説明

造血幹細胞を増加および動員するための方法

骨髄中の造血幹細胞の数を増加させるため、骨髄から血流および別の場所へと移動するこれらの細胞の移動性を強化するため、そして血流中の分化している造血幹細胞の数を増加させるための方法が提供される。本発明は、疾患を処置する方法も提供し、この疾患としては、悪性もしくは良性の血液疾患、重症複合型免疫不全症(SCID)、ウィスコット・アルドリッチ症候群、チェディアック・東症候群、ガン、自己免疫疾患、免疫抑制疾患、貧血、サラセミア、または鎌状赤血球貧血などが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造血幹細胞の数を増加させるため、およびこれらの細胞を血流に動員するための薬剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血球は体のあらゆるタイプの細胞の一定の維持と免疫防御に関与している。血球は皮膚細胞とともに、あらゆる成体組織を自己再生させる大きな能力を持っている。血液と免疫細胞を形成する幹細胞は造血幹細胞(HSC)として知られている。これらは、最終的には、毎日数十億個もの新しい血球を生産することによって血液の絶え間ない再生に関与している。HSCには以下のような2つの顕著な特徴がある:これは自己再生することができ、そして、これは様々なタイプの血球の全てを生む細胞を生じることができる。さらなる研究では、再構成後に、HSCは血球だけではなく、筋細胞(骨格筋細胞と心筋細胞の両方)、脳細胞、肝臓細胞、皮膚細胞、肺細胞、腎臓細胞、腸細胞、および膵臓細胞にも分化できることが示されている。
【0003】
骨髄はHSCの良く知られている供給源であるが、これは、幹細胞のドナーに全身麻酔が必要である侵襲性の採取手順が原因で、供給源としてはまれにしか使用されていない。骨髄移植の臨床的手順の際には、骨(通常は、寛骨)に穿刺が行われ、骨髄細胞が注射器で取り出される。骨髄中の100,000個の細胞のうちの約1個が、長期にわたり血液を形成する幹細胞である。
【0004】
ヒトHSCの臨床的な移植については、現在、医師は末梢の循環している血液からドナー細胞を採取することを選ぶ。数十年前から、少数の幹細胞および前駆細胞が血流の中を循環していることが知られているが、最近10年の間に、複数の研究者らによって、より多くの数のこの細胞を、サイトカイン(たとえば、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF))をドナーに注射することによって、骨髄から血液へと移動させるように誘導できることが明らかにされた。ドナーには、細胞が採取される数日前にG−CSFが注射される。細胞を回収するためには、静脈管がドナーの静脈に挿入され、ドナーの血液は、CD34白血球を取り出し、赤血球をドナーに戻す濾過システムを通過させられる。この手順は一般的に、「幹細胞アフェレーシス」と呼ばれる。骨髄についてそうであるように、CD34細胞は、様々な成熟度の幹細胞、前駆細胞、および白血球の混合物である。回収された細胞のうちの5から20%は真のHSCであろう。したがって、血流の中のHSCの数を増加させることが当該分野で必要とされている。本発明は、骨髄中のHSCの数を増加させ、そして骨髄から末梢の血流へと移動するこれらのHSCの動員を増加させるための方法を開示することにより、この必要性に対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
HSC集団の特徴を増加させるための方法が本明細書中で提供される。特徴は細胞数であり得る。特徴はまた移動性でもあり得る。本発明の方法には、組成物を投与する工程が含まれ得る。この組成物は、それが必要な哺乳動物に投与され得る。本発明の方法により、骨髄中のHSCの数を増加させることができる。本発明の方法はまた、骨髄から血流へのHSCの移動性を増大させることもできる。幹細胞集団には、長期間持続するHSCまたは分化増殖能を獲得した前駆細胞(committed progenitor cell)が含まれ得る。
【0006】
組成物には薬剤が含まれ得、薬剤はリポペプチドであり得る。リポペプチドは以下の式の化合物であり得る:
【0007】
【化1】

式中、
はHまたは−CO−Rを示し、
、R、およびRは独立して、H、または任意に置換されたC〜C16脂肪族であり;
Xはペプチドであり、そして
ZはSまたはCHである。
【0008】
ペプチドには、配列番号1〜52の配列のうちの任意の1つが含まれ得る。このペプチドの最初の5個のアミノ酸は、表3に記載される位置にあるアミノ酸から選択され得る。ペプチドには、配列番号8、16〜18、21、21、およびそれらの置換体からなる群より選択される配列も含まれ得る。RはHであり得、そしてRとRはC16脂肪族またはそれらの置換体であり得る。この化合物は、RRまたはRS立体異性体、あるいはそれらの混合物であり得る。化合物はまた以下の式を有する場合もある:
【0009】
【化2】

薬剤はリポ糖でもあり得、これは以下の式を有し得る:
【0010】
【化3】

式中、
はHまたは−CO−Rを示し、
、R、およびRは独立して、H、または任意に置換されたC〜C16脂肪族であり;
Xは糖であり、そして
ZはSまたはCHである。
【0011】
本発明の方法には、それが必要な哺乳動物に対して、上記薬剤をG−CSF受容体アゴニストと組み合わせて投与する工程が含まれる場合がある。本発明の方法には、上記薬剤をG−CSFと組み合わせて投与する工程が含まれる場合がある。本発明の方法には、上記薬剤をCXCR4アンタゴニストと組み合わせて投与する工程が含まれる場合がある。本発明の方法には、上記薬剤をAMD3100と組み合わせて投与する工程が含まれる場合がある。本発明の方法には、上記薬剤を、G−CSFおよびCXCR4アンタゴニストと組み合わせて投与する工程が含まれる場合がある。本発明の方法には、上記薬剤を、G−CSFおよびAMD3100と組み合わせて投与する工程が含まれる場合がある。本発明の方法には、上記薬剤を、G−CSF、AMD3100、およびCXCR4アンタゴニストと組み合わせて投与する工程が含まれる場合がある。上記薬剤は、G−CSFの投与前にされる場合があり、その投与と同時に投与される場合も、またその投与後に投与される場合もある。上記薬剤は、G−CSFの投与の1時間前に投与される場合も、またG−CSFの投与の1時間後に投与される場合もある。上記薬剤は、G−CSFの投与の前または後96時間以内のいずれの時点でも投与することができる。本発明の方法にはさらに、哺乳動物から末梢血単核細胞を採取する工程が含まれる場合もある。
【0012】
本発明の方法にはさらに、放射線防護剤(radioprotectant)の投与が含まれる場合もある。放射線防護剤は、抗酸化物質、フラジェリン、TGFβ、TLRの活性化因子、またはサイトカインであり得る。サイトカインは幹細胞因子であり得る。
【0013】
本発明の方法ではまた、異常な状態の影響も処置することができ、この方法には、本明細書中に記載される方法にしたがってHSC集団の細胞数を増加させ、そして血流への移動性を増加させる工程が含まれる。異常な状態は、放射線、創傷、中毒、感染、自己骨髄移植、および骨髄不全からなる群より選択され得る。
【0014】
疾患を処置する方法もまた本明細書中で提供される。疾患は、造血障害および/またはリンパ系の障害と関係があり得る。上記疾患は、悪性もしくは良性の血液疾患、重症複合型免疫不全症(SCID)、ウィスコット・アルドリッチ症候群、またはチェディアック・東症候群であり得る。本発明の方法には、本明細書中に記載される方法にしたがってHSC集団の細胞数を増加させ、そして血流への移動性を増加させる工程が含まれ得る。疾患は、ガン、自己免疫疾患、免疫抑制疾患、貧血、サラセミア、および鎌状赤血球貧血からなる群より選択され得る。ガンは、乳ガン、睾丸ガン、神経芽細胞腫、卵巣ガン、白血病、リンパ腫、骨髄腫、およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症からなる群より選択され得る。自己免疫疾患はHIV感染であり得る。
【0015】
哺乳動物の中で自己幹細胞集団を生産する方法もまた本明細書中で提供される。これには、HSC集団の特徴を増大させる工程と、末梢白血球を単離する工程が含まれ得る。末梢白血球には、自己幹細胞集団が含まれ得る。
【0016】
ガンの処置の影響を処置する方法もまた本明細書中で提供される。これには、ガンの処置を受けた哺乳動物に対して、自己幹細胞集団を投与する工程が含まれる場合がある。ガンの処置は化学療法である場合も、また放射線治療である場合もある。自己幹細胞集団は注射によって投与される場合も、また、輸血によって投与される場合もある。
【0017】
血液試料からHSCを単離するための方法もまた本明細書中で提供される。この方法には、薬剤を含む組成物をその必要があるヒトに投与する工程が含まれ得る。この方法にはまた、試料からHSCを単離する工程も含まれ得る。上記薬剤は、本明細書中に記載されるように、リポペプチドであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、リポ多糖の構造を示す。
【図2】図2は、6Gyの全身照射(TBI)の、マウスの脾臓の重量と体重に対するリポペプチドCBLB601の効果を示す。
【図3】図3は、骨髄中のHSCの状態を示す。対照に対するCLBLB601で処置したICRマウスの中のHSCである骨髄細胞の割合。
【図4】図4は、血液中の幹細胞の造血状態を示す。ここでは、対照に対するCLBLB601で処置したICRマウスの中での血液1mLあたりのHSCの数。
【図5】図5には、0.25mg/kgのCBLB612で処置したサルと比較した、G−CSFで処置した対照のアカゲザルから単離された骨髄と血液試料のFACSデータをまとめる。
【図6−1】図6は、0.25mg/kgのCBLB612(リポペプチド)で処置した対照のアカゲザルまたはサルのいずれかから単離された骨髄と血液試料のFACSデータを示す。
【図6−2】図6は、0.25mg/kgのCBLB612(リポペプチド)で処置した対照のアカゲザルまたはサルのいずれかから単離された骨髄と血液試料のFACSデータを示す。
【図6−3】図6は、0.25mg/kgのCBLB612(リポペプチド)で処置した対照のアカゲザルまたはサルのいずれかから単離された骨髄と血液試料のFACSデータを示す。
【図6−4】図6は、0.25mg/kgのCBLB612(リポペプチド)で処置した対照のアカゲザルまたはサルのいずれかから単離された骨髄と血液試料のFACSデータを示す。
【図7】図7は、CBLB612の単回注射、続いてAMD3100の後のマウスの血液中の幹細胞の表現形を持つ細胞の量の速度論的変化に関するデータを示す。
【図8】図8は、CBLB612の単回注射、続いてAMD3100の後のマウスの血液中の前駆細胞の表現形を持つ細胞の量の速度論的変化に関するデータを示す。
【図9】図9は、CBLB612の単回注射、続いてAMD3100の後のマウスの骨髄中の幹細胞の表現形を持つ細胞の量の速度論的変化に関するデータを示す。
【図10】図10は、CBLB612の単回注射、続いてAMD3100の後のマウスの骨髄中の前駆細胞の表現形を持つ細胞の量の速度論的変化に関するデータを示す。
【図11】図11は、CBLB612の単回注射、続いてAMD3100の後のマウスの血液中の幹細胞の表現形を持つ細胞の量の速度論的変化に関するデータを示す。
【図12】図12は、CBLB612の単回注射、続いてAMD3100の後のマウスの血液中の前駆細胞の表現形を持つ細胞の量の速度論的変化に関するデータを示す。
【図13】図13は、CBLB612の単回注射、続いてAMD3100の後のマウスの骨髄中の幹細胞の表現形を持つ細胞の量の速度論的変化に関するデータを示す。
【図14】図14は、CBLB612の単回注射、続いてAMD3100の後のマウスの骨髄中の幹細胞の表現形を持つ細胞の量の速度論的変化に関するデータを示す。
【図15】図15は、CBLB612の単回注射、続いてAMD3100の後のマウスの骨髄中の前駆細胞の表現形を持つ細胞の量の速度論的変化に関するデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
HSCの数を増加させるかまたは強化するための、そしてこれらの細胞の血流への移動性を増大させるかまたは強化するための方法が本明細書中で提供される。本発明の方法には、骨髄、末梢血、および臍帯血の中でのHSCの数の増加を引き起こし得る薬剤を含む組成物を投与する工程が含まれ得る。上記薬剤はまた、骨髄から血流へと移動するHSCの移動性も高める場合がある。上記薬剤は、リポペプチドである場合も、リポ多糖である場合も、また、リポ糖である場合もある。放射線防護剤またはHSC同時刺激因子(co−stimulant)が上記薬剤とともに投与される場合がある。本発明の方法は、放射線、創傷、中毒、感染、自己骨髄移植、および骨髄不全のような異常な状態の影響を処置するために使用される場合がある。本発明の方法は、ガン、自己免疫疾患、および鎌状赤血球貧血のような疾患を処置するために使用される場合もある。
【0020】
血液試料からHSCを単離するための方法もまた本明細書中で提供される。本発明の方法には、HSCの数を増加させるかまたは強化し、そしてこれらの細胞の血液への動員を増大させるかまたは強化する薬剤を含む組成物を投与する工程が含まれる場合がある。本発明の他の態様は、本発明の以下の記載から当業者に明らかとなるであろう。
【0021】
1.定義
本明細書中で使用される技術用語は特定の実施形態を記載する目的のためのものにすぎず、限定するようには意図されないことが理解されるべきである。明細書と添付の特許請求の範囲において使用される場合は、単数形の「a」、「an」、そして「the」には、別段明記されていない限りは、複数についての言及も含まれることに留意されなければならない。
【0022】
用語「投与する」は、薬剤の投与量を記載するように本明細書中で使用される場合は、薬剤の単回投与または複数回投与を意味し得る。
【0023】
用語「脂肪族」は、本明細書中で使用される場合は、未分岐の、分岐した、または環状の炭化水素基を意味し得る。これらは置換されている場合も、また未置換である場合もあり、そして飽和である場合も、また不飽和である場合もあるが、芳香族ではない。用語「脂肪族」には、炭化水素骨格のうちの1つ以上の炭素に置き換わっている酸素、窒素、硫黄、またはリン原子を含む脂肪族基が含まれ得る。
【0024】
用語「アルキル」は、本明細書中で使用される場合は、単独でまたは組み合わせにおいて、分岐した、または未分岐の飽和脂肪族基を意味し得る。アルキル基の代表的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどを挙げることができる。
【0025】
用語「アルケニル」は、本明細書中で使用される場合は、単独でまたは組み合わせにおいて、鎖のうちの任意の安定な点に存在し得る少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、分岐した、または未分岐の、不飽和脂肪族基を意味し得る。アルケニル基の代表的な例としては、エテニル、E−およびZ−ペンテニル、デセニルなどを挙げることができる。
【0026】
用語「アルキニル」は、本明細書中で使用される場合は、単独でまたは組み合わせにおいて、鎖のうちの任意の安定な点に存在し得る少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む、分岐した、または未分岐の、不飽和脂肪族基を意味し得る。アルキニル基の代表的な例としては、エチニル、プロピニル、プロパルギル、ブチニル、ヘキシニル、デシニルなどを挙げることができる。
【0027】
用語「アナログ」は、ペプチドまたはポリペプチドに関して使用される場合は、1つ以上の一般的ではないアミノ酸、または通常のアミノ酸のセットの他の構造バリエーションを含むペプチドまたはポリペプチドを意味し得る。
【0028】
用語「抗体」は、本明細書中で使用される場合は、クラスIgG、IgM、IgA、IgD、またはIgEの抗体、あるいはそれらの断片または誘導体を意味し得る。これには、Fab、F(ab’)、Fd、および単鎖抗体、ダイアボディ、二重特異的抗体、二官能性抗体、ならびにそれらの誘導体が含まれる。抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、親和性によって精製された抗体、またはそれらの混合物であり得、これらは、それらから導かれた所望されるエピトープまたは配列に対して十分な結合特異性を示す。抗体はまたキメラ抗体である場合もある。抗体は、当該分野で公知の1つ以上の化学的部分、ペプチド部分、またはポリペプチド部分の結合によって誘導される場合がある。抗体は化学的部分と結合させられる場合がある。
【0029】
用語「アポトーシス」は、本明細書中で使用される場合は、細胞死の1つの形態を意味し得る。これには、細胞質小器官の完全性を保ったままの細胞容積の進行性の収縮;光学顕微鏡もしくは電子顕微鏡によって見られるようなクロマチンの収縮(すなわち、核の収縮);および/または遠心分離による沈降アッセイ(centrifuged sedimentation assay)によって決定されるようなヌクレオソームの大きさの断片へのDNAの切断が含まれる。細胞死は、食細胞による完全な細胞断片(「アポトーシス小体」)の飲み込みとともに細胞の膜の完全性が失われた(たとえば、膜ブレブ形成)場合に起こる。
【0030】
用語「ガン」は、本明細書中で使用される場合は、アポトーシス刺激に対する抵抗性を特徴とする任意の状態を意味し得る。
【0031】
用語「ガンの処置」は、本明細書中で使用される場合は、化学療法および放射線治療を含むがこれらに限定されない、当該分野で公知のガンの任意の処置を意味し得る。
【0032】
用語「〜との組み合わせ」は、本明細書中で使用される場合は、薬剤がさらに別の処置の前に、さらに別の処置と一緒に、またはさらに別の処置の後で、あるいはそれらの組み合わせで投与され得ることを意味し得る。
【0033】
用語「誘導体」は、ペプチドまたはポリペプチドに関して使用される場合は、一次構造(アミノ酸およびアミノ酸アナログ)以外で異なるペプチドまたはポリペプチドを意味し得る。例として、誘導体は、翻訳後修飾の1つの形態であるグリコシル化されていることによって異なる場合がある。たとえば、ペプチドまたはポリペプチドは、異種システムの中での発現が原因で、複数のグリコシル化パターンを示す場合がある。少なくとも1つの生物学的活性が保たれている場合には、これらのペプチドまたはポリペプチドは本発明の誘導体である。他の誘導体には、共有結合によって修飾されたN末端もしくはC末端を有している融合ペプチドまたは融合ポリペプチド、PEG化されたペプチドまたはポリペプチド、脂質部分と結合させられたペプチドまたはポリペプチド、アルキル化されたペプチドまたはポリペプチド、他のペプチド、ポリペプチド、もしくは化合物に対してアミノ酸側鎖官能基を介して連結させられたペプチドまたはポリペプチド、ならびに、当該分野で理解されているようなさらに別の修飾が含まれ得る。
【0034】
用語「断片」は、ペプチドまたはポリペプチドに関して使用される場合は、約6から約10アミノ酸の長さまでのペプチドを意味し得る。断片は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、および25アミノ酸の長さであり得る。
【0035】
本明細書中で使用される用語「造血幹細胞」すなわち「HSC」は、骨髄、末梢血、臍帯血から単離され得る幹細胞、あるいは胚性幹細胞を意味し得る。HSCは、リンパ細胞系列、骨髄細胞系列、および赤血球系列の血球を形成することができる場合がある。HSCは、赤血球(赤血球)、血小板、顆粒球(たとえば、好中球、好塩基、および好酸球)、マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球、およびナチュラルキラー細胞のような細胞を形成することができる場合がある。HSCは、自己再生することができるか、または、細胞分裂後も幹細胞のままであることができる場合がある。HSCはまた、成熟した造血細胞になるための分化またはそのための経路を開始することができる場合もある。HSCはまた、それらの移動性または移動が調節される場合があり、また、アポトーシスまたはプログラムされた細胞死によって調節される場合もある。HSCはまた、筋細胞(骨格筋細胞および心筋細胞)、脳細胞、肝臓細胞、皮膚細胞、肺細胞、腎臓細胞、腸細胞、および膵臓細胞のような細胞になるように分化することができる場合もある。HSCはまた、http://stemcells.nih.gov/info/scireport/2006reportから回収された、Stem Cell Information[World Wide Web site].Bethesda,MD:National Institutes of Health,U.S.Department of Health and Human Services,2006[2007年1月8日、月曜日に引用された](これらの内容は引用により本明細書中に組み入れられる)に記載されているようなものでもあり得る。
【0036】
用語「ホモログ」は、ペプチドまたはポリペプチドに関して使用される場合には、進化的先祖が共通しているペプチドまたはポリペプチドを意味し得る。
【0037】
用語「飽和」は、本明細書中で使用される場合は、骨格原子の利用できる原子価結合が全て他の原子に結合させられている基を意味し得る。
【0038】
本明細書中で使用される用語「幹細胞」は、無期限に分裂して、特定の細胞を生じる能力を有しているあらゆる細胞を意味し得る。幹細胞は全ての胚層(すなわち、外胚葉、中胚葉、および内胚葉)から生じ得る。幹細胞の一般的な供給源としては、胚、骨髄、末梢血、臍帯血、胎盤血、および脂肪組織を挙げることができる。幹細胞は万能であり得、これは、これらが生命体のほとんどの組織を生じることができることを意味している。たとえば、万能幹細胞は、皮膚、肝臓、血液、筋肉、骨などの細胞を生じさせることができる。対照的に、多能性幹細胞または成体幹細胞は、通常、限られたタイプの細胞を生じる。生存可能な細胞は、生存していて、多くの場合には増殖および分化が可能な細胞である。当業者は、たとえば、トリパンブルー色素を排除する能力による、細胞の生存性を決定するための方法をよく知っている。用語「幹細胞」には、本明細書中で使用される場合には、別途明記されていない限りは、前駆細胞が含まれる。
【0039】
用語「置換された」は、本明細書中で使用される場合は、1つ以上の水素または他の原子が炭素から除去されており、さらに別の基で置き換えられている基を意味し得る。本明細書中の置換された基は、1個から5個、または1個から3個の置換基で置換され得る。そのような置換基の代表的な例としては、脂肪族基、芳香族基、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、ハロ、アリールオキシ、カルボニル、アクリル、シアノ、アミノ、ニトロ、リンを含む基、硫黄を含む基、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アシルアミノ、アミジノ、イミノ、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、アルキルスルフィニル、トリフルオロメチル、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、ヘテロアリール、セミカルバジド、チオセミカルバジド、マレイミド、オキシミノ、イミデート、シクロアルキル、シクロアルキルカルボニル、ジアルキルアミノ、アリールシクロアルキル、アリールカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アリールシクロアルキルカルボニル、アリールホスフィニル、アリールアルキルホスフィニル、アリールシクロアルキルホスフィニル、アリールホスホニル、アリールアルキルホスホニル、アリールシクロアルキルホスホニル、アリールスルホニル、アリールアルキルスルホニル、アリールシクロアルキルスルホニル、それらの組み合わせ、およびそれらの置換基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
用語「処置する」または「処置」は、哺乳動物の症状からの防御について言及される場合には、症状を予防すること、抑制すること、抑えること、または解消することを意味し得る。症状の予防には、本明細書中に記載される組成物を、その症状の発症の前に哺乳動物に投与することが含まれる。症状の抑制には、本明細書中に記載される組成物を、その症状の誘導後であるが、その臨床的発現の前に哺乳動物に投与することが含まれ得る。症状を抑えることには、本明細書中に記載される組成物を、その症状の臨床的発現後に哺乳動物に投与することが含まれ得、結果として症状は軽減するか、または維持される。症状の解消には、本明細書中に記載される組成物を、その症状の臨床的発現後に哺乳動物に投与することが含まれ、結果として、哺乳動物はもはやその症状に苦しむことはなくなる。
【0041】
用語「不飽和」は、本明細書中で使用される場合は、2つの隣接する骨格原子の利用できる原子価結合の少なくとも1つが他の原子に結合させられていない基を意味し得る。
【0042】
用語「未置換」は、本明細書中で使用される場合は、それにさらに別の基がそれに結合させられていないか、または置換されていない基を意味し得る。
【0043】
用語「変異体」は、ペプチドまたはポリペプチドに関して使用される場合は、アミノ酸の挿入、欠失、もしくは保存的置換によってアミノ酸配列が異なるが、少なくとも1つの生物学的活性を保持しているペプチドまたはポリペプチドを意味し得る。本発明の目的において、「生物学的活性」には、特異的な抗体によって結合される能力が含まれ得る。アミノ酸の保存的置換(すなわち、類似する特性(たとえば、親水性、電荷を持つ領域の程度および分布)を有している様々なアミノ酸でのアミノ酸の置き換え)には、通常、重要ではない変化が含まれると当該分野で理解されている。これらの重要ではない変化は、当該分野で理解されている(Kyteら,J.Mol.Biol.157:105−132,1982)ように、アミノ酸のヒドロパシー指数を考慮することによって、一部、同定することができる。アミノ酸のヒドロパシー指数は、その疎水性と電荷の考慮に基づく。類似するヒドロパシー指数のアミノ酸は置換することができ、それでもなおタンパク質機能を保持することが当該分野で知られている。1つの態様においては、±2のヒドロパシー指数を有しているアミノ酸が置換される。アミノ酸の親水性もまた、生物学的機能を保持しているタンパク質を生じるであろう置換を明らかにするために使用することができる。ペプチドに関してアミノ酸の親水性を考慮することにより、米国特許第4,554,101号(引用により本明細書中に組み入れられる)において抗原性および免疫原性と十分に相関することが報告されている有用な測定値である、ペプチドの最大局所平均親水性の計算が可能である。類似する親水性値を有しているアミノ酸の置換によっては、当該分野で理解されているように、生物学的活性(たとえば、免疫原性)を保持しているペプチドが生じ得る。1つの態様においては、互いに±2以内の親水性値を有しているアミノ酸での置換が行われる。そのアミノ酸の特定の側鎖は、アミノ酸の疎水性指数と親水性値の両方に影響を与える。その観察と一致して、生物学的機能と適合するアミノ酸置換は、アミノ酸の相対的な類似性、そして特に、疎水性、親水性、電荷、大きさ、および他の特性によって明らかであるようなそれらのアミノ酸の側鎖に応じて様々であることが理解される。
【0044】
2.HSC集団の特徴を強化するかまたは増大させるための方法
HSC集団の特徴を増大させるかまたは強化するための方法が本明細書中で提供される。HSC集団の特徴は、細胞数である場合があり、また細胞の移動性である場合もある。
【0045】
a.細胞数
細胞数は、HSC集団の全体的な大きさであり得る。細胞数はまた、個々のHSCの総数でもあり得る。細胞数は、さらに別のHSCになるHSCの分裂速度を増大させることによって強化するかまたは増加させることができる。さらに別のHSCは、骨髄、血流、臍帯、または胚の中のHSCの総数を強化し、そして増加させることができる。細胞数はまた、HSC集団の全体的な量を高めることによって、あるいは、HSC集団の量、数、またはレベルを強化するかまたは増大させることによっても、強化するかまたは増加させることができる。
【0046】
b.細胞の移動性
細胞の移動性は、骨髄から末梢血へと移動する個々のHSCの数を増加させることによって、強化するかまたは増大させることができる。細胞の移動性はまた、骨髄から末梢血へと、その後、末梢血から特定の組織または臓器(たとえば、リンパ節、心臓、肺、肝臓、皮膚、脾臓、小腸および大腸、胃、または膵臓)へと移動する個々のHSCの数を増加させることによって、強化するかまたは増大させることができる。HSCは、骨髄から血流へと移動する場合もある。
【0047】
HSC集団の細胞の数または移動性を増大させることによってはまた、様々な細胞系統へのHSC集団の分化の速度も増大させられる場合がある。HSCはまた、成熟造血細胞になるための分化、またはそのための経路を開始することができる場合もある。たとえば、HSC集団の細胞の分化は、骨髄または末梢血の中の共通の骨髄前駆細胞の数の増加を導く場合がある。HSC集団の細胞の分化はまた、骨髄または末梢血の中の顆粒球/マクロファージ前駆細胞、または巨核球/赤血球前駆細胞の数の増加を導く場合がある。HSCは、共通のリンパ系統の前駆細胞に分化する場合がある。共通の骨髄前駆細胞の数の増加は、顆粒球/マクロファージ前駆細胞または巨核球/赤血球前駆細胞への分化を導く場合がある。顆粒球/マクロファージ前駆細胞はさらに、好中球、好酸球、好塩基球、組織前駆細胞、単球、および未成熟樹状細胞のような顆粒球へと分化することができる。巨核球/赤血球前駆細胞は、巨核球、赤芽細胞に分化することができる。共通のリンパ系統前駆細胞は、Bリンパ球細胞およびTリンパ球細胞に分化することができる。Bリンパ球細胞は抗体を分泌する細胞へと分化することができ、ここでは、Tリンパ球はエフェクターT細胞へと分化することができる。顆粒球はさらに、組織肥満細胞、マクロファージ、および未成熟樹状細胞へと分化することができる。巨核球は血小板へと分化することができる。赤芽細胞は赤血球へと分化することができる。HSCはまた、筋細胞(骨格筋細胞と心筋細胞)、脳細胞、肝臓細胞、皮膚細胞、肺細胞、腎臓細胞、腸細胞、および膵臓細胞のような細胞へと分化することもできる。特定の分子または細胞表面マーカーを提示する細胞の数あるいは割合は、HSCまたはHSC集団の指標であり得る。
【0048】
HSCは、自己再生することができるか、または細胞分裂後も幹細胞のままであり続けることができる場合がある。HSCはまた、それらの移動において調節される場合も、あるいは、アポトーシスまたはプログラムされた細胞死によって調節される場合もある。HSCはまた、筋細胞(骨格筋細胞と心筋細胞)、脳細胞、肝臓細胞、皮膚細胞、肺細胞、腎臓細胞、腸細胞、および膵臓細胞のような細胞にも分化することができる。
【0049】
理論に束縛されることはないが、10,000個から15,000個の骨髄細胞のうちの1個が、通常は幹細胞であり得る。血流の中では、この割合は、100,000個の血球のうちの1個に下がり得る。インビボでの薬剤の投与によって、感染後約1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、26時間、28時間、または30時間以内に血流の中の全幹細胞集団の数を増加させることができ、そして、血液中のHSCを含む幹細胞の蓄積は、投与後約65時間、66時間、67時間、68時間、69時間、70時間、71時間、72時間、73時間、74時間、75時間、76時間、77時間、78時間、79時間、80時間、81時間、82時間、83時間、84時間、85時間、86時間、87時間、88時間、89時間、90時間、91時間、92時間、93時間、94時間、95時間、96時間、97時間、98時間、99時間、100時間、101時間、102時間、103時間、104時間、105時間、106時間、107時間、108時間、109時間、および110時間以内にピークとなり得る。
【0050】
3.組成物
上記方法には、HSC集団の特徴を強化するかまたは増大させるために、組成物をそれが必要な哺乳動物に投与する工程が含まれ得る。この組成物は、放射線への被爆、ガンの処置による副作用、ストレス、細胞の老化、および疾患と関係がある異常な状態の処置に使用され得る。組成物は、当該分野で周知の方法を使用して生産され得る薬学的組成物であり得る。組成物には、哺乳動物の中のHSC集団の特徴を増大させることができる薬剤が含まれ得る。組成物にはまた、放射線防護剤、HSC同時刺激因子、外因性の成長因子、サイトカイン、またはそれらの組み合わせが含まれる場合もある。
【0051】
a.薬剤
薬剤には、リポペプチド、リポ多糖、リポ糖、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。
(1)リポペプチド
リポペプチドは、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、またはマイコプラズマの外膜の一部から単離することができる。細菌のリポペプチドは、配列相同性を共有していない場合があるが、2個または3個の脂肪酸によってアシル化される通常ではないN末端アミノ酸S−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−L−システインを特徴とし得る。細菌のリポペプチドは強力な免疫調節因子であり得、これは、TLR2−TLR1またはTLR2−TLR6ヘテロ二量体を介してシグナルを伝達し、それによりNF−κBとサイトカインの生産の活性化を導くことにより、感染後の初期の宿主応答を活性化させる。天然のリポペプチドのN末端リポペプチドの合成アナログは、TLRおよびNF−κBの強力な活性化因子であり得、さらには、インビボおよびインビトロでの免疫アジュバントであり得る。
【0052】
リポペプチドは以下の式の化合物であり得る:
【0053】
【化4】

式中、
はHまたは−CO−Rを示し、
、R、およびRは独立して、H、または任意に置換された脂肪族であり;
XはHまたはペプチドであり;そして
ZはSまたはCHである。
【0054】
リポペプチドには、2個または3個の脂肪酸が含まれ得る。R、R、およびRの脂肪族置換基には、6個から20個の炭素原子が含まれ得る。R、R、およびRは、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、またはC〜C20アルキニルであり得る。R、R、およびRのアルキル置換基の代表的な例としては、C、C、C、C10、C12、C14、およびC16が挙げられる。R、R、およびRのアルケニル置換基の代表的な例としては、C10:1D1 trans、C18:1D9、およびC18:2D9,12が挙げられる。
【0055】
ペプチドには、少なくとも4個または5個のアミノ酸から20個、30個、または40個を超えない数までのアミノ酸が含まれ得る。ペプチド部分は活性に不可欠である場合があり、リポペプチドの活性はアミノ酸配列によって調節することができるが、生物学的活性はほとんどのペプチド配列が無反応であり得る(その内容が引用により本明細書中に組み入れられる、Spohnら、Vaccine,22(19):2494−9,2004)。ペプチドには、表2に示される配列、それらに対して少なくとも80%、85%、90%、または95%同一である任意の配列、あるいは、それらの任意のアナログ、誘導体、断片、ホモログ、変異体、または置換体が含まれ得る。ペプチドは、正味の負電荷を持つ場合がある。
【0056】
【表1−1】

【0057】
【表1−2】

リポペプチドのペプチド部分の最初の4個から5個のアミノ酸は、表3においてそれぞれの位置について列挙されるものから選択することができる。この表は、Spohnら、Vaccine,22(19):2494−9,2004;およびReutterら、J.Peptide Res.,65,375−383,2005(これらの内容は引用により本明細書中に組み入れられる)に基づく。
【0058】
【表2】

リポペプチドは、N末端リポアミノ酸の立体化学に関して、RR異性体またはRS異性体、あるいはそれらの混合物であり得る。リポペプチドは水溶性である場合がある。
【0059】
リポペプチドは化合物CBLB601またはCBLB612であり得る。これらはいずれも、以下の一般式を有する:
【0060】
【化5】

式中、Xは、それぞれ、SKKKKおよびVQGEESNDKである。
(2)リポ多糖とリポ糖
リポ多糖またはリポ糖は、本明細書中に記載される薬剤として使用することができる。リポ多糖は以下の式の化合物であり得る:
【0061】
【化6】

式中、
はHまたは−CO−Rを示し、
、R、およびRは独立して、H、または任意に置換された脂肪族であり;
XはHまたは多糖であり;そして
ZはSまたはCHである。
【0062】
リポ多糖またはリポ糖には、2個または3個の脂肪酸が含まれ得る。R、R、およびRの脂肪族置換基には、6個から20個の炭素原子が含まれ得る。R、R、およびRは、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、またはC〜C20アルキニルであり得る。R、R、およびRのアルキル置換基の代表的な例としては、C、C、C、C10、C12、C14、およびC16が挙げられる。R、R、およびRのアルケニル置換基の代表的な例としては、C10:1D1 trans、C18:1D9、およびC18:2D9,12が挙げられる。
【0063】
リポ多糖はグラム陰性細菌の細胞壁から単離することができる。リポ多糖(LPS)(内毒素とも呼ばれる)は、およそ10Kdの質量の複雑な糖脂質であり得る。LPSの基本構造には、3つの比較的よく定義されている領域が含まれ得、そして全てのグラム陰性細菌において類似し得る。これらの領域は、O抗原部分、コア多糖、そしてリピッドAであり得る(図1を参照のこと)。O抗原部分には多糖単位の繰り返しが含まれ得、それぞれの単位は2〜6個の糖を有している。O抗原部分は、グラム陰性種の間で相当に異なり得、したがって、特異的なモノクローナル抗体の結合に基づいて、個々の細菌種のマーカーとなり得る。コア多糖は、O抗原部分とリピッドAの間に存在し得、これは、グルコース、N−アセチルグルコサミン、およびガラクトースのような代表的な糖を持つ分岐している多糖であり得る。O抗原部分とは異なり、コア領域の全体には重要ではないバリエーションしか存在せず、リピッドAに対して近位にある内部コア領域の中の構造は高度に保存されている。LPS分子の最も高度に保存されている部分は、二糖ニリン酸であるリピッドAであり得、これに対して長鎖脂肪酸が結合させられる。分子のリピッドA部分は、実質的に全ての複雑な真核生物において毒性となり得る。ヒトにおいては、これには、サイトカインの誘導、発熱、白血球増加、白血球の動員と活性化、血管の損傷、血管拡張、血管内凝固、および臓器の損傷が含まれ得る。
【0064】
b.放射線防護剤
本明細書中に記載される組成物にはまた、放射線防護剤が含まれる場合がある。放射線防護剤は、電離放射線からの防御の規模を大きくするために使用することができる。
【0065】
放射線防護剤は、放射線暴露の影響を処置するために使用することができる。放射線防護剤は、抗酸化物質、フリーラジカルスカベンジャー、サイトカイン、フラジェリン、および潜在性TGFβであり得る。放射線防護剤はまたサイトカインでもあり得、これは、細胞性の抗酸化タンパク質(たとえば、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)およびメタロチオネイン)の発現を誘導し得る。
【0066】
放射線防護剤はまた、抗酸化物質でも、また、チオール(たとえば、システイン、システアミン、グルタチオン、およびビリルビン、アミフォスチン(WR−2721);ビタミンA;ビタミンC;ビタミンE)およびフラボノイド(たとえば、インディアン・ホーリーバジル(Indian holy basil)(カミメボウキ(Ocimum sanctum))、オリエンチン、およびビセニン))を含み得るフリーラジカルスカベンジャーでもあり得る。
【0067】
放射線防護剤は、放射線感受性の幹細胞集団を補給するおよび/または保護することによって放射線防護を付与するサイトカインと成長因子の組み合わせであり得る。放射線防護剤はサイトカインであり得、これには、幹細胞因子(SCF、c−kitリガンド)、Flt−3リガンド、インターロイキン−1断片IL−1b−rd、およびケラチン生成細胞増殖因子(KGF)が含まれ得る。
【0068】
放射線防護剤は、免疫細胞の増殖を刺激することもできる。放射線防護剤は、サイトカインの発現を刺激するステロイドである5−AED(5−アンドロステンジオール)、および合成化合物(たとえば、アンモニウムトリクロロ(ジオキソエチレン−O,O’−)テルル酸(AS−101))であり得る。放射線防護剤は、潜在的なTGFβ、フラジェリン、およびフラジェリン誘導体であり得る。これらは、国際特許出願公開広報PCT/US2004/040656および同PCT/US2004/404753、ならびに米国特許出願番号60/693,826(これらの内容は引用により本明細書中に組み入れられる)に示されているNF−κB活性の強力な誘導因子である。
【0069】
c.HSC同時刺激因子
本明細書中に記載される組成物にはまた、HSCの同時刺激因子も含まれ得る。たとえば、組成物は、特定の結果を得るために特異的に選択される外因性の成長因子およびサイトカインと組み合わせて投与される場合がある。同時刺激因子は成長因子であり得、そして、そのような細胞のタイプの増殖と分化を刺激するサイトカインが使用され得る。同時刺激因子は、リンパ球の分化に関与しているインターロイキン−1、2、3、4、5、6、7、9、10、11、12、13、および17であり得る。インターロイキン3および4は、肥満細胞の分化に関与している。
【0070】
同時刺激因子は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、インターロイキン−3、およびインターロイキン−5であり得る。これらは、好酸球の分化に関与している。同時刺激因子はまた、GMCSF、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)、およびIL−3でもあり得る。これらはマクロファージの分化に関与している。同時刺激因子はまた、GM−CSF、GCSF、およびIL−3でもあり得る。これらは、好中球の分化に関与している。同時刺激因子はまた、GMSCF、IL−1、IL−3、IL−6、IL−8、PIXY−321(GM−CSF/IL−3融合タンパク質)、マクロファージ炎症タンパク質、幹細胞因子、トロンボポエチン、増殖関連ガン遺伝子、IL−11、およびTPOでもあり得る。これらは、血小板の分化に関与している。同時刺激因子はまた、Flt3リガンドでもあり得、これは、樹状細胞の増殖に関与している。同時刺激因子はまた、GMCSF、IL−3、およびエリスロポエチンでもあり得、これらは、赤血球の分化に関与している。同時刺激因子は、SCF、Flt3リガンド、G−CSF、IL−3、IL−6、およびIL−11であり得る。これらは、血液生成を維持することができる未発達な万能前駆細胞を補給する。同時刺激因子は、抗生物質、ビタミン、ハーブ抽出液、抗炎症薬、グルコース、解熱剤、鎮痛剤でもあり得る。
【0071】
組成物は、他の同時刺激因子(たとえば、AMD3100(1,1’−[1,4−フェニレン−ビス(メチル−エン)−ビス]1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン)およびその誘導体、または、米国特許第6,987,102号(その内容は引用により本明細書中に組み入れられる)に開示されているような他の同時刺激因子)とともに使用される場合がある。AMD3100は、CXCR4サイトカイン受容体を持つアンタゴニストである。この化合物は骨髄間質細胞由来のSDF−1の、HSCの骨髄から循環への放出を導き得る幹細胞上のCXCR4との結合を妨害し得る。
【0072】
4.造血幹細胞の同定
本発明の方法はまた、骨髄、末梢血、臍帯血からHSCを、または胚性幹細胞を同定し単離するために使用される場合もある。この方法には、その必要がある哺乳動物またはヒトに対して、骨髄中のHSCの数を増加させ、そしてこれらの細胞を骨髄から血流へと移動させる薬剤を投与する工程が含まれ得る。この方法にはさらに、血液からHSCを単離する工程が含まれる場合がある。
【0073】
理論には束縛されないが、血流の中の幹細胞集団は不均質であり得、これには、真の長期にわたり自己再生する幹細胞であるいくつかのHSC、いくつかの期間が短い前駆細胞、そしていくつかの幹細胞ではない細胞が含まれ得る。幹細胞はまた、多くの他の血球または骨髄細胞のように見える場合もある。HSCの同定には、特異的な細胞表面マーカーの有無を検出することが必要な場合がある。HSCは、分子マーカー(たとえば、Sca−1、CD27、CD34、CD38、CD43、CD90.1、CD117(c−Kit)、AA4.1、MHCクラスI、CD150、Lin、CD45RO、CD45RA、CD59、CD90、CD109、CD133、CD166、およびHLA DR)を様々に発現し得る。
【0074】
マウスおよびヒトのHSCに特徴的な細胞表面マーカーは異なり得る。表1は、それらがインビボおよびインビトロで未分化の状態で存在している場合の、マウスHSCとヒトHSCに特徴的な細胞表面マーカーを示す。HSCが分裂と異なる細胞系統への発達を開始すると、細胞表面マーカーとそれらの発現レベルは変化し得る。
【0075】
【表3】

たとえば、マウスHSCの指標であり得るいくつかのマーカーの組み合わせが開発されている。これには以下が含まれる:[CD117high、CD90.1low、Linneg/low、Sca−1pos、Flk2/flt3]、[CD90.1low、Linneg、Sca−1posRhodamine123low]、[CD34neg/low、CD117pos、Sca−1pos、Linneg]、およびHoechst dyeを使用する「side−population」細胞。これらの組み合わせの特異的な検出は、HSCをほぼ均質に精製することを可能にし得る。
【0076】
[CD34neg/low、CD117(c−kit)pos、Sca−1pos、Linneg]は、蛍光活性化細胞選別法(FACS)によって選択することができる。ここでは、異なるいくつかの造血細胞の集団が同時に同定され、単離される:共通の骨髄前駆細胞(CMP)を含む[CD117(c−kit)pos、Linneg](KL)集団;長期間持続するHSC(LT−HSC)からなる[CD117(c−kit)pos、Sca−1pos、Linneg、CD34neg/low](KSL/CD34)集団;および、生存期間の短いHSC(ST−HSC)と持続性のリンパ骨髄形成(sustained lymphomyelopoiesis)を有している多能性前駆細胞(MPP)を含む[CD117(c−kit)pos、Sca−1pos、Linneg、CD34pos](KSL/CD34)集団。
【0077】
HSCの細胞表面マーカーはまた、代謝マーカー/色素(たとえば、ローダミン123、Hoeschst33342、ピロニン−Y、およびBAAA)を使用して検出することもできる。HSCはまた、蛍光標識を持つモノクローナル抗体で検出し、そしてFACSを用いて骨髄から単離することもできる。
【0078】
5.ストレスを受けた細胞または死滅した細胞の置換
異常な状態もしくはストレスが原因で損傷を受けているかまたは死滅した細胞を置き換えるための方法もまた、HSCの特徴を増大させるための方法を適用することによって提供される。これらの損傷を受けた細胞または死滅した細胞は、リンパ系統、骨髄系統、または赤血球系統の血球であり得る。これらの損傷を受けた細胞または死滅した細胞は、赤血球(赤血球)、血小板、顆粒球(たとえば、好中球、好塩基、および好酸球)、マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球、またはナチュラルキラー細胞であり得る。これらの損傷を受けた細胞または死滅した細胞は、筋細胞(骨格筋細胞と心筋細胞)、脳細胞、肝臓細胞、皮膚細胞、肺細胞、腎臓細胞、腸細胞、および膵臓細胞のような分化した細胞であり得る。
【0079】
細胞の損傷または細胞死を引き起こす可能性がある状態、ストレス、または処置の代表的な例としては、ガン治療(たとえば、放射線治療または化学療法);温度ショック;有害な線量の放射線に対する暴露(たとえば、原子力発電所、軍需産業、または放射性医薬品の製造、または兵役の職務の従事者);細胞の老化;創傷;中毒、化学的または熱性の火傷、ウイルス感染、および細菌感染を挙げることができる。
【0080】
損傷を受けた細胞または死滅した細胞を置き換える方法は、自己処置レジュメまたは異種処置レジュメを通じてその必要がある患者に投与する工程によって行われ得る。患者自身の幹細胞のまたはドナーの幹細胞を患者に戻すことにより、患者のHSCのプールが供給され得るかまたは再投入され得る。組成物は患者の細胞が損傷を受けるかまたは死滅する前に患者に投与される場合があり、また、その後に投与される場合もある。たとえば、患者は、組成物で処置され得、そしてHSCは患者から、一定の時間の後に単離され得る。患者はその後、損傷、ストレス、または症状に曝され得る。患者には続いて、彼/彼女自身の単離されたHSCが投与され得る。同様に、この方法はドナーからも行われる場合がある。ドナーには組成物が投与され得る。一定の時間の後に、HSCがドナーから単離され得、患者に投与され得る。
【0081】
a.ガンの処置の際に損傷を受けた細胞または死滅した細胞の処置
異常な状態は、ガンまたはガンの処置の結果であると考えることができる正常な組織および細胞の損傷であり得る。たとえば、本発明の方法は、化学療法を受けている患者に幹細胞の供給を提供するために使用される場合がある。患者のガン細胞の集団を全滅させるためのガンの処置により、患者の骨髄幹細胞が消滅してしまう場合がある。患者自身の、またはドナーの保存された幹細胞を患者に戻すことにより、患者のHSCのインビボプールが補給され得るか、または再投入され得る。この方法により、HSCの数を増加させ、骨髄から血流へとこれらの細胞を移動させることができ、そして、化学療法または放射線治療のようなガンの処置をより高用量で使用することが可能となり得、しかもこれに伴うリスクは骨髄移植よりも小さい。
【0082】
(1)自己幹細胞または異種幹細胞集団の移植
組成物はガンの処置を受ける前に患者に、またはドナーに投与することができる。血液または末梢の白血球(PWBC)(これには、HSCを含む幹細胞集団が含まれ得る)は、患者またはドナーから単離することができる。細胞は、組成物の投与後、ガンの処置の前に、患者から単離することができる。自己または異種幹細胞集団は、将来の使用のために保存することができる。幹細胞集団は、以前にガンの処置を受けた患者に、後に投与され得る。加えて、保存された自己幹細胞を移植に使用することができる。組成物は、血液学的な骨髄幹細胞移植において使用され得る。組成物は、免疫抑制性の処置の前、その間、およびその後の移植の成功を促進することができる。自己幹細胞移植には、移植片拒絶および感染のリスクが低いという利点があり得る。なぜなら、免疫機能の回復の効率が優れているからでありえる。移植片対宿主病に罹患している患者の罹患率はドナーとレシピエント患者が同じ個体である場合には極めて低くなり得る。
【0083】
(2)化学療法
ガン治療には、細胞毒性薬または細胞増殖抑制剤、またはそれらの混合物の投与が含まれ得る。細胞毒性薬は、以下によりガン細胞の増殖を妨げることができる:(1)DNAを複製する細胞の能力を妨害すること、ならびに、(2)ガン細胞の細胞死および/またはアポトーシスを誘導すること。細胞増殖抑制剤は、細胞増殖を調節する細胞性のシグナル伝達のプロセスを調節すること、妨害すること、または阻害することにより作用する。
【0084】
細胞毒性薬として使用することができる化合物の複数のクラスとしては、以下が挙げられる:アルキル化剤(ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア、およびトリアゼンを含むがこれらに限定されない);ウラシルマスタード、クロロメチン、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレン−メラミン、トリエチレンチオホスホルアミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ステレプトゾシン、ダカルバジン、およびテモゾロミド;代謝拮抗物質(葉酸アンタゴニスト、ピリミジンアナログ、プリンアナログ、およびアデノシンデアミナーゼ阻害剤を含むがこれらに限定されない);メトトレキセート、5−フルオロウラシル、フロキシウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン、およびジェムシタビン;天然の産物およびそれらの誘導体(たとえば、ビンカアルカノイド、抗ガン剤、抗生物質、酵素、リンホカイン、およびエピポドフィロトキシン);ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ara−c、パクリタキセル(パクリタキセルはタキソール(TAXOL)(登録商標)として市販されている)、ミトラマイシン、デオキシコ−ホルミシン、マイトマイシン−c、l−アスパラギナーゼ、インターフェロン(好ましくは、IFN−α)、エトポシド、およびテニポシド。
【0085】
他の増殖性の細胞傷害剤は、ナベルベン、CPT−11、アナストラゾール、レトラゾール、カペシタビン、レロキサフィン、シクロホスファミド、イフォスファミド、およびドロロキサフィンである。
【0086】
微小管に影響を与える薬剤は細胞の有糸分裂を妨害し、それらの細胞傷害性活性は当該分野で周知である。使用することができる微小管に影響を与える薬剤としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:アロコルヒチン(NSC406042)、ハリコンドリンB(NSC609395)、コルヒチン(NSC757)、コルヒチン誘導体(たとえば、NSC33410)、ドラスタチン10(NSC376128)、マイタンシン(NSC153858)、リゾキシン(NSC332598)、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、NSC125973)、タキソール(TAXOL(登録商標))誘導体(たとえば、誘導体(たとえば、NSC608832))、チオコルヒチン(NSC361792)、トリチルシステイン(NSC83265)、硫酸ビンブラスチン(NSC49842)、硫酸ビンクリスチン(NSC67574)、天然のおよび合成のエポチロン(エポチロンA、エポチロンB、およびジスコデルモリド(discodermolide)(Service(1996)Science,274:2009を参照のこと)を含むがこれらに限定されない)、エストラムスチン、ノコダゾール、MAP4など。このような薬剤の例はまた、Bulinski(1997)J.Cell Sci.110:3055 3064;Panda(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:10560−10564;Muhlradt(1997)Cancer Res.57:3344−3346;Nicolaou(1997)Nature 387:268−272;Vasquez(1997)Mol.Biol.Cell.8:973−985;およびPanda(1996)J.Biol.Chem 271:29807−29812にも記載されている。
【0087】
以下のような細胞毒性剤もまた適している:エピドフィロトキシン;抗新生物性の酵素;トポイソメラーゼ阻害剤;プロカルバジン;ミトキサントロン;白金配位錯体(たとえば、シスプラチンおよびカルボプラチン);生物反応修飾物質;増殖阻害剤;抗ホルモン療法薬;ロイコボリン;テガフール;および造血増殖因子。
【0088】
使用できる細胞増殖抑制剤は、ホルモンおよびステロイド(合成アナログを含む):17α−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニソン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニソロン、メチル−テストステロン、プレドニソロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、およびゾラデックスでもあり得る。
【0089】
他の細胞増殖抑制剤は、血管新生阻害剤(たとえば、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤)であり、他のVEGF阻害剤(たとえば、抗VEGF抗体)および低分子(たとえば、ZD6474およびSU6668)もまた含まれる。Genentech社による抗Her2抗体もまた利用することができる。適切なEGFR阻害剤はEKB−569(不可逆的阻害剤)である。EGFRに対して免疫特異的であるImclone社の抗体C225、およびsrc阻害剤もまた含まれる。
【0090】
CASODEX(登録商標)(ビカルタミド、Astra Zeneca)もまた細胞増殖抑制剤としての使用に適しており、これは、アンドロゲン依存性のガンを非増殖性にする。細胞増殖抑制剤のさらに別の例は、抗エストロゲン剤タモキシフェン(TAMOXIFEN(登録商標))である。これは、エストロゲン依存性の乳ガンの増殖または成長を阻害する。細胞性の増殖シグナルの伝達の阻害因子は細胞増殖抑制剤である。代表的な例としては、上皮成長因子阻害剤、Her−2阻害剤、MEK−1キナーゼ阻害剤、MAPKキナーゼ阻害剤、PI3阻害剤、Srcキナーゼ阻害剤、およびPDGF阻害剤が挙げられる。
【0091】
(3)ガンの放射線治療
ガン治療には、放射線治療が含まる場合がある。放射線治療は、遠隔照射、内照射療法、または原体照射法(ここでは、腫瘍の形状に適合するように放射線ビームを成型するためにコンピューターが使用される)であり得る。放射線治療に使用される放射線は、x線、電子線、またはガンマ線を含む様々な供給源からもたらされ得る。放射線治療の際の放射線の線量と投与のタイミングは、ガンの位置および程度に応じて様々に変えることができるであろう。組成物は、上記に記載されたように、放射線治療の際には放射線防護剤とともに投与することができる。
【0092】
b.HIV感染を処置するための化学療法/放射線治療、および/または抗ウイルス治療
本発明の方法には、免疫不全の処置に付随する化学療法または放射線治療の症状を緩和するかまたは処置するために、骨髄中のHSCの数を増加させ、これらの細胞を血流へと動員させる組成物を投与する工程が含まれ得る。組成物は、AIDSについて骨髄破壊的な化学療法または放射線治療を受けた患者に投与することができる。たとえば、組成物は、患者の骨髄からのHSCを動員させるか、または患者の骨髄に由来するHSCの数を増加させるために、患者に投与することができる。動員させられたHSCは、その後、白血球除去輸血によって末梢血から回収することができる。その後、HSCは、抗CD34抗体を使用する免疫吸着によって回収された末梢血から富化させることができる。任意に、富化させられたHSCは、幹細胞の増殖を刺激する薬剤の存在化でそれらを培養することによってエキソビボで増殖させられ得る。骨髄破壊的な化学療法または放射線治療の投与後、富化させられ、そして任意に増殖させられたHSCは、次いで、患者の循環している血液に戻され得、それ自体が骨髄へと移植され得る。
【0093】
加えて、本発明の方法にはさらに、任意に、抗HIV化合物(たとえば、抗ウイルス薬、たとえば、AZT、可溶性CD4、およびAIDSウイルスのCD4特異的ブロッカー、またはアンチセンス、または抗原オリゴヌクレオチド)を、富化させられ任意に増殖させられたHSCを患者の循環している血液に戻す前と後に、患者に投与することが含まれる。この工程は、残っているウイルスが新しく戻された幹細胞の子孫に感染することを防ぐための「モッピングアップ(mopping up)」機能を果たす。
【0094】
c.細胞の老化の調節
本明細書中に記載される方法により、HSCの数を増加させ、これらの細胞を血流へと動員させることができる。自己幹細胞は、血液または末梢白血球から単離することができ、老化が原因でストレスを受けた細胞または死滅した細胞を置き換えるために投与され得る。
【0095】
d.放射線
本明細書中に記載される方法により、放射線被爆が原因でストレスを受けたかまたは死滅した細胞を置き換えることができる。本発明の方法によってはまた、放射線治療が原因でストレスを受けたかまたは損傷を受けた細胞を置き換えることもできる。
【0096】
電離放射線(IR)への暴露は短期間である場合も、また、長期間である場合もあり、これは、全身または局所的に、単回投与として行われる場合も、また複数回投与として行われる場合もある。したがって、核で起こる偶発的事象、または核への攻撃(military attack)には、1回の高い線量の全身照射への暴露が含まれ得る(多くの場合は、放射性同位体での長時間の被毒が続く)。同様に、単回照射量は、通常、宿主の血液前駆体からそれらを「クリーニング」することによりドナーの骨髄についての宿主の造血器官を調製することが必要である場合に、骨髄移植患者の前処置に通常使用される。
【0097】
分子レベルまたは細胞レベルでは、放射粒子は、DNAの断裂と、DNA、タンパク質、細胞膜、および他の巨大分子構造の間での架橋を導く可能性がある。電離放射線はまた、フリーラジカルおよび反応性酸素種(ROS)を生じる事により、細胞性の成分の二次的損傷を誘導する可能性もある。多数の修復システム(たとえば、DNAの完全性と忠実性を回復するいくつかのDNA修復経路、ならびに、フリーラジカルおよびROSを取り除き、酸化されたタンパク質および脂質を減少させる抗酸化化合物および酵素)がこの損傷を是正する。細胞性のチェックポイントシステムが、損傷が修復されるまで、または細胞増殖の停止もしくはプログラムされた細胞死(アポトーシス)の決定がなされるまで、DNAの欠損を検出し、細胞周期の進行を遅らせるために存在する。
【0098】
有機体のレベルでは、低レベルおよび中レベルの放射線の即座の影響が細胞死によって大きく引き起こされ、これにより放射線によって誘導される炎症が導かれる。高い放射線レベルでは、いわゆる造血症候群および胃腸症候群により短期間の放射線によって誘導される死が導かれる。造血症候群は、造血細胞とそれらの前駆細胞が失われ、それにより、血液とリンパ系の再生が不可能となることを特徴とする。死は、通常は、感染(免疫抑制が原因である)、出血、および/または貧血の結果として起こる。胃腸症候群は、主に小腸の腸上皮での大量の細胞死、それに続く腸壁の崩壊と、菌血症および敗血症による死を特徴とする。造血症候群は、低い放射線量で発現して、胃腸症候群よりも遅れて死を導く。極めて高い放射線量によっては、神経変性が誘発されることによってほぼ瞬間的に死が生じる可能性がある。
【0099】
本明細書中に記載される方法によってはまた、電離放射線からの防御の大きさも増大させることができる。
【0100】
e.火傷の処置
本発明の方法には、火傷を緩和または処置するために、骨髄中のHSCの数を増加させ、これらの細胞を血流へと動員させる組成物を投与する工程が含まれ得る。この方法には、HSC集団の特徴を増大させ、そして末梢白血球を単離する工程が含まれ得る。末梢白血球には自己幹細胞が含まれ得、これは、火傷した哺乳動物に投与することができる。自己幹細胞は、火傷の部位での組織の再生を促進する栄養素(trophic factor)の供給源であり得る。火傷は放射線被爆に付随する場合がある。
【0101】
6.疾患の処置
HSCを用いて疾患を処置するための方法もまた提供される。この方法には、骨髄中のHSCの数を増加させ、異常細胞を置き換えるためにこれらの細胞を血流に動員させる組成物を投与する工程が含まれ得る。
【0102】
a.造血細胞のプールの再生
この組成物は、そのために赤血球、骨髄細胞、またはリンパ造血細胞のプールを再生させる必要が暗示される疾患あるいは症状を処置する方法において使用することができる。たとえば、この組成物は、HSC移植(たとえば、動物またはヒトへの骨髄移植)の必要が暗示される場合に、疾患または症状を処置する方法において使用することができる。この組成物は、被験体の中の造血細胞の数の不足を回復させるかまたは防ぐために使用することができる。不足は、たとえば、良性の疾患もしくは症状、遺伝的な異常、疾患、ストレス、化学療法によって、あるいは放射線治療によって生じる場合がある。
【0103】
本発明の方法には、上記に記載されたようなAIDSについての化学療法または放射線治療を受けた患者にHSCを動員によって戻すことについて記載された工程と同じ工程が含まれる。
【0104】
b.ガンの治療
本発明の方法には、ガンを緩和するかまたは処置するために、骨髄中のHSCの数を増加させ、血流へ移動するようにこれらの細胞を動員させる組成物を投与する工程が含まれ得る。ガンは、以下を含むがこれらに限定されない血液悪性腫瘍であり得る:リンパ系の血液系腫瘍(白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、およびバーキットリンパ腫を含む);骨髄系統の血液系腫瘍(急性および慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、および前骨髄球性白血病を含む)。処置することができる他のガンとしては、以下が挙げられる:膀胱ガン(進行性膀胱ガンおよび転移性膀胱ガンを含む)、乳ガン、結腸ガン(結腸直腸がンを含む)、腎臓ガン、肝臓ガン、肺ガン(小細胞肺ガンおよび非小細胞肺ガン、ならびに肺腺ガンを含む)、卵巣ガン、前立腺ガン、精巣ガン、尿生殖器ガン、リンパ系のガン、喉頭ガン、膵臓ガン(膵外分泌ガンを含む)、口腔ガン、咽頭ガン、食道ガン、胃ガン、小腸ガン、結腸ガン、直腸ガン、胆嚢ガン、子宮頸ガン、甲状腺ガン、および皮膚ガン(扁平細胞ガンを含む);中枢神経系および末梢神経系の腫瘍(星状細胞腫、神経芽細胞腫、膠芽細胞腫、神経鞘腫を含む);間質を起源とする腫瘍(繊維肉腫、横紋筋肉腫、および骨肉腫を含む);ならびに他の腫瘍(黒色腫、先天性色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、濾胞性甲状腺癌、および奇形ガンを含む)。
【0105】
c.血液疾患/自己免疫疾患
本発明の方法には、良性の疾患の兆候または症状を緩和するかまたは処置するために、骨髄中のHSCの数を増加させ、これらの細胞を血流へと動員させる組成物を投与する工程が含まれ得る。良性の疾患または障害は造血系に関係するものであり得、これには、以下が含まれるがこれらに限定されない:異常ヘモグロビン症、骨髄不全症候群、免疫不全、代謝性蓄積症、好中球機能異常(neutrophil disorder)、血小板の疾患、ウイルス感染(たとえば、HIV感染)、および自己免疫疾患。異常ヘモグロビン症は、サラセミア(たとえば、輸血によるサラセミア(transfusion−dependent thalassemia)、サラセミアメジャーなど)、またはサラセミア鎌状赤血球貧血(thalassemia sickle cell anemia)もしくは鎌状赤血球病)であり得る。
【0106】
7.組成物の投与
本明細書中に記載される方法を使用する組成物の投与は、経口投与、非経口投与、舌下投与、経皮投与、直腸投与、経粘膜投与、局所投与、吸入による投与、口腔投与による投与、またはそれらの組み合わせであり得る。非経口投与としては、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、くも膜下投与、および関節内投与が挙げられるが、これらに限定されない。獣医学的使用については、組成物は、通常の獣医学的な実施方法にしたがって、適切に許容される処方物として投与することができる。獣医師は、特定の動物に最も適している投与レジュメと投与経路を容易に決定することができる。組成物は、ヒト患者、ネコ、イヌ、大動物、または鳥に投与され得る。
【0107】
組成物は、他の処置と同時に投与される場合も、また、テンポを合わせて(metronomicaly)投与される場合もある。用語「同時」または「同時に」は、本明細書中で使用される場合は、組成物と他の処置が、互いに48時間以内に、好ましくは24時間以内に、さらに好ましくは12時間以内に、なおさらに好ましくは6時間以内に、そして最も好ましくは3時間以内、あるいはそれ未満で投与されることを意味する。用語「テンポを合わせて」は、本明細書中で使用される場合は、他の処置とは異なるタイミングでの、そして繰り返し行われる投与に対して一定の頻度での、組成物の投与を意味する。
【0108】
組成物は、異常な状態、ストレス、または処置への暴露の前の任意の時点で投与することができ、これには、暴露の約120時間前、118時間前、116時間前、114時間前、112時間前、110時間前、108時間前、106時間前、104時間前、102時間前、100時間前、98時間前、96時間前、94時間前、92時間前、90時間前、88時間前、86時間前、84時間前、82時間前、80時間前、78時間前、76時間前、74時間前、72時間前、70時間前、68時間前、66時間前、64時間前、62時間前、60時間前、58時間前、56時間前、54時間前、52時間前、50時間前、48時間前、46時間前、44時間前、42時間前、40時間前、38時間前、36時間前、34時間前、32時間前、30時間前、28時間前、26時間前、24時間前、22時間前、20時間前、18時間前、16時間前、14時間前、12時間前、10時間前、8時間前、6時間前、4時間前、3時間前、2時間前、または1時間前が含まれる。組成物はまた、暴露後の任意の時点で投与することもできる。これには、暴露の約1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、8時間後、10時間後、12時間後、14時間後、16時間後、18時間後、20時間後、22時間後、24時間後、26時間後、28時間後、30時間後、32時間後、34時間後、36時間後、38時間後、40時間後、42時間後、44時間後、46時間後、48時間後、50時間後、52時間後、54時間後、56時間後、58時間後、60時間後、62時間後、64時間後、66時間後、68時間後、70時間後、72時間後、74時間後、76時間後、78時間後、80時間後、82時間後、84時間後、86時間後、88時間後、90時間後、92時間後、94時間後、96時間後、98時間後、100時間後、102時間後、104時間後、106時間後、108時間後、110時間後、112時間後、114時間後、116時間後、118時間後、および120時間後が含まれる。
【0109】
組成物は、HSCの処理の前に、処理の約120時間前、118時間前、116時間前、114時間前、112時間前、110時間前、108時間前、106時間前、104時間前、102時間前、100時間前、98時間前、96時間前、94時間前、92時間前、90時間前、88時間前、86時間前、84時間前、82時間前、80時間前、78時間前、76時間前、74時間前、72時間前、70時間前、68時間前、66時間前、64時間前、62時間前、60時間前、58時間前、56時間前、54時間前、52時間前、50時間前、48時間前、46時間前、44時間前、42時間前、40時間前、38時間前、36時間前、34時間前、32時間前、30時間前、28時間前、26時間前、24時間前、22時間前、20時間前、18時間前、16時間前、14時間前、12時間前、10時間前、8時間前、6時間前、4時間前、3時間前、2時間前、または1時間前にドナーに投与することができる。
【0110】
8.組成物の処方
本発明の方法には、疾患の兆候または症状を緩和するかまたは処置するために、骨髄中のHSCの数を増加させ、これらの細胞を血流へと動員させる組成物を投与する工程が含まれる場合がある。本明細書中で提供される組成物は、従来の様式で処方された錠剤またはトローチ剤の形態であり得る。たとえば、経口投与のための錠剤およびカプセル剤には、結合剤、増量剤、潤滑剤、崩壊剤、および湿潤剤を含むがこれらに限定されない従来の賦形剤が含まれ得る。結合剤としては、シロップ剤、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、デンプンの粘液、およびポリビニルピロリドンが挙げられるが、これらに限定されない。増量剤としては、ラクトース、糖、微結晶セルロース、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、およびソルビトールが挙げられるが、これらに限定されない。潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール、およびシリカが挙げられるが、これらに限定されない。崩壊剤としては、ジャガイモデンプン、およびグリコール酸ナトリウムデンプンが挙げられるが、これらに限定されない。湿潤剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられるがこれに限定されない。錠剤は、当該分野で周知の方法にしたがってコーティングすることができる。
【0111】
本明細書中に提供される組成物はまた、水性または油性懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップ剤、およびエリキシル剤を含むがこれらに限定されない液体処方物でもあり得る。組成物はまた、使用前に水または他の適切な担体を用いて構成される乾燥産物として処方される場合もある。そのような液体調製物には、懸濁化剤、乳化剤、非水性担体、および保存剤を含むがこれらに限定されない添加剤が含まれる場合がある。懸濁化剤としては、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、および水素添加された食用油脂が挙げられるが、これらに限定されない。乳化剤としては、レクチン、モノステアリン酸ソルビタン、およびアカシアが挙げられるが、これらに限定されない。非水性担体としては、食用油、アーモンド油、ヤシ油、油状エステル、プロピレングリコール、およびエチルアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。保存剤としては、メチルまたはプロピルp−ヒドロキシ安息香酸およびソルビン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
本明細書中に提供される組成物はまた、坐剤として処方される場合もある。これには、ココアバターまたはグリセリドを含むがこれらに限定されない坐剤基剤が含まれ得る。本明細書中に提供される組成物はまた、吸入用に処方される場合があり、これは、乾燥粉末として、もしくは推進剤(たとえば、ジクロロジフルオロメタンまたはトリクロロフルオロメタン)を使用してエアゾールの形態で投与され得る、溶液剤、懸濁剤、エマルジョンが含まれるがこれらに限定されない形態であり得る。本明細書中で提供される組成物はまた、水性担体または非水性担体を含む経皮処方物として処方される場合もある。これには、クリーム剤、軟膏、ローション剤、ペースト剤、医療用石膏、パッチ、または膜が含まれるがこれらに限定されない。
【0113】
本明細書中で提供される組成物はまた、注射または持続注入を含むがこれらに限定されない、非経口投与用に処方される場合もある。注射用の処方物は、油性担体もしくは水性担体の中の懸濁剤、溶液剤、またはエマルジョンの形態であり得、これには、懸濁化剤、安定化剤、および分散剤を含むがこれらに限定されない処方用薬剤が含まれ得る。組成物はまた、滅菌の発熱物質を含まない水を含むがこれに限定されない適切な担体での再構成のための粉末の形態で提供される場合もある。
【0114】
本明細書中で提供される組成物はまた、デポー調製物として処方される場合もある。これは、移植によって投与することも、また、筋肉内注射によって投与することもできる。組成物は、適切なポリマー材料または疎水性材料とともに(たとえば、許容される油の中のエマルジョンとして)、イオン交換樹脂とともに、あるいは、難溶性誘導体として(たとえば、難溶性の塩として)処方される場合がある。
【0115】
9.組成物の投与
本発明の方法には、その必要がある患者に対して治療有効量の組成物を投与する工程が含まれ得る。治療での使用に必要な治療有効量は、処置される症状の性質、血流へのHSCを増加させるために所望される時間の長さ、および患者の年齢/症状に応じて様々である。しかし、一般的には、成人の処置に使用される用量は、通常、1日あたり0.001mg/kgから約200mg/kgの範囲であり得る。用量は、1日あたり約1μg/kgから約100μg/kgであり得る。所望される用量は、単回用量で投与されることが便利であり得るが、適切な間隔で、たとえば、1日あたり2回、3回、4回、またはそれ以上に分けられた用量で投与される複数回の用量として投与される場合もある。複数回の用量が所望される場合も、また必要である場合もある。
【0116】
投与量は、約1μg/kg、25μg/kg、50μg/kg、75μg/kg、100μg/kg、125μg/kg、150μg/kg、175μg/kg、200μg/kg、225μg/kg、250μg/kg、275μg/kg、300μg/kg、325μg/kg、350μg/kg、375μg/kg、400μg/kg、425μg/kg、450μg/kg、475μg/kg、500μg/kg、525μg/kg、550μg/kg、575μg/kg、600μg/kg、625μg/kg、650μg/kg、675μg/kg、700μg/kg、725μg/kg、750μg/kg、775μg/kg、800μg/kg、825μg/kg、850μg/kg、875μg/kg、900μg/kg、925μg/kg、950μg/kg、975μg/kg、または1mg/kgを含むがこれらに限定されない任意の投与量であり得る。
【0117】
10.遺伝子治療
様々な遺伝的疾患および後天性疾患を有している患者において、骨髄中のHSCの数を増加させ、血流へとこれらの細胞を動員させる組成物を使用して遺伝子治療を行うための方法が本明細書中で提供される。この方法においては、HSCは、組成物の投与によって患者の血流から動員させられ得る。その後、末梢血がロイコフェレーシスによって回収される。HSCはさらに、抗CD34抗体を使用した免疫吸着によって回収された末梢血からさらに富化させることができる。任意に、富化させられたHSCが、その後、幹細胞の増殖を刺激する薬剤の存在下でそれらを培養することによって、エキソビボで増殖させられる。富化させられ、そして任意に増殖させられた幹細胞には、その後、遺伝性疾患もしくは後天性疾患を緩和する遺伝子を発現する両種性レトロウイルスベクターまたは他の適切なベクターが形質導入される。任意に、ベクターには、発現される選択マーカーを持たせることもできる。この場合、うまく形質導入された細胞は、選択マーカーの存在について選択することができる。形質導入され、任意に選択されたHSCはその後、患者の循環している血液へと戻され、それ自体を骨髄に移植することができる。
【0118】
本発明には、以下の限定ではない実施例によって説明される複数の態様がある。
【実施例】
【0119】
(実施例1)
放射線防護剤の中のリポペプチド
リポペプチドは、放射線の影響から哺乳動物を防御することができる。この作用を、以下のような放射線照射後の脾臓の重量を通じて免疫系をモニターすることによって明らかにした。ICRマウスにPBSまたは3μgのCBLB601を注射し、その後、0Gyまたは6Gyの全身照射(TBI)を照射した。それぞれの処置から5匹のマウスのグループを3日おきに屠殺し、それらの脾臓と胸腺を取り出し、重量を測定した。脾臓の重量は、個々の対応する動物の体重に対して正規化した。図2は、照射した対照マウスとCBLB601で処置したマウスによる脾臓の平均重量のグラフを示す。体重あたりの脾臓の重量を、照射の24時間前にマウス1匹あたりPBSまたは3μgのCBLB601の筋肉内投与後に0Gyまたは6GyのTBIを照射したマウスについてプロットした。6Gyの放射線を照射したPBSで処置したマウスの脾臓は、13〜14日後に標準的な重量に回復した。比較すると、同じ量の放射線を照射したCBLB601で処置したマウスの脾臓は、8日目までに標準的な重量に回復した。
【0120】
(実施例2)
リポペプチドで処置したマウスから輸血された血液は放射線から防護することができる
リポペプチドで処置されたマウスからの輸血された血液は、放射線の影響からレシピエントマウスを防御することができる。これは、3日間連続して50μgのリポペプチドCBLB612をマウスに毎日注射することによって明らかになった。CBCL612の影響についての対照のために、マウスの1つのグループに、100μg/kgのG−CSF、またはPBSを4日間連続して毎日注射した。
【0121】
最後の注射の後、血液を、心臓穿刺によって処置したマウスから回収し、それぞれのグループについて混合した(すなわち、PBSネガティブ対照、G−CSFポジティブ対照、そしてCBLB612実験)。次に、末梢白血球(PWBC)を分画し、200μLの分画したPWBCを放射線照射したレシピエントマウスの尾静脈に注射した。輸血したPWBCの量は、1匹のマウスから得られた量と等量とした。さらに別の対照として、マウスの1つのグループには輸血を受けさせず、別のグループには、未処置のマウスに由来する3×10個の骨髄細胞を注射した。
【0122】
輸血前に2時間かけて9Gyの放射線(C57/B6マウスについての致死量)を予め照射した5つの試験グループ(すなわち、PBS、G−CSF、およびCBLB612で処置したマウスの血液を輸血、輸血しなかった、および骨髄細胞を注射)に由来するマウスを観察し、それらの生存率を輸血後に評価した。表4に実験結果を記載する。
【0123】
【表4】

輸血を行わなかったマウス、またはPBSで処置したマウスに由来するPWBCを輸血したマウスは、照射後21日目に低い生存率を示した。対照的に、CBLB612で処置したマウスから単離したPWBCを輸血したマウスは全て、照射後24日まで生存していた。この生存率は、G−CSFで処置したマウスから単離したPWBCで処置したマウス、および照射前に未処置のマウスに由来する骨髄細胞を注射したマウスの生存率と等しかった。これは、リポペプチドで処置したマウスに由来する血液が、照射を受けたレシピエントマウスに輸血されると、致死レベルの放射線の影響を防御することができることを示している。
【0124】
(実施例3)
リポペプチドはHSC数を増加させ、移動性を強化することができる
以下は、リポペプチドが実際にHSCの数を増加させ、骨髄(BM)から血流へとそれらを動員させることができることを明らかにする。この作用は、以下のように、BM細胞および末梢血細胞の中の公知のHSCマーカーをモニターすることによって観察した。細胞を、CBLB601で処置したマウスまたは対照マウスのBMから単離し、その後、これらの細胞を蛍光活性化細胞選別法(FACS)によって分析した。FACSを、共通の骨髄前駆細胞をマークするCD117(c−kit)posおよびLinnegを提示するKL細胞集団;長期間生存するHSCをマークするCD117(c−kit)pos、Sca−1pos、Linneg、およびCD34neg/lowを提示するKSL/CD34細胞集団;短期間生存するHSCと持続性のリンパ骨髄造血(しかし好ましくは、骨髄造血ではなくリンパ造血を再構成する)を伴う多能性前駆細胞をマークするCD117(c−kit)pos、Sca−1pos、Linneg、CD34posを提示するKSL/CD34細胞集団を選択するために使用した。図3は、BMの中でのc−kitpos、KSL細胞、KSL/CD34、およびKSL/CD34細胞の割合(%)が、対照と比較してCBLB601で処置したマウスにおいて増加し、CBLB601の投与後72時間でピークとなることを示している。したがって、長期間生存するHSCと短期間生存するHSC細胞の集団、ならびに、共通のおよび多能性骨髄前駆細胞の集団は、CBLB601での処理によって増大させられる。
【0125】
さらに、HSCは、CBLB601での処置によりBMから血液へと動員させられる。FACSを、CBLB601で処置したマウスの血液中の細胞集団を対照マウスに対して分析するために使用した。図4は、LSK、LSK/CD34、およびLSK/CD34細胞/血液1mLの数が、対照と比較してCBLB601で処置したマウスにおいて増加したことを示している。末梢血HSC細胞中での増加は、CBLB601での処置後72時間でピークを示した。したがって、これらの実験は、リポペプチドの放射線防護作用が、造血の増加によって媒介されたことを示している。
【0126】
(実施例4)
リポペプチドは複数の幹細胞集団を動員させることができる
以下は、リポペプチドが血液中の多数の幹細胞集団を動員させることができることを示す。C57/B6マウスに、単回皮下(SC)注射、または4回の毎日50μgのCBLB612のSC注射のいずれかを投与した。血液試料をそれぞれのマウスから回収し、幹細胞集団の間で一般的である以下の分子マーカーを使用してFACSによって分析した:Lin、sca−1、c−kit、およびCD34。以下の表5は、FACSによって分析した、試料中の様々な細胞集団についての細胞数/mLを経時的に示す。Lin、sca−1、およびc−kit(LSK)は全ての幹細胞について共通のマーカーである。LSK/CD34を示す細胞は真の万能である長期間生存する造血幹細胞であるが、LSK/CD34を示す細胞は短期間しか生存できないHSCであり、多能性前駆細胞である。
【0127】
【表5】

万能である長期間生存する造血幹細胞、分化増殖能を獲得した前駆体幹細胞、および幹細胞のレベルは、一般的には、リポペプチドCBLB612での処置後72時間まで増大した。これらのデータは、リポペプチドが多岐にわたる幹細胞のレベルを上昇させることができ、ほぼ全てのタイプを提示することができ、そしてこれらの細胞を血液へと動員させることができることを示している。
【0128】
(実施例5)
リポペプチドは、アカゲザルにおいて骨髄中のHSC数を増加させ、そして末梢血への移動性を増大させることができる
以下は、リポペプチドがHSC数を増加させることができ、これらを骨髄(BM)から血流へと動員させることができることを示す。この作用を、アカゲザルの細胞および周辺細胞においてBM中のHSCについての公知のマーカーをモニターすることによって観察した。
【0129】
6匹のアカゲザルを、CBLB612の影響を測定するために実験した。ポジティブ対照のアカゲザルには、毎日100μg/kgのG−CSFの皮下用量を0日目の前に4日間連続して投与した(すなわち、−4〜−1日目)。1日目には、血液を実験用のアカゲザル(サル1〜6)から、それらに割り当てられた処置を施す前に採取した。アカゲザル2〜5には、1日目に0.25mg/kgのCBLB612を筋肉内投与した。サル6のネガティブ対照(未処置)には、G−CSFもCBLB612も投与しなかった.
血液を、サル2〜6から2日目から5日目の試験の際に採取した。骨髄を、サル6(未処置)からは1日目、サル2からは2日目、サル3からは3日目、サル4からは4日目、そしてサル5からは5日目に採取した(表6を参照のこと)。
【0130】
【表6】

BMおよびPBに由来する全白血球(WBC)のサブ集団を、PBまたはBMのいずれかからHSCを精製するための臨床状況で一般的に使用されるマーカーであるCD34(LinCD34CD38)マーカーを提示する造血性の万能幹細胞(WBC)を選択するためにFACSによって分析した(図6を参照のこと)。表5の影をつけたセルは、BM中で発現させられたCD34細胞のレベルを示す。表5の強調されなかったセルは、PB中に存在するCD34細胞の数を示す。表7は、リポペプチドがCD34の増殖とBMからPBへの動員を刺激できることを示す。表7はまた、取り出されたたった1つのBMでも、CD34細胞の増殖とPB中での動員を刺激できることを示す。これらのデータを図5にさらにまとめる。図5は、PBに集められたCD34+細胞のレベルがCBLB612での処置後にピークとなったことを示している。
【0131】
【表7】

(実施例6)
HSCの動員はCBLB612用量に依存する
これは、所定のグループ配分のマウスの平均体重に比例するように調節された薬物の容量を投与することによって明らかとなった。用量は、意図した用量/kg平均体重として計算した。用量の調節は、注入量を一定に保ったまま注射される化合物の濃度を調節することによって行った。表8を参照のこと。
【0132】
【表8−1】

【0133】
【表8−2】

表9にしたがい、全てのグループに、麻酔の1時間前に5mg/kgのAMD3100を単回皮下(SC)注射によって投与した。対照グループ1には、5mg/kgのAMD3100だけを注射した。対照グループ2は4回の毎日0.1mg/kgのG−CSFのSC注射で処置し、5日目にマウスにAMD3100を注射した。対照グループ8は、ICRマウスから構成されており、対照グループ2と同じ処置を施した。実験グループ3、4、5、および6には、採血の72時間前に、それぞれ、1.2;0.4;0.13;および0.04mg/kgの用量のCBLB612を単回SC注射で投与した。グループ7には、採血の24時間前に、1.2mg/kgのCBLB612の単回SC注射を投与した。実験グループ9は、4回の毎日0.1mg/kgのG−CSFのSC注射、採血の72時間前の1.2mg/kgのCBLB612の単回SC注射、そして最初のG−CSF注射後5日目の麻酔の1時間前の5mg/kgのAMD3100の単回SC注射で処置した。
【0134】
様々な用量のCBLB612の単回注射、続いて、採血の1時間前のAMD3100の単回注射を組み合わせて処置した(co−treated)C57Blマウスの末梢血中の測定した造血幹細胞と前駆細胞の数により、最大のHSCと前駆細胞の動員を導くCBLB612の最少用量が1.2mg/kgであることが明らかになった。表10と図7〜8を参照のこと。この用量はまた、骨髄中のHSCの最大増加も導いた。表11と図9〜10を参照のこと。CBLB612とAMD3100とでのC57Bl/6NHsdマウスの処置は、G−CSFとAMD3100とでの処置よりもHSC移動について効率がおよそ3倍高かったが、3種類の化合物全てでのこれらのマウスの処置によっては、CBLB612とAMD3100、およびG−CSFとAMD3100の組み合わせよりもおよそ2倍多いHSCが動員した。表10を参照のこと。ICRマウスは、C57Bl/6NHsdマウスよりも、G−CSFとAMD3100を用いた場合に高い動員効率を示した。表10を参照のこと。
【0135】
【表9】

【0136】
【表10】

【0137】
【表11】

採血の72時間前の1.2mg/kgのCBLB612の単回投与、加えて、4回の毎日0.1mg/kgのG−CSFの注射、そして麻酔の1時間前の5mg/kgのAMD3100の単回注射でのマウスの処置後、HSCの動員は、2種類の薬物:CBLB612とAMD3100、またはG−CSFとAMD1300での処置と比較して、相乗的である(約6〜8倍高い)ことが明らかになった。骨髄中のHSCの最大増加を導くであろう最少用量は、1.2mg/kgのCBLB612であることが明らかになった。
【0138】
(実施例7)
HSC動員の速度論
CBLB612の注射後の骨髄から末梢血へのHSCおよび前駆細胞のその後の動員。これを、所定のグループ配分のマウスの平均体重に比例するように調整された薬物の容量を投与することによって明らかにした。用量は、意図した用量/kg平均体重として計算した。用量の調節は、注入量を一定に保ち、注射される化合物の濃度を調整することによって行った。表12を参照のこと。
【0139】
表13にしたがい、PBS対照としてグループ8を除く全てのグループに、麻酔の1時間前に5mg/kgのAMD3100を投与した。対照グループ7には、6.5mg/kgの用量のAMD3100を注射した。ネガティブ対照としたグループ8には、採血の1時間前に、200μlのPBSの単回SC注射を投与した。実験グループ1〜6には、採血前の様々な時点で、2mg/kgの用量のCBLB12を単回SC注射を投与した。ポジティブ対照としたグループ9には、4日間、1日に1回の0.1mg/kgのG−CSFのSC注射を投与した。
【0140】
【表12−1】

【0141】
【表12−2】

【0142】
【表13】

様々な時点でのCBLB612の単回注射、続いて、採血の1時間前のAMD3100の単回注射で同時処置したC57Blマウスの末梢血の中の測定した造血幹細胞と前駆細胞の数により、これらの細胞の最大の動員が、CBLB612の注射の72〜96時間後に起こることが明らかになった。真の万能HSC(KSL/CD34)、ST−HSC(KSL/CD34)、および分化増殖能を獲得した前駆細胞(骨髄系統への分化増殖能をほぼ獲得した;LIN/sca1/kit)は全て増加した。表14と図11〜12を参照のこと。CBLB612の単回注射により、骨髄中のHSCの数は増加し、注射の12〜24時間後にピークとなった。表15と図13〜15を参照のこと。
【0143】
【表14−1】

【0144】
【表14−2】

【0145】
【表15】

CBLB612の単回注射により骨髄中のHSCの数が増加し、注射の約12〜24時間後にピークとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HSC集団の特徴を増大させるための方法であって、該方法には、その必要がある哺乳動物に対して薬剤を含む組成物を投与する工程が含まれ、ここでは、該特徴は、細胞数および移動性からなる群より選択される、方法。
【請求項2】
前記集団に、長期間生存する造血幹細胞または分化増殖能を獲得した前駆細胞が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤がリポペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記リポペプチドが式:
【化7】

の化合物であり、式中、
はHまたは−CO−Rを示し、
、R、およびRは独立して、H、または任意に置換されたC〜C16脂肪族であり;
Xはペプチドであり;そして
ZはSまたはCHである、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ペプチドに配列番号1〜52の配列のうちの任意の1つが含まれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ペプチドの最初の5個のアミノ酸が、表3に記載される位置にあるアミノ酸から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ペプチドに、配列番号8、16〜18、20、および21、ならびにそれらの置換体からなる群より選択される配列が含まれる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
がHであり、そしてRとRがC16脂肪族またはそれらの置換体である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物が、RRまたはRS立体異性体、あるいはそれらの混合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記リポペプチドが式:
【化8】

の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記薬剤がリポ糖である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記リポ糖が式:
【化9】

の化合物であり、式中、
はHまたは−CO−Rを示し、
、R、およびRは独立して、H、または任意に置換されたC〜C16脂肪族であり;
Xは糖であり、そして
ZはSまたはCHである、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
放射線防護剤を投与する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記放射線防護剤が抗酸化剤である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記放射線防護剤がサイトカインである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記サイトカインが幹細胞因子である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記放射線防護剤がフラジェリンである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記放射線防護剤がTGFβである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記放射線防護剤がTLRの活性化因子である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
骨髄中の造血幹細胞の数が増加する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
骨髄から血流への前記造血幹細胞の移動性が増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法にしたがってHSCの特徴を増大させる工程を含む、異常な状態の影響を処置する方法。
【請求項23】
前記異常な状態が、放射線、化学療法、創傷、中毒、感染、自己骨髄移植、および骨髄不全からなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法にしたがってHSC集団の特徴を増大させる工程を含む、疾患を処置する方法。
【請求項25】
前記疾患が、ガン、自己免疫疾患、貧血、悪性ではない血液疾患、ウィスコット・アルドリッチ症候群、チェディアック・東症候群、重症複合型免疫不全症(SCID)、サラセミア、および鎌状赤血球貧血からなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ガンが、白血病、リンパ腫、悪性の血液疾患、乳ガン、睾丸ガン、神経芽細胞腫、卵巣ガン、骨髄腫、およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記自己免疫疾患の原因がHIV感染である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
哺乳動物から自己幹細胞集団を生産する方法であって:
(a)請求項1に記載の方法にしたがってHSC集団の特徴を増大させる工程;および
(b)該哺乳動物から末梢白血球を単離する工程
を含み、ここでは、該末梢白血球には、該自己幹細胞集団が含まれる、方法。
【請求項29】
ガンの処置を受けた哺乳動物に対して請求項28に記載の方法にしたがって得られた自己幹細胞集団を投与する工程を含む、ガンの処置の影響を処置する方法。
【請求項30】
前記ガンの処置が化学療法または放射線治療である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記自己幹細胞集団が注射または輸血によって投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
血液試料からHSCを単離するための方法であって、前記方法には:
(a)その必要があるヒトに対して薬剤を含む組成物を投与する工程;
(b)該試料からHSCを単離する工程
が含まれる、方法。
【請求項33】
前記薬剤がリポペプチドである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記リポペプチドが式:
【化10】

の化合物であり、式中、
はHまたは−CO−Rを示し、
、R、およびRは独立して、H、または任意に置換されたC〜C16脂肪族であり;
Xはペプチドであり;そして
ZはSまたはCHである、
請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記リポペプチドが式:
【化11】

の化合物である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
G−CSFを投与する工程をさらに含む、請求項1または28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が、G−CSFが投与される前に投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記組成物が、G−CSFの投与と同時に投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物が、G−CSFの投与後に投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
AMD3100を投与する工程をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
CXCR4アンタゴニストを投与する工程をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
CXCR4アンタゴニストを投与する工程をさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
AMD3100が前記哺乳動物からの採血の前に投与される、請求項28に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6−1】
image rotate

【図6−2】
image rotate

【図6−3】
image rotate

【図6−4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公表番号】特表2010−515748(P2010−515748A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545662(P2009−545662)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/050644
【国際公開番号】WO2008/086426
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(509192651)クリーブランド バイオラブス, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】