説明

連続型入れ子構造のバネ及びその製造

本発明は、次の各工程:−ディスク(20、30)の間にワイヤ(T)を通し、−ワイヤ(T)をローラA(10)に当てて方向を変え、−所望の方向(a、b)に巻き取る、という各工程を含む、入れ子式で連続且つ均一なバネ製造方法において、二枚の支持体の間に該バネが置かれたときに弾性と伸縮運動とが確実に提供されるように製造するために、バネ(Y)の製造方法として、前記バネ(Y)を得るにあたり、ローラーA(10)の方向を変え、同一のワイヤであるワイヤ(T)を逆方向に巻き取ることで内側/外側のバネ(Y2、Y1)を製造することを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体(platform)間や層状体間に置かれて弾性を提供するバネに関する。本発明は、より詳細には、第一ばね部と第二ばね部が入れ子構造とされ且つ連続していることによって伸縮が容易であると共に、弾性変形後、第二ばね部の第二圧力に対する支えを提供する、らせんバネ(helical spring)に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、各種材料から製作された様々なサイズのバネが様々な分野で用いられている。バネは、二枚の支持体間に置かれこれら支持体に弾性を与える。支持体は、圧力を受けると圧縮され、力が蓄積される。その間、支持体は伸縮運動を完結させようともする。加えられた圧力が低下しはじめると、支持体は伸縮運動を開始する。この伸縮動作は、バネ圧縮で発生した力が全て解放され伸縮振動が停止するまで続く。如何なる材料で製作されたとしても、バネは一定回数の伸縮運動を繰り返した後では変形し、機能を失う。
【0003】
既存の技術においては、バネの製造は、ワイヤ材料をある一点から他端方向に延びるようにまずスパイラル状に形成し、巻かれたらせん形状物をプロセスの最後に得るものである。既存の技術は、単一工程のバネ製造に関するものである。この製造は、異なる材料、異なる直径で行われている。しかしながら、このバネは単一構造製品として製造されるものである。従来技術の製法は、第一のバネ部と第二のバネ部が入れ子式になった連続一体型の「一カップルの」バネを製造しようとするものではない。
【0004】
今日用いられているバネの別の態様では、バネの伸縮運動を強化すべく抵抗を増すためにサイズの小さい第二のサックバネ(sack spring)が主バネに挿入されている。これは抵抗と製品寿命を増そうと試みたものである。入れ子式で用いられるこのバネは一体型ではないので、その利点をフルに発現させることはできない。更に、一体型でないため物理的不均一性を招く。よって、どちらのバネにも変形が生じやすい。
【0005】
特許文献1記載の発明は、室内家具や住宅設備に用いられる、二層の間に配置されるスパイラル/らせん形状のバネに関する。このバネは、織りプロセスで形成された二層の間に置かれ、室内家具や住宅設備に利用される。上で述べたように、このバネは低抵抗であるため、一定の使用時間が経過すると機能を失い、変形してしまう。
【0006】
また、今日、特許文献2に記載の発明は、一個の内側フレーム/リムと一個の外側フレーム或いはタイヤの間にらせん状に置かれ且つ内側及び外側フレームに連結された複数のバネを備えた多パーツ構造を有するバネ・ホイールに関する。このバネ・ホイールは、フランジで相互連結された一個の内側要素と一個の外側要素、及び内側要素と外側要素の間に置かれたスパイラルばねから構成されている。各バネは一個の内側バネを入れ子方式で備えている。このバネの直径はフランジ間の距離に等しい。上にも述べたように、前記バネ・ホイールに用いられる入れ子式バネシステムにおける前記2本のバネは、一体型でなく独立している。そのため、バネ抵抗は多少増加するが、変形は防ぐことができなかった。更に、適切な抵抗及び性能を達成することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】英国特許GB734949号公報
【特許文献2】英国特許GB190825409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、連続した入れ子式バネ及びその製造に対する必要性とこれまでの不適切な解決策に鑑み、関連する技術分野における技術開発が切望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
関連技術分野において遭遇した各種不利益を解消するため、本発明の一目的は、内側と外側のバネを連続させて製造し一体型構造を提供することで抵抗を上昇させようとするものである。
【0010】
本発明の別の目的は、内側と外側のバネ間に一切接合部や溶接部を存在させないことによって製造を容易にすることである。
【0011】
本発明のまた別の目的は、抵抗特性からもたらされる延長された寿命を提供することである。
【0012】
本発明のまた別の目的は、一体型で連続した構造を採用したことにより変形を防止することである。
【0013】
本発明のまた別の目的は、抵抗構造を採用したことにより、圧縮後、第二の圧力が生じた際に、よりしっかりした(durable)支持を提供することである。
【0014】
本発明のまた別の目的は、延長された寿命が達成されることにより、使用コストを低減sざせることである。
【0015】
本発明のまた別の目的は、抵抗構造の採用により、その使用場所において抵抗を提供するだけでなく、材料の寿命延長も提供することである。
【0016】
本発明の更にまた別の目的は、抵抗や寿命延長が提供されることにより、使用場所における材料の選択性の向上を提供することである。
【0017】
本発明の構造及び特徴並びに利点の全ては、下に図面を参照しつつ記述される詳細な説明からより良く理解されるものであり、ゆえに、その評価は前記図面と詳細な説明に基づいてなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1a】製造工程のフェーズ1を終えた、本発明に係るバネを示す。
【図1b】製造工程のフェーズ2を終えた、本発明に係るバネを示す。
【図1c】
【図2a】ローラーAを右方向に回転させ、バネを右方向に進ませる場合の代表図である。
【図2b】ローラーAを中心に近づけて回転させ、小スケールのバネを製造する場合の代表図である。
【図3a】ローラーAを左方向に回転させ、バネを左方向に進ませる場合の代表図である。
【図3b】ローラーAを中心から離して回転させ、大スケールのバネを製造する場合の代表図である。
【図4】製造後の本発明最終製品の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、どのようなものであってもよい2種の支持体間に置かれたときに弾性を提供すると共に伸縮運動を提供する、入れ子式で連続した一体型に製造されたバネ(Y)、及びその製造方法に関する。このバネ(Y)は各種材料で作られたワイヤ(T)の形状で製造される。製造にはローラー(10)とディスク(20、30)が用いられる。
【0020】
図2aは、ローラーA(10)を右方向(a)に回転させてバネ(Y)を右方向(a)に進ませる場合の代表図である。図ではローラーA(10)は、中央が凹状のタイヤ形状をしている。ローラーA(10)はまた、そこにわたされているワイヤ(T)を所定の方向(a、b)に方向付けると共に、得るべきバネ(Y)の直径をも決定する。
【0021】
図2bは、ローラーA(10)を中心に接近する方向(c)に進ませながら回転させることで、小スケールのバネ(Y)を製造する場合の代表図である。図では、2枚のディスク(20、30)が、ワイヤ(T)の通過を許容する間隙を残して配置されている。これらのディスク(20、30)の間を通るワイヤ(T)はローラーA(10)とぶつかる。ローラーA(10)に当たったワイヤ(T)は、ローラーA(10)が右方向(a)に回転すると右(a)に進む(図2a)。また、ローラーA(10)が中心に近づく方向(c)に動くと、バネ(Y)の直径は減少する。
【0022】
図3aは、ローラーA(10)を左方向(b)に回転させてバネ(Y)を左方向(b)に進ませる場合の代表図である。図ではローラーA(10)は左方向(b)を向いて回転し、バネ(Y)を左方向(b)に製造している。
【0023】
図3bは、ローラーA(10)を中心から離れる方向(d)に移動させて回転させることで、大スケールのバネ(Y)を製造する場合の代表図である。ディスク(20、30)の間を通過するワイヤ(T)を方向付けるローラーA(10)が中心から離れる方向(d)に動くと、バネ(Y)の直径が増加すると共に、左方向(b)を向いてバネ(Y)を左方向(b)に製造する。
【0024】
出発点(e)から出発し、入れ子式連続バネ(Y)の製造方法は次の各工程を有する。
−ワイヤ(T)をディスク(20、30)の間に通して進める工程、
−ワイヤ(T)をローラーA(10)上に巻く工程、
−ローラーA(10)を左方向(b)に向け、中心に接近する方向(c)に進ませながら、バネ(Y)の直径を得ることが出来るように回転させて(図3a)、ワイヤ(a)を内側バネ(Y2)(図1a)形成のプロセス開始点(f)までスパイラル状に進める工程、
−ローラーA(10)が右方向(a)を向くように、出発点でバネを逆方向(f)に回転させる工程、
−ローラーA(10)を右方向(a)に向け中心から離れる方向(d)に進ませた(図2a)後に好ましいバネ(Y)直径を得られるサイズのローラーA(10)を回転させて、終端点(g)(図1b)までワイヤをスパイラル状に左(b)に逆方向に進める工程。
【0025】
上の操業工程では、出発点(f)から逆方向に巻くことで、最初に内側バネ(Y2)が、次いで外側バネ(Y1)が得られる。内側の内側バネ(Y2)が反対方向(左)(b)に得られた後、外側バネ(y1)は、同じワイヤ(T)を用いローラーA(10)の回転方向を変更し逆方向(右)(a)に回転させてワイヤ(T)を巻くことで得られる。
【0026】
図4は、本発明に係るバネ(Y)が製造された後の最終図である。図では、内側バネ(Y2)は外側バネ(Y1)より短い。
【0027】
本発明の好ましい態様では、最初に外側バネ(Y1)が製作開始され、次いで内側バネ(Y2)が製作される。そのため、好ましくは、内側/外側バネ(Y2、Y1)、即ち、内側バネ(Y2)又は外側バネ(Y1)、次に外側バネ(Y1)又は内側バネ(Y2)を製作することが出来る。内側/外側バネ(Y2、Y1)という語は、製作における2つの優先順を示す。
【0028】
本発明の別の好ましい態様では、最初に外側バネ(Y2)が、次いで断続なく且つ同じワイヤ(T)を用いて、内側バネ(Y1)が製造される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の好ましい用途においては、変形や音の発生は、外側バネ(Y1)が内側バネ(Y2)を覆うことで防止される。
【0030】
本発明の別の好ましい用途においては、前記バネ(Y)は、円形/スパイラル/らせん形状に代え、正方形、長方形、三角形の形状で製作することも出来る。
【0031】
本発明の保護範囲は特許請求の範囲に特定されたものであって、例示目的のためにのみ記載された開示内容に限定されない。本発明の実施例を他の領域に適用し関連技術において同様な目的を達成するために当業者が別の態様に想到しうることは明白であろう。ゆえに、そのような態様は発明としての基準と進歩性を欠くと共に、本発明の侵害を意味するものである。
【符号の説明】
【0032】
T ワイヤ
Y バネ
Y1 外側バネ
Y2 内側バネ
10 ローラーA
20 ディスクB
30 ディスクC
a 右方向
b 左方向
c 中心に近づく方向
d 中心から離れる方向
e 出発点
f フェーズ2で反対方向に進むバネの出発点
g 終端点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入れ子式で連続した一体型のバネを、どのようなものであってもよい二枚の支持体の間に該バネが置かれたとき、弾性と伸縮運動とが確実に提供されるように製造するために、次の各工程:
−ディスク(20、30)間にワイヤ(T)を通して送る工程と、
−ワイヤ(T)をローラA(10)に当てて方向を変える工程と、
−所望の方向(a、b)に巻き取ることでバネ(Y)を製造する工程と
を含むバネ(Y)製造方法であって、
−前記バネ(Y)が得られた後、ワイヤ(T)を連続して反対方向に回転させながらローラーA(10)の方向を変えて巻き取ることで内側/外側のバネ(Y2、Y1)を得ることを含む方法。
【請求項2】
前記ローラーA(10)を左方向(b)に向け中心に接近する方向(c)に進めながら好ましいバネ(Y)直径が得られるまで回転させ、ワイヤを内側バネ(Y2)形成の出発点(f)までスパイラル状に進める工程を含む、請求項1に記載のバネ(Y)製造方法。
【請求項3】
前記内側バネ(Y2)が形成された後、ローラーA(10)が右方向(a)を向くように、出発点(f)でバネを逆方向に回転させる工程を含む、請求項1に記載のバネ(Y)製造方法。
【請求項4】
ローラーA(10)を右方向(a)に向け中心から離れる方向(d)に進ませた後、好ましいバネ(Y)直径を得られるサイズの前記ローラーA(10)を回転させて外側バネ(Y1)を形成し、終端点(g)までワイヤをスパイラル状に左(b)に逆方向に進める工程を含む、請求項1に記載のバネ(Y)製造方法。
【請求項5】
本発明は、入れ子式で連続した一体型に製造されるバネ(Y)であって、どのようなものであってもよい二枚の支持体の間に該バネが置かれたときに弾性と伸縮運動とを提供するバネに関し、前記バネ(Y)の製造後、ワイヤ(T)を逆方向に回転させると共にローラーA(10)の向きを変え、前記第二のプロセスの出発点である出発点(f)から逆方向に巻くことで得られる内側/外側バネ(Y2、Y1)を含むことを特徴とする、入れ子式で連続した一体型に製造されるバネ(Y)。
【請求項6】
ローラーA(10)を左方向(b)に向け中心に接近する方向(c)に進ませ、好ましいバネ(Y)直径を得られるように回転させ、終端点(g)までワイヤをスパイラル状に左方向(b)に進めることで得た内側バネ(Y2)を含むことを特徴とする、請求項5に記載のバネ(Y)。
【請求項7】
内側バネ(Y2)の形成後、バネの逆方向出発点(f)でローラーA(10)を右/左方向(a、b)に向くよう回転させることを含むことを特徴とする、先の何れかの請求項に記載のバネ(Y)。
【請求項8】
ローラーA(10)を右方向(a)に向け中心から離れる方向(d)に進めた後に好ましいバネ(Y)直径が得られるように回転させることと、右(a)に対し逆方向に出発点(f)までワイヤをスパイラル状に進めることで外側バネ(Y1)を得ることを含むことを特徴とする、請求項5に記載のバネ(Y)。
【請求項9】
前記内側バネ(Y2)を得た後、前記外側バネ(Y1)は、バネの逆方向出発点(f)上にあることを含むことを特徴とする、先の何れかの請求項に記載のバネ(Y)。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2010−527795(P2010−527795A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509304(P2010−509304)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【国際出願番号】PCT/TR2007/000043
【国際公開番号】WO2008/143595
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509148452)シパヒオグル,セリック ヤイ ヴェ ヤン ウルンレリ サナイ ヴェ チカレット リミテッド シルケチ (2)
【氏名又は名称原語表記】SIPAHIOGLU CELIK YAY VE YAN URUNLERI SANAYI VE TICARET LIMITED SIRKETI
【Fターム(参考)】