説明

連続遠心分離装置

【課題】本体1内部に直径が異なる高圧側羽根車と低圧側羽根車とを軸に固定し、高速回転することで相互の風圧差で浮遊粉塵を圧送し、別の原動機を要せず分離可能とする。
【解決手段】吸い込み口2及び吐き出し口3を有し、下部に貯水室12を形成している本体1に、貯水室に貯まった水を排出する排水口17を備え、貯水室の最下部にはドレン抜き18を設け、高圧側羽根車4と低圧側羽根車5は軸受7,8に支持された軸6に固定され、モーターで駆動されて本体1内で高速で回転する。本体の上部及び高圧側羽根車の入り口付近には洗浄ノズル16を設けて洗浄水を噴出することができ、軸貫通部からの外気の流入或いは本体内からの流体の漏洩を防止するためのシール9,10を設けて、前記軸6を軸継ぎ手11を介して原動機14で回すか、或いはプーリ等を介してベルト等で駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中に浮遊する微粉塵の分離・分級が容易な連続遠心分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心分離装置に関する特許文献1〜7は、遠心分離装置に関して特許出願されてある先行技術の例である。
【0003】
上記いずれの特許文献を参照してみても、直径が異なる大小の羽根車を組み合わせてなる高圧側羽根車と低圧側羽根車を軸に取り付けて高速回転させて、高・低圧羽根車の差圧を利用して、粉塵を前記羽根車を設けた本体内へ吸引して圧送すると共に粉塵を分離、分級して、前記本体の下方に設けた貯水室へ粉塵を貯める構成の遠心分離装置は見出せなかった。
【0004】
強力な遠心分離作用を連続的に得ることは従来極めて困難な問題であった。例えば、製紙工場の浮遊粉塵を分離する用途において、浮遊粉塵の連続吸引による圧送、フィルターの目詰まり、装置の小型化、所要動力の軽減などの問題があった。
【0005】
この改善策として、本発明は高圧側羽根車と低圧側羽根車を軸受に支持された軸に取り付けて固定して高・低圧羽根車の差圧を利用して圧送し、前記高・低圧羽根車で分離、分級する方法を採用した。吸引口から吐き出口の間にフィルターを介在させないのでフィルターの目詰まりはなく、動力源により高速回転する高・低圧羽根車の風圧の差圧を利用して圧送するために装置の小型化、効率化を達成できる。
【特許文献1】特開2005−282300号公報
【特許文献2】特開2002−224589号公報
【特許文献3】特開2001−121036号公報
【特許文献4】特開2000−093842号公報(特許番号第3609292号)
【特許文献5】特開2000−254551号公報(特許番号第3747433号)
【特許文献6】特開平11−047638号公報(特許番号第3674739号)
【特許文献7】特開平07−232022号公報(特許番号第2951839号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、空気、水蒸気、その他の流体から粉塵などの固形物やオイルミスト等の当該流体以外の物質を分離、分級できない点である。本発明は、高圧側、低圧側と複数に形成された羽根車を高速で回転させることによって強大な遠心力を得られ、それと同時に高・低圧羽根車の差圧によって連続して圧送することを特徴とした、流体から当該流体以外の物質を分離、分級することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、吸い込み口及び吐き出し口を有し、下部に貯水室を形成している本体に、貯水室に貯まった水を排出する排水口を備え、貯水室の最下部にはドレン抜きを設け、高圧側羽根車と低圧側羽根車は、軸受に支持された軸に固定され、本体内において高速で回転しえる原動機によって駆動される。高圧側羽根車と低圧側羽根車は、別々に串刺し状に取り付けても、双方一体に作られたものを取り付けても良い。本体の上部及び高圧側羽根車の入り口付近には洗浄ノズルを設けて洗浄水を噴出することができ、軸貫通部からの外気の流入或いは本体内からの流体の漏洩を防止するためのシールを設けて、前記軸を軸継ぎ手を介して原動機で回すか、或いはプーリ等を介してベルト等で駆動されるようにする。架台は原動機を支持し、床盤は本体や原動機、架台など一式を搭載して高速回転に耐え得るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の遠心分離装置は、強力な遠心分離作用を連続的に得ることを前記のような簡単な構造で解決するものであり、羽根車の個数を増やして多段方式にするとか、或いは各部の強度の許す限り、その周速を上げることにより極めて微細な粉塵の回収や分級が可能となる。
低圧側羽根車によって動力の一部は軽減が可能であるため、高圧羽根車、低圧羽根車の双方を個別に運転する場合と比較すると、所要動力ははるかに減少される。
フィルター等の目詰まりが心配される部品を使用しないから、内部の掃除や部品の交換などによる休止の周期が長く、しかも連続運転が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本体内で回転する軸に取り付けた高圧側羽根車と低圧側羽根車の差圧を利用して浮遊粉塵を本体内へ吸引して吐き出し口へ圧送し、連続的に遠心分離するという目的を、装置の小型化、所要動力の低減を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明装置の1実施例の断面図であって、1は 本体、 2は 吸い込み口、 3は 吐き出し口、 4は 高圧側羽根車、 5は 低圧側羽根車、6は 軸、7,8は 軸受、9,10は シール、11は 軸継ぎ手、12は 貯水室、13は 床盤、14は 原動機、15は 架台、16は 洗浄ノズル、17は 配水口、18は ドレン抜きである。

【0011】
1実施例として、空気中から混入粉塵を取り除く場合について説明する。
本体1には、吸い込み口2と吐き出し口3が設けられ、軸受7,8に支持された軸6に取り付けられた高圧側羽根車4と低圧側羽根車5を設け、前記軸は軸継ぎ手11を介して原動機14の回転軸に連結されて、高・低両羽根車4,5は原動機14の回転力によって駆動されるようにした。本体1の下方床盤13に貯水室12を設け、貯水室12に排水口17とドレン抜き18を設けたものである。
高圧側羽根車4は、低圧側羽根車5よりも、その直径を大きく作るなどの方策を講じてあるため、同一回転数であっても高圧側羽根車4の方が低圧側羽根車5に比べて発生する圧力が大である。
従って、軸6が高速で回転すれば、本体1は少なくとも低圧側羽根車5の発生する圧力を保ちつつ、高圧側羽根車4と低圧側羽根車5の発生する双方の圧力の差による作用で吸い込み口2から吐出口3へ向かって、吸い込んだ流体を圧送する。
【0012】
前記の圧送作用によって粉塵の混入した空気が吸い込み口から吸い込まれると、高圧側羽根車4による強大な遠心力によって本体1内部へ飛散する。
低圧側羽根車5において、空気は高圧側羽根車4と低圧側羽根車5との圧力差によって低圧側羽根車5の外周から中心に向かって流入できるが、粉塵は空気と比較して比重が大きいため、ここで遠心力による遠心分離作用に妨げられて外周部から中心に向かっての流入は極めて困難となり、粉塵は本体1内部に留まる。
【0013】
本体1内に飛散、或いは本体1の内壁に付着した粉塵は洗浄ノズル16から噴出した水流によって洗浄されながら下部貯水室12を経て排水口17へと導かれ流出される。
【0014】
上記の装置において、図1に示したように、粉塵は本体1下部に設けた貯水室12の中に貯まって、上澄み水として排出口17より排出される。ドレン抜き18が設けてあるのでメンテナンスの際に貯水室12の垢を清掃することもできる。
【0015】
このような高圧側羽根車と低圧側羽根車の差圧で圧送する方法を採用したので、高・低圧羽根車を回転させる動力を利用して別に動力を設けなくても本体内へ浮遊粉塵を吸引し圧送することができ、稼動設備の動力の消費電力を低減する節電効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0016】
実施例の説明は、空気中に混入した固体の粉塵について述べたが、空気やその他のガス中の固形粉塵のみではなく、オイルミストの分離、更には液体中の固体の分離などと、本発明の応用は多様である。一例として、製紙工場に不可欠な蒸気の排出は、蒸気に微細な粉塵が混入しているので、凝縮して湯気になるときに微小な水滴の各粒に紙粉を核として含むため、排風機や導風管の内部などにペースト状の紙粘土が付着する。この対策が極めて困難であったが、本発明によって一挙に解決できる。場合によっては、洗浄水などを使用せずに、乾式の運転も可能であって、用途は更に拡大適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】遠心分離装置の実施方法を示した説明図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0018】
1 本体
2 吸い込み口
3 吐き出し口
4 高圧側羽根車
5 低圧側羽根車
6 軸
7,8 軸受
9,10 シール
11 軸継ぎ手
12 貯水室
13 床盤
14 原動機
15 架台
16 洗浄ノズル
17 配水口
18 ドレン抜き


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸い込み口及び吐き出し口を有し、下部に貯水室を形成している本体に、貯水室に貯まった水を排出する排水口を備え、貯水室の最下部にはドレン抜きを設け、高圧側羽根車と低圧側羽根車は、軸受に支持された軸に固定され、原動機によって駆動されて、本体内において高速で回転しえるようにした連続遠心分離装置。
【請求項2】
軸受に支持された軸に別々に串刺し状に請求項1に記載の高圧側羽根車と低圧側羽根車を取り付けてあることを特徴とする連続遠心分離装置。
【請求項3】
軸受に支持された軸に双方一体に作られた請求項1に記載の高圧側羽根車と低圧側羽根車を取り付けてあることを特徴とする連続遠心分離装置。
【請求項4】
軸受に支持された軸に請求項1乃至3のいづれかに記載の高圧側羽根車と低圧側羽根車を多段式に取り付けてあることを特徴とする連続遠心分離装置

【図1】
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