連続加熱炉
【課題】搬送体を支持するローラの温度低下を抑制し、熱効率を向上する。
【解決手段】連続加熱炉200は、被焼成物を搬送する無端状に張架された搬送体210と、搬送体の一部または全部を囲繞して焼成空間を形成する炉本体212と、炉本体内において、搬送体の一部を支持するローラ214と、燃料ガスをヒータ本体内に流入させる流入孔、燃料ガスが燃焼する燃焼室、排気ガスが導かれる導出部、導出部を流通する排気ガスまたは燃焼室における燃焼によって加熱され被焼成物に輻射熱を伝熱する輻射面、輻射面を加熱した排気ガスをヒータ本体外に排気する排気孔、を有し、炉本体内に配置された1または複数の密閉式ガスヒータと、密閉式ガスヒータの排気孔と連通し排気ガスが導かれる排気用配管216と、を備え、排気用配管は、当排気用配管を流通する排気ガスとローラとの間で熱交換可能な構成である。
【解決手段】連続加熱炉200は、被焼成物を搬送する無端状に張架された搬送体210と、搬送体の一部または全部を囲繞して焼成空間を形成する炉本体212と、炉本体内において、搬送体の一部を支持するローラ214と、燃料ガスをヒータ本体内に流入させる流入孔、燃料ガスが燃焼する燃焼室、排気ガスが導かれる導出部、導出部を流通する排気ガスまたは燃焼室における燃焼によって加熱され被焼成物に輻射熱を伝熱する輻射面、輻射面を加熱した排気ガスをヒータ本体外に排気する排気孔、を有し、炉本体内に配置された1または複数の密閉式ガスヒータと、密閉式ガスヒータの排気孔と連通し排気ガスが導かれる排気用配管216と、を備え、排気用配管は、当排気用配管を流通する排気ガスとローラとの間で熱交換可能な構成である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、順次搬入される被焼成物を加熱する連続加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ガスを燃焼させた燃焼熱で輻射体を加熱し、その輻射体の輻射面からの輻射熱で、工業材料や食品等を加熱するガスヒータを複数備えた連続加熱炉が普及している。
【0003】
連続加熱炉は、無端状のベルト等の搬送体を駆動し、被焼成物を炉本体内の加熱空間で搬送しながら焼成する。この搬送体の一部は、炉本体(加熱空間)外で冷やされ、炉本体内で吸熱するサイクルを繰り返すため加熱空間内の熱を放熱してしまい、連続加熱炉の熱効率低下の一因となっている。そこで、搬送体のうち搬送方向の下流から上流まで返送される返送部分を断熱壁で取り囲み、断熱壁で取り囲んだ空間に対して加熱空間内の空気を流入させて、返送部分の搬送体の温度低下を抑制して熱効率の向上を図る加熱炉の構成が公開されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−116463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、搬送体はローラによって支持されている。このローラのうち、ガスヒータに近い部位の熱は、ガスヒータから離れた部位に伝熱するため、被焼成物近傍のローラの温度が下がり、熱効率低下を招いていた。また、特に、米菓等、反りを抑える必要がある被焼成物は、被焼成物の上下を網で挟み、その外側をローラで挟んで押さえ付けることからローラの本数が多くなるため、熱効率がより低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、搬送体を支持するローラの温度低下を抑制し、熱効率を向上することが可能な連続加熱炉を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の連続加熱炉は、被焼成物を搬送する無端状に張架された搬送体と、搬送体の一部または全部を囲繞して焼成空間を形成する炉本体と、炉本体内において、搬送体の一部を支持するローラと、燃料ガスをヒータ本体内に流入させる流入孔、流入孔から流入した燃料ガスが燃焼する燃焼室、燃焼室における燃焼によって生じた排気ガスが導かれる導出部、導出部を流通する排気ガスまたは燃焼室における燃焼によって加熱され被焼成物に輻射熱を伝熱する輻射面、輻射面を加熱した排気ガスをヒータ本体外に排気する排気孔、を有し、炉本体内に配置された1または複数の密閉式ガスヒータと、密閉式ガスヒータの排気孔と連通し排気ガスが導かれる排気用配管と、を備え、排気用配管は、当該排気用配管を流通する排気ガスとローラとの間で熱交換可能な構成であることを特徴とする。
【0008】
ローラは中空に構成され、排気用配管を流通する排気ガスがローラの内部に導かれてもよい。
【0009】
排気用配管は、ローラのうち、搬送体よりも被焼成物の搬送方向に直交する方向に突出する部位との間で熱交換可能な構成であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、搬送体を支持するローラの温度低下を抑制し、熱効率を向上可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態における密閉式ガスヒータシステムの外観例を示した外観斜視図である。
【図2】第1の実施形態における密閉式ガスヒータシステムの構造を説明するための組立図である。
【図3】図1のIII‐III線断面図である。
【図4】複数の突起部を説明するための説明図である。
【図5】第1の実施形態における連続加熱炉の概要を説明するための説明図である。
【図6】第1の実施形態におけるローラの熱交換を説明するための説明図である。
【図7】第1の実施形態における保温壁および保温管を説明するための説明図である。
【図8】図7(b)のVIII‐VIII線断面図である。
【図9】第2の実施形態における保温管を説明するための説明図である。
【図10】第3の実施形態における保温板を説明するための説明図である。
【図11】第4の実施形態における保温層を説明するための説明図である。
【図12】第5の実施形態における保温板を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
第1の実施形態の連続加熱炉は、炉内に複数の密閉式ガスヒータシステムが設けられている。ここでは、まず、密閉式ガスヒータシステムについて説明し、その後、連続加熱炉の構成について説明することとする。
【0014】
(第1の実施形態:密閉式ガスヒータシステム100)
図1は、第1の実施形態における密閉式ガスヒータシステム100の外観例を示した外観斜視図である。本実施形態における密閉式ガスヒータシステム100は、都市ガス等と燃焼用酸化剤ガスとしての空気とが本体容器に供給される前に混合される予混合タイプとするが、かかる場合に限定されず、所謂、拡散燃焼を行う拡散タイプであってもよい。
【0015】
図1に示すように、密閉式ガスヒータシステム100は、複数(ここでは2つ)の密閉式ガスヒータ110を連設してなり、都市ガス等と空気との混合ガス(以下、「燃料ガス」という)の供給を受けて、それぞれの密閉式ガスヒータ110で燃料ガスが燃焼することで、加熱される。そして、密閉式ガスヒータシステム100では、その燃焼によって生じた排気ガスが回収される。
【0016】
図2は、第1の実施形態における密閉式ガスヒータシステム100の構造を説明するための組立図である。図2に示すように、密閉式ガスヒータシステム100は、配置板120と、外周壁122と、仕切板124と、加熱板126とを含んで構成される。
【0017】
配置板120は、耐熱性および耐酸化性が高い素材、例えば、ステンレス鋼(SUS:Stainless Used Steel)等で形成される薄板部材である。
【0018】
外周壁122は、配置板120と外周面が面一となる外形を有する薄板部材で構成され、図示のように配置板120に積層される。この外周壁122には、内周がトラック形状(略平行な2つの線分と、その2つの線分をつなぐ2つの円弧(半円)からなる形状)をなし、厚さ方向(外周壁122と配置板120との積層方向)に貫通する2つの貫通孔122aが設けられている。
【0019】
仕切板124は、配置板120と同様に、耐熱性および耐酸化性が高い素材、例えば、ステンレス鋼や、熱伝導率が高い素材、例えば、黄銅等で形成される。そして、仕切板124は、外周壁122の貫通孔122aの内周面に沿った外形形状を有する薄板部材で構成され、外周壁122の内側に配置板120と略平行に配置される。なお、仕切板124は、外周壁122の貫通孔122a内に収容された状態で、外周面が貫通孔122aの内周面と一定間隔を維持して離間する寸法関係を維持している。
【0020】
加熱板126は、配置板120と同様、耐熱性および耐酸化性が高い素材、例えば、ステンレス鋼や、熱伝導率が高い素材、例えば、黄銅等で形成される薄板部材からなる。加熱板126には、凹凸が形成された凹凸部126aが設けられている。かかる構成により、加熱板126および配置板120の温度差や加熱板126および配置板120の素材の違いによる熱膨張の変形量の差を凹凸部126aで吸収し、外周壁122との結合部分等に生じる応力が小さくなるため、加熱と冷却を繰り返すことによる熱疲労および高温クリープを抑えることができる。また、加熱板126の後述する輻射面の面積が大きくなるため、輻射強度を高めることも可能となる。
【0021】
また、配置板120、仕切板124および加熱板126は、間に空隙が形成されれば、傾いて対向配置されてもよい。また、配置板120、仕切板124、および加熱板126は、その厚みに制限はなく、配置板120および仕切板124も、凹凸に形成されてもよい。
【0022】
そして、加熱板126は、配置板120および外周壁122と外周面が面一となる外形を有しており、外周壁122および仕切板124に積層される。このとき、加熱板126および配置板120は、互いに略平行(本実施形態における超過エンタルピ燃焼を起こさせるための実質的な平行)に配置されている。
【0023】
このように、密閉式ガスヒータシステム100の本体容器は、外周壁122の上下を加熱板126および配置板120で閉塞してなるもので、外周面(外周壁122の外表面)の面積より上下壁面(加熱板126および配置板120の外表面)の面積の方が大きい。つまり、上下壁面は、本体容器の外表面の大部分を占める。
【0024】
また、密閉式ガスヒータシステム100には、2つの密閉式ガスヒータ110が連設して構成されており、両密閉式ガスヒータ110間の接続部位には、連設された密閉式ガスヒータ110内の密閉空間を連通する火移り部128が形成されている。ただし、密閉空間といっても、気体中で用いる場合、必ずしも完全密閉する必要はない。本実施形態の密閉式ガスヒータシステム100では、例えば、イグナイタ(図示せず)等の点火装置による1回の点火によって、火移り部128を通じて連設する密閉式ガスヒータ110に火炎が広がって点火される。上記したように、密閉式ガスヒータシステム100には2つの密閉式ガスヒータ110が設けられるが、両密閉式ガスヒータ110は同一の構成であるため、以下では、一方の密閉式ガスヒータ110について説明する。
【0025】
図3は、図1のIII‐III線断面図である。図3(a)に示すように、配置板120には、密閉式ガスヒータ110の中心部において厚さ方向に貫通する流入孔132が設けられている。この流入孔132には、燃料ガスが流通する第1配管部130が接続されており、流入孔132を介して燃料ガスが密閉式ガスヒータ110内に導かれる。
【0026】
本体容器内では、厚み方向(配置板120と加熱板126の対向面に直交する方向)に、導入部134と導出部138とが重ねて形成される。
【0027】
導入部134は、配置板120と仕切板124に挟まれた空間であり、燃焼室136に連続して配され、流入孔132から流入した燃料ガスを燃焼室136に放射状に導く。
【0028】
燃焼室136は、外周壁122、加熱板126、および配置板120で囲繞される空間内に配置される。また、燃焼室136は、仕切板124の外周端部に面しており、外周壁122に沿って形成される。燃焼室136では、導入部134を介して流入孔132から流入した燃料ガスが燃焼する。このように外周壁122に沿って燃焼室136を形成する構成により燃焼室136の体積を十分に確保でき、また、スイスロール型に比べ燃焼負荷率を低くできる。燃焼室136の任意の位置には、着火装置(図示せず)が設けられる。
【0029】
導出部138は、加熱板126と仕切板124に挟まれた空間であり、燃焼室136に連続して配され、燃焼室136における燃焼によって生じた排気ガスを、密閉式ガスヒータ110の中心部に集約する。
【0030】
また、本体容器内では、厚み方向に、導入部134と導出部138とが重なって形成されているので、仕切板124を通じて排気ガスの熱を燃料ガスに伝達し、燃料ガスを予熱することができる。
【0031】
輻射面140は、加熱板126の外側の面であり、導出部138を流通する排気ガスまたは燃焼室136における燃焼によって加熱され、被焼成物に輻射熱を伝熱する。
【0032】
仕切板124には、密閉式ガスヒータ110の中心部において厚さ方向に貫通する排気孔142が設けられている。この排気孔142には、内周部分に第2配管部144が嵌合されており、排気孔142を介して、輻射面140を加熱した後の排気ガスが密閉式ガスヒータ110の外に排気される。
【0033】
第2配管部144は、第1配管部130内部に配される。すなわち、第1配管部130と第2配管部144とで二重管を形成する。また、第2配管部144は、排気ガスの熱を、第1配管部130を流れる燃料ガスに伝達する役割も担う。
【0034】
ここで、配置板120が第1配管部130の端部に固定され、仕切板124は第1配管部130より突出している第2配管部144の端部に固定され、第1配管部130の端部と第2配管部144の端部の差分だけ、配置板120と仕切板124とが離隔している。
【0035】
なお、本実施形態においては、第1配管部130の内部に第2配管部144が配されるが、かかる場合に限定されず、第1配管部130および第2配管部144を加熱板126側から導入部134および導出部138に挿通させ、第2配管部144の内部に第1配管部130が配されてもよい。
【0036】
続いて、燃料ガスおよび排気ガスの流れを具体的に説明する。図3(a)の円部分を拡大した図3(b)中、白抜き矢印は燃料ガスの流れを、灰色で塗りつぶした矢印は排気ガスの流れを、黒色で塗りつぶした矢印は熱の移動を示す。第1配管部130に燃料ガスを供給すると、燃料ガスは流入孔132から導入部134に流入し、水平方向に放射状に広がりながら燃焼室136に向けて流れる。そして、燃料ガスは、燃焼室136において外周壁122に衝突して流速が低下し、点火された火炎によって燃焼した後、高温の排気ガスとなり、排気ガスは導出部138を流れて加熱板126の輻射面140に伝熱した後、排気孔142を通じて第2配管部144から後述する排気伝熱部へ排出される。
【0037】
仕切板124は、比較的、熱伝導し易い素材で形成されており、導出部138を通過する排気ガスの熱は、仕切板124を介して導入部134を通過する燃料ガスに伝わる。ここでは、導出部138を流れる排気ガスと導入部134を流れる燃料ガスとが、仕切板124を挟んで対向流(カウンタフロー)となっているため、排気ガスの熱で燃料ガスを効率的に予熱することが可能となり、高い熱効率を得ることができる。このように燃料ガスを予熱してから燃焼する、所謂、超過エンタルピ燃焼によって、燃料ガスの燃焼を安定化し、不完全燃焼によって生じるCO(一酸化炭素)の濃度を極低濃度に抑えることができる。
【0038】
さらに、逆火防止のために、導入部134と燃焼室136との境界には、突起部150が設けられている。この突起部150は、火炎を導入部134側に通さない(燃焼反応が導入部134の方に伝播されない)ようにするためのものである。この突起部150について、図4を用いて説明する。
【0039】
図4は、複数の突起部150を説明するための説明図である。図4(a)は、加熱板126を除いた密閉式ガスヒータシステム100の斜視図であり、図4(b)は、図4(a)のIV(b)‐IV(b)線断面を矢印の方向から見た説明図である。図4(b)において、複数の突起部150の構造の理解を容易にするため、加熱板126、および、突起部150のうち仕切板124で隠れている部分を破線で示す。また、矢印152は燃料ガスの流れの向きを示す。導入部134は、仕切板124に設けられた複数の突起部150によって、流路断面が狭められている。燃料ガスは、導入部134のうち、図3(b)の部分拡大図および、図4(b)の説明図で示すように、隣接する突起部150の間の空隙を通じて燃焼室136に流入することとなる。
【0040】
上記のように、本実施形態の密閉式ガスヒータシステム100によれば、排気ガスの熱で燃料ガスを予熱するため、高い熱効率を得ると共に、排気ガスを拡散させないため、後述する連続加熱炉200において排気ガスの熱を有効に利用することが可能となる。
【0041】
続いて、上述した密閉式ガスヒータシステム100を複数配置した連続加熱炉200について説明する。
【0042】
図5は、第1の実施形態における連続加熱炉200の概要を説明するための説明図である。特に、図5(a)は連続加熱炉200の上面図を示し、図5(b)は図5(a)のV(b)‐V(b)線断面図を示す。
【0043】
搬送体210は、例えば、ベルト等の搬送帯で構成され、ローラ214に張架支持されており、モータ(図示せず)の動力を受けた歯車210aによって回転し被焼成物を搬送する。この被焼成物は、搬送体210の上に載置されるものとするが、例えば、搬送体210に設けられた吊持機構(図示せず)によって吊持されてもよい。また、本実施形態では、炉本体212内において、被焼成物が配され、搬送時に通過する空間を対象空間212aとする。
【0044】
炉本体212は、搬送体210の一部または全部を囲繞して焼成空間を形成する。すなわち、炉本体212は、対象空間212aも囲繞することとなる。
【0045】
ローラ214は、炉本体212内において搬送体210の一部を鉛直下側から支持する。なお、被焼成物の反りを抑えるため、被焼成物の上下を挟む一対の網によって搬送体が構成される場合には、一対の網の外側にローラ214を設けるとよい。
【0046】
密閉式ガスヒータシステム100は、炉本体212内に複数配置される。本実施形態において、密閉式ガスヒータシステム100は、炉本体212内の、搬送体210の鉛直上方と下方とにそれぞれ複数配置されている。
【0047】
図6は、第1の実施形態におけるローラ214の熱交換を説明するための説明図である。図6(a)には、図5のVI(a)‐VI(a)線断面図を示す。ここでは、理解を容易とするため、後述する保温壁および保温管については記載を省略する。また、以下の図面において、排気ガスの流路(排気ガスの流通する空間)を黒色の塗りつぶしで示し、密閉式ガスヒータシステム100をクロスハッチングで示す。
【0048】
図6(a)に示すように、ローラ214は、端部が炉本体212の壁面を貫通して炉本体212外に露出しており、壁面の貫通部分に設けられた軸受214aによって回転自在に支持される。
【0049】
排気用配管216は、密閉式ガスヒータシステム100の第2配管部144と連通して排気ガスが導かれる。ここでは、密閉式ガスヒータシステム100から延伸した配管のうち、配管が曲がる部分までを第2配管部144とし、曲がる部分より下流側の複数の第2配管部144が接続される配管を排気用配管216とする。
【0050】
そして、排気用配管216は、当該排気用配管216を流通する排気ガスとローラ214との間で熱交換可能な構成である。具体的に、ローラ214は、図6(a)に示すように中空に構成され、排気用配管216は、炉本体212外のローラ214端部に接続され、排気用配管216を流通する排気ガスがローラ214の内部に導かれる。
【0051】
排気ガスをローラ214内部に流通させる構成により、ローラ214全体を暖めることができ、ローラ214のいずれの位置においても炉本体212内の熱の吸熱を抑制し、ローラ214を通じた炉本体212外への放熱を抑え、炉本体212内の温度低下を抑えることができる。
【0052】
また、ローラ214は、例えば、軸芯と、軸芯が通された円筒の回転体とで構成され、炉本体212に固定された軸芯に対して、回転体が回転自在に支持されるものとしてもよい。この場合、軸芯を中空にして、排気用配管216を流通する排気ガスを、軸芯の内部に導くようにすれば、構造を簡素化することができる。
【0053】
また、排気用配管216は、ローラ214のうち、炉本体212内において、搬送体210よりも被焼成物の搬送方向に直交する方向に突出する部位との間で熱交換可能な構成であってもよい。図6(b)に示す例では、排気用配管216は、ローラ214との間で熱交換可能なように、搬送体210よりも被焼成物の搬送方向に直交する方向に突出する部位の一部に回りこんで接し、そのまま鉛直上方に向けて延びている。
【0054】
このように、ローラ214のうち、搬送体210から突出し密閉式ガスヒータシステム100から離れた部位を排気ガスの熱で暖める構成により、対象空間212a近傍のローラ214の温度低下を抑制する機構を簡易な構成で実現でき、製造コストを抑制することが可能となる。
【0055】
上述したように、本実施形態の連続加熱炉200は、密閉式ガスヒータシステム100が密閉構造であることから、排気ガスが拡散せず高温のまま排気用配管216に導かれるため、排気用配管216の温度がローラ214の温度よりも高く、確実にローラ214が暖められる。そのため、被焼成物近傍のローラ214の温度低下を抑制することが可能となる。さらに、連続加熱炉200は、ローラ214への熱交換に排気ガスの排熱を利用しており新たな熱源が不要なため、加熱処理全体の熱効率が低下することもない。
【0056】
また、本実施形態では、ローラ214の端部が炉本体212外に露出する構成を例に挙げたが、ローラ214全体が炉本体212内に収容されてもよい。この場合であっても、排気用配管216を流通する排気ガスとローラ214とで熱交換することでローラ214が暖められる。そのため、ローラ214のうち、対象空間212a近傍から、密閉式ガスヒータシステム100から離れた部位へ伝熱することで生じる、対象空間212a近傍の温度低下を抑制することができる。
【0057】
なお、炉本体212内や炉本体212外において、排気ガスを拡散してもよい場合には、排気用配管216を流通する排気ガスを、ローラ214に直接吹き付けることとしてもよい。いずれにしても、排気用配管216に導かれた排気ガスと、ローラ214との間で熱交換可能にすれば、新たな熱源を要さずに、加熱処理全体の熱効率低下を抑制することができる。
【0058】
続いて、炉本体212内を保温するために利用可能な保温壁、保温管、保温板および保温層について、図7〜図12を用いて説明する。以降の図において、理解を容易とするため、上述した排気用配管216の記載を省略する。
【0059】
図7は、第1の実施形態における保温壁218および保温管222aを説明するための説明図である。図7(a)には、図5(b)のVII(a)‐VII(a)線断面図を示し、図7(b)には、図5(b)の矩形部分224の拡大図を示す。
【0060】
図7(a)、(b)に示すように、連続加熱炉200の搬送方向の端部には、被焼成物の搬送に必要な隙間を残して、保温壁218が配置されている。この保温壁218は、内部が中空となっており、端部側の(保温壁218に最も近い)密閉式ガスヒータシステム100から排出される排気ガスが連通管220aを介して導かれる。また、上下の保温壁218は、連通管220bを介して連通している。図7(a)、(b)では搬送方向の後方の端部を示すが、搬送方向の前方の端部でも同様の構成となっている。
【0061】
図8は、図7(b)のVIII‐VIII線断面図である。図7(b)および図8に示す保温管222aは、内部に密閉式ガスヒータシステム100から排気された排気ガスが導かれる管である。保温管222aは第2配管部144と連通し、図8に示すように、密閉式ガスヒータシステム100の外側を回り込む。そして、保温管222aは、図7(b)および図8に示すように、対象空間212aの搬送方向に平行かつ鉛直方向に平行な側面に沿って搬送方向に延び、折り返して配される。
【0062】
また、図7(b)に示す断熱部230は、断熱性を有し、輻射空間212bと保温管222aの一部または全部を囲繞する。輻射空間212bは、図8に示すように、対象空間212aに配された被焼成物(図示せず)と、その鉛直上方および鉛直下方に配された密閉式ガスヒータシステム100との間に形成され、輻射熱を被焼成物に伝熱する空間である。
【0063】
断熱部230を備える構成により、連続加熱炉200は、炉本体212の壁面からの放熱を抑制し、熱効率を向上することが可能となる。
【0064】
上述したように、連続加熱炉200では、複数の密閉式ガスヒータシステム100が対象空間212aを挟んで対向配置され、保温管222aが密閉式ガスヒータシステム100の対向方向と直交する方向に対向配置され、密閉式ガスヒータシステム100および保温管222aによって輻射空間212bが囲繞されている。
【0065】
かかる構成により、連続加熱炉200は、被焼成物を挟むように密閉式ガスヒータシステム100で輻射加熱しつつ、密閉式ガスヒータシステム100が配されていない部分を保温管222aで保温するため、対象空間212aの温度低下を抑制することが可能となる。
【0066】
このように、第1の実施形態の連続加熱炉200では、密閉式ガスヒータシステム100が密閉構造であることから、排気ガスが炉内等に拡散せず高温のまま保温壁218や保温管222aに導かれる。この保温管222aを、対象空間212aと炉本体212の壁面との間や、炉本体212内の相対的に温度が低い部位等に配することで、連続加熱炉200は、炉本体212内の温度分布が均一化される。また、排気ガスの排熱を利用しており新たな熱源が不要なため、加熱処理全体の熱効率を低下させることもない。
【0067】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態における保温管222b、222cについて説明する。第2の実施形態では、上記第1の実施形態と保温管222b、222cのみが異なるので、ここでは上記第1の実施形態と同じ構成については説明を省略し、構成が異なる保温管222b、222cについてのみ説明する。
【0068】
図9は、第2の実施形態における保温管222b、222cを説明するための説明図である。図9(a)には、図7(a)と同じ位置の断面図を示し、図9(b)には、図7(b)と同じ位置の拡大図を示す。ただし、保温管222bの位置の理解を容易とするため、図9(a)では、壁面212cの炉本体212内側(背面側)に隠れており、本来破線で示される保温管222bを黒色の塗りつぶしで明記し、図9(b)では、ローラ214の記載を省略する。
【0069】
第1の実施形態における連続加熱炉200の搬送方向の端部には、内部に排気ガスが導かれる保温壁218が配置された(図7参照)。第2の実施形態では、図9(a)、(b)に示すように、連続加熱炉200の搬送方向の端部は、単なる壁面212cによって覆われている。そして、保温管222bが、壁面212cの炉本体212内側の壁面212cに沿うように配置される。
【0070】
保温管222bには、連続加熱炉200の端部側の(壁面212cに最も近い)密閉式ガスヒータシステム100の第2配管部144から排出される排気ガスが連通管220cを介して導かれる。
【0071】
また、第1の実施形態における保温管222aは、対象空間212aの搬送方向に平行かつ鉛直方向に平行な側面に沿って搬送方向に延び、折り返して配されている(図8参照)。第2の実施形態における保温管222cは、第2配管部144と連通し、図8に示す保温管222aと同様、密閉式ガスヒータシステム100の外側を回り込む。そして、図9(b)に示すように、搬送方向に対して平行かつ鉛直方向に平行な側面に沿って、鉛直方向の上下に凸凹に配される。
【0072】
この第2の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様の作用効果を実現可能である。すなわち、連続加熱炉200は、炉本体212内の温度分布が均一化される。また、排気ガスの排熱を利用しており新たな熱源が不要なため、加熱処理全体の熱効率を低下させることもない。
【0073】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態における保温板226aについて説明する。第3の実施形態では、上記第1の実施形態と保温板226aのみが異なる。上記第1の実施形態と同じ構成については説明を省略し、構成が異なる保温板226aについてのみ説明する。
【0074】
図10は、第3の実施形態における保温板226aを説明するための説明図である。図10(a)には、図7(b)と同じ位置の拡大図を示し、図10(b)には、図10(a)のX(b)‐X(b)線断面図を示す。
【0075】
第1の実施形態における保温管222aは、対象空間212aの搬送方向に平行かつ鉛直方向に平行な側面に沿って搬送方向に延び、折り返して配されている。第3の実施形態における保温板226aは、図10(a)、(b)に示すように、搬送方向に対して平行かつ鉛直方向に平行な側面に沿って、鉛直上側の密閉式ガスヒータシステム100と鉛直下側の密閉式ガスヒータシステム100の側面を覆う壁面をなす。この保温板226aは、内部が中空に構成されており、この内部が連通管220dを介して第2配管部144に連通し、これによって、保温板226a内に排気ガスが導かれる。
【0076】
このように、本実施形態では、密閉式ガスヒータシステム100と保温板226aとで、対象空間212aおよび輻射空間212bが完全に覆われている。
【0077】
この第3の実施形態においても、上記第2の実施形態と同様の作用効果を実現可能である。
【0078】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態における保温層228について説明する。第4の実施形態では、上記第1の実施形態と保温層228のみが異なる。上記第1の実施形態と同じ構成については説明を省略し、構成が異なる保温層228についてのみ説明する。
【0079】
図11は、第4の実施形態における保温層228を説明するための説明図である。図11では、図10(b)と同じ位置の断面図を示す。ただし、本実施形態では、第3の実施形態よりも炉本体212の幅が狭まっている。図11に示すように、連続加熱炉200の炉本体212は、外壁212dと、炉本体212の内部空間において外壁212dに離間する内壁212eとを備え、保温層228は、外壁212dと内壁212eとの間の空隙によって構成される。そして、密閉式ガスヒータシステム100から排出される排気ガスは、連通管220eを介して外壁212dと内壁212eとの間の空隙(保温層228)に導かれる。
【0080】
この第4の実施形態においても、上記第2の実施形態と同様の作用効果を実現可能である。また、特に、第4の実施形態における連続加熱炉200によれば、炉本体212の壁面全体に排気ガスが行き渡るため、炉本体212内全体に亘って温度低下を抑制することが可能となる。
【0081】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態における保温板226bについて説明する。第5の実施形態では、上記第1の実施形態と、保温板226bの構成と密閉式ガスヒータシステム100の数が異なる。上記第1の実施形態と同じ構成については説明を省略し、構成が異なる保温板226bと密閉式ガスヒータシステム100の数についてのみ説明する。
【0082】
図12は、第5の実施形態における保温板226bを説明するための説明図である。図12(a)には、図7(a)と同じ位置の断面図を示し、図12(b)には、図7(b)と同じ位置の拡大図を示す。
【0083】
上述した第1の実施形態では、複数の密閉式ガスヒータシステム100が対象空間212aを挟んで対向配置されていた。第5の実施形態では、対象空間212aの鉛直下方に、密閉式ガスヒータシステム100の代わりに保温板226bを設け、炉本体212内に配置される密閉式ガスヒータシステム100の数を、上記第1の実施形態の半分としている。すなわち、図12(a)、(b)に示すように、保温板226bは、対象空間212aを挟んで密閉式ガスヒータシステム100と対向配置される。この保温板226bは、第2配管部144と連通管220fを介して連通し、中空の内部に排気ガスが導かれる。
【0084】
この第5の実施形態においても、上記第2の実施形態と同様の作用効果を実現可能である。また、特に、第5の実施形態における連続加熱炉200は、被焼成物の上面側からのみ密閉式ガスヒータシステム100で輻射加熱する場合において、輻射加熱されない下面側232(図12(b)に示す)の対象空間212aの温度低下を抑制することが可能となる。
【0085】
なお、図12(a)に示す断面では、連通管220fは、対象空間212aの図中左側から回り込んで下側に向かっているが、他の位置の断面図では、対象空間212aの右側を回り込んでいる。このように、連通管220fが対象空間212aの左右それぞれから回り込むことで、対象空間212aの水平方向の温度分布をより均等化できる。
【0086】
上述した、保温壁、保温管、保温板および保温層は、密閉式ガスヒータ110の排気孔142と連通し排気ガスが導かれる排気伝熱部をなす。また、保温壁、保温管、保温板および保温層等の排気伝熱部は、上述した位置に限らず、炉本体212内のうち輻射空間212bを除くいずれかの部位に設けられるものを含む。
【0087】
また、上述した実施形態では、燃焼室136は、外周壁122に沿って形成されるとしたが、かかる場合に限らず、燃焼室136は、外周壁122、加熱板126、および配置板120で囲繞される空間内であればよい。ただし、排気ガスによる燃料ガスの予熱効果を十分に確保するため、燃焼室136は、例えば、加熱板126と仕切板124との間の空間、または仕切板124と配置板120との間の空間のうち、配置板120に設けられた流入孔132から外周壁122までの中間位置より外周壁122に近い空間のいずれかの位置に設けられることが望ましい。
【0088】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、順次搬入される被焼成物を加熱する連続加熱炉に利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
110 …密閉式ガスヒータ
132 …流入孔
136 …燃焼室
138 …導出部
140 …輻射面
142 …排気孔
200 …連続加熱炉
210 …搬送体
212 …炉本体
214 …ローラ
216 …排気用配管
【技術分野】
【0001】
本発明は、順次搬入される被焼成物を加熱する連続加熱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ガスを燃焼させた燃焼熱で輻射体を加熱し、その輻射体の輻射面からの輻射熱で、工業材料や食品等を加熱するガスヒータを複数備えた連続加熱炉が普及している。
【0003】
連続加熱炉は、無端状のベルト等の搬送体を駆動し、被焼成物を炉本体内の加熱空間で搬送しながら焼成する。この搬送体の一部は、炉本体(加熱空間)外で冷やされ、炉本体内で吸熱するサイクルを繰り返すため加熱空間内の熱を放熱してしまい、連続加熱炉の熱効率低下の一因となっている。そこで、搬送体のうち搬送方向の下流から上流まで返送される返送部分を断熱壁で取り囲み、断熱壁で取り囲んだ空間に対して加熱空間内の空気を流入させて、返送部分の搬送体の温度低下を抑制して熱効率の向上を図る加熱炉の構成が公開されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−116463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、搬送体はローラによって支持されている。このローラのうち、ガスヒータに近い部位の熱は、ガスヒータから離れた部位に伝熱するため、被焼成物近傍のローラの温度が下がり、熱効率低下を招いていた。また、特に、米菓等、反りを抑える必要がある被焼成物は、被焼成物の上下を網で挟み、その外側をローラで挟んで押さえ付けることからローラの本数が多くなるため、熱効率がより低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、搬送体を支持するローラの温度低下を抑制し、熱効率を向上することが可能な連続加熱炉を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の連続加熱炉は、被焼成物を搬送する無端状に張架された搬送体と、搬送体の一部または全部を囲繞して焼成空間を形成する炉本体と、炉本体内において、搬送体の一部を支持するローラと、燃料ガスをヒータ本体内に流入させる流入孔、流入孔から流入した燃料ガスが燃焼する燃焼室、燃焼室における燃焼によって生じた排気ガスが導かれる導出部、導出部を流通する排気ガスまたは燃焼室における燃焼によって加熱され被焼成物に輻射熱を伝熱する輻射面、輻射面を加熱した排気ガスをヒータ本体外に排気する排気孔、を有し、炉本体内に配置された1または複数の密閉式ガスヒータと、密閉式ガスヒータの排気孔と連通し排気ガスが導かれる排気用配管と、を備え、排気用配管は、当該排気用配管を流通する排気ガスとローラとの間で熱交換可能な構成であることを特徴とする。
【0008】
ローラは中空に構成され、排気用配管を流通する排気ガスがローラの内部に導かれてもよい。
【0009】
排気用配管は、ローラのうち、搬送体よりも被焼成物の搬送方向に直交する方向に突出する部位との間で熱交換可能な構成であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、搬送体を支持するローラの温度低下を抑制し、熱効率を向上可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態における密閉式ガスヒータシステムの外観例を示した外観斜視図である。
【図2】第1の実施形態における密閉式ガスヒータシステムの構造を説明するための組立図である。
【図3】図1のIII‐III線断面図である。
【図4】複数の突起部を説明するための説明図である。
【図5】第1の実施形態における連続加熱炉の概要を説明するための説明図である。
【図6】第1の実施形態におけるローラの熱交換を説明するための説明図である。
【図7】第1の実施形態における保温壁および保温管を説明するための説明図である。
【図8】図7(b)のVIII‐VIII線断面図である。
【図9】第2の実施形態における保温管を説明するための説明図である。
【図10】第3の実施形態における保温板を説明するための説明図である。
【図11】第4の実施形態における保温層を説明するための説明図である。
【図12】第5の実施形態における保温板を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
第1の実施形態の連続加熱炉は、炉内に複数の密閉式ガスヒータシステムが設けられている。ここでは、まず、密閉式ガスヒータシステムについて説明し、その後、連続加熱炉の構成について説明することとする。
【0014】
(第1の実施形態:密閉式ガスヒータシステム100)
図1は、第1の実施形態における密閉式ガスヒータシステム100の外観例を示した外観斜視図である。本実施形態における密閉式ガスヒータシステム100は、都市ガス等と燃焼用酸化剤ガスとしての空気とが本体容器に供給される前に混合される予混合タイプとするが、かかる場合に限定されず、所謂、拡散燃焼を行う拡散タイプであってもよい。
【0015】
図1に示すように、密閉式ガスヒータシステム100は、複数(ここでは2つ)の密閉式ガスヒータ110を連設してなり、都市ガス等と空気との混合ガス(以下、「燃料ガス」という)の供給を受けて、それぞれの密閉式ガスヒータ110で燃料ガスが燃焼することで、加熱される。そして、密閉式ガスヒータシステム100では、その燃焼によって生じた排気ガスが回収される。
【0016】
図2は、第1の実施形態における密閉式ガスヒータシステム100の構造を説明するための組立図である。図2に示すように、密閉式ガスヒータシステム100は、配置板120と、外周壁122と、仕切板124と、加熱板126とを含んで構成される。
【0017】
配置板120は、耐熱性および耐酸化性が高い素材、例えば、ステンレス鋼(SUS:Stainless Used Steel)等で形成される薄板部材である。
【0018】
外周壁122は、配置板120と外周面が面一となる外形を有する薄板部材で構成され、図示のように配置板120に積層される。この外周壁122には、内周がトラック形状(略平行な2つの線分と、その2つの線分をつなぐ2つの円弧(半円)からなる形状)をなし、厚さ方向(外周壁122と配置板120との積層方向)に貫通する2つの貫通孔122aが設けられている。
【0019】
仕切板124は、配置板120と同様に、耐熱性および耐酸化性が高い素材、例えば、ステンレス鋼や、熱伝導率が高い素材、例えば、黄銅等で形成される。そして、仕切板124は、外周壁122の貫通孔122aの内周面に沿った外形形状を有する薄板部材で構成され、外周壁122の内側に配置板120と略平行に配置される。なお、仕切板124は、外周壁122の貫通孔122a内に収容された状態で、外周面が貫通孔122aの内周面と一定間隔を維持して離間する寸法関係を維持している。
【0020】
加熱板126は、配置板120と同様、耐熱性および耐酸化性が高い素材、例えば、ステンレス鋼や、熱伝導率が高い素材、例えば、黄銅等で形成される薄板部材からなる。加熱板126には、凹凸が形成された凹凸部126aが設けられている。かかる構成により、加熱板126および配置板120の温度差や加熱板126および配置板120の素材の違いによる熱膨張の変形量の差を凹凸部126aで吸収し、外周壁122との結合部分等に生じる応力が小さくなるため、加熱と冷却を繰り返すことによる熱疲労および高温クリープを抑えることができる。また、加熱板126の後述する輻射面の面積が大きくなるため、輻射強度を高めることも可能となる。
【0021】
また、配置板120、仕切板124および加熱板126は、間に空隙が形成されれば、傾いて対向配置されてもよい。また、配置板120、仕切板124、および加熱板126は、その厚みに制限はなく、配置板120および仕切板124も、凹凸に形成されてもよい。
【0022】
そして、加熱板126は、配置板120および外周壁122と外周面が面一となる外形を有しており、外周壁122および仕切板124に積層される。このとき、加熱板126および配置板120は、互いに略平行(本実施形態における超過エンタルピ燃焼を起こさせるための実質的な平行)に配置されている。
【0023】
このように、密閉式ガスヒータシステム100の本体容器は、外周壁122の上下を加熱板126および配置板120で閉塞してなるもので、外周面(外周壁122の外表面)の面積より上下壁面(加熱板126および配置板120の外表面)の面積の方が大きい。つまり、上下壁面は、本体容器の外表面の大部分を占める。
【0024】
また、密閉式ガスヒータシステム100には、2つの密閉式ガスヒータ110が連設して構成されており、両密閉式ガスヒータ110間の接続部位には、連設された密閉式ガスヒータ110内の密閉空間を連通する火移り部128が形成されている。ただし、密閉空間といっても、気体中で用いる場合、必ずしも完全密閉する必要はない。本実施形態の密閉式ガスヒータシステム100では、例えば、イグナイタ(図示せず)等の点火装置による1回の点火によって、火移り部128を通じて連設する密閉式ガスヒータ110に火炎が広がって点火される。上記したように、密閉式ガスヒータシステム100には2つの密閉式ガスヒータ110が設けられるが、両密閉式ガスヒータ110は同一の構成であるため、以下では、一方の密閉式ガスヒータ110について説明する。
【0025】
図3は、図1のIII‐III線断面図である。図3(a)に示すように、配置板120には、密閉式ガスヒータ110の中心部において厚さ方向に貫通する流入孔132が設けられている。この流入孔132には、燃料ガスが流通する第1配管部130が接続されており、流入孔132を介して燃料ガスが密閉式ガスヒータ110内に導かれる。
【0026】
本体容器内では、厚み方向(配置板120と加熱板126の対向面に直交する方向)に、導入部134と導出部138とが重ねて形成される。
【0027】
導入部134は、配置板120と仕切板124に挟まれた空間であり、燃焼室136に連続して配され、流入孔132から流入した燃料ガスを燃焼室136に放射状に導く。
【0028】
燃焼室136は、外周壁122、加熱板126、および配置板120で囲繞される空間内に配置される。また、燃焼室136は、仕切板124の外周端部に面しており、外周壁122に沿って形成される。燃焼室136では、導入部134を介して流入孔132から流入した燃料ガスが燃焼する。このように外周壁122に沿って燃焼室136を形成する構成により燃焼室136の体積を十分に確保でき、また、スイスロール型に比べ燃焼負荷率を低くできる。燃焼室136の任意の位置には、着火装置(図示せず)が設けられる。
【0029】
導出部138は、加熱板126と仕切板124に挟まれた空間であり、燃焼室136に連続して配され、燃焼室136における燃焼によって生じた排気ガスを、密閉式ガスヒータ110の中心部に集約する。
【0030】
また、本体容器内では、厚み方向に、導入部134と導出部138とが重なって形成されているので、仕切板124を通じて排気ガスの熱を燃料ガスに伝達し、燃料ガスを予熱することができる。
【0031】
輻射面140は、加熱板126の外側の面であり、導出部138を流通する排気ガスまたは燃焼室136における燃焼によって加熱され、被焼成物に輻射熱を伝熱する。
【0032】
仕切板124には、密閉式ガスヒータ110の中心部において厚さ方向に貫通する排気孔142が設けられている。この排気孔142には、内周部分に第2配管部144が嵌合されており、排気孔142を介して、輻射面140を加熱した後の排気ガスが密閉式ガスヒータ110の外に排気される。
【0033】
第2配管部144は、第1配管部130内部に配される。すなわち、第1配管部130と第2配管部144とで二重管を形成する。また、第2配管部144は、排気ガスの熱を、第1配管部130を流れる燃料ガスに伝達する役割も担う。
【0034】
ここで、配置板120が第1配管部130の端部に固定され、仕切板124は第1配管部130より突出している第2配管部144の端部に固定され、第1配管部130の端部と第2配管部144の端部の差分だけ、配置板120と仕切板124とが離隔している。
【0035】
なお、本実施形態においては、第1配管部130の内部に第2配管部144が配されるが、かかる場合に限定されず、第1配管部130および第2配管部144を加熱板126側から導入部134および導出部138に挿通させ、第2配管部144の内部に第1配管部130が配されてもよい。
【0036】
続いて、燃料ガスおよび排気ガスの流れを具体的に説明する。図3(a)の円部分を拡大した図3(b)中、白抜き矢印は燃料ガスの流れを、灰色で塗りつぶした矢印は排気ガスの流れを、黒色で塗りつぶした矢印は熱の移動を示す。第1配管部130に燃料ガスを供給すると、燃料ガスは流入孔132から導入部134に流入し、水平方向に放射状に広がりながら燃焼室136に向けて流れる。そして、燃料ガスは、燃焼室136において外周壁122に衝突して流速が低下し、点火された火炎によって燃焼した後、高温の排気ガスとなり、排気ガスは導出部138を流れて加熱板126の輻射面140に伝熱した後、排気孔142を通じて第2配管部144から後述する排気伝熱部へ排出される。
【0037】
仕切板124は、比較的、熱伝導し易い素材で形成されており、導出部138を通過する排気ガスの熱は、仕切板124を介して導入部134を通過する燃料ガスに伝わる。ここでは、導出部138を流れる排気ガスと導入部134を流れる燃料ガスとが、仕切板124を挟んで対向流(カウンタフロー)となっているため、排気ガスの熱で燃料ガスを効率的に予熱することが可能となり、高い熱効率を得ることができる。このように燃料ガスを予熱してから燃焼する、所謂、超過エンタルピ燃焼によって、燃料ガスの燃焼を安定化し、不完全燃焼によって生じるCO(一酸化炭素)の濃度を極低濃度に抑えることができる。
【0038】
さらに、逆火防止のために、導入部134と燃焼室136との境界には、突起部150が設けられている。この突起部150は、火炎を導入部134側に通さない(燃焼反応が導入部134の方に伝播されない)ようにするためのものである。この突起部150について、図4を用いて説明する。
【0039】
図4は、複数の突起部150を説明するための説明図である。図4(a)は、加熱板126を除いた密閉式ガスヒータシステム100の斜視図であり、図4(b)は、図4(a)のIV(b)‐IV(b)線断面を矢印の方向から見た説明図である。図4(b)において、複数の突起部150の構造の理解を容易にするため、加熱板126、および、突起部150のうち仕切板124で隠れている部分を破線で示す。また、矢印152は燃料ガスの流れの向きを示す。導入部134は、仕切板124に設けられた複数の突起部150によって、流路断面が狭められている。燃料ガスは、導入部134のうち、図3(b)の部分拡大図および、図4(b)の説明図で示すように、隣接する突起部150の間の空隙を通じて燃焼室136に流入することとなる。
【0040】
上記のように、本実施形態の密閉式ガスヒータシステム100によれば、排気ガスの熱で燃料ガスを予熱するため、高い熱効率を得ると共に、排気ガスを拡散させないため、後述する連続加熱炉200において排気ガスの熱を有効に利用することが可能となる。
【0041】
続いて、上述した密閉式ガスヒータシステム100を複数配置した連続加熱炉200について説明する。
【0042】
図5は、第1の実施形態における連続加熱炉200の概要を説明するための説明図である。特に、図5(a)は連続加熱炉200の上面図を示し、図5(b)は図5(a)のV(b)‐V(b)線断面図を示す。
【0043】
搬送体210は、例えば、ベルト等の搬送帯で構成され、ローラ214に張架支持されており、モータ(図示せず)の動力を受けた歯車210aによって回転し被焼成物を搬送する。この被焼成物は、搬送体210の上に載置されるものとするが、例えば、搬送体210に設けられた吊持機構(図示せず)によって吊持されてもよい。また、本実施形態では、炉本体212内において、被焼成物が配され、搬送時に通過する空間を対象空間212aとする。
【0044】
炉本体212は、搬送体210の一部または全部を囲繞して焼成空間を形成する。すなわち、炉本体212は、対象空間212aも囲繞することとなる。
【0045】
ローラ214は、炉本体212内において搬送体210の一部を鉛直下側から支持する。なお、被焼成物の反りを抑えるため、被焼成物の上下を挟む一対の網によって搬送体が構成される場合には、一対の網の外側にローラ214を設けるとよい。
【0046】
密閉式ガスヒータシステム100は、炉本体212内に複数配置される。本実施形態において、密閉式ガスヒータシステム100は、炉本体212内の、搬送体210の鉛直上方と下方とにそれぞれ複数配置されている。
【0047】
図6は、第1の実施形態におけるローラ214の熱交換を説明するための説明図である。図6(a)には、図5のVI(a)‐VI(a)線断面図を示す。ここでは、理解を容易とするため、後述する保温壁および保温管については記載を省略する。また、以下の図面において、排気ガスの流路(排気ガスの流通する空間)を黒色の塗りつぶしで示し、密閉式ガスヒータシステム100をクロスハッチングで示す。
【0048】
図6(a)に示すように、ローラ214は、端部が炉本体212の壁面を貫通して炉本体212外に露出しており、壁面の貫通部分に設けられた軸受214aによって回転自在に支持される。
【0049】
排気用配管216は、密閉式ガスヒータシステム100の第2配管部144と連通して排気ガスが導かれる。ここでは、密閉式ガスヒータシステム100から延伸した配管のうち、配管が曲がる部分までを第2配管部144とし、曲がる部分より下流側の複数の第2配管部144が接続される配管を排気用配管216とする。
【0050】
そして、排気用配管216は、当該排気用配管216を流通する排気ガスとローラ214との間で熱交換可能な構成である。具体的に、ローラ214は、図6(a)に示すように中空に構成され、排気用配管216は、炉本体212外のローラ214端部に接続され、排気用配管216を流通する排気ガスがローラ214の内部に導かれる。
【0051】
排気ガスをローラ214内部に流通させる構成により、ローラ214全体を暖めることができ、ローラ214のいずれの位置においても炉本体212内の熱の吸熱を抑制し、ローラ214を通じた炉本体212外への放熱を抑え、炉本体212内の温度低下を抑えることができる。
【0052】
また、ローラ214は、例えば、軸芯と、軸芯が通された円筒の回転体とで構成され、炉本体212に固定された軸芯に対して、回転体が回転自在に支持されるものとしてもよい。この場合、軸芯を中空にして、排気用配管216を流通する排気ガスを、軸芯の内部に導くようにすれば、構造を簡素化することができる。
【0053】
また、排気用配管216は、ローラ214のうち、炉本体212内において、搬送体210よりも被焼成物の搬送方向に直交する方向に突出する部位との間で熱交換可能な構成であってもよい。図6(b)に示す例では、排気用配管216は、ローラ214との間で熱交換可能なように、搬送体210よりも被焼成物の搬送方向に直交する方向に突出する部位の一部に回りこんで接し、そのまま鉛直上方に向けて延びている。
【0054】
このように、ローラ214のうち、搬送体210から突出し密閉式ガスヒータシステム100から離れた部位を排気ガスの熱で暖める構成により、対象空間212a近傍のローラ214の温度低下を抑制する機構を簡易な構成で実現でき、製造コストを抑制することが可能となる。
【0055】
上述したように、本実施形態の連続加熱炉200は、密閉式ガスヒータシステム100が密閉構造であることから、排気ガスが拡散せず高温のまま排気用配管216に導かれるため、排気用配管216の温度がローラ214の温度よりも高く、確実にローラ214が暖められる。そのため、被焼成物近傍のローラ214の温度低下を抑制することが可能となる。さらに、連続加熱炉200は、ローラ214への熱交換に排気ガスの排熱を利用しており新たな熱源が不要なため、加熱処理全体の熱効率が低下することもない。
【0056】
また、本実施形態では、ローラ214の端部が炉本体212外に露出する構成を例に挙げたが、ローラ214全体が炉本体212内に収容されてもよい。この場合であっても、排気用配管216を流通する排気ガスとローラ214とで熱交換することでローラ214が暖められる。そのため、ローラ214のうち、対象空間212a近傍から、密閉式ガスヒータシステム100から離れた部位へ伝熱することで生じる、対象空間212a近傍の温度低下を抑制することができる。
【0057】
なお、炉本体212内や炉本体212外において、排気ガスを拡散してもよい場合には、排気用配管216を流通する排気ガスを、ローラ214に直接吹き付けることとしてもよい。いずれにしても、排気用配管216に導かれた排気ガスと、ローラ214との間で熱交換可能にすれば、新たな熱源を要さずに、加熱処理全体の熱効率低下を抑制することができる。
【0058】
続いて、炉本体212内を保温するために利用可能な保温壁、保温管、保温板および保温層について、図7〜図12を用いて説明する。以降の図において、理解を容易とするため、上述した排気用配管216の記載を省略する。
【0059】
図7は、第1の実施形態における保温壁218および保温管222aを説明するための説明図である。図7(a)には、図5(b)のVII(a)‐VII(a)線断面図を示し、図7(b)には、図5(b)の矩形部分224の拡大図を示す。
【0060】
図7(a)、(b)に示すように、連続加熱炉200の搬送方向の端部には、被焼成物の搬送に必要な隙間を残して、保温壁218が配置されている。この保温壁218は、内部が中空となっており、端部側の(保温壁218に最も近い)密閉式ガスヒータシステム100から排出される排気ガスが連通管220aを介して導かれる。また、上下の保温壁218は、連通管220bを介して連通している。図7(a)、(b)では搬送方向の後方の端部を示すが、搬送方向の前方の端部でも同様の構成となっている。
【0061】
図8は、図7(b)のVIII‐VIII線断面図である。図7(b)および図8に示す保温管222aは、内部に密閉式ガスヒータシステム100から排気された排気ガスが導かれる管である。保温管222aは第2配管部144と連通し、図8に示すように、密閉式ガスヒータシステム100の外側を回り込む。そして、保温管222aは、図7(b)および図8に示すように、対象空間212aの搬送方向に平行かつ鉛直方向に平行な側面に沿って搬送方向に延び、折り返して配される。
【0062】
また、図7(b)に示す断熱部230は、断熱性を有し、輻射空間212bと保温管222aの一部または全部を囲繞する。輻射空間212bは、図8に示すように、対象空間212aに配された被焼成物(図示せず)と、その鉛直上方および鉛直下方に配された密閉式ガスヒータシステム100との間に形成され、輻射熱を被焼成物に伝熱する空間である。
【0063】
断熱部230を備える構成により、連続加熱炉200は、炉本体212の壁面からの放熱を抑制し、熱効率を向上することが可能となる。
【0064】
上述したように、連続加熱炉200では、複数の密閉式ガスヒータシステム100が対象空間212aを挟んで対向配置され、保温管222aが密閉式ガスヒータシステム100の対向方向と直交する方向に対向配置され、密閉式ガスヒータシステム100および保温管222aによって輻射空間212bが囲繞されている。
【0065】
かかる構成により、連続加熱炉200は、被焼成物を挟むように密閉式ガスヒータシステム100で輻射加熱しつつ、密閉式ガスヒータシステム100が配されていない部分を保温管222aで保温するため、対象空間212aの温度低下を抑制することが可能となる。
【0066】
このように、第1の実施形態の連続加熱炉200では、密閉式ガスヒータシステム100が密閉構造であることから、排気ガスが炉内等に拡散せず高温のまま保温壁218や保温管222aに導かれる。この保温管222aを、対象空間212aと炉本体212の壁面との間や、炉本体212内の相対的に温度が低い部位等に配することで、連続加熱炉200は、炉本体212内の温度分布が均一化される。また、排気ガスの排熱を利用しており新たな熱源が不要なため、加熱処理全体の熱効率を低下させることもない。
【0067】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態における保温管222b、222cについて説明する。第2の実施形態では、上記第1の実施形態と保温管222b、222cのみが異なるので、ここでは上記第1の実施形態と同じ構成については説明を省略し、構成が異なる保温管222b、222cについてのみ説明する。
【0068】
図9は、第2の実施形態における保温管222b、222cを説明するための説明図である。図9(a)には、図7(a)と同じ位置の断面図を示し、図9(b)には、図7(b)と同じ位置の拡大図を示す。ただし、保温管222bの位置の理解を容易とするため、図9(a)では、壁面212cの炉本体212内側(背面側)に隠れており、本来破線で示される保温管222bを黒色の塗りつぶしで明記し、図9(b)では、ローラ214の記載を省略する。
【0069】
第1の実施形態における連続加熱炉200の搬送方向の端部には、内部に排気ガスが導かれる保温壁218が配置された(図7参照)。第2の実施形態では、図9(a)、(b)に示すように、連続加熱炉200の搬送方向の端部は、単なる壁面212cによって覆われている。そして、保温管222bが、壁面212cの炉本体212内側の壁面212cに沿うように配置される。
【0070】
保温管222bには、連続加熱炉200の端部側の(壁面212cに最も近い)密閉式ガスヒータシステム100の第2配管部144から排出される排気ガスが連通管220cを介して導かれる。
【0071】
また、第1の実施形態における保温管222aは、対象空間212aの搬送方向に平行かつ鉛直方向に平行な側面に沿って搬送方向に延び、折り返して配されている(図8参照)。第2の実施形態における保温管222cは、第2配管部144と連通し、図8に示す保温管222aと同様、密閉式ガスヒータシステム100の外側を回り込む。そして、図9(b)に示すように、搬送方向に対して平行かつ鉛直方向に平行な側面に沿って、鉛直方向の上下に凸凹に配される。
【0072】
この第2の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様の作用効果を実現可能である。すなわち、連続加熱炉200は、炉本体212内の温度分布が均一化される。また、排気ガスの排熱を利用しており新たな熱源が不要なため、加熱処理全体の熱効率を低下させることもない。
【0073】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態における保温板226aについて説明する。第3の実施形態では、上記第1の実施形態と保温板226aのみが異なる。上記第1の実施形態と同じ構成については説明を省略し、構成が異なる保温板226aについてのみ説明する。
【0074】
図10は、第3の実施形態における保温板226aを説明するための説明図である。図10(a)には、図7(b)と同じ位置の拡大図を示し、図10(b)には、図10(a)のX(b)‐X(b)線断面図を示す。
【0075】
第1の実施形態における保温管222aは、対象空間212aの搬送方向に平行かつ鉛直方向に平行な側面に沿って搬送方向に延び、折り返して配されている。第3の実施形態における保温板226aは、図10(a)、(b)に示すように、搬送方向に対して平行かつ鉛直方向に平行な側面に沿って、鉛直上側の密閉式ガスヒータシステム100と鉛直下側の密閉式ガスヒータシステム100の側面を覆う壁面をなす。この保温板226aは、内部が中空に構成されており、この内部が連通管220dを介して第2配管部144に連通し、これによって、保温板226a内に排気ガスが導かれる。
【0076】
このように、本実施形態では、密閉式ガスヒータシステム100と保温板226aとで、対象空間212aおよび輻射空間212bが完全に覆われている。
【0077】
この第3の実施形態においても、上記第2の実施形態と同様の作用効果を実現可能である。
【0078】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態における保温層228について説明する。第4の実施形態では、上記第1の実施形態と保温層228のみが異なる。上記第1の実施形態と同じ構成については説明を省略し、構成が異なる保温層228についてのみ説明する。
【0079】
図11は、第4の実施形態における保温層228を説明するための説明図である。図11では、図10(b)と同じ位置の断面図を示す。ただし、本実施形態では、第3の実施形態よりも炉本体212の幅が狭まっている。図11に示すように、連続加熱炉200の炉本体212は、外壁212dと、炉本体212の内部空間において外壁212dに離間する内壁212eとを備え、保温層228は、外壁212dと内壁212eとの間の空隙によって構成される。そして、密閉式ガスヒータシステム100から排出される排気ガスは、連通管220eを介して外壁212dと内壁212eとの間の空隙(保温層228)に導かれる。
【0080】
この第4の実施形態においても、上記第2の実施形態と同様の作用効果を実現可能である。また、特に、第4の実施形態における連続加熱炉200によれば、炉本体212の壁面全体に排気ガスが行き渡るため、炉本体212内全体に亘って温度低下を抑制することが可能となる。
【0081】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態における保温板226bについて説明する。第5の実施形態では、上記第1の実施形態と、保温板226bの構成と密閉式ガスヒータシステム100の数が異なる。上記第1の実施形態と同じ構成については説明を省略し、構成が異なる保温板226bと密閉式ガスヒータシステム100の数についてのみ説明する。
【0082】
図12は、第5の実施形態における保温板226bを説明するための説明図である。図12(a)には、図7(a)と同じ位置の断面図を示し、図12(b)には、図7(b)と同じ位置の拡大図を示す。
【0083】
上述した第1の実施形態では、複数の密閉式ガスヒータシステム100が対象空間212aを挟んで対向配置されていた。第5の実施形態では、対象空間212aの鉛直下方に、密閉式ガスヒータシステム100の代わりに保温板226bを設け、炉本体212内に配置される密閉式ガスヒータシステム100の数を、上記第1の実施形態の半分としている。すなわち、図12(a)、(b)に示すように、保温板226bは、対象空間212aを挟んで密閉式ガスヒータシステム100と対向配置される。この保温板226bは、第2配管部144と連通管220fを介して連通し、中空の内部に排気ガスが導かれる。
【0084】
この第5の実施形態においても、上記第2の実施形態と同様の作用効果を実現可能である。また、特に、第5の実施形態における連続加熱炉200は、被焼成物の上面側からのみ密閉式ガスヒータシステム100で輻射加熱する場合において、輻射加熱されない下面側232(図12(b)に示す)の対象空間212aの温度低下を抑制することが可能となる。
【0085】
なお、図12(a)に示す断面では、連通管220fは、対象空間212aの図中左側から回り込んで下側に向かっているが、他の位置の断面図では、対象空間212aの右側を回り込んでいる。このように、連通管220fが対象空間212aの左右それぞれから回り込むことで、対象空間212aの水平方向の温度分布をより均等化できる。
【0086】
上述した、保温壁、保温管、保温板および保温層は、密閉式ガスヒータ110の排気孔142と連通し排気ガスが導かれる排気伝熱部をなす。また、保温壁、保温管、保温板および保温層等の排気伝熱部は、上述した位置に限らず、炉本体212内のうち輻射空間212bを除くいずれかの部位に設けられるものを含む。
【0087】
また、上述した実施形態では、燃焼室136は、外周壁122に沿って形成されるとしたが、かかる場合に限らず、燃焼室136は、外周壁122、加熱板126、および配置板120で囲繞される空間内であればよい。ただし、排気ガスによる燃料ガスの予熱効果を十分に確保するため、燃焼室136は、例えば、加熱板126と仕切板124との間の空間、または仕切板124と配置板120との間の空間のうち、配置板120に設けられた流入孔132から外周壁122までの中間位置より外周壁122に近い空間のいずれかの位置に設けられることが望ましい。
【0088】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、順次搬入される被焼成物を加熱する連続加熱炉に利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
110 …密閉式ガスヒータ
132 …流入孔
136 …燃焼室
138 …導出部
140 …輻射面
142 …排気孔
200 …連続加熱炉
210 …搬送体
212 …炉本体
214 …ローラ
216 …排気用配管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼成物を搬送する無端状に張架された搬送体と、
前記搬送体の一部または全部を囲繞して焼成空間を形成する炉本体と、
前記炉本体内において、前記搬送体の一部を支持するローラと、
燃料ガスをヒータ本体内に流入させる流入孔、該流入孔から流入した該燃料ガスが燃焼する燃焼室、該燃焼室における燃焼によって生じた排気ガスが導かれる導出部、該導出部を流通する排気ガスまたは燃焼室における燃焼によって加熱され前記被焼成物に輻射熱を伝熱する輻射面、該輻射面を加熱した排気ガスをヒータ本体外に排気する排気孔、を有し、前記炉本体内に配置された1または複数の密閉式ガスヒータと、
前記密閉式ガスヒータの排気孔と連通し前記排気ガスが導かれる排気用配管と、
を備え、
前記排気用配管は、当該排気用配管を流通する前記排気ガスと前記ローラとの間で熱交換可能な構成であることを特徴とする連続加熱炉。
【請求項2】
前記ローラは中空に構成され、前記排気用配管を流通する前記排気ガスが該ローラの内部に導かれることを特徴とする請求項1に記載の連続加熱炉。
【請求項3】
前記排気用配管は、前記ローラのうち、前記搬送体よりも前記被焼成物の搬送方向に直交する方向に突出する部位との間で熱交換可能な構成であることを特徴とする請求項1または2に記載の連続加熱炉。
【請求項1】
被焼成物を搬送する無端状に張架された搬送体と、
前記搬送体の一部または全部を囲繞して焼成空間を形成する炉本体と、
前記炉本体内において、前記搬送体の一部を支持するローラと、
燃料ガスをヒータ本体内に流入させる流入孔、該流入孔から流入した該燃料ガスが燃焼する燃焼室、該燃焼室における燃焼によって生じた排気ガスが導かれる導出部、該導出部を流通する排気ガスまたは燃焼室における燃焼によって加熱され前記被焼成物に輻射熱を伝熱する輻射面、該輻射面を加熱した排気ガスをヒータ本体外に排気する排気孔、を有し、前記炉本体内に配置された1または複数の密閉式ガスヒータと、
前記密閉式ガスヒータの排気孔と連通し前記排気ガスが導かれる排気用配管と、
を備え、
前記排気用配管は、当該排気用配管を流通する前記排気ガスと前記ローラとの間で熱交換可能な構成であることを特徴とする連続加熱炉。
【請求項2】
前記ローラは中空に構成され、前記排気用配管を流通する前記排気ガスが該ローラの内部に導かれることを特徴とする請求項1に記載の連続加熱炉。
【請求項3】
前記排気用配管は、前記ローラのうち、前記搬送体よりも前記被焼成物の搬送方向に直交する方向に突出する部位との間で熱交換可能な構成であることを特徴とする請求項1または2に記載の連続加熱炉。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【公開番号】特開2013−53810(P2013−53810A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192304(P2011−192304)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
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