説明

進捗管理装置

【課題】作業者の個人差が生産性に大きく影響する生産工程において、生産の進捗状況を作業者に明示することで作業者自身が適正な判断を行ない、それによって進捗状況の自然な管理を可能とする進捗管理装置を提供する。
【解決手段】装置の状態を示す信号に基づいて実績出来高を計測する実績出来高計測手段と、前記信号に基づいて実績稼動時間を計測する実績稼動時間計測手段と、あらかじめ設定された目標能率に前記実績稼動時間を乗算することにより目標出来高を演算する目標出来高演算手段と、前記実績出来高と前記目標出来高との相違に応じた背景色を演算する評価演算手段と、前記背景色で前記実績出来高と前記目標出来高を表示する出来高表示手段とを具備するようにした進捗管理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生産工程を管理するために使用する装置の技術分野に属する。特に、作業者の個人差(熟練度、意識、等)が生産性に大きく影響する生産工程において、生産の進捗状況を作業者に明示することで作業者自身が適正な判断を行ない、それによって進捗状況の自然な管理を可能とする進捗管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業能率が作業者の能力に依存する度合いが高い生産工程がある。そのような工程において目標期間内に目標生産数量を達成できるようにするためには、特に、適正な人数の適正な作業者を従事させることが必要性である。そして、その生産計画を立てるためには、特定の作業者を特定の生産工程に従事させたときの生産性、作業者の熟練度、等に関するデータが必要である。そこで、作業者が従事する生産工程におけるその作業者の出来高と実作業時間を計測することによって生産性、熟練度、等を計測することができるようにした装置の発明がある(特許文献1)。この発明の適用例としては、作業者によって出来高にバラツキが生じ易い縫製工程が挙げられている。この発明の装置においては、作業者個人の1日の作業の把握と分析、その経過を見ることによる習熟度の把握、勤務評定や給与計算の基礎データ、等を得ることができる。
【特許文献1】特開昭60−234686
【0003】
しかしながら、類似していても内容が同一ではない生産においては、過去の平均的なデータの通りの生産性が必ず得られるわけではないし、作業者のその日の体調によっても変化するものである。すなわち、ある程度の変動要因は存在する。したがって、作業者の習熟度に合せて達成できるはずの目標を立てて従事させたとしても、そのままでは目標を達成することは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の問題を解決するために為されたものである。その目的は、作業者の個人差が生産性に大きく影響する生産工程において、生産の進捗状況を作業者に明示することで作業者自身が適正な判断を行ない、それによって進捗状況の自然な管理を可能とする進捗管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る進捗管理装置は、生産装置の状態を示す信号に基づいて実績出来高を計測する実績出来高計測手段と、前記信号に基づいて実績稼動時間を計測する実績稼動時間計測手段と、あらかじめ設定された目標能率に前記実績稼動時間を乗算することにより目標出来高を演算する目標出来高演算手段と、前記実績出来高と前記目標出来高との相違に応じた背景色を演算する評価演算手段と、前記背景色で前記実績出来高と前記目標出来高を表示する表示手段とを具備するようにしたものである。
また本発明の請求項2に係る進捗管理装置は、請求項1に係る進捗管理装置において、前記評価演算手段は前記実績出来高と前記目標出来高の差の数値として進度を演算し、前記表示手段は前記進度を表示するようにしたものである。
また本発明の請求項3に係る進捗管理装置は、請求項1または2に係る進捗管理装置において、前記評価演算手段は前記実績出来高と前記目標出来高との相違に応じた文字として評価を演算し、前記表示手段は前記評価を表示するようにしたものである。
また、本発明の請求項4に係る進捗管理装置は、請求項1〜3のいずれかに係る進捗管理装置において、前記生産装置を停止させて行なう作業である停止作業の実績停止作業時間を前記信号に基づいて計測する実績停止作業時間計測手段と、前記信号に基づいて前記停止作業の内容を特定する停止作業内容特定手段と、停止作業の内容ごとにあらかじめ設定された目標停止作業時間から前記特定された停止作業の内容の目標停止作業時間を抽出する目標停止作業時間抽出手段とを具備し、前記表示手段は前記実績停止作業時間と前記目標停止作業時間とを対比させて表示するようにしたものである。
また本発明の請求項5に係る進捗管理装置は、請求項1〜4のいずれかに記載の進捗管理装置において、前記生産装置における生産の開始から終了までの生産実績として最大生産速度、平均生産速度、生産数量を含むデータを前記入力した信号に基づいて収集する生産実績収集手段を具備し、前記表示手段は前記データを表示するようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1に係る進捗管理装置によれば、実績出来高計測手段が生産装置の状態を示す信号に基づいて実績出来高を計測し、実績稼動時間計測手段がその信号に基づいて実績稼動時間を計測し、目標出来高演算手段があらかじめ設定された目標能率に前記実績稼動時間を乗算することにより目標出来高を演算し、評価演算手段が実績出来高と目標出来高との相違に応じた背景色を演算し、出来高表示手段がその背景色で実績出来高と目標出来高を表示する。したがって、作業者の個人差が生産性に大きく影響する生産工程において、生産の進捗状況を作業者に明示することで作業者自身が適正な判断を行ない、それによって進捗状況の自然な管理を可能とする進捗管理装置が提供される。
また本発明の請求項2に係る進捗管理装置によれば、請求項1に係る進捗管理装置において、評価演算手段が実績出来高と目標出来高の差の数値として進度を演算し、表示手段がその進度を表示する。したがって、生産の進捗状況を作業者に数値として明示することができる。
また本発明の請求項3に係る進捗管理装置によれば、請求項1または2に係る進捗管理装置において、評価演算手段が実績出来高と目標出来高との相違に応じた文字として評価を演算し、表示手段がその評価を表示するようにしたものである。したがって、生産の進捗状況を作業者に文字として明示することができる。
また、本発明の請求項4に係る進捗管理装置によれば、請求項1〜3のいずれかに係る進捗管理装置において、実績停止作業時間計測手段が生産装置を停止させて行なう作業である停止作業の実績停止作業時間を信号に基づいて計測し、停止作業内容特定手段が信号に基づいて停止作業の内容を特定し、目標停止作業時間抽出手段が停止作業の内容ごとにあらかじめ設定された目標停止作業時間から特定された停止作業の内容の目標停止作業時間を抽出し、表示手段が実績停止作業時間と目標停止作業時間とを対比させて表示する。したがって、生産装置を停止させて行なう作業である停止作業についても、その進捗状況を作業者に明示することで作業者自身が適正な判断を行ない、それによって進捗状況の自然な管理を可能とする。
また本発明の請求項5に係る進捗管理装置によれば、請求項1〜4のいずれかに記載の進捗管理装置において、生産実績収集手段が生産装置における生産の開始から終了までの生産実績として最大生産速度、平均生産速度、生産数量を含むデータを入力した信号に基づいて収集し、表示手段がそれらのデータを表示する。したがって、生産実績を作業者に明示することで作業者自身が適正な判断を行ない、それによって次の作業における生産実績の自然な管理を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。本発明の進捗管理装置は、PLC、マイクロコンピュータ、パーソナルコンピュータ、等のデータ処理装置におけるハードウェアとソフトウェアによって実現する。本発明の進捗管理装置における構成の一例を図1に示す。図1において、100は進捗管理装置、200は進捗管理装置を適用した生産装置である。進捗管理装置100において、10は設定記憶手段、20は信号処理手段、30は演算処理手段、40は表示入出力手段である。
設定記憶手段10は、進捗管理装置100において、そのものを動作させるためのデータを設定し記憶する手段である。たとえば、一勤務目標数量、目標能率、目標停止作業時間、評価、等についての設定を行ない、設定されたデータを記憶する。一勤務目標数量は一勤務(1日)における生産の目標数量である。目標能率は稼動時間当たりの生産数量の目標値である。目標停止作業時間は作業者が生産装置200を停止して行なう作業である停止作業の内容ごとにあらかじめ設定された停止作業時間の目標値である。評価は一勤務目標数量に対する達成度の指標であり、表示の背景色、数値としての進度、文字としての評価、等である(詳細を後述する)。
【0008】
信号処理手段20は、生産装置200における各部に設けられた検出器、生産装置200の制御を行なう制御器(PLC:programmable logic cotroller)から信号を入力し、その入力信号の基づいて対象となる計測量やデータを得る手段である。たとえば、実績出来高計測手段、実績稼動時間計測手段、実績停止作業時間計測手段、停止作業内容特定手段、生産実績収集手段、等が含まれる。実績出来高計測手段は生産装置100が生産を開始してから現在時刻までに実際に生産装置100が生産した生産数量である実績出来高を計測値として出力する。実績稼動時間計測手段は生産装置100が生産を開始してから現在時刻までに実際に生産装置100が稼動した時間である実績稼働時間を計測値として出力する。実績停止作業時間計測手段は生産装置100が生産を開始してから現在時刻までに作業者が所定の作業(停止作業)を行なうために生産装置100を実際に停止した実績停止時間を計測値として出力する。停止作業内容特定手段は入力した信号に基づいて停止作業の内容を特定する。生産実績収集手段は生産装置における生産の開始から終了までの生産実績として最大生産速度、平均生産速度、生産数量を含むデータを入力した信号に基づいて収集する。
【0009】
演算処理手段30は、設定記憶手段10によって設定され記憶されているデータ、信号処理手段20によって計測された計測値、データ、等に基づいて新たに所望のデータを得るための数値的な演算、データの処理を行なう手段である。たとえば、目標出来高演算手段、目標作業時間抽出手段、等が含まれる。目標出来高演算手段は設定記憶手段10にあらかじめ設定され記憶されている目標能率に実績稼動時間計測手段が計測した実績稼働時間を乗算することにより目標出来高を演算する。目標作業時間抽出手段は、停止作業の内容ごとにあらかじめ設定記憶手段10によって設定され記憶されている複数の目標停止作業時間から停止作業内容特定手段によって特定された停止作業に対応する目標停止作業時間を抽出する。評価演算手段は、実績出来高と目標出来高の差として進度を演算する。また、評価設定画面において設定が行なわれた設定内容に基づいて進度に対応する評価と背景色を演算する
【0010】
表示入出力手段40は、進捗管理装置100において、表示等の出力と作業者が入力を行なうための手段である。たとえば、設定記憶手段10によって設定と記憶が行なわれるときには、表示入出力手段40は、設定入力を行なう作業者(ユーザ)に対してユーザインタフェースを提供する。また、表示入出力手段40は、信号処理手段20によって計測された計測値、演算処理手段30によって得られたデータ、等を表示する。それらの表示と入力は、表示入出力手段40に表示された画面において行なわれる。たとえば、画面としては、初期画面、運転中画面、実績評価画面、診断画面、ハイスコア画面、評価設定画面、等である(詳細を後述する)。
【0011】
以上、構成について説明した。次に、スリッター機を適用例として、本発明の進捗管理装置について詳細を説明する。
スリッター機は全長の長い広幅のウェブの巻取体を巻解きながら走行方向に切断するスリットを行い、全長の短い狭幅のウェブの巻取体すなわち小巻を作成する装置である。このスリッター機においては、広幅のウェブの巻取体に存在する欠陥部分を除去しながら小巻を作成することが行なわれる。たとえば、グラビア印刷におけるドクター筋のような欠陥は幅方向における特定の部位にだけ発生する欠陥であるから、スリットを行なって狭幅となったウェブの中からその欠陥部位が含まれる不良品のウェブだけを除去すれば他の良品のウェブを無駄にしないで済む。この不良除去は作業者の手作業によって行なわれるため、作業者の個人差が生産性に大きく影響する。
【0012】
本発明の進捗管理装置を適用する生産装置200の具体例であるスリッター機の説明図を図2〜図4に示す。図2はスリッター機の側面図、図3はスリッター機の上面図。図4は本発明の進捗管理装置とスリッター機との接続図である。
図2〜図3において、205は操作盤、210は給紙部、211,212は給紙軸、220はスリット部、230は排紙部、231a,232a,232bは排紙アーム、233は排紙軸、300は広幅巻取体、401a,402a,402bは狭幅巻取体である。
また、図4において、201〜205は本発明の進捗管理装置がスリッター機の稼動状態を検出するためにスリッター機に設けられたリレーである。201は機械速度信号を出力するためのSSR(ソリッドステートリレー)、202は給紙作業信号を出力するためのドライ接点(機械的に開閉する接点)、203は排紙作業信号を出力するためのドライ接点、205は休憩/昼休信号を出力するためのドライ接点である。また、PLCは本発明の進捗管理装置においてデータ処理を行なう部分、すなわち、設定記憶手段10、信号処理手段20、演算処理手段30、等を構成し、タッチパネルディスプレイは、表示入出力手段40、等を構成する。
【0013】
スリッター機において広幅巻取体300は給紙部210の給紙軸211,212に取付けられている。広幅巻取体300は円筒形状の巻芯にウェブを巻取った形態となっている。また給紙軸211,212はチャッキングコーンを有する。給紙軸211,212は広幅巻取体300の巻芯をチャッキングコーンによって支持する。ドライ接点202は給紙軸211,212によって広幅巻取体300が支持されているか否かを示す接点信号である。広幅巻取体300は給紙部210において巻解かれて、給紙部210からスリット部220に送給される。
スリット部220においては、ウェブの幅方向(左右方向;走行方向に対して直角方向)に所定の間隔で複数のスリット刃が配列している。広幅のウェブはそのスリット刃の部位を走行することによって走行方向に切断され複数の狭幅のウェブとなる。狭幅のウェブはスリット部220から排紙部230に送給される。SSR201が出力する機械速度信号はウェブの走行速度を表す信号である。
【0014】
排紙部230においては、複数の狭幅巻取体401a,402a,402bの巻芯が排紙部230の排紙軸233に取付けられている。切断により得られた複数の狭幅のウェブは、それらの巻芯によって巻取られ、狭幅巻取体401a,402a,402bを形成する。このとき、排紙アーム231a,232a,232bは狭幅巻取体401a,402a,402bの外周面をその先端の押圧コロによって押圧している。この排紙アーム231a,232a,232bは、排紙作業時に作業者が上下動させることから、排紙作業を行なっていることを示す排紙作業信号をその上下動を検出して取出すことができる。ドライ接点203はその排紙作業信号を出力する。
スリッター機における操作盤205は、作業中であるか休憩/昼休みであるかを作業者が選択するセレクタスイッチ1と、作業中であるか切替中であるかを作業者が選択するセレクタスイッチ2とを有する。ドライ接点205はセレクタスイッチ1のドライ接点である。
【0015】
次に、本発明の進捗管理装置の動作についてスリッター機との相互関係を含め図を参照して説明する。
スリッター機における勤務開始から勤務終了までの動作の過程について一例を図5に示す。勤務開始の前に、作業者は進捗管理装置の勤務開始画面(初期画面)を開く。勤務開始画面は、進捗管理装置の電源をONとし立ち上げたときに表示入出力手段40であるタッチパネルディスプレイに表示される。また、他の画面から勤務開始画面を開くこともできる。勤務開始画面の一例を図6に示す。勤務開始画面において、作業者は、一勤務において生産する目標の数値である一勤務目標数量を入力する。タッチパネルディスプレイに表示された図6に示す勤務開始画面において、勤務目標数量の表示部を作業者が指先で押すことにより、タッチパネルディスプレイにはテンキー画面が表示される。そのテンキー画面において数値を作業者が指先で押すことにより一勤務目標数量の入力が行なわれる。図6に示す一例においては「30000」と入力が行なわれている。この数値は設定記憶手段10によって一勤務目標数量としてメモリに記憶される。
【0016】
図6には示していないが勤務開始画面(初期画面)において、または、その他の画面において、一勤務目標数量だけでなくその他の設定値である目標能率、目標停止作業時間、評価、等を同様の方法で入力することができる。進捗管理装置の電源をONとし立ち上げたときに、それらの数値は標準値として設定された数値であり、設定記憶手段10によってメモリに記憶されている。作業者は、自身の熟練度等を考慮して新たに設定を行なうことができ、設定された数値はその一勤務においてだけ有効となる。
評価は、図13に一例を示す評価設定画面において設定が行なわれる。評価設定画面も、他の画面と同様で、表示入出力手段40であるタッチパネルディスプレイに表示される。その画面の評価設定におけるS、A、B、C、Dの各表示部を作業者が指先で押すことにより選択され、作業者はテンキー画面から数値を入力すると、その選択された表示部に入力した数値が表示される。評価は、実績出来高と目標出来高の差として設定される数値であり、実績が上回るときはプラスの数値、下回るときはマイナスの数値である。この数値は設定記憶手段10によって評価としてメモリに記憶される。
【0017】
次に、勤務開始画面(初期画面)において、作業者は、図5に示す「勤務開始ON」の作業として、その画面に表示されている開始ボタンを指先で押すと、進捗管理装置は勤務中のモードとなり、運転中画面が表示入出力手段40であるタッチパネルディスプレイに表示される。また、作業者はスリッター機の運転を開始し、図5に示すように、スリッター機の機械速度を定常速度まで上昇させる。
運転中画面の一例を図7に示す。図7に示すように、運転中画面おける勤計画の表示部には設定されている一勤務目標数量「30000」が表示され、時計画の表示部には目標出来高「2500」が表示されている。目標出来高は演算処理手段30の目標出来高演算手段によって演算が行なわれる。目標出来高演算手段は、信号処理手段20の実績稼動時間計測手段が計測した実績稼動時間と設定されている目標能率とを乗算することにより目標出来高を演算する。また、実績の表示部には信号処理手段20の実績出来高表示手段によって計測された、その時点における実測出来高「7000」が表示される。進度の表示部には実績出来高と目標出来高の差、すなわち進度「4500」が表示されており、その隣にはその進度に対応した評価「S」が表示され、背景色は「緑色」として表示されている。進度、評価、背景色は演算処理手段30の評価演算手段によって演算が行なわれる。評価演算手段は、実績出来高と目標出来高の差として進度を演算するとともに、評価設定画面において設定が行なわれた設定内容に基づいて進度に対応する評価(S,A,B,C,D)と背景色を演算する。
【0018】
運転中画面の別の一例を図8と図9に示す。図8においては、勤計画の表示部には一勤務目標数量「30000」が表示され、時計画の表示部には目標出来高「4500」が表示され、実績の表示部には実測出来高「4500」が表示され、進度の表示部には進度「0」が表示され、評価の表示部には評価「B」が表示され、背景色は「白色」が表示されている。
また、図9においては、勤計画の表示部には一勤務目標数量「30000」が表示され、時計画の表示部には目標出来高「5500」が表示され、実績の表示部には実測出来高「500」が表示され、進度の表示部には進度「−5000」が表示され、評価の表示部には評価「D」が表示され、背景色は「赤色」が表示されている。
本発明の進捗管理装置によって、図7〜図9に一例を示すように運転中画面の表示が行なわれ、作業者がその表示を見ることによって、作業者自身が適正な判断を行ない、それによって進捗状況の自然な管理を可能とする。
【0019】
図5において、作業者が「勤務開始ON」を行なってスリッター機を稼動させて、全長の長い広幅巻取体300から複数の全長の短い狭幅巻取体401a,402a,402bが作られる。所定の長さの狭幅のウェブを巻取った狭幅巻取体401a,402a,402bは排紙軸233から外され、排紙軸233に取り付けられた新たな巻芯に狭幅のウェブが巻取られる。図5における「排紙」はその工程を示している。このとき、狭幅巻取体401a,402a,402bの外周面を押圧していた排紙アーム231a,232a,232bは、そのアーム回転軸の回りに回転して、その先端の押圧コロは狭幅巻取体401a,402a,402bから離れる。この排紙アーム231a,232a,232bの回転と、機械速度信号とを検出することにより、信号処理手段20の停止作業内容特定手段は「排紙」の工程を特定し、実績停止作業時間計測手段はその工程における停止時間を計測する。
【0020】
図5において、「排紙」の工程の後に、再びスリッター機を稼動させて、全長の長い広幅巻取体300から複数の全長の短い狭幅巻取体401a,402a,402bが作られる。その途中で、広幅巻取体300に巻取られていた広幅のウェブがすべて送給されると給紙軸211,212に新たな広幅巻取体300を取付ける作業が作業者によって行なわれる。図5における「給紙」はその工程を示している。給紙軸211,212に設けられた、給紙チャッキング圧力センサのON/OFFと、機械速度信号とを入力することにより、信号処理手段20の停止作業内容特定手段は「給紙」の工程を特定し、実績停止作業時間計測手段はその工程における停止時間を計測する。
【0021】
欠陥部位が含まれる広幅巻取体300を使用するときには、作業者は欠陥部位の広幅巻取体300における位置を指示する情報を頼りに、欠陥部位を特定する作業を行なう。図5における「不良探し」はその工程を示している。「不良探し」においては、作業者が広幅のウェブを目視して品質を確認するため、ウェブの走行速度、すなわち機械速度を低下させる。そのとき、巻出しブレーキの押ボタンを操作することが行なわれる。その押ボタン操作と、機械速度信号とを入力することにより、信号処理手段20の停止作業内容特定手段は「不良探し」の工程を特定し、実績停止作業時間計測手段はその工程における停止時間を計測する。
また、作業者は欠陥部位を特定すると、欠陥部位を含むウェブが製品である狭幅巻取体401a,402a,402bに含まれないように除去する作業を行なう。図5における「不良除去」はその工程を示している。「不良除去」においては、作業者が欠陥部位を除去するために巻出しブレーキの押ボタンを操作したりウェブの走行を停止させることが行なわれる。その押ボタン操作と、機械速度信号(停止)とを入力することにより、信号処理手段20の停止作業内容特定手段は「不良除去」の工程を特定し、実績停止作業時間計測手段はその工程における停止時間を計測する。
【0022】
作業者は勤務開始ONを行なってスリッター機を稼動させるが、所定の休憩、昼食、等のためはスリッター機を停止させる。この停止は、作業者が生産に係わる作業を行なうのではないから停止作業とは区別する。図5における「休憩/停止」はその期間を示している。「休憩/停止」のときには、作業者は、操作盤205の作業中と休憩のいずれかを選択する休憩セレクトスイッチをONとする。そのセレクトスイッチのドライ接点信号により信号処理手段20の停止作業内容特定手段は「休憩/停止」の工程を特定し、実績停止作業時間計測手段はその工程における停止時間を計測する。
なお、実績出来高計測手段は、停止作業と「休憩/停止」を除く時間帯における機械速度信号の積分値として実績出来高を計測する。すなわち、実績出来高は、図5に示す一例においては、「勤務開始ON」と「排紙」の間の台形グラフの面積と、「排紙」と「給紙」の間の台形グラフの面積と、「給紙」の後の「不良探し」を除く台形グラフの面積について、「勤務開始ON」からその計測時刻までの部分の合計面積として与えられる。
また、実績稼動時間計測手段は「勤務開始ON」からの経過時間から「休憩/停止」の時間を除いた時間として実績稼動時間を計測する。
【0023】
一勤務を終えると作業者はスリッター機を停止するとともに、進捗管理装置タのッチパネルディスプレイにおける運転中画面における初期画面ボタンを押して、タッチパネルディスプレイに初期画面を表示させる。さらに、その初期画面において、作業者は終了ボタンを押して、タッチパネルディスプレイに実績評価画面を表示させる。図5において、「勤務終了ON」はその一勤務を終える過程を示している。実績評価画面の一例を図10に示す。図10に示すように、実績評価画面にはMax速度の表示部に「200」が表示されている。このMax速度は信号処理手段20の生産実績収集手段が機械速度信号、等に基づいて勤務終了ONまでの最高速度をメモリに記憶しておき、それを表示入力手段40が実績評価画面に表示したものである。
同様に、実績評価画面における数量の表示部の「38000」は実績出来高計測手段によって計測された最終的な、すなわち勤務終了ONまでの実績出来高を表示入力手段40が実績評価画面に表示したものである。
また、実績評価画面におけるC能率の表示部の「4500」は、生産実績収集手段が一勤務の開始から終了までのC能率を演算し、そのC能率を表示入力手段40が実績評価画面に表示したものである。実績出来高計測手段によって計測された最終的な実績出来高と、実績稼動時間計測手段が計測した最終的な実績稼動時間に基づいて、生産実績収集手段が実績出来高を実績稼動時間によって除算すること、すなわち(C能率)=(実績出来高)/(実績稼動時間)によりC能率を得ることができる。
また、実績評価画面におけるランクの表示部の「B」は、前述した評価と同様であって、一勤務の評価に相当する。評価演算手段は、最終的な実績出来高と目標出来高の差として進度を演算するとともに、評価設定画面において設定が行なわれた設定内容に基づいて進度に対応するランク、すなわち一勤務の評価(S,A,B,C,D)と背景色を演算する。ランクの表示部の「B」は、そのランクと背景色を表示入力手段40が実績評価画面に表示したものである
【0024】
実績評価画面において、作業者が診断画面ボタンを押すことにより、診断画面を表示させることができる。診断画面の一例を図11に示す。図11に示すように、A能率、給紙(秒/回)、排紙(回/秒)、休憩/昼休(分)、不良除去の表示部において実績と目標とが併記して表示されている。
A能率は、実績出来高計測手段によって計測された最終的な実績出来高と、実績稼動時間計測手段が計測した最終的な実績稼動時間と、実績停止作業時間計測手段によって計測された実績停止作業時間に基づいて、生産実績収集手段が実績稼動時間から実績停止作業時間を減算した値によって実績出来高を除算すること、すなわち(A能率)=(実績出来高)/((実績稼動時間)−(実績停止作業時間))によりA能率を得ることができる。
給紙(秒/回)、排紙(回/秒)は、停止作業内容特定手段によって特定された給紙作業と排紙作業と、実績停止作業時間検束手段が計測した実績停止作業時間とに基づいて、生産実績収集手段が、各作業ごとに実績停止作業時間の平均値を演算することにより得ることができる。
休憩/昼休(分)は、休憩/昼休のドライ接点信号に基づいて生産実績収集手段が演算することにより得ることができる。
不良除去は、停止作業内容特定手段が図5に示す「不良除去」の工程を特定し、実績停止作業時間計測手段が計測した停止時間に基づいて、生産実績収集手段が演算することにより得ることができる。
【0025】
実績評価画面において、作業者がハイスコア画面ボタンを押すことにより、ハイスコア画面を表示させることができる。ハイスコア画面の一例を図12に示す。図12に示すように、Max速度、数量、C能率の表示部においてその数値とその数値を取得した年月日、その数値を取得した作業者IDとが併記して表示されている。
生産実績収集手段は実績評価画面をPLCにおけるカレンダーと時刻データ、設定データ、等に基づいて、年月日、作業者ID、等とともにメモリに更新記憶する機能を有している。ハイスコア画面は生産実績収集手段がメモリに記憶した複数の実績評価画面の中から設定された特定の条件に合致する実績評価画面を抽出し、ハイスコア画面としてタッチパネルディスプレイに表示する。
【0026】
以上、本発明の進捗管理装置についてスリッター機に適用した一例を挙げて説明した。この一例に限らず本発明は様々な態様で実施することができる。
特に、本発明においては、生産の進捗状況を作業者に明示することが重要である。上述においては数値表示を基本としたが、グラフィカルな表示を行なうことも効果的である。そのグラフィカルな表示の一例を図14に示す。図14に示すように、縦軸は数量すなわち実績出来高を示す軸であり、横軸は勤務開始ONを原点とする経過時間を示す軸である。そして、目標出来高と実績出来高を線によって表示する。また、勤務終了ONとなる時刻にはランクS〜ランクDが到達目標点として表示されている。目標出来高の到達目標点は、通常は、ランクBであるが、図14に示す一例においてはランクAとし、より高い目標を目指すことが示されている。また、時間が定められている昼休と、時間が不定の休憩も表示される。
また、上述した画面における表示だけでなく実績と目標の相違に応じて警告音を鳴らす警告音発生手段を具備するように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の進捗管理装置における構成の一例を示す図である。
【図2】スリッター機の側面図である。
【図3】スリッター機の上面図である。
【図4】本発明の進捗管理装置とスリッター機との接続図である。
【図5】スリッター機における勤務開始から勤務終了までの過程について一例を示す図である。
【図6】本発明の進捗管理装置における勤務開始画面の一例を示す図である。
【図7】本発明の進捗管理装置における運転中画面の一例(その1)を示す図である。
【図8】本発明の進捗管理装置における運転中画面の一例(その2)を示す図である。
【図9】本発明の進捗管理装置における運転中画面の一例(その3)を示す図である。
【図10】本発明の進捗管理装置における実績評価画面の一例を示す図である。
【図11】本発明の進捗管理装置における診断画面の一例を示す図である。
【図12】本発明の進捗管理装置におけるハイスコア画面の一例を示す図である。
【図13】本発明の進捗管理装置における評価設定画面の一例を示す図である。
【図14】本発明の進捗管理装置におけるグラフィカル表示した運転中画面を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
10 設定記憶手段
20 信号処理手段
30 演算処理手段
40 表示入出力手段
100 進捗管理装置
200 生産装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産装置の状態を示す信号に基づいて実績出来高を計測する実績出来高計測手段と、
前記信号に基づいて実績稼動時間を計測する実績稼動時間計測手段と、
あらかじめ設定された目標能率に前記実績稼動時間を乗算することにより目標出来高を演算する目標出来高演算手段と、
前記実績出来高と前記目標出来高との相違に応じた背景色を演算する評価演算手段と、
前記背景色で前記実績出来高と前記目標出来高を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする進捗管理装置。
【請求項2】
請求項1記載の進捗管理装置において、前記評価演算手段は前記実績出来高と前記目標出来高の差の数値として進度を演算し、前記表示手段は前記進度を表示することを特徴とする進捗管理装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の進捗管理装置において、前記評価演算手段は前記実績出来高と前記目標出来高との相違に応じた文字として評価を演算し、前記表示手段は前記評価を表示することを特徴とする進捗管理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の進捗管理装置において、前記生産装置を停止させて行なう作業である停止作業の実績停止作業時間を前記信号に基づいて計測する実績停止作業時間計測手段と、前記信号に基づいて前記停止作業の内容を特定する停止作業内容特定手段と、停止作業の内容ごとにあらかじめ設定された目標停止作業時間から前記特定された停止作業の内容の目標停止作業時間を抽出する目標停止作業時間抽出手段とを具備し、前記表示手段は前記実績停止作業時間と前記目標停止作業時間とを対比させて表示することを特徴とする進捗管理装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の進捗管理装置において、前記生産装置における生産の開始から終了までの生産実績として最大生産速度、平均生産速度、生産数量を含むデータを前記入力した信号に基づいて収集する生産実績収集手段を具備し、前記表示手段は前記データを表示することを特徴とする進捗管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−152497(P2008−152497A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339270(P2006−339270)
【出願日】平成18年12月16日(2006.12.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】