。1つの実施態様において、有機ホウ素化合物は、ホウ素原子が窒素化合物に共有結合またはイオン結合した、4価のホウ素陰イオンを含むアミドホウ酸塩である。アミドホウ酸塩は、1つ以上のアミドホウ酸陰イオンおよびアミドホウ酸陰イオンを中和する1つ以上の対応する陽イオンからなる。ホウ酸塩は、陽イオンと、4価のホウ素陰イオンとの塩である。アミドホウ酸塩は、ホウ素原子上の配位子の1つが、アンモニアの窒素、または1つ以上の窒素原子を含有する有機化合物(1つ以上のヘテロ原子または1つ以上のヘテロ原子含有官能基を含有していてもよい。)の窒素(ただし窒素は第四級かつ陽イオンであってもよい。)である有機ホウ酸塩である。いくつかの実施態様においては、陽イオンは、第四級窒素の形でホウ素に結合した窒素であってもよい。アミドホウ酸塩を形成するために使用される窒素化合物が、アミドホウ酸塩を形成するために有機ボランの1個超のホウ素原子に結合された1個超の窒素を有する場合は、特にそうである。アミドホウ酸塩を形成するために窒素原子に結合した有機ボランは、3つのヒドロカルビル基との結合を有するホウ素原子を含み、そのヒドロカルビル基はさらにヘテロ原子またはアミドホウ酸塩化合物の上記の機能を妨げないヘテロ原子含有官能基を1つ以上含んでもよい。ここに記述したヒドロカルビル基の中に存在してもよい、好ましいヘテロ原子としては、酸素、硫黄、窒素、ケイ素、ハロゲンなどが挙げられるが、酸素が最も好ましい。ここに記述したヒドロカルビル基の一部として存在してもよい、好ましいヘテロ原子含有官能基としては、エーテル、チオエーテル、アミン、シラン、シロキサンなどが挙げられるが、エーテルが最も好ましい。ホウ素原子は、3つの別個のヒドロカルビル基に結合していてもよいし、または2つのヒドロカルビル基に結合し、1つのヒドロカルビル基がホウ素原子と2つの結合を有し、それによって1つ以上の環状の環を形成していてもよい。アミドホウ酸塩を調製するために使用される有機ボランは、好ましくは、トリアルキルボランまたはアルキルシクロアルキルボランである。
【0035】
1つの実施態様において、アミドホウ酸塩は、1つ以上の4価のホウ素陰イオン、およびi)窒素原子および陽イオンを含有する有機化合物またはii)アンモニウム陽イオンのうちの1つ以上を含む化合物である。ここで、1つ以上の4価のホウ素原子の各々は、アンモニウム陽イオンまたは窒素原子を含有する有機化合物の窒素原子に結合している。別の実施態様において、アミドホウ酸塩は、2つ以上の4価のホウ素陰イオン(ただし、ホウ酸陰イオンの少なくとも1つは有機化合物の窒素原子に結合し、そしてホウ酸陰イオンの少なくとも1つはアンモニウム陽イオンの窒素に結合している。)、および1つ以上の追加の陽イオン(ただし、追加の陽イオンの数は、少なくとも1つの窒素原子を含有する有機化合物の窒素原子に結合した4価のホウ素原子の数と同じである。)を含む。
【0036】
アミドホウ酸塩の窒素を含有する部分は、アンモニア、またはホウ素に結合することができる窒素原子を含有する任意の有機化合物に由来することができ、好ましくはアンモニア、ヒドロカルビルアミンまたはポリアミンに由来する。ホウ素原子に結合してホウ酸塩を形成するそのような化合物の窒素原子は、第一級であってもよいし、第二級であってもよいし、第四級であってもよいが、好ましくは第二級または第三級または第四級である。別の好ましい実施態様において、アミドホウ酸塩を調製するために有機ボランに結合する窒素原子は、芳香族複素環式化合物の環の中にまたはその環の上にある窒素である。窒素が第四級である実施態様においては、アミドホウ酸塩の第四級窒素部分は、第四級窒素原子が結合している化合物のホウ酸陰イオン部分に対する陽性の対イオンである。ヒドロカルビルアミンまたはポリアミン、および窒素含有芳香族複素環式化合物は、前記したようなヘテロ原子を含有してもよいし、またはさらに前記したような本発明の組成物におけるそのような化合物の機能を妨げない置換基で置換されていてもよい。ヒドロカルビルアミンは、好ましくは、次式に相当するものである。
【0037】
【化6】

【0038】
ここで、Rは、出現毎に独立に、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリールまたはアラルキル基(ただし、それらの基は、所望により、前記したような、1つ以上のヘテロ原子、1つ以上のヘテロ原子含有官能基、またはプロトンを含有していてもよい。)である。Rは、好ましくは、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキル、C6−12アリール、C7−20アルカリールまたはC7−20アラルキル(ただし、それらの基は、所望により、1つ以上のOまたはSヘテロ原子(好ましくはO)、または1つ以上のOまたはSヘテロ原子含有官能基を含有していてもよい。)である。Rは、より好ましくは、C1−4アルキルまたはC1−10アルコキシアルキルであり、さらに好ましくは、メチル、エチル、プロピル、メトキシプロピル、エトキシプロピルまたはプロポキシプロピルである。アルコキシアルキルに関して、炭素原子数は、その基の中の全炭素原子をいう。ヒドロカルビルポリアミンは、好ましくは、次式に相当するものである。
【0039】
【化7】

【0040】
ここで、Rは前記したとおりであり、
は、出現毎に独立に、2価のヒドロカルビル基(前記したような1つ以上のヘテロ原子または1つ以上のヘテロ原子含有官能基を含有していてもよい。)であり、
rは、出現毎に独立に、0、1または2であり、そして
qは、各出現毎に独立に、1または2である。
芳香族窒素含有複素環式化合物は、好ましくは、次式に相当するものである。
【0041】
【化8】

【0042】
ここで、R10は、出現毎に独立に、水素、アルキル、アルコキシル、アラルキルまたはアリール基(ただし、それらの基は、所望により、前記したような1つ以上のヘテロ原子もしくは1つ以上のヘテロ原子含有官能基、またはプロトンを含有していてもよい。)であり、
Zは、出現毎に独立に、N、Si、PまたはCであり、そして
wは0または1であり、ただし、ZがNまたはPである場合はwは0でしかなく、ZがCまたはSiであるときはwは1でしかない。
好ましくは、ZはNまたはCである。
10は、好ましくは、水素、C1−10アルキル、C3−10シクロアルキル、C6−12アリール、C7−20アルカリールまたはC7−20アラルキルであり、ただし、それらの基は、所望により、1つ以上のOまたはSヘテロ原子(好ましくはO)、または1つ以上のOまたはSヘテロ原子含有官能基を含有していてもよい。
は、より好ましくは、水素、C1−4アルキルまたはC1−10アルコキシアルキルであり、さらに好ましくは、水素、メチル、エチル、プロピルであり、そして最も好ましくは水素である。
好ましくは、Rは、出現毎に独立に、C2−20アルキレン、C3−20シクロアルキレン、C6−20アリーレン、C7−20アルカリーレンまたはC7−20アラルキレンであり、所望により1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含有し、好ましくはC2−20アルキレンまたは1つ以上の酸素原子を含有するC2−20アルキレン基であり、そしてさらに好ましくはC2−4アルキレンである。
好ましいヘテロ原子はOまたはSであり、Oが最も好ましい。
【0043】
アミドホウ酸陰イオンと塩を形成する陽イオンは、アミドホウ酸陰イオンと塩を形成するいかなる陽イオンであってもよい。その陽イオンは、任意のIA族およびIIA族金属、任意の無機陽イオンまたは有機陽イオンであることができる。好ましくは、その陽イオンはオニウムイオンまたはアルカリ金属イオンである。より好ましくは、その陽イオンはナトリウム、カリウム、ホスホニウムまたはアンモニウムイオンである。好ましいアンモニウムイオンはテトラアルキルアンモニウムイオンであり、テトラメチルアンモニウムイオンが最も好ましい。好ましいホスホニウムイオンはテトラアルキルホスホニウムまたはテトラアリールホスホニウムであり、テトラブチルホスホニウムおよびテトラフェニルホスホニウムが好ましい。
【0044】
アミドホウ酸塩は、好ましくは、次式のうちの1つに相当する。
【0045】
【化9】

【0046】
【化10】

【0047】
【化11】

【0048】
【化12】

【0049】
ここで、R、R、R、R10およびwは前記のとおりであり、
Xは、出現毎に独立に、陽イオンであり、
pは、出現毎に独立に、0または1であり、
qは、出現毎に独立に1または2であり、
qは2である。
窒素原子はホウ酸陰イオンと釣り合う陽イオンであり、
ただし、連結したホウ素と窒素の対の各々の上のpとqの合計は2であり、そしてpの合計は1または2である。qが2である場合は、それが結合している窒素は第四級であり、ホウ酸塩のホウ素の上に見いだされる負電荷と釣り合う正電荷を有し、そして陽イオンはホウ酸塩を中性にするためには必要ではない。
【0050】
好ましくは、Xは、出現毎に独立に、オニウムまたはアルカリ金属イオンであり、より好ましくは、Xはアンモニウム、ホスホニウム、カリウムまたはナトリウム陽イオンであり、さらに好ましくは、Xは、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウム、テトラアリールホスホニウムまたはナトリウムであり、最も好ましくは、Xは、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラブチルホスホニウムまたはテトラフェニルホスホニウムである。
【0051】
別の実施態様において、陽イオン種は、ホウ酸陰イオンと塩を形成する1個を超える陽イオン種を有することができる。したがって、陽イオン種は、1個を超えるホウ酸陰イオン種と塩を形成することができる。好ましくは、1個を超える陽イオンを有する陽イオン種は、2〜4個の陽イオンを有し、好ましくは2個または3個の陽イオンを有し、さらに好ましくは2個の陽イオンを有する。好ましい1個を超える陽イオンを有する陽イオン種の中には、2個以上のアンモニウムまたはホスホニウム陽イオンを有する化合物があり、2個のアンモニウム陽イオンを有する化合物が好ましい。そのような化合物の具体例としては、1,2−(ジ(トリメチルアンモニウム))エタンが挙げられる。陽イオン種が1個を超える陽イオンを有する実施態様においては、アミドホウ酸塩は、好ましくは、次式に相当するものである。
【0052】
【化13】

【0053】
【化14】

【0054】
【化15】

【0055】
および
【0056】
【化16】

【0057】
ここで、R、R、R、R10、w、X、pおよびqは前記したとおりであり、
11は、出現毎に独立に、t価のヒドロカルビル基であり、所望により前記したような1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含有し、
Yは、出現毎に独立に、
【0058】
【化17】

【0059】
または
【0060】
【化18】

【0061】
であり、
tは出現毎に独立に2以上である。好ましくは、tは2〜4であり、さらに好ましくは2または3であり、最も好ましくは2である。
好ましくは、R11は、出現毎に独立に、t価のC2−20アルキレン、C3−20シクロアルキレン、C6−20アリーレン、C7−20アルカリーレン、またはC7−20アラルキレンであり、所望により1つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有官能基を含有し、好ましいヘテロ原子は硫黄および酸素であり、酸素が最も好ましい。より好ましくは、R11はt価のアルキレン基であり、さらに好ましくはt価のC2−6アルキレン基である。最も好ましくは、R11は2価のC2−4アルキレン基である。
【0062】
アミドホウ酸塩は上記した塩基アミンから調製することができ、そのようなアミンは商業的に入手可能である。アミンは、溶媒中で、そしてアミンが液体の場合は無溶媒で、塩基と接触させることができ、その結果、塩を生じる。テトラヒドロフランのような不活性な有機溶媒を使用してもよい。アミンと塩基からの陽イオンとの塩が形成される。生じた塩は、3価の有機ボランと接触し、アミドホウ酸塩を形成する。接触は、好ましくは、減圧下でまたは不活性雰囲気下で行なわれる。好ましくは、その工程は外界温度で行なわれる。溶媒が使用される場合、それは減圧下で除去することができる。
【0063】
アミドホウ酸塩は3価の有機ホウ素化合物を形成することができる。アミドホウ酸塩は、それがホウ素に対して4つの結合を有するという点で4価である。アミドホウ酸塩が遊離化化合物と接触したとき、遊離基発生種である3価のホウ素化合物が形成される。3価のボランは環境酸素と反応することによって遊離基を発生させる。アミドホウ酸塩の窒素含有部分は、好ましくは、アンモニア、ヒドロカルビルアミンまたはポリアミンに由来する。ホウ酸塩を形成するためにホウ素原子に結合するそのような化合物の窒素原子は、第一級でもよいし、第二級でもよいし、第三級でもよいが、好ましくは第二級または第三級である。別の実施態様において、アミドホウ酸塩を調製するために有機ボランに結合する窒素原子は、芳香族複素環式化合物の環の中にまたはその環の上にある窒素である。ホウ素原子に結合する窒素原子は、第一級でもよいし、第二級でもよいし、第三級でもよいし、第四級でもよい。窒素が第四級であるような実施態様においては、アミドホウ酸塩の第四級窒素部分は、第四級窒素原子が結合した化合物のホウ酸陰イオン部分に対する陽性の対イオンである。ヒドロカルビルアミンまたはポリアミンおよび窒素含有芳香族複素環式化合物は、ヘテロ原子を含有していてもよいし、またはさらに本発明の組成物におけるそのような化合物の機能を妨げない置換基で置換されていてもよい。ヒドロカルビルアミンは、好ましくは、次式に相当するものである。
【0064】
【化19】

【0065】
ここで、Rは、出現毎に独立に、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリールまたはアラルキル基であり、それらの基は、所望により、ヘテロ原子、ヘテロ原子含有官能基またはプロトンを含有していてもよい。ヒドロカルビルポリアミンは、好ましくは、次式に相当するものである。
【0066】
【化20】

【0067】
ここで、Rは前記したとおりであり、
は、出現毎に独立に、2価のヒドロカルビル基であり、
rは、出現毎に独立に、0、1または2であり、そして
qは、出現毎に独立に、1または2である。
芳香族窒素含有複素環式化合物は、好ましくは、次式に相当するものである。
【0068】
【化21】

【0069】
ここで、R10は、出現毎に独立に、水素、アルキルまたはアリール基であり、ただし、それらの基は、所望により、ヘテロ原子、ヘテロ原子含有官能基またはプロトンを含有していてもよく、
Zは、出現毎に独立にN、Si、PまたはCであり、
wは0または1であり、ただしZがNまたはPであるときはwは1でしかなく、ZがCまたはSiであるときはwは1または2である。
【0070】
遊離基発生種を発生させることができる有機ホウ素化合物は、本発明の重合性組成物において、3価の有機ホウ素が遊離されたときに重合を開始しそして望む場合は重合性組成物の接着を促進するのに十分な量で使用される。好ましくは、1つ以上の有機ホウ素化合物は、組成物100質量部を基準として約0.1質量部以上、より好ましくは約0.5質量部以上、最も好ましくは約1質量部以上の量で重合性組成物中に存在する。好ましくは、1つ以上の有機ホウ素化合物は、組成物100質量部を基準として、約30質量部以下、より好ましくは約20質量部以下、最も好ましくは約10質量部以下の量で重合性組成物中に存在する。
【0071】
本発明の重合性組成物において使用することができる遊離基重合することができる化合物としては、遊離基重合によって重合することができるオレフィン不飽和を含有する任意の単量体、オリゴマー、重合体またはそれらの混合物が挙げられる。そのような化合物は当業者によく知られている。モタス(Mottus)の米国特許第3,275,611号明細書の第2欄第46行〜第4欄第16行(参照によってこの明細書に含められる。)には、そのような化合物の説明が記載されている。オレフィン不飽和を含有する化合物の好ましい種類は、ソネンシャインらの米国特許第6,730,759号明細書(第9欄第7行〜第54行)、米国特許第6,706,831号明細書、米国特許第6,713,578号明細書、米国特許第6,713,579号明細書および米国特許第6,710,145号明細書の関連部分(参照によってこの明細書に含められる。)に記載されている。好ましいアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの具体例はスクールチの米国特許第5,286,821号明細書第3欄第50行〜第6欄第12行(参照によってこの明細書に含められる。)およびポシウスの米国特許第5,681,910号明細書第9欄第28行〜第12欄第25行(参照によってこの明細書に含められる。)に開示されている。アクリル酸エステル架橋分子もまた、これらの組成物において有用であり、アクリル酸エステル架橋分子としては、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジアクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジエチレングリコールビスメタクリルオキシカーボネート、ジアクリル酸ポリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジアクリル酸ジグリセリン、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、トリアクリル酸ペンタエリトリトール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、メタクリル酸イソボルニルおよびメタクリル酸テトラヒドロフルフリルが挙げられる。組成物が接着剤として使用される実施態様においては、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル系化合物が遊離基重合することができる化合物として好ましく使用される。最も好ましいアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルおよびメタクリル酸シクロヘキシルメチルが挙げられる。
【0072】
遊離基重合することができる化合物の好ましい量は、全重合性組成物100質量部を基準として、好ましくは約10質量部以上、より好ましくは約20質量部以上、最も好ましくは約30質量部以上である。遊離基重合することができる化合物の好ましい量は、重合性組成物100質量部を基準として、好ましくは約90質量部以下、より好ましくは約85質量部以下、最も好ましくは約80質量部以下である。
【0073】
別の実施態様において、本発明の組成物は、二液型重合性組成物を含み、一方の液に有機ホウ素化合物および1個以上の開環する複素環部分を含有する1種以上の化合物を含み、そして第二の液に、遊離基重合によって重合することができる化合物、開環する複素環部分を含有する化合物を重合させることができる触媒、ハロスルホニル基を有するハロゲン化ポリオレフィンまたはハロポリオレフィンと有機スルホニル化合物の混合物、および、所望により、有機ホウ素化合物に遊離基発生種を生成させる成分を含む。1つの実施態様においては、本発明は2相系であり、遊離基重合によって重合する化合物から調製された1種以上の重合体を含有する第一の相および1種以上の開環する複素環部分を含有する化合物に由来した重合したまたは部分的に重合した化合物を含む第二の相を含む。そのような重合性組成物およびそのような組成物から生じる重合体は、ソネンシャインらの米国特許第6,762,260号明細書の関連組成物(参照によってこの明細書に含められる。)に記載されている。複素環開環部分を含有する化合物は、開環および重合できる複素環部分を含有するいかなる単量体、オリゴマーまたはプレポリマーであってもよい。複素環部分中のヘテロ原子は好ましくは窒素、酸素または硫黄であり、窒素および酸素が好ましく、酸素が最も好ましい。好ましくは、複素環部分は3員環である。好ましい複素環部分はオキシランおよびアジリジン部分であり、オキシラン部分が最も好ましい。好ましい複素環開環化合物は、ソネンシャインらの米国特許第6,762,260号明細書の第10欄第34行〜第11欄第22行(参照によってこの明細書に含められる。)にさらに詳しく記載されている。重合性配合物は、重合性組成物100質量部を基準として、約2質量部以上の、より好ましくは約5質量部以上の、最も好ましくは約10質量部以上の複素環重合性化合物を含有してもよい。重合性配合物は、重合性組成物100質量部を基準として、約50質量部以下の、より好ましくは約45質量部以下の、最も好ましくは約40質量部以下の複素環重合性化合物を含有してもよい。ソネンシャインらの米国特許第6,762,260号明細書(第11欄第53行〜第1欄第11行)(参照によってこの明細書に含められる。)に記載されているように、複素環開環重合性化合物由来の相に遊離基重合性化合物相を架橋させることが有用な場合もある。用いられる架橋剤の量は、所望の特性すなわち125℃以上において十分な重ね剪断強さを付与するが、室温接着強さをここに定められるような目標値より下げない量である。架橋剤の好ましい量は、重合性配合物100質量部を基準として、約0質量部以上、より好ましくは約1質量部以上、さらに好ましくは約3質量部以上、最も好ましくは約5質量部以上である。好ましくは、用いられる架橋剤の量は、全重合性配合物100質量部を基準として、約20質量部以下、さらに好ましくは約15質量部以下、最も好ましくは約12質量部以下である。
【0074】
1つの実施態様において、本発明の重合性組成物は、米国特許第6,777,512号明細書(発明の名称:シロキサン重合性成分を含有するアミン有機ボラン錯体開始重合性組成物)(第12欄第66行〜第15欄第54行)に開示されているような、シロキサン主鎖および重合し得る反応性基を有する1種以上の化合物、オリゴマーまたはプレポリマー、前記シロキサン主鎖および重合し得る反応性基を有する1種以上の化合物、オリゴマーまたはプレポリマーの重合用触媒をさらに含んでもよい。
【0075】
遊離基重合することができる基を有する化合物の重合に有用な有機ホウ素化合物は、遊離化化合物の添加によって遊離基発生種を生成することができる化合物(錯体分解剤という場合もある。)に変換されてもよく、その化合物は、たとえばボランからのアミンを置き換えることによって、3価のボラン化合物のような遊離基発生種を生成することができる化合物の形成をもたらすであろう。
【0076】
アルキルボランからのアミンの置換またはホウ酸塩構造からのトリアルキルボランの遊離は、鉱酸、有機酸、ルイス酸、イソシアナート、酸塩化物、塩化スルホニル、アルデヒドなどのような、交換エネルギーが有利ないかなる化学薬品で起こしてもよい。好ましい遊離化化合物は酸およびイソシアナートである。開環重合用開始剤がルイス酸であるような実施態様においては、ルイス酸が遊離化化合物としても機能し得るので、遊離化化合物は省略することができる。ルイス酸が複素環開環重合開始剤として用いられる場合は、遊離化化合物としても機能するために、重合を開始させるために必要な量を超える追加の量は必要ではない。重合は熱によっても開始することができる。重合を開始するために組成物が加熱される温度は、有機ボランを含有する錯体または化合物の結合エネルギーによって決まる。一般に、トリアルキルボランを遊離することによって重合を開始するために用いられる温度は、約30℃以上、好ましくは約50℃以上である。好ましくは、熱によって開始される重合が開始される温度は、約120℃以下、より好ましくは約100℃以下である。熱源が組成物の成分またはその機能に悪影響を与えない限り、所望の温度に組成物を加熱するのにいかなる熱源も用いることができる。このように、組成物が熱にさらされる前にまたは後に、組成物は支持体と接触することができる。支持体と接触する前に組成物が加熱される場合は、組成物がもはや支持体に接着することができない点まで組成物が重合する前に、組成物を支持体と接触させるべきである。ラジカル生成のために有利な条件を作り出すのに十分であるが、重合を抑制するほどには多くない酸素が存在するように、酸素含有量を制御することは、熱開始反応において必要かもしれない。
【0077】
本発明の組成物は、さらに、安定化量のジヒドロカルビルヒドロキシルアミンを含有してもよい。安定化とは、ここで用いるときは、要望されるまでは重合を防ぐことをいう。一般に、これは通常の貯蔵条件下で重合が抑制されることを意味する。通常の貯蔵条件とは、約0℃〜約40℃の温度での貯蔵を意味する。ただし、接着剤は密封容器に貯蔵される。安定な組成物は、決められた期間の間、望ましくない粘度増加を生じないものである。粘度増加は、存在する単量体の重合を示す証拠である。好ましい実施態様においては、40℃以下の温度に貯蔵したときに、粘度が30日間で150パーセント超増加しなければ、組成物は安定であり、より好ましくは30日間で100パーセント以下、最も好ましくは30日間で50パーセント以下である。
【0078】
ここで有用なジヒドロカルビルヒドロキシルアミンとしては、本発明の組成物に含められたときに、ここに記載したような組成物の安定性を向上させるような任意の化合物が挙げられる。好ましいジヒドロカルビルアミンは、式(R11N−OH(ただしR11は出現毎に独立にヒドロカルビル基である。)に相当するものである。好ましくは、R11は、出現毎に独立に、C2−30アルキル、アルカリールまたはアリール基であり、より好ましくはC10−20アルキル、アルカリールまたはアリール基であり、C10−20アルキル基がさらに好ましい。好ましいジヒドロカルビルヒドロキシルアミンの中には、バスフ社(BASF)製ヒドロキシルアミン・フリーベース、三井化学(アメリカ)社(Mitsui Chemicals America, Inc.)製ヒドロキシルアミン誘導体およびチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)製IRGASTABTM FS製品(ビス(N−ドデシル)N−ヒドロキシルアミンとしても記述される酸化したビス(水素化獣脂アルキル)アミンを含有する。)がある。ジヒドロカルビルヒドロキシルアミンは、本発明の組成物を安定化するために十分な量で利用される。好ましくは、ジヒドロカルビルヒドロキシルアミンは、本発明の組成物の約1質量ppm以上、より好ましくは約2質量ppm以上、最も好ましくは約5質量ppm以上の量で用いられる。好ましくは、ジヒドロカルビルヒドロキシルアミンは、本発明の組成物の約100,000質量ppm以下、より好ましくは約50,000質量ppm以下、さらに好ましくは約10,000質量ppm以下、最も好ましくは約3,000質量ppm以下の量で用いられる。
【0079】
本発明の組成物は、さらに、重合性組成物の硬化のための促進剤を含む。促進剤は、ハロスルホン化されたハロポリオレフィンまたはハロポリオレフィンと有機ハロゲン化スルホニルとの混合物である。ハロポリオレフィンとは、ここでは、ハロゲン原子で置換されたポリオレフィンを意味する。ポリオレフィンとは、ここで用いるときは、主鎖の中に不飽和がある炭素鎖を有する1種以上の化合物に由来する重合体をいい、重合は化合物の不飽和の部位によって生じる。有機ホウ素化合物に電子を供与するいかなるハロゲン化ポリオレフィンも使用することができる。好ましいハロゲン化ポリオレフィンは、ハロゲン化されたポリエチレンおよびハロゲン化されたポリプロピレン、またはハロゲン化されたポリエチレンまたはハロゲン化されたポリプロピレンセグメントを含有する共重合体である。好ましくは、ハロゲン化ポリオレフィンは、本発明の重合した組成物の延性を向上させるのに十分なエラストマー性を有する。ポリオレフィン上の好ましいハロゲンは、フッ素および塩素であり、塩素が最も好ましい。ハロゲン化ポリオレフィンは、好ましくは、約20質量%以上、より好ましくは約25質量%以上のハロゲン含有量を有する。ハロゲン化ポリオレフィンは、好ましくは約50質量%以下、より好ましくは約45質量%以下、最も好ましくは40質量%以下のハロゲン含有量を有する。最も好ましい実施態様においては、ハロゲン化ポリオレフィンはさらにハロゲン化スルホニル基で置換される。ハロゲン化スルホニル上の好ましいハロゲンは、フッ素および塩素であり、塩素が最も好ましい。好ましいハロスルホン化されたハロポリオレフィンとしては、デュポン・パフォーマンス・エラストマー社(DuPont Performance Elastomers)から入手可能なHYPALONTM H−20、H−30、H−40、H−405、H−4085、H−48、HPG6525、Acsium、HPR6983、CP、CPR6140およびCP337クロロスルホン化塩素化ポリエチレン(HYPALONはデュポン社の商標である。)が挙げられる。
【0080】
別の実施態様において、ハロスルホニル基を含有しないハロポリオレフィンを有機ハロゲン化スルホニルとともに使用してもよい。ハロゲン化ポリオレフィンとともに本発明の重合性組成物の硬化を促進するいかなる有機ハロゲン化スルホニルも使用することができる。好ましい塩化スルホニルとしては、単官能または多官能塩化スルホニルが挙げられ、好ましくはメタンまたはブタンスルホニル=クロリドのようなC−C12アルキルスルホニル=クロリド、ベンゼンまたはトルエンスルホニル=クロリドのようなC−C24芳香族スルホニル=クロリドである。塩化スルホニルは、所望により、ジフェニルエーテル−4,4′−ジスルホニル=クロリドのように、ヘテロ原子を含有してもよい。
【0081】
ハロスルホニル基は、好ましくは、ハロゲン化ポリオレフィン100グラム当たり約0.1グラム以上、より好ましくは約0.5グラム以上の硫黄含有量を与えるのに十分な量で、ポリオレフィン上の置換基の形でまたはハロゲン化スルホニルとして存在する。ハロスルホニル基は、好ましくは、ハロゲン化ポリオレフィン100グラム当たり1.5グラム以下、より好ましくは約1.0グラム以下の硫黄含有量を与えるのに十分な量で、ポリオレフィン上の置換基の形でまたはハロゲン化スルホニルとして存在する。ハロスルホン化されたハロゲン化ポリオレフィン、またはハロゲン化ポリオレフィンと有機ハロゲン化スルホニルとの混合物は、本発明の重合性組成物の硬化速度を増加させるのに十分な量で存在する。好ましくは、そのような組成物は、第二の液100質量部を基準として、約20質量部以上の量で存在する。好ましくは、そのような組成物は、第二の液の約30質量部以下、より好ましくは約25質量部以下の量で存在する。
【0082】
好ましくは、促進剤は、有機ホウ素化合物を含有していない液の方に配置される。多くの場合、有機ホウ素化合物を含有する液は硬化剤側と呼ばれ、他方の液は、重合性化合物の大部分がこの液の中に見いだされるので、樹脂側と呼ばれる。ヒドロカルビルとは、ここで用いられるときは、炭素および水素原子の両方を有する任意の基を意味し、飽和および不飽和の枝分かれしたおよび枝分かれしていない炭化水素鎖および/または環構造を含む。アルキルとは、枝分かれしたおよび枝分かれしていない飽和炭化水素鎖をいう。アルケニルとは、枝分かれしたおよび枝分かれしていない不飽和炭化水素鎖をいう。アリールとは、芳香族炭化水素基を意味する。アルカリールとは、直鎖または枝分かれした炭化水素鎖が結合した芳香族炭化水素基を意味する。アラルキルとは、アリール基が結合した直鎖または枝分かれした炭化水素鎖を意味する。アシルとは、ヒドロカルビルとカルボニルからなる基を意味する。別段の言及がないかぎり、これらの基は、それらの基が結合する化合物の機能を著しく妨げない他のいかなる置換基で置換されていてもよい。
【0083】
本発明の二液型重合性組成物または接着剤組成物は、独自に、二液型組成物のための従来の商業的に入手可能な分配装置で使用するのに適している。一旦二液が混ぜ合わせられたならば、有用な可使時間(開放時間)が単量体混合物、有機ホウ素化合物の量、触媒の量および接着が行なわれる温度に依存して短い場合があるので、組成物は迅速に使用されるべきである。本発明の接着剤組成物は、一方または両方の支持体に塗布され、その後、支持体は、好ましくは接着剤層から過剰の組成物を押し出すために加圧した状態で、一緒に接合される。一般に、組成物が塗布された直後、好ましくは約10分以内に、接着を行なうべきである。典型的な接着剤層の厚さは、約0.005インチ(0.13mm)〜約0.03インチ(0.76mm)である。本発明の組成物は、接着剤と填隙剤の両方として機能することができるので、填隙が必要な場合は、接着剤層をより厚くすることができる。接着工程は、室温で容易に行なうことができ、そして接着の程度を向上させるために、温度を約40℃以下、好ましくは約30℃以下、最も好ましくは約25℃以下に維持することが望ましい。
【0084】
組成物は所望によりさらに様々な添加剤を含んでもよい。特に有用な1つの添加剤は、中〜高(約10,000〜約1,000,000)分子量ポリメタクリル酸メチルのような増粘剤であり、それは組成物100質量部を基準として、約10〜約60質量部の量で含むことができる。増粘剤は、組成物の塗布を容易にするために、組成物の粘度を増加させるために用いることができる。
【0085】
別の特に有用な添加剤はエラストマー材料である。その材料は、例えば、可撓性重合体支持体のような他の材料ほど容易にエネルギーを機械的に吸収しない金属支持体のような硬い高降伏強さ材料を接着するときに有益になりうる、それで作られた組成物の破壊靭性を向上させることができる。そのような添加剤は、組成物100質量部を基準として、約5〜約35質量部の量で含めることができる。有用なエラストマー改質剤としては、HYPALONTM30(イー・アイ・デュポン・デ・ヌムール社(E.I. Dupont de Nemours & Co.)(デラウェア州ウィルミントン)から商業的に入手可能)のようなここでは促進剤として使用される塩素化またはクロロスルホン化ポリエチレンおよびスチレンと共役ジエンのブロック共重合体(VECTORの商標でデクスコ・ポリマーズ社(Dexco Polymers)からおよびSTEREONの商標でファイアストーン社(Firestone)から商業的に入手可能)が挙げられる。相対的に硬いシェルによって囲まれたゴムまたはゴム状のコアまたは網目からなる粒子のようなある種のグラフト共重合体樹脂もまた有用でありかつさらに好ましく、その材料はしばしば「コア・シェル」重合体と呼ばれる。最も好ましいのは、ローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas)から入手可能なアクリロニトリル・ブタジエン・スチレングラフト共重合体である。組成物の破壊靭性を改善することに加えて、コア・シェル重合体は、未硬化の組成物に高められた塗布性および流動性をも付与することができる。これらの高められた特性は、注射器型塗布装置から分配したときに組成物が望ましくない「すじ」を残す傾向の減少または垂直面に塗布した後に垂れ下がるまたは落ちる傾向の減少によって明らかにすることができる。重合性組成物100質量部を基準として約20質量部超のコア・シェル重合体添加剤の使用は、改善された耐垂れ下がり性の達成のために望ましい。一般に、使用される強化重合体の量は、重合体または調製された接着剤に所望の靭性を与える量である。
【0086】
本発明の重合性組成物は種々の方法で使用することができ、たとえば、重合体の表面を改質するために、接着剤、塗料、下塗剤として、および射出成形用樹脂として使用することができる。それらは、たとえば樹脂トランスファー成形操作において、ガラスおよび金属繊維のマットに組み合わせるマトリックス樹脂として使用することもできる。それらは、さらに、たとえば電気部品、印刷回路板などの製造において、封入剤および注封材料としても使用することができる。まさに望ましくは、それらは、重合体、木材、セラミックス、コンクリート、ガラスおよび下塗りされた金属などの、広範囲の支持体を接着することができる重合性接着剤組成物を与える。別の望ましい関連用途は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドおよびポリテトラフルオロエチレンならびにそれらの共重合体のような低表面エネルギー支持体への塗料の接着の促進におけるそれらの使用である。この実施態様においては、支持体の表面への仕上塗の接着を高めるために表面を改質するために、組成物は、支持体の表面の上に塗布される。
【0087】
本発明の組成物は塗料用途に使用することができる。そのような用途においては、組成物は、さらに、溶媒のようなキャリヤーを含んでもよい。塗料は、さらに、塗料を着色するための顔料、防止剤および紫外線安定剤のような、塗料で使用される当業者によく知られた添加剤を含有してもよい。組成物は、粉体塗料として塗布することもでき、粉体塗料で使用される当業者によく知られた添加剤を含有してもよい。
【0088】
本発明の組成物は、重合体成形品、押出フィルムまたは成形物(contoured object)の表面を改質するためにも使用することができる。本発明の組成物は、未改質プラスチック支持体上への重合体鎖の表面グラフトによって重合体粒子の機能性を変更するためにも使用することができる。
【0089】
本発明の重合性組成物は、複雑な表面処理技術、下塗りなどを使用せずに接着することが歴史上非常に難しかった低表面エネルギープラスチックまたは重合体支持体を接着剤で接着するのに特に有用である。低表面エネルギー支持体とは、約45mJ/m以下、より好ましくは約40mJ/m以下、最も好ましくは約35mJ/m以下の表面エネルギーを有する材料を意味する。そのような材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリアミド、シンジオタクチックポリスチレン、オレフィン含有ブロック共重合体、および約20mJ/m未満の表面エネルギーを有するポリテトラフルオロエチレン(TEFLONTM)のようなフッ素化重合体が挙げられる。(表現「表面エネルギー」は、しばしば、他の人によって「臨界湿潤張力」と同義的に使用される。) 本発明の組成物で有用に接着することができるややより高い表面エネルギーの他の重合体としては、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチルおよびポリ塩化ビニルが挙げられる。
【0090】
本発明の重合性組成物は、二液型接着剤として簡単に使用することができる。重合性組成物の成分は、そのような材料で作業するときに通常行われるであろうように、混合される。有機ホウ素化合物用遊離化化合物は、有機ホウ素化合物からそれを分離するために、通常オレフィン系重合性成分と一緒に含められ、それにより二液型組成物の一方の液を提供する。重合開始剤系の有機ホウ素化合物は、組成物の第二の液を提供し、組成物を使用することが望まれる直前に、第一の液に加えられる。同様に、複素環開環化合物の重合に使用されるルイス酸触媒は、複素環開環化合物から離しておかれる。ルイス酸触媒は、第一の液に直接加えてもよいし、または反応性オレフィン単量体、すなわちメタクリル酸メチル、またはMMA/PMMA粘稠溶液のような適切なキャリヤーに予め溶解してもよい。
【0091】
本発明の二液型接着剤のような二液型接着剤が商業および産業環境において非常に簡単に使用されるためには、二液が混合される体積比は便利な整数であるべきである。これは、従来の商業的に入手可能な計量分配装置での接着剤の塗布を容易にする。そのような計量分配装置は、米国特許第4,538,920号明細書および米国特許第5,082,147号明細書(参照によってこの明細書に含められる。)に示されており、MIXPACの商品名でコンプロテック社(Conprotec, Inc.)(ニュージャージー州セーレム)から入手可能である。典型的には、これらの計量分配装置は、並べて配置された1対の管状の容器を使用し、各管は接着剤の二液の1つを受け入れるようになっている。2つのプランジャー(各管に1つ)は、(例えば手動でまたは手動爪車機構によって)同時に前進させられ、管の中身を共通の中空の細長い混合室の中に排出する。混合室は、二液の混合を容易にするために静的混合器を含んでいてもよい。混合された接着剤は、混合室から支持体の上に押し出される。一旦管が空になったならば、それらは新しい管と交換することができ、塗布工程を継続することができる。接着剤の二液が混合される比は管の直径によって制御される。(各プランジャーは固定の直径の管の中に受け入れられるように大きさを合わせられる。そして、プランジャーは同一の速度で管の中に前進させられる。) 単一の計量分配装置がしばしば様々な異なる二液型接着剤に使用されることが意図されており、プランジャーは便利な混合比で接着剤の二液を配達するために大きさを合わせられる。いくつかのありふれた混合比は1/1、2/1、4/1および10/1であるが、好ましくは約10/1未満、より好ましくは約4/1未満である。
【0092】
好ましくは、本発明の混合された二液型組成物は、滴らせずに塗布を可能にするのに適した粘度を有する。好ましくは、2つの個々の成分の粘度は、同じ位の大きさであるべきである。好ましくは、混合された組成物は、約100センチポアズ(0.1Pa・s)以上、より好ましくは約1,000センチポアズ(1.0Pa・s)以上、最も好ましくは約5,000センチポアズ(5.0Pa・s)以上の粘度を有する。好ましくは、接着剤組成物は、約150,000センチポアズ(150Pa・s)以下、より好ましくは約100,000センチポアズ(100Pa・s)以下、最も好ましくは約50,000センチポアズ(50Pa・s)以下の粘度を有する。
【実施例】
【0093】
次の実施例は例証の目的のみのために含められており、特許請求の範囲を限定するものではない。別段の言及がない限り、部およびパーセントはすべて質量基準である。
【0094】
成分
次の成分を以下の実施例で使用した。
メタクリル酸メチル − ローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas Company)によって供給された50ppmのMEHQTMメトキシフェノールを含むもの、
HYPALONTM20 − クロロスルホン化塩素化ポリエチレン、デュポン社の商標、
PARALOIDTMBTA−753(ER) − メタクリル酸エステル・ブタジエン・スチレン共重合体、ローム・アンド・ハース社の商標、
4−メトキシフェノール − オールドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company, Inc.)によって供給されたもの、
メタクリル酸 − オールドリッチ・ケミカル社によって供給されたもの、
4−メトキシフェノール − オールドリッチ・ケミカル社によって供給されたもの。
【0095】
各液のための成分を混合することによって二液型配合物を調製し、その後、別々の容器に入れた。いくつかの異なるA液(樹脂側)配合物を作った。
【0096】
接着剤調製
ハウシルト・エンジニアリング社(Hauschild Engineering)製二重非対称遠心FlackTek SpeedMixerTM DAC 400 FVZを使用して、すべての樹脂配合物を混合した。ローラーミルを使用して、塩素化ポリエチレンとメタクリル酸メチル(MMA)を混合し、クロロスルホン化塩素化ポリエチレン40%およびMMA60%の比の予備混合物を得た。塩素化クロロスルホン化ポリエチレン・MMA予備混合物を、高速混合カップに加え、引き続いてメタクリル酸メチルおよびメトキシフェノール(MEHQTM)を加えた。その後、メタクリル酸エステル・ブタジエン・スチレン共重合体を高速混合カップに加え、直ちに手で舌圧子を使用して他の成分と混合した。高速混合カップを高速混合器の中に入れ、1,800rpmの速度で1分間、連続して3回混合した。各混合の後に、試料の温度を赤外温度プローブを使用して調べ、視覚的に均質性を評価した。試料が視覚的に均質でなかった場合は、視覚的な均質性が達成されるまで、さらに1分の1,800rpmの混合サイクルを利用した。各試料の温度は、追加の混合の間、試料を室温に置いておくことによって、130°F(54℃)未満に維持した。各試料を室温に冷却した後、メタクリル酸を高速混合カップの中に加え、直ちに手で舌圧子を使用して混合した。その後、高速混合カップは高速混合器の中に入れ、1,800rpmで1分間、2回混合した。
【0097】
重ね剪断調製
重ね剪断構造に使用した支持体は、エーシーティー・ラボラトリーズ社(ACT Laboratories, Inc.)によって供給されたED6100Hイーコート冷間圧延鋼およびダウ・ケミカル社(The Dow Chemical Company)によって供給されたDLGF9310.00ZBガラス繊維入りポリプロピレンであった。各支持体を、1インチ×4インチ(2.54cm×10.2cm)の試験片に裁断した。各試験片の1/2インチ(1.27cm)の接着部分を測定し印をつけた。バッグ混合法を用いて、すべての樹脂配合物を硬化剤と混ぜ合わせた。このバッグ混合工程は、ポリエチレン袋に硬化剤、次いで樹脂を、1対1の質量比で加えることによって行った。袋の口を封じ、均一な混合が存在することを確実にするために、手のひらの上で転動させることによって手で混合した。袋の隅をはさみで切り、混合された接着剤を、1インチ×4インチ(2.54cm×10.2cm)の支持体試験片の予め印をつけた1/2インチ(1.27cm)の部分の一方の面に均一に塗布した。一貫した接着厚さ30ミル(0.76mm)を確実にするために、ガラスビーズを接着剤に適用し、もう1枚の1インチ×4インチ(2.54cm×10.2cm)の支持体試験片を上に重ね、重ね剪断接合部を組み立てた。重ね剪断は、室温で様々な時間で硬化する間、クリップで一緒に保持した。
【0098】
重ね剪断試験
Instron(登録商標)5500R材料試験装置(インストロン社(Instron Corporation))を用いて、重ね剪断の破壊荷重を測定した。重ね剪断試料を正しい位置に保持するために、空気圧式把持具を用いた。把持具間の距離は7インチ(17.8cm)であった。クロスヘッド速度は0.5インチ/分(1.27cm/分)であった。コンピューターがクロスヘッド変位の関数として荷重を測定し、荷重を接着面の1平方インチ当たりのポンドの力に変換した。各重ね剪断を破壊試験に供した後、破壊モードを目視評価によって割り当てた。破壊モードは、接着層破損AF、凝集破壊CF、薄膜凝集破壊TFCF、支持体破壊SUB、表面離層SDまたはイーコート破壊もしくは空隙Vに分類した。入り混じった破壊モードが存在した場合は、各破壊モードを報告し、パーセント評価を割り当てた。
【0099】
B液は、65%のメタクリル酸メチル、25%のメタクリル酸エステル・ブタジエン・スチレン共重合体、0.25%のIRGASTABTM FS301 FF(酸化したビス(水素化獣脂アルキル)アミン(IRGASTABTM FS042)と亜リン酸トリ(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)の混合物、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社の商標)および10部のトリ−n−ブチルボランとメトキシプロピルアミンの錯体を含んでいた。上記した手順を用いて、いくつかのA液配合物を調製した。配合を下記表1に記載する。
【0100】
実施例は、アルキルボラン硬化接着剤の時間の関数としての強さ発達が、クロロスルホン化クロロポリエチレン含有量に依存することを示す。表1のデータを図1に棒グラフで示す。
【0101】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の液に、遊離基発生種を生成することができる1種またはそれ以上の有機ホウ素化合物を含み、そして第二の液に、1種またはそれ以上の遊離基重合することができる化合物、および第二の液100質量部を基準として約20〜約30質量部のi)ハロスルホニル基を有するハロゲン化ポリオレフィンまたはii)ハロゲン化ポリオレフィンと有機ハロゲン化スルホニルの混合物を含む、二液型重合性組成物。
【請求項2】
第二の液が、さらに、2つの液を接触させたときに有機ホウ素化合物に遊離基発生種を生成させることができる遊離化化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の二液型組成物。
【請求項3】
第一の液が、さらに、1種またはそれ以上の遊離基重合することができる化合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の二液型組成物。
【請求項4】
1種またはそれ以上の遊離基重合することができる化合物が、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル系単量体、オリゴマー、重合体またはそれらの混合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の二液型組成物。
【請求項5】
有機ホウ素化合物が、有機ホウ酸塩、有機ボランアミン錯体またはアミドホウ酸塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の二液型組成物。
【請求項6】
ハロゲン化ポリオレフィン重合体上のハロゲンの質量が、ハロゲン化ポリオレフィン重合体の質量を基準として約20%〜約45%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の二液型組成物。
【請求項7】
ハロゲン化スルホニルが、ハロゲン化ポリオレフィン重合体の質量を基準として約0.01〜約1.5%の硫黄を与えるのに十分な量で存在することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の二液型組成物。
【請求項8】
ハロゲン化ポリオレフィン重合体上のハロゲンがクロロまたはフルオロであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の二液型組成物。
【請求項9】
ハロゲン化ポリオレフィン重合体上のハロゲンがクロロであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の二液型組成物。
【請求項10】
ハロゲン化スルホニル上のハロゲンがクロロであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の二液型組成物。
【請求項11】
ハロゲン化ポリオレフィンが塩素化ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の二液型組成物。
【請求項12】
ハロゲン化ポリオレフィンが塩化スルホニル基を有する塩素化ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の二液型組成物。
【請求項13】
1種またはそれ以上の遊離基重合することができる化合物が重合するような条件下で、請求項1〜12のいずれか1項に記載の重合性組成物の成分を接触させる工程を含む重合方法。
【請求項14】
遊離基重合することができる化合物が重合するような条件下で高温に組成物を加熱する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物の成分を重合が開始されるような条件下に一緒に接触させる工程、
接着剤組成物を2つまたはそれ以上の支持体と接触させる工程、
2つまたはそれ以上の支持体が互いに接する2つまたはそれ以上の支持体の間に接着剤組成物が位置するように、2つまたはそれ以上の支持体を配置する工程、および
2つまたはそれ以上の支持体を一緒に結合するために接着剤を硬化させる工程
を含む、2つまたはそれ以上の支持体を一緒に接着する方法。
【請求項16】
有機ホウ素化合物が遊離基発生種を生成するような温度に接着剤組成物を加熱する工程をさらに含む、請求項15に記載の2つまたはそれ以上の支持体を接着する方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2010−506975(P2010−506975A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532549(P2009−532549)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/080912
【国際公開番号】WO2008/045921
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】