説明

連続プレス装置

【課題】対向ベルトでワークを両面から挟んで、対向ベルトを効率よく加熱又は冷却しながらスムーズに移送する。
【解決手段】連続プレス装置は、対向ベルト5を背面5Bから押圧する押圧フレーム2と、対向ベルト5のベルト間隔を設定間隔とする位置決め機構1と、押圧フレーム2の摺動面に配置されたグラファイト3を加熱又は冷却する温度制御機構とを備える。位置決め機構1は、ストッパ機構11と逃げ機構12を有する第1の位置決め機構1Aと第2の位置決め機構1Bとを備え、ストッパ機構11が押圧フレーム2をストッパ位置に配置する状態で、第2の位置決め機構1Bがベルト間隔を設定間隔に保持してワーク9を加圧加熱又は加圧冷却状態で移送し、ワーク9が一定圧力以上で対向ベルト5を押し戻しする状態にあっては、第1の位置決め機構1Aの逃げ機構12でベルト間隔を設定間隔よりも拡開しながら、ワーク9を加圧加熱又は加圧冷却状態で移送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向するベルトでワークを上下から挟み、ワークを対向ベルトで押圧する状態として移送し、かつベルトを加熱し、あるいは冷却することで、ワークを加熱又は冷却しながら押圧状態で移送する連続プレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを加圧加熱状態で移送する連続プレス装置は開発されている。この連続プレス装置は、複数の回転ロールをワークの移送方向に並べて移送することで実現できる。この連続プレス装置は、回転ロールでワークを加圧、加熱しながら移送するので、回転ロールとワークとが局部的に線接触となるので、回転ロールからワークへの熱伝導に劣る欠点がある。
【0003】
この欠点は、加熱された対向ベルトでワークを挟んで、すなわちプレスする状態で移送する構造の加熱油式の連続プレス装置によって解消できる。この連続プレス装置は、対向ベルトの裏面を加熱油に接触させるように配置し、この加熱油で対向ベルトを加熱し、さらに加熱油で対向ベルトを加圧する構造として実現できる。対向ベルトの背面に加熱油を配置するために、対向ベルトの背面に、その開口部を対向ベルトで閉塞するチャンバーを設け、チャンバーに加熱油を循環して、対向ベルトを加熱し、また加圧することができる。チャンバーは、開口縁を対向ベルトの裏面に摺動できるように密着させて、移動する対向ベルトを背面から加熱し、また加圧する。
【0004】
この連続プレス装置は、全体の構造が複雑となるばかりでなく、加熱油を加熱して循環させるための設備も大きく高価になる。また、ワークの反発力が無い状態では、対向ベルトがチャンバーの開口縁に密着されなくなって、加熱油が漏れるなどの欠点がある。
【0005】
以上の欠点を解消する連続プレス装置として、対向ベルトの背面にグラファイトを配置し、このグラファイトを介して対向ベルトを加熱する装置が開発されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−181832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
グラファイトは熱伝導特性に優れるので、これを対向ベルトの背面に摺動できるように面接触して、対向ベルトを背面から効率よく均一に加熱できる。しかしながら、この連続プレス装置は、対向ベルトでワークを押圧するプレス圧が高くなり、さらに対向ベルトが広い面積でワークを高い圧力でプレスする状態となると、対向ベルトをスムーズに移送できなくなる。それは、対向ベルトとグラファイトとを面接触状態で接触させながら、対向ベルトを移送するからである。グラファイトは、決して摺動抵抗が大きい部材ではない。しかしながら、グラファイトが面接触状態で対向ベルトを背面から押圧して、対向ベルトでワークをプレスするので、ワークのプレス圧が高く、かつワークと対向ベルトとの面積が大きくなると、対向ベルトがワークをプレスするトータルの押圧力が、圧力と面積の積に比例して大きくなり、この押圧力が対向ベルトとグラファイトとの間に作用して摺動抵抗を大きくする。したがって、この構造の連続プレス装置は、対向ベルトの背面を加熱油で押圧する装置に比較すると、対向ベルトをスムーズに軽く移送するのが難しくなる欠点がある。とくに、グラファイトで対向ベルトの背面を押圧して、ベルト間隔を特定の設定間隔に保持しながらワークを移送する連続プレス装置は、ワークの厚さの誤差や斑などで、ワークが対向ベルトを強く押圧して、対向ベルトがワークをプレスする圧力が高くなると、グラファイトと対向ベルトとの摺動抵抗が大きくなって、対向ベルトをスムーズに移送できなくなる欠点がある。それは、対向ベルトの摺動抵抗が、対向ベルトとグラファイトとの押圧力と摩擦係数との積となって、押圧力に比例して大きくなるからである。
【0008】
さらに、グラファイトは加熱油のように自由に変形できないので、これで対向ベルトの背面を押圧して、対向ベルトのベルト間隔を設定間隔に保持すると、ワークが局部的に強く押圧されたり、あるいは厚いワークが供給されると、対向ベルトでより強く押圧されて損傷される等の弊害もある。
【0009】
本発明は、さらに以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、対向ベルトでもってワークを両面から挟んでプレス状態で移送しながら、対向ベルトを効率よく加熱又は冷却でき、しかも対向ベルトをスムーズに移送できる連続プレス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
本発明の連続プレス装置は、ワーク9を両面から挟んで加圧する加圧面5Aを互いに平行な姿勢として対向するように配置している対向ベルト5と、この対向ベルト5でワーク9を挟んで移送するように対向ベルト5を移動させる駆動機構6と、対向ベルト5の背面5Bに摺動自在に配置されて、対向ベルト5を背面5Bから押圧すると共に、対向ベルト5との摺動面2Xにグラファイト3を面状に接触する状態に配置している押圧フレーム2と、対向ベルト5のベルト間隔を設定間隔とする位置に押圧フレーム2を位置させる位置決め機構1と、グラファイト3を加熱又は冷却して対向ベルト5を背面5Bから摺動状態で加熱又は冷却する温度制御機構4とを備えている。位置決め機構1は、第1の位置決め機構1Aと第2の位置決め機構1Bとを備えている。第1の位置決め機構1Aは、対向ベルト5のベルト間隔を設定間隔とするストッパ位置に押圧フレーム2を配置するストッパ機構11を有すると共に、ワーク9が対向ベルト5を所定の圧力よりも大きな圧力で押し戻しする状態にあっては、ベルト間隔を設定間隔よりも拡開する逃げ機構12を有する。第2の位置決め機構1Bは、第1の位置決め機構1Aが押圧フレーム2をストッパ位置に位置させる状態で、ベルト間隔を設定間隔とする機構を有している。連続プレス装置は、温度制御機構4でグラファイト3を加熱又は冷却し、グラファイト3が対向ベルト5を加熱又は冷却して、対向ベルト5でもってワーク9を加熱又は冷却する。さらに、ストッパ機構11が押圧フレーム2をストッパ位置に配置する状態で、第2の位置決め機構1Bがベルト間隔を設定間隔に保持してワーク9を両面から挟んで加圧加熱状態又は加圧冷却状態で移送する。さらにまた、ワーク9が一定の圧力以上の圧力で対向ベルト5を押し戻す状態にあっては、第1の位置決め機構1Aの逃げ機構12でもってベルト間隔を設定間隔よりも拡開しながら、駆動機構6で対向ベルト5を移動させて、ワーク9を加圧加熱状態又は加圧冷却状態で移送する。
【0011】
以上の連続プレス装置は、対向ベルトを介してワークを効率よく加熱又は冷却でき、しかも対向ベルトをスムーズに移送できる特徴がある。対向ベルトを介してワークを効率よく加熱又は冷却できるのは、対向ベルトの背面に熱伝導特性に優れたグラファイトを面状に接触する状態に接触させて、グラファイトを介して対向ベルトを加熱し又は冷却するからである。さらに、この状態で対向ベルトをスムーズに移送できるのは、第1の位置決め機構に逃げ機構を設けて、ワークが高い圧力で対向ベルトを強く押し戻す状態においても、対向ベルトとグラファイトとの押圧力が強くなるのを防止して、この状態で摺動抵抗が大きくなるのを防止できるからである。このことは、摩擦係数の小さいグラファイトと対向ベルトの摩擦抵抗を小さくできることとの相乗効果によって、対向ベルトの移送をよりスムーズにできる特徴を実現する。また、ワークの突出部などが局部的に対向ベルトに強く押圧されて損傷されるのも防止できる特徴がある。
【0012】
本発明の連続プレス装置は、ワーク9の移送方向に複数の押圧フレーム2を配置して、位置決め機構1が各々の押圧フレーム2を独立して対向ベルト5の背面5Bに押圧することができる。
この連続プレス装置は、各々の押圧フレームを別々にコントロールすることで、対向ベルトのベルト間隔をワークの移送方向に最適な設定間隔にできる。このため、ワークに無理な押圧力を作用させることなく、これを加圧状態で移送して加熱又は冷却できる。
【0013】
本発明の連続プレス装置は、温度制御機構4が、グラファイト3をワーク9の移送方向に交差する方向に複数の区画領域に分割して、分割された区画領域の温度を制御しながら加熱又は冷却することができる。
以上の連続プレス装置は、グラファイトをワークの移送方向に交差する方向、すなわち横方向に複数の区画領域に分割して、各々の区画領域の温度を独立して制御するので、対向ベルトの熱歪みを防止しながら、ワークをより理想的な状態で加熱又は冷却してプレス状態で移送できる。それは、対向ベルトを介してワークを加熱する区画領域に供給する熱エネルギを、ワークを加熱しない区画領域に供給する熱エネルギよりも大きくして、対向ベルトの温度分布を均一にできるからである。
たとえば、加熱された対向ベルトの中央部でワークを挟んで加熱しながら移送すると、対向ベルトの中央部の熱はワークに伝導して奪われ、対向ベルトの両側部はワークに接触しないので、中央部に比較してワークに奪われる熱量が少なくなる。このため、対向ベルトの両側部の温度が高くなる傾向となる。ところが、以上の連続プレス装置は、対向ベルトに面状に接触する状態にあるグラファイトを横方向に複数の区画領域に区画して、各々の区画領域を独立して加熱できるので、対向ベルトの横方向の温度差を少なくなるように、区画領域に熱エネルギを供給して、対向ベルトの温度差を少なくできる。
【0014】
本発明の連続プレス装置は、第1の位置決め機構1Aが、シリンダ13と、このシリンダ13のピストン13Cを一定の方向に押圧している弾性体14とを備え、弾性体14がピストン13Cを一端に移動させる状態で、押圧フレーム2をストッパ位置に配置し、弾性体14がピストン13Cを押圧する方向と反対にピストン13Cを移動せて逃げ機構12を実現することができる。
以上の連続プレス装置は、簡単な構造で理想的な状態の逃げ機構とストッパ機構とを実現できる。
【0015】
さらに、本発明の連続プレス装置は、弾性体14を、ピストン13Cを一定の方向に押圧するバネ14Aと、加圧流体14Bのいずれか又は両方とすることができる。
【0016】
本発明の連続プレス装置は、第2の位置決め機構1Bが、ネジ棒16と、このネジ棒16をねじ込んでなる移動体17と、ネジ棒16と移動体17の何れかを回転させるモータ18とを備え、ネジ棒16と移動体17のいずれかを押圧フレーム2に連結しており、モータ18がネジ棒16と移動体17のいずれかを回転させて、移動体17をネジ棒16に沿って相対的に移動させて押圧フレーム2を移動させて、対向ベルト5のベルト間隔を調整することができる。
以上の連続プレス装置は、簡単な構造の第2の位置決め機構でもって、ベルト間隔を設定間隔に調整できる。
【0017】
本発明の連続プレス装置は、温度制御機構4を、グラファイト3に設けたヒーター42とすることができる。
以上の連続プレス装置は、簡単な構造としながら、グラファイトの温度を正確にコントロールできる特徴がある。
【0018】
本発明の連続プレス装置は、対向ベルト5を無端ベルトとすることができる。
以上の連続プレス装置は、無端ベルトでワークを加熱又は冷却状態に挟んで連続して移送できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例にかかる連続プレス装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す連続プレス装置の押圧フレームと位置決め機構を示す拡大側面図である。
【図3】図1に示す連続プレス装置の押圧フレームと位置決め機構を示す拡大断面図である。
【図4】図2に示す押圧フレームの拡大断面図である。
【図5】位置決め機構の他の一例を示す拡大断面図である。
【図6】図4に示す押圧フレームの底面図である。
【図7】押圧フレームの他の一例を示す拡大断面図である。
【図8】図7に示す押圧フレームの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための連続プレス装置を例示するものであって、本発明は連続プレス装置を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0021】
本発明の連続プレス装置は、温度により固体・弾性体・流体と変化するようなプラスチック素材を中心とした連続熱加工、例えば積層素材や繊維補強プラスチックの製造等のさまざまな用途で生産性の高い加工を可能とする。とくに、低い圧力で加熱加圧して製造される熱可塑性樹脂の発泡体からなる板状材を加熱加圧して連続的に製造するのに最適である。本発明の連続プレス装置は、優れた熱伝導特性と小さい摩擦抵抗のグラファイトを対向ベルトの背面に面状に接触する状態で加圧することで、対向ベルトの摺動抵抗を小さくし、とくに、ワークの過加圧を回避して、熱によるワークの反力変化による厚み変化に敏感に反応する事により最適な成形を可能とする。
【0022】
図1ないし図3の連続プレス装置は、ワーク9を両面から挟んで加圧する加圧面5Aを互いに平行な姿勢として対向するように配置している対向ベルト5と、この対向ベルト5でワーク9を挟んで移送するように、対向ベルト5を移動させる駆動機構6と、対向ベルト5の背面5Bに摺動自在に配置されて、対向ベルト5を背面5Bから押圧すると共に、対向ベルト5との摺動面2Xにグラファイト3を面状に接触する状態に配置している押圧フレーム2と、対向ベルト5のベルト間隔を設定間隔とする位置に押圧フレーム2を位置させる位置決め機構1と、グラファイト3を加熱又は冷却して対向ベルト5を背面5Bから摺動状態で加熱又は冷却する温度制御機構4とを備える。
【0023】
対向ベルト5は無端ベルトで、ワーク9を上下の両面から挟着できるように、対をなす対向ベルト5を上下に配置している。上下に配置される対向ベルト5は、ワーク9を加圧する加圧面5Aが互いに平行な姿勢となるように対向して配置している。無端ベルトである対向ベルト5は、所定の幅を有する帯状のベルトの両端を連結して無端軌道としている。対向ベルト5は、ステンレス、スチール等の金属ベルトとし、あるいは、ガラス繊維補強フッ素樹脂ベルト等の耐熱性の樹脂ベルトとすることができる。
【0024】
駆動機構6は、対をなす対向ベルト5でワーク9を挟んで移送するように上下の対向ベルト5を移動させる。図1の駆動機構6は、ワーク9の移送方向の両端に配置されて無端ベルトである対向ベルト5が掛けられている対をなすロール10と、これらのロール10を回転させるモータなどの回転機構(図示せず)とを備えている。駆動機構6は、上下のロール10を互いに逆方向に回転させて、ワーク9の加圧部において、互いに平行な姿勢で対向する上下の対向ベルト5を同じ方向に移動させる。駆動機構6で移動される上下の対向ベルト5は、対向する加圧面5Aの間に搬入されるワーク9をプレス状態で挟んで移送する。
【0025】
さらに、駆動機構は、図示しないが、対をなすロールの間隔を調整する間隔調整機構を備えることもできる。この間隔調整機構は、対向ベルトが掛けられる対をなすロールの一方又は両方のロールの回転軸をワークの移送方向に移動させて、右左のロールの間隔を調整して、対をなすロールにかけられる無端ベルトの張力を調整する。
【0026】
押圧フレーム2は、対向ベルト5を介してワーク9を押圧する。この押圧フレーム2は、ワーク9を両面から挟着する上下の対向ベルト5の各々の加圧面5Aの背面5B側に配置されて、互いに対向する対向ベルト5を背面5Bから押圧する。図1ないし図3の連続プレス装置は、上下の対向ベルト5の背面5Bに位置するように、対をなす押圧フレーム2を備えている。対をなす押圧フレーム2は、上側に配置している第1の押圧フレーム2Aと、下側に配置している第2の押圧フレーム2Bとからなる。押圧フレーム2は、上下の対向ベルト5のベルト間隔を設定間隔とするように位置決め機構1で位置決めされる。対をなす押圧フレーム2は、上下の対向ベルト5のベルト間隔を設定間隔とする状態で、互いに対向する対向ベルト5を背面5Bから押圧して、対向する対向ベルト5の間を移送されるワーク9をプレスする。
【0027】
上下に対をなす押圧フレーム2は、互いの対向面に、対向ベルト5をプレスしながら摺動させる摺動面2Xを設けている。上側に位置する第1の押圧フレーム2Aは、上側の対向ベルト5の加圧面5Aの背面5Bに面状に接触するように、摺動面2Xを下面とする姿勢で配置している。下側に位置する第2の押圧フレーム2Bは、下側の対向ベルト5の加圧面5Aの背面5Bに面状に接触するように、摺動面2Xを上面とする姿勢で配置している。第1の押圧フレーム2Aと第2の押圧フレーム2Bは、各々の摺動面2Xで、上下の対向ベルト5の背面5Bを摺動自在に押圧する。対をなす押圧フレーム2は、加圧状態において対向ベルト5の背面5Bに密着して、対をなす対向ベルト5を介してワーク9をプレスする。上下の押圧フレーム2の間にあってワーク9を両面から挟着する対をなす対向ベルト5は、上下の押圧フレーム2の摺動面2Xに押圧される状態で駆動機構6によって移動されて、摺動面2Xを摺動しながら移動し、間に挟着されたワーク9をプレス状態で移送する。
【0028】
さらに、押圧フレーム2は、対向ベルト5との摺動面2Xにグラファイト3を面状に接触する状態に配置している。グラファイトは、好ましくは、対向ベルトとの接触面を平滑面として対向ベルトに面接触状態に接触させる。ただ、必ずしも面接触状態に接触させる必要はなく、対向ベルトとの接触面に溝を設け、あるいは微細な凹凸を設けて、対向ベルトに面状に接触させることもできる。図2と図3に示す押圧フレーム2は、対向ベルト5との摺動面2Xに配置しているグラファイト3と、このグラファイト3を固定している本体部20とを有する。グラファイト3は、所定の厚さのブロック状で、図に示すように、押圧フレーム2の本体部20に固定されて、対向ベルト5との対向面を摺動面2Xとしている。図3のグラファイト3は、対向ベルト5とほぼ等しい幅を有しており、対向ベルト5を幅方向のほぼ全体にわたって加圧しながら摺動できるようにしている。ただし、グラファイトの幅は、対向ベルトの幅よりも狭くすることもできる。対向ベルト5との摺動面2Xに配置されるグラファイト3は摩擦抵抗が小さく、小さい摺動抵抗で対向ベルト5をスムーズに摺動させながら移送する。また、後述する温度調整機構4が、グラファイト3を介して対向ベルト5を加温し、あるいは、冷却する時の熱伝導効率を向上できる。
【0029】
押圧フレーム2の本体部20は、対向ベルト5との対向面にブロック状のグラファイト3を固定している。本体部20は、グラファイト3を固定する固定プレート21を対向面に備えている。図4の押圧フレーム2は、連結具22を介して、グラファイト3を固定プレート21に固定している。図の連結具22は、グラファイト3と固定プレート21とを貫通する連結ボルト22Aと、この連結ボルト22Aの先端にねじ込まれるナット22Bとからなる。図4のグラファイト3は、連結ボルト22Aの鍔部22aを挿入する凹部3aを摺動面2Xに設けており、連結ボルト22Aの鍔部22aが摺動面2Xから突出するのを防止している。ブロック状のグラファイト3は、複数の連結具22を介して本体部20に固定される。
【0030】
さらに、図2と図3の連結プレス装置は、押圧フレーム2を位置決め機構1に連結しており、位置決め機構1でもって押圧フレーム2の位置を上下方向に移動させて、上下の対向ベルト5のベルト間隔を設定間隔としている。押圧フレーム2は、位置決め機構1に連結される対をなす連結軸23を備えている。対をなす連結軸23は、対向ベルト5の移送方向に交差する方向であって、同一直線上に配設しており、押圧フレーム2の幅方向の両端から外側に突出する姿勢で配置している。押圧フレーム2は、この連結軸23を介して位置決め機構1に連結している。さらに、押圧フレーム2は、対をなす連結軸23を、押圧フレーム2が対向ベルト5を押圧する摺動面2Xに位置させている。すなわち、押圧フレーム2は、対をなす連結軸23の中心軸mを結ぶ直線を、摺動面2Xと同一平面内に位置させている。図3の押圧フレーム2は、対をなす連結軸23を摺動面2Xに位置させるために、本体部20からグラファイト3の摺動面2Xに向かって延びる連結アーム24を本体部20に連結している。この連結アーム24は、一端を連結軸23に連結して、他端を押圧フレーム2の本体部20に連結している。図に示す本体部20は、幅方向の両端に位置して対をなす連結アーム24を固定している。対をなす連結アーム24は、本体部20の側面であって、ワーク9が移送される前後方向の中央に位置して、上下方向に延びる姿勢で配置して、連結軸23を本体部20に連結している。各々の連結アーム24は、下端部を摺動面2Xまで延長して、ここに連結軸23を固定しており、上端部を本体部20の側面に固定している。この押圧フレーム2は、直線上に配置された対をなす連結軸23を回転軸として垂直面内で傾動できるように位置決め機構1に連結している。
【0031】
以上の位置決め機構1は、連結軸23を介して押圧フレーム2の上下位置を調整する構造としているが、位置決め機構は連結軸を介することなく直接に押圧フレームの本体部に連結することもできる。
【0032】
位置決め機構1は、互いに対向する対向ベルト5のベルト間隔を設定間隔とする位置に押圧フレーム2を位置させる。図1ないし図3の連結プレス装置は、下側に位置する第2の押圧フレーム2Bを基台8に固定して、上側に位置する第1の押圧フレーム2Aの上下位置を位置決め機構1で調整して、上下の対向ベルト5のベルト間隔を設定間隔となるようにしている。この位置決め機構1は、上側に位置する第1の押圧フレーム2Aに連結された連結軸23を介して、第1の押圧フレーム2Aを上下に移動させて、第1の押圧フレーム2Aの上下位置を調整している。ただ、位置決め機構は、下側に位置する第2の押圧フレームの上下位置を調整して、上下の対向ベルトのベルト間隔を設定間隔とすることもできる。この連続プレス装置は、図示しないが、上側に位置する第1の押圧フレームを基台に固定し、下側に位置する第2の押圧フレームに連結軸を設けると共に、この連結軸を介して、位置決め機構で第2の押圧フレームを上下に移動させて、第2の押圧フレームの上下位置を調整する。さらにまた、位置決め機構は、第1の押圧フレームと第2の押圧フレームの両方の上下位置を調整して、上下の対向ベルトのベルト間隔を設定間隔とすることもできる。
【0033】
押圧フレーム2の上下位置を調整する位置決め機構1は、第1の位置決め機構1Aと第2の位置決め機構1Bとを備えている。第1の位置決め機構1Aは、対向ベルト5のベルト間隔を設定間隔とするストッパ位置に押圧フレーム2を配置するストッパ機構11を有すると共に、ワーク9が対向ベルト5を所定の圧力よりも大きな圧力で押し戻しする状態にあっては、ベルト間隔を設定間隔よりも拡開する逃げ機構12を有する。図2と図3の第1の位置決め機構1Aは、ストッパ機構11と逃げ機構12を、シリンダ13と、このシリンダ13のピストン13Cを一定の方向に押圧している弾性体14とで実現する。シリンダ13は、第2の位置決め機構1Bに連結されて、内部を往復運動するピストン13Cに連結しているロッド13Bを下方に突出させている。ロッド13Bは、下端を傾動自在に連結軸23に連結している。弾性体14は、ピストン13Cを一定の方向に押圧するバネ14Aで、図に示す弾性体14は、押しバネのコイルスプリングとしている。このバネ14Aは、シリンダ本体13Aとピストン13Cとの間にあって、ロッド13Bを弾性的に押し出している。図のシリンダ13は、垂直姿勢に配設して、ロッド13Bの下端を第1の押圧フレーム2Aの連結軸23に連結している。このストッパ機構11は、弾性体14でピストン13Cをシリンダ本体13Aの下端まで押圧して、ロッド13Bに連結している押圧フレーム2をストッパ位置に配置する。シリンダ13とピストン13Cと弾性体14とでストッパ機構11を実現するために、シリンダ本体13Aの下端にはピストン13Cが押し出されないストッパ壁13Dを設けている。
【0034】
以上の構造の第1の位置決め機構1Aは、シリンダ13内のピストン13Cを弾性体14の押圧力に逆らって移動させる構造として、逃げ機構12を実現している。この逃げ機構12は、ワーク9が対向ベルト5を所定の圧力よりも大きな圧力で押し戻す状態、すなわち、シリンダ13内の弾性体14が、ピストン13Cを押圧する圧力よりも大きな圧力で押圧される状態において、図2と図3の矢印Aで示すように、弾性体14の押圧方向と反対方向にピストン13Cを移動させてシリンダ13内の弾性体14を収縮させる。この状態で、第1の押圧フレーム2Aはワーク9によって上方に押し上げられて、ベルト間隔を設定間隔よりも拡開する。逃げ機構12が対向ベルト5のベルト間隔を拡開するときの圧力は、連続プレス装置でプレスされるワークの種類や材質、構造等により適宜決定される。
【0035】
図2と図3の第1の位置決め機構1Aは、ピストン13Cを弾性体14である押しバネ14Aのコイルスプリングで押圧する。ただ、第1の位置決め機構は、シリンダ内に加圧流体を供給して、この加圧流体でピストンを押圧して、ストッパ機構と逃げ機構とを実現することもできる。この第1の位置決め機構1Aは、図5に示すように、加圧流体14Bの加圧源15からシリンダ13内に一定の圧力の加圧流体14Bを圧入する。加圧流体14Bがピストン13Cを押圧して、ピストン13Cをシリンダ本体13Aの下端に移動し、この位置で停止して、ストッパ機構11を実現する。加圧流体14Bとして、オイルやエアーが使用できる。このように、ピストン13Cを加圧流体14Bで押圧する第1の位置決め機構1Aは、逃げ機構12が対向ベルト5のベルト間隔を拡開するときの圧力を、シリンダ13に注入される加圧流体14Bの圧力を変更して簡単に調整できる特徴がある。
【0036】
ただ、第1の位置決め機構は、シリンダ内のピストンを、押しバネであるコイルスプリングと加圧流体の両方で押圧して、ストッパ機構と逃げ機構とを実現することもできる。
【0037】
以上の第1の位置決め機構1Aは、第1の押圧フレーム2Aの連結軸23に連結されるシリンダ13を、連結軸23よりも上方に配置しているが、第1の位置決め機構は、図示しないが、シリンダを第1の押圧フレームの連結軸よりも下方に配置することもできる。この第1の位置決め機構は、シリンダのロッドを上向きに突出させる姿勢で配置して、このロッドの上端を連結軸を介して本体部に連結する。弾性体である押しバネのコイルスプリングは、シリンダのストッパ壁とピストンとの間に配置されて、弾性体を弾性的に収縮させる構造とする。このストッパ機構は、弾性体でピストンをシリンダ本体の底部である下端まで押圧して、ロッドに連結している押圧フレームをストッパ位置に配置する。さらに、この第1の位置決め機構は、ワークが対向ベルトを所定の圧力よりも大きな圧力で押し戻しする状態において、弾性体の押圧方向と反対方向にピストンを移動させて、シリンダのロッドを弾性的に押し出す。すなわち、この第1の押圧フレームも、ワークが対向ベルトを所定の圧力よりも大きな圧力で押し戻す状態において、ワークによって上方に押し上げられて、ベルト間隔を設定間隔よりも拡開する。
【0038】
さらに、以上の第1の位置決め機構1Aは、ロッド13Bの先端を押圧フレーム2に連結し、シリンダ本体13Aを第2の位置決め機構1Bに連結している。ただ、第1の位置決め機構は、図に示す状態からシリンダの姿勢を反転させて、シリンダ本体を押圧フレームに連結して、ロッドの先端を第2の位置決め機構に連結することもできる。
【0039】
第2の位置決め機構1Bは、第1の位置決め機構1Aが押圧フレーム2をストッパ位置に位置させる状態で、ベルト間隔を設定間隔とする。図2と図3に示す第2の位置決め機構1Bは、第1の位置決め機構1Aを介して押圧フレーム2に連結している。したがって、この第2の位置決め機構1Bは、第1の位置決め機構1Aを構成するシリンダ13を介して押圧フレーム2を上下方向に移動させてベルト間隔を設定間隔とする。
【0040】
図の第2の位置決め機構1Bは逃げ機構を備えず、第1の位置決め機構1Aが押圧フレーム2をストッパ位置に位置させる状態で、ベルト間隔を設定間隔とする。この第2の位置決め機構1Bは、第1の位置決め機構1Aのシリンダ13に連結しているネジ棒16と、このネジ棒16をねじ込んでいる移動体17と、この移動体17を回転させるモータ18とを備えている。図の第2の位置決め機構1Bは、ネジ棒16を固定しているシリンダ13を介して押圧フレーム2に連結しており、モータ18で回転される移動体17をネジ棒16に沿って相対的に移動させて、正確には、回転する移動体17に沿ってネジ棒16を移動させて、押圧フレーム2を上下に移動させるようにしている。図の第2の位置決め機構1Bは、移動体17を円盤状とすると共に、円盤状の移動体17の外周部17Aを回転できるように基台7に設けた軸受19で支持している。さらに、移動体17は、一方の面にスプロケット30を固定しており、このスプロケット30に掛けた駆動ベルト31を介して回転される。この駆動ベルト31は、モータ18の回転軸に固定しているスプロケット32に掛けられており、モータ18で駆動される駆動ベルト31で、両側の移動体17を一緒に同方向に回転できるようにしている。以上の第2の位置決め機構1Bは、モータ18が駆動ベルト31を介して、対をなす移動体17を回転させ、回転する移動体17に沿ってネジ棒16を上下方向(図3の矢印B参照)に移動させて、ネジ棒16に固定しているシリンダ13を上下に移動させる。上下方向に移動するシリンダ13は、ロッド13Bを介して連結している押圧フレーム2を移動させて、対向ベルト5のベルト間隔を調整する。
【0041】
ただ、第2の位置決め機構1Bは、図5に示す構造とすることもできる。図5の第2の位置決め機構1Bは、シリンダ13に連結している移動体37と、この移動体37にねじ込んでなるネジ棒36と、このネジ棒36を回転させるモータ18とを備えている。図の第2の位置決め機構1Bは、移動体37が連結されたシリンダ13を介して押圧フレーム2に連結しており、モータ18で回転されるネジ棒36に沿って移動体37を上下(図5の矢印B参照)に移動させて、押圧フレーム2を上下に移動させるようにしている。この第2の位置決め機構1Bは、ネジ棒36を垂直姿勢で回転できるように軸受39を介して基台7で支持している。このネジ棒36には移動体37をねじ込んでおり、この移動体37を連結ロッド35を介してシリンダ13に連結している。さらに、移動体37を回転させることなくネジ棒36に沿って上下に平行移動させるために、ネジ棒36の両側にガイドロッド34を設けており、このガイドロッド34を案内するガイド穴38を移動体37に設けている。さらに、ガイドロッド34の下端には支持プレート27を水平姿勢で固定しており、この支持プレート27の中央部において、軸受29を介してネジ棒36の下端を回転できるように支持している。移動体37は、連結ロッド35を介してシリンダ13に連結しており、この連結ロッド35を、支持プレート27に開口した挿通穴28に通過させている。
【0042】
この第2の位置決め機構1Bは、回転するネジ棒36に沿って上下に移動される移動体37を介してシリンダ13を上下に移動させる。ネジ棒36は、これを回転させるスプロケット30を固定しており、このスプロケット30にかけた駆動ベルト31を介して回転される。この駆動ベルト31は、モータ18の回転軸に固定しているスプロケット32に掛けられており、モータ18で駆動される駆動ベルト31で、両側のネジ棒36を一緒に同方向に回転できるようにしている。以上の第2の位置決め機構1Bは、モータ18が駆動ベルト31を介して、対をなすネジ棒36を回転させ、回転するネジ棒36に沿って移動体37を上下方向(図5の矢印B参照)に移動させて、移動体37に連結しているシリンダ13を上下に移動させる。上下方向に移動するシリンダ13は、これに連結している押圧フレーム2を移動させて、対向ベルト5のベルト間隔を調整する。
【0043】
図1の連続プレス装置は、複数組の押圧フレーム2をワーク9の移送方向に並べて配置している。このように複数組の押圧フレーム2を移送方向に配置している連続プレス装置は、各々の押圧フレーム2で上下の対向ベルト5を押圧しながらワーク9をプレスするので、ワーク9を加圧する加圧面5Aを広くして効率よくプレスできる特徴がある。図に示す連続プレス装置は、複数の押圧フレーム2で各々独立して対向ベルト5をプレスできるようにしている。したがって、位置決め機構は、各々の押圧フレーム2に対応して設けており、各々の位置決め機構でもって対応する押圧フレームを独立して移動できるようにしている。ただ、連続プレス装置は、1つの位置決め機構でもって、複数の押圧フレームを同時に上下動させることもできる。図1に示す連続プレス装置は、ワーク9の移送方向に4組の押圧フレーム2を直線状に並べて配置しているが、直線状に並べる押圧フレームの個数を多くして、ワークをプレス状態で移送できる距離を長くできる。また、押圧フレームを単数としてワークを短くプレス状態で移送することもできる。さらに、多数の押圧フレームを直線状に並べている連続プレス装置は、ひとつの押圧フレームの移送方向の幅を狭くしながら、ワークをプレス状態で移送できる距離を長くできる。
【0044】
グラファイト3は、温度制御機構4で加熱又は冷却されて、対向ベルト5を背面5Bから摺動状態で加熱又は冷却する。図4の連続プレス装置は、温度制御機構4をグラファイト3を加熱する加熱機構41のヒーター42としている。温度制御機構4である加熱機構41は、グラファイト3を内部から加熱して対向ベルト5を背面5Bから摺動状態で加熱する。加熱機構41である温度制御機構4は、グラファイト3の内部に、グラファイト3を加熱するヒーター42を配設している。温度制御機構4の加熱機構41は、図6に示すように、グラファイト3を、ワーク9の移送方向に交差する方向に複数の区画領域3Aに分割して、分割された区画領域3Aの温度を制御しながら加熱する。
【0045】
図6の加熱機構41は、グラファイト3を5区画の区画領域3Aに分割して、分割された区画領域3Aの温度を制御しながら加熱している。5区画に区画された区画領域3Aは、中央部の横幅(W1)を広くし、その両側の横幅(W2)を中央部の半分としている。中央部にある2倍の横幅(W1)の区画領域3Aには、長いヒーター42を固定し、両側の区画領域3Aには短いヒーター42を配置している。ヒーター42は、図4の断面図に示すように、グラファイト3に設けた収納溝3bに配置される。グラファイト3は、対向ベルト5との摺動面2Xの反対側に収納溝3bを設けて、ここにヒーター42を配置している。収納溝3bを閉塞するように、グラファイト3に閉塞プレート43を積層している。積層されるグラファイト3と閉塞プレート43は、連結具22を介して押圧フレーム2の本体部20の固定プレート21に固定される。閉塞プレート43は、グラファイトとすることができ、また、熱伝導率の小さい断熱プレートとすることもできる。閉塞プレート43をグラファイトとする構造は、グラファイト3全体の温度を均一にして、対向ベルト5を均一に加熱できる。また、閉塞プレートを断熱プレートとする構造は、ヒーターの熱で効率よく対向ベルトを加熱できる。
【0046】
各々の区画領域3Aに配置しているヒーター42は、コントロール回路44で別々に独立して温度制御される。コントロール回路44は、グラファイト温度、又は対向ベルト温度を検出して、ヒーター42の通電を制御する。図6に示す加熱機構41は、各々の区画領域3Aにおけるグラファイト温度、又は対向ベルト温度を検出する温度センサ45を備えている。このコントロール回路44は、ヒーター42の通電をコントロールして、グラファイト温度、又は対向ベルト温度を設定温度とする。
【0047】
連続プレス装置は、対向ベルト5の中央部でワーク9をプレス状態で移送するとき、対向ベルト5の中央部の熱がワーク9に奪われる。したがって、この状態で対向ベルト5の全体を均一な熱エネルギで加熱すると、ワーク9で熱が奪われる中央部の温度が低くなる。このため、ワーク9の両側部の温度が高くなるなどの弊害が発生する。グラファイト3を複数の区画領域3Aに区画して、各々の区画の温度を別々にコントロールする図6の温度制御機構4は、ワーク9の移送状態にかかわらず、常に対向ベルト5を最適な温度に設定して、ワーク9を理想的な状態で加熱しながらプレス状態で移送できる。
【0048】
図1の連続プレス装置は、全ての押圧フレーム2で対向ベルト5を加熱する。すなわち、全ての押圧フレーム2に、対向ベルト5を加熱する加熱機構41を備えている。ただ、連続プレス装置は、全ての押圧フレームで対向ベルトを冷却することもできる。この連続プレス装置は、全ての押圧フレームに、対向ベルトを冷却する冷却機構を設ける。また、連続プレス装置は、加熱用の押圧フレームと、この押圧フレームを通過して加熱されたワークを冷却する冷却用の押圧フレームとをワークの移送方向に並べて配置することもできる。この連続プレス装置は、たとえば、ワークの移送方向に直線状に並べて配置している4組の押圧フレームのうち供給側の2組を加熱用の押圧フレームとし、排出側の2組を冷却用の押圧フレームとすることができる。この連続プレス装置は、ワークの供給側に配置される加熱用の押圧フレームに加熱機構を設けて、排出側に配置される冷却用の押圧フレームに冷却機構を設ける。この連続プレス装置は、ワークを加熱した後、冷却して排出できる。
【0049】
温度制御機構4を、対向ベルト5を冷却する冷却機構46とする押圧フレーム2を図7と図8に示す。図7に示す押圧フレーム2は、グラファイト3に冷却プレート47を熱伝導状態で積層し、この冷却プレート47を介してグラファイト3を冷却する。冷却プレート47はアルミニウムなどの熱伝導の優れた金属プレートで、グラファイト3が対向ベルト5に接触する摺動面2Xの反対側の面に積層される。冷却プレート47は、冷却流体を通過させる流体通路48を設けている。この流体通路48に冷却された冷媒を循環し、あるいは、冷却された水やブライン液を循環させて、冷却プレート47を冷却する。冷却プレート47は、一方の面にグラファイト3を、他方の面に断熱プレート49を積層して、押圧フレーム2の本体部20に固定される。断熱プレート49は、押圧フレーム2の固定プレート21との熱伝導を遮断して、効率よくグラファイト3を冷却する。グラファイト3を冷却する連続プレス装置も、グラファイトを複数の区画領域に区画して、各々の区画領域の温度を別々に最適値にコントロールすることもできる。複数の区画領域を最適な設定温度とするには、たとえば、冷却プレートとグラファイトとの接触面積を調整して実現できる。たとえば、対向ベルトの両側に接触するグラファイトと冷却プレートとの接触面積を、対向ベルトの中央部に接触するグラファイトと冷却プレートの接触面積よりも小さくして、対向ベルトの中央部を冷却プレートでより効率よく冷却することができる。
【0050】
以上の冷却機構46は、冷却プレート47を介してグラファイト3を冷却するが、冷却機構は、グラファイトを直接に冷却流体で冷却することもできる。この冷却機構は、グラファイトの内部に流体通路を設けて、ここに冷却流体を循環させる。さらに、加熱機構は、前述したように、グラファイトの内部にヒーターを配置し、このヒーターでグラファイトを直接に加熱することもできるが、グラファイトを冷却する構造と同じように、グラファイトに加熱プレートを熱伝導状態に積層し、加熱プレートをヒーターで加熱して、グラファイトを加熱することもできる。さらに、連続プレス装置は、グラファイトを加熱する加熱機構をヒーターには特定しない。加熱機構は、ヒーターに代わって、加熱された油や加熱蒸気などの加熱流体をグラファイトの内部に循環し、あるいは加熱プレートの内部に循環させて、グラファイトを加熱することもできるからである。
【符号の説明】
【0051】
1…位置決め機構 1A…第1の位置決め機構
1B…第2の位置決め機構
2…押圧フレーム 2A…第1の押圧フレーム
2B…第2の押圧フレーム
2X…摺動面
3…グラファイト 3A…区画領域
3a…凹部
3b…収納溝
4…温度制御機構
5…対向ベルト 5A…加圧面
5B…背面
6…駆動機構
7…基台
8…基台
9…ワーク
10…ロール
11…ストッパ機構
12…逃げ機構
13…シリンダ 13A…シリンダ本体
13B…ロッド
13C…ピストン
13D…ストッパ壁
14…弾性体 14A…バネ
14B…加圧流体
15…加圧源
16…ネジ棒
17…移動体 17A…外周部
18…モータ
19…軸受
20…本体部
21…固定プレート
22…連結具 22A…連結ボルト
22a…鍔部
22B…ナット
23…連結軸
24…連結アーム
27…支持プレート
28…挿通穴
29…軸受
30…スプロケット
31…駆動ベルト
32…スプロケット
34…ガイドロッド
35…連結ロッド
36…ネジ棒
37…移動体
38…ガイド穴
39…軸受
41…加熱機構
42…ヒーター
43…閉塞プレート
44…コントロール回路
45…温度センサ
46…冷却機構
47…冷却プレート
48…流体通路
49…断熱プレート
m…中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク(9)を両面から挟んで加圧する加圧面(5A)を互いに平行な姿勢として対向するように配置してなる対向ベルト(5)と、この対向ベルト(5)でワーク(9)を挟んで移送するように、対向ベルト(5)を移動させる駆動機構(6)と、前記対向ベルト(5)の背面(5B)に摺動自在に配置されて、対向ベルト(5)を背面(5B)から押圧すると共に、対向ベルト(5)との摺動面(2X)にグラファイト(3)を面状に接触する状態に配置してなる押圧フレーム(2)と、前記対向ベルト(5)のベルト間隔を設定間隔とする位置に押圧フレーム(2)を位置させる位置決め機構(1)と、前記グラファイト(3)を加熱又は冷却して対向ベルト(5)を背面(5B)から摺動状態で加熱又は冷却する温度制御機構(4)とを備え、
前記位置決め機構(1)が、第1の位置決め機構(1A)と第2の位置決め機構(1B)とを備えており、
第1の位置決め機構(1A)は、対向ベルト(5)のベルト間隔を設定間隔とするストッパ位置に押圧フレーム(2)を配置するストッパ機構(11)を有すると共に、前記ワーク(9)が対向ベルト(5)を所定の圧力よりも大きな圧力で押し戻しする状態にあっては、ベルト間隔を設定間隔よりも拡開する逃げ機構(12)を有し、
第2の位置決め機構(1B)は、前記第1の位置決め機構(1A)が押圧フレーム(2)をストッパ位置に位置させる状態で、ベルト間隔を設定間隔とする機構を有し、
前記温度制御機構(4)がグラファイト(3)を加熱又は冷却し、グラファイト(3)が対向ベルト(5)を加熱又は冷却してワーク(9)を加熱又は冷却すると共に、前記ストッパ機構(11)が押圧フレーム(2)をストッパ位置に配置する状態で、前記第2の位置決め機構(1B)がベルト間隔を設定間隔に保持してワーク(9)を両面から挟んで加圧加熱状態又は加圧冷却状態で移送し、かつ、ワーク(9)が一定の圧力以上の圧力で対向ベルト(5)を押し戻しする状態にあっては、前記第1の位置決め機構(1A)の逃げ機構(12)でもってベルト間隔を設定間隔よりも拡開しながら、前記駆動機構(6)で対向ベルト(5)を移動させて、ワーク(9)を加圧加熱状態又は加圧冷却状態で移送するようにしてなる連続プレス装置。
【請求項2】
ワーク(9)の移送方向に複数の押圧フレーム(2)を配置しており、前記位置決め機構(1)が各々の押圧フレーム(2)を独立して対向ベルト(5)の背面(5B)に押圧している請求項1に記載される連続プレス装置。
【請求項3】
前記温度制御機構(4)が、グラファイト(3)をワーク(9)の移送方向に交差する方向に複数の区画領域(3A)に分割して、分割された区画領域(3A)の温度を制御しながら加熱又は冷却する請求項1又は2に記載される連続プレス装置。
【請求項4】
前記第1の位置決め機構(1A)が、シリンダ(13)と、このシリンダ(13)のピストン(13C)を一定の方向に押圧している弾性体(14)とを備え、
弾性体(14)がピストン(13C)を一端に移動させる状態で、押圧フレーム(2)をストッパ位置に配置し、弾性体(14)がピストン(13C)を押圧する方向と反対にピストン(13)を移動せて逃げ機構(12)を実現してなる請求項1ないし3のいずれかに記載される連続プレス装置。
【請求項5】
前記弾性体 (14)が、ピストン(13C)を一定の方向に押圧するバネ(14A)と、加圧流体(14B)のいずれか又は両方である請求項4に記載される連続プレス装置。
【請求項6】
前記第2の位置決め機構(1B)が、ネジ棒(16;36)と、このネジ棒(16;36)をねじ込んでなる移動体(17;37)と、ネジ棒(16;36)と移動体(17;37)の何れかを回転させるモータ(18)とを備え、ネジ棒(16;36)と移動体(17;37)のいずれかが押圧フレーム(2)に連結され、
前記モータ(18)がネジ棒(36)と移動体(17)のいずれかを回転させて、移動体(17;37)をネジ棒(16;36)に沿って相対的に移動させて押圧フレーム(2)を移動させて、対向ベルト(5)のベルト間隔を調整するようにしてなる請求項1ないし5のいずれかに記載される連続プレス装置。
【請求項7】
前記温度制御機構(4)がグラファイト(3)に設けたヒーター(42)である請求項1ないし6のいずれかに記載される連続プレス装置。
【請求項8】
前記対向ベルト(5)が無端ベルトである請求項1ないし7のいずれかに記載される連続プレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−179637(P2012−179637A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44530(P2011−44530)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(391017931)株式会社山本鉄工所 (8)
【Fターム(参考)】