説明

連接反復符号を用いる畳み込み符号

信号を変調し符号化するシステムおよび方法が開示される。メディアアクセス制御(MAC)層からのデータが畳み込み符号化される(1103)。MAC層からのデータのロバストな符号化(1102、1104)が、この畳み込み符号化(1103)の前または後に実施される。符号化されたデータは差動変調され(1107)、次いで、直交周波数分割多重化されて(1108)、電力線ネットワーク上を送信されるのに適合したOFDM出力信号が生成される。ロバストな符号化は、反復2符号化(1104)または反復N符号化(1104)とし得る。ロバストな符号化は、畳み込み符号化(1103)の前に外部符号(1102)を付加してもよい。ロバストな符号化は、畳み込み符号化(1103)の前に実施されるリードソロモン符号化(1102)としてもよい。ロバストな符号化を識別するためのオプションのヘッダ(702)も、ヘッダ(702)を復号する方法とともに開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、全体として、通信システムを対象とし、より詳細には、連接反復符号(concatenated repetition code)を使用してパケットを符号化する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
通信媒体として電力線を使用して信頼性の高い通信のコストを下げることに大いに注目が集まっている。これは電力線通信(PLC)と総称される。これまで、PRIME(Powerline-Related Intelligent Metering Evolution)など、PLCを標準化しようという試みがなされてきた。PRIMEは、40〜90kHzのCENELEC A帯域で動作するOFDM(直交周波数分割多重)に基づく電力線技術の暫定規格である。本明細で参照する現在または既存のPRIME規格は、PRIMEアライアンス技術ワーキンググループが定めたPRIME R1.3E暫定規格(「PRIME R1.3E」)およびそれよりも前のバージョンの暫定規格である。
【0003】
図1に、副基地局101を住宅102a〜102nに接続する典型的な電力分配システムを示す。副基地局101からの中電圧(MV)用電力線103により、数10キロボルト程度の電圧が伝送される。変圧器104は、MV電力を低電圧(LV)電力に降圧し、交流100〜240V程度の電圧がLV線105を伝わる。変圧器104は、典型的には、50〜60Hz程度の極めて低い周波数で動作するように設計されている。変圧器104があるので、LV線105とMV線103の間では、高周波信号、例えば、100kHzよりも高い周波数の信号は通さない。LV線105は、典型的には、住宅102a〜102nの外に設置されるメーター106a〜106nを介して顧客に電力を供給する。パネル107などのブレーカパネルは、メーター106nと住宅102n内にある電気配線108の間のインターフェースを提供する。電気配線108は、住宅102nにあるコンセント110、スイッチ111、その他の電気器具に電力を供給する。
【0004】
図1に示す電力線トポロジを用いて、住宅102a〜102nへの高速通信を実現することができる。メーター106a〜106nで、LV電力線105に電力線通信(PLC)モデム112a〜112nが結合され得る。PLCモデム112a〜112nを用いて、MV/LV線103、105を介してデータ信号を送受信する。このようなデータ信号を用いて、通信システム、高速インターネット、電話通信、テレビ会議、ビデオの配信、その他類似のサービスを提供し得る。電力伝送ネットワークを介して遠距離通信情報やデータ信号を伝送することにより、加入者102a〜102nそれぞれに新たなケーブルを敷設する必要がなくなる。このように、既存の電気分配システムを利用してデータ信号を搬送することによって、コストを大幅に削減することができる。電力線を介してデータを送信する一方法では、電力信号の周波数とは異なる周波数の搬送波信号を使用する。この搬送波信号は、送信すべきデータによって変調される。代替として、PLCモデム113を家庭の電気配線108を介してMV/LV電力線に結合して、データ信号を送受信してもよい。
【0005】
住宅102a〜102nのPLCモデム112a〜112nは、MV/LV電力グリッドを使用してコンセントレータ114にデータ信号を送出し、かつコンセントレータ114からデータ信号を受信するが、そのために配線を追加する必要はない。コンセントレータ114は、MV線103またはLV線105に結合すればよい。モデム112a〜112nは、高速ブロードバンドインターネット接続、ナローバンド制御アプリケーション、低帯域データ収集アプリケーションなどのアプリケーションに対応し得る。家庭環境においては、モデム112a〜112nにより、温調、空調、照明、セキュリティといったホームオートメーションやビルディングオートメーションが実現し得る。家庭外では、電力線通信ネットワークにより、街路照明の制御や電力メーターによる遠隔データ収集が実現される。
【0006】
電力線ネットワークを通信媒体として使用することに伴う問題は、電力線がノイズや干渉の影響を受けることである。電力線ケーブルは、例えば、AM帯放送ラジオ信号、海事通信、電力線に結合した電気器具からのノイズに影響される。ノイズは、電力線に沿って伝播し、通信信号に混入し、それによって、通信信号が破損することがある。電力線ネットワークを使用することに伴う別の問題は、ケーブルの構造に起因するものである。MV電力線およびLV電力線では、ケーブルの内部は一群の位相線を含み、各位相線は、3つの供給位相の1つを搬送する。無線周波数では、これら個々の線の間の容量に起因して、1本の線を伝わる信号が近隣の線に漏れたり混入したりする。この位相線間混入により、位相シフトその他の干渉が起きることがある。従って、これらの線に沿って伝播した後では、各線の通信信号の成分は、もはや互いに位相が合わない状態になっており、位相や振幅が異なってしまっている。受信側では、改変された受信信号を復号し元の信号を再構築しようと試みるが、このような混入や干渉が起こると、受信側で問題が生じる。
【0007】
既存のPRIMEシステムは低電圧(LV)電力線で良好に動作するが、中電圧(MV)線ではチャネル環境がより過酷になる。例えば、MV線では、LV線よりもバックグラウンドノイズが大きく、従って、MV線では信頼性の高い通信ができないことがある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の実施形態によれば、現在のPRIMEシステムで用いる前方誤り訂正(FEC)を変更することによって、PLCネットワークの過酷なチャネル環境においてより信頼性の高い通信が実現される。
【0009】
本明細書で説明する符号化システムは、既存のPRIME R1.3E暫定規格と並立することができ、かつ、実施が簡便で、PRIME R1.3E暫定規格を大幅に変更する必要はない。本開示では、連接反復符号を用いる新しい符号化方式を説明する。この符号化方式により、ノイズのあるMV電力線およびLV電力線を介する送信に関連する問題が解決される。本明細書では、現在のPRIME R1.3E暫定規格と下位互換性があるPHY層プロトコル・データ・ユニット(PPDU)フォーマットも説明する(「PHY」とは、国際標準化機構によるOSI(open system interconnection)活動のOSIモデルの物理層のことである)。下記で説明する改変されたPRIMEシステムを本明細書では「ロバストなPRIME」システムと称する。
【0010】
本発明の実施形態によれば、現在のPRIMEシステムに対して、よりロバストな符号化が提供される。この符号化は、送信されるPPDUに、例えば、リードソロモン符号(RS符号)または反復符号を追加することを含み得る。こうすると、ノイズのあるMV線およびLV線を介して送信した後でデータを復元することができる。現在のPRIMEシステムは、最大で63個のOFDM記号に対応しており、ペイロード中の各OFDM記号は、96個のデータ副搬送波および1個のパイロット副搬送波を含む。RS符号が対応する最大出力は255バイトであり、これが、一度にRS符号化し得る記号数を制限している。変調のタイプも、一度にRS符号化し得る記号数に影響を及ぼす。本発明の実施形態では、ロバストなPRIMEシステムが送信するデータを分割して、RS符号器で処理し得るより小さなサブパーツにする。例えば、ロバストなPRIMEシステムが63個の記号を送信する必要がある場合、これらの記号をまず区画して、より小さな群にしなければならない。ここで、これら各群が含む記号数は、選択した変調方式に対してRS符号化し得る数以下にする。このロバストなPRIMEシステムは、大記号群を区画して部分群にしてロバストなPRIME送信器および受信器がそれぞれ各群を同じように扱えるようにする方法をあらかじめ定義し得る。
【0011】
このロバストなPRIMEシステムは、一実施形態では、ロバストなMCSに対応するために改変したPPDUヘッダを用いる。ロバストなデータ復号に対応するには、受信器はヘッダを復号することができなければならない。従って、ヘッダのロバスト性を高めることが望ましい。一実施形態では、ヘッダに対して最もロバストな(すなわち、データレートが最小の)MCSを用いる現在のPRIME手法がそのまま用いられる。代替の一実施形態では、ヘッダの符号化には、データの符号化の方式よりもさらにロバストな方式を用いる。
【0012】
ロバストなPRIMEフォーマットのPPDUは、現在のPRIMEフォーマットのPPDUと並立しなければならない。一実施形態では、PRIME R1.3E受信器は、受信したPRIME R1.3E PPDUを識別し復号することができなければならず、かつ、ロバストなPRIME PPDUをPRIME R1.3E PPDUとして復号してはならない。好ましい一実施形態では、ロバストなPRIME PPDUのヘッダは、PRIME R1.3E受信器が誤ったポジティブCRCを受ける可能性が少ないように選択される。ロバストなPRIME受信器は、PRIME R1.3E PPDUおよびロバストなPRIME PPDUの両方を受け取り、復号することができる。PPDUヘッダのフォーマットは、これらの条件を満たすように選択すべきである。
【0013】
一実施形態では、送信器は、畳み込みエンコーダと、この畳み込みエンコーダに結合されるロバストな符号器とを含む。これらの畳み込みエンコーダおよびロバストな符号器は、メディアアクセス制御(MAC)層からデータを受け取り、符号化された信号を生成する。差動変調器は、この符号化信号から差動変調された信号を生成する。この差動変調器に結合される直交周波数分割多重(OFDM)回路は、電力線ネットワーク上を送信されるのに適合したOFDM出力信号を生成する。ロバストな符号器は、畳み込みエンコーダの出力に結合するか、または差動変調器の入力に結合する反復2符号(repetition 2 code)回路とし得る。このロバストな符号器は、MAC層からのデータに、反復2符号ではなく反復N符号を追加してもよい。あるいは、このロバストな符号器は、畳み込みエンコーダの前に外部符号を付加してもよい。この外部符号はリードソロモン符号とし得る。ロバストな符号器は、MAC層からのデータを区画して、各部分群のサイズが256バイト未満である部分群とすることができる。各部分群のサイズは、差動変調器が適用する変調のタイプに基づいて選択し得る。
【0014】
別の実施形態では、ある装置が信号を変調し符号化する。メディアアクセス制御(MAC)層からのデータは畳み込み符号化される。MAC層からのデータのロバスト符号化は、畳み込み符号化の前または後で実施される。符号化されたデータは差動変調され、次いで、直交周波数分割多重化されて、電力線ネットワーク上を送信されるのに適合したOFDM出力信号が生成される。ロバスト符号化は、反復2符号化または反復N符号化とし得る。このロバスト符号化では、畳み込み符号化の前に外部符号を付加し得る。ロバスト符号化は、畳み込み符号化の前に実施されるリードソロモン符号化とし得る。
【0015】
さらなる実施形態では、電力線ネットワークからPHYプロトコル・データ・ユニット(PPDU)を受け取り、このPPDU内の第1のヘッダを復号することによって信号が復号される。次いで、このシステムは、第1のヘッダが第1のフォーマットに従って正常に復号されたかどうかを検証する。次いで、PPDU内の第2のヘッダが復号され、このシステムは、第2のヘッダが第2のフォーマットに従って正常に復号されたかどうかを検証する。次いで、第1または第2のフォーマットに従ってPPDU内のペイロードが復号される。第1のフォーマットは、PRIME R1.3Eフォーマットとし得る。第2のフォーマットは、PRIME R1.3Eフォーマットにおいて利用可能でない変調および符号化を識別し得る。PPDUペイロードを復号する方法は、第1のヘッダまたは第2のヘッダあるいはその両方が正常に復号されたかどうかに依存して決定される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】3相電力線通信用のシステムを示す図である。
【0017】
【図2】PRIME R1.3E暫定規格に従ったPHY送信器の構成要素を示す図である。
【0018】
【図3】畳み込みエンコーダの出力で反復符号を用いるPHY送信器の構成要素を示す図である。
【0019】
【図4】インターリーバ・ブロックの後に反復符号を配置したPHY送信器の構成要素を示す図である。
【0020】
【図5】リードソロモン符号などの外部符号を付加したPHY送信器の構成要素を示す図である。
【0021】
【図6】PRIME R1.3E暫定規格に従ったヘッダフィールドを有するパケットを示す図である。
【0022】
【図7】一実施形態に従ったロバストなPRIMEパケットフォーマットの一例を示す図である。
【0023】
【図8】PRIME R1.3E暫定規格に従ったPPDUヘッダフィールドを示す図である。
【0024】
【図9】受信したPPDUをPRIME R1.3E受信器が復号する際に用いる手順の一例を示す図である。
【0025】
【図10】受信したPPDUをロバストなPRIME受信器が復号する際に用いる手順の一例を示す図である。
【0026】
【図11】畳み込みエンコーダの前にリードソロモン符号などの外部符号が付加され、畳み込みエンコーダの後に反復2符号が付加されるPHY送信器の構成要素を示す図である。
【0027】
【図12A】周波数ドメイン差動変調に対する差動2相位相偏移変調(DBPSK)のマッピングを示す図である。
【0028】
【図12B】周波数ドメイン差動変調に対する差動4相位相偏移変調(DQPSK)のマッピングを示す図である。
【0029】
【図12C】周波数ドメイン差動変調に対する差動8相位相偏移変調(D8PSK)のマッピングを示す図である。
【0030】
【図13】一実施形態に従った逆高速フーリエ変換(IFFT)における副搬送波マッピングを示す図である。
【0031】
【図14】代替の一実施形態に従ったデータフレーム構造を示す図である。
【0032】
【図15】代替の一実施形態に従った肯定応答(ACK)/否定応答(NACK)フレームを示す図である。
【0033】
【図16A】代替の一実施形態に従った2相位相偏移変調(BPSK)、差動2相位相偏移変調(DBPSK)、およびロバスト変調(ROBO)でのデータ符号化を示す。
【0034】
【図16B】代替の一実施形態に従った差動4相位相偏移変調(DQPSK)でのデータ符号化を示す。
【0035】
【図17】一実施形態に従ったIFFTの入出力構成を示す図である。
【0036】
【図18】電力線通信用の送信器および/または受信器回路と3つの位相電力線を接続する例を示す図である。
【0037】
【図19】電力線通信用の送信器および/または受信器回路と3つの位相電力線を接続する代替例を示す図である。
【0038】
【図20】電力線通信用の送信器および/または受信器回路と3つの位相電力線を接続する別の代替例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。本発明は、多くの異なる形態で実施することができるが、本明細書に記載する実施形態に限定されると解釈すべきではなく、これらの実施形態は、本開示にもれがなく完全であり、かつ、本開示により本発明の範囲が当業者にすべて伝わることを意図して提供されるものである。当業者なら、本発明の様々な実施形態を利用することができよう。
【0040】
図2に、既存のPRIME規格に従ったPRIME PHY R1.3E送信器200を示す。PHY層は、メディアアクセス制御(MAC)層からPHY層プロトコル・データ・ユニット(PPDU)の入力を受け取る。このPPDUは、巡回冗長検査(CRC)ブロック201を通ってパスし、次いで、畳み込みエンコーダ202で畳み込み符号化され、スクランブラ203でスクランブルがかけられる。スクランブラ203の出力はインターリーバ204でインターリーブされ、次いで、副搬送波変調器205で差動変調される。この変調は、差動2相位相偏移変調(DBPSK)方式、差動4相位相偏移変調(DQPSK)方式、または差動8相位相偏移変調(D8PSK)方式を用いて行われる。逆高速フーリエ変換(IFFT)ブロック206およびサイクリック・プレフィックス・ジェネレータ207でOFDMを実施する。送信器200における前方誤り訂正(FEC)は、拘束長が7でレート1/2の畳み込み符号化である。
【0041】
送信器200で採用される変調および符号化など、既存のPRIME規格に記載の伝送方法は、典型的なLVネットワークで問題なく使えることがわかっている。しかし、よりノイズが多いMVネットワークなどの過酷なチャネル環境で性能を向上させるにはいくつかの変更が必要である。具体的には、PRIME規格に別の変調および符号化の方式(MCS)を追加することにより、信頼性の高い通信で許容可能な最小信号雑音比(SNR)を下げることができる。しかし、このように別の変調および符号化の方式に変更すると、データレートが下がってしまう。
【0042】
現在のPRIME規格は、DBPSK変調、DQPSK変調、D8PSK変調で、レート1/2の畳み込み符号を用いる場合と用いない場合の6種類のMCSに対応している。これらの変調および符号化の方式の最小データレートでは、加法性白色ガウス雑音(AWGN)チャネルでビット誤り率(BER)が10−5にするには、約4dbのSNRが必要であることがわかっている。PRIMEシステムはより低いSNRで動作することが望ましいことがある。より低いSNRで機能するには、PRIMEシステムはよりロバストな変調および符号化の方式(MCS)を必要とするが、その結果、システムのデータレートが下がることがある。
【0043】
一実施形態では、畳み込み符号の出力で反復符号を付加することによってMCSの組合せを強化することができる。例えば、図3に、畳み込みエンコーダ302の出力で反復2符号(repetition 2 code)301を用いるPHY送信器300を示す。反復2符号は、AWGNチャネルでSNRを3dB改善させることが知られており、他の形態のチャネルではさらに改善度が高くなることがある。図3に示す送信器の実施形態の利点の1つは、実装が簡単なことである。既存のPRIME規格の変更を最小限に抑えながら、既存のPRIME PHY送信器に反復2符号を付加することができる。必要に応じて、反復2符号の代わりに反復N符号を付加し得ることを理解されたい。
【0044】
図4に示す別の実施形態では、PHY送信器400において、インターリーバ・ブロック402の後に反復符号401を配置する。反復符号401は、反復2符号としてもよいし、反復N符号としてもよい。
【0045】
図5に示すさらに別の実施形態では、PHY送信器500にリードソロモン符号などの外部符号を付加する。リードソロモン符号(RS符号)501は、外部符号として畳み込みエンコーダ502の前に付加する。リードソロモン符号は、バースト誤りを補正するのに用いられる符号としてよく知られている。1つのPPDU内の記号数に基づいて、かつ、ガロア域(GF)2を用いると、下記で説明するようにRSパラメータ(n,k,t)を求めることができる。畳み込み符号の出力ビット数は、OFDM記号数(NSYM)と、記号当たりの変調された搬送波数(NSC、PRIME R1.3Eでは96に等しい)と、変調された搬送波当たりのビット数(NMB、DBPSK、DQPSK、D8PSKではそれぞれ1、2、3に等しい)との積によって与えられる。従って、リードソロモン符号の出力バイト数は、下記の式で計算される。
【数1】

【0046】
ここで、畳み込み符号のレートRCCは1または1/2であり、レートが1または1/2である場合のパッドビット数PCCは0または8である。
【0047】
短縮リードソロモン符号(255,255−2×t)は、t=4およびt=8に対し用いることができる。符号化効率の理由で、一実施形態ではt=4を用いる。
【0048】
数式1で示した公式は、下記の場合を除きあらゆる場合に当てはまる。
1.NRS−OUT<t:これは、PPDU当たりの記号数が最小数未満になる場合に生じる。最小数は、用いる変調および符号化の方式によって決まる。一実施形態では、小さなPPDUサイズ(すなわち、最小数未満)を無効にしてリードソロモン符号化を可能にする。
2.NRS−OUT>255:これは、例えば、DBPSKでレート1/2の符号化の場合のOFDM記号数が42よりも大きい場合、または、DQPSKでレート1/2の符号化の場合のOFDM記号数が21よりも大きい場合、あるいはD8PSKでレート1/2の符号化の場合のOFDM記号数が14よりも大きい場合に生じる。
【0049】
一実施形態では、NRS−OUT>255の場合のパケットを扱うために、入力パケットをセグメント化してほぼ等しいサイズのリードソロモンパケットにする。セグメント数は、S=ceil(NRS−OUT)/255として計算される。NSEG=floor(NRS−OUT/S)およびMSEG=mod(NRS−OUT,S)と定義すると、s番目のセグメントからのリードソロモン出力バイト数は、s=1,...,MSEGの場合、(1+NSEG)に等しく、s=MSEG+1,...,Sの場合、NSEGに等しい。
【0050】
表1、表2、および表3から、それぞれDBPSK、DQPSK、D8PSK用のリードソロモンパラメータが得られる。RS符号パラメータは、OFDM記号数および選択された変調方式にのみよって決まる。このRSエンコーダ情報を表すのに、PPDUヘッダでの他のパラメータ化は不要である。RSエンコーダへの入力に対するパディングビット数が6バイトよりも大きくなることはないので、PPDUヘッダ内のフィールドを用いてパッド長情報を記録することができる。
【0051】
PPDU当たりOFDM記号数を39としたDBPSKの場合、この方式を用いた1つのPPDUは、((39・96・1・1/2)−8)=1864ビットを、畳み込みエンコーダへの入力として搬送することができる。畳み込み符号化に対するPRIMEペイロードフォーマットにおいてフラッシングビットを8個とすると、これはn=233バイトに相当する。対応するkはtによって決定し得る。
【0052】
表1に示すように、RS符号化は、OFDM記号を最大で42個としたDBPSKで機能する。PPDU当たりOFDM記号が42個よりも多いDBPSKでは、値nが大きくなりすぎる。例えば、OFDM記号を43個としたDBPSKでは、1つのPPDUは、((43・96・1・1/2)−8)=2056ビットを、畳み込みエンコーダへの入力として搬送することができる。これは、n=257バイトに相当し、制限値255よりも大きい。この場合、43個のOFDM記号を分割して2つ以上の記号部分群(例えば、21個のOFDM記号群および22個のOFDM記号群)にすることができる。次いで、これら2つのOFDM記号部分群を、表1のデータを用いてRSエンコーダによって別個に符号化する。次いで、こうして得られた2つのRSエンコーダ出力のビットを、畳み込みエンコーダによって符号化する。一実施形態では、ヘッダ情報ビットをセーブするために、上記組合せを予め定義してもよい。PPDUのサイズに合わせるために、ゼロをさらに8個用いて畳み込みエンコーダをゼロ状態にすることができる。OFDM記号が43個のPPDUの上記の例では、21個の記号群と22個の記号群の2つを別々に符号化する。こうすると、これら2つの群の記号に対して、表1から、それぞれn=125およびn=131になる。畳み込みエンコーダにゼロをさらに8個配置することによって、畳み込みエンコーダからの出力ビット数が、(125・8+131・8+8+8)・2=4128ビットになり、4128/96=43個のOFDM記号に適合する。PPDU長が43よりも長い場合、PPDUを2つ以上のより小さな記号部分集合に分割することによって類似の処理を適用することができる。OFDM記号が42個よりも多いPPDUをRS符号化する場合の最適な組合せは、シミュレーションによって求めることができる。他のMCS方式の場合、上記のDBPSKの場合と同じ議論が成り立つ。PPDUヘッダは必要に応じて別途設計し得る。
【0053】
下記の表1に、DBPSK RSエンコーダに対応するデータを示す。
【表1】

【0054】
下記の表2に、DQPSK RSエンコーダに対応するデータを示す。
【表2】

【0055】
下記の表3に、D8PSK RSエンコーダに対応するデータを示す。
【表3】

【0056】
表4〜6に、反復2符号が内部符号として用いられる場合のRSパラメータ(n,k,t)を示す。これらの表は例であり、反復N符号で容易に拡張し得る。これらの表に列記する記号数よりも多いOFDM記号を送出するために、このシステムは、上記で説明したように、OFDM記号をより小さな部分集合に区画することができる。例えば、畳み込み符号を用いないDBPSKでは、43個のOFDM記号を区画して、22個の記号の部分群および21個の記号の部分群にすることができる。こうして区画されたものは、22個のOFDM記号および21個のOFDM記号としてそれぞれ独立にRSエンコーダで符号化することができる。次いで、これら2つのRSエンコーダ出力ストリームは、畳み込みエンコーダで一緒に符号化される。大きなサイズのOFDM記号PPDUの最適な区画は、シミュレーションの結果から決めることができる。
【0057】
下記の表4に、反復2符号を内部符号として用いるDBPSK RSエンコーダに対応するデータを示す。
【表4】

【0058】
下記の表5に、反復2符号を内部符号として用いるDQPSK RSエンコーダに対応するデータを示す。
【表5】

【0059】
下記の表6に、反復2符号を内部符号として用いるD8PSK RSエンコーダに対応するデータを示す。
【表6】

【0060】
畳み込み符号器を使用しない場合でも、RS符号化を用いることができる。この場合のRSパラメータ(n,k,t)を表7〜9に示す。先に述べたように、これらの表に記載のOFDM記号数よりも多いOFDM記号を送出するには、PPDUを区画して、それぞれより少ない数のOFDM記号を含むサブパーツにすればよい。例えば、DBPSKは、最大で21個のOFDM記号まで扱うことができる。畳み込み符号を用いないDBPSKでPPDUが42個のOFDM記号を有する場合、このPPDUを、21個のOFDM記号のサブパーツ2つに区画することができる。次いで、この21個のOFDM記号のサブパーツをRSエンコーダでそれぞれ独立に符号化する。大きなサイズのPPDUの最適な区画は、シミュレーションの結果から決めることができる。
【0061】
下記の表7に、畳み込み符号化を用いないDBPSK RSエンコーダに対応するデータを示す。
【表7】

【0062】
下記の表8に、畳み込み符号化を用いないDQPSK RSエンコーダに対応するデータを示す。
【表8】

【0063】
下記の表9に、畳み込み符号化を用いないD8PSK RSエンコーダに対応するデータを示す。
【表9】

【0064】
他の実施形態は、より低いレートの畳み込み符号を用いるか、あるいは、2つの畳み込み符号を含むターボ符号を用いることを含む。これらの実施形態はより複雑であり、PRIME R1.3Eから大きく異なっているが、より低いレートの畳み込み符号またはターボ符号を用いる送信器により、この場合もロバストなMCSが提供される。
【0065】
下記では、ロバストなMCSに対応するPPDUヘッダの変更例を明らかにする。ロバストなデータ復号に対応するために、受信器はまず、ヘッダを復号可能でなければならない。従って、ヘッダのロバスト性を高めることが望ましい。一実施形態では、ヘッダに最もロバストな(すなわち、データレートが最小の)MCSを用いる現在のPRIME方式を踏襲している。代替の一実施形態では、ヘッダ符号化にデータ符号化の方式よりもさらにロバストな方式を用いる。
【0066】
スペクトル効率が同じ場合、ある種の方式が他の方式よりも明らかによい。例えば、レート1/2の符号を用いるDQPSKのレートは、符号化を行わないDBPSKのレートと同じだが、それよりも性能がよい。このことを考慮に入れて、いくつかの方式を取り除いて試験を簡単にする。下記の表10に、ヘッダに対するMCSの組合せの例を示す。PRIME PPDUヘッダは、4ビットのプロトコル・フィールドを含む。図6に、PRIME R1.3Eの暫定規格によるパケット600を示す。パケット600は、4ビットのプロトコル・フィールドを含むヘッダフィールド601を有する。このプロトコル・フィールド内の符号により、PPDUを符号化するのに用いる変調および符号化の方式(MCS)が識別される。ロバストなPRIMEシステムでは、ある種のMCSエントリ、例えば、符号化を行わないDBPSK、符号化を行わないDQPSKなどは、充分な性能が得られないのであれば用いない。レート1/2の符号を反復するDBPSK、レート1/2の符号を反復するDQPSKなどの、追加のMCSがロバストなPRIMEシステムに追加される。
【表10】

【0067】
一実施形態では、ロバストなPRIMEシステムは、現在のPRIME R1.3E暫定規格との下位互換性を維持する。ロバストなPRIMEシステム用のヘッダの変調および符号化の方式では、ヘッダに対する変調および符号化の方式が最もロバストな単一パケットフォーマットを用いることができる。しかし、PRIME R1.3E受信器がロバストなPRIMEヘッダを復号することができないため、この構成は下位互換性がない。代替として、ロバストなPRIME受信器は、PRIME R1.3E送信器からパケットを受け取り、それを復号することができる。
【0068】
別の実施形態では、ロバストなPRIMEモデムは、PRIME R1.3EパケットおよびロバストなPRIMEパケットの両方を送受信することができる。そのため、ロバストなPRIMEモデムは、PRIME R1.3Eモデムと通信する際にはPRIME R1.3Eパケットを送信し、別のロバストなPRIMEモデムと通信する際にはロバストなPRIMEパケットを送信する。このモードに対応するために、ロバストなPRIMEモデムは、そのバージョン番号を、初期接続セットアップ中に他のロバストなPRIMEモデムに示す必要がある。その後、2つのロバストなPRIMEモデム間でさらに通信を行う場合には、ロバストなPRIMEパケットフォーマットを用いればよい。代替の一実施形態では、2つのロバストなPRIMEモデムは、それらの間の接続が良好な場合にはPRIME R1.3Eパケットを用いて通信を行い、接続が良好でない場合にはロバストなPRIMEフォーマットを用いて通信を行う。
【0069】
上記の実施形態に伴う問題は、多数のロバストなPRIMEモデムの近くにあるPRIME R1.3E受信器の挙動である。同じ線上にあるPRIME R1.3E受信器は、近隣のロバストなPRIMEモデムが送出するPPDUプリアンブルを検出し、このPPDUのヘッダを、あたかもそれがPRIME R1.3Eフォーマットであるかのように復号しようと試みることに留意されたい。CRC長は8ビットであるので、こうしたヘッダを復号したものの約1/256が誤ったCRCパスを示してしまう。こうした誤ったポジティブに対し、PRIME R1.3E受信器はパケットを誤って用いることがあり、その結果、ネットワークの挙動が不安定になる。
【0070】
上記問題には少なくとも2つの解が存在する。1つの解は、PRIME R1.3E MCSフォーマットで充分にロバストな通信が実現されないときにのみロバストなPRIMEヘッダを用いるという要件を設定することである。しかし、このような要件は、例えば、その線上でSNRが変動する場合や送信器と受信器がPRIME R1.3E PPDUを用いると確認し合った後でSNRが劣化する場合には、実際の動作条件にうまく変換されないことがある。
【0071】
第2のより信頼性の高い解は、ロバストなPRIMEパケットフォーマットを図7に示すように用いることである。ロバストなPRIMEパケット700では、有効なPRIME R1.3Eフォーマットヘッダ701が、ロバストなPRIMEヘッダ702に加えてロバストなPRIMEパケット内に埋め込まれている。そのため、近隣のPRIME R1.3E受信器は、ほとんどのロバストなPRIMEパケットヘッダを正しく復号することになり、その結果、挙動が安定する。さらに、用心のため、前記PRIME R1.3Eヘッダ内のフィールドの一部が予約フィールド値を用いて、PRIME R1.3E受信器がロバストなPRIMEパケットの付加部分を復号しないようにし得る。ロバストなPRIMEモデムはPRIME R1.3Eモデムと通信することができるが、PRIME R1.3EモデムはやはりロバストなPRIMEパケットを受信することはできない。
【0072】
既存のPRIME R1.3E暫定規格との下位互換性は、ロバストなPRIMEシステムを使用する際の重要な問題になり得る。一実施形態では、PRIME R1.3E暫定規格用のPPDUフォーマットを改変して、ロバストなPRIMEシステムを既存のPRIME R1.3E暫定規格と下位互換性があるようにし得る。図6に、既存のPRIME R1.3E PPDUフォーマット600を示す。PRIMEヘッダの最初の4ビットは、表10に示すようなMCS情報を表す。PRIME R1.3E暫定規格との下位互換性を保つために、図7に示すロバストなPRIME PPDUフォーマット700を、例えば反復2符号と合わせて使用することを提案する。他の符号の場合には、新しいPPDU内のヘッダ長を変更することができる。ロバストなPRIME PPDU700用のヘッダフォーマットは、図8に示すように、表10内の該当するビットを含むプロトコル・フィールド801を有するPRIME R1.3Eヘッダフォーマットとすることができる。
【0073】
ロバストなPRIME PPDUフォーマット700では、PRIME R1.3Eヘッダ701内のMCS情報用のビットは、PRIME R1.3E暫定規格のオリジナル部分以外の表10内の「予約」部分のビットに設定し得る。あるいは、ロバストなPRIME送信器は、「予約」部分にフラグビットを追加して、PPDUがロバストなPRIME規格に準拠しているか否か通知してもよい。
【0074】
PRIME R1.3E受信器の場合、PRIME R1.3E PPDUを受け取り、そのヘッダが有効なPRIME R1.3E PPDU情報、例えば、図8に示すフィールド、を含む場合、このPRIME R1.3E受信器は通常通りペイロードを復号する。ロバストなPRIME PPDUを受け取った場合、このPRIME R1.3E受信器はまずヘッダを復号しようと試みるが、ヘッダ情報がPRIME R1.3E PPDUフォーマットに適合しないことがわかる。例えば、ヘッダ内の最初の4つのプロトコル・ビットは、PRIME R1.3E「予約」ビットに設定され得る。受信器はこのPPDUを廃棄してもよいし、かつ/または、より高位の層がMACアドレスを処理することによってこのPPDUを扱ってもよい。好ましくは、PPDU長情報をより高位の層に転送してCSMAスケジューリングを行う。
【0075】
図9に、受信したPPDUをPRIME R1.3E受信器が復号する際に用いる手順の例を示す。ステップ901で、PRIME R1.3E受信器はPPDUプリアンブルを探し、ステップ902で、受信したPPDUを識別する。ステップ903で、PRIME R1.3E受信器は、PPDUのヘッダを復号し、ステップ904で、ヘッダが正常に復号されたかどうか判定する。ヘッダが正常に復号されなかった場合、PRIME R1.3E受信器はステップ901に戻り、次のPPDUを識別する。ヘッダが正常に復号された場合、ステップ905で、PRIME R1.3E受信器は、このヘッダがPRIME R1.3Eヘッダかどうか判断する。ヘッダがPRIME R1.3Eヘッダでない場合、処理はステップ901に戻り、次のPPDUを識別する。PRIME R1.3Eヘッダが検出されると、ステップ906で、PRIME R1.3E受信器は、PPDUペイロードを復号する。
【0076】
適切に設計されていれば、ロバストなPRIME受信器は、PRIME R1.3E PPDUおよびロバストなPRIME PPDUの両方を復号することができる。図10に、受信したPPDUをロバストなPRIME受信器が復号する際に用いる手順の例を示す。ステップ1001で、ロバストなPRIME受信器は、PPDUプリアンブルを探し、ステップ1002で、受信したPPDUを識別する。ロバストなPRIME受信器は、図6に示すPRIME R1.3Eフォーマットまたは図7のロバストなPRIMEフォーマットでPPDUを受信すればよい。いずれの場合も、ステップ1003で、ロバストなPRIME受信器は、レート1/2の畳み込み符号を含むPPDUからPRIME R1.3Eヘッダを復号しようと試み、ステップ1004で、ヘッダが正常に復号されたかどうか判定する。
【0077】
PPDUがPRIME R1.3Eフォーマットの形式であり、かつ、ステップ1003での復号が正常に行われたとすると、処理はステップ1005に移行し、PRIME R1.3Eヘッダであることを確認する。表10の例に示すような、プロトコル・フィールドの「予約」部分に対応するビットはこの場合存在せず、ロバストなPRIME受信器は、現在のPPDUがPRIME R1.3E PPDUであると認識する。ロバストなPRIME受信器は、誤ってPRIME R1.3Eヘッダを復号して、CRCもパスしてしまうことがあるので、ステップ1006で、ロバストなPRIME受信器は、2回目のロバストなヘッダ復号を行い、ステップ1007で、復号が正常に行われたかどうか判定する。ステップ1006および1007でヘッダがCRCにパスした場合、このPPDUはロバストなPRIMEパケットであり、処理はステップ1008に移行し、ロバストなPRIME復号を行う。ステップ1006および1007でヘッダがCRCにパスしない場合、ステップ1009でPRIME R1.3E復号を行う。ヘッダの最初の4ビットは、正しいMCS情報を記述しており、ヘッダが正しく復号された後で、ロバストなPRIME受信器はペイロード情報を復号することができる。
【0078】
ステップ1004でロバストなPRIME受信器がPRIME R1.3Eヘッダを正しく復号できない場合、ロバストなPRIME受信器は、ステップ1010で、PPDUのロバストなPRIMEヘッダ領域を復号しようとする。ただし、ペイロードの復号は、受信したPRIME R1.3E PPDUのペイロード部分に対して行われる。ステップ1011でロバストなPRIMEヘッダがCRCにパスする場合、ステップ1012でロバストなPRIMEペイロードが復号される。ステップ1011でロバストなPRIMEヘッダがCRCにパスしない場合、処理はステップ1001に戻り、次のPPDUを探す。
【0079】
ステップ1002でロバストなPRIME PPDUを受信すると、ロバストなPRIME受信器はまず、ステップ1003で、レート1/2の畳み込み符号を含むPRIME R1.3Eヘッダを復号する。復号されたヘッダの最初の4ビットが表10に示す「予約」部分のビットと一致すれば、ロバストなPRIME受信器は、ステップ1005で、現在のPPDUがロバストなPRIME PPDUであると認識することになる。ステップ1006で、ロバストなPRIME受信器は、PPDU内のロバストなPRIMEヘッダを識別する。ロバストなPRIME受信器はまた、ステップ1006で、ロバストなPRIMEヘッダを復号する。ステップ1007でロバストなPRIMEヘッダ内の復号されたビットを用いて、ロバストなPRIME受信器はステップ1008でペイロードを復号する。
【0080】
ステップ1005でロバストなPRIME受信器がPRIME R1.3Eヘッダを正しく復号できない場合、ロバストなPRIME受信器は、ステップ1013でロバストなPRIME PPDUヘッダを復号しようと試みる。ロバストなPRIMEヘッダはPRIME R1.3Eヘッダよりもロバスト性が高いので、ステップ1014でロバストなPRIMEヘッダが正しく復号され識別される確率が高い。ステップ1014でロバストなPRIMEヘッダが識別されると、ステップ1015でペイロードが復号される。そうでない場合には、処理はステップ1001に戻り、次のPPDUを探す。
【0081】
図6に示すように、PRIME R1.3Eプリアンブル長は2.048ミリ秒であり、最大で−2dBのSNRで正確な検出および配置が行われると思われる。SNRをもっと低くして動作させることが必要とされる場合には、プリアンブル長を長くすべきである。異なる実施形態では、下位互換性が望まれるかどうかに応じて、プリアンブルを長くすることが可能である。
【0082】
一実施形態では、PRIME R1.3Eプリアンブルを、その中でいくつかのサンプルを繰り返すことによって拡張することができる。別の実施形態では、ロバストなPRIMEプリアンブルを、PRIME R1.3Eプリアンブルを2回繰り返したものとし得る。しかし、この実施形態には、近くにあるPRIME R1.3E受信器がこのプリアンブルの一部を検出し、残りのPPDUを復号しようと試みて、誤ったプリアンブル配置になるという欠点がある。
【0083】
別の実施形態では、ロバストなPRIMEプリアンブルはプレフィックス・シーケンスを含む。このプレフィックス・シーケンスは、PRIME R1.3Eプリアンブルと相関しておらず、後にPRIME R1.3Eプリアンブルが続くものである。この実施形態では、近くにあるPRIME R1.3E受信器がこのプリアンブルを正しく検出し、かつ、正しいプリアンブル配置を得ることが保証される。この実施形態では、PRIME中心周波数にダウンコンバートした後で「ベースバンド」で真のシーケンスが得られるようにプレフィックス・シーケンスを選択し得る。こうすると、ロバストなPRIMEプリアンブルの検出が簡単になる。
【0084】
さらに別の実施形態では、ロバストなPRIMEプリアンブルを、PRIME R1.3Eプリアンブルとは全く異なるものとし得る。簡単のため、先に述べたように、ロバストなPRIMEプリアンブルは、真の「ベースバンド」相当のものを有するように選択し得る。この実施形態の欠点は、PRIME R1.3E受信器がこのプリアンブルを検出することができず、使われていないチャネルの判断が正しくなされないことがあることである。
【0085】
図11に、別の実施形態のPRIME PHY送信器1100を示す。PHY層は、MAC層からのPPDU入力を受け取る。このPPDUは、CRCブロック1101を通ってパスし、次いで、リードソロモン符号1102が外部符号として付加される。RSパラメータ(n,k,t)は先に述べたように求めることができる。畳み込みエンコーダ1103の後で、反復2符号1104が付加される。必要に応じて反復2符号の代わりに反復N符号を付加し得ることを理解されたい。さらに、別の実施形態では、反復2符号1104をインターリーバ1106の後に配置してもよい。次いで、この信号をスクランブラ1105でスクランブルし、インターリーバ1106でインターリーブする。次いで、この信号を副搬送波変調器1107で差動変調する。この変調は、差動2相位相偏移変調(DBPSK)方式、差動4相位相偏移変調(DQPSK)方式、または差動8相位相偏移変調(D8PSK)方式を用いる。逆高速フーリエ変換(IFFT)ブロック1108およびサイクリック・プレフィックス・ジェネレータ1109でOFDMを実施する。
【0086】
送信器1100を使用して、図7に示すデュアルヘッダフォーマットのPPDUを生成し得る。さらに、このようなPPDUは、図10に示す処理を用いて復号することができる。
【0087】
一実施形態では、例えば、PRIME物理層仕様に準拠したシステムでは、周波数ドメイン差動符号化を用いてPPDUを変調する。このようなシステムが、「Draft Standard for Powerline-Related Intelligent Metering Evolution(電力線に関連するインテリジェントメータリングの進化についての暫定規格)」バージョンR1.3Eという名称の文献に開示されており、PRIMEプロジェクトによって発行されている。この開示全体をここで参照により本明細書に組み込む。PPDUペイロードは、1個のパイロット副搬送波と、記号当たり96,192ビットまたは288ビットを含む96個のデータ副搬送波とを用いて多重搬送波差動位相偏移変調(DPSK)信号として変調される。このPPDUのヘッダは、13個のパイロット副搬送波と、記号当たり84ビットを含む84個のデータ副搬送波とを用いてDBPSKで変調される。
【0088】
このPRIME送信器では、インターリーバから出力されるビットストリームは、それぞれMビットの群に分割される。ここで、Mビット群の最初のビットは最上位ビット(msb)である。PPDUは、それぞれ図12A〜12Cに示すDBPSK、DQPSK、またはD8PSKマッピングを用いる周波数ドメイン差動変調で変調される。下記の数式2は、M個の位相のMary−DPSK位相配置(constellation)を定義するものである。
【数2】

ここで、kは、OFDM記号中のk番目の副搬送波を表す周波数指標であり、k=1は位相基準パイロット副搬送波に対応し、sは、所与の副搬送波に対する変調器出力(複素数)であり、θは、下記のように得られる変調された信号の絶対位相を表す。
【数3】

【0089】
数式3は、ペイロードにおいてk>1のときに当てはまり、k=1の副搬送波は位相基準パイロットである。ヘッダが送出されるとき、k番目の副搬送波に割り付けられるパイロットは、k+1番目の副搬送波に割り付けられるデータの位相基準として用いられる。ここで、Δbk∈{0,1,...,M−1}は、位相配置エンコーダが供給するように、位相増分で符号化された情報を表す。DBPSK、DQPSK、D8PSKの場合、Mはそれぞれ2、4、8となる。
【0090】
変数Aは、シェーピングパラメータであり、位相配置の中心からの環半径を表す。プリアンブルのrmsパワーがOFDM記号のrmsパワーに類似していることが望ましく、こうすると、受信側で自動利得制御タスクを行う助けになる。
【0091】
OFDM記号は数学的な形式ではのように表現することができる。
【数4】

ここで、iは、i番目のOFDM記号を表す時間指標であり、0,1,...の値をとる。nは、サンプル指標であり、48≦n≦559(0から47までは、nはサイクリック・プレフィックス(NCP=48)の指標を表す)を満足する。s(k,i)は、副搬送波変調ブロックからの複素値である。
【0092】
図13に、一実施形態で用いられる複素512点IFFTに対する副搬送波マッピングを示す。図13に示すように、96個の副搬送波がマッピングされており、記号*は複素共役を表す。逆フーリエ変換後、記号は、48個のサンプルによって巡回拡張され、それによって、サイクリック・プレフィックス(NCP)が生成される。
【0093】
図14および図15に、代替の一実施形態のPHY送信器がサポートする2つのタイプのフレームを示す。図14は、OFDM PHYに対するデータフレーム構造1400を示す。各フレームは、プリアンブル1401で始まり、プリアンブル1401は、自動利得制御適合に加えて同期および検出にも用いられる。SYNCPブロックは+1が乗算された記号を表し、SYNCMブロックは−1が乗算された記号を表す。プリアンブル1401は、8個のSYNCP記号からなり、その後に、1.5個のSYNCM記号が続くが、隣り合う記号間にサイクリック・プレフィックスはない。最初の1個の記号は、先頭の点に対する二乗余弦シェーピングを含み、最後の半分の記号も、末尾の点に対する二乗余弦シェーピングを含む。このプリアンブルの後には、フレーム制御ヘッダ(FCH)1402に割り付けられた13個のデータ記号が続く。FCHは、データフレームを復調するのに必要とされる重要な制御情報を有する。次いで、データ記号1403が送信される。GIブロックは、保護区間を表す。保護区間は、サイクリック・プレフィックスを含む区間である。
【0094】
図15に、肯定応答(ACK)/否定応答(NACK)フレーム1500を示す。フレーム1500は、プリアンブル1501およびFCH1502のみからなる。FCH内のビットフィールドは、ACK/NACK信号を発生させる。代替の一実施形態では、例えば、PLC G3 OFDMに準拠したシステムでは、コヒーレント/差動2相偏移変調または差動4相偏移変調(BPSK、DBPSK、またはDQPSK)あるいはロバスト変調を用いて各搬送波信号を変調することができる。PLC G3物理層の仕様は、eRDF(Electricite Reseau Distribution France)が発行した「PLC G3 Physical Layer Specification(PLC G3物理層仕様)」という名称の文献である。この開示全体をここで参照により本明細書に組み込む。ロバスト変調は、DBPSKのロバスト性を高めたものであり、時間を長くし様々な周波数を用いて、システムが悪条件下で動作する能力を向上させる。前方誤り訂正符号化(FEC)は、通信パケットにおいては、フレーム制御情報(超ロバスト符号化)およびデータ(連接リードソロモン符号化および畳み込み符号化)の両方に適用される。
【0095】
マッピング・ブロックは、送信される信号が所与のトーンマップおよびトーンマスクに合うようにするためのものである。トーンマップおよびトーンマスクは、MAC層の概念である。トーンマスクは、あらかじめ定義された(静的な)システム全体にわたるパラメータであり、開始周波数、終了周波数、およびノッチ周波数を定義するものである。トーンマップは、適応的パラメータであり、チャネル推定に基づいて、電力線を介する送信器と受信器との間の特定の通信に用いられる一連の搬送波を含む。例えば、極度に弱くなってしまう搬送波を識別してそれを防ぐことができ、トーンマップおよびトーンマスクに従ったこれらの搬送波に関しては、何の情報も送信されない。
【0096】
2相偏移変調(BPSK)では、各フレーム制御記号は、あらかじめ定義した位相基準を用い、この位相基準はプリアンブルとして用いられる。2進シーケンスは位相ベクトルとして符号化され、この位相ベクトルにおいて、各エントリは、位相基準ベクトルφに対する位相シフトとして定められる。位相シフト0度は2進の「0」を示し、位相シフト180度は2進の「1」を示す。コヒーレントなBPSK用のマッピング関数は、トーンマスクに従わなければならない。そのため、マスクされた搬送波は、割り当てられた位相記号ではない。コヒーレントなBPSK用のk番目の副搬送波のデータ符号化は、BPSK符号化を示す表11において下記のように定義される。
【表11】

【0097】
データビットは、差動変調(DBPSK、DQPSK、またはロバスト)に対してマッピングされる。位相基準ベクトルφを用いる代わりに、各位相ベクトルはその位相基準として、同じ搬送波の前の記号を用いる。ただし、最初のデータ記号は、あらかじめ定義された位相基準ベクトルを用いる。図16Aおよび16Bに、ロバスト、DBPSK、およびDQPSKでのデータ符号化を示す。ここで、Ψは、前の記号からk番目の搬送波の位相である。DBPSK変調およびロバスト変調では、位相シフト0度は2進の「0」を示し、位相シフト180度は2進の「1」を示す。DQPSK変調では、1対の2つのビットが4つの異なる出力位相にマッピングされる。位相シフト0度、90度、180度、および270度はそれぞれ、2進の「00」、「01」、「11」、および「10」を表す。表12は、k番目の副搬送波のDBPSK符号化およびロバスト符号化の表である。表13は、k番目の副搬送波のDQPSK符号化の表である。
【表12】

【表13】

【0098】
代替の一実施形態では、表12および表13の「出力位相」を計算するのに用いる位相差を、図16Aおよび16Bに示すように(基準位相が0度に等しいと仮定した)位相配置図で表すことができる。
【0099】
先に述べたように、IFFTを用いてOFDM信号を生成することができる。図17に、IFFTブロックの代替の一実施形態を示す。IFFTブロック1701は、入力ベクトルを256点でIFFTし、30個のサイクリック・プレフィックス・サンプルによって先頭に追加されたメインの256個の時間ドメインOFDM語を生成する。この方法では、IFFTの出力における最後の30個のサンプル1702を用い、それらを記号の前1703に置く。出力のうち有用な部分は、IFFT係数の実部1704である。
【0100】
これまで概説した、PRIME規格における差動周波数変調やG3規格における差動時間変調などの差動変調方式に加えて、コヒーレント変調をペイロードに用いてもよいことを理解されたい。表14に、一実施形態に従ったコヒーレント変調を用いる、データビットについてのデータマッピングを示す。定数Ψはゼロまたは任意の他の位相値とし得る。
【表14】

【0101】
電力線通信で典型的に見られるチャネルおよびノイズの状況下では、コヒーレント変調は差動変調と比べて2dBよりも大きい性能向上をもたらすことがある。コヒーレント変調は、理想的なチャネル推定があれば、差動変調よりも性能向上がかなり大きいことがよく知られている。しかし、下記の2つの懸念があったため、コヒーレント変調はこれまでナローバンドPLCシステムに広く使われてこなかった。すなわち、1)周波数選択性歪みおよび電力線ノイズの存在下でのチャネル推定の精度と、2)コヒーレント変調の複雑さ、である。
【0102】
上記の懸念は、通信システムを適切に設計して、コヒーレント変調が簡便に実施され、かつロバスト性が高くなるようにすることによって軽減することができる。
【0103】
チャネル推定は、下記の2つの候補となり得る情報源から行うことができる。すなわち、PPDU600(図6)内のプリアンブルなどのプリアンブルシーケンスと、時間−周波数グリッド上を送信される正規パイロットトーンである。ほとんどの実装では、両方の情報源が用いられる。典型的には、初期プリアンブルに基づくチャネル推定が生成され、次いで、パイロットトーンを用いて更新される。
【0104】
一実施形態では、パイロットトーンは、任意の所与の記号内の8番目のトーンがパイロットになるように、周期的パターンで配列される。各記号内のパイロットの位置は、記号ごとに2つのトーンだけシフトされる。その結果、4つおきの記号では、同じトーンでパイロットが生じる。
【0105】
上記のパイロットのオーバーヘッドは12.5%である。代替の一実施形態では、パイロットを記号1つおきに交互に送信することによってこのオーバーヘッドを低減することができる。こうすると、パイロットの周期性は8まで増加するが、結果として生じる性能の劣化は小さい可能性が高い。というのは、PLCチャネルは数個の記号内では大きく変動しないからである。
【0106】
チャネル推定は、時間補間を行い、次いで、周波数補間を行うことによって成される。時間補間の一つの実装では、すべての新しい記号について、同じ周波数の先行する3つのパイロットをフィルタリングして、そのトーンでの補間したチャネル推定を推定する。この処理が終了した時点で、各OFDM記号の1つおきのトーンで補間した推定が利用可能になる。次いで、これらを周波数で補間してチャネルを推定する。過去のパイロットしか用いないので、チャネル推定は適当であって、レイテンシやメモリの要件はあまり大きくない。2つの1次元フィルタによる上記シーケンスは必ずしも最適とは限らないが、簡単に実施することができ、ほぼ最適な性能が得られることがシミュレーションからわかっている。チャネル推定には他にも様々な実装形態があるが、どれも精度と複雑さはトレードオフの関係になり得る。
【0107】
図18〜20に、電力線を用いる送信器/受信器を、LV線やMV線などの3つの位相電力線に接続する代替実施形態を示す。これらは、2010年7月19日に出願された「OFDM Transmission Methods in Three Phase Modes(3相モードでのOFDM送信方法)」という名称の係属中の米国特許出願番号第12/839,315号に開示されている。
【0108】
図18に、本発明の一実施形態に従った電力線通信送信器および/または受信器回路を電力線に接続する例を示す。PLC送信器/受信器1801は、上記実施形態における送信器または受信器回路として機能し得る。PLC送信器/受信器1801は、電力線通信ネットワークを介して送信するための、あらかじめ符号された信号を生成する。各出力信号は、デジタル信号とすることができ、別個のラインドライバ回路1802A〜1802Cに供給される。ラインドライバ1802A〜1802Cは、例えば、PLC送信器/受信器1801からの信号を電力線1803A〜1803Cに結合する、デジタル−アナログ変換器回路、フィルタ、およびラインドライバを含む。アナログ回路/ラインドライバ1802は、変圧器1804および結合コンデンサ1805によりそれぞれの電力線1803A〜1803Cに接続される。従って、図18に示す実施形態では、各出力信号はそれぞれ別々の専用電力線に独立に接続される。
【0109】
図18はさらに、受信器の代替実施形態も示している。電力線1803A〜1803C側でそれぞれ信号が受け取られる。一実施形態では、受信された信号はそれぞれ、結合コンデンサ1805、変圧器1804、およびラインドライバ1802を介して個々にPLC送信器/受信器1801に送られ、各信号が別々に検出及び受信処理される。あるいは、受信された信号は、加算フィルタ1806に転送され、そこで、受信されたすべての信号が結合されて1つの信号になり、PLC送信器/受信器1801に転送されて受信処理されてもよい。
【0110】
図19に、PLC送信器/受信器1901が単一のラインドライバ1902に結合され、ラインドライバ1902が単一の変圧器1904によって電力線1903A〜1903Cに結合される代替の一実施形態を示す。出力信号はすべてラインドライバ1902および変圧器1904を介して送信される。スイッチ1906は、どの電力線1903A〜1903Cが特定の出力信号を受け取るかを選択する。スイッチ1906は、PLC送信器/受信器1901によって制御し得る。あるいは、スイッチ1906は、出力信号中のヘッダその他のデータなどの情報に基づいて、電力線1903A〜1903Cのいずれが特定の信号を受け取るべきかを決定してもよい。スイッチ1906は、選択された電力線1903A〜1903Cおよびそれに関連する結合コンデンサ1905にラインドライバ1902および変圧器1904を接続する。スイッチ1906はまた、受信信号をPLC送信器/受信器1901に転送する経路を制御し得る。
【0111】
図20は、PLC送信器/受信器1901が単一のラインドライバ1902に結合される図19に似ている。ただし、図20に示す実施形態では、電力線2003A〜2003Cはそれぞれ別個の変圧器2004および結合コンデンサ2005に結合される。ラインドライバ2002は、スイッチ2006を介して各電力線2003用の変圧器2004に結合される。スイッチ2006は、変圧器2004、結合コンデンサ2005、電力線2003A〜2003Cのいずれが特定の信号を受け取るかを選択する。スイッチ2006は、PLC送信器/受信器2001によって制御することもできるし、あるいは、スイッチ2006は、各信号中のヘッダその他のデータなどの情報に基づいて、いずれの電力線2003A〜2003Cが特定の信号を受け取るべきかを決定することもできる。スイッチ2006は、受信信号をPLC送信器/受信器2001に転送する経路を制御することもできる。
【0112】
上記では、実施形態の例の文脈で説明した特徴またはステップの1つまたは複数の異なる組合せを有する実施形態を包括的に説明した。これら実施形態の例は、これらの特徴またはステップの全部または一部を有するものとした。当業者であれば、本発明の特許請求の範囲内で多くの他の実施形態および変形例が可能であることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信器(1100)であって、
畳み込みエンコーダ(1103)と、
前記畳み込みエンコーダ(1103)に結合されるロバストな符号器と、
を含み、前記畳み込みエンコーダ(1103)および前記ロバストな符号器は、メディアアクセス制御(MAC)層からデータを受け取り、符号化した信号を生成し、
前記送信器(1100)はさらに、
前記符号化信号から変調された信号を生成する変調器(1107)と、
前記差動変調器に結合され、電力線ネットワーク上を送信されるのに適合したOFDM出力信号を生成する、直交周波数分割多重(OFDM)回路(1108、1109)と、
を含む送信器。
【請求項2】
請求項1に記載の送信器であって、前記ロバストな符号器が、前記畳み込みエンコーダの出力に結合される反復2符号(repetition 2 code)回路(301)である、送信器。
【請求項3】
請求項1に記載の送信器であって、前記ロバストな符号器が、前記差動変調器の入力に結合される反復2符号回路(401)である、送信器。
【請求項4】
請求項1に記載の送信器であって、前記ロバストな符号器が、前記MAC層からの前記データに反復N符号を付加する、送信器。
【請求項5】
請求項1に記載の送信器であって、前記ロバストな符号器が、前記畳み込みエンコーダの前に外部符号を付加する、送信器。
【請求項6】
請求項1に記載の送信器であって、前記ロバストな符号器が、前記畳み込みエンコーダ(502)の入力に結合されるリードソロモン符号器(501)である、送信器。
【請求項7】
請求項6に記載の送信器であって、前記リードソロモン符号器(501)が、前記MAC層からの前記データを区画して部分群にし、前記部分群の各々のサイズが256バイト未満である、送信器。
【請求項8】
請求項7に記載の送信器であって、各部分群のサイズが、前記差動変調器(1107)が適用する変調のタイプに基づいて選択される、送信器。
【請求項9】
送信器であって、
外部符号回路(1102)と、
前記外部符号回路(1102)の出力に結合される畳み込みエンコーダ(1103)と、
前記畳み込み符号器(1102)の出力に結合される反復N符号器(1104)と
を含み、前記外部符号回路(1102)、前記畳み込みエンコーダ(1103)、および前記反復N符号器(1104)が、メディアアクセス制御(MAC)層からデータを受け取り、符号化した信号を生成し、
前記送信器はさらに、
前記符号化信号から差動変調された信号を生成する差動変調器(1107)であって、隣接する周波数トーンにわたって差動変調が実施される差動変調器(1107)と、
前記差動変調器(1107)に結合され、電力線ネットワーク上を送信されるのに適合したOFDM出力信号を生成する、直交周波数分割多重(OFDM)回路(1108、1109)と、
を含む、送信器。
【請求項10】
請求項9に記載の送信器であって、前記反復N符号器が反復2符号回路(1104)である送信器。
【請求項11】
請求項9に記載の送信器であって、前記外部符号回路がリードソロモン符号器(1102)である送信器。
【請求項12】
請求項11に記載の送信器であって、前記リードソロモン符号器(1102)が、前記MAC層からの前記データを区画して部分群にし、前記部分群の各々のサイズが256バイト未満である、送信器。
【請求項13】
請求項12に記載の送信器であって、各部分群のサイズが、前記差動変調器が適用する変調のタイプに基づいて選択される、送信器。
【請求項14】
信号を変調し符号化する方法であって、
メディアアクセス制御(MAC)層からのデータを畳み込み符号化すること(302)と、
前記畳み込み符号化の前(301)または後(401)のいずれかで前記MAC層からの前記データをロバスト符号化することと、
前記符号化されたデータを差動変調することと、
前記差動変調され符号化されたデータを直交周波数分割多重化(OFDM)して、電力線ネットワーク上を送信されるのに適合したOFDM出力信号を生成することと、
を含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記ロバスト符号化が反復N符号化である方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、前記ロバスト符号化が反復N反復(repetition N repetition)符号化である方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法であって、前記ロバスト符号化が、前記畳み込み符号化の前に外部符号を付加する、方法。
【請求項18】
請求項14に記載の方法であって、前記ロバスト符号化が、前記畳み込み符号化の前に実施されるリードソロモン符号化である、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
前記MAC層からの前記データを区画して部分群にすることをさらに含み、前記部分群の各々のサイズが256バイト未満である、
方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、各部分群のサイズが、前記差動変調が適用する変調のタイプに基づいて選択される、方法。
【請求項21】
信号を復号する方法であって、
電力線ネットワークからPHYプロトコル・データ・ユニット(PPDU)を受け取ること(1002)と、
前記PPDU内の第1のヘッダを復号すること(1103)と、
前記第1のヘッダが第1のフォーマットに従って正常に復号されたかどうか検証すること(1005)と、
前記PPDU内の第2のヘッダを復号すること(1006)と、
前記第2のヘッダが第2のフォーマットに従って正常に復号されたかどうか検証すること(1007)と、
前記第1または第2のフォーマットに従って前記PPDU内のペイロードを復号すること(1008、1009)と、
を含む方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記第1のフォーマットがPRIME R1.3Eフォーマットである方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記第2のフォーマットが、前記PRIME R1.3Eフォーマットにおいて利用可能でない変調および符号化を識別する、方法。
【請求項24】
請求項21に記載の方法であって、前記第1のヘッダが正常に復号され(1004)、前記第2のヘッダが正常に復号されなかった(1007)場合、前記PPDUペイロードが前記第1のフォーマットに従って復号される(1009)、方法。
【請求項25】
請求項21に記載の方法であって、前記第1のヘッダが正常に復号され(1004)、前記第2のヘッダが正常に復号された(1007)場合、前記PPDUペイロードが前記第2のフォーマットに従って復号される(1008)、方法。
【請求項26】
請求項21に記載の方法であって、前記第1のヘッダが正常に復号されず(1004)、前記第2のヘッダが正常に復号された(1011)場合、前記PPDUペイロードが前記第2のフォーマットに従って復号される(1012)、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2013−502839(P2013−502839A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525659(P2012−525659)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/045864
【国際公開番号】WO2011/022464
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(507107291)テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド (50)
【Fターム(参考)】