説明

遅延回路及びそれを用いた半導体装置

【課題】入力信号に精度の高い遅延を付加した出力信号を生成することが可能な遅延回路を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる遅延回路は、第1電流I0及び第1電流I0と略同一の第2電流I0を生成する電流ミラー回路と、ゲートに基準電圧Vrが印加されソース−ドレイン間に第1電流I0が流れることにより電圧V0を生成するトランジスタ607と、電圧V0に応じた参照電圧V1を生成する抵抗素子608,609と、コンデンサ613と、第2電流I0の電荷をコンデンサ613に蓄積し、又は、コンデンサ613に蓄積された電荷を放出する充放電部と、充放電部とコンデンサ613との間に設けられ、ゲートに基準電圧Vrが印加されソース−ドレイン間に第2電流I0が流れることにより、比較電圧V2を生成するトランジスタ611と、比較電圧V2と参照電圧V1とを比較し比較結果を出力信号Voutとして出力する電圧比較部619と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遅延回路及びそれを用いた半導体装置に関し、特にタイミング調整に適した遅延回路及びそれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体記憶装置において、メモリセルに記憶されたデータを読み出す場合、その読み出し動作のタイミング(例えば、クロック信号のタイミング)は遅延回路によって調整されるのが一般的である。
【0003】
遅延回路によってタイミング調整される半導体記憶装置等の半導体装置は、車載マイコンや携帯プレイヤ等のポータブル機器等、幅広い用途で使用されている。しかし、近年のプロセス微細化により、トランジスタの閾値電圧のばらつきが大きくなってきており、半導体装置のタイミング調整が困難になってきている。例えば、半導体記憶装置において、メモリセルに記憶されたデータを読み出す場合、その読み出し動作のタイミングを精度良く調整することが困難になってきている。その結果、メモリセルに記憶されたデータの読み出し動作が開始されてから実際にデータが読み出されるまでの時間のマージンが無くなってしまい、正確なデータの読み出しが行われない可能性があった。
【0004】
また、車載品等に用いられる半導体装置は、−40℃から150℃の幅広い温度範囲で正確に動作することが求められている。例えば、半導体記憶装置の場合、−40℃から150℃の幅広い温度範囲で正確にデータを読み出せることが求められている。
【0005】
さらに、携帯電話、デジタルカメラ、MP3の携帯プレイヤ等のポータプル機器は、低電圧で動作することが求められている。一方で、家庭用のAC電源に接続して使用される電子機器は、3Vや5Vの高電圧で動作することが求められている。このように、半導体装置は、低電圧から高電圧まで幅広い電圧範囲で正確に動作することが求められている。
【0006】
要するに、半導体装置は、トランジスタの閾値電圧のばらつきに影響を受けず、幅広い温度範囲、幅広い電圧範囲で、精度良く動作することが求められている。例えば、半導体記憶装置の場合、トランジスタの閾値電圧のばらつきに影響を受けず、幅広い温度範囲、幅広い電圧範囲で、正確にデータを読み出せることが求められている。
【0007】
なお、タイミング調整に用いられる遅延回路は、抵抗素子、容量素子及びトランジスタ等によって構成される。そのため、当該遅延回路では、トランジスタの閾値電圧のばらつき、温度変化及び電源電圧変動等の影響を受けてその遅延値が変化しやすく、精度良くタイミング調整することは容易ではない。
【0008】
このような問題に対する解決策が特許文献1に開示されている。
【0009】
図4に示すように、特許文献1に開示されたディレイ回路は、第1,第2の電流ミラー回路10,11と、分圧回路を構成する第1,第2の抵抗8,9と、出力回路が直列接続された第1,第2のスイッチSW1,SW2と、容量12と、コンパレータ13とで構成されている。
【0010】
詳しくは、第1の電流ミラー回路10のグローバルノード14は電源のVCCに接続され、第2の電流ミラー回路11グローバルノード15は電源のGNDに接続されている。第1の電流ミラー回路10の1次側と第2の電流ミラー回路11の1次側の間には、直列接続された第1,第2の抵抗8,9が接続されている。
【0011】
第1の電流ミラー回路10の2次側と第2の電流ミラー回路11の2次側の間には、出力回路が直列接続された第1,第2のスイッチSW1,SW2が接続されている。
【0012】
第1,第2のスイッチSW1,SW2はHIアクティブの半導体スイッチで、第1のスイッチSW1と第2のスイッチSW2との接続点のノードNはコンパレータ13の非反転入力(+)に接続され、このラインと電源のGNDの間には容量12が接続されている。
【0013】
コンパレータ13の反転入力(−)には、第1の抵抗8と第2の抵抗9との接続点Mの分圧電圧が印加されている。ここで第1,第2の抵抗8,9の抵抗値はRである。
【0014】
前記第1のスイッチSW1の制御ラインにはインバータ16を介して入力1の信号が反転して印加され、前記第2のスイッチSW2の制御ラインには入力1の信号がそのまま印加されている。入力1に入力された信号のディレイ出力はコンパレータ13の出力の出力2に発生する。
【0015】
なお、第1の電流ミラー回路10はPMOSトランジスタM1,M2によって構成され、第2の電流ミラー回路11はNMOSトランジスタM3,M4によって構成される。
【0016】
次に従来例の動作を説明する。
このディレイ回路は、第1の抵抗8と第2の抵抗9と第1,第2の電流ミラー回路10,11により、電源変動に応じた電流Iを発生させ、それをミラーし、第1のスイッチSW1または第2のスイッチSW2がアクティブ時に容量12にチャージまたはディスチャージする電流として使用する。
【0017】
また、コンパレータ13の基準電圧として、抵抗8,9が接続されたノードMの電圧を使用することで、電源電圧をVCCとすると、ほぼVCC/2となり、これも電源変動に応じ変化する。
【0018】
第1の抵抗8、第2の抵抗9が接続された電流Iを発生させる経路の第1の電流ミラー回路10と第2の電流ミラー回路11で発生する電圧は、VCC大時には、VCCに対し小さいので、I=VCC/2Rとあらわせる。また、第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2が接続された第1の電流ミラー回路10の最大電圧は、VCC大時にはVMAX=VCC、第2の電流ミラー回路11の最小電圧は、VMIN=0とあらわせる。
【0019】
したがって、出力1のディレイ量Tは、容量12の容量値をCとすると、以下の式が成り立つ。
【0020】
(VMAX−VCC/2)×C=(VCC/2−VMIN)×C
=VCC/2×C
=I×T
【0021】
ここで、I=VCC/2Rより、T=RCとなる。すなわち、VCC変動があっても、入力の立ち上がり、立ち下がりからのディレイ量は、常にRCで一定となり、ディレイ量の変動が抑えられ、デューティの保存性も保たれる、と特許文献1には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2003−289242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかし、関連する技術のディレイ回路(遅延回路)は、トランジスタの閾値電圧がばらついてしまうと、精度良くタイミング調整することができないという問題があった。換言すると、関連する技術のディレイ回路は、トランジスタの閾値電圧がばらついてしまうと、入力信号に精度の高い遅延を付加した出力信号を生成することができないという問題があった。
【0024】
例えば、この遅延回路が半導体記憶装置のタイミング調整に用いられた場合、メモリセルに記憶されたデータの読み出し動作が開始されてから実際にデータが読み出されるまでの時間を一定に保つことができない。それにより、メモリセルに記憶されたデータの読み出し動作が開始されてから実際にデータが読み出されるまでの時間のマージンが無くなってしまい、正確なデータの読み出しが行われないという問題があった。以下、その理由を具体的に説明する。
【0025】
図5は、標準的な半導体製造工程にて製造されたトランジスタの閾値電圧のばらつきを示す図である。図5に示すように、ディレイ回路に設けられたPMOSトランジスタM1,M2の閾値電圧VtP、及び、NMOSトランジスタM3,M4の閾値電圧VtNは、それぞれ製造範囲Sの範囲内でばらついている。
【0026】
なお、製造範囲Sとは、閾値電圧VtPの上限値である閾値電圧Pbと、閾値電圧VtPの下限値である閾値電圧Paと、閾値電圧VtNの上限値である閾値電圧Nbと、閾値電圧VtNの下限値である閾値電圧Naと、によって囲まれる領域のことである。なお、閾値電圧Pceは、閾値電圧VtPのセンター値である。閾値電圧Nceは、閾値電圧VtNのセンター値である。
【0027】
以下の説明では、閾値電圧VtP,VtNがそれぞれセンター値である閾値電圧Pce,Nceを示す場合を「通常状態」と称す。閾値電圧VtP,VtNがそれぞれ上限値である閾値電圧Pb,Nbを示す場合を「閾値電圧が高い(Vt高状態)」と称す。閾値電圧VtP,VtNがそれぞれ下限値である閾値電圧Pa,Naを示す場合を「閾値電圧が低い(Vt低状態)」と称す。
【0028】
なお、トランジスタの閾値電圧VtP,VtNは温度変化によっても変動する。温度変化による閾値電圧VtP,VtNの変動は、一般的にトランジスタのソース−ドレイン間のリークによるものとされている。したがって、トランジスタの閾値電圧VtP,VtNがセンター値である閾値電圧Pce,Nceを示す場合(通常状態)でも、リーク量が増加する高温では当該閾値電圧VtP,VtNは低くなり、リーク量が減少する低温では当該閾値電圧VtP,VtNは高くなる。
【0029】
図6は、図4に示すディレイ回路の動作を示すタイミングチャートである。図6には、入力1に入力された信号(便宜上、入力信号1と称す)と、出力2から出力された信号(便宜上、出力信号2と称す)と、参照電圧としてのノードMの電圧Vmと、比較電圧としてのノードNの電圧Vnと、が示されている。なお、通常状態におけるノードMの電圧をVmc、Vt高状態におけるノードMの電圧をVmb、Vt低状態におけるノードMの電圧をVmaと区別して説明する場合がある。また、通常状態におけるノードNの電圧をVnc、Vt高状態におけるノードNの電圧をVnb、Vt低状態におけるノードNの電圧をVnaと区別して説明する場合がある。さらに、通常状態における出力信号2を出力信号2c、Vt高状態における出力信号2を出力信号2b、Vt低状態における出力信号2を出力信号2aと区別して説明する場合がある。
【0030】
図6の例では、初期状態である時刻t30にて、入力信号1はLレベル(接地電圧GNDレベル)を示している。このとき、スイッチSW1がオフしスイッチSW2がオンするため、ノードNの電圧Vnc,Vnb,Vnaは、何れも接地電圧GNDレベルを示す。一方、ノードMの電圧Vmc,Vmb,Vmaは、それぞれ異なる値を示すが(後述)、何れも接地電圧GNDレベルよりも大きな中間電位(電源電圧VCC/2)程度を示す。そのため、出力信号2c,2b,2aは何れもLレベルを示している。
【0031】
時刻t31にて、入力信号1がLレベルからHレベル(電源電圧VCCレベル)に変化すると、スイッチSW1がオンしスイッチSW2がオフするため、ノードNの電圧Vnc,Vnb,Vnaは一定の傾きで上昇し始める。一方、ノードMの電圧Vmc,Vmb,Vmaは、PMOSトランジスタM1及びNMOSトランジスタM3のそれぞれのドレイン電圧の差電圧を抵抗8,9の抵抗比により抵抗分圧したものであるから、それぞれトランジスタM1,M3の閾値電圧VtP,VtNのばらつきによって異なる値を示す。つまり、ノードMの電圧Vmc,Vmb,Vmaは、通常状態、Vt高状態、Vt低状態の場合でそれぞれ異なる値を示す。
【0032】
Vt高状態では、時刻t32にて、ノードNの電圧VnbがノードMの電圧Vmbにまで達する(交点Z)。それにより、コンパレータ13は、比較結果をLレベルからHレベルに切り替えて出力信号2bとして出力する。
【0033】
通常状態では、時刻t33にて、ノードNの電圧VncがノードMの電圧Vmcにまで達する(交点Y)。それにより、コンパレータ13は、比較結果をLレベルからHレベルに切り替えて出力信号2cとして出力する。
【0034】
Vt低状態では、時刻t34にて、ノードNの電圧VnaがノードMの電圧Vmaにまで達する(交点X)。それにより、コンパレータ13は、比較結果をLレベルからHレベルに切り替えて出力信号2aとして出力する。
【0035】
そして、時刻t35にて、容量12に対する電荷の供給が完了し、最終的にノードNの電圧Vnc,Vnb,Vnaは何れも電源電圧VCCレベルまで上昇する。
【0036】
このように、入力信号1がLレベルからHレベルに変化してから(時刻t31)、出力信号2がLレベルからHレベルに変化するまで(時刻t32,t33,t34)の時間は、トランジスタの閾値電圧VtP,VtNのばらつきによって異なる。つまり、トランジスタの閾値電圧VtP,VtNがばらつくことにより、入力信号1がLレベルからHレベルに変化してから(時刻t31)、出力信号2がLレベルからHレベルに変化するまで(時刻t32,t33,t34)の時間が、所望の時間(遅延時間)と異なってしまう可能性がある。
【0037】
以上のように、関連する技術のディレイ回路(遅延回路)は、トランジスタの閾値電圧のばらつきにより、入力信号に精度の高い遅延を付加した出力信号を生成することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明にかかる遅延回路は、入力信号に遅延を付加した出力信号を生成する遅延回路であって、第1電流及び当該第1電流に比例した第2電流を生成する電流ミラー回路と、ゲートに所定電圧が印加されてソース−ドレイン間に前記第1電流が流れることにより、第1電圧を生成する第1トランジスタと、前記第1電圧に応じた参照電圧を生成する参照電圧生成部と、容量素子と、前記入力信号の電圧レベルに基づいて、前記第2電流の電荷を前記容量素子に蓄積し、又は、前記容量素子に蓄積された電荷を放出する、充放電部と、前記充放電部と前記容量素子との間に設けられ、ゲートに前記所定電圧が印加されてソース−ドレイン間に前記第2電流が流れることにより、第2電圧を生成する第2トランジスタと、前記第2電圧と前記参照電圧とを比較し、比較結果を前記出力信号として出力する比較部と、を備える。
【0039】
上述のような回路構成により、入力信号に精度の高い遅延を付加した出力信号を生成することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、入力信号に精度の高い遅延を付加した出力信号を生成することが可能な遅延回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる遅延回路の構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる遅延回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の実施の形態2にかかる遅延回路の構成例を示す図である。
【図4】関連する技術の構成を示す図である。
【図5】トランジスタの閾値電圧のばらつきを示す図である。
【図6】関連する技術の課題を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として本発明の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0043】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0044】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0045】
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1にかかる遅延回路100の構成例を示す図である。本実施の形態にかかる遅延回路100は、比較電圧V2の変化の傾きと参照電圧V1とのそれぞれを、トランジスタの閾値電圧のばらつきに応じて変化させるため、比較電圧V2と参照電圧V1とが一致するタイミングのずれを従来よりも小さくすることができる。それにより、本実施の形態にかかる遅延回路100は、入力信号Vinに精度の高い遅延を付加した出力信号Voutを出力することができる。以下、具体的に説明する。
【0046】
図1に示すように、遅延回路100は、基準電圧発生部615と、比較用基準電圧生成部616と、電荷充放電部617と、容量部618と、電圧比較部(比較部)619と、インバータ621と、を備える。
【0047】
(遅延回路100の構成)
まず、図1に示す遅延回路100の構成について説明する。
【0048】
(基準電圧発生部615)
基準電圧発生部615は、基準電圧(所定電圧)Vrを発生する部である。基準電圧発生部615は、定電圧源625を有する。定電圧源625の一端には、電源から接地電圧GNDの供給される接地電圧端子(以下、接地電圧端子GNDと称す)が接続され、定電圧源625の他端には、ノード601が接続される。そして、定電圧源625は、ノード601に向けて基準電圧Vrを出力する。
【0049】
(比較用基準電圧生成部616)
比較用基準電圧生成部616は、参照電圧V1を生成する部である。比較用基準電圧生成部616は、トランジスタ(第3トランジスタ)605と、トランジスタ(第1トランジスタ)607と、抵抗素子(第1抵抗素子、参照電圧生成部)608,609と、を有する。本実施の形態では、トランジスタ605がPチャネルMOSトランジスタであって、トランジスタ607がNチャネルMOSトランジスタである場合を例に説明する。また、本実施の形態では、抵抗素子608,609のそれぞれの抵抗値が略同一である場合を例に説明する。
【0050】
トランジスタ605,607及び抵抗素子608,609は、電源から電源電圧VDDの供給される電源電圧端子(以下、電源電圧端子VDDと称す)と、接地電圧端子GNDと、の間に直列に設けられている。より具体的には、トランジスタ605では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ゲート及びドレインがノード624に接続される。トランジスタ607では、ドレインがノード624に接続され、ゲートが601に接続され、ソースがノード602に接続される。抵抗素子608では、一端がノード602に接続され、他端がノード603に接続される。抵抗素子609では、一端がノード603に接続され、他端が接地電圧端子GNDに接続される。そして、比較用基準電圧生成部616は、ノード603の電圧を参照電圧V1として出力する(詳しくは後述)。
【0051】
(電荷充放電部617)
電荷充放電部617は、入力信号Vinに基づいて、後述するコンデンサ613に電荷を蓄積し、又は、コンデンサ613に蓄積された電荷を放出する部である。電荷充放電部617は、トランジスタ(第4トランジスタ)606と、トランジスタ610と、トランジスタ(第2トランジスタ)611と、トランジスタ612と、を有する。トランジスタ610,612により充放電部とも称する。本実施の形態では、トランジスタ606,610がそれぞれPチャネルMOSトランジスタであって、トランジスタ611,612がそれぞれNチャネルMOSトランジスタである場合を例に説明する。
【0052】
トランジスタ606,610,611,612は、電源電圧端子VDDと接地電圧端子GNDとの間に直列に設けられている。より具体的には、トランジスタ606では、ソースが電源電圧端子VDDに接続され、ゲートがノード624に接続され、ドレインがトランジスタ610のソースに接続される。トランジスタ610では、ゲートがインバータ621を介して外部入力端子620に接続され、ドレインがトランジスタ611のドレインに接続される。つまり、トランジスタ610のゲートには、外部から外部入力端子620に供給された入力信号Vinの反転信号が印加される。トランジスタ611では、ゲートがノード601に接続され、ソースがノード604に接続される。トランジスタ612では、ドレインがノード604に接続され、ゲートがインバータ621を介して外部入力端子620に接続され、ソースが接地電圧端子GNDに接続される。つまり、トランジスタ612のゲートには、外部から外部入力端子620に供給された入力信号Vinの反転信号が印加される。
【0053】
例えば、入力信号VinがHレベルからLレベルに変化すると、トランジスタ610がオフしトランジスタ612がオンするため、コンデンサ613に蓄積された電荷がトランジスタ612を介して接地電圧端子GNDに放出されていく。一方、入力信号VinがLレベルからHレベルに変化すると、トランジスタ610がオンしトランジスタ612がオフするため、電源電圧端子VDDからトランジスタ606,610,611を介してコンデンサ613に電荷が蓄積されていく(詳しくは後述)。
【0054】
(容量部618)
容量部618は、コンデンサ(容量素子)613を有し、当該コンデンサ613に蓄積された電荷に応じた比較電圧V2を生成する部である。コンデンサ613の一端はノード604に接続され、コンデンサ613の他端は接地電圧端子GNDに接続される。そして、容量部618は、ノード604の電圧を比較電圧V2として出力する。
【0055】
(電圧比較部619)
電圧比較部619は、比較電圧V2と参照電圧V1とを比較し、比較結果を出力信号Voutとして出力する部である。電圧比較部619は、比較器614を有する。比較器614では、非反転入力端子がノード604に接続され、反転入力端子がノード603に接続され、出力端子が外部出力端子623に接続される。
【0056】
例えば、ノード604の電圧(比較電圧)V2がノード603の電圧(参照電圧)V1より低い場合、電圧比較部619は、Lレベルの比較結果を出力信号Voutとして出力する。一方、ノード604の電圧(比較電圧)V2がノード603の電圧(参照電圧)V1以上である場合、電圧比較部619は、Hレベルの比較結果を出力信号Voutとして出力する。この出力信号Voutは、外部出力端子623を介して外部に出力される。
【0057】
なお、上記の接続関係から明らかなように、トランジスタ605,606は電流ミラー接続されている。したがって、トランジスタ605,606の組み合わせを電流ミラー回路とも称する。また、本実施の形態では、トランジスタ605,606が、同一導電型(Pチャネル型)、略同一のチャネル幅及び略同一のチャネル長である場合を例に説明する。また、本実施の形態では、トランジスタ607,611が、同一導電型(Nチャネル型)、略同一のチャネル幅及び略同一のチャネル長である場合を例に説明する。
【0058】
(遅延回路100の動作)
次に、図1に示す遅延回路100の動作について、図2を用いて説明する。図2は、図1に示す遅延回路100の動作を示すタイミングチャートである。
【0059】
図2には、入力信号Vinと、出力信号Voutと、参照電圧(ノード603の電圧)V1と、比較電圧(ノード604の電圧)V2と、が示されている。なお、通常状態における参照電圧V1をV1c、Vt高状態における参照電圧V1をV1b、Vt低状態における参照電圧V1をV1aと区別して説明する場合がある。また、通常状態における比較電圧V2をV2c,Vt高状態における比較電圧V2をV2b、Vt低状態における比較電圧V2をV2aと区別して説明する場合がある。さらに、通常状態における出力信号Voutを出力信号Voutc、Vt高状態における出力信号Voutを出力信号Voutb、Vt低状態における出力信号Voutaと区別して説明する場合がある。なお、本実施の形態では、コンデンサ613の静電容量Cがばらつかないものとして説明する。
【0060】
図2に示すタイミングチャートを時間軸に沿って説明する前に、前提となる動作について簡単に説明する。トランジスタ605のソース−ドレイン間には、電源電圧VDDに応じた電流(第1電流)I0が流れる。また、トランジスタ606のソース−ドレイン間には、トランジスタ605のソース−ドレイン間に流れる電流に比例した電流(第2電流)が流れる。本実施の形態では、トランジスタ605,606は略同一のサイズ(略同一のチャネル幅及び略同一のチャネル長)であるため、トランジスタ606のソース−ドレイン間には、トランジスタ605のソース−ドレイン間と同じ電流値の電流I0が流れる。なお、通常状態における電流I0をI0c、Vt高状態にける電流I0をI0b、Vt低状態における電流I0をI0aと区別して説明する場合がある。
【0061】
また、トランジスタ607のゲートには、当該トランジスタ607が常にオン状態となるような電圧値の基準電圧Vrが印加されている。同様に、トランジスタ611のゲートには、当該トランジスタ611が常にオン状態となるような電圧値の基準電圧Vrが印加されている。本実施の形態では、トランジスタ607,611は略同一のサイズであるため、それぞれのソース−ドレイン間に同じ電流値の電流I0が流れる場合には、それぞれのソース電圧(ノード602の電圧,ノード604の電圧)V0,V2は最終的に略同一の値を示す。より具体的には、ノード602の電圧(第1電圧)V0は、ノード601の電圧(基準電圧)Vrからトランジスタ607のゲート−ソース間電圧Vgsを引いた値を示す。ノード604の電圧(比較電圧,第2電圧)V2は、ノード601の電圧(基準電圧)Vrからトランジスタ611のゲート−ソース間電圧Vgsを引いた値を示す。
【0062】
抵抗素子608の抵抗値をR3とし、抵抗素子609の抵抗値をR4とすると、電圧V0は、以下の式(1)のように表すことができる。
【0063】
V0=(R3+R4)×I0 ・・・(1)
【0064】
また、抵抗素子608と抵抗素子609との間のノード603の電圧(参照電圧)V1は、以下の式(2)のように表すことができる。
【0065】
V1=V0×R4/(R3+R4) ・・・(2)
【0066】
上記したように、抵抗素子608,609のそれぞれの抵抗値R3,R4は略同一であるため、参照電圧V1は、電圧V0の1/2の電圧値を示す。また、比較電圧V2は、トランジスタ610がオンすることによりトランジスタ611のソース−ドレイン間に電流I0が流れている場合、電圧V0と略同一の電圧値まで上昇する。
【0067】
続いて、図2のタイミングチャートを時間軸に沿って説明する。図2の例では、初期状態である時刻t0にて、入力信号VinはLレベル(接地電圧GNDレベル)を示している。このとき、トランジスタ610はオフしトランジスタ612はオンしているため、コンデンサ613に蓄積された電荷はトランジスタ612を介して接地電圧端子GNDに放出されている。したがって、比較電圧V2c,V2b,V2aは接地電圧GNDレベルを示す。一方、参照電圧V1c,V1b,V1aは、式(1)及び式(2)を参照するとそれぞれ以下のように表すことができる。
【0068】
まず、通常状態における電圧V0(以下、V0cと称す)は、式(1)を参照すると、以下の式(3)のように表すことができる。
V0c=(R3+R4)×I0c ・・・(3)
【0069】
したがって、通常状態における参照電圧V1cは、式(2)を参照すると、以下の式(4)のように表すことができる。
V1c=V0c×R4/(R3+R4) ・・・(4)
ここで、上記したように抵抗素子608,609のそれぞれの抵抗値R3,R4は略同一であるため、参照電圧V1cは、電圧V0cの1/2の電圧値を示す。
【0070】
また、Vt高状態における電圧V0(以下、V0bと称す)は、式(1)を参照すると、以下の式(5)のように表すことができる。
V0b=(R3+R4)×I0b ・・・(5)
【0071】
したがって、Vt高状態における参照電圧V1bは、式(2)を参照すると、以下の式(6)のように表すことができる。
V1b=V0b×R4/(R3+R4) ・・・(6)
ここで、上記したように抵抗素子608,609のそれぞれの抵抗値R3,R4は略同一であるため、参照電圧V1bは、電圧V0bの1/2の電圧値を示す。
【0072】
また、Vt低状態における電圧V0(以下、V0aと称す)は、式(1)を参照すると、以下の式(7)のように表すことができる。
V0a=(R3+R4)×I0a ・・・(7)
【0073】
したがって、Vt低状態における参照電圧V1aは、式(2)を参照すると、以下の式(8)のように表すことができる。
V1a=V0a×R4/(R3+R4) ・・・(8)
ここで、上記したように抵抗素子608,609のそれぞれの抵抗値R3,R4は略同一であるため、参照電圧V1aは、電圧V0aの1/2の電圧値を示す。
【0074】
このように、参照電圧V1c,V1b,V1aは、それぞれ異なる値を示すが、何れも接地電圧GNDレベルよりも大きな中間電圧(電源電圧VDD/2)程度を示す。そのため、比較器614は、Lレベルの比較結果を出力信号Voutc,Voutb,Voutaとして出力している。
【0075】
時刻t1にて、入力信号VinがLレベルからHレベル(電源電圧VDDレベル)に変化すると、トランジスタ610がオンしトランジスタ612がオフするため、電源電圧端子VDDからトランジスタ606,610,611を介してコンデンサ613に電荷が蓄積されていく。つまり、ノード604の電圧(比較電圧)V2は上昇し始める。このとき、トランジスタ606,610,611には、トランジスタ605と同じ電流I0が流れる。具体的には、通常状態では電流I0cが流れ、Vt高状態では電流I0bが流れ、Vt低状態では電流I0aが流れる。そのため、ノード604の電圧(比較電圧)V2c,V2b,V2aは、それぞれノード602の電圧V0c,V0b,V0aと略同一の電圧値まで、それぞれ異なる傾きで上昇していく。一方、ノード603の電圧(参照電圧)V1c、V1b,V1aは、それぞれノード602の電圧V0c,V0b,V0aの1/2
の電圧値を示す。
【0076】
時刻t2にて、通常状態、Vt高状態及びVt低状態の何れの場合も、比較電圧V2が参照電圧V1にまで達する。具体的には、通常状態では比較電圧V2cが参照電圧V1cにまで達し(交点Y1)、Vt高状態では比較電圧V2bが参照電圧V1bにまで達し(交点Z1)、Vt低状態では比較電圧V2aが参照電圧V1aにまで達する(交点X1)。それにより、比較器614は、比較結果をLレベルからHレベルに切り替えて出力信号Voutc,Voutb,Voutaとして出力する。
【0077】
そして、時刻t3にて、通常状態、Vt高状態及びVt低状態の何れの場合も、コンデンサ613に対する電荷の供給が完了し、最終的にノード604の電圧(比較電圧)V2c,V2b,V2aはそれぞれノード602の電圧V0c,V0b,V0aと略同一の電圧値まで上昇する。
【0078】
このように、本実施の形態にかかる遅延回路100は、比較電圧V2の変化の傾きと参照電圧V1とのそれぞれを、トランジスタの閾値電圧のばらつきに応じて変化させる。そのため、入力信号VinがLレベルからHレベルに変化してから(時刻t1)、出力信号VoutがLレベルからHレベルに変化するまで(時刻t2)の時間は、トランジスタの閾値電圧がばらついたとしてもほとんど変化しない。つまり、本実施の形態にかかる遅延回路100は、トランジスタの閾値電圧がばらついたとしても、入力信号Vinに精度の高い遅延を付加した出力信号Voutを生成することができる。
【0079】
なお、本実施の形態にかかる遅延回路100の遅延時間(時刻t1〜t2の時間)は、通常状態、Vt高状態及びVt低状態のそれぞれにおいて、以下のようにして導き出すことができる。なお、コンデンサ613の静電容量をCとする。
【0080】
まず、通常状態では、コンデンサ613に蓄積される電荷Qcは、以下の式(9)のように表すことができる。
【0081】
Qc=CV2c
=CV0c ・・・(9)
【0082】
したがって、入力信号VinがLレベルからHレベルに変化してから(時刻t1)、コンデンサ613に対する電荷の供給が完了するまで(時刻t3)の時間(t3−t1)は、以下の式(10)のように表すことができる。
【0083】
(t3−t1)=Qc/I0c
=CV0c/I0c ・・・(10)
【0084】
同様にVt高状態では、コンデンサ613に蓄積される電荷Qbは、以下の式(11)のように表すことができる。
【0085】
Qb=CV2b
=CV0b ・・・(11)
【0086】
したがって、入力信号VinがLレベルからHレベルに変化してから(時刻t1)、コンデンサ613に対する電荷の供給が完了するまで(時刻t3)の時間(t3−t1)は、以下の式(12)のように表すことができる。
【0087】
(t3−t1)=Qb/I0b
=CV0b/I0b ・・・(12)
【0088】
同様にVt低状態では、コンデンサ613に蓄積される電荷Qaは、以下の式(13)のように表すことができる。
【0089】
Qa=CV2a
=CV0a ・・・(13)
【0090】
したがって、入力信号VinがLレベルからHレベルに変化してから(時刻t1)、コンデンサ613に対する電荷の供給が完了するまで(時刻t3)の時間(t3−t1)は、以下の式(14)のように表すことができる。
【0091】
(t3−t1)=Qa/I0a
=CV0a/I0a ・・・(14)
【0092】
例えば、トランジスタの閾値電圧のばらつきにより、Vt高状態の電流I0bがVt低状態の電流I0aの1/2の電流値を示す場合について説明する。換言すると、トランジスタの閾値電圧のばらつきにより、I0b=I0a/2が成り立つ場合について説明する。このとき、V0b=V0a/2が成り立つため、式(12)を変形することにより、以下の式(15)のように表すことができる。
【0093】
(t3−t1)=CV0b/I0b
=C(V0a/2)/(I0a/2)
=CV0a/I0a ・・・(15)
【0094】
式(14)と式(15)とが等しいことから、トランジスタの閾値電圧がばらついた場合でも、時間(t3−t1)は一定となることが分かる。
【0095】
続いて、入力信号VinがLレベルからHレベルに変化してから(時刻t1)、出力信号VoutがLレベルからHレベルに変化するまで(時刻t2)の時間(t2−t1)は、通常状態、Vt高状態及びVt低状態のそれぞれにおいて、以下のように導き出すことができる。
【0096】
まず、通常状態では、V1c=V0c/2が成り立つため、時間(t2−t1)は、式(10)を参照すると、以下の式(16)のように表すことができる。
【0097】
(t2−t1)=(t3−t1)/2
=(CV0c/I0c)/2
=CV0c/2I0c ・・・(16)
【0098】
つまり、通常状態における遅延回路100の遅延時間(t2−t1)は、CV0c/2I0cとなる。
【0099】
同様にVt高状態では、V1b=V0b/2が成り立つため、時間(t2−t1)は、式(12)を参照すると以下の式(17)のように表すことができる。
【0100】
(t2−t1)=(t3−t1)/2
=(CV0b/I0b)/2
=CV0b/2I0b ・・・(17)
【0101】
つまり、Vt高状態における遅延回路100の遅延時間(t2−t1)は、CV0b/2I0bとなる。
【0102】
同様にVt低状態では、V1a=V0a/2が成り立つため、時間(t2−t1)は、式(14)を参照すると以下の式(18)のように表すことができる。
【0103】
(t2−t1)=(t3−t1)/2
=(CV0a/I0a)/2
=CV0a/2I0a ・・・(18)
【0104】
つまり、Vt低状態における遅延回路100の遅延時間(t2−t1)は、CV0a/2I0aとなる。
【0105】
式(14)と式(15)とが等しいことから、式(16)、式(17)及び式(18)は等しくなる。つまり、トランジスタの閾値電圧がばらついた場合でも、遅延回路100の遅延時間(t2−t1)は一定となることが分かる。
【0106】
このように、本実施の形態にかかる遅延回路100では、ノード604の電圧(比較電圧)V2がノード602の電圧V0と略同一の電圧値を示す。そのため、トランジスタの閾値電圧がばらついた場合には、比較電圧V2及び電圧V0の何れもが略同一の変化量で変化する。また、ノード603の電圧(参照電圧)V1は、ノード602の電圧V0を1/2に抵抗分圧した電圧値を示す。そのため、トランジスタの閾値電圧がばらついた場合には、参照電圧V1は電圧V0の1/2の変化量で変化する。さらに、ノード604に流れる電流は、ノード602に流れる電流と略同一の電流値を示す。そのため、トランジスタの閾値電圧がばらついた場合には、何れの電流も略同一の変化量で変化する。つまり、トランジスタの閾値電圧のばらつきに応じた電流変化量は略同一である。
【0107】
それにより、本実施の形態にかかる遅延回路100は、トランジスタの閾値電圧がばらついたとしても、入力信号VinがLレベルからHレベルに変化してから(時刻t1)、出力信号VoutがLレベルからHレベルに変化するまで(時刻t2)の時間のずれを従来よりも小さくすることができる。換言すると、本実施の形態にかかる遅延回路100は、トランジスタの閾値電圧がばらついたとしても参照電圧V1と比較電圧V2とが一致するタイミングのずれを従来よりも小さくすることができる。つまり、本実施の形態にかかる遅延回路100は、トランジスタの閾値電圧がばらついたとしても、入力信号Vinに精度の高い遅延を付加した出力信号Voutを生成することができる。
【0108】
また、本実施の形態にかかる遅延回路100は、製造や温度変化によりトランジスタの閾値電圧がばらついた場合以外にも、電源電圧が変動した場合においても、同様の理由により同様の効果を奏することができる。
【0109】
例えば、この遅延回路100が半導体記憶装置のタイミング調整に用いられた場合、メモリセルに記憶されたデータの読み出し動作が開始されてから実際にデータが読み出されるまでの時間を一定に保つことができる。それにより、メモリセルに記憶されたデータの読み出し動作が開始されてから実際にデータが読み出されるまでの時間のマージンを十分に確保することができるため、従来よりも正確なデータの読み出しが行われる。
【0110】
実施の形態2
図3は、本発明の実施の形態2にかかる遅延回路101の構成例を示す図である。図3に示す遅延回路101は、図1に示す遅延回路100の場合と比較して、基準電圧発生部615に代えて基準電圧発生部628を備える。
【0111】
基準電圧発生部628は、抵抗素子(第2抵抗素子)626,627を有する。抵抗素子626では、一端が電源電圧端子VDDに接続され、他端がノード601に接続される。抵抗素子627では、一端がノード601に接続され、他端が接地電圧端子GNDに接続される。そして、基準電圧発生部628は、電源電圧VDDを抵抗素子626,627の抵抗比により抵抗分圧したものを基準電圧Vrとして出力する。図3に示す遅延回路101のその他の回路構成及び動作については、図1に示す遅延回路100の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0112】
なお、基準電圧発生部628が発生する基準電圧Vrは、抵抗素子626の抵抗値をR1とし、抵抗素子627の抵抗値をR1とすると、以下の式(19)のように表すことができる。
【0113】
Vr=VDD×R2/(R1+R2) ・・・(19)
【0114】
この場合、ノード602の電圧V0は、ノード601の電圧(基準電圧)Vrからトランジスタ607のゲート−ソース間電圧Vgsを引いた値を示す。また、ノード603の電圧(参照電圧)V1は電圧V0の1/2の電圧値を示す。
【0115】
このように、本実施の形態にかかる遅延回路101の場合にも、実施の形態1にかかる遅延回路100と同様の効果を奏することができる。
【0116】
例えば、この遅延回路101が半導体記憶装置のタイミング調整に用いられた場合、メモリセルに記憶されたデータの読み出し動作が開始されてから実際にデータが読み出されるまでの時間を一定に保つことができる。それにより、メモリセルに記憶されたデータの読み出し動作が開始されてから実際にデータが読み出されるまでの時間のマージンを十分に確保することができるため、従来よりも正確なデータの読み出しが行われる。
【0117】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。本実施の形態では、トランジスタ610がオンしている場合に、トランジスタ605,606のそれぞれのソース−ドレイン間に略同一の電流が流れる場合を例に説明したが、これに限られない。また、トランジスタ610がオンしている場合に、トランジスタ607,611のそれぞれのソース電圧が略同一になる場合を例に説明したが、これに限られない。比較電圧V2と参照電圧V1とが一致するタイミングのずれが従来よりも抑制できるのであれば、こられは必ずしも略同一である必要はない。換言すると、比較電圧V2と参照電圧V1とが一致するタイミングのずれが従来よりも抑制できるのであれば、トランジスタ605,606のサイズは必ずしも略同一である必要はないし、トランジスタ607,611のサイズは必ずしも略同一である必要はない。
【0118】
また、本実施の形態では、抵抗素子608の抵抗値R3と、抵抗素子609の抵抗値R4と、が略同一である場合を例に説明したが、これに限られない。抵抗素子608,609の抵抗比は、入力信号に付加する遅延値(遅延時間)に応じて適宜変更可能である。
【0119】
また、本実施の形態では、入力信号VinがLレベルからHレベルに変化してから出力信号VoutがLレベルからHレベルに変化するまでの時間を一定に保つ場合を例に説明したが、これに限られない。入力信号VinがHレベルからLレベルに変化してから出力信号VoutがHレベルからLレベルに変化するまでの時間を一定に保つ回路構成にも適宜変更可能である。
【0120】
本発明にかかる遅延回路は、例えば、内部回路とともに半導体装置に設けられる。本発明にかかる遅延回路は、出力信号Voutをクロック信号として生成する。そして、内部回路は、当該クロック信号に同期して動作する。
【0121】
例えば、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
入力信号に遅延を付加した出力信号を生成する遅延回路であって、
第1電流及び当該第1電流に比例した第2電流を生成する電流ミラー回路と、
ゲートに所定電圧が印加されてソース−ドレイン間に前記第1電流が流れることにより、第1電圧を生成する第1トランジスタと、
前記第1電圧に応じた参照電圧を生成する参照電圧生成部と、
容量素子と、
前記入力信号の電圧レベルに基づいて、前記第2電流の電荷を前記容量素子に蓄積し、又は、前記容量素子に蓄積された電荷を放出する、充放電部と、
前記充放電部と前記容量素子との間に設けられ、ゲートに前記所定電圧が印加されてソース−ドレイン間に前記第2電流が流れることにより、第2電圧を生成する第2トランジスタと、
前記第2電圧と前記参照電圧とを比較し、比較結果を前記出力信号として出力する比較部と、を備えた遅延回路。
【0122】
(付記2)
前記電流ミラー回路は、
電源電圧に応じた前記第1電流を生成する第3トランジスタと、
前記第3トランジスタと電流ミラー接続され、前記第2電流を生成する第4トランジスタと、を有し、
前記第3及び前記第4トランジスタは、同一導電型、略同一のチャネル幅及び略同一のチャネル長であることを特徴とする、付記1に記載の遅延回路。
【0123】
(付記3)
前記第1及び前記第2トランジスタは、同一導電型、略同一のチャネル幅及び略同一のチャネル長であることを特徴とする、付記1又は2に記載の遅延回路。
【0124】
(付記4)
前記参照電圧生成部は、前記第1電圧を分圧して前記参照電圧として出力する第1抵抗素子により構成されることを特徴とする付記1〜3の何れか一項に記載の遅延回路。
【0125】
(付記5)
前記所定電圧を生成する定電圧源をさらに備えた付記1〜4の何れか一項に記載の遅延回路。
【0126】
(付記6)
電源電圧を分圧して前記所定電圧として出力する第2抵抗素子をさらに備えた付記1〜4のいずれか一項に記載の遅延回路。
【0127】
(付記7)
前記出力信号をクロック信号として生成する付記1〜6のいずれか一項に記載された遅延回路と、
前記クロック信号に同期して動作する内部回路と、を備えた半導体装置。
【符号の説明】
【0128】
100,101 遅延回路
601〜604,624 ノード
605、606、610 トランジスタ
607、611、612 トランジスタ
608、609 抵抗素子
613 コンデンサ
614 比較器
615 基準電圧発生部
616 比較用基準電圧生成部
617 電荷充放電部
618 容量部
619 電圧比較部
620 外部入力端子
621 インバータ
623 外部出力端子
625 定電圧源
626,627 抵抗素子
628 基準電圧発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に遅延を付加した出力信号を生成する遅延回路であって、
第1電流及び当該第1電流に比例した第2電流を生成する電流ミラー回路と、
ゲートに所定電圧が印加されてソース−ドレイン間に前記第1電流が流れることにより、第1電圧を生成する第1トランジスタと、
前記第1電圧に応じた参照電圧を生成する参照電圧生成部と、
容量素子と、
前記入力信号の電圧レベルに基づいて、前記第2電流の電荷を前記容量素子に蓄積し、又は、前記容量素子に蓄積された電荷を放出する、充放電部と、
前記充放電部と前記容量素子との間に設けられ、ゲートに前記所定電圧が印加されてソース−ドレイン間に前記第2電流が流れることにより、第2電圧を生成する第2トランジスタと、
前記第2電圧と前記参照電圧とを比較し、比較結果を前記出力信号として出力する比較部と、を備えた遅延回路。
【請求項2】
前記電流ミラー回路は、
電源電圧に応じた前記第1電流を生成する第3トランジスタと、
前記第3トランジスタと電流ミラー接続され、前記第2電流を生成する第4トランジスタと、を有し、
前記第3及び前記第4トランジスタは、同一導電型、略同一のチャネル幅及び略同一のチャネル長であることを特徴とする、請求項1に記載の遅延回路。
【請求項3】
前記第1及び前記第2トランジスタは、同一導電型、略同一のチャネル幅及び略同一のチャネル長であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の遅延回路。
【請求項4】
電源電圧を分圧して前記所定電圧として出力する抵抗素子をさらに備えた請求項1〜3のいずれか一項に記載の遅延回路。
【請求項5】
前記出力信号をクロック信号として生成する請求項1〜4のいずれか一項に記載された遅延回路と、
前記クロック信号に同期して動作する内部回路と、を備えた半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−102332(P2013−102332A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244480(P2011−244480)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】