説明

連結式アウターローターモーター

【課題】専用設計されたモーターでは、それぞれの用途に応じて最適な仕様となっている為、モーターとしての効率は良いものの、用途別に多数の種類を開発しなければならず、その結果、1種類毎の生産数量が少なくなってしまい、量産効果が望めず、コストを下げる事ができい。
【解決手段】モーターのステータとローターを、それぞれ軸方向に3分割し、中央部分の長さを変更する、又は長さの異なる部品に交換する事で、コストを上げずに、複数の仕様・出力のモーターを提供可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として乗り物・輸送機器・産業機械・家電製品に使用されるモーターで、固定されたステータの外周を、ローターが回転する、アウターローターモーターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車用のインホイールモーターとしてアウターローターモーターが主力になりつつあるが、まだ研究段階の域を脱しておらず、モーターは個別に、専用設計されたものが使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
専用設計されたモーターでは、それぞれの用途に応じて最適な仕様となっている為、モーターとしての効率は良いものの、用途別に多数の種類を開発しなければならず、その結果、1種類毎の生産数量が少なくなってしまい、量産効果が望めず、コストを下げる事ができい。
コストが下がらない事で普及が遅れ、普及が遅れればさらにコストが上がってしまうとの悪循環を起こしている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
モーターのステータとローターを、それぞれ軸方向に3分割し、中央部分の長さを変更する又は長さの異なる部品に交換する事で、コストを上げずに、複数の仕様・出力のモーターを提供可能にする。
具体的には、請求項1から請求項10のいずれかに記載された通りに構成する。
【発明の効果】
【0005】
従来、例えば5種類の出力・仕様のモーターを必要とする場合、ローターもステータも5種類を開発しなければならない。しかし本発明によれば、3分割されたモーターを、1種類開発し、中央部分のステータとローターのみ、4種類追加すれば良い。
その結果、開発費用が大幅に削減されると共に、物流や在庫品保管の際にも場所を取らず、トータルで大幅なコストダウンが可能となる。即ち、量産・市販仕様として最適な構成が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
アウターローターモーターにおいて、固定されたステータと回転するローターを、それぞれ軸方向に3分割した上、連結して使用する。ステータとローターの中央部は、長さが異なる部品と交換する事により、モーターの出力又は、回生制動時の制動力又は、発電機として使用時の発電容量を変更できる。
また、ステータの配線は、それぞれ連結部を直接連結し、配線の途中からコイルへ接続する事で、連結したステータが並列接続となる。
【実施例】
【0007】
本発明の実施例は、請求項1から10で詳述された通りである。その一例を次に示す。
【0008】
図1は、本発明品のアウターローターモーターである。回転軸、即ち、被駆動軸6の端部にはスプライン7が設けられ、ローター8のスプラインと嵌合している。ローター8は、ワッシャ11とボルト12にて、回転軸6に固定されている。尚、図1は、軸心1に対して対称なので、下半分は省略してある。
ローター8は、3分割されたローターの末端部であり、中央部9及び固定部10と組合せられ、一体となって回転する。ステータ3は、車両・工作機械・家電など、モーターを使う装置2に取り付けられ、中央部4と末端部5の各ステータと組合せて使用される。
ここで、ローター9及びステータ4を、軸方向長さの異なる部品と交換すれば、モーター全体を新作するよりも遥かに低コストで、出力・仕様の異なるモーターを得る事ができる。尚、回転軸6を固定部2に取り付け、スプライン嵌合部7をベアリングにしても良い。
この場合は、固定された軸上をローターが回転する事になり、電気自動車のインホイールモーターなどに利用できる。以上が、請求項1から請求項3に記載の本発明の実施例である。
【0009】
図2は、本発明品のアウターローターモーターの、ステータ内の配線を示す模式図である。19は、ステータの中央部4の配線を表し、ステータの末端部と接続する為の雄コネクタ13と、ステータの固定部と接続する為のコネクタ14と、コイル15が、19の様に結線されている。ステータの固定部3の配線も同様に、雄コネクタ16、雌もネクタ17、コイル18が、20の様に結線されている。ステータの末端部5の内部結線は、中央部4と同様であるが、末端なので雄コネクタ13を廃止した構成とする。
この構成により、ステータ3・4・5を連結した際、コイルに流れる電流が並列接続となり、電圧を一定に保つ事ができる。また、中央部のステータ4のサイズが変わった場合や、中央部のステータを複数接続した場合でも、同様に電圧を一定に保つ事ができる上、コネクタの雄雌を間違えると絶対に接続できない為、誤組みの防止となる。
尚、図2は模式図であるが、実際のコネクタは、ステータの接続面から突出しない形状とする。以上が、請求項4から請求項6に記載の本発明の実施例である。
【0010】
図3は、本発明品のアウターローターモーターの、ローターの嵌合部の構成を表し、図1と同様、軸心1に対して対称となる為、下半分は省略してある。
ローターの末端部21と、中央部22と、固定部23は、それぞれテーパー面25及び24で、同軸上を回転する様に構成される。この状態で、貫通孔27にボルト(図示無し)を通してメネジ26で締め付ける。尚、ボルトは、軸心1に対して回転対称となる様に複数配置する。この構成により、組合せたローターは、同一軸上をバランス良く回転できる。
また、図示していないが、スプライン7をベアリングに変更し、ローターの中央部22の外周面にギアやベルト用のプーリー形状を設ければ、ローターの外周から回転力を取り出す事が可能となる。さらに、ローターの外周に、直接ホイールを装置すれば、交換式のインホイールモーターとして利用できる。
尚、各ローターの一部を遠心式ポンプとして活用すれば、モーターの空冷が可能となる。以上が、請求項7から請求項10に記載の本発明の実施例である。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明によれば、用途、必要出力、出力特性が複数存在する場合でも、モーター全体を数種類作る必要が無く、中央部のローターとステータだけ、複数の種類を用意すれば良く、生産効率が飛躍的に上がり、在庫量も減らす事ができる。
また、複数の中央部ステータを連結しても、常にコイルへの給電は並列接続になる為、利便性が高く、誤組みも発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明品の断面図であり、軸心に対して対象である為、下部を省略してある。
【図2】本発明の、ステータの配線を模式化した図である。
【図3】本発明品のローター部のみの断面図であり、図1同様、下部を省略してある。
【符号の説明】
【0013】
1、軸心
2、固定部(車両においては、車体フレームなど)
3、ステータの固定部
4、ステータの中央部
5、ステータの末端部
6、回転軸(被駆動軸であり、出力軸)
7、スプライン嵌合部
8、ローターの末端部
9、ローターの中央部
10、ローターの固定部
11、ローター固定用のワッシャ
12、ローター固定用のボルト
13、ステータの中央部の、雄のコネクター
14、ステータの中央部の、雌のコネクター
15、ステータの中央部の、コイル
16、ステータの固定部の、雄のコネクター
17、ステータの固定部の、雌のコネクター
18、ステータの固定部の、コイル
19、ステータの中央部の配線
20、ステータの固定部の配線
21、テーパー嵌合型ローターの、末端部
22、テーパー嵌合型ローターの、中央部
23、テーパー嵌合型ローターの、固定部
24、テーパー嵌合部(ローターの、固定部と中央部)
25、テーパー嵌合部(ローターの、中央部と末端部)
26、メネジ(ボルト嵌合用)
27、貫通孔
28、凹部(ボルト頭部の埋設用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動軸にローターをスプライン嵌合、又は圧入、又はテーパー嵌合、又はねじ止め、又はこれらの組合せによって被駆動軸を回転させて動力を取り出す構成、又は固定された軸上を、ベアリングを介してローターが回転し、ローターの軸方向端面、又は外周面から駆動力を取り出す構成のアウターローターモーターにおいて、ステータとローターの軸方向長さを伸縮自在に構成した事を特徴とする、連結式アウターローターモーター。
【請求項2】
ローターとステータは、それぞれを固定部・中央部・末端部と、軸方向に3分割し、中央部を、軸方向長さの異なる部品に交換することにより、モーター全体の軸方向長さを変更可能に構成した事を特徴とする、請求項1に記載の連結式アウターローターモーター。尚、ステータの固定部とは、モーター本体を装置の台座や車体に取り付ける為の、取り付け部材を備えた部分を指し、ステータの末端部とは、その反対側の部分を指す。また、ローターの末端部とは、被回転物を取り付ける、又は被回転物へ動力を伝達する為の接続装置を備えた部分を指し、ローターの固定部とは、その反対側で、ステータの固定部の外側で回転する部分を言う。
【請求項3】
ローターとステータは、それぞれを固定部・中央部・末端部と、軸方向に3分割し、中央部は、複数のローターとステータを連結する事により、モーター全体の軸方向長さを変更可能に構成した事を特徴とする、請求項1に記載の連結式アウターローターモーター。尚、ステータの固定部とは、モーター本体を装置の台座や車体に取り付ける為の、取り付け部材を備えた部分を指し、ステータの末端部とは、その反対側の部分を指す。また、ローターの末端部とは、被回転物を取り付ける、又は被回転物へ動力を伝達する為の接続装置を備えた部分を指し、ローターの固定部とは、その反対側で、ステータの固定部の外側で回転する部分を言う。
【請求項4】
ステータの固定部・中央部・末端部の、各接続面に、通電用の電源コネクタを設け、このコネクタは、電気接点のみが接続面から露出し、コネクタ本体は接続面に埋設した事を特徴とする、請求項2及び3に記載の連結式アウターローターモーター。
【請求項5】
以下の構成により、各ステータへの電源供給用配線を並列接続した事を特徴とする、請求項2から4のいずれか1項に記載の連結式アウターローターモーター。尚、モーター本体を、回生ブレーキや発電機として使用する場合は、電源供給用配線を電力回収用配線と読み替える。
1,ステータの固定部の配線は、装置や車体に取り付けて電源供給を受ける配線コネクタと、ステータの中央部と接続する為の電源コネクタとを直結し、固定部のコイルには、この直結配線から分岐して電源供給する様に装置した。
2,ステータの中央部の配線は、固定部側の電源コネクタと、末端部側の電源コネクタとを直結配線し、中央部のコイルには、この直結配線から分岐して電源供給する様に装置した。
【請求項6】
ステータの中央部の電源コネクタは、固定部側と末端部側との組合せのみが物理的に接続可能な形状とし、固定部側と固定部側、末端部側と末端部側では接続不可となる様に構成した事を特徴とする、請求項4及び5に記載の連結式アウターローターモーター。
【請求項7】
ローターを、以下のいずれかの構成とした事を特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の連結式アウターローターモーター。
1,固定部・中央部・末端部の各接続部は、テーパー面によるインロー嵌合とし、各部分を軸方向に貫通する孔に通したボルトで、軸方向に締め上げて固定した。締結は、末端部に雌ねじを設け、中央部・末端部を貫通するボルトで末端部側から締め上げる構成とした。
尚、ボルトの本数は複数とし、その配置は、回転軸に対して回転対称とする。
2,固定部・中央部・末端部の各接続部は、テーパーねじとする。尚、ねじ締め上げ後、外側面から回転軸中心方向への止めねじ、又はリベット、又はピンの圧入により、緩み止めを施す構成も含み、止めねじ、リベット、ピンの本数は複数とし、その配置は、回転軸に対して回転対称とする、、又は1本として、ローターにバランス取り加工を施す。
3,固定部・中央部・末端部の各接続部は、焼き嵌め、又はテーパー嵌合による焼き嵌め、又はローターの外周にリング状の金属環を焼き嵌めした。
【請求項8】
ローターの固定部・中央部・末端部のいずれかの外周に、ギア、又はベルト駆動用のプーリーを圧入、又は一体成形、又は一体加工、又はねじ止め、又はテーパー嵌合によって取り付け、外周から駆動力を取り出す事を可能に構成した事を特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の連結式アウターローターモーター。
【請求項9】
中央部又は末端部のローターの外周に、車輪のホイールを取り付けた、又は一体成形した、又は圧入した、又はリベット止めした、又はネジ止めした事を特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の連結式アウターローターモーター。尚、ローターの外周にフランジを設け、フランジに開けた貫通孔や、フランジに取り付けたボルトを利用してホイールを取り付ける構成も含む。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかの構成において、ステータ又はステータが取り付けられた固定部に密封用シールを取り付け、そのリップ部をローターの内周面、又は端面に接触させ、ゴミや水がローターの内側に入らない様に、即ち、ステータにゴミや水が触れない様に装置するとともに、以下のいずれかの構成とした事を特徴とする、連結式アウターローターモーター。
1,ステータ取り付け部近傍に貫通孔を設け、ローターの内側の空間と外気とを連通させた。
尚、外気と連通させる構成は、貫通孔にパイプを取り付け、パイプの解放端を回転軸よりも上部、又は下部に装置した構成や、外気と連通する部分に弁を設けた構成も含む。
2,ステータ取り付け部近傍に貫通孔を設け、ローターの内側の空間と外気とを連通させると共に、ローターの外周に遠心力で開く弁を設け、ローターの回転によるポンプ作用で、ローター内の空気を吐出する様に構成した。
尚、外気と連通させる構成は、貫通孔にパイプを取り付け、パイプの解放端を回転軸よりも上部、又は下部に装置した構成や、外気と連通する部分に弁を設けた構成も含む。また、弁を取り付けた遠心式ポンプをローターに取り付けた構成や、末端部・中央部・固定部のいずれかのローターのみを、遠心式ポンプとした構成も含む。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−17369(P2013−17369A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159374(P2011−159374)
【出願日】平成23年7月2日(2011.7.2)
【出願人】(512197032)
【Fターム(参考)】