説明

連結具

【課題】柱状体のバンドにおいて両端部が支持された連結軸に被連結物を容易に着脱できるようにする。
【解決手段】基端部1aに軸線方向に沿って挿通路2を形成し、先端部1bに、連結軸110に引っ掛けられる掛止凹部3を軸線に対して直交方向に形成する引掛部材1と、被連結物に対する連結部を基端部10bに形成し、引掛部材1の挿通路2に挿通される挿通部12を本体10aに形成し、挿通部12が引掛部材1の基端部1aから先端部1bに向かう方向への移動によって、連結軸110から離間して引掛部材1の掛止凹部3の開口部3aを開放し、連結部に被連結物が連結された際の荷重による、挿通部12が引掛部材1の先端部1bから基端部1aに向かう方向への移動によって、連結軸110に当接して引掛部材1の掛止凹部3の開口部3aを閉塞する鉤状部13を先端部10cに形成するロック部材10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電柱に取り付けられた自在バンドにおいて両端部が支持される連結軸と、架空電線が接続された耐張碍子とを連結する際に使用される連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の連結具について、複数の電柱間に架空電線が架設される電線支持構造を例にとって、図10(a),(b)を参照しつつ説明する。なお、これらの図において、腕金が取り付けられている側を電柱の背面とし、その反対側を電柱の正面とする。また、図10(b)において、上側を電柱の右側とし、下側を電柱の左側とする。
【0003】
電線支持構造100は、例えば、図10(a)に示すように、電柱101の上部の外周面に沿うように装着された自在バンド102と、該自在バンド102の上方に、電柱101の外周面に対して接線方向に固定された腕金103と、該腕金103から離れた位置に、引留クランプによって保持される三相の架空電線(図示せず)と、腕金103に一端部が連結されるとともに、三相の架空電線のうち、両側の架空電線に連結される上下一対の連結具104,104と、自在バンド102に一端部が連結されるとともに、三相の架空電線のうち、中央の架空電線に他端部が連結される連結具105と、各連結具104,104,105の他端部と引留クランプとの間に連結される耐張碍子106とを備えている。
【0004】
自在バンド102は、図10(b)に示すように、電柱101の腕金103側の外周面(背面側)に宛がわれる一方のバンド部材1020と、その反対側、すなわち電柱101の架空電線側の外周面(正面側)に宛がわれる他方のバンド部材1022とを備えている。そして、一方のバンド部材1020は、電柱101の半周よりもやや大きい円弧状を呈しており、両端部にそれぞれ雄ねじ1021,1021が突設されている。そして、一方のバンド部材1020を電柱101の外周面に宛がった場合、各雄ねじ1021,1021が電柱101に対して径外方向に位置する。他方のバンド部材1022は、左右対称の一対のバンド片1022a,1022bを有している。該各バンド片1022a,1022bは、電柱101の外周面に沿うように形成される1/4円弧状部1023と、該1/4円弧状部1023の端部から径外方向に延出される支持部1024とを有している。そして、各バンド片1022a,1022bは、図10(b)に示すように、各一端部が一方のバンド部材1020の端部に重なるように、かつ、各支持部1024,1024が平行するように、電柱101の正面の両側に線対称に配置される。この際、一方のバンド部材1020の雄ねじ1021,1021が、他方のバンド部材1022の各バンド片1022a,1022bの挿通孔(図示せず)に挿通されて、一方のバンド部材1020と他方のバンド部材(一対のバンド片1022a,1022b)1022とが一体化される。そして、各支持部1024,1024に水平方向に貫設されたボルトからなる連結軸110の緩緊によって、各支持部1024,1024の距離が拡縮される。すなわち、電柱101の外周面に対して自在バンド102が着脱自在となる。
【0005】
腕金103は、図10(a)に示すように、角筒状を呈しており、電柱101の径方向に貫設されたボルトBによって、電柱101の外周面に対して接線方向に取り付けられている。そして、腕金103の上面に所定の間隔をおいて、2つの耐張碍子106,106が配置される。
【0006】
両側の架空電線を支持する上下一対の連結具104,104は、一般的にストラップと称され、図10(a)に示すように、一端側が水平向きに、他端側が鉛直向きになるように、細長い平板部材の中途部が捻られて作製されている。そして、連結具104,104の一端部104a,104aは、腕金103の上面および下面にそれぞれ宛がわれ、連結具104,104の他端部104b,104bは、後述する耐張碍子106の連結部1062に連結される。また、腕金103の上面に宛がわれた連結具104の一端部104a、および、腕金103の下面に宛がわれた連結具104の一端部104aは、ボルトB・ナットNによって腕金103に固定される。
【0007】
中央の架空電線を支持する連結具105は、図10(a),(b)に示すように、前記各連結具104と同様に、ストラップと称されて、細長い平板部材からなる。そして、連結具105の一端部105aは、自在バンド102の各支持部1024,1024に貫設された連結軸110に挿通される挿通孔(図示せず)が形成されている。また、連結具105の他端部105bは、後述する耐張碍子106の連結部1062に貫設されたコッタピン1064に挿通される挿通孔(図示せず)が形成されている。
【0008】
耐張碍子106は、図10(a),(b)に示すように、三相の架空電線のうちの2線が接続されるものと、中央の架空電線が接続されるものとは、同一のものが使用される。この耐張碍子106は、中央部にひだ部1061を有する磁器製の本体1060と、該本体1060の先端部の外面を覆うように固着された可鍛鋳鉄製の連結部1062と、一端部が本体1060の先端部内面の中心部に固着されるとともに、他端部が本体1060の軸線に沿って外部に導出された、軟鋼材からなる連結軸1063とを有している。連結部1062は、頂部に溝部1062aが形成され、該溝部1062aに連結具104,104,105の他端部104b,104b,105bが挿入される。そして、溝部1062aの一方の側壁、連結具104,104,105の他端部104b,104b,105bの挿通孔、溝部1062aの他方の側壁にコッタピン1064が挿通されることで、連結具104,104,105と耐張碍子106とが連結される一方、耐張碍子106の連結軸1063が引留クランプに連結されて、腕金103と引留クランプとの間、および、自在バンド102と引留クランプとの間にそれぞれ、三相分の耐張碍子106が水平方向に配置される。
【0009】
以上、要するに、架空電線は、引留クランプ、耐張碍子106、連結具104,104,105によって、電柱101に固定された腕金103間に架設される。
【0010】
また、中央の架空電線を支持する電線支持構造としては、例えば、電柱に取り付けられた腕金に、電柱を挟んだ腕金の両側に固設された断面V字形状の一対の防傾材と、該各防傾材に両端部がねじ止めされた円弧状のバンド体と、該バンド体の円弧面の頂部に突設された、平行する上下一対の支持片と、各支持片間に上下方向に貫設されたボルトと、該ボルトに連結された連結具とを備えたものが知られている(特許文献1)。
【0011】
そして、該連結具は、開口部が長楕円状になるように二つ折りされた平板からなり、該連結具の折り返し部を、自在バンドにおいて両端部が支持された連結軸に係止させて、重ね合わされた連結具の両端部と耐張碍子の連結部にボルトを貫設して、連結具と耐張碍子とを連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開平6−41333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記従来の連結具、すなわち図10(a),(b)に示す電線支持構造100に使用される連結具、特に、中央の架空電線を支持する際に使用される連結具105は、自在バンド102の一対の支持部1024,1024間に水平方向に貫設される連結軸110を、連結具105における一端部105aの挿通孔に挿通して、自在バンド102と連結具105とを連結しているので、架空電線を延長したり、新設したりする場合は、自在バンド102の各支持部1024,1024および連結具105の挿通孔から連結軸110を取り外す必要があり、その作業が煩雑であるという問題がある。また、前記公報に開示されている連結具の連結軸も、前記と同様の問題が生じる。
【0014】
そこで、本発明は、柱状体に装着されたバンドにおいて両端部が支持された連結軸に被連結物を容易に連結できるようにした連結具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る連結具は、柱状体101に取り付けられるバンド102において両端部が支持される連結軸110に被連結物を連結するための連結具であって、基端部1aに軸線方向に沿って挿通路2が形成されるとともに、先端部1bに、連結軸110に引っ掛けられる掛止凹部3,21が軸線に対して直交方向に形成される引掛部材1と、前記被連結物に対する連結部11が基端部10bに形成されるとともに、引掛部材1の挿通路2に挿通される挿通部12が本体10aに形成され、さらに、該挿通部12が引掛部材1の基端部1aから先端部1bに向かう方向への移動によって、連結軸110から離間して引掛部材1の掛止凹部3,21の開口部3a,21aを開放するとともに、連結部11に被連結物が連結された際の荷重による、挿通部12が引掛部材1の先端部1bから基端部1aに向かう方向への移動によって、連結軸110に当接して引掛部材1の掛止凹部3,21の開口部3a,21aを閉塞する鉤状部13が先端部10cに形成されるロック部材10とを備えたことを特徴とする。
【0016】
まず、連結具を連結軸110に連結する場合、引掛部材1の挿通路2に、ロック部材10の挿通部12を挿通して、引掛部材1とロック部材10とが相対的に移動できるように重ね合わせる。この状態で、ロック部材10の鉤状部13を引掛部材1の基端部1aから先端部1bに向かう方向に移動させて、引掛部材1の掛止凹部3,21の開口部3a,21aを開放させる。そして、バンド102において両端部が支持される連結軸110に、開放された引掛部材1の掛止凹部3,21を引っ掛ければ、被連結物が連結されたロック部材10が、被連結物の自重によって引掛部材1の先端部1bから基端部1aに向かう方向に移動することになる。すなわち、ロック部材10の鉤状部13が連結軸110に当接するとともに、引掛部材1の掛止凹部3,21の開口部3a,21aが閉塞される。これによって、連結軸110に連結具が連結される。そして、連結軸110から連結具を取り外す場合は、ロック部材10の鉤状部13を引掛部材1の基端部1aから先端部1bに向かう方向に移動させる。すなわち、連結軸110からロック部材10の鉤状部13を離間させるとともに、引掛部材1の掛止凹部3,21の開口部3a,21aを開放し、開放された掛止凹部3,21の開口部3a,21aを連結軸110から離間させる。つまり、バンド102において連結軸110の両端部が支持された状態であっても、連結軸110をバンド102から取り外すことなく、連結軸110に対して連結具を容易に着脱できるため、作業性がよくなる。
【0017】
また、本発明によれば、該挿通部12が引掛部材1の基端部1aから先端部1bに向かう方向への移動によって、連結軸110から離間して引掛部材1の掛止凹部3,21の開口部3a,21aを開放するとともに、連結部11に被連結物が連結された際の荷重による、挿通部12が引掛部材1の先端部1bから基端部1aに向かう方向への移動によって、前記ロック部材10の鉤状部13の先端部13cを、前記引掛部材1の挿通路2に挿入して、前記引掛部材1の掛止凹部3,21の開口部3a,21aを閉塞するような構成を採用することもできる。
【0018】
この場合、ロック部材10の鉤状部13の先端部13cが、引掛部材1の挿通路2に挿入されるので、被連結物の荷重が係った状態で、ロック部材10の鉤状部13が連結軸110に引っ掛けられたとしても、被連結物の荷重によるロック部材10の鉤状部13の変形が防止される。すなわち、鉤状部13の変形による掛止凹部3,21の開口部3a,21aの常時開放を防止できる。すなわち、連結軸110と被連結物とを長期的に連結できるとともに、風などによって、被連結物が揺動したとしても、連結軸110に対する連結を維持できる。
【0019】
また、本発明によれば、前記引掛部材1の掛止凹部3,21の開口部3a,21aが、前記ロック部材10の鉤状部13によって閉塞される際、前記引掛部材1の基端部1aに形成される連結孔5と、前記ロック部材10の基端部10bに形成される連結孔11とが連通するような構成を採用することもできる。
【0020】
この場合、被連結物の荷重を、ロック部材10と引掛部材1とで負担することになり、支持強度を十分に確保できるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、両端部が支持された連結軸に引っ掛けられる掛止凹部を、引掛部材の軸線に対して直交方向に形成するとともに、掛止凹部の開口部を、ロック部材の鉤状部による軸線方向の移動によって開閉するようにしたので、連結軸に対する連結具の着脱が容易になる。すなわち、両端部が支持された連結軸に被連結物を容易に連結することできて、作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る連結具の一実施形態を示す分解斜視図。
【図2】(a)は、図1の引掛部材の挿通路にロック部材を挿通して、引掛部材の掛止凹部の開口部を開放した状態を示す斜視図、(b)は、図2(a)の側面図、(c)は、図2(a)の要部の平面図。
【図3】(a)は、図1の引掛部材の掛止凹部の開口部を閉塞した状態を示す斜視図、(b)は、図3(a)の側面図、(c)は、図3(a)の要部の平面図。
【図4】図1の連結具の使用態様の説明図であり、(a)は、引掛部材の挿通路にロック部材を挿通するとともに、引掛部材の掛止凹部の開口部が開放されるように、ロック部材の長孔を位置合わせし、電柱の連結軸の前方に、開放された状態の掛止凹部を位置させた状態を示す側面図、(b)は、ロック部材の長孔のロック位置に連結軸を位置させた状態を示す側面図、(c)は、ロック部材に連結された電線の荷重が係って、連結具が水平支持された状態を示す側面図。
【図5】本発明に係る連結具の変形例を示す分解斜視図。
【図6】図5の連結具における使用態様の説明図であり、電柱に取り付けられた自在バンドの連結軸に、連結具の掛止凹部の開口部を開放した状態で、連結具を引っ掛ける際の側面図。
【図7】連結具の掛止凹部を連結軸に引っ掛けてロック部材でロックした状態を示す側面図。
【図8】ロックした状態から架空電線を水平方向に架設した状態を示す側面図。
【図9】本発明に係る連結具の変形例を示す図であり、(a)は、掛止凹部の開口部を開放した状態を示す斜視図、(b)は、図9(a)の側面図、(c)は、掛止凹部の開口部を閉塞した状態を示す斜視図。
【図10】(a)は、従来の連結具が使用される電線支持構造を示す側面図、(b)は、図10(a)の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る連結具の一実施形態について図1〜図4を参照しながら説明する。なお、図1および図5においては、部材の構成を理解しやすいように、連結具における引掛部材およびロック部材を分解した分解斜視図を示しているが、図2(a)および図6(a)に示すように、使用時および保管時は、引掛部材およびロック部材が一体化された状態(引掛部材の挿通路にロック部材が移動自在に挿通されている状態)となっている。また、連結具としては、図10(a),(b)に示す電線支持構造100を例にとって説明する。また、図1〜図4において、図10(a),(b)と同一符号は、同一もしくは相当するものを示し、これらの部材についての説明は省略する。
【0024】
本実施形態に係る連結具Aは、図1に示すように、柱状体としての電柱101に取り付けられるバンド102において両端部が支持される連結軸110に被連結物としての架空電線(図示せず)を連結するための連結具であって、基端部1aに軸線方向に沿って挿通路2が形成されるとともに、先端部1bに、連結軸110に引っ掛けられる掛止凹部3が軸線に対して直交方向に形成される引掛部材1と、架空電線に対する連結部としての連結孔11が基端部10bに形成されるとともに、引掛部材1の挿通路2に挿通される挿通部12が本体10aに形成され、さらに、該挿通部12が引掛部材1の基端部1aから先端部1bに向かう方向への移動によって、連結軸110から離間して引掛部材1の掛止凹部3の開口部3aを開放するとともに、連結部11に架空電線が連結された際の荷重による、挿通部12が引掛部材1の先端部1bから基端部1aに向かう方向への移動によって、連結軸110に当接して引掛部材1の掛止凹部3の開口部3aを閉塞する鉤状部13が先端部10cに形成されるロック部材10とを備えている。
【0025】
引掛部材1は、図1および図2(a)に示すように、基端部1aに角筒状部2aによって軸線方向に形成される挿通路2を有するとともに、先端部に、連結軸110に引っ掛けられる掛止凹部3が軸線に対して直交方向に形成されている。挿通路2の幅寸法は、図2(c)に示すように、後述するロック部材10の挿通部12の幅寸法よりもやや大きく、ロック部材10の挿通部12が軸線に沿って移動自在に挿通されている。掛止凹部3の開口部3aの幅寸法aは、連結軸110の直径rよりもやや大きく、掛止凹部3は、連結軸110に対して挿脱自在になっている。また、掛止凹部3の底部の形状は、連結軸110の直径rよりもやや大きい半円状に形成されている。そして、連結具Aは、連結軸110に、引掛部材1の掛止凹部3を介して引っ掛けられることで、位置固定される。
【0026】
ロック部材10は、図1および図2(a)に示すように、架空電線に対して基端部10bに形成される連結部としての連結孔11と、引掛部材1の挿通路2に挿通される本体10aに形成された挿通部12と、先端部10cに形成された部分環状、具体的には、略J字形状の鉤状部13とを有している。
【0027】
鉤状部13は、挿通部12の先端部の一側に連続して形成された、挿通部12よりも幅小の直状部13aと、該直状部13aの先端部から円弧状に曲げて形成された曲状部13bと、該曲状部13bの先端部から挿通部12に向けて延出された延出部(鉤状部13の先端部)13cとを備えている。
【0028】
そして、ロック部材10の先端部10c側において、直状部13aと曲状部13bと延出部13cとによって、短軸が、連結軸110の直径rよりもやや大きい長楕円状の長孔14が形成されるとともに、延出部13cの端面と挿通部12の先端部の端面11aとの間に開口部14aが形成されている。また、この開口部14aは、ロック部材10の端縁部から軸線に向かって直交方向に、長孔14の一端側の端縁部に連通するように形成されている。
【0029】
そして、長孔14および開口部14aによって略L字形状の掛止空間Sが形成されており、長孔14の一端側(開口部14a側)が、連結軸110に対するロック部材10の解除位置Cになっており、長孔14の他端側(ロック部材10の先端部10c側)が、連結軸110に対するロック部材10のロック位置Lになっている。
【0030】
また、長孔14の一端側には、引掛部材1の掛止凹部3の最深部が位置するようになっており、長孔14と掛止凹部3が直角に交差することになる。すなわち、連結軸110が、引掛部材1の掛止凹部3の最深部に位置することで、ロック部材10の長孔14に位置するようになる。つまり、連結軸110に対してロック・解除の操作が行えるスタンバイ状態となる。
【0031】
長孔14は、図2(c)に示すように、その長軸の距離lが、連結軸110の直径rの2.5倍程度に設定されている。これによって、ロック部材10に架空電線の荷重が係って、ロック部材10が架空電線側に引っ張られた際、ロック部材10の鉤状部13の延出部13cが、引掛部材1の挿通路2に内挿される。この理由としては、引掛部材1の挿通路2に挿入された、ロック部材10の鉤状部13の延出部13cが、架空電線の荷重、または、風による架空電線の揺動によって、該鉤状部13の延出部13cの折れ曲がることを、引掛部材1の挿通路2の内壁によって防止するためである。一方、短軸の距離、すなわち長孔14の対向する両内側面間の距離(長孔の幅寸法)mが、連結軸110の直径rよりもやや大きくなっている。
【0032】
また、ロック部材10の幅寸法、すなわち対向する本体10a(挿通部12)の両側面の距離nは、引掛部材1の挿通路2の幅寸法よりもやや小さくなっている。したがって、引掛部材1の挿通路2の内壁にガイドされつつ、ロック部材10が引掛部材1の挿通路2を軸線方向に沿って移動自在に移動することになる。
【0033】
また、鉤状部13の開口部13aの開口寸法、すなわち鉤状部13の延出部13cの端面と、該端面に対向する対向面との距離pは、連結軸110の直径rよりもやや大きくなっている。つまり、引掛部材1の掛止凹部3の幅寸法aと、ロック部材10における長孔14の幅寸法mと開口部14aの開口寸法pとが、連結軸110の直径rよりもやや大きくなっているので、ロック部材10のロック位置Lと解除位置Cとの往復移動、および、ロック部材10の解除位置Cにおいて、連結軸110に対する引掛部材1の挿脱が自在にできるようになっている。
【0034】
つぎに使用態様について説明する。まず、引掛部材1の挿通路2に、ロック部材10の挿通部12を予め挿通しておく。そして、挿通部12を引掛部材1の基端部1aから先端部1bに向かう方向に移動させて、引掛部材1の掛止凹部3の開口部3aが開口された状態、すなわちロック部材10の鉤状部13の延出部13cの端面と、引掛部材1の掛止凹部3の開口部3aの端面とを面一の状態にする一方、ロック部材10の基端部10bの連結孔11に架空電線(被連結物)の一端部を接続しておく。
【0035】
この状態で、電柱101の軸線に対して連結具Aの軸線が平行するように、かつ、自在バンド102において両端部が支持された連結軸110の前方に、開放された引掛部材1の掛止凹部3を位置させる。そして、引掛部材1の掛止凹部3を、連結軸110に引っ掛けて、連結軸110を掛止凹部3の最深部、すなわちロック部材10の長孔14の解除位置にさせると、連結軸110に引掛部材1が引っ掛けられて、連結軸110に対してロック部材10のロック・解除操作が行えるスタンバイ状態となる。
【0036】
つぎに、架空電線が接続されたロック部材10を手放すと、架空電線の荷重がロック部材10に係るようになり、ロック部材10が架空電線の荷重によって引っ張られて、ロック部材10の長孔14の解除位置Cからロック位置Lに移動するようになる。すなわち、挿通部12が引掛部材1の先端部1bから基端部1aに向かう方向へ移動し、連結軸110の外周面に、ロック部材10の鉤状部13の曲状部13bの内面が当接するとともに、該鉤状部13の直状部13aおよび延出部13cの内面と、引掛部材1の掛止凹部3の内面とで、連結軸110の外側が囲繞されるようになる。つまり、長孔14の内面と掛止凹部3の内面とによって、連結軸110に対する長孔14のロック位置Lからの逸脱が阻止されて、連結具Aが連結軸110に確実に引っ掛けられた状態(ロックされた状態)になる。
【0037】
そして、連結軸110から連結具Aを取り外す場合は、挿通部12を引掛部材1の基端部1aから先端部1bに向かう方向に移動させる。すなわち、連結軸110からロック部材10の鉤状部13を離間させるとともに、引掛部材1の掛止凹部3の開口部3aを開放し、開放された掛止凹部3の開口部3aを連結軸110から離間させる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の連結具によれば、バンド102において連結軸110の両端部が支持された状態であっても、連結軸110をバンド102から取り外すことなく、連結軸110に対して連結具を容易に着脱できるため、作業性がよくなる。
【0039】
なお、本発明に係る連結具は、前記実施の形態に限定することなく種々変更することができる。
【0040】
例えば、前記実施形態の場合、架空電線を連結する連結部としての連結孔11を、ロック部材10の基端部10bのみに形成したが、図5に示すように、引掛部材1の長さをロック部材10の長さに合わせて伸長するとともに、引掛部材1の基端部1aにも、架空電線を連結する連結孔5を形成し、ロック部材10の長孔14のロック位置Lに連結軸110が位置した状態で、ロック部材10の連結孔11と、引掛部材1の連結孔5とが一致するようにしてもよい。この場合、架空電線をロック部材10と引掛部材1とで支持するようになるので、架空電線に対する支持強度を確保できるようになる。
【0041】
つぎに図5に示す連結具の使用態様について、図6〜図9を参照して説明する。まず、前記実施形態の場合と同様に、引掛部材1の挿通路2に、ロック部材10の挿通部12を予め挿通しておく。そして、挿通部12を引掛部材1の基端部1aから先端部1bに向かう方向に移動させて、引掛部材1の掛止凹部3の開口部3aが開口された状態、すなわちロック部材10の鉤状部13の延出部13cの端面と、引掛部材1の掛止凹部3の開口部3aの端面とを面一の状態にする一方、ロック部材10の基端部10bの連結孔11に架空電線(被連結物)の一端部を接続しておく。
【0042】
つぎに、図6に示すように、電柱101の軸線に対して、連結具Aの軸線が平行するように、かつ、電柱101の自在バンド102において両端部が支持された連結軸110の前方に、開放された引掛部材1の掛止凹部3を位置させる。
【0043】
つぎに、図7に示すように、連結軸110に、引掛部材1の掛止凹部3を引っ掛けると、ロック部材10が架空電線の荷重によって引っ張られて、挿通部12が引掛部材1の先端部1bから基端部1aに向かう方向に移動し、ロック部材10の鉤状部13が連結軸110の外周面に当接するとともに、引掛部材1の掛止凹部3の開口部3aが、ロック部材10の鉤状部13によって閉塞される一方、架空電線の荷重によって、連結具Aは、水平方向に引っ張られて、架空電線とともに水平支持されるようになる。この際、ロック部材10の連結孔11と、引掛部材1の連結孔5とが一致することになる。
【0044】
そして、図7に示すように、連結孔5,11が一致した状態の引掛部材1およびロック部材10の他端部を、耐張碍子106の連結部1062の溝1062aに挿入し、コッタピン1064を各連結孔に挿通して、連結具Aに架空電線が連結される耐張碍子106を連結する。
【0045】
この場合、架空電線を引掛部材1およびロック部材10によって支持するので、支持強度が向上する。
【0046】
また、前記実施形態の場合、引掛部材1の先端部(平板状部)1bに掛止凹部3を形成するようにしたが、例えば、図9(a),(b)に示すように、引掛部材1の先端部1bと平行するように、該引掛部材1の先端部1bと同一形状の掛止片20、すなわち掛止凹部21が形成された平板状部を、角筒状部2aの開口端部から延出して形成するようにしてもよい。要するに、引掛部材1の先端部を二股状に形成し、二股状の各端部1b,21に軸線に対して直交方向に掛止凹部3,21を形成するとともに、各端部1b,21の間に形成した挿通路2に移動自在にロック部材10を配置する。
【0047】
そして、図9(b)に示すように、引掛部材1の角筒状部2aの平行する一対の上下の側壁にそれぞれ長楕円形状の移動制限孔1c,1cを形成し、該移動制限孔1c,1cに遊挿されるボルトからなる位置規制部材25を、ロック部材10の鉤状部13の手前の軸線上に貫設するようにしてもよい。そして、図9(b)に示すように、位置規制部材25の両端部は、掛止凹部3,21から突出するとともに、移動制限孔1c,1cから抜け出ないように、前記両端部の外径が、移動制限孔1c,1cの短軸方向の距離よりもやや大きく形成されている。
【0048】
また、図9(a),(b)に示すように、掛止凹部3,21の開口部3a,21aおよびロック部材10の開口部14aが開口された状態においては、位置規制部材25は、移動制限孔1cの一端に位置し、掛止凹部3,21の開口部3a,21aが閉塞された状態においては、図9(c)に示すように、位置規制部材25は、移動制限孔1c,1cの他端に位置するようになる。すなわち、電線の荷重によって引っ張られた際のロック部材10の移動範囲を、位置規制部材25と移動制限孔1cとによって規制している。また、連結軸に引っ掛けられる掛止凹部3,21を上下2箇所に配置することで、連結軸に引っ掛けた際の強度が向上される一方、引掛部材1の先端部1cと掛止片20との間にロック部材10の鉤状部13が位置することで、ロック部材10の鉤状部13が、引掛部材1の先端部1cと掛止片20とによって両側から補強されて、ロック部材10自体の強度も向上する。つまり、連結具Aとしての連結強度がより一層向上する。
【0049】
また、前記実施形態の場合、ロック部材10を、被連結物の荷重によって引掛部材1の基端部1a側に移動させるようにしたが、ロック部材10の鉤状部13が、引掛部材1の掛止凹部3の開口部3aが閉塞する方向に常時付勢する弾性部材を、ロック部材10及び引掛部材1に配置するようにしてもよい。
【0050】
また、前記実施形態の場合、被連結部材として、電柱101間に架設される架空電線を例にとって説明したが、架空通信ケーブルであってもよく、ケーブル支持線や電柱101の支持線を、電柱101または地中アンカーに固定する場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0051】
1…引掛部材、1a…基端部、1b…先端部、2…挿通路、3,21…掛止凹部、3a,21a…開口部、5,11…連結孔(連結部)、10…ロック部材、10a…本体、10b…基端部、10c…先端部、12…挿通部、13…鉤状部、13c…先端部(延出部)、101…柱状体(電柱)、102…バンド(自在バンド)、110…連結軸、A…連結具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状体(101)に取り付けられるバンド(102)において両端部が支持される連結軸(110)に被連結物を連結するための連結具であって、
基端部(1a)に軸線方向に沿って挿通路(2)が形成されるとともに、先端部(1b)に、連結軸(110)に引っ掛けられる掛止凹部(3,21)が軸線に対して直交方向に形成される引掛部材(1)と、
前記被連結物に対する連結部(11)が基端部(10b)に形成されるとともに、引掛部材(1)の挿通路(2)に挿通される挿通部(12)が本体(10a)に形成され、さらに、該挿通部(12)が引掛部材(1)の基端部(1a)から先端部(1b)に向かう方向への移動によって、連結軸(110)から離間して引掛部材(1)の掛止凹部(3,21)の開口部(3a,21a)を開放するとともに、連結部(11)に被連結物が連結された際の荷重による、挿通部(12)が引掛部材(1)の先端部(1b)から基端部(1a)に向かう方向への移動によって、連結軸(110)に当接して引掛部材(1)の掛止凹部(3,21)の開口部(3a,21a)を閉塞する鉤状部(13)が先端部(10c)に形成されるロック部材(10)とを備えたことを特徴とする連結具。
【請求項2】
該挿通部(12)が引掛部材(1)の基端部(1a)から先端部(1b)に向かう方向への移動によって、連結軸(110)から離間して引掛部材(1)の掛止凹部(3,21)の開口部(3a,21a)を開放するとともに、連結部(11)に被連結物が連結された際の荷重による、挿通部(12)が引掛部材(1)の先端部(1b)から基端部(1a)に向かう方向への移動によって、前記ロック部材(10)の鉤状部(13)の先端部(13c)が、前記引掛部材(1)の挿通路(2)に挿入されて、前記引掛部材(1)の掛止凹部(3,21)の開口部(3a,21a)が閉塞されることを特徴とする請求項1に記載の連結具。
【請求項3】
前記引掛部材(1)の掛止凹部(3,21)の開口部(3a,21a)が、前記ロック部材(10)の鉤状部(13)によって閉塞される際、前記引掛部材(1)の基端部(1a)に形成される連結孔(5)と、前記ロック部材(10)の基端部(10b)に形成される連結孔(11)とが連通するように構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の連結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−165587(P2012−165587A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24831(P2011−24831)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】