説明

連結金具及びこれを備えたフレーム並びにこれを用いた建築物

【課題】C型鋼の両リップ間を通して、当該C型鋼を補強可能となるように両フランジ間に取り付け可能な連結金具及びこれを備えたフレーム並びにこれを用いた建築物を提供すること。
【解決手段】挿入姿勢で各リップ7d、7e間を通して各フランジ7b、7c間に挿入可能な帯状部14及び背板11と、帯状部14及び背板11が各フランジ7b、7c間に挿入された状態で、梁5Eを接続可能な接続部15とを備え、帯状部14は、挿入姿勢から所定角度だけ回転した取付姿勢において、C型鋼7の両フランジ7b、7cの内側面にそれぞれ当接可能な一対の当接部14b、14cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物(例えば、家屋)に用いられるフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物に用いられるフレームとして、例えば、特許文献1に開示される鉄骨構造住宅の躯体が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の躯体は、第1のH型鋼と、この第1のH型鋼の溝の開放口に対し先端部が突き合わされた状態で結合される第2のH型鋼と、前記第1のH型鋼に前記第2のH型鋼を結合するための形鋼結合金具とを備えている。
【0004】
前記第1のH型鋼は、ウェブと、このウェブを上下に挟む一対のフランジとを有する。形鋼結合金具は、第1のH型鋼の両フランジに密着するように両フランジ間に嵌合する。このように形鋼結合金具が第1のH型鋼の両フランジ間(溝内)に嵌合することにより、形鋼結合金具は、第1のH型鋼の補強にも寄与する。
【0005】
前記第2のH型鋼は、第1のH型鋼の両フランジ間に嵌合した形鋼結合金具に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−327495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、建築物に用いられるフレームとしては、H型鋼に代えてC型鋼を用いることがある。具体的に、C型鋼は、ウェブと、ウェブの両端から立ち上がる一対のフランジと、これらフランジから内側に屈曲するリップとを有する。
【0008】
ここで、特許文献1に記載の形鋼結合金具は、両フランジ間に密着する大きさを有する一方、C型鋼の各リップの間隔は各フランジの間隔よりも狭い。そのため、C型鋼の各リップ間を通して形鋼結合金具を取り付けようとすると、両リップが障害となる。
【0009】
ここで、特許文献1に記載の形鋼結合金具をC型鋼の両リップの間隔よりも小さくすることが考えられる。しかし、このようにすると、形鋼結合金具とC型鋼の両フランジとの間に隙間が生じ、形鋼結合金具によって両フランジを内側から支持することができない。そのため、形鋼結合金具によるC型鋼の補強作用が低下する。
【0010】
本発明の目的は、C型鋼の両リップ間を通して、当該C型鋼を補強可能となるように両フランジ間に取り付け可能な連結金具及びこれを備えたフレーム並びにこれを用いた建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、ウェブと前記ウェブの両端から立ち上がる一対のフランジと前記各フランジからそれぞれ内側に屈曲する一対のリップとを有するC型鋼に取付可能であり、フレーム材の一方の端部を接続するための連結金具であって、特定の挿入姿勢で前記各リップ間を通して前記各フランジ間に挿入可能な挿入部と、前記挿入部が前記各フランジ間に挿入された状態で、前記フレーム材を接続可能な接続部とを備え、前記挿入部は、前記挿入姿勢から所定角度だけ回転した取付姿勢において、前記C型鋼の両フランジの内側面にそれぞれ当接可能な一対の当接部を有する、連結金具を提供する。
【0012】
本発明では、特定の挿入姿勢で各リップ間を通して各フランジ間に挿入可能で、かつ、挿入姿勢から回転した取付姿勢で両フランジの内側面に当接可能な一対の当接部を有する挿入部を備えている。そのため、挿入姿勢とされた挿入部を両リップ間を通して各フランジ間に挿入することができるとともに、挿入部を取付姿勢に回転させることにより、一対の当接部によって各フランジを内側から支持することができる。
【0013】
したがって、本発明によれば、C型鋼の両リップ間を通して、当該C型鋼を補強可能となるように両フランジ間に取付可能な連結金具を提供することができる。
【0014】
前記連結金具において、前記挿入部は、前記一対の当接部を互いに連結する連結部をさらに備え、前記一対の当接部及び前記連結部は、1枚の取付板が折り返されることにより形成され、前記連結部は、前記取付姿勢で前記両フランジに直交する方向に向くように配置されていることが好ましい。
【0015】
この態様では、連結部が取付姿勢で両フランジに直交する方向に向くように配置されている。そのため、各フランジが近接する方向に向けたC型鋼の変形を抑制するのに連結部が寄与することにより、より有効にC型鋼の補強を行うことができる。しかも、前記態様では、連結部と前記一対の当接部とが1枚の取付板を折り返すことにより形成されている。そのため、各当接部及び連結部を別々の部材として準備する場合と比較して、部品コストを低減することができる。
【0016】
前記連結金具において、前記一対の当接部は、前記連結部に対して互いに逆向きで、かつ、前記連結部に対して直角に折り返された前記取付板の両端部であることが好ましい。
【0017】
この態様では、一対の当接部が連結部に対して互いに逆向きで、かつ、連結部に対して直角に折り返されている。そのため、各当接部と連結部との折り返し部分が先行するように挿入部を回転させることにより、各フランジに対する摺動抵抗を抑えつつ挿入部を各フランジ間に確実に嵌合させることができる。具体的に、連結部の長手方向の中点位置である挿入部の回転中心から当接部の先端部までの第2の回動半径は、前記回転中心から前記折り返し部分までの第1の回動半径よりも大きく、かつ、第2の回動半径を倍にした距離は、各フランジ間の距離よりも大きい。したがって、各当接部の先端部が先行するように回転させる場合には、各当接部と各フランジとが常に接触した状態となり、両者の摺動抵抗が大きくなる。これに対し、折り返し部分が先行するように挿入部を回転することにより、各フランジに対する摺動抵抗を抑えつつ各当接部を各フランジに当接させることができる。そして、挿入部を取付姿勢に回転することにより、各フランジに対し各当接部が平行し、かつ、連結部が垂直となる姿勢で挿入部が各フランジ間に嵌合する。
【0018】
前記連結金具において、前記挿入部は、前記一対の当接部及び前記連結部において、前記取付板の側端面が突き合せ溶接された背板をさらに備えていることが好ましい。
【0019】
この態様では、取付板の側端面が突き合せ溶接された背板をさらに備えている。そのため、取付板の折り返しの形態(各当接部及び連結部の折り返しの形態)を背板によって保持することにより、C型鋼の補強をより確実にする。しかも、背板は、C型鋼のウェブに沿って配置されるため、背板自体の剛性も各フランジが近接する方向に向かうC型鋼の変形の抑制に寄与する。
【0020】
前記連結金具において、前記挿入部は、前記一対の当接部及び前記連結部において、前記取付板の側端面が突き合せ溶接された背板をさらに備え、前記背板は、前記挿入姿勢において前記連結部と前記一対の当接部との2つの折り返し部の間の範囲のみに設けられていることが好ましい。
【0021】
この態様では、前記挿入姿勢において背板が2つの折り返し部の間の範囲のみに設けられている。そのため、挿入姿勢において背板が各リップに接触するのを抑制することができるとともに、この挿入姿勢から取付姿勢に至る挿入部の回転の過程においても、背板が各フランジに接触するのを抑制することができる。
【0022】
前記連結金具において、前記接続部は、前記挿入部が前記各フランジ間に挿入された状態で、前記連結部から前記各リップ間を通って前記C型鋼の外側に延びるように形成された前記取付板の一部であることが好ましい。
【0023】
この態様では、接続部が取付板の一部である。つまり、この態様では、1枚の取付板によって一対の当接部、連結部、及び接続部が形成されている。そのため、前記接続部を単独の部品として準備する場合と比較して、部品点数を減らすことによりコストの低減を図ることができる。
【0024】
前記連結金具において、前記フレーム材は、前記C型鋼と同等の断面形状を有する2本のフレーム材用C型鋼が前記ウェブ同士を対向させた状態で連結されることにより形成され、前記接続部は、前記2本のフレーム材用C型鋼のウェブ間に挟まれた状態で、前記両ウェブに対してボルトで固定可能であることが好ましい。
【0025】
この態様では、2本のフレーム材用C型鋼のウェブ間に挟まれた状態で接続部が両ウェブに対してボルトで固定可能である。そのため、上述のように取付板の一部である板状の接続部を、ボルトによってフレーム材用C型鋼に容易に固定することができる。
【0026】
また、前記態様では、前記C型鋼と同等の断面形状を有するフレーム材用C型鋼を用いてフレーム材を形成している。そのため、C型鋼及びフレーム材の部品コストを低減することができる。具体的に、長尺のC型鋼である長尺鋼を形成するとともに、この長尺鋼を裁断することによりC型鋼及びフレーム材を製造することが可能となる。したがって、C型鋼及びフレーム材について製造工程の重複部分を増やすことができるため、これらの製造コストを低減することができる。
【0027】
前記連結金具において、前記一対の当接部は、それぞれ前記当接部が当接する前記フランジに対してボルトで固定可能であることが好ましい。
【0028】
この態様では、一対の当接部と各フランジとがボルトによって固定可能である。そのため、この連結金具にフレーム材を接続することにより、C型鋼に対してフレーム材を確実に固定することができる。
【0029】
また、前記態様では、一対の当接部がフランジに対して固定可能である。そのため、連結金具を用いた建築物の建設作業を簡素化することができる。具体的に、建築物の建設作業では、例えば、C型鋼を枠状に組み付けた後、このC型鋼の外側に当該C型鋼のウェブと平行するように外壁パネルを取り付ける。次いで、連結金具を用いてC型鋼に対してフレーム材を取り付ける。ここで、外壁パネルを取付けた後においては、C型鋼のウェブが外側から外壁パネルによって覆われている。そのため、当該ウェブの内外にボルトとナットとを配置して両者を螺合させることは困難である。そこで、前記態様のように、連結金具が各フランジに取付可能であることにより、外壁パネルをC型鋼に取り付けた後であっても、C型鋼に対して容易にフレーム材を取り付けることができる。
【0030】
また、本発明は、ウェブと、前記ウェブの両端から立ち上がる一対のフランジと、前記各フランジからそれぞれ内側に屈曲する一対のリップとを有するC型鋼と、前記C型鋼に接続されるフレーム材と、前記C型鋼に取り付けられるとともに、前記フレーム材の一方の端部が接続された上記連結金具とを備えている、フレームを提供する。
【0031】
さらに、本発明は、基礎と、前記基礎上に設けられた上記フレームとを備えている、建築物を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、C型鋼の両リップ間を通して、当該C型鋼を補強可能となるように両フランジ間に取り付け可能な連結金具及びこれを備えたフレーム並びにこれを用いた建築物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る家屋を示す斜視図である。
【図2】図1のフレームを拡大して示す分解斜視図である。
【図3】図2の連結金具を拡大して示す斜視図である。
【図4】図3の連結金具を示す平面図である。
【図5】図3の連結金具を示す側面図である。
【図6】図3の連結金具のC型鋼に対する取り付け手順を示す正面図であり、連結金具が挿入姿勢とされた状態を示すものである。
【図7】図3の連結金具のC型鋼に対する取り付け手順を示す正面図であり、連結金具が取付姿勢とされた状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係る家屋を示す斜視図である。
【0036】
図1を参照して、建築物の一例としての家屋1は、基礎2と、この基礎2上に設けられた家屋本体3とを備えている。
【0037】
家屋本体3は、前記基礎2上に立設された複数の柱4(図1では1本の柱4を示す)と、これらの柱4に対して水平方向に接続された複数の梁5A〜5Eと、これら梁5A〜5E同士を連結するための連結金具6(図2参照)とを備えている。
【0038】
複数の梁5A〜5Eは、例えば、次のようなものである。梁5A〜5Cは、2本の柱4の間に設けられている。梁5Dは、前記梁5Bの途中部に対して突き合わされた状態で当該梁5Bに接続された第1端と、前記梁5Cの途中部に対して付き合わされた状態で当該梁5Cに接続された第2端とを有する。梁5Eは、前記梁5Aの途中部に対して突き合わされた状態で当該梁5Aに接続された第1端と、前記梁5Dの途中部に対して突き合わされた状態で当該梁5Dに接続された第2端とを有する。
【0039】
連結金具6は、例えば、前記梁5Dと梁5B及び梁5Cとの間、並びに前記梁5Eと梁5A及び梁5Dとの間にそれぞれ設けられている。以下、図2〜図7を参照して、梁5D及び梁5Eの構成について説明した上で、梁5Dと梁5Eとの間に設けられた連結金具6について説明する。
【0040】
梁5Dは、同等の断面形状を有する2本のC型鋼7、8が互いに連結されたものである。具体的に、C型鋼7は、ウェブ7aと、ウェブ7aの両端から立ち上がる一対のフランジ7b、7cと、これらフランジ7b、7cからそれぞれ内側に屈曲する一対のリップ7d、7eとを有する。C型鋼8は、ウェブ8aと、ウェブ8aの両端から立ち上がる一対のフランジ8b、8cと、これらフランジ8b、8cからそれぞれ内側に屈曲する一対のリップ8d、8eとを有する。ウェブ7aとウェブ8aとが背中合わせに対向した状態で、C型鋼7とC型鋼8とが図外のボルトによって連結されることにより梁5Dが構成されている。また、前記一対のフランジ7b、7cには、後述する連結金具6を固定するためのボルトB1を挿通させる挿通穴7f、7gがそれぞれ形成されている。なお、本実施形態では、C型鋼8に連結金具6を取り付ける場合を想定して、C型鋼8の両フランジ8b、8cにも挿通穴8fが形成されている。
【0041】
梁5Eは、梁5DのC型鋼7、8と同等の断面形状を有する2本のC型鋼9、10が互いに連結されたものである。具体的に、C型鋼9は、ウェブ9aと、ウェブ9aの両側から立ち上がる一対のフランジ9b、9cと、これらフランジ9b、9cからそれぞれ内側に屈曲する一対のリップ9d、9eとを有する。C型鋼10は、ウェブ10aと、ウェブ10aの両側から立ち上がる一対のフランジ10b、10cと、これらフランジ10b、10cからそれぞれ内側に屈曲する一対のリップ10d、10eとを有する。ウェブ9aとウェブ10aとが背中合わせに対向した状態で、C型鋼9とC型鋼10とがボルトB2及びこれに螺合するナットN2によって連結されることにより梁5Eが構成されている。具体的に、ウェブ9a及びウェブ10aには、前記ボルトB2を挿通させる挿通穴9f(ウェブ10aについては図示せず)がそれぞれ形成されている。
【0042】
連結金具6は、C型鋼7に対して梁5Eの端部を接続するためのものである。具体的に、連結金具6は、C型鋼7に取り付けられる取付板12と、この取付板12の側端面が突き合せ溶接された背板11とを備えている。
【0043】
取付板12は、前記C型鋼7の両リップ7d、7e間を通して両フランジ7b、7c間に挿入可能な帯状部14と、この帯状部14からC型鋼7の各リップ7d、7eの外側に延びて前記梁5Eを接続するための接続部15とを備えている。
【0044】
帯状部14は、図6に示す挿入姿勢で各リップ7d、7eを通して各フランジ7b、7c巻に挿入可能で、かつ、前記挿入姿勢から所定角度だけ回転した図7に示す取付姿勢において前記C型鋼7の両フランジ7b、7cの内側面に当接可能である。具体的に、帯状部14は、前記取付姿勢において各フランジ7b、7cにそれぞれ当接する一対の当接部14b、14cと、これら当接部14b、14cを連結する連結部14aとを備えている。当接部14b、14cは、それぞれ連結部14aに対して互いに逆向きで、かつ、連結部14aに対して直角に折り返された帯状部14(取付板12)の端部である。そして、図6に示すように、当接部14bが先に向けて下に傾斜するとともに当接部14cが先に向けて上に傾斜する挿入姿勢において、各当接部14b、14cと連結部14aとの折り曲げ部分間の距離D1は、各リップ7d、7e間の距離D2よりも短くされている。一方、図7に示す取付姿勢において、当接部14bの上面14dは、フランジ7bの下面に当接するとともに、当接部14cの下面14fは、フランジ7cの上面に当接する。その結果、図7に示す取付姿勢において、連結部14aは、両フランジ7b、7cに直交する方向に向く。
【0045】
当接部14bは、ボルトB1によってフランジ7bに固定可能である。具体的に、当接部14bには、当該当接部14bを表裏に貫通するねじ穴14eが形成されている。前記フランジ7bに形成された挿通穴7fを挿通するボルトB1が当接部14bのねじ穴14eに螺合されることによって、当接部14bは、フランジ7bに固定される。
【0046】
当接部14cは、ボルトB1によってフランジ7cに固定可能である。具体的に、当接部14cには、当該当接部14cを表裏に貫通するねじ穴14gが形成されている。前記フランジ7cに形成された挿通穴7gを挿通するボルトB1が当接部14cのねじ穴14gに螺合されることによって、当接部14cは、フランジ7cに固定される。
【0047】
接続部15は、連結部14aの途中部から各リップ7d、7eの間を通ってC型鋼7の外側に突出する。具体的に、接続部15は、各リップ7d、7e間の距離D2よりも短い幅寸法D3(図6参照)を有する。この接続部15は、梁5Eの各C型鋼9、10の間に挟持された状態で、当該梁5Eに接続される。具体的に、接続部15には、当該接続部15を表裏に貫通する4つの挿通穴15aが形成されている。接続部15がC型鋼9、10間に挟持された状態で、挿通穴9f及び挿通穴15aにボルトB2を挿通させるとともに、このボルトB2にナットN2を螺合することにより、接続部15と各C型鋼9、10とを接続することができる。
【0048】
背板11は、図6に示す挿入姿勢において連結部14aと各当接部14b、14cとの2つの折り返し部の間の範囲(距離D1の範囲)のみに設けられている。具体的に、背板11は、前記連結部14aの長さ寸法に対応する高さ寸法D5と、各当接部14b、14cの先端部間の距離に対応する幅寸法D6とを有する長方形における2つの角を切り欠いた形状を有する。図3に示すように、背板11は、当接部14bの上面14dと面一となる上面11aと、当接部14cの下面14fと面一となる下面11bと、当接部14bの先端面と面一となる右側面11cと、当接部14cの先端面と面一となる左側面11dと、上面11aから左側面11dに向けて下に傾斜する傾斜面11eと、下面11bから右側面11cに向けて上に傾斜する傾斜面11fとを有する。傾斜面11e、11fは、図6に示す挿入位置においてそれぞれ水平方向に向くように、互いに平行に形成された面である。各傾斜面11e、11f間の距離は、各リップ7d、7e間の距離D1よりも小さい。
【0049】
本実施形態では、帯状部14及び背板11は、挿入姿勢で各リップ7d、7e間を通して各フランジ7b、7c間に挿入可能で、かつ、取付姿勢において両フランジ7b、7cの内側面にそれぞれ当接可能な一対の当接部14b、14cを有する挿入部を構成する。
【0050】
以下、前記連結金具6を用いて梁5Dと梁5Eとを連結する手順を説明する。
【0051】
まず、図6に示す挿入姿勢とした状態で、連結金具6の帯状部14及び背板11を各リップ7d、7eを通して各フランジ7b、7c間に挿入する。ここで、各当接部14b、14cと連結部14aとの2つの折り返し部分間の距離D1が各リップ7d、7e間の距離D2よりも短い。そのため、帯状部14と各リップ7d、7eとの接触を回避することができる。また、背板11は、前記距離D1の範囲内にのみ設けられているため、背板11と各リップ7d、7eとの接触も回避することができる。
【0052】
次に、連結部14aの長さ方向の中点である回転中心O回りに、連結金具6を図6の反時計回りに回転させる。ここで、各当接部14b、14cは、連結部14aに対して互いに逆向きで、かつ直角に折り曲げられている。そのため、回転中心Oから各当接部14b、14cの先端部までの第2の半径R2は、回転中心Oから帯状部14の2つの折り返し部分までの第1の半径R1よりも大きく、かつ、第2の半径R2を倍にした距離は、各フランジ7b、7c間の距離よりも大きい。したがって、連結金具6を回転中心O回りに時計回りに回転させる場合には、各当接部14b、14cと各フランジ7b、7cとが常に接触した状態となり、両者の摺動抵抗が大きくなる。これに対し、回転中心Oの反時計回りに連結金具6を回転させることにより、各フランジ7b、7cに対する摺動抵抗を抑えつつ各当接部14b、14cを各フランジ7b、7cに当接させることができる。
【0053】
そして、図7に示す取付位置まで連結金具6を回転させることにより、連結金具6が各フランジ7b、7c間に嵌合する。具体的に、各フランジ7b、7cに対して各当接部14b、14cが平行し、連結部14aが垂直となる姿勢で、連結金具6は、各フランジ7b、7c間に嵌合する。この状態で、各フランジ7b、7cの外側からそれぞれボルトB1を螺合することにより、連結金具6と梁5Dとが固定される。
【0054】
次に、図2に示すように、梁5Dの外側に突出する連結金具6の接続部15に対して梁5Eを接続する。具体的に、接続部15を挟むように各C型鋼9、10を配置し、これらC型鋼9、10及び接続部15(挿通穴9f、15a)にボルトB2を挿通させて、このボルトB2にナットN2を螺合する。
【0055】
以上説明したように、前記実施形態に係る連結金具6は、挿入姿勢で各リップ7d、7e間を通して各フランジ7b、7c間に挿入可能で、かつ、取付姿勢で両フランジ7b、7cの内側面に当接可能な一対の当接部14b、14cを有する挿入部(帯状部14及び背板11)を備えている。そのため、挿入姿勢とされた挿入部を両リップ7d、7e間を通して各フランジ7b、7c間に挿入することができるとともに、挿入部を取付姿勢に回転させることにより、一対の当接部14b、14cによって各フランジ7b、7cを内側から支持することができる。
【0056】
したがって、前記実施形態によれば、C型鋼7の両リップ7d、7e間を通して、当該C型鋼7を補強可能となるように両フランジ7b、7c間に取付可能な連結金具6を提供することができる。
【0057】
前記実施形態では、連結部14aが取付姿勢で両フランジ7b、7cに直交する方向に向くように配置されている。そのため、各フランジ7b、7cが近接する方向に向けたC型鋼7の変形を抑制するのに連結部14aが寄与することにより、より有効にC型鋼7の補強を行うことができる。しかも、前記実施形態では、連結部14aと一対の当接部14b、14cとが1枚の取付板12を折り返すことにより形成されている。そのため、各当接部14b、14c及び連結部14aを別々の部材として準備する場合と比較して、部品コストを低減することができる。
【0058】
前記実施形態では、一対の当接部14b、14cが連結部14aに対して互いに逆向きで、かつ、連結部14aに対して直角に折り返されている。そのため、各当接部14b、14cと連結部14aとの折り返し部分が先行するように挿入部を回転させることにより、各フランジ7b、7cに対する摺動抵抗を抑えつつ挿入部を各フランジ7b、7c間に確実に嵌合させることができる。具体的に、回転中心Oから当接部14b、14cの先端部までの第2の半径R2は、回転中心Oから折り返し部分までの第1の半径R1よりも大きく、かつ、第2の半径R2を倍にした距離は、各フランジ7b、7c間の距離よりも大きい。したがって、各当接部14b、14cの先端部が先行するように回転させる場合には、各当接部14b、14cと各フランジ7b、7cとが常に接触した状態となり、両者の摺動抵抗が大きくなる。これに対し、折り返し部分が先行するように挿入部を回転することにより、各フランジ7b、7cに対する摺動抵抗を抑えつつ各当接部14b、14cを各フランジ7b、7cに当接させることができる。そして、挿入部を取付姿勢に回転することにより、各フランジ7b、7cに対し各当接部14b、14cが平行し、かつ、連結部14aが垂直となる姿勢で挿入部が各フランジ7b、7c間に嵌合する。
【0059】
前記実施形態では、取付板12の側端面が突き合せ溶接された背板11をさらに備えている。そのため、取付板12の折り返しの形態(各当接部14b、14c及び連結部14aの折り返しの形態)を背板11によって保持することにより、C型鋼7の補強をより確実にする。しかも、背板11は、C型鋼7のウェブ7aに沿って配置されるため、背板11自体の剛性も各フランジ7b、7cが近接する方向に向かうC型鋼の変形の抑制に寄与する。
【0060】
前記実施形態では、挿入姿勢において背板11が2つの折り返し部の間の範囲(距離D1の範囲)のみに設けられている。そのため、挿入姿勢において背板11が各リップ7d、7eに接触するのを抑制することができるとともに、挿入姿勢から取付姿勢に至る挿入部の回転の過程においても、背板11が各フランジ7b、7cに接触するのを抑制することができる。
【0061】
前記実施形態では、接続部15が取付板12の一部である。つまり、この実施形成では、1枚の取付板12によって一対の当接部14b、14c、連結部14a、及び接続部15が形成されている。そのため、接続部15を単独の部品として準備する場合と比較して、部品点数を減らすことによりコストの低減を図ることができる。
【0062】
前記実施形態では、2本のC型鋼9、10の間に挟まれた状態で接続部15が両ウェブ9a、10aに対してボルトB2で固定可能である。そのため、上述のように取付板12の一部である板状の接続部15を、ボルトB2によってC型鋼9、10に容易に固定することができる。
【0063】
また、前記実施形態では、C型鋼7〜10が同等の断面形状を有する。そのため、梁5D、5Eの部品コストを低減することができる。具体的に、長尺のC型鋼である長尺鋼を形成するとともに、この長尺鋼を裁断することによりC型鋼8〜10を製造することが可能となる。したがって、C型鋼8〜10について製造工程の重複部分を増やすことができるため、梁5D、5Eの製造コストを低減することができる。
【0064】
前記実施形態では、一対の当接部14b、14cと各フランジ7b、7cとがボルトB1によって固定可能である。そのため、連結金具6に梁5Eを接続することにより、梁5Dに対して梁5Eを確実に固定することができる。
【0065】
また、前記実施形態では、一対の当接部14b、14cが各フランジ7b、7cに対して固定可能である。そのため、連結金具6を用いた家屋1の建設作業を簡素化することができる。具体的に、家屋1の建設作業では、例えば、C型鋼7、8を枠状に組み付けた後、C型鋼8の外側に当該C型鋼7、8のウェブ7a、8aと平行するように外壁パネルを取り付ける。次いで、連結金具6を用いてC型鋼7、8に対して梁5Eを取り付ける。ここで、外壁パネルを取り付けた後においては、C型鋼8のウェブ8aが外側から外壁パネルによって覆われている。そのため、当該ウェブ7a、8aの内外にボルトとナットとを配置して両者を螺合することは困難である。そこで、前記実施形態のように、連結金具6が各フランジ7b、7cに取付可能であることにより、外壁パネルをC型鋼8に取り付けた後であっても、C型鋼7に対して容易に梁5Eを取り付けることができる。
【符号の説明】
【0066】
B1、B2 ボルト
O 回転中心
R1、R2 半径
1 家屋(建築物の一例)
5A〜5E 梁
6 連結金具
7 C型鋼
7a ウェブ
7b、7c フランジ
7d、7e リップ
9、10 C型鋼(フレーム材の一例)
9a、10a ウェブ
9b、9c、10b、10c フランジ
9d、9e、10d、10e リップ
11 背板
12 取付板
14 帯状部
14a 連結部
14b、14c 当接部
15 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブと前記ウェブの両端から立ち上がる一対のフランジと前記各フランジからそれぞれ内側に屈曲する一対のリップとを有するC型鋼に取付可能であり、フレーム材の一方の端部を接続するための連結金具であって、
特定の挿入姿勢で前記各リップ間を通して前記各フランジ間に挿入可能な挿入部と、
前記挿入部が前記各フランジ間に挿入された状態で、前記フレーム材を接続可能な接続部とを備え、
前記挿入部は、前記挿入姿勢から所定角度だけ回転した取付姿勢において、前記C型鋼の両フランジの内側面にそれぞれ当接可能な一対の当接部を有する、連結金具。
【請求項2】
前記挿入部は、前記一対の当接部を互いに連結する連結部をさらに備え、
前記一対の当接部及び前記連結部は、1枚の取付板が折り返されることにより形成され、
前記連結部は、前記取付姿勢で前記両フランジに直交する方向に向くように配置されている、請求項1に記載の連結金具。
【請求項3】
前記一対の当接部は、前記連結部に対して互いに逆向きで、かつ、前記連結部に対して直角に折り返された前記取付板の両端部である、請求項2に記載の連結金具。
【請求項4】
前記挿入部は、前記一対の当接部及び前記連結部において、前記取付板の側端面が突き合せ溶接された背板をさらに備えている、請求項2又は3に記載の連結金具。
【請求項5】
前記挿入部は、前記一対の当接部及び前記連結部において、前記取付板の側端面が突き合せ溶接された背板をさらに備え、
前記背板は、前記挿入姿勢において前記連結部と前記一対の当接部との2つの折り返し部の間の範囲のみに設けられている、請求項3に記載の連結金具。
【請求項6】
前記接続部は、前記挿入部が前記各フランジ間に挿入された状態で、前記連結部から前記各リップ間を通って前記C型鋼の外側に延びるように形成された前記取付板の一部である、請求項2〜5の何れか1項に記載の連結金具。
【請求項7】
前記フレーム材は、前記C型鋼と同等の断面形状を有する2本のフレーム材用C型鋼が前記ウェブ同士を対向させた状態で連結されることにより形成され、
前記接続部は、前記2本のフレーム材用C型鋼のウェブ間に挟まれた状態で、前記両ウェブに対してボルトで固定可能である、請求項6に記載の連結金具。
【請求項8】
前記一対の当接部は、それぞれ前記当接部が当接する前記フランジに対してボルトで固定可能である、請求項1〜7の何れか1項に記載の連結金具。
【請求項9】
ウェブと、前記ウェブの両端から立ち上がる一対のフランジと、前記各フランジからそれぞれ内側に屈曲する一対のリップとを有するC型鋼と、
前記C型鋼に接続されるフレーム材と、
前記C型鋼に取り付けられるとともに、前記フレーム材の一方の端部が接続された請求項1〜8の何れか1項に記載の連結金具とを備えている、フレーム。
【請求項10】
基礎と、
前記基礎上に設けられた請求項9に記載のフレームとを備えている、建築物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−2045(P2013−2045A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131157(P2011−131157)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】