説明

連続部分めっき装置

【課題】 高位置精度部分めっきを確実かつ安定して行えるようにする。
【解決手段】 搬送ガイド面を有しかつ基軸線を中心に回転可能な回転体と、周方向に離隔配設された複数の電極ノズルを有しかつ給電めっき液を各電極ノズルからその径方向に噴射可能な電極構造体とを設け、電極ノズルの配設角度範囲が回転体の搬送ガイド面に被処理物が係合している角度範囲よりも小さく選択され、回転体および電極構造体の基軸線方向の相対位置を各電極ノズルから噴射されためっき液が連続搬送中の各めっき必要部分に吹き付けることができる状態として保持可能に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に連続する帯状共通部分と長手方向に不連続でかつ幅方向に延びる複数の櫛歯状部分とを有する被処理物を連続搬送しつつ櫛歯状部分の選択されためっき必要部分に連続してめっき処理を施すための連続部分めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示す被処理物は、連続する帯状長尺物(例えば、リードフレーム)でかつ連続するめっき必要部分1RYを有するワーク1Rである。かかるワーク1Rの場合は、連続部分めっき装置を構成する処理槽内のめっき液面を調整板の利用により一定に保持し、下方部(めっき必要部分)1RYをめっき液に浸漬しつつ搬送させれば、めっき不必要部分1RNにめっき処理することなく、選択された一部分(めっき必要部分)のみに連続してめっき処理を施すことができる。
【0003】
しかし、めっき液面の変動を絶無化することは実際上不可能に近いので、部分めっき位置(境界)の高精度化が難しい。また、このような液面調整型の連続部分めっき装置では、例えば図8(板厚方向から見た状態を表わす。)の(C)に示すワーク1Cのうちの中間めっき不必要部分1MNを除きかつこれを上下方向に挟む下方めっき必要部分1DYおよび上方めっき必要部分1UYの双方にめっき処理を施すことはできない。
【0004】
そこで、めっき不必要部分1MNにテープ等を貼り付け(マスキング)して、部分めっき終了後にテープ等を引き剥がす直接貼付マスキング方式が採用される場合がある。しかし、テープ購入金額が嵩み、またテープ貼付作業および引剥作業が必要であるから、生産能率が大幅に低下し生産コスト高となる。テープ貼付作業のバラツキ等やテープ変形等が生じるので、例えば3〜2mm以下の位置精度を得ることは無理である。
【0005】
さらに、図8(A)に示すめっき不必要部分1UN,めっき必要部分1MYおよびめっき不必要部分1DNがあるワーク1Aや同図(B)に示すめっき必要部分1DY,めっき不必要部分1MNおよびめっき必要部分1UYがあるワーク1Bのように大きな変形(凹凸や曲り)部分がある場合は、マスキング自体が難しく採用し難い。
【0006】
これに対して、いわゆる間接固着マスキング方式が提案(特許文献1を参照)されている。この特許文献1に係る部分めっき装置は、めっき不必要部分を絶縁マスキングし、ノズルからめっき液を吐出して保持体層(布等)10に浸潤しつつ流動させ、この状態でドラムを回転させることにより、保持体層と接する部分にように液溜りを形成しかつこの液溜りに浸漬された状態でめっき必要部分に部分めっきを施すことができるように形成されている。しかし、上記した液面制御方式や直接貼付マスキング方式に比較しても、装置コスト高となる割にはめっき位置精度の大幅な向上は望めない。寧ろ、ワークの長手方向の液流れを防止できずかつ保持体層の変形が生じるので、直接貼付マスキング方式の場合に比較して位置精度が劣悪化してしまう。
【0007】
さらに、直接貼付マスキング方式の装置や間接固着マスキング方式(特許文献1)の場合には、テープやマスキング部材によるマスキング困難性から、小型(微細)で複雑形状の帯状被処理物の部分めっきには不適当である。
【0008】
そこで、めっき必要部分とマスキング部材との間に空間を形成し、この空間内にめっき液を供給して当該めっき必要部分にめっき処理を施す装置が提案(例えば、特許文献2)されている。つまり、回転ドラムの外周壁にマスク部材を固着し、このマスク部材の外側に金属条を巻き付け、回転ドラム内からマスキング部材を通してめっき液を供給しつつ、金属条の内面側でかつマスキング部材に非接触な領域(めっき必要部分)に部分めっきを施すことができる。
【0009】
同様な考え方でかつマスキング部材を可動式とした装置も提案(特許文献3および特許文献4を参照)されている。回転ドラムと回動マスキングベルトとを密接させた状態とし、回転ドラムに巻き付けられた被処理物のうちマスキングベルトが当接されない部分に対応する空間内にめっき液を供給しかつ当該部分(めっき必要部分)のみにめっき処理を施す構造である。
【0010】
しかし、かかる特許文献2,3,4に係る装置でも、マスキング材と被処理物との間にめっき液が浸み込んでしまうので、めっき必要部分とめっき不必要部分との境界が部分的に変動する。精度上の要求を満たせない。マスキングベルト等の交換等が必要であるから生産コスト高になる。しかも、めっき処理後にプレス加工により分断する考え方であるから、めっき皮膜にも傷が付く。製品の原価削減上は致命的な欠陥となる。換言すれば、図7に示す不連続部分(1K)を有するワーク1Fには適応できない。
【0011】
そこで、本出願人は、被処理物の形態が一段と小型化および複雑化するとともに部分めっきの位置精度が一層高度化するとともに生産性が高くかつ低コストで部分めっきを施したいとする要請に応えるためのノンマスキング方式の新規装置を提案(例えば、特願2003−429635号)している。
【0012】
この先提案装置は、図7に示す長手方向(図で左右方向)に連続する帯状共通部分1Cと長手方向に不連続でかつ幅方向に延びる複数の櫛歯状部分1Kとを有するワーク(例えば、リードフレーム等)1Fの不連続形態とめっき液の流動性との関係に着目しかつ櫛歯状部分(1K)間をめっき液の流動路として巧みに利用する新規な考え方に基づく。
【0013】
詳しくは、基軸線を中心に回転する回転電極構造(90)内で外部から供給されためっき液に陽極電位を印加給電し、給電後のめっき液を全周方向に連続するスリット部から径方向に噴流し、ワーク(1B)の幅方向の選択されためっき必要部分[例えば、図8(B)の1UYあるいは1DY(その後にワーク1Bを上下反転させた2回目の場合は、1DYあるいは1UY)]のみにめっき液を吹付けながら、当該めっき必要部分のみに部分めっきを施すことができる。めっき不必要部分[図8(B)のバリヤ部1MN]には、めっき液が付着されることがないので、位置精度を劣悪化させる低品質で無用なめっき皮膜が析出されてしまうことはない。
【0014】
かくして、安定しためっき処理により高品質な製品を生産することができるとともに大幅な生産能率の向上および生産コストの低減を図れ、しかも取り扱いが簡単である。
【特許文献1】特開平02−97692号公報
【特許文献2】特開2002−38294号公報
【特許文献3】特開平11−131284号公報
【特許文献4】特開平11−293489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、高位置精度および生産性の向上並びに高品質保障の安定性が一段と強く求められる現今要請に応えるためには、さらなる改善が必要と考える。
【0016】
すなわち、本出願人の先提案装置においては、回転体30の全周(360度)に設けられたスリット部から径方向(ラジアル方向)に噴流されためっき液は、全体として、例えば帽子円形鍔に似た外側に向かって広がる薄板円盤形状の液薄膜となる。しかし、供給めっき液の脈動,回転体30の回転速度の変動等があると、全周に渡って水平であるべき円盤形状液薄膜に、上下方向やねじれ方向の乱れが部分的に生じる場合があり得る。顧みて、時として発生するめっき品質(高さ位置精度)のバラツキ発生の1つの原因と考えられる。
【0017】
また、ワーク(1F)には、連続搬送の上流側では回転体30の外周(ガイド)面33に接触状態になる以前の一定期間内にめっき液が付着(接触)され、その下流側ではめっき処理後の非接触状態となった以降の一定期間内にもめっき液が付着(接触)する。短時間とはいえ、めっき液が接触したワーク部分には、正規とはいえない不良めっき処理がなされる。この際のめっき品質は低い。これも、時として発生するめっき品質(高さ位置精度)のバラツキ発生の1つの原因と考えられる。だからと言って、連続搬送されるワーク1Fを回転体30の全周に巻き付けた状態で搬送ガイドさせることは物理的に不可能である。
【0018】
また、めっき液は、回転体30の内側から回転電極構造90(液流路95)および整流用液室51Sを通して全周方向に連続する1つのノズル部52から全径方向に噴流される。かかる構造である以上、めっき液の単位量当りの給電面積をこれ増大させることが難しい。したがって、給電能率の一段の向上が難しい。
【0019】
さらに、電極構造90が回転体30とともに同期回転させる回転構造であるから、回転体30の一段の回転高速化による生産性向上の抑制要因にもなっている。回転体30の回転数を可能な限りにおいて高速化しても、給電不足の虞がある。回転高速化断念は、装置小型化を断念に等しい。
【0020】
本発明の目的は、高位置精度な部分めっき処理を確実かつ安定して行える連続部分めっき装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、先提案(特願2003−429635号)の連続部分めっき装置の実際運用を含む試験・研究の結果として問題視される上記の技術的課題を一挙に解決するものである。すなわち、本発明は、静止状態の電極構造体に設けられた複数の小径電極ノズルから周方向の一定角度範囲内においてめっき液を径方向に勢いよく噴射させることで、噴射めっき液の上下方向乱れを発生しないように形成され、連続搬送中のワークは回転体に係合されかつ電極ノズルに対応する位置に到達した以降においてはじめてめっき液に接触されかつ回転体と非係合になる以前にめっき液との接触を断って不必要なめっき液との接触および劣悪めっき処理のなされることを回避可能に形成され、複数の電極ノズルを通すことでめっき液単位量当りの給電面積を増大させて給電能率を向上可能に形成され、さらに電極構造体の静止化と相俟って回転体の回転数を高速化可能に形成されている。
【0022】
詳しくは、請求項1の発明に係る連続部分めっき装置は、長手方向に連続する帯状共通部分と長手方向に不連続でかつ幅方向に延びる複数の櫛歯状部分とを有する被処理物を連続搬送しつつ櫛歯状部分のめっき必要部分に連続してめっき処理を施すための連続部分めっき装置であって、外周面側に被処理物と係合して搬送ガイド可能な搬送ガイド面が形成されかつ基軸線を中心に被処理物の搬送速度に対応する回転速度で回転可能な回転体と、基軸線を中心とする仮想円軌跡の周方向に離隔配設された複数の小径孔形状の電極ノズルを有するとともに内部に供給されためっき液に給電可能かつ給電されためっき液を各電極ノズルからその径方向に噴射可能に形成された電極構造体とを設け、電極ノズルの配設角度範囲が回転体の搬送ガイド面に被処理物が係合している角度範囲よりも小さく選択され、回転体および電極構造体の基軸線方向の相対位置を各電極ノズルから噴射されためっき液が連続搬送中のめっき必要部分に吹き付けることができる状態として保持可能に形成されている、ことを特徴とする。
【0023】
また、請求項2の発明に係る連続部分めっき装置は、回転体が基軸線を中心とする中空円筒体の外側に回転可能に装着され、中空円筒体の内側に嵌装されかつ電極構造体が取付けられた軸部材の基軸線方向の位置調整により回転体と電極構造体との基軸線方向の相対位置を調整可能に形成されている。
【0024】
また、請求項3の発明では電極構造体が軸部材に着脱可能に形成され、請求項4の発明では電極ノズルの直径が0.1mm〜1.0mmの中から選択され、請求項5の発明では、電極ノズルから噴射されるめっき液の流速が5m/sec〜20m/secの中から選択されている。
【0025】
さらに、請求項6の発明に係る連続部分めっき装置は、回転体が電極構造体の収容空間と電極ノズルから噴射されるめっき液を流通可能なめっき液流路とを有し、搬送ガイド面が基軸線方向においてめっき液流路を挟む搬送上ガイド面と搬送下ガイド面とから形成されている。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の発明によれば、ノンマスキング方式でかつ静止型電極構造体の電極ノズルからめっき液を噴射させつつ連続部分めっき処理可能に形成されているので、高位置精度な部分めっき処理を確実かつ安定して行えるとともに、給電効率および生産能率が高くかつ装置小型化を促進できる。
【0027】
また、請求項2の発明によれば、請求項1の発明の場合と同様な効果を奏することができ、さらに静止した電極ノズルと連続搬送中のめっき必要部分との相対位置を容易かつ確実に行える。請求項3の発明によれば、請求項2の発明の場合と比較して、さらに装着済み電極構造体と仕様が異なる電極構造体との交換が容易である。
【0028】
また、請求項4の発明によれば、請求項1から請求項3までの各発明の場合と同様な効果を奏することができることに加え、めっき必要部分の大きさに応じた電極ノズルの選択が一段と容易であるとともにめっき不必要部分への無用なめっき処理を確実に防止できる。
【0029】
さらに、請求項5の発明によれば、請求項1から請求項4までの各発明の場合と同様な効果を奏することができることに加え、電極ノズルから噴射されためっき液をめっき必要部分に一段と正確に吹き付けることができかつその後に櫛歯状部分間の空間を通して外側に円滑に排出できる。
【0030】
さらに、請求項6の発明によれば、請求項1から請求項5までの各発明の場合と同様な効果を奏することができることに加え、ワークの幅方向の各端部分を当該各搬送ガイド面に当接できるので、ワークの姿勢を一段と正しくかつ安定した連続搬送を担保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(第1の実施の形態)
本連続部分めっき装置20は、図1〜図4に示す如く、基軸線(Z軸線)を中心に回転可能な回転体30と、複数の電極ノズル53を有し給電済めっき液Qfを径方向に噴射可能に形成された静止型の電極構造体50とを設け、各電極ノズル53から噴射されためっき液Qfを連続搬送中の各めっき必要部分1KYに吹き付けて連続部分めっき処理可能なノンマスキング方式構造に形成されている。
【0032】
まず、被処理理物は、図4,図7に示す長手方向(図7では左右方向)に連続する帯状共通部分1Cと長手方向に不連続でかつ幅方向(上下方向)に延びる複数の櫛歯状部分1Kとを有するリードフレーム(ワーク1F)とされている。搬送中のワーク1Fの板厚(縦断面)方向から見た形態を図2に示す。
【0033】
図4において、ワーク1Fの櫛歯状部分1Kの先端側(図2で上方側、図4では下方側)には、水平部1H(めっき不必要部分1HN)を介して外側に脹らむ凹形状湾曲部1M(めっき不必要部分1MN)が形成されかつ折り返した後の頂き部分1Tが形成されている。櫛歯状部分1Kの選択された一部分がめっき必要部分(1KYおよび1TY)である。
【0034】
すなわち、図2に示す状態では、縦断面が円形状の噴射めっき液Qfを吹き付け可能にセットされた櫛歯状部分1Kの内面側がめっき必要部分1KYであり、これを除く他の部分1H(1HN),1M(1MN),1T(1TY)および帯状共通部分1Cがめっき不必要部分である。頂き部分1Tをめっき必要部分(1TY)とする場合には、搬送ガイド面32に対するセット姿勢を変える。あるいは部分めっき用冶具(20)自体を交換する。
【0035】
因みに、図4に示した各寸法は、非常に小さい。すなわち、リード付き端子部材(1K)の全長Lvが2mmで、リード部(1KY)の長Luが1mm、バリヤ部(1MN)の長Lmが0.5mmかつ突出長Lwが1.5mm、端子部(1TY)の長Ldが0.5mmである。
【0036】
このように、一枚帯板を予めプレス加工して作成されたワーク1Fの中の長手方向に一定ピッチで離隔された不連続状態でかつ幅方向(上下方向)に延びる複数の櫛歯状部分1K(1KY)に部分めっき処理を施すのであるから、例えば図6に示す従来例の場合(長手方向に連続する幅狭ストライプ状のめっき必要部分1RYに部分めっきした後に、プレス加工して図8に示すように個別製品化する。)に比較すれば、生産能率を大幅に向上できかつプレス加工時のバリや皮膜剥が発生しないから皮膜品質を良好に維持できるわけである。
【0037】
なお、ワーク1Fに全体としてニッケルめっきが施されかつめっき必要部分への部分めっきは、金めっきとされている。もとより、部分めっきの種類(金属種類)はこれらに限定されない。
【0038】
図1において、連続部分めっき処理システム10は、この実施の形態の場合は、4台の連続部分めっき装置20をメインタンク11内に組込んだ構成とされ、各連続部分めっき装置20A〜20Dを丁度部分めっき用ヘッド乃至部分めっき用冶具(20)として活用する例である。
【0039】
ワーク1Fは、メインタンク11内に配設されたガイドローラー71を含む連続搬送手段70により、ワーク搬送(X)方向に連続搬送される。このX方向に、上流側タンク12Uとメインタンク11と洗浄タンク14と下流側タンク12Dとが、この順で列配されている。
【0040】
上流側タンク12Uおよび下流側タンク12Dには、連続給電手段90の一部を構成する給電ローラー91が配設されている。この給電ローラー91はめっき電源装置(図示省略)の陰極端子に接続され、めっき電源装置(図示省略)の陽極端子は図2に示す電極構造体50に接続されている。かくして、連続搬送中のワーク1F(1C)に給電(例えば、1.5A/dm)することができる。
【0041】
メインタンク11内には複数の液切り手段16が設けられ、洗浄タンク14内にはワーク洗浄手段が設けられている。
【0042】
連続搬送手段70は搬送ローラー(図示省略)が帯状共通部分1Cを付勢してワーク1Fを設定搬送速度(例えば、2m/sec)でX方向に連続搬送する。ワーク1Fは、メインタンク11内の連続部分めっき装置20A〜20Dを通過する間に部分めっき処理がなされる。
【0043】
連続めっき液供給手段(80)は、図示しない加圧循環ポンプ,配管,弁類を含み、各部分めっき用冶具(20A〜20D)の電極構造体50(めっき液供給口51)に所定圧力に加圧されためっき液を連続供給する。また、メインタンク11や他の各タンク12U,14,12Dから回収しためっき液を再循環使用する。
【0044】
なお、連続めっき液供給手段(80)は、各部分めっき用冶具(連続部分めっき装置20A〜20D)毎に形成してもよい。
【0045】
また、1台の部分めっき用冶具(20)を用いて連続部分めっき処理可能な連続部分めっき装置20を構築することもできる。但し、この実施の形態の場合のように、複数の連続部分めっき装置(部分めっき用冶具)20を用いた連続部分めっきシステムとして構築すれば、めっき膜厚を大きくできる。しかも、各連続部分めっき装置20の給電可能容量を過度に大きくする必要がなくかつ小型化も促進できる。装置20の交換が簡単であるから、連続的生産を担保できる。
【0046】
図2において、回転体30は、全体として中空円筒形状であり、外周面側にワーク1Fと係合して搬送ガイド可能な搬送ガイド面32を有しかつZ軸線を中心にワーク1Fの搬送速度に対応する回転速度で回転可能に形成されている。
【0047】
この回転体30は、Z軸線を中心としてベース24に固着された中空円筒体24の外側にベアリング25を介して、回転可能に装着されている。一体的な起立円筒部31の外周面が搬送ガイド面32とされ、ワーク1Fの帯状共通部分1Cの内側と係合しワーク1Fの搬送円滑化を図る。
【0048】
搬送ガイド面32の下方に設けられた鍔状部分(上面部分)33は、ワーク1Fの端部を支持することでワーク1Fの上下方向の位置を一定の位置に保持する機能を持つワーク位置保持部34を形成する。但し、ワーク1Fの剛性やワーク連続搬送手段70からの張力の大きさによっては、省略できる場合もある。
【0049】
電極構造体50は、図3(横断面図)に示す如く、Z軸線を中心とする仮想円軌跡Rの周方向に離隔配設された複数の小径孔形状の電極ノズル53を有しかつ電気的良導体から形成され、内部(めっき液貯留部52)に供給されためっき液に給電可能かつ給電されためっき液Qfを各電極ノズル53からその径方向に噴射可能である。各電極ノズル53は、仮想円軌跡Rの法線方向に延びる形態である。
【0050】
なお、電極構造体50は、少なくとも連続めっき液供給手段(80)から図2のめっき液保留部52に供給されためっき液に接触可能な内側面が電気的良導体からなる給電面として形成されていればよい。必ずしも全体を電気的良導体とする必要はない。
【0051】
一方において、この実施の形態では、各電極ノズル53の内面(小径孔内周全壁面)も重要な給電面を形成する。上下方向に対峙する給電面(平行壁面)から給電する先提案装置の場合に比較して、めっき液の単位量当りの実質給電面積を能率よく増大することができる。このため、給電効率が高くまた大電流給電化によるめっき処理高速化を促進できる。
【0052】
また、図2に示すノズル形成部56に形成される給電ノズル53の径(ラジアル)方向寸法を大きくすれば、給電能率を向上できる。また、ノズル先端縁54を、搬送ガイド面32に係合されたワーク1Fのめっき必要部分1KYに近づければ近づけるほど、給電効率を向上できる。
【0053】
電極ノズル53の配設角度範囲θは、図3に示すように、ワーク1Fが回転体30の搬送ガイド面32に係合する角度範囲(図3の場合は、180度を示す。)よりも、小さな角度範囲(θ)に選択決定されている。めっき液の径方向全周一律噴流方式である先提案装置の一つの問題点を解消するためである。つまり、搬送ガイド面32に係合していない場所(図3中の上流側位置PTNUおよび下流側位置PTND)において発生するめっき液の乱流や拡散により、当該位置を通過するワーク1Fの不特定部位(特に、めっき必要部分1KYの上下近傍…1C,1HN・1MN)に不必要で劣悪品質のめつき皮膜が析出されるという現象を、一掃化する。
【0054】
ここに、電極ノズル53の直径および噴出めっき液の流速に関しては、従来部分めっき装置や先提案装置との比較において、大いに異なる固有的で格別な値を選択するのが好ましい。
【0055】
すなわち、各電極ノズル53の直径は0.1mm〜1.0mmの中から選択されている。この実施の形態では、めっき必要部分1KYの大きさ(前後方向寸法および左右方向寸法の大きい方)に対応する寸法(直径…この実施の形態では0.3mm)のめっき液流Qfを生成・噴射させるために0.3mmに選択してある。この意味において、1.0mmを超える直径を選択可能に構築することもできる。
【0056】
しかし、1.0mmを超えるような比較的に大きな直径を選択すると、噴射めっき液の液流一直線性が失われ易い。つまり、各電極ノズル53の製作精度上の問題から直径にある範囲(数%)内でのバラツキが生じ得るが、このバラツキによる径の変化分(絶対値)が相対的に大きくなる。つまりは、その絶対値が大きいほど噴射液流の横断面積(直径)のバラツキも大きくなるので、めっき位置精度の保障が難しくなる。他方、0.1mm未満の極小径にすると、ノズル内流路抵抗が非常に大きくなる。当然に、電極構造体50(51,52)への供給めっき液の圧力を過大にしなければならない。この液圧力の超過大化は、装置全体構築上、技術的・経済的に非常な不利を招来する。かくして、各電極ノズル53の直径は0.1mm〜1.0mmの中から選択すべきである。一段と安定した実施のためには、0.3mm〜0.6mmの中から選択することが好ましい。
【0057】
また、電極ノズル53から噴射されるめっき液Qfの流速は、5m/sec〜20m/secの中から選択されている。噴射めっき液の液流一直線性を担保するためである。5m/sec未満では電極ノズル53の直径過大化の場合と同様な問題が、20m/secを超えると電極ノズル53の直径過小化の場合と同様な問題が生じる虞が強いからである。
【0058】
なお、運用上の実際においては、電極ノズル53の直径,めっき液の種類・粘度やワーク1Fの形態・剛性等との関係においても、見直しつつ最適値を決定すべきである。この実施の形態では、電極ノズル53の直径を0.3mmに選択した場合には10±5m/secにすることで良好な結果を得ることができた。
【0059】
回転体30および電極構造体50のZ軸線方向の相対位置は、各電極ノズル53から噴射されためっき液Qfが連続搬送中の各めっき必要部分1KYに吹き付けることができる状態として保持される。この実施の形態では、電極構造体50を中空円筒体24の内側に嵌装された軸部材27の上方部に取付けられ、この軸部材27のZ軸線方向の位置調整により回転体30と電極構造体50とのZ軸線方向の相対位置を調整可能に形成されている。
【0060】
中空円筒体24および軸部材27の双方が、可動構造体(回転体30)と異なる静止構造体であるから、例えば中空円筒体24の位置に対する軸部材27の位置を上下方向にずらせて固定することは簡単で、手段の具現化も極めて簡単である。例えば、軸部材27に設けた上下方向の設置位置が異なる複数の横穴の中から選択した1つの横穴に、中空円筒体24側のピン部材を挿入する構造とすればよい。
【0061】
また、電極構造体50は、軸部材27に着脱可能である。この実施の形態では、図2に示すボルト29の緊締弛緩により着脱できる。電極ノズル53の仕様等が異なる別の電極構造体50を簡単に交換することができる。この点からも、ワークの種類・形態やめっき必要部分の大きさ等に対する適応性が広い。
【0062】
各電極ノズル53から噴射された給電済めっき液Qfは、図2のめっき必要部分1KYに吹き付けられ、部分めっき処理を行なう。その後に、図7に示す櫛歯状部分1Kの間(左右方向の隙間)を通過して進み、落下かつ流動してメインタンク11に回収される。その後に、再循環利用される。
【0063】
電極構造体50の上方側には、下方側の回転体30に対応する形態の静止構造物(カバー部材36)が設けられている。上方側から回転体30へミス接触することによる危険性を未然排除する。さらに、この実施の形態では、回転体30の起立円筒部31に対応する位置に垂下円筒部37を設け、この下方先端を補助電極として利用可能に形成してある。
【0064】
しかして、この第1の実施の形態に係る静止型電極構造体50を用いかつノンマスキング方式とされた連続部分めっき処理装置20によれば、高位置精度な部分めっき処理を確実かつ安定して行えるとともに、給電効率および生産能率が高くかつ装置小型化を促進できる。
【0065】
また、軸部材27のZ軸線方向の位置調整により回転体30と電極構造体50とのZ軸線方向の相対位置を調整可能に形成されている、電極構造体50の電極ノズル53と回転体30に搬送ガイドされためっき必要部分1KY(ワーク1F)との相対位置を容易かつ確実に行える。しかも、電極構造体50がボルト29の操作で着脱可能に形成されているから、装着済み電極構造体50と仕様が異なる電極構造体50との交換が容易である。
【0066】
また、電極ノズル53の直径がめっき必要部分1KYの大きさに応じた0.3mmに選択されているので、めっき不必要部分(1MN等)への無用なめっき処理を確実に防止できる。しかも、噴射めっき液の流速を高速(10±5m/sec)に選択してあるから、めっき必要部分1KYに一段と正確に吹き付けることができかつその後に櫛歯状部分間の空間(隙間)を通して外側に円滑に排出できる。電極構造体50およびその周辺にめっき液が付着することによる汚れが生じることがない。
【0067】
さらに、回転体30の全周(360度)に設けられたスリット部からめっき液を噴流する先提案装置の場合の問題点(全周に渡って水平であるべき円盤形状液薄膜に、上下方向やねじれ方向の乱れ・拡散が生じる。)を一掃できるから、バラツキのない高品質(高さ位置方向のめっき精度が高い。)で良質で均一な皮膜を析出させることができる。
【0068】
さらに、回転体30の外周面(32)に係合状態になる以前およびめっき処理後の非係合状態となった以降の一定期間内にワーク1Fにめっき液が付着(接触)するという先提案装置の問題点(バラツキが激しくかつ低品質で無用なめっき皮膜が析出される現象が発生する。)を一掃化することができる。
【0069】
さらにまた、めっき液を全周方向に連続する1つのノズル部から径方向全周に一律的に噴流させる構造(先提案装置)の場合に比較して、めっき液の単位量当りの給電面積を簡単に増大できるから、給電能率を大幅に向上でき、生産高速化にも有益である。
【0070】
さらにまた、電極構造体50が先提案装置(回転体とともに同期回転する電極構造)の回転型とは相異する静止型に形成されているから、回転体30の一段の回転高速化による大幅な生産性向上を期待できる。装置小型化も促進できる。
【0071】
(第2の実施の形態)
この第2の実施形態は、図5に示される。この実施の形態に連続部分めっき装置(20)の基本的構成・機能は第1の実施の形態の場合(図1〜図4)と同様とされているが、回転体30をワーク形態に対応させた構造に形成してある。
【0072】
ワーク1Fは、側面形状(1F…1C、1K)が図7に示す形状で、板厚方向の形状が図8(C)に示す形状(1A)である。なお、図8(C)では、めっき必要部分1DY,めっき不必要部分1MN,めっき必要部分1UYの順とされているが、この実施の形態の場合は、図5に示すようにめっき不必要部分1DN,めっき必要部分1MY,めっき不必要部分1UNの順であるものとする。
【0073】
図5において、回転体30は、電極構造体50を収容可能な収容空間39Sと,この収容空間39S内に収容された電極構造体50の電極ノズル53から連続搬送中のめっき必要部分1MYに向けて噴射されるめっき液Qfを流通可能なめっき液流路39Hとを有し、搬送ガイド面32がZ軸線方向においてめっき液流路39Hを挟む搬送上ガイド面32Uと搬送下ガイド面32Dとから形成されている。
【0074】
回転体30は、この実施の形態の場合は、上下1対の回転体30U,30Dの組合わせとされ、いずれも上下の中空円筒部24U,24Dにベアリング25U,25Dを介して回転可能に装着されている。なお、上方の中空円筒部24Uの中空部はめっき液供給口51として利用される。
【0075】
かくして、ワーク1Fのめっき必要部分1MYを上下に挟むめっき不必要部分1DN,1UNを対応する搬送ガイド面32U,32Dに係合させられるから、ワーク1Fの姿勢を一段と正しくかつ安定した連続搬送ができる。長い櫛歯状部分1Kを持つワーク1Fに対しては、一段と有効である。
【0076】
もとより、第1の実施の形態の場合と同様に、高位置精度な部分めっき処理を確実かつ安定して行えるとともに、給電効率および生産能率が高くかつ装置小型化を促進できる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、長手方向に連続する帯状共通部分と不連続な複数の櫛歯状部分とを有するプレス加工後のワーク(例えば、リードフレーム等)にノンマスキングで部分めっき処理を施す場合に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る連続部分めっきシステムの全体構成を説明するための平面図である。
【図2】同じく、連続部分めっき装置の要部を説明するための縦断面図である。
【図3】同じく、電極構造体および電極ノズルを説明するための図2の矢視線A−Aに基く横断面図である。
【図4】ワークのめっき必要部分およびめっき不必要部分を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る連続部分めっき装置の要部を説明するための縦断面図である。
【図6】連続形状の被処理物(ワーク)を説明するための図である。
【図7】櫛歯状部を有する不連続形状被処理物(ワーク)を説明するための図である。
【図8】ワークのめっき必要部分およびめっき不必要部分の各例示を説明するための図である。
【符号の説明】
【0079】
1 ワーク(被処理物)
1C 帯状共通部分
1K 櫛歯状部分
N めっき不必要部分
Y めっき必要部分
10 連続部分めっき処理システム
11 メインタンク
20 連続部分めっき装置
24 中空円筒体
27 軸部材
30 回転体
32 搬送ガイド面(外周面)
32U 搬送上ガイド面
32D 搬送下ガイド面
34 ワーク位置保持部
39R めっき液流路
50 電極構造体
53 電極ノズル
54 ノズル先端縁
70 連続搬送手段
80 連続めっき液供給手段
90 連続給電手段
91 給電ローラー(陰極電極)
Z 縦軸線(基軸線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に連続する帯状共通部分と長手方向に不連続でかつ幅方向に延びる複数の櫛歯状部分とを有する被処理物を連続搬送しつつ櫛歯状部分のめっき必要部分に連続してめっき処理を施すための連続部分めっき装置であって、
外周面側に前記被処理物と係合して搬送ガイド可能な搬送ガイド面が形成されかつ基軸線を中心に前記被処理物の搬送速度に対応する回転速度で回転可能な回転体と、基軸線を中心とする仮想円軌跡の周方向に離隔配設された複数の小径孔形状の電極ノズルを有するとともに内部に供給されためっき液に給電可能かつ給電されためっき液を各電極ノズルからその径方向に噴射可能に形成された電極構造体とを設け、
電極ノズルの配設角度範囲が回転体の搬送ガイド面に被処理物が係合している角度範囲よりも小さく選択され、回転体および電極構造体の基軸線方向の相対位置を各電極ノズルから噴射されためっき液が連続搬送中のめっき必要部分に吹き付けることができる状態として保持可能に形成されている、連続部分めっき装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記回転体が基軸線を中心とする中空円筒体の外側に回転可能に装着され、前記電極構造体が中空円筒体の内側に嵌装された軸部材の上方部に取付けられ、この軸部材の基軸線方向の位置調整により前記回転体と前記電極構造体との基軸線方向の相対位置を調整可能に形成されている、連続部分めっき装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記電極構造体が前記軸部材に着脱可能に形成されている、連続部分めっき装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記電極ノズルの直径が0.1mm〜1.0mmの中から選択されている、連続部分めっき装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記電極ノズルから噴射されるめっき液の流速が5m/sec〜20m/secの中から選択されている、連続部分めっき装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記回転体が、前記電極構造体を収容可能な収容空間と,この収容空間内に収容された前記電極構造体の電極ノズルから連続搬送中のめっき必要部分に向けて噴射されるめっき液を流通可能なめっき液流路とを有し、前記搬送ガイド面が基軸線方向においてめっき液流路を挟む搬送上ガイド面と搬送下ガイド面とから形成されている、連続部分めっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−225677(P2006−225677A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37367(P2005−37367)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(593103021)三友エンジニアリング株式会社 (3)
【Fターム(参考)】