説明

連結具

【課題】各種木構造において、複数の部材を連結する際に用い、金具を部材に固定した状態でも無理なく施工作業を進めることができ、現地での作業量を削減可能な連結具を提供する。
【解決手段】枝材51を主材31、41に連結するための連結具を、金具11とホゾキャップ24の二要素で構成する。金具11は、主材31、41に接触する前面板12と、前面板12の両側端から突出して枝材51のスリット53に差し込む側面板13と、からなるコの字状で、前面板12には、ホゾキャップ24を嵌め込むため、窓孔18を設ける。またホゾキャップ24は、一端にツバ26を設けた筒状で、窓孔18に嵌まり込み、さらに主材31のホゾ穴34に嵌まり込む。ホゾキャップ24が金具11に対して着脱自在とすることで、施工時の自由度が高まり、工場内で金具11を主材31、41に固定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種木構造において、複数の部材を連結する際に用いる連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築を始めとする各種木構造において、部材同士を連結する方法は様々だが、国内の住宅などで導入されている木造軸組構法では、ホゾをホゾ穴に嵌め込む方法が広く普及している。ただしこの方法は、部材の断面欠損による強度の低下や、現地で調整作業が必要になるなどの課題があり、近年は、代替となる各種金具が開発されており、その具体例として下記特許文献が挙げられる。
【0003】
特許文献1では、接合強度や作業性を向上でき、しかも製造原価の引き下げを図ることのできる建築用接合金具が開示されている。この接合金具は、コの字状の受け金具と、棒状の固定金具などで構成され、受け金具の中央の固定板は、柱の側面に接触させ、固定板の両側端から直角に突出する連結板は、梁の端部に加工した二列の溝に差し込む。また固定金具は、一端に角座金を設けてあり、固定板に設けた固定孔から柱に向けて差し込む。そして、固定金具を利用して受け金具を柱に固定した後、梁と連結板を貫通するドリフトピンを打ち込むと、梁の端面が柱の側面に接合される。この発明は、受け金具を固定金具で固定することで、接合強度の向上などが実現する。
【0004】
特許文献2では、建築用箱型金具を利用した軸組み方法が開示されている。箱型金具は、中央の背板と、この背板の両側端から直角に突出する側板と、からなるコの字状で、背板には、円柱状のホゾ状突部と、ダルマ形の鍵穴状ボルト穴と、を設けてある。そして施工時は、あらかじめ土台などの木材にボルトを軽くねじ込んでおき、箱型金具を木材に取り付ける際、このボルトの頭部を鍵穴状ボルト穴の中に収容する。次に、ホゾ状突部を木材のホゾ穴に差し込み、最後にボルトを締め上げると、箱型金具が所定の位置に固定される。この方法は、箱型金具に鍵穴状ボルト穴を設けることで、施工時の作業が簡素化され、また輸送時の梱包も簡素化できる。
【0005】
図9は、柱と横架材と梁の三本の部材を連結する方法の具体例を示しており、パイプや金具などを使用している。水平に延びる横架材は、柱の上面に載置され、双方を一体化するため、柱の上面と横架材の下面を貫通する金属製のパイプを差し込む。また横架材から直角に突出する梁は、コの字状の金具を介して柱と横架材に連結され、梁の端面は、柱と横架材の側面に接触する。なお金具中央の前面板には、円柱状に突出するホゾが上下に二個並んでおり、このホゾを嵌め込むため、柱と横架材の側面には、ホゾ穴を加工してある。さらに金具の側面板を差し込むため、梁の端部には、長手方向に延びるスリットを加工してある。
【0006】
柱と横架材を貫通するようにパイプを差し込んだ後、柱と横架材の側面に金具を接触させて、上下のホゾをホゾ穴に嵌め込む。次に金具を固定するため、二枚の側面板の間からボルトを差し込む。このボルトの先端をホゾの前孔からパイプの横孔に差し込み、柱や横架材を貫通させた後、ナットを螺合して締め上げると、金具が柱と横架材の側面に固定される。なおこの際、パイプもボルトで固定される。次に、金具の側面板を梁のスリットに差し込み、梁の側面からドリフトピンを打ち込むと、柱と横架材と梁の三本の部材が連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−281192号公報
【特許文献2】特開平11−190073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
木造建築のコストダウンや施工期間の短縮といった要望は従来から根強く、労務費が増大しやすく不確定要素も多い現地での作業量の削減が進められており、製材や金具の取り付けなど、できるだけ多くの作業を工場内で行う傾向がある。そのため図9のように、柱と横架材と梁を連結する場合においても、次の図10のように、横架材にパイプと金具を組み込み、これらをボルトで一体化した後、現地に輸送すべきである。現地では、柱を直立させた後、横架材を吊り上げ、横架材の下面から突出するパイプを柱の上面に差し込み、最後に梁を吊り上げて、金具の側面板を梁の端部のスリットに差し込み、梁の側面からドリフトピンを打ち込む。
【0009】
しかし図10のように、横架材にパイプと金具を固定してしまうと、横架材の下面から突出するパイプを柱の上面に差し込む際、金具の前面板に設けた二個のホゾのうち、下の方が柱の側面と干渉してしまい、金具を所定の位置に移動できず、その結果、横架材を柱の上面に載置できない。このようにホゾを設けた金具を用いると、施工上の都合から、金具を工場内で部材に固定できず、現地での作業量を削減できない場合がある。なお、ホゾのない金具を用いるならば、このような事態は発生しないが、荷重条件の厳しい箇所などでは、ホゾが必要不可欠である。
【0010】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、金具を部材に固定した状態でも無理なく施工作業を進めることができ、現地での作業量を削減可能な連結具の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、梁などの枝材を柱や横架材などの主材に連結するために用い、前記主材の側面に接触する前面板と、該前面板の両側端から突出し且つ前記枝材の端部に設けたスリットに差し込む側面板と、からなるコの字状の金具と、前記主材に設けたホゾ穴に嵌まり込むホゾキャップと、を備え、前記金具は、ボルトで前記主材に固定され、またドリフトピン等で前記枝材に固定され、前記前面板には、前記ホゾキャップを嵌め込む窓孔を設け、前記ホゾキャップの前記主材側の端面には、前記ボルトの軸部を挿通する前孔を設けてあり、また他端面には、前記窓孔からの抜け出しを防止するツバを設けてあることを特徴とする連結具である。
【0012】
本発明による連結具は、金具とホゾキャップの二要素で構成され、柱や梁など、木製の部材同士を連結するために使用する。金具は、中央に位置する矩形状の前面板と、この両側端から直角に突出する側面板と、からなるコの字状で、従来から普及している金具とほぼ同じ外観で、隣接する複数の部材を分離不能に一体化する。なお本発明は、木構造の様々な箇所で使用可能で、金具の前面板の表面側と面接触する部材を主材と称して、側面板が差し込まれる部材を枝材と称するものとする。そして金具は、前面板を貫通するボルトで主材に固定され、また側面板を貫通するドリフトピンなどで枝材に固定される。
【0013】
ホゾキャップは金属製の筒状で、前面板から突出しており、主材に加工したホゾ穴に嵌まり込み、金具の移動を規制するものである。従来から、前面板に押し出し加工を施して、主材のホゾ穴に嵌まり込むホゾを設ける構造は広く普及しているが、本発明によるホゾキャップは、前面板とは別途に製造して、金具に対して着脱自在であることを特徴とする。なおホゾキャップの内部には、金具を主材に固定するボルトの頭部を収容できる。またホゾキャップの両端面のうち、前面板から離れた主材側は閉じているが、その中心には、ボルトの軸部を挿通できるよう、前孔を設けてある。
【0014】
窓孔は、ホゾキャップを嵌め込むため、金具の前面板に設ける切り抜きである。ホゾキャップの嵌め込みは、原則として人手で行うため、窓孔は、ホゾキャップを無理なく嵌め込み可能な精度とする。またツバは、ホゾキャップの移動を規制するためのもので、ホゾキャップの両端面のうち枝材側に設け、外周側にせり出しており、窓孔を通過できない形状とする。なお、ホゾキャップに差し込まれたボルトを締め上げると、ツバを介して金具が主材に引き寄せられる。
【0015】
このように、連結具を金具とホゾキャップの二要素で構成して、金具の前面板に設けた窓孔にホゾキャップを嵌め込み可能とすることで、前面板からの突出物を一時的になくすことができる。そのため施工時、ホゾと主材との干渉を回避でき、金具を所定の位置まで無理なく移動可能で、その後、ホゾキャップを嵌め込むことで、一連の連結作業を円滑に進めることができる。また工場内で金具を部材に固定することができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、梁などの枝材を柱や横架材などの主材に連結するために用い、前記主材の側面に接触する前面板と、該前面板の両側端から突出し且つ前記枝材の端部に設けたスリットに差し込む側面板と、からなるコの字状の金具と、前記主材に設けたホゾ穴に嵌まり込むホゾキャップと、を備え、前記金具は、ドリフトピン等で前記枝材に固定され、前記前面板には、前記ホゾキャップを嵌め込む窓孔を設け、前記ホゾキャップの前記枝材側の端面には、前記窓孔からの抜け出しを防止するツバを設けてあり、前記ホゾキャップの前記主材側には、前記ホゾ穴の先に設けた下孔に差し込み且つ側周面に雄ネジを形成してある軸棒が突出しており、該軸棒にナットを螺合することで、前記金具を前記主材に引き寄せ可能であることを特徴とする連結具である。
【0017】
この発明は、ホゾキャップの一端から雄ネジを形成した軸棒が突出しており、ホゾキャップがボルトとしての機能を兼ね備えていることを特徴としている。軸棒は、ホゾ穴よりも小径の細長い丸棒状で、側周面に雄ネジを形成してあり、主材のホゾ穴の奥に加工した下孔に差し込む。施工時は、ホゾキャップをホゾに嵌め込み、次に、下孔を貫通した軸棒の先端にナットを螺合して締め上げると、ホゾキャップを介して金具が主材に引き寄せられる。当然ながら軸棒は、主材を貫通可能な長さとする。なお、このホゾキャップについても、ホゾ穴に嵌まり込んで金具の移動を規制する点や、窓孔からの抜け出しを防止するためツバを設けてある点は、請求項1記載のものと何ら変わりがない。
【0018】
請求項3記載の発明は、窓孔とホゾキャップとの関係を限定するもので、ツバの外周面は、主材側に向かうに連れて先細りとなるテーパ状で、また窓孔の内周面は、ツバの外周面と面接触可能なテーパ状であることを特徴とする。窓孔からホゾキャップが抜け落ちないよう、ホゾキャップの端面にはツバを設けてある。ツバの形状は自在だが、本発明のように、その外周面をテーパ状として、さらに窓孔の内周面も、大きさや傾きが等しいテーパ状として、双方を面接触させて、抜け落ちを防止することもできる。この発明は、ホゾキャップが前面板の裏面側に突出しない構成とすることができ、ホゾキャップと枝材との接触を防止できる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明のように、主材に接触する前面板と枝材に差し込む側面板とからなる金具と、主材のホゾ穴に嵌まり込むホゾキャップと、の二要素で構成される連結具を用いて、前面板に窓孔を設けて、ホゾキャップを金具に嵌め込み可能とすることで、前面板からの突出物を一時的になくすことができる。そのため施工時、ホゾと部材との干渉を回避でき、金具を所定の位置まで無理なく移動可能で、一連の作業を円滑に進めることができる。しかも工場内で金具を部材に固定可能で、現地での作業量を削減できる。また、窓孔にホゾキャップを嵌め込むことで、従来のホゾと同様、金具の移動防止や垂直荷重の伝達などの効果を得られる。
【0020】
請求項2記載の発明のように、ホゾキャップの一端には、雄ネジを形成した軸棒を設けることで、ホゾキャップにボルトとしての機能が付加される。そのため、施工時に必要な部品点数を削減でき、作業の簡素化も期待できる。
【0021】
請求項3記載の発明のように、ホゾキャップのツバの外周面と、窓孔の内周面と、を大きさや傾きが等しいテーパ状とすることで、ホゾキャップが前面板の裏面側に突出することを防止できる。そのため、ホゾキャップと枝材との干渉を考慮する必要がなく、設計時や施工時の手間が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による連結具の形状例を示す斜視図である。
【図2】図1の金具を横架材に固定する過程を示す斜視図である。
【図3】パイプと金具を固定した図2の横架材を現地に輸送して、柱と横架材を連結する過程を示す斜視図である。
【図4】図3の後、梁を連結する最終の過程を示す斜視図である。
【図5】図4の縦断面図のほか、ホゾキャップの形状例を示す縦断面図である。
【図6】図1とは異なる形状の連結具を示す斜視図で、ホゾとホゾキャップのいずれとも、上下に二個並んでいる。
【図7】請求項2に記載した連結具の形状例を示す斜視図で、ホゾキャップの一端から軸棒が突出している。
【図8】図7の連結具で三本の部材を連結する過程を示す斜視図である。
【図9】従来技術を示す斜視図で、柱と横架材と梁の三本の部材を連結する方法の具体例である。
【図10】図9に示す横架材にパイプと金具を固定した状態を示す斜視図で、下方のホゾが柱と干渉するため、柱の上面に横架材を載置できない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明による連結具の形状例を示している。この連結具は、金具11とホゾキャップ24の二要素で構成され、柱31と横架材41と梁51の三本の部材を連結するために使用する。柱31は、基礎から直立しており、また横架材41と梁51は水平に敷設され、いずれとも柱31で支持される。横架材41は柱31の上面に載置され、これらがT字状に並び、梁51は、横架材41に対して直角方向に突出する。なお横架材41と梁51の上面は、段差なく同じ高さとなるが、梁51は横架材41よりも背が高い。そのため梁51の端面は、柱31と横架材41の両方の側面と接触する。
【0024】
柱31と横架材41は、金属製のパイプ22を介して固定される。パイプ22は、柱31の上面から軸線方向に延びるパイプ穴32と、横架材41の上下面を結ぶパイプ孔42と、を貫通するように差し込み、柱31と横架材41との変位を規制する。さらにパイプ22の側周面には、反対側に貫通する横孔23を設けてあり、これにボルト27を差し込むことで、パイプ22を柱31や横架材41に固定することができる。なお柱31や横架材41には、ボルト27を差し込むため、横孔23と同心に揃う下孔35、45をあらかじめ加工しておく。
【0025】
梁51は、金具11を介して柱31と横架材41に固定される。金具11は、上下方向に延びる矩形状の前面板12と、その両側端から直角に突出する側面板13と、からなるコの字状の外観で、ボルト27を介して柱31と横架材41に固定される。また前面板12の上寄りには、円筒状に突出するホゾ14を設けてあり、これを嵌め込むため、横架材41の側面にはホゾ穴44を加工してある。なお、金具11を固定するボルト27は、ホゾ14の中に差し込む。そのため、ホゾ14の端面の中心には、ボルト27の軸部を挿通できるよう、前孔15を設けてある。
【0026】
前面板12の上寄りにはホゾ14を設けてあるが、下寄りには窓孔18を設けてある。窓孔18は、単純に前面板12を切り抜いたもので、その中にホゾキャップ24を嵌め込むことができる。ホゾキャップ24は、金属板をプレス加工で成形したもので、ホゾ14と全く同じ目的で使用するが、金具11に対して着脱自在であることを特徴としている。そのためホゾキャップ24は、ホゾ14と同様の円筒形で、柱31に面する側の端面が閉じており、その中心には、ボルト27の軸部を挿通するため、前孔25を設けてある。なお、ホゾキャップ24を嵌め込むため、柱31の側面にはホゾ穴34を加工してある。
【0027】
ホゾキャップ24の両端面のうち、前孔25の反対側にはツバ26を設けてある。ツバ26は、外周側にせり出しており、しかもその外周面は、柱31側に向けて先細りとなるテーパ状である。また窓孔18の内周面も、ツバ26の外周面と全面的に接触可能なテーパ状である。そのためツバ26は、窓孔18で受け止められ、ホゾキャップ24が柱31側に抜け落ちることはない。なお、ホゾキャップ24を窓孔18に嵌め込んだ後は、右下の図のように、同形状のホゾ14とホゾキャップ24が上下に並ぶ。
【0028】
前面板12の上寄りのホゾ14と、窓孔18から突出するホゾキャップ24には、金具11を固定するためのボルト27を差し込む。そのため柱31や横架材41のホゾ穴34、44の奥には、ボルト27の軸部を差し込むための下孔35、45を加工してある。施工時、ホゾキャップ24とホゾ14をホゾ穴34、44に嵌め込んだ後、二枚の側面板13の間からボルト27を差し込み、その先端にナット28を螺合して締め上げると、金具11は柱31や横架材41に引き寄せられる。なお柱31や横架材41の側面には、ナット28を埋め込むため、座グリ穴36、46を加工してあり、さらにナット28の陥没を防止するため、ワッシャ29を組み込んでいる。
【0029】
ボルト27は、途中でパイプ22の横孔23を貫通している。そのためボルト27を締め上げると、パイプ22の引き抜きや回転が不可能になり、柱31と横架材41が連結される。なお、柱31や横架材41に加工するホゾ穴34、44や下孔35、45などは、金具11やパイプ22などの形状に応じて位置や大きさを決めてある。
【0030】
梁51を金具11に固定する方法は、従来と何ら変わりはない。梁51の端部には、二枚の側面板13を差し込むため、二列のスリット53を加工してあり、さらに梁51の端面中央には、前面板12を埋め込むため、段差部52を加工してある。また梁51と金具11は、ドリフトピン57を介して固定される。そのため側面板13には、ドリフトピン57を差し込むため、側孔17を上下に三列設けてあり、その上には、ドリフトピン57を受け止めるため、側溝16を設けてある。そして梁51の側面には、側孔17や側溝16と同心となるピン孔54を上下に四列加工してある。
【0031】
側面板13は二枚とも同形状で、側孔17や側溝16は同心に揃っている。またピン孔54は、二列のスリット53と交差して反対面に到達しており、摩擦だけでドリフトピン57を移動不能に保持できる。なお施工時は、一番上のピン孔54にのみ、あらかじめドリフトピン57を打ち込んでおき、これを側溝16で受け止めることで、梁51を金具11に仮置きできる。
【0032】
本発明による連結具は、各種木構造で汎用的に使用できる。そのため、金具11の前面板12の表面側が接触する部材(この図では柱31と横架材41)を主材と称して、また金具11の側面板13が差し込まれる部材(この図では梁51)を枝材と称するものとする。主材には、ホゾキャップ24を嵌め込むため、少なくとも一箇所のホゾ穴を加工する必要がある。
【0033】
図2は、図1の金具11を横架材41に固定する過程を示している。図1の柱31と横架材41と梁51を連結する際は、最初にこの図のように、横架材41にパイプ22と金具11を固定する。なお横架材41は、パイプ孔42の中心で切断した状態で描いてある。横架材41の側面に加工したホゾ穴44に金具11のホゾ14を嵌め込み、またパイプ孔42にパイプ22を差し込み、上方の横孔23を下孔45と同心に揃える。次に、二枚の側面板13の間からホゾ14中心の前孔15に向けてボルト27を差し込み、その先端を横孔23から座グリ穴46に到達させる。その後、ボルト27の先端にワッシャ29を組み込み、さらにナット28を螺合して締め上げると、金具11が横架材41の側面に密着して固定され、パイプ22も横架材41に固定される。
【0034】
パイプ22と金具11を横架材41に固定し終えると、横架材41の下面からパイプ22が突出しているほか、金具11の下半分も横架材41の下面から突出している。ただし後の作業を考慮して、窓孔18には何も嵌め込んでいない。この図のように、パイプ22と金具11を横架材41に固定する作業は、現地で行う必要がなく、横架材41を製材した直後に、工場内で実施できる。その分だけ現地での作業を削減でき、時間短縮などの効果を得られる。
【0035】
図3は、パイプ22と金具11を固定した図2の横架材41を現地に輸送して、柱31と横架材41を連結する過程を示している。なお柱31や横架材41は、パイプ穴32やパイプ孔42の中心で切断した状態で描いてある。柱31を基礎などに据え付けて直立させた後、横架材41を吊り上げ、横架材41の下面から突出するパイプ22を柱31の上面のパイプ穴32に差し込む。その際、金具11の前面板12は、柱31の側面を滑るように移動していく。そして、横架材41の下面が柱31の上面に接触すると、柱31のホゾ穴34や下孔35は、金具11の窓孔18やパイプ22の横孔23と同心に揃う。そこで、二枚の側面板13の間から窓孔18にホゾキャップ24を嵌め込むと、その前方がホゾ穴34に嵌まり込む。
【0036】
図4は、図3の後、梁51を連結する最終の過程を示している。ホゾキャップ24の中心にボルト27を差し込み、その先端にナット28を螺合して締め上げると、金具11は、上下二本のボルト27で柱31と横架材41に固定される。ボルト27は、パイプ22も貫通しており、柱31と横架材41は、パイプ22を介して連結される。
【0037】
柱31と横架材41の連結が完了した後、梁51の端部を金具11に接近させていき、側面板13をスリット53に差し込んでいく。なお、梁51の側面に並ぶ四列のピン孔54のうち、一番上にはあらかじめドリフトピン57を打ち込んであり、これを金具11の側溝16に落とし込むことで、梁51が金具11に仮置きされる。その後、残りのピン孔54にドリフトピン57を打ち込むと、下方の図のように、柱31と横架材41と梁51の連結が完了する。
【0038】
図5は、図4の縦断面のほか、ホゾキャップ24の形状例を示す縦断面である。パイプ22は、柱31と横架材41を貫くように差し込まれており、さらにパイプ22の側周面にはボルト27が差し込まれており、柱31と横架材41は、パイプ22を介して連結されている。また金具11には、ホゾキャップ24が嵌め込まれている。金具11の上寄りのホゾ14は、横架材41のホゾ穴44に嵌め込まれ、ホゾキャップ24は、柱31のホゾ穴34に嵌め込まれている。
【0039】
ホゾ14とホゾキャップ24の中には、ボルト27が差し込まれており、ボルト27にナット28を螺合して、金具11を柱31と横架材41に引き寄せている。また梁51は、ドリフトピン57を介して金具11に固定されている。なお梁51の端面には、前面板12を埋め込むため段差部52を加工してあり、これよりも外側に限り、梁51の端面が柱31や横架材41の側面と接触する。そのほかボルト27の頭部は、ホゾ14やホゾキャップ24の内部に収容されており、梁51と干渉することはない。
【0040】
ホゾキャップ24は、窓孔18に嵌め込み可能であれば、詳細な形状は自在に決めることができ、左下の「ホゾキャップの形状例1」のように、ツバ26の外周面をテーパ状として、窓孔18の内周面もテーパ状とすることが多い。これは、ホゾキャップ24を窓孔18に嵌め込んだ際、前面板12の裏面側にホゾキャップ24が突出しないようにして、梁51との干渉を防止するためである。なお製造上の都合などがあれば、右下の「ホゾキャップの形状例2」のように、端面にフランジ状のツバ26を設けても構わない。ただし窓孔18に嵌め込んだ際、前面板12の裏面側にツバ26が突出する。
【0041】
図6は、図1とは異なる形状の連結具を示している。この連結具は、強度を向上するためホゾキャップ24を二個嵌め込む構成になっており、金具11の前面板12には、上下に二個の窓孔18を設けてある。またホゾ14も上下に二個設けてある。この金具11に応じて、パイプ22も長尺化しており、横孔23を四列設けてある。さらに、柱31や横架材41に加工するホゾ穴34、44なども、上下に二列となっている。このように、本発明による連結具は、最低一個のホゾキャップ24を用いるならば、他の要素は自在に決めることができ、前面板12にはホゾ14を一切設けず、窓孔18だけを設けても構わない。
【0042】
図7は、請求項2に記載した連結具の形状例を示しており、ホゾキャップ20の一端から軸棒21が突出している。図1などに示すホゾキャップ24は、別途にボルト27を用いて主材31に固定するが、このホゾキャップ20は、ホゾとして機能する大径の部分と、その先端から延びる小径の軸棒21と、からなり、軸棒21の側周面に雄ネジを形成してあり、ボルトとしての機能を兼ね備えている。またホゾキャップ20の端面には、ツバ26と六角穴19を形成してある。ツバ26は、窓孔18から抜け落ちを防止するためのもので、六角穴19は、ナット28を螺合する際に使用する。そのほか金具10は、図1などに示す金具11と同形状である。
【0043】
図8は、図7の連結具で三本の部材を連結する過程を示している。図2と同じ要領でパイプ22と金具10を横架材41に固定した後、パイプ22を柱31に差し込み、横架材41を柱31の上面に載置して、次に、窓孔18にホゾキャップ20を差し込む。そしてホゾキャップ20をホゾ穴34に嵌め込むと、軸棒21は下孔35に差し込まれ、パイプ22の横孔23を貫通して座グリ穴36に到達する。さらに軸棒21にナット28を螺合して締め上げると、ホゾキャップ20を介して金具10が柱31に引き寄せられる。
【符号の説明】
【0044】
10 金具
11 金具
12 前面板
13 側面板
14 ホゾ
15 前孔
16 側溝
17 側孔
18 窓孔
19 六角穴
20 ホゾキャップ
21 軸棒
22 パイプ
23 横孔
24 ホゾキャップ
25 前孔
26 ツバ
27 ボルト
28 ナット
29 ワッシャ
31 柱(主材)
32 パイプ穴
34 ホゾ穴
35 下孔
36 座グリ穴
41 横架材(主材)
42 パイプ孔
44 ホゾ穴
45 下孔
46 座グリ穴
51 梁(枝材)
52 段差部
53 スリット
54 ピン孔
57 ドリフトピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁などの枝材(51)を柱や横架材などの主材(31、41)に連結するために用い、
前記主材(31、41)の側面に接触する前面板(12)と、該前面板(12)の両側端から突出し且つ前記枝材(51)の端部に設けたスリット(53)に差し込む側面板(13)と、からなるコの字状の金具(11)と、
前記主材(31)に設けたホゾ穴(34)に嵌まり込むホゾキャップ(24)と、
を備え、
前記金具(11)は、ボルト(27)で前記主材(31、41)に固定され、またドリフトピン(57)等で前記枝材(51)に固定され、
前記前面板(12)には、前記ホゾキャップ(24)を嵌め込む窓孔(18)を設け、
前記ホゾキャップ(24)の前記主材(31、41)側の端面には、前記ボルト(27)の軸部を挿通する前孔(25)を設けてあり、また他端面には、前記窓孔(18)からの抜け出しを防止するツバ(26)を設けてあることを特徴とする連結具。
【請求項2】
梁などの枝材(51)を柱や横架材などの主材(31、41)に連結するために用い、
前記主材(31、41)の側面に接触する前面板(12)と、該前面板(12)の両側端から突出し且つ前記枝材(51)の端部に設けたスリット(53)に差し込む側面板(13)と、からなるコの字状の金具(10)と、
前記主材(31)に設けたホゾ穴(34)に嵌まり込むホゾキャップ(20)と、
を備え、
前記金具(10)は、ドリフトピン(57)等で前記枝材(51)に固定され、
前記前面板(12)には、前記ホゾキャップ(20)を嵌め込む窓孔(18)を設け、
前記ホゾキャップ(20)の前記枝材(51)側の端面には、前記窓孔(18)からの抜け出しを防止するツバ(26)を設けてあり、
前記ホゾキャップ(20)の前記主材(31、41)側には、前記ホゾ穴(34)の先に設けた下孔(35)に差し込み且つ側周面に雄ネジを形成してある軸棒(21)が突出しており、該軸棒(21)にナット(28)を螺合することで、前記金具(10)を前記主材(31、41)に引き寄せ可能であることを特徴とする連結具。
【請求項3】
前記ツバ(26)の外周面は、前記主材(31、41)側に向かうに連れて先細りとなるテーパ状で、また前記窓孔(18)の内周面は、該ツバ(26)の外周面と面接触可能なテーパ状であることを特徴とする請求項1または2記載の連結具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−113020(P2013−113020A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260942(P2011−260942)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(501138161)
【Fターム(参考)】