説明

遊動型コネクタ

【課題】可動ハウジングの移動を妨げることなく、コンタクト全体におけるインピーダンスの整合を行うことが可能な遊動型コネクタを提供する。
【解決手段】遊動型コネクタ1は、相手コンタクトとの接触部12、回路基板への基板接続部15、及び接触部12と基板接続部15とを連結する可撓性のある可撓連結部13を有するコンタクト10と、コンタクト10の接触部12を収容する可動ハウジング20と、コンタクト10の基板接続部15を固定する固定ハウジング30とを具備している。また、可撓連結部13は、第一湾曲部13a、第一湾曲部13aが湾曲する向きに対して逆向きに湾曲する第二湾曲部13c、及び第一湾曲部13aと第二湾曲部13cとを連結する直線状の連結部13bを有し、S字形状に形成されている。そして、連結部13bに、誘電体からなるインピーダンス調整部材50が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊動型コネクタ、特に2枚の回路基板同士を相互接続する際に用いられる遊動型コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2枚の回路基板同士を相互接続する際に用いられる遊動型コネクタとして、例えば、図13に示すものが知られている(特許文献1参照)。
図13は、従来の遊動型コネクタを背面側からみた斜視図である。
図13に示す遊動型コネクタ101は、複数の金属製のコンタクト110と、可動ハウジング120と、固定ハウジング130とを具備している。
【0003】
各コンタクト110は、相手コネクタ(図示せず)に設けられた相手コンタクトに接触する接触部111と、回路基板(図示せず)に接続される基板接続部112と、接触部111と基板接続部112とを連結する可撓性のある可撓連結部113とを備えている。
そして、遊動型コネクタ101では、各コンタクト110の接触部111が可動ハウジング120の各コンタクト収容孔121に収容されて固定されるとともに、各コンタクト110の基板接続部112が固定ハウジング130に固定される。これにより、可動ハウジング120が、コンタクト110の可撓連結部113を介して固定ハウジング130に連結され、固定ハウジング130の上方に固定ハウジング130に対して間隔Xをもって積層された状態となっている。
【0004】
そして、遊動型コネクタ101によれば、相手コネクタが嵌合される際に、可動ハウジング120が固定ハウジング130に対して上下方向及び水平方向に移動することにより、相手コンタクトとコンタクト110との位置ずれを許容できる。また、可動ハウジング120に障害物等が衝突し、可動ハウジング120に強い衝撃力が加わっても、コンタクト110の可撓連結部113でその衝撃を吸収して減衰される。このため、基板接続部112の半田接続部分のクラック発生を防止することができる。
【0005】
しかしながら、遊動型コネクタ101の各コンタクト110では、金属部材を蛇行させて形成された可撓連結部113を有しているため、信号路である導体が長くなり、自己インダクタンスが大きくなる。すると、各コンタクト110において、可撓連結部113のインピーダンスが他の部分のインピーダンスと比較して大きくなり、信号路にインピーダンスの不整合を生じさせる。そして、各コンタクト110において信号路にインピーダンスの不整合が生じると、これに起因して信号の不要な反射が生じることとなる。しがたって、遊動型コネクタ101では、各コンタクト110に流れる電気信号に乱れが生じてしまうという問題がある。このような問題は、特に、各コンタクト110に周波数が高い(例えば、1.5〜3GHz)電気信号を流す場合に顕著となる。ここで、可撓連結部113を有することに起因して各コンタクト110で生じる自己インダクタンスは、各コンタクト110の周りに空気よりも誘電率が大きい物質を配置してキャパシタンスを大きくすればキャンセルすることができる。
【0006】
従来、コンタクト全体におけるインピーダンスの整合を行うコネクタとして、例えば、図14に示すものが知られている(特許文献2参照)。
図14は、従来のインピーダンス整合コネクタの斜視図である。
図14に示すインピーダンス整合コネクタ201は、複数のシグナル端子210と、複数のグランド端子211と、コネクタ本体220と、コネクタ本体210に装着されるスペーサ230とを備えている。
各端子210,211は、相手コネクタ(図示せず)に設けられた相手コンタクトに接触する接触部212と、回路基板(図示せず)に接続される基板接続部213と、接触部212と基板接続部213とを連結するリード部214とを備えている。
【0007】
スペーサ230は、誘電体からなり、櫛歯形状に形成されている。
そして、インピーダンス整合コネクタ201では、各端子210,211の接触部212がコネクタ本体220の各コンタクト収容孔221内に収容されて固定される。また、コネクタ本体220から導出される各シグナル端子210のリード部214と各グランド端子211のリード部214との間に、櫛歯形状のスペーサ230が挿入される。
【0008】
インピーダンス整合コネクタ201では、各端子210,211の接触部212がコネクタ本体220の各コンタクト収容孔221内に収容されるとともに、コネクタ本体220から導出される各端子210,211のリード部214にスペーサ230を配設する構成により、各端子210,211のほぼ全体が誘電体により囲まれることとなる。これにより、各端子210,211において接触部212のインピーダンスとリード部213のインピーダンスとが整合され、各端子210,211全体におけるインピーダンスの整合を行うことが可能となる。
【特許文献1】特開2006−318763号公報
【特許文献2】特開平10−270124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
コンタクト全体におけるインピーダンスの整合を図るためには、図14に示すインピーダンス整合コネクタ201のように、ハウジングから導出されるコンタクトの全体を誘電体により囲むことが望ましい。
しかしながら、図13に示す遊動型コネクタ101では、各コンタクト110の可撓連結部113が可撓変形することにより可動ハウジング120が固定ハウジング130に対して上下方向及び水平方向に移動する構成を採用している。したがって、遊動型コネクタ101では、各コンタクト110の可撓連結部113の全体を誘電体により囲む構成を採用すると、可動ハウジング120の移動を妨げてしまうという問題がある。
本発明は上記した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、可動ハウジングの移動を妨げることなく、コンタクト全体におけるインピーダンスの整合を行うことが可能な遊動型コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る遊動型コネクタは、相手コンタクトとの接触部、回路基板への基板接続部、及び前記接触部と前記基板接続部とを連結する可撓性のある可撓連結部を有するコンタクトと、該コンタクトの前記接触部を収容する可動ハウジングと、前記コンタクトの前記基板接続部を固定する固定ハウジングとを具備し、前記可動ハウジングが前記固定ハウジングの上方に前記固定ハウジングに対して所定間隔をもって積層された遊動型コネクタであって、
前記可撓連結部は、第一湾曲部、前記第一湾曲部が湾曲する向きに対して逆向きに湾曲する第二湾曲部、及び前記第一湾曲部と前記第二湾曲部とを連結する直線状の連結部を有し、S字形状に形成され、
前記連結部に、誘電体からなるインピーダンス調整部材が配設されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る遊動型コネクタは、請求項1に係る遊動型コネクタにおいて、前記インピーダンス調整部材は、下面側に前記可撓連結部の前記連結部が挿通される溝部を有し、
前記溝部の下端部には、各側壁から互いに対向するように延びる折り返し片が設けられ、
前記インピーダンス調整部材が、前記連結部上に、前記溝部の延びる方向に移動することが可能な状態で装着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る遊動型コネクタでは、可撓連結部は、第一湾曲部、前記第一湾曲部が湾曲する向きに対して逆向きに湾曲する第二湾曲部、及び前記第一湾曲部と前記第二湾曲部とを連結する直線状の連結部を有し、S字形状に形成され、前記連結部に、誘電体からなるインピーダンス調整部材が配設されている構成を採用している。したがって、本発明の請求項1に係る遊動型コネクタによれば、コンタクトにおいて最もインピーダンスが大きくなる連結部のインピーダンスを小さくさせることにより、コンタクト全体におけるインピーダンス整合を行うことが可能となる。また、インピーダンス調整部材は、連結部に配設されているため、可動ハウジングの移動を妨げることもない。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る遊動型コネクタでは、請求項1に係る遊動型コネクタにおいて、前記インピーダンス調整部材は、下面側に前記可撓連結部の前記連結部が挿通される溝部を有し、前記溝部の下端部には、各側壁から互いに対向するように延びる折り返し片が設けられ、前記インピーダンス調整部材が、前記連結部上に、前記溝部の延びる方向に移動することが可能な状態で装着されている構成を採用している。したがって、本発明の請求項2に係る遊動型コネクタによれば、遊動型コネクタの組み立てを行う際に、インピーダンス調整部材を容易に装着することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る遊動型コネクタを背面側からみた斜視図である。図2は、図1に示す遊動型コネクタの平面図である。図3は、図1に示す遊動型コネクタの正面図である。図4は、図1に示す遊動型コネクタの底面図である。図5は、図1に示す遊動型コネクタの右側面図である。図6は、図1に示す遊動型コネクタの背面図である。図7は、図3の7−7線に沿う断面図である。図8は、図3の8−8線に沿う断面図である。図9は、図1に示す遊動型コネクタを背面側からみた部分拡大斜視図である。図10は、図1に示す遊動型コネクタに備えられるコンタクト及びインピーダンス調整部材の斜視図である。図11は、図1に示す遊動型コネクタに備えられるコンタクトの連結部の部分拡大斜視図である。図12は、図1に示す遊動型コネクタに備えられるコンタクトの各位置におけるインピーダンスの大きさを示す模式図である。
【0015】
図1から図6に示す遊動型コネクタ1は、複数の金属製のコンタクト10と、インピーダンス調整部材50と、絶縁性の可動ハウジング20と、絶縁性の固定ハウジング30と、1対のピン体40とを具備している。
各コンタクト10は、図7及び図10に示すように、可動ハウジング20に固定される固定部11と、固定部11から前方(図7における左方、図10における右奥方)に向かって延びる、相手コネクタに設けられた相手コンタクト(図示せず)に接触する接触部12とを具備している。また、各コンタクト10は、固定部11から後方に向かって延びる可撓性のある可撓連結部13と、可撓連結部13の後端に設けられた、固定ハウジング30に固定される固定部14と、固定部14から一旦後方に向かって延びてから下方に向かって延びる、回路基板(図示せず)に接続される基板接続部15とを具備している。各コンタクト10は、金属板を打ち抜き及び曲げ加工することなどによって形成されるものである。
【0016】
可撓連結部13は、図10に示すように、固定部11から後方に向かって直線状に延びてから折り返すように湾曲する第一湾曲部13aと、第一湾曲部13aから前方に向かって直線状に延びる連結部13bと、連結部13bから第一湾曲部13aが湾曲する向きに対して逆向きに折り返すように湾曲してから後方に向かって直線状に延びる第二湾曲部13cとを具備している。これにより、可撓連結部13は、S字形状に形成される。
【0017】
可撓連結部13の連結部13bの各側面には、図11に示すように、側方に向かって突出する翼状の幅広部17が設けられている。また、可撓連結部13の連結部13bの各側面の幅広部17の後方には、側方に向かって突出するストッパ18が設けられている。ここで、両幅広部17の幅は、インピーダンス調整部材50の後述する各溝部51に挿通することができる広さに設定されている。一方、両ストッパ18の幅は、各溝部51に挿通することができない広さに設定されている。
【0018】
ここで、固定部11及び接触部12により請求項1にいう「相手コンタクトとの接触部」を構成し、固定部14及び基板接続部15により請求項1にいう「回路基板への接続部」を構成し、可撓連結部13は、前記「相手コンタクトとの接触部」と前記「回路基板への接続部」とを連結するようになっている。相手コネクタは、基板接続部15が接続される回路基板に対して垂直に配置される別の回路基板上に実装されている。
【0019】
インピーダンス調整部材50は、誘電体からなり、図10に示すように、長手方向(図10における左奥から右手前に延びる方向)に延びる矩形形状に形成されている。ここで、本実施の形態における誘電体とは、空気に対して十分に大きな誘電率を持ち、損失(いわゆるtanδ)が小さく、簡単に加工できる物質であればよい。本実施の形態では、インピーダンス調整部材50は、LCP(Liquid Crystal polymer)により形成されている。インピーダンス調整部材50の下面側には、各コンタクト10の可撓連結部13の連結部13bが挿通される溝部51が複数形成されている。各溝部51は、長手方向に所定のピッチで形成されている。また、各溝部51は、インピーダンス調整部材50の前後方向の全長に亘って形成されている。各溝部51の下端部には、各側壁から互いに対向するように延びる折り返し片52が設けられている。ここで、両折り返し片52の間の幅は、各コンタクト10の第二湾曲部13cを通過させることができるが、連結部13bの両幅広部17を通過させることができない寸法に設定されている。
【0020】
可動ハウジング20は、長手方向(図3における左右方向)に延びる矩形形状の可動ハウジング本体21を備え、絶縁性の樹脂を成形することによって形成されている。そして、可動ハウジング本体21には、各コンタクト10の固定部11を圧入して固定するためのコンタクト固定用孔22が、長手方向に沿って所定ピッチで複数形成されている。また、可動ハウジング本体21には、図3に示すように、複数(本実施形態にあっては2個)の相手コネクタ受容凹部22a,22bが設けられている。可動ハウジング本体21の長手方向各端部には、可動ハウジング本体21から後方に向かって突出するピン体受容部23が設けられている。各ピン体受容部23には、上下方向に貫通する第1貫通孔26が設けられている。
【0021】
固定ハウジング30は、長手方向(図3における左右方向)に延びる矩形形状の固定ハウジング本体31を備え、絶縁性の樹脂を成形することによって形成されている。そして、固定ハウジング本体31には、各コンタクト10の固定部14が圧入されるコンタクト固定用溝32が長手方向に沿ってコンタクト固定用孔22と同一ピッチで複数形成されている。そして、固定ハウジング本体31には、所定個数(本実施形態にあっては15個)のコンタクト固定用溝32が連通する可撓連結部収容空間33aと所定個数(本実施形態にあっては7個)のコンタクト固定用溝32が連通する可撓連結部収容空間33bとが設けられている。また、固定ハウジング本体31の長手方向各端部には、ピン体受容部34が設けられている。各ピン体受容部34の第1貫通孔26に対応する位置には、ピン体受容部34から上方に突出する筒状のボス部35が設けられている。そして、各ピン体受容部34及びボス部35の双方を上下方向に貫通するように第2貫通孔36が穿設されている。第2貫通孔36は、ピン体40を圧入固定するための圧入固定用孔部36aと、圧入固定用孔部36aの径及びピン体40の外径よりもやや大きい径を有する拡径孔部36bとで構成されている。そして、可動ハウジング20の第1貫通孔26の内径は、図8に示すように、ボス部35を嵌入することが可能かつ可動ハウジング20が固定ハウジング30に対して上下動することが可能な大きさに設定されている。ここで、固定ハウジング本体31及びピン体受容部34により、請求項1にいう「ハウジング本体」を構成する。
【0022】
各ピン体40は、円柱状の金属製棒体で構成され、その外表面全体にわたって錫めっき等の金属めっきが施されている。
遊動型コネクタ1の組み立てを行う際には、まず、各コンタクト10の固定部11を可動ハウジング20の各コンタクト固定用孔22に圧入固定する。各コンタクト10の固定部11が各コンタクト固定用孔22に圧入固定されると、各コンタクトの接触部12が相手コネクタ受容凹部22aあるいは22b内に延びるように収容される。また、各コンタクト10の固定部11が各コンタクト固定用孔22に圧入固定されると、各コンタクト10の可撓連結部13は、可動ハウジング本体21から後方に向かって突出した状態となる。
【0023】
次に、可動ハウジング本体21から後方に向かって突出する各コンタクト10の可撓連結部13に、インピーダンス調整部材50を装着する。各コンタクト10の可撓連結部13にインピーダンス調整部材50を装着する際には、インピーダンス調整部材50を、各コンタクト10の可撓連結部13の連結部13bの両幅広部17が、両幅広部17の前側から、インピーダンス調整部材50の各溝部51に挿通されるように装着する。これにより、インピーダンス調整部材50は、各コンタクト10の可撓連結部13の連結部13b上に、前後方向に移動することが可能な状態で装着される。このように、遊動型コネクタ1では、インピーダンス調整部材50を各コンタクト10の可撓連結部13の連結部13bに装着する際に、インピーダンス調整部材50の各溝部51に各コンタクト10の可撓連結部13の連結部13bの両幅広部17を挿通させるだけでよいため、インピーダンス調整部材50を容易に装着することが可能となる。そして、各コンタクト10の可撓連結部13にインピーダンス調整部材50が装着されることによって、各コンタクト10の可撓連結部13の連結部13bが、誘電体により囲まれた状態となる。
【0024】
そして、各コンタクト10の固定部14を固定ハウジング30の各コンタクト固定用溝32に圧入固定する。各コンタクト10の固定部14が各コンタクト固定用溝32に圧入固定されると、各コンタクトの可撓連結部13が、可撓連結部収容空間33a,33b内に延びるように収容される。また、各コンタクト10の固定部14が各コンタクト固定用溝32に圧入固定されると、各コンタクト10の基板接続部15が、固定ハウジング本体31から下方に突出した状態となる。また、各コンタクト10の固定部14が固定ハウジング30の各コンタクト固定用溝32に圧入固定されることにより、図7に示すように、インピーダンス調整部材50の各コンタクト10の可撓連結部13の連結部13b上での前後方向の移動範囲が、連結部13bの両ストッパ18と固定ハウジング30の前壁の内面30aとの間に規制される。これにより、各コンタクト10の可撓連結部13の連結部13bの両幅広部17がインピーダンス調整部材50の各溝部51から抜けることがなくなり、インピーダンス調整部材50が各コンタクト10の可撓連結部13から外れることが防止される。
【0025】
さらに、図8に示すように、各ピン体40を、固定ハウジング30の下方から各第2貫通孔36を通って可動ハウジング20の第1貫通孔26に挿通する。これにより、各ピン体40は、固定ハウジング30の圧入固定用孔部36aに圧入固定される。各ピン体40が固定ハウジング30の圧入固定用孔部36aに圧入固定されると、各ピン体40の先端は、各ピン体40を第1貫通孔26に挿通した状態で、図8に示すように可動ハウジング20の上面から上方に向かって突出している。
【0026】
組み立てが完了した遊動型コネクタ1では、可動ハウジング20は、図1、図7及び図8に示すように、固定ハウジング30の上方に固定ハウジング30に対して間隔Xをもって積層される。そして、可動ハウジング20は、コンタクト10の可撓連結部13を介して固定ハウジング30に連結された構成となる。これにより、遊動型コネクタ1では、可動ハウジング20が固定ハウジング30に対して上下方向及び水平方向に移動することが可能な状態となっている。
【0027】
組み立てが完了した遊動型コネクタ1は、各ピン体40の下端部が、回路基板に設けられた位置決め用孔(図示せず)に挿通されて半田接続されるとともに、各コンタクト10の基板接続部15が、回路基板に設けられたスルーホール(図示せず)に半田接続又は表面実装される。これにより、遊動型コネクタ1は、回路基板上に実装されることになる。また、各ピン体40の上端部が、遊動型コネクタ1が実装される電子機器の筐体(図示せず)に設けられた位置決め用孔(図示せず)に嵌合される。これにより、遊動型コネクタ1は、前記筐体に対しても位置決めされることになる。
【0028】
このように構成された遊動型コネクタ1に相手コネクタが嵌合すると、相手コネクタに設けられた相手コンタクトがコンタクト10の接触部12に接触し、相手コネクタが実装されている回路基板と遊動型コネクタ1が実装されている回路基板とが電気的に導通することになる。この両コネクタの嵌合の際に、位置ずれがあった場合、特に上下方向に位置ずれがあった場合には、可動ハウジング20が固定ハウジング30に対して上下方向に移動し、位置ずれを許容できる。また、可動ハウジング20に障害物等が衝突し、可動ハウジング20に強い衝撃力が加わっても、コンタクト10の可撓連結部13でその衝撃を吸収して減衰される。このため、基板接続部15の半田接続部分のクラック発生を防止することができる。
【0029】
ここで、インピーダンス調整部材50を備えていない状態における各コンタクト10の各位置におけるインピーダンスは、図12に示すように、可動ハウジング20の各コンタクト固定用孔22に圧入固定される固定部11及び固定ハウジング30の各コンタクト固定用溝32に圧入固定される固定部14で小さくなっているのに対して、可撓連結部13で大きくなっている。そして、インピーダンス調整部材50を備えていない状態における各コンタクト10の各位置におけるインピーダンスは、特に、可撓連結部13の中間部が最も大きくなっている。なお、図12は、各コンタクト10の各位置におけるインピーダンスの変化を相対的に示す模式図であり、図12の縦軸は任意目盛である。また、図12の横軸は、各コンタクト10の一端部からの距離を示している。そこで、遊動型コネクタ1では、各コンタクト10の可撓連結部13の中間部に位置する連結部13bにインピーダンス調整部材50を配設する構成を採用している。これにより、各コンタクト10の可撓連結部13の連結部13bが誘電体により囲まれ、連結部13bのインピーダンスを小さくさせることにより、コンタクト10全体におけるインピーダンス整合を行うことが可能となる。
【0030】
なお、各コンタクト10の可撓連結部13の連結部13bのインピーダンスの目標値を100±10Ωに設定した場合に、インピーダンス調整部材50を装着していない状態の連結部13bのインピーダンスは119Ωとなっている。一方、LCPにより形成されたインピーダンス調整部材50を装着した状態の連結部13bのインピーダンスは97Ωとなり、上記目標値内となっている。なお、1GHzにおけるLCPの比誘電率は3.8である。
【0031】
また、インピーダンス調整部材50を各コンタクト10の可撓連結部13の連結部13bに配設することにより、インピーダンス調整部材50は、固定ハウジング30の可撓連結部収容空間33a,33b内に収容されることとなる。これにより、インピーダンス調整部材50が可動ハウジング20の移動を妨げることが防止される。
さらに、インピーダンス調整部材50を各コンタクト10の可撓連結部13の連結部13bに配設することにより、各コンタクト10を所定のピッチに整列させることができ、各コンタクト10のピッチが変わることに起因して各コンタクト10のインピーダンスが変化することを防止することが可能となる。
【0032】
ここで、インピーダンス調整部材50は、比誘電率が異なる材料により形成することで、各コンタクト10のインピーダンスを異ならせることができる。また、インピーダンス調整部材50は、溝部51の幅を変化させることで、各コンタクト10のインピーダンスを異ならせることができる。したがって、比誘電率が異なる材料により形成したインピーダンス調整部材50又は溝部51の幅が異なるインピーダンス調整部材50を複数種類用意しておき、遊動型コネクタ1の組み立て時に装着するインピーダンス調整部材50を適宜選択することにより、各コンタクト10のインピーダンスを所望の値に調整することも可能である。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、本実施の形態では、インピーダンス調整部材50は、各コンタクト10の可撓連結部13の連結部13b上に、前後方向に移動することが可能な状態で装着する構成を採用している。しかしながら、インピーダンス調整部材50を、各コンタクト10の可撓連結部13の連結部13bに圧入固定する構成を採用しても構わない。また、インピーダンス調整部材50を、各コンタクト10の可撓連結部13の連結部13b上に接着又は熱融着する構成を採用しても構わない。
【0034】
また、本実施の形態では、インピーダンス調整部材50は、LCPにより形成されているが、他の誘電体により形成しても構わない。
また、本実施の形態では、各コンタクト10の可撓連結部13の連結部13bに幅広部17及びストッパ18が設け、両幅広部17がインピーダンス調整部材50の各溝部51に挿通される構成を採用している。しかしながら、各コンタクト10の可撓連結部13の連結部13bに幅広部17及びストッパ18を設けずに、連結部13bがインピーダンス調整部材50の各溝部51に挿通される構成を採用しても構わない。
さらに、本実施の形態では、一対のピン体40を備える構成を採用しているが、両ピン体40を備えない構成としても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る遊動型コネクタを背面側からみた斜視図である。
【図2】図1に示す遊動型コネクタの平面図である。
【図3】図1に示す遊動型コネクタの正面図である。
【図4】図1に示す遊動型コネクタの底面図である。
【図5】図1に示す遊動型コネクタの右側面図である。
【図6】図1に示す遊動型コネクタの背面図である。
【図7】図3の7−7線に沿う断面図である。
【図8】図3の8−8線に沿う断面図である。
【図9】図1に示す遊動型コネクタを背面側からみた部分拡大斜視図である。
【図10】図1に示す遊動型コネクタに備えられるコンタクト及びインピーダンス調整部材の斜視図である。
【図11】図1に示す遊動型コネクタに備えられるコンタクトの連結部の部分拡大斜視図である。
【図12】図1に示す遊動型コネクタに備えられるコンタクトの各位置におけるインピーダンスの大きさを示す模式図である。
【図13】従来の遊動型コネクタを背面側からみた斜視図である。
【図14】従来のインピーダンス整合コネクタの斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 遊動型コネクタ
10 コンタクト
11 固定部(接触部)
12 接触部(接触部)
13 可撓連結部
13a 第一湾曲部
13b 連結部
13c 第二湾曲部
14 固定部(基板接続部)
15 基板接続部(基板接続部)
17 幅広部
18 ストッパ
20 可動ハウジング
26 第1貫通孔
30 固定ハウジング
31 固定ハウジング本体(ハウジング本体)
34 ピン体受容部(ハウジング本体)
35 ボス部
36 第2貫通孔
40 ピン体
50 インピーダンス調整部材
51 溝部
52 折り返し片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手コンタクトとの接触部、回路基板への基板接続部、及び前記接触部と前記基板接続部とを連結する可撓性のある可撓連結部を有するコンタクトと、該コンタクトの前記接触部を収容する可動ハウジングと、前記コンタクトの前記基板接続部を固定する固定ハウジングとを具備し、前記可動ハウジングが前記固定ハウジングの上方に前記固定ハウジングに対して所定間隔をもって積層された遊動型コネクタであって、
前記可撓連結部は、第一湾曲部、前記第一湾曲部が湾曲する向きに対して逆向きに湾曲する第二湾曲部、及び前記第一湾曲部と前記第二湾曲部とを連結する直線状の連結部を有し、S字形状に形成され、
前記連結部に、誘電体からなるインピーダンス調整部材が配設されていることを特徴とする遊動型コネクタ。
【請求項2】
前記インピーダンス調整部材は、下面側に前記可撓連結部の前記連結部が挿通される溝部を有し、
前記溝部の下端部には、各側壁から互いに対向するように延びる折り返し片が設けられ、
前記インピーダンス調整部材が、前記連結部上に、前記溝部の延びる方向に移動することが可能な状態で装着されていることを特徴とする請求項1記載の遊動型コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−300130(P2008−300130A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143519(P2007−143519)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスアンプ株式会社 (340)
【Fターム(参考)】