説明

連続式マイクロ波反応装置および連続式マイクロ波反応システム

【課題】高圧におけるマイクロ波反応を、より安全にかつ効率良く実施することが可能な連続式(流通式)マイクロ波反応装置および該装置を用いた連続式マイクロ波反応システムを提供することを目的とする。
【解決手段】連続式マイクロ波反応装置1を、マイクロ波を内部に供給するための開口部(窓4)を有する金属製容器5と、前記金属製容器5の前記窓4を介して前記容器内に供給されるマイクロ波を発振するマイクロ波発振器2と、前記金属製容器5内に貫通配設された反応液流路6と、前記金属製容器5と前記反応液流路6の間に充填されたマイクロ波透過性固体物質からなる充填層7とを有し、前記金属製容器5の窓4を介して供給されたマイクロ波3が前記反応液流路6内を流れる反応液8を加熱し、前記反応液中の基質を反応させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続式マイクロ波反応装置および連続式マイクロ波反応システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波による加熱を利用した反応プロセスは、被加熱物自体が発熱するため外部からの熱伝導による従来の加熱方式に比べて高速加熱が可能であり反応速度、収率が向上することから、反応プロセスの省エネルギー化が図れるという利点を有する。また、被加熱物の各部が同時に発熱するため、比較的均一に加熱できる、さらに、加熱の程度は物質の有する比誘電率および誘電正接の値によることから、選択加熱が可能(誘電損失の差を利用)となり、従来の加熱法とは異なる反応が促進するなどにより、機能性材料の合成へのマイクロ波加熱の利用が実施されている。具体的には、無機化合物の反応系では、マイクロ波加熱により均一形状、均一粒径の反応生成物が得られている。また、有機化合物の反応系では、高選択、高収率での反応がマイクロ波加熱により実施されている。
【0003】
一般的に、化学反応は反応条件を高圧にすると反応が促進され、またマイクロ波反応を高圧で行えば常圧で反応を行った場合に比べ上記利点が特異的に発現される可能性があるとされる。また、反応生成物の生産効率の観点から連続方式で反応を実施することが望まれている。
【0004】
このような要望を受けてこれまでに、高温高圧反応が可能なマイクロ波による連続加熱装置(特許文献1参照)、化学反応促進用マイクロ波供給装置と高温高圧反応容器とを組み合わせた連続反応にも対応可能な反応装置(特許文献2、3参照)等が開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示された装置では、シールドハウジングとセラミック管との間のキャビティが大気圧であるため、万一、セラミック管が破損した場合に、安全性の確保が不充分となる問題がある。特許文献2に開示された装置では、マイクロ波発信機と高温高圧容器との間に窓を設けることにより、導波管の内圧と高温高圧容器の内圧とが等しくなるように制御されており、特許文献3に開示された装置では、耐圧容器と反応容器の内圧を制御されているが、これらの装置は、圧力のバランスが崩れた場合に、安全の確保が不充分である問題があった。
【0005】
前記のように、これらの装置は、反応装置内に形成される空間の圧力を一定に保つことによって、反応装置全体の圧力保持を行うという共通点がある。しかし、このような構造のマイクロ波反応装置においては、連続式で高圧条件下の反応において、用いる反応原料や溶媒の種類によっては安全性が十分でないという問題があった。
【0006】
安全性の観点からは、金属製の反応管で形成された反応液流路に開口部を設け、前記開口部にマイクロ波を照射する形式の反応装置も考えられる。しかし、この形式の反応装置においては、開口部を介して透過したマイクロ波が、反応液流路内の反応液に吸収されて減衰するため、マイクロ波の利用効率が不充分である問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平4−68759号公報
【特許文献2】特開2002−113349号公報
【特許文献3】特開2002−113350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、高圧におけるマイクロ波反応を、より安全にかつ効率良く実施することが可能な連続式(流通式)マイクロ波反応装置および該装置を用いた連続式(流通式)マイクロ波反応システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、マイクロ波を内部に供給するための開口部を有する金属製容器と、前記開口部を介して前記容器内に供給されるマイクロ波を発振するマイクロ波発振器と、前記容器内に貫通配設された反応液流路と、前記容器と前記反応液流路の間に充填されたマイクロ波透過性固体物質からなる充填層とを有し、前記容器の開口部を介して供給されたマイクロ波が前記反応液流路内を流れる反応液を加熱し、前記反応液中の基質を反応させるように構成される連続式マイクロ波反応装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、本発明の連続式マイクロ波反応装置と、前記連続式マイクロ波反応装置の反応液流路の一端から反応原液を反応液流路に供給する手段と、前記反応液流路内の反応液の圧力を調整する手段と、反応液流路の他端から排出される反応処理液を回収する手段とを有する連続式マイクロ波反応システムを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の連続式マイクロ波反応装置または該装置を用いた連続式マイクロ波反応システムは、反応装置の最も外側に金属製の容器が配される構成であるため、高圧条件下に行うマイクロ波反応の安全性を向上させることができ、かつ、マイクロ波の利用効率を高くすることができるので、反応を効率的に進行させることが可能になる。加えて、本発明の連続式マイクロ波反応装置または該装置を用いた連続式マイクロ波反応システムは、高圧ガス保安法の対象となるような反応にも充分対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の連続式マイクロ波反応装置の一つの実施形態(第1の実施形態)を示す図である。(1−1)は、長手方向の断面図を示す。(1−2)は、長手方向と直交する方向の断面図を示す。
【図2】本発明の連続式マイクロ波反応装置の実施形態の一例(第2の実施形態)を示す図である。
【図3】本発明の連続式マイクロ波反応装置の実施形態の一例(第3の実施形態)を示す図である。
【図4】本発明の連続式マイクロ波反応装置の実施形態の一例(第4の実施形態)を示す図である。
【図5】本発明の連続式マイクロ波反応装置の実施形態の一例(第5の実施形態)を示す図である。
【図6】本発明の連続式マイクロ波反応装置の実施形態の一例(第6の実施形態)を示す図である。
【図7】本発明の連続式マイクロ波反応システムの一つの実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の連続式マイクロ波反応装置の一つの実施形態(以下、「第1の実施形態」という。)を示す図である。図1(1−1)は、連続式マイクロ波反応装置の長手方向の断面図であり、図1(1−2)は連続式マイクロ波反応装置の長手方向に直交する方向の断面図である。
【0014】
本発明の第1の実施形態による連続式マイクロ波反応装置1は、マイクロ波を内部に供給するための開口部としてマイクロ波が透過する窓4を有する金属製容器5と、前記容器5の前記窓4を介して前記容器内に供給されるマイクロ波を発振するマイクロ波発振器2と、前記容器5内に貫通配設された反応液流路6と、前記容器5と前記反応液流路6の間に充填されたマイクロ波透過性固体物質からなる充填層7とを有し、前記容器5の窓4を介して透過し、供給されたマイクロ波3が前記反応液流路6内を流れる反応液8を加熱し、前記反応液中の基質を反応させるように構成されている。ここで、本発明の第1の実施形態による連続式マイクロ波反応装置1においては、マイクロ波発振器2から発振されたマイクロ波は、前記容器5の窓4に照射され、これを透過して、容器5内に供給される。
【0015】
なお、本明細書に用いる「マイクロ波」とは、波長0.1〜1000mm、周波数300MHz〜3THzの電磁波をいう。なお、汎用されるのは周波数915MHz、2.45GHz、5.8GHzの電磁波である。
【0016】
前記マイクロ波発振器2としては、上記性質のマイクロ波を発振する機能を有する一般的なマイクロ波発振器であれば特に制限されず、具体的には、マグネトロン、クライストロン、ジャイロトロンなどを用いることが可能である。マイクロ波発振器2のマイクロ波出力は、連続式マイクロ波反応装置1の反応液流路6を流通する反応液8の種類や、反応圧力、反応設定温度、流量、速度等によるが、本発明の連続式マイクロ波反応装置においては、概ね100〜5000W程度の出力を有するマイクロ波発振器が用いられる。
【0017】
マイクロ波発振器2は、金属製容器5の窓4に、前記マイクロ波発振器2から発振されたマイクロ波3が直接照射されるように、直に取り付けられる構成としてもよいが、図1に示されるように一般的には、マイクロ波伝播のための金属製の矩形導波管や円形導波管などの導波路9を介して金属製容器5の窓4に連結される構成をとる。導波路を構成する金属としては、一般にマイクロ波の導波路用として用いられている金属(非磁性金属)であれば特に制限されず、例えば、真鍮、非磁性ステンレス鋼(SUS316、SUS310、SUS317、ハステロイ等)、アルミニウム等の金属を挙げることができる。また、導波路の形状等についても、通常、マイクロ波導波路として用いられるものが特に制限なく適用できる。
【0018】
本発明の連続式マイクロ波反応装置を構成する金属製容器は、十分な耐圧構造を有する容器であれば形状は特に制限されないが、本発明の第1の実施形態においては、前記容器5は円筒状の容器であり、このような形状が本発明の連続式マイクロ波反応装置においては好ましく用いられる。金属製容器5に用いる金属としては、炭素鋼、低合金鋼、ステンレス鋼、鋳鉄、鋳鋼、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等が挙げられる。これらのうちでも、耐食性、耐熱性、および磁性を持たない等の観点からSUS316、SUS310、SUS317、ハステロイ等の非磁性ステンレス鋼製の容器5が好ましい。また、耐食性の向上のためにコーティング処理やライニング処理を施して使用することも可能である。
また、金属製容器5の壁厚は、容器の大きさや素材、反応系によるが、通常は5〜50mm程度を好ましい壁厚として挙げることができる。
【0019】
本発明の第1の実施形態による連続式マイクロ波反応装置1において、前記容器5には開口部である窓4が、これを介して透過したマイクロ波3が反応液流路6内を流れる反応液8を加熱し、前記反応液8中の基質を反応させるように設けられている。前記窓4には、通常、開口部すなわち窓4と一致する形状のマイクロ波透過性材料からなる窓部材4aが前記窓4に挿入されるかたちに設けられる。窓部材4aは、あるいは、取り付け部を有し、取り付け部を介して金属製容器5に、その開口部を塞ぐように取り付けられてもよい。なお、窓部材4aは、具体的には、以下に説明する充填層7を構成するマイクロ波透過性固体物質と同様の材料を用いて作製することができる。ここで、窓部材4aと充填層7は別々の部材で構成してもよいが、必要に応じて窓部材4aと充填層7を一体型の構成とすることもできる。また、金属製容器5内にはマイクロ波透過性固体物質からなる充填層7が充填されていることから前記容器5の壁に穴を形成し窓部材4aを設けずに開口部のままとすることも可能である。
【0020】
図1に示す本発明の第1の実施形態の連続式マイクロ波反応装置1においては、窓4は金属製容器5の側面、ほぼ中央に一つ設けられているが、窓4の形や大きさ、設置位置等は、マイクロ波発振器2から発振され導波路9を伝播し該窓に照射され該窓4を介して透過したマイクロ波3が反応液流路6内を流れる反応液8を加熱し、前記反応液中の基質を反応させるように設定されていれば、図1に示す窓4に限定されるものではない。本発明の連続式マイクロ波反応装置において金属製容器に設置される窓は、通常は、反応に用いるマイクロ波の波長、金属製容器や反応液流路の形、大きさ等をもとに、安全性が確保できる範囲で、反応液流路を流通する反応液の反応効率ができるだけ高くなるようにマイクロ波が反応液に照射されるかたちに設計される。
【0021】
マイクロ波発振器2から発振されたマイクロ波3は、導波路9を伝播し、窓4に照射され、窓4を介して金属製容器5内に伝播する。さらに、充填層7を透過して、反応液流路6内の反応液8に照射される。反応液8はマイクロ波を吸収し、加熱され、該反応液中の基質の反応が進行する。マイクロ波3は、導波路9を伝播している間は進行方向が制御されているが、窓4を介して伝播する際に拡散する。拡散して進行したことにより反応液流路6に到達せず反応液8に吸収されなかったマイクロ波3は、充填層7を透過し、金属製容器5の内壁面で反射し、再度充填層7を透過して反応液8に吸収される。これを繰り返すことによって反応液8中の基質の反応が促進される。
【0022】
また、本発明の第1の実施形態による連続式マイクロ波反応装置1の金属製容器5に設けられた窓4の数は一つであるが、本発明の連続式マイクロ波反応装置における金属製持容器に設けられる窓の数は少なくとも1個であればよく、複数の窓を設けることも可能である。ただし、安全性の観点からは窓の個数は1〜5個であることが好ましい。
複数の窓を有する連続式マイクロ波反応装置としては、例えば、金属製容器を貫通する反応液流路を流れる反応液の流れに沿って、あるいは反応液流路を流れる反応液の流れ方向に対して反応液流路の周囲を囲むように、金属製容器に窓を複数個配置し、それぞれの窓に、導波路、マイクロ波発振器が連結する形に配置し、反応液流路を流通する反応液を連続的に加熱できるようにした連続式マイクロ波反応装置が挙げられる。さらに、反応液の流れに沿って配置される窓と、反応流路の周囲を囲むように配置される窓とを組み合わせてもよい。
【0023】
本発明の第1の実施形態による連続式マイクロ波反応装置1において、金属製容器5内に貫通配設された反応液流路6と前記金属製容器5との間には、マイクロ波透過性固体物質が充填されてなる充填層7が設けられており、充填層7の内壁が、上記円筒状の金属製容器と同心的に設けられた円筒状の反応液流路6を形作っている。
【0024】
ここで、本発明の連続式マイクロ波反応装置において前記充填層を構成するマイクロ波透過性固体物質は、上記マイクロ波発信器により発振され金属製容器に設けられた窓を介して透過したマイクロ波を反応液流路を流れる反応液まで到達させ、加熱し、反応液中の基質の反応を十分に実施することが可能な程度にマイクロ波透過性を有し、連続式マイクロ波反応装置の使用温度において固体の物質であれば特に制限されないが、具体的には、比誘電率が10以下であり、誘電正接(tanδ)が0.01以下である固体物質が好ましく用いられる。本発明の連続式マイクロ波反応装置において充填層に用いるマイクロ波透過性固体物質の比誘電率が10を超え、誘電正接(tanδ)が0.01を超えると、充填層そのものがマイクロ波を吸収し、加熱されてしまうおそれがある。なお、比誘電率の下限値は、通常0.1程度であり、誘電正接(tanδ)の下限値は通常0.0001程度である。
【0025】
加えて、本発明においてマイクロ波透過性固体物質は、ある範囲の電力半減深度を有することが好ましい。前記好ましい電力半減深度は、マイクロ波の周波数によっても異なるが、汎用される周波数2.45GHzのマイクロ波の場合、反応を効率的に行うためには3m以上であることが好ましい。電力半減深度の上限値は特に制限されるものではないが、通常入手可能なマイクロ波透過性固体物質の場合、おおよそ10mである。
【0026】
このようなマイクロ波透過性固体物質としては、樹脂、ガラス、およびセラミックスから選ばれる少なくとも1種が好ましい。樹脂としては、フッ素原子を含む樹脂、フッ素原子を含まない樹脂のいずれであってもよい。
【0027】
上記フッ素原子を含む樹脂として具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)等の樹脂が挙げられる。
【0028】
また、上記フッ素原子を含まない樹脂として具体的には、ポリアミド(PA)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリサルフォン(PSU)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)等の樹脂が挙げられる。
【0029】
ガラスとしては、石英ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、および低膨張ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。セラミックスとしては、アルミナ、およびステアタイト等が挙げられる。
これらのうち、耐熱性、耐薬品性(耐溶剤性)、安全性に優れることから、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。
これらは1種を単独で、または2種以上を積層する等組み合わせて用いることが可能である。
【0030】
本発明の連続式マイクロ波反応装置における、金属製容器と反応液流路の関係については、金属製容器内に前記金属製容器に設けられた開口部を介して供給されるマイクロ波が、反応液流路を流れる反応液を加熱し、反応液中の基質の反応に最も効率よく使用できるような構造とすることが好ましい。具体的には、前記金属製容器内部の断面積(Sa)と、前記反応液流路の断面積(Sb)との比(Sa)/(Sb)が4以上であることが好ましく、60以上であることが特に好ましく、80以上100以下であることがとりわけ好ましい。これは、マイクロ波をより均一に反応液に照射することが可能になるからである。なお、後述する第6の実施形態のように、反応液流路が複数ある場合の断面積(Sb)は、複数の反応液流路の断面積の合計である。なお、本発明において、金属製容器内部の断面積(Sa)とは、該容器自体の断面積ではなく、該容器の内側部分、すなわち、金属製容器の壁の厚さは含まない内部の断面積をいう。また、反応液流路や金属製容器内部の断面積とは、これらの長手方向に対して垂直な面で切ったときの面の面積を指し、断面直径とは、これらの長手方向に対して垂直な面で切ったときの面の直径を指す。
【0031】
前記(Sa)と(Sb)との比(Sa)/(Sb)は、金属製容器内部の断面形状や反応液流路の断面形状によらない。本発明の連続式マイクロ波反応装置における、金属製容器内部および反応液流路の断面形状としては、円形、方形等が挙げられる。金属製容器内部と反応液流路とは同種の形状であってもよく(たとえば、金属製容器内部の断面形状と反応液流路の断面形状とがともに円形)、異なる形状であってもよい(たとえば、金属製容器内部の断面形状が方形で反応液流路の断面形状が円形)。
本発明においては、耐圧性に優れる観点から、金属製容器内部の断面と反応液流路の断面とがともに円形であることが好ましく、これらが同心円状に配置されていることが特に好ましい。
【0032】
本発明の連続式マイクロ波反応装置において、金属製容器と反応液流路のより好ましい形状、位置関係として、図1に示す第1の実施形態のように前記金属製容器が円筒状であり、前記反応液流路が円柱状であって、前記金属製容器内に前記反応液流路が同心的に配設されたものが挙げられる。さらに、このような構成の前記金属製容器の円形断面直径(a)については、4mm以上であることが、マイクロ波を金属製容器内に伝播させ、反応を円滑に進行させる観点から好ましく、前記反応液流路の円形断面直径(b)と前記金属製容器の円形断面直径(a)の比(a)/(b)が、2以上であることが、マイクロ波をより均一に反応液に照射できる観点から好ましい。ここで、金属製容器の円形断面直径(a)とは、図1(1−2)に示すように該容器の内法の直径をいう。なお、金属製容器の円形断面直径(a)の上限値は、おおよそ1000mm程度であり、反応液流路の円形断面直径(b)の上限値は、おおよそ500mm程度である。
【0033】
また、金属製容器の断面形状が方形であり、反応液流路の断面形状が円形であり、前記金属製容器内に前記反応流路が同軸に配設されたものも好ましい。この場合は、前記方形を構成する短辺の長さ(c)が4mm以上であることが好ましい。この理由は、マイクロ波を金属製容器内に伝播させ、反応を円滑に進行させることができるからである。ここで、辺の長さは容器内側断面を構成する辺の長さをいう。また、前記容器断面の方形を構成する短辺の長さ(c)と、反応液流路の円形断面直径(b)との比(c)/(b)は2以上であることが好ましい。これは、マイクロ波をより均一に反応液に照射できるからである。なお、前記容器断面が正方形である場合は、辺の長さは4辺等しいため、何れの辺を短辺として規定してもよい。また、長方形の場合の、短辺の長さが上記好ましい範囲であれば、長辺の長さ(d)については、特に制限されるものではない。
【0034】
本発明の連続式マイクロ波反応装置が、適用される反応系としては、反応液流路を流れる反応液中の反応に関与する物質、すなわち、基質にマイクロ波を吸収する物質が含まれ、該物質にマイクロ波が吸収されることにより反応が誘起、促進されるような反応系である。この反応系においては、結合生成反応、分解反応等が進行する。この様な反応系としては、既に多くの反応系が周知であり、例えば、有機化合物反応系では、加水分解反応、エステル化反応、ディールス・アルダー付加反応等の反応が代表的な反応として挙げられる。無機化合物の反応系では、結晶性粒子、ナノ粒子、コア・シェル粒子、異方形状粒子等の各種無機微粒子合成反応系を挙げることができる。
【0035】
また、本発明の連続式マイクロ波反応装置においては、金属製容器と反応液流路の間にはマイクロ波透過性固体物質が充填され充填層を形成していることから、多くの反応系で反応が有利に進む高圧反応条件への対応が可能であり、反応液流路を流れる反応液の液圧が0.001〜10MPaの条件下、より好ましくは0.001〜3MPaの条件下でマイクロ波反応を行うのに、特に安全面で有利であり、好適に使用できる。さらに、前記のように、本発明の連続式マイクロ波反応装置によれば、反応液8に吸収されなかったマイクロ波3は金属製容器5の内壁面で反射し、充填層7を透過して再度反応液8に吸収され、これが繰り返されるので、マイクロ波の利用効率が向上し、反応の促進に寄与できる。
【0036】
次に、図2に示す、前記反応液流路内を流れる反応液が前記金属製容器に接する部分を有し、さらに前記反応液流路内を流れる反応液を撹拌する手段を有する、本発明の連続式マイクロ波反応装置の実施の形態の一例(以下、「第2の実施形態」という。)について説明する。
【0037】
本発明の第2の実施形態による連続式マイクロ波反応装置1の構成は、反応液流路と撹拌手段に係る構成以外は第1の実施形態と同様である。第2の実施形態において、反応液流路6は金属製容器5内に貫通配設された反応管10の内壁により形成されている。反応管10を構成する材料としては、充填層7を構成するマイクロ波透過性固体物質と同様の材料が挙げられる。なお、反応管10を構成する材料と充填層7を構成する材料とは、マイクロ波透過性固体物質である限りにおいて、同一の材料であってもよく異なる材料であってもよい。
【0038】
また、本発明の第2の実施形態による連続式マイクロ波反応装置1は、反応液流路6内に該流路内を流れる反応液8を撹拌する手段を有するが、前記撹拌手段は複数の撹拌羽根11と、前記撹拌羽根11に連結されこれらを回転させる駆動装置12からなる。撹拌羽根11は、マイクロ波不透過性の材料、例えば、真鍮、ステンレス鋼等の金属からなり、反応液流路6内を流れる反応液8を撹拌する機能を有するとともに、マイクロ波発振器2から発振され、金属製容器5の窓4を介して該容器内部に伝播したマイクロ波3が、充填層7、反応管10を透過し、反応液流路6内を流れる反応液8に吸収され反応を誘起、促進する過程において、マイクロ波3が反応液8に吸収されずに反応液内を透過し撹拌羽根11まで到達した場合には、これを反射させ反応液8に吸収させるようにする機能も併せて有する。この繰返しによって、反応液8は加熱されて、該反応液中の基質の反応が進行する。さらに、撹拌機12の金属製撹拌羽根11が反応液8を撹拌することによって、マイクロ波3をより均一に反応液8に吸収させる効果もある。
【0039】
また、撹拌羽根11と駆動装置12を連結する回転軸についても同様の観点からマイクロ波不透過性の材料が選択され用いられる。なお、撹拌羽根11および駆動装置12を連結する回転軸は反応液8と接触するので、腐食を防止するためにコーティング処理やライニング処理が施される。コーティング処理やライニング処理に使われる材料としては、充填層7と同様の材料が採用され、なかでも、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が好ましい。
【0040】
本発明の連続式マイクロ波反応装置において好ましく設けられる撹拌手段の具体例を第2の実施形態において示したが、この撹拌手段としては、撹拌が実施可能な構成であれば、具体的手段は特に制限されるものではなく、第2の実施形態で示される手段に限定されるものではない。
【0041】
次に、図3に示す、前記反応液流路内を流れる反応液が前記金属製容器に接する部分を有し、さらに複数(ここでは2個)の開口部を有する手段を有する、本発明の連続式マイクロ波反応装置の実施の形態の一例(以下、「第3の実施形態」という。)について説明する。
【0042】
本発明の第3の実施形態による連続式マイクロ波反応装置1の構成は、反応液流路と開口部に係る構成以外は第1の実施形態と同様である。
図3に示す本発明の第3の実施形態の連続式マイクロ波反応装置1においては、マイクロ波が透過する窓4(開口部)は、金属製容器5の側面のほぼ中央に、反応液流路6を中心として対向する形に2個設けられている。また、図3には示されていないが、前記2個の窓4については、それぞれの窓に、導波路、マイクロ波発振器が連結する形に配置され、反応液流路を流通する反応液を連続的に加熱できるようにしている。
【0043】
また、前記2個の窓4の形や大きさ等は、マイクロ波発振器から発振され導波路を伝播し該窓4に照射され該窓4を介して透過したマイクロ波3が、反応液流路6内を流れる反応液8をできるだけ効率よく加熱し、高反応効率で反応液中の基質を反応させるように、安全性が確保できる範囲で、設定されていればよく、図3に示す窓4に限定されるものではない。
前記窓4には、通常、開口部すなわち窓4と一致する形状のマイクロ波透過性材料からなる窓部材4aが前記窓4に挿入されるかたちに設けられる。窓部材4aは、図3に示すように、取り付け部を有し、取り付け部を介して金属製容器5に、その開口部を塞ぐように取り付けられてもよい。なお、窓部材4aは、具体的には、前記の充填層7を構成するマイクロ波透過性固体物質と同様の材料を用いて作製することができる。ここで、窓部材4aと充填層7は別々の部材で構成してもよいが、必要に応じて窓部材4aと充填層7を一体型の構成とすることもできる。また、金属製容器5内にはマイクロ波透過性固体物質からなる充填層7が充填されていることから前記容器5の壁に穴を形成し窓部材4aを設けずに開口部のままとすることも可能である。
【0044】
第3の実施形態において、反応液流路6は金属製容器5内、中心部に配設された反応管10の内壁と、両端部については充填層7の一部により形成されているが、片端部の一部分13において、反応液流路6内を流れる反応液8が前記金属製容器5に接する構造となっている。本発明の連続式マイクロ波反応装置においては、このような反応液流路6内を流れる反応液8が金属製容器5に接する部分13が、他の構成の妨げにならないように設定されていればよく、その大きさや位置については、図3に示すものに限定されるものではない。
反応管10を構成する材料としては、充填層7を構成するマイクロ波透過性固体物質と同様の材料が挙げられる。なお、反応管10を構成する材料と充填層7を構成する材料とは、マイクロ波透過性固体物質である限りにおいて、同一の材料であってもよく異なる材料であってもよい。
【0045】
第3の実施形態においては、連続式マイクロ波反応装置を上記構成とすることで、高圧反応液を用いる場合の高圧ガス保安法に適合可能である。
【0046】
反応液流路内を流れる反応液が金属製容器に接する部分の具体例を第3の実施形態において示したが、反応液が金属製容器に接する構成が実施可能な構成であれば、具体的手段は特に制限されるものではなく、第3の実施形態で示される手段に限定されるものではない。
【0047】
次に、図4に示す、前記マイクロ波発振器により発振されたマイクロ波を前記容器内に伝播する同軸線路であって、その端末部が前記容器の充填層内に突出するように前記容器の開口部を挿通してなり、前記端末部から前記容器内にマイクロ波を供給するように構成された同軸線路を有する、本発明の連続式マイクロ波反応装置の実施の形態の一例(以下、「第4の実施形態」という。)について説明する。図4は、第4の実施形態の連続式マイクロ波反応装置の長手方向の断面図である。
【0048】
本発明の第4の実施形態による連続式マイクロ波反応装置1の構成は、マイクロ波発振器により発振されたマイクロ波を前記容器内に供給する手段に係る構成以外は第3の実施形態と同様である。
【0049】
図4に示す本発明の第4の実施形態の連続式マイクロ波反応装置1は、一方の端末部がマイクロ波発振器(図示せず)に接続し、他方の端末部が金属製容器5内に充填された充填層7内に突出するように前記容器5の開口部4から挿通されてなる同軸線路14を有する。また、同軸線路14の前記充填層7内に突出した端末部にはアンテナ15が設けられている。なお、図4に示す本発明の第4の実施形態の連続式マイクロ波反応装置1では、同軸線路14の端末部にアンテナ15を設けているが、本発明においては必要に応じてアンテナを使用しない構成をとってもよい。
【0050】
第4の実施形態の連続式マイクロ波反応装置1においては、マイクロ波発振器(図示せず)により発振されたマイクロ波3は、同軸線路14により伝播され、金属製容器5内に充填された充填層7内に突出する前記同軸線路14の端末部に到達し、さらに末端部に設けられたアンテナ15から前記充填層7内に放射・供給される。
【0051】
上記同軸線路14は、共に非磁性金属からなる内導体と外導体を同軸上に有する構成の線路であり、前記アンテナ15は、同軸線路14の端末部において通常は内導体に取り付けられる。なお、アンテナを別に取り付けるのではなく、同軸線路14の端末部において内導体の形状を適当な形に成形してアンテナとして機能させることも可能である。内導体および外導体を構成する非磁性金属としては、上記導波路を構成する非磁性金属と同様の金属を挙げることができる。また、同軸線路の形状等については、通常、マイクロ波同軸線路として用いられるものが特に制限なく適用できる。
前記アンテナ15の材質は、導波路と同様の材質であれば特に制限されない。また、アンテナ15の形状としては、前記金属製容器5内に貫通配設された反応液流路6内を流れる反応液8を効率的に加熱するようにマイクロ波3を放射できる形状が好ましい。
【0052】
ここで、上記同軸線路14は金属製容器5の開口部4から容器内部に挿通されているが、前記開口部4を形成する金属製容器開口面と、同軸線路14の外側の面とは、通常、直接接するのではなく、両者の間には、樹脂、ガラス、セラミクス等からなる絶縁部材(図示せず)が配設されている。
【0053】
なお、同軸線路と金属製容器との連結を効率よく簡便に行うために、公知のマイクロ波結合器、例えば、特開2004−207011号公報に記載のマイクロ波結合器を用いることが可能である。このようなマイクロ波結合器を用いた例として、図5に示すものは、第4の実施形態においてマイクロ波結合器を用いて同軸線路と金属製容器とを連結した以外は、第4の実施形態と同様である、本発明の連続式マイクロ波反応装置の実施の形態の一例(以下、「第5の実施形態」という。)について説明する。なお、図5は、第5の実施形態の連続式マイクロ波反応装置の長手方向の断面図である。
【0054】
図5に示す本発明の第5の実施形態の連続式マイクロ波反応装置1が有するマイクロ波結合器18は、マイクロ波発振器(図示せず)により発振され、同軸上に配置された内導体17および外導体16を有する同軸線路14を介して伝播されたマイクロ波3を、金属製容器5の開口部4から前記容器内に導入する機能を有する。
【0055】
第5の実施形態において、マイクロ波発振器(図示せず)からマイクロ波を伝播する同軸線路14は、同軸線路14の外導体16を介してマイクロ波結合器18の入力部18aに接続されており、同軸線路14の内導体17はマイクロ波結合器18内を貫通する構成をとる。マイクロ波結合器18は、開口部4を有する金属製容器5に、前記容器5の開口部4から前記容器5内に充填された充填層7内に、前記マイクロ波結合器18内を貫通する前記同軸線路14の内導体17の端末部を、突出させるように取付けられている。なお、この場合、前記同軸線路14の内導体17の端末部がマイクロ波結合器18の出力部18bとなる。
【0056】
第5の実施形態において、マイクロ波結合器18の出力部18b、すなわち、同軸線路14の内導体17の端末部にはアンテナ15が連結して設けられ、マイクロ波発振器から同軸線路を介して伝播したマイクロ波3は、最終的に前記アンテナ15から前記容器内の充填層7内に放射・供給される。また、マイクロ波結合器18は、前記金属製容器5の開口部4に挿入して設けられた絶縁部材19をその一部として有し、前記同軸線路14の内導体17を前記マイクロ波結合器の入力部18bから絶縁部材19内に挿通する形で貫通させて、その先端部を金属製容器5内の充填層7内に突出させるように構成されている。なお、絶縁部材19は、前記内導体17を金属製容器5の開口から電気的に絶縁し、かつマイクロ波の吸収が少ない材料、例えば、石英またはセラミックなどから構成される。
図示されていないが、マイクロ波結合器18は、取付けネジ等により金属製容器5に対して強固に取付け固定されている。同様に、同軸線路14の外導体16は、入力部18aにおいてマイクロ波結合器18に強固に取付け固定されている。
【0057】
ここで、上記第4または第5の実施形態において、前記マイクロ波発振器と前記同軸線路の間に、前記マイクロ波発振器側から順に導波路および導波路−同軸線路変換手段を設けて、前記マイクロ波発振器から発振したマイクロ波を、導波路、導波路−同軸線路変換手段、同軸線路の順に金属製容器まで伝播する構成としてもよく、そのような構成とすることが伝播効率の点から好ましい。
【0058】
次に、図6に示す複数の反応液流路を有する、本発明の連続式マイクロ波反応装置の実施の形態の一例(以下、「第6の実施形態」という。)について説明する。図6は、第6の実施形態の連続式マイクロ波反応装置の長手方向に直交する方向の断面図である。
【0059】
本発明の第6の実施形態による連続式マイクロ波反応装置1の構成は、反応液流路に係る構成以外は第1の実施形態と同様である。図6に示す通り、第6の実施形態においては、円柱状の3本の反応液流路6A、反応液流路6Bおよび反応液流路6Cは、円筒状の金属製容器5内に略等間隔に貫通配設されている。
【0060】
前記3本の反応液流路6A、6B、6Cを流れる反応液は、同一の反応段階の反応液であっても、異なる反応段階の反応液であってもよい。3本の反応液流路に同一の反応段階の反応液を流す例としては、反応原液を3本の反応液流路6A、6B、6Cのそれぞれに同方向から流入し、各反応液流路を流通させながらマイクロ波反応させ得られた反応処理液を連続式マイクロ波反応装置から回収する方法が挙げられる。
【0061】
また、3本の反応液流路に異なる反応段階の反応液を流す例としては、反応液流路6Aの一端から反応原液を流入し反応液流路内6Aを流通させながらマイクロ波反応させ得られた第1段階の反応処理液を他端から回収し、次いでこれを反応液流路6Bの一端から流入し流通させながらマイクロ波反応させ第2段階の反応処理液を得、さらに反応液流路6Cを流通させながらマイクロ波反応させ最終的に得られた反応処理液を製品として回収する多段階の反応方式が挙げられる。
【0062】
また、本発明の第6の実施形態による連続式マイクロ波反応装置のように複数の反応液流路を有する連続式マイクロ波反応装置においては特に、必要に応じて金属製容器に窓を複数個配置しそれぞれの窓に、導波路、マイクロ波発振器が連結する形に配置する構成が用いられる。同一の反応段階の反応液を複数の反応液流路に流通させ同時にマイクロ波反応させ得られた反応処理液を合わせて回収する場合には、特に各反応液流路内を流れる反応液中の基質のマイクロ波反応が均一に実行されるようにマイクロ波が金属製容器内を伝播する設計とすることが好ましい。
【0063】
以上、図面を参照して第1〜第6の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限られるものでなく、これらの実施形態や実施例を本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、変更または変形することができる。
たとえば、第1の実施形態においては、反応液流路6は充填層7の内壁によって形成されているが、反応管10を貫通配設することによって反応液流路6を形成してもよい。また、第2の実施形態に示されているような撹拌手段を有していてもよい。
第2の実施形態においては、反応液流路6が充填層7の内壁によって形成されていてもよいし、撹拌手段を設けなくともよい。
加えて、第1の実施形態、第2の実施形態ともに、反応液流路6と充填層7の部分が金属製容器5で被覆されているが、マイクロ波発振機2、さらには導波路9までも含めた装置全体を金属製容器5で被覆してもよい。
【0064】
次に、本発明の連続式マイクロ波反応システムについて、図7に示す本発明の連続式マイクロ波反応システムの実施の一形態を例に説明する。
【0065】
本発明の実施の一形態である図7に示される連続式マイクロ波反応システム20は、連続式マイクロ波反応装置1と、前記連続式マイクロ波反応装置1の反応液流路6の一端から反応原液22を反応液流路に供給する手段23と、前記反応液流路内の反応液の圧力を調整する手段としての圧力調整バルブ24、25、26および、前記反応液流路内の反応液の圧力を調整する手段として製品タンク27を有するものである。
【0066】
図7に示される連続式マイクロ波反応システム20における、連続式マイクロ波反応装置1の反応液流路6は一本であり、反応原液がその一端から供給され流通しながらマイクロ波反応を受け他端に達するまでに反応生成物を含む処理液(製品)となり、最終的に製品タンク27に回収される。マイクロ波の発振、伝播等による反応原液の加熱、反応(反応温度)の調整に関しては上記に連続式マイクロ波反応装置の説明において記載した通りである。反応液流路6内を流れる反応液の液圧、流量調整は、連続式マイクロ波反応装置1、反応液流路6の反応原液供給側および反応処理液排出側にそれぞれ連結された管に設けられた圧力調整バルブ24、25、26と反応原液供給手段23において行われる。
【0067】
なお、本発明の連続式マイクロ波反応システムにおける、反応液流路の一端から反応原液を反応液流路に供給する手段、前記反応液流路内の反応液の圧力を調整する手段、前記反応液流路内の反応液の圧力を調整する手段としては、一般的な連続式化学反応装置において用いられるこれらの機能を果たす手段と同様の手段を特に制限なく用いることが可能である。
【0068】
また、本発明の連続式マイクロ波反応システムにおいては、温度センサー、圧力センサー流量計等のセンサー、計器類を前記連続式マイクロ波反応システム内の適当な箇所、例えば、反応液流路内、反応液流路壁等に取付け、それらセンサーの検出値にもとづきマイクロ波出力や反応液の圧力や温度を調整する手段、反応液を供給する手段等を制御して、例えば、反応液流路内の圧力および温度、反応液流量等を設定値に保持できるようにすることも可能である。
【0069】
以上においては、一般的な化学反応のスケールに適用する実施態様に関して説明したが、本発明の連続式マイクロ波反応装置および連続式マイクロ波反応システムは、スケールを小さくしてマイクロリアクターとして使用することもできる。具体的には、金属製容器の断面直径を0.5〜2mm程度とし、充填層7として前記マイクロ波透過性固体物質7のうち前記樹脂を採用し、該樹脂からなる充填層に断面直径が500μm程度の反応液流路6を形成すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の連続式マイクロ波反応装置および連続式マイクロ波反応システムにより、マイクロ波反応による量産体制が望まれていた各種製品製造分野において、従来の外部加熱反応からマイクロ波加熱反応への移行が可能となり、安全性を確保しながら、製造ラインの小型化、省エネルギー化、CO削減等の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0071】
1…連続式マイクロ波反応装置、2…マイクロ波発振器、3…マイクロ波、4…開口部(窓)、4a…窓部材、5…金属製容器、6…反応液流路、7…充填層、8…反応液、9…導波路、10…反応管、11…撹拌手段(撹拌羽根)、12…撹拌手段(駆動装置)、13…反応液が金属製容器に接する部分、14…同軸線路、15…アンテナ、16…外導体、17…内導体、18…マイクロ波結合器、19…絶縁部材
20…連続式マイクロ波反応システム、21…反応原料タンク、22…反応原液、23…反応原液供給手段、24…圧力調整バルブ、25…圧力調整バルブ、26…圧力調整バルブ、27…製品タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を内部に供給するための開口部を有する金属製容器と、前記開口部を介して前記容器内に供給されるマイクロ波を発振するマイクロ波発振器と、前記容器内に貫通配設された反応液流路と、前記容器と前記反応液流路の間に充填されたマイクロ波透過性固体物質からなる充填層とを有し、前記容器の開口部を介して供給されたマイクロ波が前記反応液流路内を流れる反応液を加熱し、前記反応液中の基質を反応させるように構成される連続式マイクロ波反応装置。
【請求項2】
前記容器の前記開口部はマイクロ波透過性を有し、前記マイクロ波発振器により発振されたマイクロ波は前記容器の開口部に照射され、開口部を透過することで前記容器内に供給されることを特徴とする請求項1に記載の連続式マイクロ波反応装置。
【請求項3】
前記マイクロ波発振器により発振されたマイクロ波を前記容器の開口部に導く導波路を有する請求項2に記載の連続式マイクロ波反応装置。
【請求項4】
前記マイクロ波発振器により発振されたマイクロ波を前記容器内に伝播する同軸線路であって、その端末部が前記容器の充填層内に突出するように前記容器の開口部を挿通してなり、前記端末部から前記容器内にマイクロ波を供給するように構成された同軸線路を有する請求項1に記載の連続式マイクロ波反応装置。
【請求項5】
前記マイクロ波発振器と前記同軸線路の間に前記マイクロ波発振器側から順に導波路および導波路−同軸線路変換手段を有する請求項4に記載の連続式マイクロ波反応装置。
【請求項6】
前記マイクロ波透過性固体物質の比誘電率が10以下であり、誘電正接(tanδ)が0.01以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の連続式マイクロ波反応装置。
【請求項7】
前記マイクロ波透過性固体物質が、樹脂、ガラス、およびセラミックスから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載の連続式マイクロ波反応装置。
【請求項8】
前記容器内部の断面積(Sa)と前記反応液流路の断面積(Sb)の比(Sa)/(Sb)が、4以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載の連続式マイクロ波反応装置。
【請求項9】
前記容器が円筒状であり、前記反応液流路が円柱状であって、前記容器内に前記反応液流路が同心的に配設され、かつ前記容器の円形断面直径(a)が4mm以上であり、前記反応液流路の円形断面直径(b)と前記容器の円形断面直径(a)との比(a)/(b)が、2以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載の連続式マイクロ波反応装置。
【請求項10】
前記容器が角筒状であり、前記反応液流路が円柱状であって、前記容器内に前記反応液流路が同軸に配設され、かつ前記容器の方形断面を構成する短辺の長さ(c)が4mm以上であり、前記反応液流路の円形断面直径(b)と前記容器の方形断面を構成する短辺の長さ(c)との比(c)/(b)が2以上である請求項1〜9のいずれか1項に記載の連続式マイクロ波反応装置。
【請求項11】
複数の反応液流路を有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の連続式マイクロ波反応装置。
【請求項12】
前記反応液流路内を流れる反応液が前記金属製容器に接する部分を有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の連続式マイクロ波反応装置。
【請求項13】
反応液圧0.001〜10MPaの条件下でマイクロ波反応を行うための請求項1〜12のいずれか1項に記載の連続式マイクロ波反応装置。
【請求項14】
前記反応液流路内を流れる反応液を撹拌する手段を有する請求項1〜13のいずれか1項に記載の連続式マイクロ波反応装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の連続式マイクロ波反応装置と、前記連続式マイクロ波反応装置の反応液流路の一端から反応原液を反応液流路に供給する手段と、前記反応液流路内の反応液の圧力を調整する手段と、反応液流路の他端から排出される反応処理液を回収する手段とを有する連続式マイクロ波反応システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−184230(P2010−184230A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166086(P2009−166086)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】