説明

連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置および制御方法

【課題】非定常バルジングの変動周期を高精度に同定し、制御設定パラメータを安定的に自動供給可能な連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置を提供する。
【解決手段】モールド湯面レベル制御装置は、注湯手段の開度を調節する開度制御部と、金属溶湯をモールドに注湯する際の外乱量推定値を算出する外乱推定部と、外乱量推定値と鋳造速度とを取得するデータ取得部と、外乱量推定値の時系列データを鋳造長に基づくデータに変換して、当該データをオーバーサンプリングしてオーバーサンプリング後データを生成するオーバーサンプリング部と、オーバーサンプリング後データについてFFT解析を行い、非定常バルジング発生ロールピッチの距離周波数スペクトルを算出するFFT処理部と、距離周波数スペクトルのピークを検出して非定常バルジング発生ロールピッチを算出し非定常バルジングの変動周期を算出するピーク検出部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属溶湯の連続鋳造において、タンディッシュに供給・貯留された金属溶湯を浸漬ノズルを介してモールド内に注入する際、湯面レベルが目標値に一致するように制御する連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼等の金属の溶湯の連続鋳造機においては、図13に示すように、金属溶湯が取鍋からタンディッシュ1に一旦供給・貯留された後、タンディッシュ1に取り付けられた浸漬ノズル2を介して、下端が開放されたモールド3(鋳型)内に連続的に注入される。同時に、モールド3内の金属溶湯は、水冷されたモールド3で冷却されて表面から凝固殻4を形成しながら、対向して配設され複数対のピンチロール5によって挟まれながら、モールド3下端部から連続的に引き出されていく。更に、引き出された内部に未凝固部を有する金属片を搬送しながら水スプレー冷却6により冷却を進めることで、内部まで凝固せしめてスラブ、ブルーム、ビレットなど断面形状が異なる各種の鋳片7を製造する。
【0003】
モールド3下の複数対のピンチロール5は所定の間隔で配設されているために、内部に未凝固部を有する鋳片が、ピンチロール対の間の部分でビヤ樽状に顕著に膨らむことがある。この現象は非定常バルジング8と呼ばれている。
【0004】
連続鋳造機では、溶湯の温度や含有する元素の組成によっては非定常バルジング、及び、浸漬ノズル2の詰まりやその内部凝固部の剥離等の外乱が発生することで、モールド3内の湯面レベル9(湯面高さ位置)が変動することがある。湯面レベル9の変動量が大きいと凝固開始点である湯面及びその下方における凝固殻4の成長が不安定化して、凝固殻4の一部が破壊されるブレークアウトに至り、連続鋳造の安定操業を阻害することがある。また、湯面レベル9の変動量が大きいと、モールド3内の湯面上に散布されている、モールド壁と凝固殻4との潤滑材として働くパウダーが金属溶湯内部へ巻き込まれて、凝固後の鋳片中の介在物となり、鋼片の品質低下を起こすという問題が発生する。
【0005】
そのため、連続鋳造機では、モールド内の湯面レベル9を渦流式レベル計10等で連続的に検出し、その検出値に基づいてタンディッシュ1からモールド3内への溶湯注入量を、タンディッシュ1と浸漬ノズル2との接続部に設置されたスライディングノズル11、又は、ストッパーノズル12の開度を計算する開度演算部13を備えた湯面レベル制御器15により調整することで、湯面レベル9を一定に保持するという制御を実施している。かかる制御は連続鋳造機のモールド湯面レベル制御と呼ばれている。
【0006】
連続鋳造機のモールド3内のモールド湯面レベル制御(以下、「湯面レベル制御」と略記する。)においては、PI制御やPID制御が多く用いられる。また、PI制御等の替わりとしてSAC(Simple Adaptive Control:単純適応制御)やH∞制御等が用いられることもある。
【0007】
例えば、湯面レベル制御では、非定常バルジングの発生に伴いモールド3内の湯面レベル9が周期的に変動するのであるが、PI制御やSACなどの単一のフィードバック制御器だけではこの周期性レベル変動を十分に抑制することが困難である。近年は、生産性向上の観点から鋳造速度の高速化が進み、従来よりも非定常バルジングが発生しやすく、また、その変動周期も短くなってきている。高速鋳造では凝固殻が薄くなりブレークアウトの危険性が増すことから、非定常バルジング起因の周期性レベル変動を効果的に抑制する湯面レベル制御へのニーズは極めて高く、鉄鋼各社より種々の制御方式が提案されている。なお、以下では、非定常バルジング起因の周期性レベル変動対策用の湯面レベル制御を「周期性変動抑制制御」と略記する。
【0008】
周期性変動抑制制御には様々な方法があるが、周期性レベル変動の変動周期が制御設定パラメータとして必要になる点が全ての手法に共通する。これは狙いとする変動周期における系の感度関数を局所的に小さくすることで周期性レベル変動を抑制するように制御器設計を行うためである。そのため、周期性変動抑制制御の効果を享受するには、非定常バルジングに伴う湯面レベル変動の変動周期の高精度な同定・推定が不可欠である。変動周期の推定値が大きく外れれば、所望の制御性能は実現されずに周期性レベル変動の発生を抑制できないばかりか、反ってレベル変動を悪化させる虞もある。しかしながら、従来の湯面レベル変動の変動周期の同定・推定技術には課題があり、周期性変動抑制制御の適切な制御設定パラメータを安定的に自動供給できなかった。
【0009】
これまでにも連続鋳造機における非定常バルジングの発生に伴う周期性レベル変動の変動周期の同定・推定技術は提案されてきた。例えば、特許文献1には、外乱推定オブザーバにより湯面レベル変動の原因である外乱量を推定し、外乱量のFFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)により計算される周波数スペクトルから変動周期を求める手法が開示されている。この手法は周期性変動抑制制御により湯面レベル変動が抑制されても外乱量には非定常バルジング発生に伴う周期成分が表れるため、変動周期の同定方法として有効な手法である。
【0010】
また、特許文献2には、湯面レベルを入力として、評価関数を最小にするパラメータとして変動周期を最急降下法によりリアルタイムに求める手法が開示されている。
【0011】
さらに、特許文献3には、解析対象とする時系列データに対して、2のN乗個のデータのFFTにより計算される周波数スペクトルと、最新の2のM乗個(N>M)のデータ以外をゼロにセットした場合のFFTにより計算される周波数スペクトルを乗算平均することで新たに周波数スペクトルを定義する手法が開示されている。これにより、複数の変動周波数成分が存在し、波形に唸りが生じている場合に、唸りの節の区間において、見掛け上、変動成分が消滅している為に発生するピークの誤検知を防止することを可能とする。
【0012】
また、特許文献4には、湯面レベルのFFTにより計算される周波数スペクトルから変動周期を求める手法が開示されている。
【0013】
さらに、特許文献5には、ピンチロールの制御電流を複数箇所で測定し、変動量が最大となるセグメントにおいて非定常バルジングが発生していると推定し、当該セグメントのロールピッチを鋳造速度で割り戻すことで変動周期を推定する手法が開示されている。
【0014】
そして、特許文献6には、特許文献1と同様に外乱推定オブザーバにより湯面レベル変動の原因である外乱量を推定し、外乱量のFFTにより計算される周波数スペクトルから変動周期を求める手法が開示されている。特許文献6の手法では、鋳造長に基づくデータに変換した上で距離の周波数スペクトルを計算することでロールピッチを推定し、鋳造速度で割り戻すことで変動周期を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−129647号公報
【特許文献2】特開2001−259814号公報
【特許文献3】特開2001−337703号公報
【特許文献4】特開2007−253170号公報
【特許文献5】特開2007−260693号公報
【特許文献6】特開2008−290082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、上記の従来技術には、適用範囲が限定される、あるいは、具体的なピーク検出方法が明示されておらず、実プラントへの適用にあたっては以下に示す課題があり、周期性変動抑制制御の制御設定パラメータを安定的に自動供給することが困難である。
【0017】
すなわち、特許文献1には、周波数スペクトルからピーク検出の具体的な方法は一切記載がない。また、かかる手法では時系列データから直接FFTを計算するために鋳造速度変化部においてスペクトルの推定精度が劣化してしまう。図14に示すように、非定常バルジングに伴う周期性レベル変動周期Tは、鋳造速度をVc[m/min]、ロールピッチをRp[mm]とした場合に、下記数式1の関係が成立する。
【0018】
【数1】

・・・(数式1)
【0019】
このとき、鋳造速度変化部では周期性レベル変動周期Tは徐々に変化していくため、時系列データに基づきFFTでは正確な周期が同定できなくなる。このため、実プロセスでは鋳造速度加速部にて非定常バルジングが発生し始めることが多い。
【0020】
特許文献2に記載の手法では、推定できる変動周期は唯一つであり、複数の周波数成分のピークが存在する場合は有効に機能しないという問題がある。
【0021】
特許文献3に記載の手法では、特許文献1と同じく時系列データから直接FFTを計算するために鋳造速度変化部においてスペクトルの推定精度が劣化してしまう。また、かかる手法では、推定精度を高めるためには最小限のデータ群(2のM乗個)をある程度大きくとり、かつ、サンプリング時間を細かくする必要があり、演算量が大きくなりやすい。
【0022】
特許文献4に記載の手法では、周波数スペクトルの振幅成分が最大になる点から変動周期を求めるため、推定する変動周期は唯一つに限定される。また、制御により湯面レベル変動が抑制された場合には推定がうまく行かなくなる場合がある。さらに、時系列データから直接FFTを計算するために鋳造速度変化部においてスペクトルの推定精度が劣化してしまうという問題がある。
【0023】
特許文献5に記載の手法では、制御電流の最大になるセグメントから変動周期を求めるため、推定する変動周期は唯一つに限定される。しかし、実プラントにおける非定常バルジングの変動周期は、当該セグメントのロールピッチを鋳造速度で割り戻して得られるノミナルの変動周期に揺らぎ成分(バイアス成分を含む)が加わった形で表れることがある。非定常バルジングが発生するセグメントを同定してから、ロールピッチRpと鋳造速度Vcから周期性レベル変動周期Tを算出する場合、機械設計で定められたロールピッチ(ノミナル値)からずれたロールピッチで非定常バルジングが発生すると、推定精度は劣化してしまう。このため、当該手法では変動周期の推定精度に限界が生じることになる。
【0024】
特許文献6に記載の手法では、距離周波数スペクトルからピーク検出を行うため、特許文献1、3および4の方法による鋳造速度変化部における推定精度の劣化の問題は回避できる。しかし、かかる手法では非定常バルジングが発生すると予測されるセグメントのロールピッチ近傍に検出範囲を限定しており、当該セグメントが時間と共に大きく移動する場合には追従できないという問題があった。
【0025】
また、上記特許文献には、非定常バルジングの発生周期の周波数スペクトルにおいて複数のピークが局所的に乱立する場合、例えば、非定常バルジングの変動周期に揺らぎ成分が加わった場合のピーク検出方法について具体的な記述がない。鋳造速度Vcおよび発生するロールピッチRpが一定の場合でも、非定常バルジングの周期性レベル変動周期Tが長周期で変動する場合がある。このような場合には、FFTで得られる周波数スペクトルは中心となるピーク近傍に複数のピークが乱立することになり、従来技術では代表値としての周期性レベル変動周期Tを自動的に定義することができない。
【0026】
前述の通り、周期性変動抑制制御は、狙いとする変動周期における系の感度関数を局所的に小さくすることで周期性レベル変動を抑制するように制御器設計を行う。周期性変動抑制制御の対応できる変動周期が単一であれば、複数のピーク検出結果から代表値となる変動周期を定義する必要がある。また、特許文献1の複数の変動周期に対しても対応できる制御方式においても、狙いの変動周期が局所的に集中するような制御器は制御出力がハンチング気味になることから、複数のピーク検出結果から代表値となる変動周期を定義する必要がある。
【0027】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、非定常バルジングの発生に伴う周期性レベル変動の変動周期を高精度に同定し、周期性変動抑制制御の制御設定パラメータを安定的に自動供給することが可能な、新規かつ改良された連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、金属溶湯の連続鋳造機でモールド内の湯面レベルを測定し、湯面レベル測定値と湯面レベル目標値との偏差を用いて求めた開度指令に従ってモールドへの注湯手段の開度を、湯面レベルを湯面レベル目標値に保つべく制御する連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置が提供される。かかるモールド湯面レベル制御装置は、湯面レベル測定値と湯面レベル目標値とに基づいて、注湯手段の開度を調節する開度制御部と、湯面レベル測定値と注湯手段の開度実績とに基づいて、金属溶湯をモールドに注湯するときの外乱を推定して外乱量推定値を算出する外乱推定部と、外乱推定部より算出された外乱量推定値と、連続鋳造機の鋳造速度とに基づいて、非定常バルジングの変動周期を算出するバルジング可視化監視部と、を備え、バルジング可視化監視部は、外乱量推定値と鋳造速度とを取得するデータ取得部と、データ取得部により所定期間において取得された外乱量推定値の時系列データを、鋳造速度の積分値である鋳造長に基づくオーバーサンプリング前データに変換し、鋳造長に基づくオーバーサンプリング前データをオーバーサンプリングしてオーバーサンプリング後データを生成するオーバーサンプリング部と、鋳造長に基づくオーバーサンプリング後データについて高速フーリエ変換解析を行い、非定常バルジングの発生する非定常バルジング発生ロールピッチの距離周波数スペクトルを算出するFFT処理部と、距離周波数スペクトルのピークを検出して非定常バルジング発生ロールピッチを算出し、非定常バルジング発生ロールピッチと鋳造速度とに基づいて非定常バルジングの変動周期を算出するピーク検出部と、を備えることを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、連続鋳造機の鋳型内部における湯面レベル変動の原因となる外乱を湯面レベル測定値、スライディングノズル開度実績に基づいて推定して、外乱量推定値を算出する。そして、外乱量推定値の時系列データを鋳造長に基づくデータに変換し、当該鋳造長に基づくデータをオーバーサンプリングしてから高速フーリエ変換解析に供するようにする。これより距離周波数スペクトルが算出され、距離周波数スペクトルのピークを検出することによって非定常バルジング発生ロールピッチが算出される。かかる非定常バルジング発生ロールピッチと鋳造速度とに基づいて、非定常バルジングの変動周期を取得することができる。これにより、非定常バルジングの発生に伴う周期性レベル変動の変動周期を高精度に同定し、周期性変動抑制制御の制御設定パラメータを安定的に自動供給することができる。
【0030】
ここで、オーバーサンプリング部は、鋳造長の刻み幅を設定し、オーバーサンプリング前データの最前および最後のデータと、オーバーサンプリング後データの最前および最後のデータとを一致させ、鋳造長の刻み幅においてオーバーサンプリング前データが存在しない非存在区間のデータを、当該非存在区間の前後に位置するオーバーサンプリング前データから線形補間により算出して、オーバーサンプリング後データを生成してもよい。
【0031】
また、FFT処理部は、オーバーサンプリング後データの平均値を計算する平均値計算部と、オーバーサンプリング後データから平均値を除去するバイアス成分除去部と、バイアス成分除去部により処理されたオーバーサンプリング後データに対して、窓関数処理を行う窓関数処理部と、窓関数処理されたオーバーサンプリング後データに対して、高速フーリエ変換解析を行い、非定常バルジング発生ロールピッチの距離周波数スペクトルを算出するFFT算出部と、を備えてもよい。
【0032】
さらに、ピーク検出部は、距離周波数スペクトルにおいて鋳造長の刻み幅で隣接する距離周波数の振幅の差分をそれぞれ算出し、算出された差分の前後において、差分の値の正負が反転する位置をピーク位置として検出してもよい。
【0033】
ピーク検出部は、検出したピーク値が、所定の距離周波数範囲および所定の振幅範囲によって規定されるピーク検出範囲に属するか否かを判定し、ピーク検出範囲に属するピーク値を、ピーク位置候補としてもよい。
【0034】
ピーク検出部は、距離周波数に基づいてピーク位置候補をグループ化し、グループ化されたピーク位置候補を合成して、一の合成ピーク位置の距離周波数を算出し、合成ピーク位置の距離周波数に基づいて、非定常バルジング発生ロールピッチの代表値を算出してもよい。
【0035】
ピーク検出部は、距離周波数スペクトルの最大振幅値が所定の振幅閾値より大きいとき、非定常バルジング発生ロールピッチの代表値に基づいて非定常バルジングの変動周期を算出してもよい。
【0036】
ピーク検出部は、合成ピーク位置の数が所定のピーク数閾値以下であるとき、非定常バルジング発生ロールピッチの代表値に基づいて非定常バルジングの変動周期を算出してもよい。
【0037】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、金属溶湯の連続鋳造機でモールド内の湯面レベルを測定し、湯面レベル測定値と湯面レベル目標値との偏差を用いて求めた開度指令に従ってモールドへの注湯手段の開度を、湯面レベルを湯面レベル目標値に保つべく制御する連続鋳造機のモールド湯面レベル制御方法が提供される。かかるモールド湯面レベル制御方法は、湯面レベル測定値と湯面レベル目標値とに基づいて、注湯手段の開度を調節するステップと、湯面レベル測定値と注湯手段の開度実績とに基づいて、金属溶湯をモールドに注湯するときの外乱を推定して外乱量推定値を算出するステップと、外乱量推定値と、連続鋳造機の鋳造速度とを取得するステップと、所定期間において取得された外乱量推定値の時系列データを、鋳造速度の積分値である鋳造長に基づくオーバーサンプリング前データに変換し、鋳造長に基づくオーバーサンプリング前データをオーバーサンプリングしてオーバーサンプリング後データを生成するステップと、鋳造長に基づくオーバーサンプリング後データについて高速フーリエ変換解析を行い、非定常バルジングの発生する非定常バルジング発生ロールピッチの距離周波数スペクトルを算出するステップと、距離周波数スペクトルのピークを検出して非定常バルジング発生ロールピッチを算出し、非定常バルジング発生ロールピッチと鋳造速度とに基づいて非定常バルジングの変動周期を算出するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように本発明によれば、非定常バルジングの発生に伴う周期性レベル変動の変動周期を高精度に同定し、周期性変動抑制制御の制御設定パラメータを安定的に自動供給することが可能な連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置および制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係るバルジング可視化監視装置の構成を示すブロック図である。
【図2A】同実施形態に係るバルジング可視化監視装置による非定常バルジングの変動周期取得処理を示すフローチャートである。
【図2B】同実施形態に係るバルジング可視化監視装置による非定常バルジングの変動周期取得処理を示すフローチャートである。
【図2C】同実施形態に係るバルジング可視化監視装置による非定常バルジングの変動周期取得処理を示すフローチャートである。
【図3】同実施形態に係る外乱推定オブザーバの構成を示すブロック図である。
【図4】鋳造長の規定を示す説明図である。
【図5】オーバーサンプリングの考え方を示す説明図である。
【図6】オーバーサンプリングにおける線形補間の概略を示す説明図である。
【図7】FFT解析による距離周波数スペクトルの計算処理を示すフローチャートである。
【図8】距離周波数スペクトルの一例を示す説明図である。
【図9】ピーク検出の基本的な考え方を示す説明図である。
【図10】ピーク検出におけるピーク誤検出防止の考え方を示す説明図である。
【図11】ピーク位置候補のグルーピングの考え方を示す説明図である。
【図12】グルーピング処理を示すフローチャートである。
【図13】湯面レベル制御装置を備えた連続鋳造機を示す概略図である。
【図14】連続鋳造機における非定常バルジングと変動周期との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0041】
[1.バルジング可視化監視装置による処理の概略]
まず、本発明の実施形態に係るバルジング可視化監視装置による処理の概略について説明する。バルジング可視化監視装置は、連続鋳造機のモールド湯面レベル制御に用いる周波数情報を取得するための装置である。バルジング可視化監視装置は、以下の処理を行う。
【0042】
<1.外乱推定量の時系列データを鋳造長に基づくデータへ変換してからFFT解析により距離周波数スペクトルを計算>
(1−1)外乱推定オブザーバにより、湯面レベル変動の原因となる外乱が、湯面レベル測定値、スライディングノズル開度実績に基づいて推定される(図2A:S101)。
(1−2)バルジング可視化監視装置は、時系列データを鋳造長データに変換する。すなわち、外乱推定量の時系列データを一定時間幅でサンプリングし(図2A:S102)、規定時間分の時系列データをバッファする。(図2A:S103)ただし、データバッファはバッファサイズよりも小さい一定周期で更新する(図2A:S104)。そして、鋳造速度の積分値である鋳造長を計算して(図2A:S105)、外乱推定量の時系列データを鋳造長データと紐付けることで鋳造長に基づくデータに変換する(図2A:S106)。
(1−3)バルジング可視化監視装置は、鋳造長に基づく外乱推定量データのサンプル数を2のN乗個にオーバーサンプリングする(図2A:S107)。これにより鋳造長に基づく外乱推定量データを等間隔ピッチで得る。
(1−4)バルジング可視化監視装置は、鋳造長ベースのデータをFFT解析に供することによって非定常バルジングの発生するセグメントのロールピッチの距離周波数スペクトルを計算する(図2A:S108)。
【0043】
<2.距離周波数スペクトルのピーク検出・合成により非定常バルジングが発生するセグメントのロールピッチの代表値を計算>
(2−1)バルジング可視化監視装置は、距離周波数スペクトルのピークを検出する。すなわち、距離周波数スペクトルを最大振幅で割り戻して0〜1の範囲に規格化し(図2B:S109)、規格化された距離周波数スペクトルの微分係数を求め(図2B:S110)、微分係数の符号が反転することによりピークを検出する(図2B:S111)。距離周波数が一定値範囲内にあり、かつ、振幅が閾値以上となる点をピーク位置候補とする(図2B:S112)。
(2−2)バルジング可視化監視装置は、距離周波数スペクトルのピークを合成する。すなわち、隣接するピーク位置候補の距離周波数の比が閾値以下のものをグルーピングし(図2B:S113)、同一グループのピーク位置候補の振幅を重み係数とした当該ピーク位置候補の距離周波数の一次結合として合成ピーク位置の距離周波数を計算し(図2B:S114)、合成ピーク位置の距離周波数の逆数を非定常バルジングの発生するセグメントのロールピッチの代表値とする(図2B:S115)。
【0044】
<3.ロールピッチから湯面レベル変動周期を計算>
(3−1)ロールピッチを更新する。すなわち、FFT解析の振幅最大値が閾値以上か(図2C:S116)、また、合成ピーク数(ロールピッチ代表値の個数)が閾値以下かを判定する(図2C:S117)。これらの判定により計算された最新のロールピッチをロールピッチ設定値として更新する(図2C:S118)、あるいは、前回値を保持する(図2C:S119)かを決定する。
(3−2)湯面レベル変動周期を計算する。このとき、上記ロールピッチを鋳造速度で割り戻して非定常バルジングの変動周期を求めることにより、周期性外乱抑制制御の適切な制御設定パラメータを自動的に提供する(図2C:S120)。
【0045】
本実施形態に係るバルジング可視化監視装置を用いることにより、鋳造速度変化部を含み、かつ、周期性外乱抑制制御により湯面レベル変動が十分に抑制されている運転状態においても非定常バルジングの変動周期の変化を迅速に検出し、かつ同時に、非定常バルジングの発生周期に揺らぎ成分が存在する場合においても周期性外乱抑制制御の適切な制御設定パラメータを自動的に提供することが可能となる。以下、本実施形態に係るバルジング可視化監視装置の構成と、これによる処理について詳細に説明していく。
【0046】
[2.バルジング可視化監視装置の構成]
まず、図1に基づいて、本実施形態に係るバルジング可視化監視装置100の構成について説明する。なお、図1は、本実施形態に係るバルジング可視化監視装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、バルジング可視化監視装置100は、データ取込部110と、オーバーサンプリング部120と、FFT処理部130と、ピーク検出部140とを備える。
【0047】
データ取込部110は、所定の時間幅(サンプリング周期)Δtで、データを取得可能に接続された湯面レベル制御盤200の外乱推定オブザーバ210からデータを取り込んでサンプリングし、サンプリングデータを所定期間(バッファ時間)Tだけバッファする。また、データ取込部110は、バッファ時間Tのデータバッファを更新周期TS毎に更新する。
【0048】
オーバーサンプリング部120は、データ取込部110により作成されたデータバッファに基づき、鋳造速度をサンプリング周期Δt毎に積分し、鋳造長を算出する。そして、オーバーサンプリング部120は、算出した鋳造長に基づいた等間隔サンプリングデータを線形補間により計算するオーバーサンプリング処理を実行する。オーバーサンプリング処理の詳細については後述する。
【0049】
FFT処理部130は、オーバーサンプリング部120によりオーバーサンプリングされた鋳造長ベースで等間隔刻みの外乱流量(外乱量推定値)を入力としたFFT(高速フーリエ変換)解析を行う。FFT処理部130は、平均値計算部132と、バイアス成分除去部134と、窓関数処理部136と、FFT算出部138とからなる。
【0050】
平均値計算部132は、外乱量推定値のオーバーサンプリングデータyovs(i)の平均値yaveを算出する。バイアス成分除去部134は、外乱量推定値のオーバーサンプリングデータyovs(i)から平均値計算部132で算出された平均値yaveを除去する。窓関数処理部136は、バイアス成分除去部134により処理されたオーバーサンプリングデータに対して、窓関数処理を施す。そして、FFT算出部138は、窓関数処理部136により窓関数処理されたオーバーサンプリングデータに対してFFT解析を実施する。FFT処理部130により、距離周波数スペクトルが取得される。
【0051】
ピーク検出部140は、FFT処理部130により算出された距離周波数スペクトルのピークを検出する。ピーク検出部140により検出された距離周波数のピーク値の逆数を計算することで、非定常バルジングが発生するSEGのロールピッチの代表値を取得することができる。なお、ピーク検出部140によるピーク検出方法の詳細な説明は後述する。ピーク検出部140は、取得したロールピッチの代表値を湯面レベル制御盤200へ出力する。
【0052】
[3.バルジング可視化監視装置による非定常バルジングの変動周期取得処理]
次に、図2A〜図2Cに基づいて、本実施形態に係るバルジング可視化監視装置100による非定常バルジングの変動周期取得処理について説明する。なお、図2A〜図2Cは、本実施形態に係るバルジング可視化監視装置100による非定常バルジングの変動周期取得処理を示すフローチャートである。
【0053】
バルジング可視化監視装置100による非定常バルジングの変動周期取得処理は、湯面レベル制御が実行されており、かつデータが所定数(tfft)だけバッファされるとFFT演算を開始する。バルジング可視化監視装置100にて処理するデータには、湯面レベル制御盤200の外乱推定オブザーバ210により算出される外乱推定量が用いられる。このため、まず、外乱推定オブザーバ210により外乱推定量が計算される(S101)。
【0054】
図3は、本実施形態に係る外乱推定オブザーバ210の構成を示すブロック図である。外乱推定オブザーバ210は、実プロセスの湯面レベル実績値を算出するとともに(符号212のブロック)、プロセスモデルにより湯面レベル推定値を算出し(符号214のブロック)、これらの偏差をレベル推定誤差として算出する。そして、外乱推定オブザーバ210は、レベル推定誤差がゼロとなるように、湯面レベル変動の原因となる外乱量(外乱量推定値)を逐次推定する。このように、湯面レベル変動の原因となる外乱量の推定値を得ることにより、周期性変動抑制制御により周期性レベル変動が十分に抑制されてもFFT解析に供するデータの振幅が小さくなりすぎて周期性の判別ができなくなるというような問題は発生しない。
【0055】
具体的には、外乱推定オブザーバ210は、下記数式2〜4で記述される。外乱推定オブザーバ210は、プロセスモデルに開度実績、モールド幅、モールド厚を入力して湯面レベル推定値を計算し、実プロセスの湯面レベル実績値との偏差が零になるように外乱量d1を逐次推定する。ただし、本実施形態では、外乱量d1が二次振動の特性を持つものと仮定する。
【0056】
外乱推定オブザーバ210は、プロセスモデルと実績値を用いて湯面レベル変動の原因となる外乱量d1を推定する機構であり、下記数式2〜4で記述される。ただし、本実施形態では、外乱量d1が二次振動の特性を持つものと仮定する。
【0057】
【数2】

・・・(数式2)

・・・(数式3)

・・・(数式4)
【0058】
ここで、yobsは推定湯面レベル、yは湯面レベル測定値、dは推定外乱量、dは推定外乱量微分値、Kはプラントゲイン、uは開度実績、upmaveは開度実績移動平均、g、g、gはオブザーバゲイン、ωobsは外乱角周波数、ηobsは外乱減衰係数である。
【0059】
本実施形態では、従来の外乱推定オブザーバとは異なり、特定の周波数近傍の外乱量を推定するのではなく、広い周波数帯域の外乱を推定するために、シミュレーションによる試行錯誤により以下のパラメータに最適化している。ただし、ここでは、オブザーバ極:λが三重極となるようg、g、gを定めている。
【0060】
【数3】

・・・(数式5)

・・・(数式6)

・・・(数式7)
【0061】
以上に示した数式2〜7に基づいて外乱推定オブザーバ210を構成し、所定の制御周期、例えば、50msで演算を繰り返し実行することで、湯面レベル測定値y、開度実績uを入力として、外乱量d、外乱量微分値dを計算する。
【0062】
次いで、バルジング可視化監視装置100のデータ取込部110は、湯面レベル測定値y、鋳造速度wvc、外乱量推定値d1を一定時間幅でサンプリングし(S102)、解析実行期間データをバッファし(S103)、バッファされたデータを更新周期で更新する(S104)。
【0063】
本実施形態において、データ取込部110は、一定時間幅(サンプリング周期:Δt)を例えばΔt=1秒として湯面レベル測定値y、推定外乱量d1、鋳造速度wvcをサンプリングする。そして、データ取込部110は、これらのサンプリングデータを一定期間(バッファ時間(解析実行期間):T秒分)だけバッファする。バッファ時間は、例えば、T=150〜450秒が適切な期間であることを本願発明者は実機で確認している。
【0064】
さらに、データ取込部110は、一定期間(T秒)のデータバッファを更新周期(TS秒)毎に更新し、ステップS105以下の処理に供することで、非定常バルジングの変動周期の変化を迅速に検出することを可能とする。更新周期は、例えば、TS=10秒程度で実用上は十分であることを本願発明者は実機で確認している。勿論、データのサンプリング周期(ΔT)、および、バッファ時間(T)、バッファ更新周期(TS)について、
ΔT < TS < T ・・・(数式8)
の大小関係のもとにおいてそれぞれ調整することは可能である。
【0065】
次いで、解析実行期間Tのデータバッファが完了すると、オーバーサンプリング部120により、鋳造長が計算される(S105)。ステップS105以下の処理は、ステップS104までの処理で作成されたデータバッファに対して実行される。ステップS105では、鋳造速度をサンプリング周期(ΔT)毎に積分することで鋳造長を計算する。一般的に、鋳造長は、図4に示すように規定される。通常、連続鋳造機は、鋳造開始時にはダミーバー16をモールド3底部に挿入し、モールド3内に溶融金属を充填させて凝固殻4を形成してから引き抜き運転を開始する。このとき、鋳造長は湯面レベル9からダミーバー16上辺までの距離で規定される。
【0066】
本実施形態において、オーバーサンプリング部120は、データバッファの開始点をゼロとして鋳造長をデータバッファ更新毎に計算する。鋳造長LENVcは、下記数式9により算出される。
【0067】
【数4】

・・・(数式9)
【0068】
ただし、tはデータバッファ開始点からの時間[sec]、鋳造速度はVc[m/min]、鋳造長はLENVc[mm]である。
【0069】
そして、オーバーサンプリング部120は、外乱量推定値を鋳造長に基づくデータに変換する(S106)。ステップS106では、時系列データである外乱量推定値(d1)をステップS105で計算した鋳造長ベースのデータに変換する。
【0070】
具体的には、
[d1(0),d1(ΔT),d1(2ΔT),・・・,d1(NΔT)]
・・・(数式10)
という横軸が時間、縦軸が外乱量推定値というデータの並びを
[d1(LENVc(0)),d1(LENVc(ΔT)),d1(LENVc(2ΔT)),・・・,d1(LENVc(NΔT))]
・・・(数式11)
という横軸が鋳造長、縦軸が外乱量推定値というデータの並びに置き換える。
【0071】
鋳造速度Vcは時間と共に変化するので、サンプリング時間(ΔT)が一定であるとしても、数式11中の鋳造長の刻み幅(LENVc((i+1)ΔT)−LENVc(iΔT))は一定にならない。すなわち、等間隔時間データを数式11に沿って並べ直すと、図5の左側のグラフのようなイメージとなる。このように鋳造長の刻み幅にバラツキが生じた状態となる。
【0072】
その後、オーバーサンプリング部120は、2のN乗個にオーバーサンプリングすることで等間隔ピッチで鋳造長ベースの外乱量推定値を計算する(S107)。鋳造長ベースのデータをFFT解析に供するには、等間隔データに変換する必要がある。そこで、ステップS107では、オーバーサンプリング部120は、鋳造長に基づいた等間隔サンプリングデータを線形補間により計算する(オーバーサンプリング)。等間隔時間データをオーバーサンプリングして並べ直すと、図5の右側のグラフのようなイメージとなる。これにより、オーバーサンプリング前にプロットされていたデータ(○)の間に、鋳造間隔が等しくなるように補間データ(●)が補間される。
【0073】
以下、図6を用いて、具体的なオーバーサンプリングの計算方法を示す。なお、図6は、オーバーサンプリングにおける線形補間の概略を示す説明図である。オーバーサンプリングは以下のアルゴリズムに従って実行される。まず、鋳造長の刻み幅が定義される。鋳造長の等間隔の刻み幅(ΔL)は、下記数式12および13により定義される。ただし、データ数は2のN乗個(以下、「NL」と略記する。)とし、時系列データの個数(T/ΔT+1l;以下、「NT」と略記する。)よりも大きいことが必要である。例えば、サンプリング時間ΔT=1秒、バッファ期間T=150〜450秒に対してN=11以上とすれば実用上十分であることを本願発明者は実機で確認している。
【0074】
【数5】

・・・(数式12)

・・・(数式13)
【0075】
次いで、横軸データが定義される。すなわち、数式12により計算された刻み幅(ΔL)に基づいて、横軸データ、すなわち、鋳造長データを再定義する。ここで、数式を簡単にするため、以下の変数で記述する。
xorg:鋳造長オリジナルデータ(横軸)、
yorg:外乱量推定値オリジナルデータ(縦軸)、
xovs:鋳造長オーバーサンプリングデータ(横軸)、
yovs:外乱量推定値オーバーサンプリングデータ(縦軸)、
また、
i:オーバーサンプリングデータのインデント(i=1,2,・・・,NL)、
I:オリジナルデータのインデント(I=1,2,・・・,NT)、
NL:オーバーサンプリングデータのデータ数、
NT:オリジナルデータのデータ数
【0076】
そして、オーバーサンプリングデータの先頭と最後のデータをオリジナルデータと一致させるように定義する。すなわち、オーバーサンプリングデータの先頭と最後のデータは、図6に示すオリジナルデータ(前)およびオリジナルデータ(後)の位置となる。これを記述すると、下記数式14および15のようになる。
yovs(1)=yorg(1) ・・・(数式14)
yovs(NL)=yorg(NT) ・・・(数式15)
【0077】
その後、オリジナルデータが存在しない刻み点におけるオーバーサンプリングデータを、前後データからの線形補間により計算して補間する。線形補間は、下記数式16および17により行われる。
【0078】
【数6】

・・・(数式16)
ただし、

・・・(数式17)
【0079】
実際の処理では、オーバーサンプリングデータのインデント(i)を1ずつ増やしながら、数式16で外乱量推定値オーバーサンプリングデータyovsを計算していく。そして、数式17が成立しない場合はオリジナルデータのインデント(I)を1だけ増やして、再び数式16で外乱量推定値オーバーサンプリングデータyovsを計算する。このようにして、図6に示すようにオーバーサンプリングデータが補間される。
【0080】
オーバーサンプリング部120により等鋳造長データが作成されると、FFT解析部130による距離周波数スペクトルの計算が行われる(S108)。ステップS108では、ステップS107で計算された鋳造長ベースで等間隔刻みの外乱量推定値を入力としたFFT(高速フーリエ変換)解析を行う。通常、湯面レベル制御で実施されるFFTは時系列データに対して行うため、横軸:時間周波数[Hz]=[1/sec]として周波数スペクトルを計算する。本実施形態では、鋳造長ベースのデータに対してFFTを行うため、横軸:空間周波数[1/mm]として距離周波数スペクトルを計算することになる。図7にFFT解析による距離周波数スペクトルの計算フローを示す。
【0081】
図7に示すように、FFT解析による距離周波数スペクトルの計算では、まず、平均値計算部132によりデータ群yovs(1)・・・yovs(NL)の平均値yaveが算出される(S1081)。平均値yaveは下記数式18より算出される。
【0082】
【数7】

・・・(数式18)
【0083】
次いで、バイアス成分除去部134によりデータ群から数式18で計算された平均値yaveが除去される(S1082)。すなわち、バイアス成分除去部134は、下記数式19により平均値の除去を行う。
【0084】
【数8】

・・・(数式19)
【0085】
さらに、窓関数処理部136により、数式19で計算されたデータ群に対して、窓関数処理が施される。本実施形態では窓関数としてHanning窓を採用しているが、勿論、その他の窓関数を用いてもよい。窓関数処理は、下記数式20および21により行われる。
【0086】
【数9】

・・・(数式20)

・・・(数式21)
【0087】
その後、FFT算出部138は、数式20および21で計算されたデータ群に対して、FFT解析を行う(S1084)。そして、FFT算出部138は、FFT解析の結果、得られるFFT解析の実部データ(Yfft_Re(1)・・・Yfft_Re(NL/2))、虚部データ(Yfft_Im(1)・・・Yfft_Im(NL/2))から、距離周波数スペクトル(Yfft(1)・・・Yfft(NL/2))、距離周波数(freq(1)・・・freq(NL/2))を計算する(S1085)。なお、周波数スペクトルは、折り返しを生じるので、半分のデータ群に対してのみ計算を行っている。距離周波数スペクトルYfft(i)および距離周波数freq(i)は、下記数式22および23により求められる。
【0088】
【数10】

・・・(数式22)

・・・(数式23)
【0089】
以上の計算により、図8に示すような横軸が距離周波数freq[1/mm]、縦軸が強度Yfftとなる距離周波数スペクトルが得られる。ここで、距離周波数の逆数は、非定常バルジングの発生しているセグメント(SEG)のロールピッチに相当する。
【0090】
図2Bのフローチャートに戻り、FFT処理部130により距離周波数スペクトルが算出されると、ピーク検出部140によりピーク検出が行われる。このとき、まず、ピーク検出部140は、距離周波数スペクトルを最大振幅で割り戻して0〜1に規格化する(S109)。ステップS109では、外乱量推定値の大きさを評価するために、距離周波数スペクトルの最大振幅(Yfft_max)を計算する。また、以下に続くピーク位置検出処理の前準備として距離周波数スペクトルをYfft_maxで割り戻して0〜1に規格化する。距離周波数スペクトルの最大振幅Yfft_maxおよび規格化距離周波数スペクトルrYfftは、下記数式24および25により求められる。
【0091】
【数11】

・・・(数式24)

・・・(数式25)
【0092】
次いで、ピーク検出部140は、距離周波数f、規格化スペクトル振幅x(f)として、差分rYdifを計算する(S110)。ステップS110以下の処理では、規格化距離周波数スペクトル(rYfft(1)・・・rYfft(NL/2))を入力として、ピーク位置検出・合成が行われる。ここで、規格化距離周波数スペクトルの微分係数dx/dfの代わりに、下記数式26により差分rYdifが計算される。
【0093】
【数12】

・・・(数式26)
【0094】
さらに、ピーク検出部140は、差分rYdifの符号反転によりピーク位置を検出する(S111)。図9に、ピーク検出の基本的な考え方を示す。図9の上図において、強度rfftが最大となる位置がピーク位置である。このデータを数式26に基づき差分rYdifに変換すると、図9の下図のようになる。このとき、図9上図のピーク位置は、図9下図では差分rYdifの符号が反転する位置に対応する。これより、ピーク位置を、上記差分(rYdif)の符号の反転により判定する。具体的には、下記数式27および28の2式が成立するならばインデント(i)がピーク位置となる。
【0095】
【数12】

・・・(数式27)

・・・(数式28)
【0096】
その後、ピーク検出部140は、ステップS111にて検出されたピーク位置のうち、距離周波数が一定範囲内かつ規格化振幅が閾値以上であるものをピーク位置候補とする(S112)。ステップS111ではピーク検出可能であるが、外乱量推定値に含まれるノイズ成分もピークとして誤検出してしまう。例えば、図10に示すように、ステップS111の処理により、距離周波数スペクトルにおいて複数のピークが検出されたとする。このとき、ピーク検出部140は、振幅値が閾値より小さいピークや、距離周波数が規定範囲外にあるピークについては、ノイズとして除去する。
【0097】
そこで、下記数式29および30のように、距離周波数に上下限制約(下限値freq_min、上限値freq_max)、規格化振幅に下限値rYminを設ける。これにより、図10に示すピーク検出範囲内のピーク位置がピーク位置候補として抽出される。
【0098】
【数13】

・・・(数式29)

・・・(数式30)
【0099】
次いで、ピーク検出部140は、隣接するピーク位置候補の距離周波数の比が閾値以下のものをグルーピングする(S113)。ステップS111およびS112によりピーク位置候補が計算されるが、図10に示すようにFFTで得られる距離周波数スペクトルは中心となるピーク近傍に複数のピークが局所的に乱立することがある。前述のように、隣接するピークについては合成して1つの代表値で代替する必要があるため、隣接するピーク位置候補を以下の方法によりグルーピングする。
【0100】
図11は、ピーク位置候補のグルーピングの考え方を示す説明図であり、図12は、グルーピング処理を示すフローチャートである。まず、ピーク位置候補数をM、距離周波数をfreq_p(1)・・・freq_p(M)、規格化振幅をrYfft_p(1)・・・rYfft_p(M)として、下記数式31が成り立つとする。
【0101】
【数14】

・・・(数式31)
【0102】
また、ピーク位置候補のインデックスをi、グループ番号をj、グループ内の最大周波数インデックスをk0とする(S1131)。処理開始時は、i=0、j=1、k=0が設定されているとする。
【0103】
グルーピングするにあたり、まず、グループ中でも距離周波数が最も小さいものを最小周波数freq_h(j)として設定する(S1132)。そして、距離周波数と最小周波数freq_h(j)との比が閾値以下となるピーク位置候補を同グループと判定する。以下に具体的な手続きを例により示す。
【0104】
グループ番号j=1の場合、まず、ピーク位置候補のインデックスiを更新し(S1133)、距離周波数の初期値freq_h(1)を下記数式32より設定する。そして、下記数式33を満足するインデックスiをi=2,3,…と1ずつ増分しながら探索し(S1134)、数式33を満足するインデックスiの最大値をkとする(S1135)。この場合、i=1,…,kのピーク候補位置が同グループとなる。
【0105】
【数15】

・・・(数式32)

・・・(数式33)
【0106】
ここで、近接判定閾値ncoefは小さくするほどピークをグルーピングする範囲を狭めることになる調整パラメータである。例えば、ncoef=0.2程度が実用的であることを本願発明者は実機で確認している。
【0107】
次いで、グループ番号を更新し(S1136)、グループ番号j=2とする。この場合、距離周波数の初期値freq_h(2)は下記数式34より設定される。そして、下記数式35を満足するインデックスiをi=k+2,k+3,…と1ずつ増分しながら探索し(S1134)、数式35を満足するインデックスiの最大値をkとする(S1135)。この場合、i=k+1,…,kのピーク候補位置が同グループとなる。
【0108】
【数16】

・・・(数式34)

・・・(数式35)
【0109】
以下、グループ番号j=3以降についても同様の処理により隣接するピーク位置候補をグルーピングすることができる。その後、ピーク位置候補のインデックスiがピーク位置候補数Mを超えるまで、ステップS1132〜S1136の処理は繰り返される(S1137)。ピーク位置候補のインデックスiがピーク位置候補数Mを超えると、グループ数Gが定義される(S1138)。図11の例では、ピーク位置候補は3つのグループ(G=3)にグルーピングされている。
【0110】
そして、ピーク検出部140は、同一グループのピーク位置候補の振幅を重み係数とした一次結合により合成ピーク位置の距離周波数を計算する(S114)。すなわち、ステップS113によりグルーピングされたピーク候補位置群について、同一グループ内の代表値となる合成ピーク位置の距離周波数gfreq_p(1)・・・gfreq_p(G)が下記数式36より計算される。ここで、Gは、ステップS113により得られるグループ数とする。
【0111】
【数17】

・・・(数式36)
【0112】
合成ピークの距離周波数gfreq_p(j)は、規格化振幅を重み係数とした距離周波数の一次結合で計算される。これにより、FFTで得られる距離周波数スペクトルにおいて中心となるピーク近傍に複数のピークが局所的に乱立することがあっても、近接するピーク位置候補の代表値となるピーク位置をグループ毎に定義することが可能となる。
【0113】
その後、ピーク検出部140は、合成ピーク位置の距離周波数の逆数としてロールピッチの代表値を計算する(S115)。距離周波数の逆数を計算することで、非定常バルジングが発生するセグメントのロールピッチの代表値Rp(j)を取得できる。ロールピッチの代表値Rp(j)は、下記数式37より算出される。
【0114】
【数18】

・・・(数式37)
【0115】
次いで、図2Cに示すように、ピーク検出部140は、距離周波数スペクトルの振幅最大値が閾値以上であるか否かを判定する(S116)。距離周波数スペクトルの振幅最大値が閾値より小さいときには、ステップS119の処理に進む。一方、距離周波数スペクトルの振幅最大値が閾値以上であるときには、合成ピーク数(ロールピッチ代表値の数)が閾値以下であるか否かを判定する(S117)。合成ピーク数が閾値より大きいときには、ステップS119の処理に進む。一方、合成ピーク数が閾値以下であるときには、ロールピッチ設定値を更新する(S118)。そして、前回ロールピッチ設定値を保持する(S119)。
【0116】
周期性変動抑制制御は、周期性レベル変動の変動周期が制御設定パラメータとして必要になる。しかし、実プロセスとマッチングした設定パラメータを与えなければ、制御性能は十分に発揮できない。そこで本実施形態では、ステップS115までの処理により得られたロールピッチ代表値Rpが信頼できる値かどうかの判定をステップS116およびS117で行い、信頼できる値ならばステップS119でロールピッチ設定値Rpsを更新する。
【0117】
距離周波数スペクトルの最大振幅値Yfft_maxがある程度の大きさを持たない場合は、有用でないノイズ成分に対してFFT解析を行っている可能性が大きい。そのような場合は、得られた距離周波数スペクトル、および、ロールピッチ代表値Rpの信頼性は低いため、ステップS116でロールピッチ設定値としては採用しないことにする。
【0118】
また、合成ピーク数が多すぎる場合も有用でないノイズ成分に対してFFT解析を行っている可能性が大きい。そのため、この場合についてもステップS117でロールピッチ代表値Rpは棄却する。このように、ロールピッチ設定値は信頼できるロールピッチ代表値が得られた場合にのみ更新を行い、そうでない場合は前回設定値を保持する。
【0119】
以上のステップS105〜S119までの処理はデータバッファに対する処理であり、バッファ更新周期TS毎に実行されるものである。
【0120】
その後、ピーク検出部140は、ロールピッチ設定値を鋳造速度で割り戻して非定常バルジングの変動周期を計算する(S120)。ロールピッチ設定値Rps(i)[mm]を鋳造速度Vc[m/min]で割り戻すことで周期性レベル変動の変動周期Tbs(i)[sec]を制御周期毎に得ることができる。周期性レベル変動の変動周期Tbs(i)は、下記数式38により表される。
【0121】
【数19】

・・・(数式38)
【0122】
以上、本実施形態に係る連続鋳造機のモールド湯面レベル制御に用いるバルジング可視化監視装置100とこれによる非定常バルジングの変動周期取得処理について説明した。本実施形態によれば、連続鋳造機の鋳型内部における湯面レベル変動の原因となる外乱を湯面レベル測定値、スライディングノズル開度実績に基づいて推定し、推定した外乱量推定値の時系列データを鋳造速度の積分値である鋳造長に基づくデータに変換し、当該鋳造長に基づくデータのサンプリング数を2のN乗個にオーバーサンプリングしてからFFT解析に供するようにする。
【0123】
そして、非定常バルジングの発生する非定常バルジング発生ロールピッチの距離周波数スペクトルを計算し、距離周波数スペクトルを最大振幅で割り戻して規格化する。規格化された距離周波数スペクトルの微分係数(差分)を求め、微分係数(差分)の符号が反転し、かつ、振幅が閾値以上になる点をピーク位置候補とする。さらに、ピーク位置候補について、隣接するピーク位置候補の距離周波数の比が閾値以下のものをグルーピングし、同一グループのピーク位置候補の振幅を重み係数とした当該ピーク位置候補の距離周波数の一次結合として合成ピーク位置の距離周波数を計算する。
【0124】
このようにして算出された合成ピーク位置の距離周波数の逆数を非定常バルジング発生ロールピッチとし、当該ロールピッチを鋳造速度で割り戻して非定常バルジングの変動周期を求める。これにより、鋳造速度変化部を含み、かつ、周期性外乱抑制制御により湯面レベル変動が十分に抑制されている運転状態においても非定常バルジングの変動周期の変化を迅速に検出し、かつ同時に、非定常バルジングの発生周期に揺らぎ成分が存在する場合においても周期性外乱抑制制御の適切な制御設定パラメータを自動的に提供することが可能となる。
【0125】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0126】
1 タンディッシュ
2 浸漬ノズル
3 モールド
4 凝固殻
5 ピンチロール
6 水スプレー冷却
7 鋳片
8 バルジング
9 湯面レベル
10 渦流式レベル計
11 スライディングノズル
12 ストッパーノズル
13 開度演算部
14 レベル変動周期同定機能
15 湯面レベル制御器
100 バルジング可視化監視装置
110 データ取込部
120 オーバーサンプリング部
130 FFT処理部
132 平均値計算部
134 バイアス成分除去部
136 窓関数処理部
138 FFT算出部
140 ピーク検出部
200 湯面レベル制御盤
210 外乱推定オブザーバ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯の連続鋳造機でモールド内の湯面レベルを測定し、湯面レベル測定値と湯面レベル目標値との偏差を用いて求めた開度指令に従って前記モールドへの注湯手段の開度を、湯面レベルを前記湯面レベル目標値に保つべく制御する連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置において、
前記湯面レベル測定値と前記湯面レベル目標値とに基づいて、前記注湯手段の開度を調節する開度制御部と、
前記湯面レベル測定値と前記注湯手段の開度実績とに基づいて、前記金属溶湯を前記モールドに注湯するときの外乱を推定して外乱量推定値を算出する外乱推定部と、
前記外乱推定部より算出された前記外乱量推定値と、前記連続鋳造機の鋳造速度とに基づいて、非定常バルジングの変動周期を算出するバルジング可視化監視部と、
を備え、
前記バルジング可視化監視部は、
前記外乱量推定値と前記鋳造速度とを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部により所定期間において取得された前記外乱量推定値の時系列データを、前記鋳造速度の積分値である鋳造長に基づくオーバーサンプリング前データに変換し、前記鋳造長に基づくオーバーサンプリング前データをオーバーサンプリングしてオーバーサンプリング後データを生成するオーバーサンプリング部と、
前記鋳造長に基づくオーバーサンプリング後データについて高速フーリエ変換解析を行い、非定常バルジングの発生する非定常バルジング発生ロールピッチの距離周波数スペクトルを算出するFFT処理部と、
前記距離周波数スペクトルのピークを検出して前記非定常バルジング発生ロールピッチを算出し、前記非定常バルジング発生ロールピッチと前記鋳造速度とに基づいて前記非定常バルジングの変動周期を算出するピーク検出部と、
を備えることを特徴とする、連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置。
【請求項2】
前記オーバーサンプリング部は、
前記鋳造長の刻み幅を設定し、
前記オーバーサンプリング前データの最前および最後のデータと、前記オーバーサンプリング後データの最前および最後のデータとを一致させ、
前記鋳造長の刻み幅において前記オーバーサンプリング前データが存在しない非存在区間のデータを、当該非存在区間の前後に位置する前記オーバーサンプリング前データから線形補間により算出して、前記オーバーサンプリング後データを生成することを特徴とする、請求項1に記載の連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置。
【請求項3】
前記FFT処理部は、
前記オーバーサンプリング後データの平均値を計算する平均値計算部と、
前記オーバーサンプリング後データから前記平均値を除去するバイアス成分除去部と、
前記バイアス成分除去部により処理されたオーバーサンプリング後データに対して、窓関数処理を行う窓関数処理部と、
前記窓関数処理されたオーバーサンプリング後データに対して、高速フーリエ変換解析を行い、前記非定常バルジング発生ロールピッチの距離周波数スペクトルを算出するFFT算出部と、
を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置。
【請求項4】
前記ピーク検出部は、
前記距離周波数スペクトルにおいて前記鋳造長の刻み幅で隣接する前記距離周波数の振幅の差分をそれぞれ算出し、
前記算出された差分の前後において、前記差分の値の正負が反転する位置をピーク位置として検出することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置。
【請求項5】
前記ピーク検出部は、
検出した前記ピーク値が、所定の距離周波数範囲および所定の振幅範囲によって規定されるピーク検出範囲に属するか否かを判定し、
前記ピーク検出範囲に属する前記ピーク値を、ピーク位置候補とすることを特徴とする、請求項4に記載の連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置。
【請求項6】
前記ピーク検出部は、
前記距離周波数に基づいて前記ピーク位置候補をグループ化し、
前記グループ化された前記ピーク位置候補を合成して、一の合成ピーク位置の距離周波数を算出し、
前記合成ピーク位置の距離周波数に基づいて、前記非定常バルジング発生ロールピッチの代表値を算出することを特徴とする、請求項5に記載の連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置。
【請求項7】
前記ピーク検出部は、前記距離周波数スペクトルの最大振幅値が所定の振幅閾値より大きいとき、前記非定常バルジング発生ロールピッチの代表値に基づいて前記非定常バルジングの変動周期を算出することを特徴とする、請求項6に記載の連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置。
【請求項8】
前記ピーク検出部は、前記合成ピーク位置の数が所定のピーク数閾値以下であるとき、前記非定常バルジング発生ロールピッチの代表値に基づいて前記非定常バルジングの変動周期を算出することを特徴とする、請求項6または7に記載の連続鋳造機のモールド湯面レベル制御装置。
【請求項9】
金属溶湯の連続鋳造機でモールド内の湯面レベルを測定し、湯面レベル測定値と湯面レベル目標値との偏差を用いて求めた開度指令に従って前記モールドへの注湯手段の開度を、湯面レベルを前記湯面レベル目標値に保つべく制御する連続鋳造機のモールド湯面レベル制御方法において、
前記湯面レベル測定値と前記湯面レベル目標値とに基づいて、前記注湯手段の開度を調節するステップと、
前記湯面レベル測定値と前記注湯手段の開度実績とに基づいて、前記金属溶湯を前記モールドに注湯するときの外乱を推定して外乱量推定値を算出するステップと、
前記外乱量推定値と、前記連続鋳造機の鋳造速度とを取得するステップと、
所定期間において取得された前記外乱量推定値の時系列データを、前記鋳造速度の積分値である鋳造長に基づくオーバーサンプリング前データに変換し、前記鋳造長に基づくオーバーサンプリング前データをオーバーサンプリングしてオーバーサンプリング後データを生成するステップと、
前記鋳造長に基づくオーバーサンプリング後データについて高速フーリエ変換解析を行い、非定常バルジングの発生する非定常バルジング発生ロールピッチの距離周波数スペクトルを算出するステップと、
前記距離周波数スペクトルのピークを検出して前記非定常バルジング発生ロールピッチを算出し、前記非定常バルジング発生ロールピッチと前記鋳造速度とに基づいて前記非定常バルジングの変動周期を算出するステップと、
を含むことを特徴とする、連続鋳造機のモールド湯面レベル制御方法。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−143414(P2011−143414A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4144(P2010−4144)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】