説明

連続する制動の認知により緊急制動を検出する方法

本発明は、制動システム(10)に導入可能なブレーキサーボユニットを備える自動車の制動制御方法に関し、この制動システム(10)は、真空ブレーキブースター(18)及び油圧回路(A、B)に接続する油圧マスターシリンダーであって、この車両の車輪に装備される車輪ブレーキ(12A、14A、12B、14B)に供給する油圧マスターシリンダー、車輪横滑り防止機能を有するABS油圧ユニット(22A、22B)、油圧ユニット(22A、22B)によって補助される緊急制動を実行する電子手段(24)を備える。この方法は、緊急制動操作を実行するために一定の時間内に反復を検出すること、連続して反復する場合に緊急制動を実行するための条件を適用することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、自動車の補助制動方法及びシステムに関し、具体的には、連続する制動の認知、つまり時間的に近接した制動操作の認知により緊急制動を検出することに関する。
【0002】
既知の方法により、従来の車両の油圧制動装置は、少なくとも1つ、従来は2つの油圧制動回路を備え、これらの制動回路の各々は少なくとも1つ、従来は2つの車輪ブレーキに接続している。
これらの制動回路は、通常の補助制動の場合、制動力増幅器、一般には真空ブレーキブースターを介してブレーキペダルによって作動させることが可能なマスターシリンダーによって供給される。真空ブレーキブースターはワーキングチャンバを備え、このワーキングチャンバは、低圧、即ち大気圧に対して負圧に恒久的に維持される低圧チャンバから可動ピストンによって分離されており、このワーキングチャンバにペダル力を印加することによりワーキングチャンバを大気圧下に置くことができ、従って可動ピストン上に作用する力を介してペダル力を増幅することができる。
【0003】
更に、車両の制御を失わせる車輪のロックを防止するために、アンチブロックブレーキシステム(ABS)が開発されて広く普及している。これらのシステムは、各車輪の回転速度をモニタリングしながら車輪ブレーキの制動圧を制御することを可能にする。このようにして、制動中、場合によっては強い制動中に、動的な車両の挙動を安定させることができる。この種のシステムは、電子的に制御可能であり且つ種々の車輪ブレーキに接続する入口弁と出口弁を備えた電子制御機器付き油圧制動ブロック、マスターシリンダー内の圧力を表わす圧力センサ、及びそれぞれの制動回路に接続する送出ポンプ、例えば電気的に駆動される送出ポンプを備える。モニタリングされる車輪の動的挙動に応じ、対象の車輪ブレーキから送出ポンプにいくらかの油圧流体を放出することにより、対応する制動圧力を緩和してロックを防止することができ、次いで送出ポンプの出口弁又はこのポンプと接続する緩衝装置から高圧の油圧流体を流すことにより、制動圧力を再び増加させることができる。
ABS型のシステムは、例えば電子安定プログラム(ESP)型又はアンチスリップレギュレーション(ASR)型の車両運動制御システムに連結されることが多い。これらのシステムは、ABS装置の油圧ブロックに一体化される。これらの車両運動制御システムにより、車両の運転者がブレーキペダルを踏むことなく車輪ブレーキに作用することにより、車両の動的挙動を安定させることができる。
【0004】
このようなESP制動システムでは、制動が油圧ブロックの補助により行われる油圧ブレーキ補助(HBA)機能を用いることが知られている。具体的には、このHBA機能が用いられると、油圧ブロックが自律的に油圧ブロック内の油圧流体の圧力を上昇させ、ABS装置の起動限界にできるだけ急速に到達することにより制動が最適化される。
急ブレーキ(又は緊急制動)の場合、即ちブレーキペダルに、例えば運転者が大きな圧力を極めて急速に加えたとき、HBA機能付きのESP油圧ブロックを備えた車両は、緊急制動状態の決定に続いて油圧ブロックによって提供される補助により制動される。
【0005】
このような緊急制動状態の決定に用いられる従来の基準は、例えば、マスターシリンダー内の圧力及び/又はマスターシリンダー内の圧力勾配であり、これらによって緊急制動操作をうまく特徴付けることができる。
真空ブレーキブースターを有する油圧制動システムの欠点は、緊急制動操作が急速に反復される場合、ブレーキブースターの2つのチャンバ間の圧力差が回復する時間がないということである。よって、ブレーキブースターによる制動圧力の増大幅が徐々に減少し、緊急制動起動しきい値に到達することがますます困難になる。
【0006】
文献US6361126にこの問題の解決法が記載されている。同文献による緊急制動方法は、2つのチャンバのうちの1つの中の圧力の測定値と大気圧との差、及びこの圧力差の勾配を考慮する。従って、US6361126による方法では、緊急制動を起動するためにマスターシリンダー内で到達すべき圧力しきい値を4つの基準(マスターシリンダー内の圧力、マスターシリンダー内の圧力の時間に対する勾配、真空ブレーキブースターのチャンバのうちの1つの中で測定された圧力間の差、及びこの圧力差の勾配)について定めることができ、特に、反復する緊急制動状態を特徴付けること、及びその結果として緊急制動を起動することができる。しかし、この方法は、ブレーキブースターのチャンバの1つの中の圧力を測定する手段、及びこの圧力の測定値を大気圧と比較する手段を使用しなければならず、よって装置のコストが増大するという欠点を有する。
【0007】
従って、本発明の1つの目的は、反復する緊急制動状態も正しく決定し、マスターシリンダー内の圧力を測定するための追加手段及び/又はこの測定値を比較するための追加手段を要さずに緊急制動を起動することができる方法及び装置を提供することである。
【0008】
この目的は、補助制動システムを備える自動車の制動制御方法によって達成され、この場合、補助制動システムは、
− 真空ブレーキブースター及び少なくとも1つの油圧回路に接続する油圧マスターシリンダーであって、各々が車両の1つの車輪に装備される1つ以上の車輪ブレーキを別個に又は同時に作動させるように設計された油圧マスターシリンダー、
− 前記1つ以上の車輪ブレーキに高圧油圧流体を供給する手段を備えた電子制御機器付き油圧ブロック、並びに
− マスターシリンダー内の圧力、及びその時間に伴う変化率に対応する運転時制動特性の発生を検出すると、緊急制動操作を実行する電子手段であって、前記緊急制動操作が油圧ブロックの補助により実行される電子手段
を備え、時間的に近接する緊急制動操作の実行の反復が検出されること、及び時間的に近接する反復の場合に緊急制動操作を実行するための条件が適用されることを特徴とする。
【0009】
従って、このようなシステムでは、有利には、時間的に近接して緊急制動が行われる状態を検出することができる。このような状態では、緊急制動操作の後でブレーキブースターの2つのチャンバ間の圧力差が回復するための時間がなく、真空ブレーキブースターによって供給される制動補助が減少し易い。本発明による方法では、連続する制動操作の状態が決定されると、次に緊急制動を実行する条件が適用されてその制限が緩和され、緊急制動状態が、マスターシリンダー内の圧力及びマスターシリンダー内のこの圧力の勾配のみに基づいて決定される。
好ましくは、前記緊急制動の起動が時間的に近接して反復する状態を検出するために、最初の緊急制動操作の後で時間基準が起動されて所定の期間に亘り稼動状態を維持し、前記時間基準が稼動状態である限り、新たな緊急制動操作が行われる度に緊急制動カウンタが増値され、この時間基準が稼動していない場合前記カウンタが再初期化される。
【0010】
従って、有利には、本発明により、緊急制動操作が連続する状態が、所定の時間間隔内に実行される緊急制動操作の数をカウントすることによって特徴付けられる。このような決定は、特に簡単な方法でコンピュータにおいて実施することができ、他に装置を必要としない。
好適な方法では、前記カウンタ値が所定の値Nを超えると、緊急制動操作を実行するための条件の制限が緩和され、次いで時間基準が再初期化される。
【0011】
従って、有利には、所定の時間間隔内に実行される緊急制動操作の回数に応じて真空ブレーキブースターが供給することができる制動補助のマッピングが行われる。次いで本方法は、このような真空ブレーキブースターによって供給される補助のマッピングに応じて、これらの緊急制動モード起動基準をカウントされた緊急制動操作の回数に適用する。
好ましくは、時間基準が稼働状態にあるとき、前記緊急制動カウンタは、2つの連続する緊急制動操作の間の時間間隔Δtが最小値Tより大きい場合にのみ増値される。
【0012】
これにより、有利な方法で、ブレーキペダルを多数回に亘って強く作動させる運転者の混乱を回避することができる。
好ましい方法では、時間基準が稼働状態にあるとき、前記緊急制動カウンタは、2つの連続する緊急制動操作の間の時間間隔Δtが最大値Tより小さい場合にのみ増値される。
【0013】
従って有利には、最後の緊急制動操作以降に、ブレーキブースターの2つのチャンバ間の圧力差が回復するための時間があったときに実行された制動操作はカウントされない。
好ましくは、時間基準が稼働状態にあるとき、前記カウンタは、車両の速度Vが最小値Vより大きい場合にのみ増値される。
【0014】
好ましい方法では、時間基準が稼働状態にあるとき、カウンタは、車両の速度Vvが最大値Vより小さい場合にのみ増値される。
好ましくは、前記運転時制動特性は、

であり、ここで、
− PMCはマスターシリンダー内の圧力を表わし、
− PMC_sはマスターシリンダー内の圧力の所定のしきい値であり、
− grad PMCはマスターシリンダー内の圧力の時間に対する勾配を表わし、
− [grad PMC_sはマスターシリンダー内の圧力の勾配の所定のしきい値である。
【0015】
従って、緊急制動状態は、マスターシリンダー内の圧力に直接関連する基準のみを考慮して決定される。即ち、本方法を実施するのに必要な圧力センサは1つだけであり、例えば、このセンサはマスターシリンダーの出口に配置することができる。
【0016】
本発明はまた、全ての変形例を上述した本発明の方法を実現可能にする補助制動システムに関し、この補助制動システムは、
− 真空ブレーキブースター及び少なくとも1つの油圧回路に接続する油圧マスターシリンダーであって、各々が車両の1つの車輪に装備される1つ以上の車輪ブレーキを別個に又は同時に作動させるように設計された油圧マスターシリンダー、
− 高圧油圧流体を前記車輪ブレーキに供給する手段を備えた電子制御機器付き油圧ブロック、
− マスターシリンダー内の圧力及びその時間の経過に伴う変化率に対応する運転時制動特性の発生の検出に続いて緊急制動操作を実行する電子手段であって、前記緊急制動操作が、前記油圧ブロックの補助により実行される電子手段、並びに
− 緊急制動操作の実行の時間的に近接した反復を検出し、近接して反復される場合に、緊急制動操作の実行のための条件を適用する手段
を備えることを特徴とする。
上記システムは好ましくは、前記マスターシリンダー内の圧力を表す信号を送達する圧力センサを備える。
【0017】
従って、有利には、マスターシリンダー内の圧力、及びこのマスターシリンダー内の圧力の時間に対する勾配に関する情報が直接取得される。
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照する、非限定的な実施例として提供される以下の説明により明らかとなる。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明による方法の実施を可能にする自動車の制動システム10を表わす。本発明の実施に対するいかなる制限も意味することなく、このシステム10は、既知のESP/ASR機能を有するABS油圧ブロックを備える制動システムである。このような制動システムは、例えば、上記のUS6361126に述べられている。
制動システム10には、フロントアクスル制動回路Aに結合された左前輪ブレーキ12A及び右前輪ブレーキ14Aと、リアアクスル制動回路Bに結合されている左後輪ブレーキ12B及び右後輪ブレーキ14Bとが設けられている。
【0019】
これらの車輪ブレーキ12A、14A、12B、14Bは、通常の補助制動の間、ブレーキペダル20によって制御される真空ブレーキブースター18によって補助されるマスターシリンダー16によって供給される。更に、2つのフロントアクスル油圧回路A及びリアアクスル油圧回路Bは同一で、マスターシリンダー16と車輪ブレーキ12A、14A、12B、14Bの間には、ABS、ASR、及び/又はESP機能を実行する電子制御機器24付き油圧ブロック22A、22Bを配置することができる。本発明の範囲から逸脱することなく、一般にエンジンの吸気マニホールドの負圧又は空気ポンプにより生成される負圧(特にディーゼルエンジンの場合)が用いられる。
ABS、ASR、及び/又はESP機能の実行を可能にするフロントアクスル油圧回路Aの一実施例について、以下に更に詳細に説明する。リアアクスル油圧回路Bはフロントアクスル油圧回路Aとほぼ同一である。しかしながら、本発明の範囲から逸脱することなく他のアクスル油圧回路の構成が考慮可能である。
【0020】
通常の制動操作の場合、フロントアクスル油圧回路Aには、ブレーキブースター18を介してブレーキペダル20によって作動されるマスターシリンダー16により加圧油圧流体が供給される。マスターシリンダー16及びブレーキブースター18は、既知の種類及び動作のものである。更に、マスターシリンダー16は、従来の方法で油圧流体リザーバ25に接続されている。この同じマスターシリンダー16は、それぞれフロントアクスル油圧回路Aとリアアクスル油圧回路Bに供給する2つの油圧出口26A、26Bを有する。圧力センサ28は、油圧出口26Aに接続されて、マスターシリンダー内の圧力PMCを表わす圧力の測定を可能にする。マスターシリンダー16の2つの油圧出口26A、26Bでの圧力は等しいものとする。
明細書を読み易くするために、本明細書では、用語「電磁弁」の代わりに用語「弁」を用いている。システム10の「弁」は全て、電子制御ユニット24によって発信される出力信号により制御される電磁弁である。
【0021】
本発明による方法の実施に適したフロント油圧ブロック22Aの非限定的実施例について以下に説明する。
制動圧を調整し、よってABSシステムを実施するために、フロント油圧ブロック22Aは2つの入口弁と2つの出口弁を備える。これらの入口弁及び出口弁は電子的に制御可能であり、各々が車輪ブレーキ12A、14Aの一方に接続する。油圧ブロック22Aはまた、車輪ブレーキ12A、14Aから油圧流体を低圧緩衝装置、又は場合によっては主制動ラインに放出することにより、車輪ブレーキ12A、14Aの制動圧を減少させることを可能にする戻りラインを備える。逆止弁が、戻りライン上の送出ポンプと低圧緩衝装置の間に配置される。送出ポンプは、制動圧を再度増加させる段階の間、車輪ブレーキ12A、14A、12B、14Bに高圧流体を供給する。
【0022】
ABSシステムは、電子制御ユニット24によって制御され、この電子制御ユニットに車輪の回転速度を検出するセンサ(図示しない)が接続される。
最後に、フロントアクスル油圧ブロック22Aは更に、閉位置において、マスターシリンダー16から主制動ラインへの油圧流体の直接の流れを遮る圧力制限弁と、「通過」位置において、マスターシリンダーの油圧出口26Aを送出ポンプの低圧入口に接続する予圧弁とを備える。これら2つの弁はまた電子制御ユニット24によって制御され、この電子制御ユニット24は、緊急制動モードの間にこれら2つの弁を閉じる。
【0023】
補助制動システム10は、ABSによって最適化可能な通常の補助制動操作の実行を可能にする。通常の補助制動モードにおける制動システム10の動作原理は、このシステムに特定ではなく既知である。従って、この通常の制動モードについてこれ以上詳しく述べることはしない。
緊急制動モードと呼ばれる制動モードは、図1に示すような制動システム10によって実行できる。この緊急制動モードはまた、後述の起動基準に応じて電子制御ユニット24によって実行される。これらの基準が満たされると、電子制御ユニット24は、圧力制限弁をその遮断位置に切り替え、送出ポンプ用の予圧弁をその通過位置に切り替える。更に、送出ポンプが起動される。すると送出ポンプがフロントアクスル油圧回路A及びリアアクスル油圧回路Bの高圧油圧流体源として機能する。ABSが起動されると、車両の制動距離も最適化される。
【0024】
この緊急制動モードを起動するには、反復される緊急制動状態に適用するという利点を有する、本発明による方法が用いられる。
この方法によれば、緊急制動状態は、マスターシリンダー16内が高圧となりしきい値を超える状態、及びマスターシリンダー16内の圧力の時間に対する勾配が大きくなる状態に基づいて決定される。
【0025】
このように、実施の際は、緊急制動の状態を決定するために、まず圧力センサ28によってマスターシリンダー16の出口における圧力PMCを測定する。このセンサは、マスターシリンダー16内の圧力勾配grad(PMC)を計算できるように、電子制御ユニット24に接続される。
次いで、図2のフロー図の形式に示す制動制御方法が実行される。
【0026】
本方法の最初のステップS0では、緊急制動カウンタNを値0に初期化する。
次にS1で制動操作が検出されると、本方法の第2ステップS2で、電子制御ユニット24は時間基準が稼働状態にあるかどうかを検証する。
【0027】
この時間基準はタイマとして機能し、よって時間間隔の測定が可能になる。つまり、時間基準の初期化はタイマをゼロに設定することに相当し、時間基準の起動はタイマの起動に相当する。所定の時間Tが経過した後、時間基準の稼働が停止され、これがタイマの停止に相当する。
時間基準が稼働していないということは、検出された制動に先立つ緊急制動動作が、少なくともブレーキブースターの2つのチャンバの間の圧力差が適切に回復するのに十分な時間間隔(Tより長い)の間になかったことを意味する。この場合、本発明による方法は、ステップS3′において、
− マスターシリンダーの圧力の所定のしきい値を表わすPMC_
− マスターシリンダー内の圧力の時間に対する勾配のしきい値を表わす[grad(PMC)]_、及び
− 所定の時間間隔内に起動可能な緊急制動操作の回数のしきい値を表わすN
を初期化する。
【0028】
次いでステップS4′において、緊急制動の特徴的条件が満足されているかどうか、即ち次式(C1)が成立するかどうかを検証する。

この二重条件式C1が満たされない場合、ステップS5″において従来式の補助制動を実行し、ステップS0において本方法を出発点に戻って再開する。
【0029】
反対に、この条件式C1が満たされる場合、本発明による本方法のステップS5′において緊急制動が実行され、緊急制動カウンタ値Nが値1に増値される(N:=1)。更に、時間基準が起動され、所定の時間Tに亘って稼働状態を維持した後で初期化される。次いで本方法のステップS1に戻り、次の制動操作の待機状態に入る。
制動操作が第1の緊急制動操作に極めて近接して行われ、時間基準が依然として稼働しているとき、本発明による本方法のステップS3が実行される。このステップでは、緊急制動に特徴的な二重条件式C1が満たされるかどうかを検証する。式C1が満たされない場合、ステップS5″で通常の補助制動が実行される。反対に二重条件式C1が満たされる場合、ステップS4で緊急制動が実行される。
【0030】
本方法の次のステップS5では、車両の速度Vを最小値V及び最大値Vと比較することにより、以下の条件C2が満たされるかどうかを検証する。
≦V≦V (C2)
従って、条件C2が検証されない場合、本方法から退出して本方法の開始点S0に戻ることができる。この特定の場合には、これに制限されるものではないが、Vを約80km/hに、Vを約120km/hに選択することができる。
【0031】
条件C2が満たされる場合、本方法はステップS6において、最後の2つの制動操作(時間基準が稼働しているので、メモリに直前の制動操作が記憶されていることは確かである)の間の経過時間Δtを、最小値T及び最大値T(T<T)と比較し、以下の条件C3が満たされるかどうかを検証する。
≦Δt≦T (C3)
時間間隔Δtが短すぎる場合、その緊急制動操作を新たな緊急制動操作としてカウントしない。反対にこの時間間隔が長すぎる場合、直前の緊急制動操作の後にブレーキブースター18の2つのチャンバ間の圧力差が回復するための時間があったことになる。いずれの場合も、出発点ステップS0に戻って本方法を再開する。
【0032】
この特定の場合には、これに制限されるものではないが、時間Tを約10秒に、時間Tを約1分に選択することができ、この時間Tはいかなる場合もTより短い。
条件C3が満たされる場合、ステップS7においてカウンタ値Nを1だけ増値する。本方法の次のステップS8において、所定の時間間隔が経過すると起動できる緊急制動操作の回数のしきい値を表わすしきい値Nと、カウンタの値Nを比較する。
【0033】
N≦Nの場合、ステップS1に戻って本方法を最開し、新たな制動操作の検出の待機状態となる。
反対にN≧Nの場合、Tよりも短い時間に多数回の緊急制動操作が行われたことを意味し、従って、マスターシリンダー内の圧力を増加させることができるブレーキブースターの2つのチャンバ間の圧力差が減少している。この場合、緊急制動起動しきい値に到達することが難しい。この時、本方法のステップ9において、記憶されているしきい値PMC_、及び[grad(PMC)]_を下げ、二重条件C1の制限を緩和し、よって緊急制動を起動し易くする。当然ながら、このようにしきい値を下げることは、本発明による方法を使用する車両に応じて、緊急制動の感度を上げ過ぎないように行われる。
【0034】
次いで本方法のステップS1に戻り、次の制動操作の待機状態に入る。
時間間隔T内に制動が行われない場合、時間基準の稼働を解除、つまり停止させる。
【0035】
更に、制動操作が新たな条件より低いパラメータPMC及びgrad(PMC)によって命令される場合、本方法からの退出が行われ、即ち開始点S0に戻って本方法を再開する。
当然ながら、本発明は、非限定的実施例として示した本明細書の事例に制限されるものではない。更に、本発明による方法によって用いられる油圧ブロックは大きく変更することができ、本方法は、本実施例において述べたようにマスターシリンダーによって予圧方式で行われるか、又は自律的に行われる緊急制動モードの実行を可能にする自動車の制動用のあらゆる油圧ブロックを用いて実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による方法の実施を可能にする制動システムの概略図である。
【図2】本発明による方法の動作のフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補助制動システム(10)を備える車両の制動制御方法であって、当該補助制動システム(10)が、
− 真空ブレーキブースター(18)及び少なくとも1つの油圧回路(A、B)に接続する油圧マスターシリンダー(16)であって、各々が車両の1つの車輪に装備される1つ以上の車輪ブレーキ(12A、14A、12B、14B)を別個に又は同時に作動させるように設計された油圧マスターシリンダー、
− 高圧油圧流体を前記車輪ブレーキ(12A、14A、12B、14B)に供給する手段を備えた電子制御機器(24)付き油圧ブロック(22A、22B)、及び
− マスターシリンダー内の圧力と、その時間の経過に伴う変化率に対応する運転時制動特性の発生を検出すると、緊急制動操作を実行する電子手段(24)であって、前記緊急制動操作を油圧ブロック(22A、22B)の補助により実行する電子手段(24)
を備えており、緊急制動操作の実行の、時間的に近接する反復を検出すること、及び近接する反復を検出する場合に、緊急制動操作を実行するための条件を適用することを特徴とする方法。
【請求項2】
緊急制動起動の実行の、時間的に近接する反復を検出するために、最初の緊急制動操作の後で時間基準を起動して所定の期間に亘って稼働状態に維持すること、及び前記時間基準が稼働している限り、新たに緊急制動操作が行われるたびに緊急制動カウンタを増値し、時間基準が稼働していない場合に前記カウンタを再度初期化することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カウンタが所定の値Nを超えると、緊急制動を実行するための条件を緩和し、次いで時間基準を再初期化することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
時間基準が稼働状態にあるとき、2つの連続する緊急制動操作の間の時間間隔Δtが最小値Tより大きい場合にのみ、前記緊急制動カウンタを増値することを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
時間基準が稼働状態にあるとき、2つの連続する緊急制動操作の間の時間間隔Δtが最大値Tより小さい場合にのみ、前記緊急制動カウンタを増値することを特徴とする、請求項2ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
時間基準が稼働状態にあるとき、車両の速度Vvが最小値Vより大きい場合にのみ、前記カウンタを増値することを特徴とする、請求項2ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
時間基準が稼働状態にあるとき、車両の速度Vvが最大値Vより小さい場合にのみ、カウンタを増値することを特徴とする、請求項2ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記運転時制動特性が、

であり、ここで、
− PMCはマスターシリンダー(16)内の圧力を表わし、
− PMC_sはマスターシリンダー(16)内の圧力の所定のしきい値であり、
− grad PMCはマスターシリンダー(16)内の圧力の時間に対する勾配を表わし、
− [grad PMC_sはマスターシリンダー(16)内の圧力の勾配の所定のしきい値である
ことを特徴とする、請求項2ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法を実施可能な補助制動システムであって、
− 真空ブレーキブースター(18)及び少なくとも1つの油圧回路(A、B)に接続する油圧マスターシリンダー(16)であって、各々が車両の1つの車輪に装備される1つ以上の車輪ブレーキ(12A、14A、12B、14B)を、別個に又は同時に作動させるように設計された油圧マスターシリンダー、
− 前記車輪ブレーキ(12A、14A、12B、14B)に高圧油圧流体を供給する手段を備えた電子制御機器(24)付き油圧ブロック(22A、22B)、
− マスターシリンダー内の圧力と時間の経過に伴うその変化率に対応する運転時制動特性の発生を検出すると、緊急制動操作を実行する電子手段(24)であって、前記緊急制動操作を前記油圧ブロック(22A、22B)の補助により実行する電子手段(24)、並びに
− 緊急制動操作の実行の時間的に近接する反復を検出し、近接する反復を検出した場合、緊急制動操作を実行するための条件を適用する手段
を備えることを特徴とする、補助制動システム。
【請求項10】
前記マスターシリンダー(16)内の圧力を表す信号を送達する圧力センサ(28)を更に備えることを特徴とする、請求項9に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−506926(P2009−506926A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528556(P2008−528556)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050691
【国際公開番号】WO2007/026088
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】