説明

遊技機の可変入賞装置

【課題】針金などの道具を用いた前扉の不正開放を確実に防止することができる遊技機の可変入賞装置を提供する。
【解決手段】駆動源により前後方向に摺動するスライダー3と、スライダー3の摺動により上下方向に回動されて前扉6を開閉する扉開閉部材4と、スライダー3により上下方向に回動されて扉開閉部材4の回動を規制するストッパー5と、を備える遊技機の可変入賞装置であって、扉開閉部材4には、遊技機後方向きのロック面43aを有するロック爪43を設けるとともに、ストッパー5には、先端が前記ロック面43aに当接して扉開閉部材4の上方回動を規制する前向きのロック片52を設けて、このストッパー5を扉開閉部材4の後方に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機において可変入賞装置の前扉を外部操作によって無理やり開き、この開放状態の入賞口に球を入賞させて賞球を獲得する不正行為を防止するための、遊技機の可変入賞装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機として、特定の入賞口に可変入賞装置を備えたものがある。可変入賞装置は、通常はソレノイドなどの駆動装置を非通電として前扉を閉鎖状態に維持して球が入賞しないようにし、一方特定の遊技状態になったときには駆動装置を作動させて前扉を開放状態として球が入賞口に入りやすくなるようにする。
【0003】
しかしながら、駆動装置が作動していないときに、外部から針金などの道具を侵入させ前扉に引っ掛けて無理やり開放させて不正に賞球を獲得する不正行為が働かれることがあり、このような不正行為が働かれるとホール側は多大な損害を被ることとなる。
【0004】
このような不正行為を防止した遊技機の可変入賞装置として、例えば特許文献1、2に開示されたものがある。特許文献1に開示されたものは、回転軸に前扉(入賞案内部材)を回動自在に支持し、制動片の上下動によって前扉を起立傾倒させるようにしたものであって、制動片に設けられた突起部と入賞案内部材に設けられた係合部との係合によって、起立状態にある前扉が不正な外力によって傾倒状態になることを防止することができる。
【0005】
しかしながら上記したものにおいては、突起部が遊技機前方すなわち遊技者に向けて突出しているのに加え、係合部が前扉に設けられているために、前扉の側方から細い針金などを侵入させて制動片を引き上げることが可能であり、これによってロックが解除されてしまい、前扉が不正に開放されてしまうという問題がある。
【0006】
特許文献2に開示されたものは、前扉(入賞扉)を閉鎖位置から開放位置へ回動変位させようとする外力が前扉に加えられたとき、揺動アームにおける切欠部の第一当接面が、ヘッドカバーにおける係合ピンに対して下側から当接している。これによって、揺動アームの反時計回りの回転が阻止され、前扉は閉鎖位置に維持されるようにしたものである。
【0007】
しかしながら上記したものにおいても、係合ピンと第1当接面との係合部が遊技者に向けて設けられているため、前扉の側方から細い針金などを侵入させてヘッドカバーを後方に押圧することが可能であって、これによってロックが解除されてしまい、前扉を不正に開放することが可能である。
【0008】
以上のように、従来の可変入賞装置は、不正を防止するという観点から必ずしもこれを確実に防止できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−239014号公報
【特許文献2】特開2009−178449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的とするところは、針金などの道具を用いた前扉の不正開放を確実に防止することができる遊技機の可変入賞装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するためになされた本発明に係る遊技機の可変入賞装置は、駆動源により前後方向に摺動するスライダーと、スライダーの摺動により上下方向に回動されて前扉を開閉する扉開閉部材と、スライダーにより上下方向に回動されて扉開閉部材の回動を規制するストッパーと、を備える遊技機の可変入賞装置であって、
扉開閉部材には、遊技機後方向きのロック面を有するロック爪を設けるとともに、
ストッパーには、先端が前記ロック面に当接して扉開閉部材の上方回動を規制する前向きのロック片を設けて、このストッパーを扉開閉部材の後方に配置したことを特徴とするものである。
【0012】
上記した発明において、前記ロック片の厚さを、ロック爪の厚さ以下として、ロック片の先端面をロック面よりも小さくするのが望ましい。
【0013】
また、スライダーの上部には、ストッパーを上方に回動させるための突部を設け、ストッパーの下部には、前記突部が摺動してロック片先端をロック面から上方に離脱させるための係合斜面を設けて、前記スライダーをストッパーの下方に配置することができる。
【0014】
さらに、スライダーには、凹部を設け、扉開閉部材には、前記凹部の前後の壁面と係合して扉開閉部材を上下回動させるための、突起を設けて、前記スライダーを扉開閉部材の後方に配置することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の遊技機の可変入賞装置は、前扉起立状態では、扉開閉部材のロック面にストッパーのロック片が当接されてロックされているので、遊技機前方から針金などの工具を差し込んで扉開閉部材を回動しようとしても回動させることはできない。また、ストッパーを扉開閉部材の後方に配置したので、工具によりストッパーを上方に跳ね上げようとしても、途中の扉開閉部材が工具の侵入を邪魔するので、ストッパーを跳ね上げることはできない。よって、前扉の不正開放を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】大入賞装置の斜視図である。
【図2】前扉が閉鎖状態にある可変入賞装置の右側面側の斜視図である。
【図3】図2の可変入賞装置の右側面図である。
【図4】可変入賞装置の分解斜視図である。
【図5】可変入賞装置の左側面側の斜視図である。
【図6】前扉を閉鎖状態に維持する可変入賞装置の右側面図である。
【図7】スライダーの前方摺動によりストッパーを上方回動する可変入賞装置の右側面図である。
【図8】前扉が開放状態にある可変入賞装置の右側面図である。
【図9】前扉が開放状態にある可変入賞装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態に付いて説明する。
【0018】
図1は、本発明の可変入賞装置が用いられる大入賞装置を示す図であって、入賞口1が前扉6によって開閉される。可変入賞装置はこの内部に配設されている。
【0019】
図2、3は、本発明の可変入賞装置を示す図であって、この状態においては前扉6が起立されており、入賞口1は閉鎖状態にある。図において、2は駆動装置であるソレノイド、3はスライダー、4は扉開閉部材、5はストッパーである。スライダー3は、ストッパー5の下方で扉開閉部材4の後方に配置されている。なお、図2、3において、左方が遊技機前方側、右方が遊技機後方側である。
【0020】
ソレノイド2はプランジャ21を有し、このプランジャ21は、ソレノイド2が非通電のときは図示していない復帰ばねによって後方側に付勢されているためソレノイドコイルから突出して遊技機の後方側に移動しているが、通電により吸引、後退されて遊技機の前方側に移動する。プランジャ21には、スライダー取付部33がはめ込まれてスライダー3が装着されているので、プランジャ21の移動とともにスライダー3も前後方向に摺動する。
【0021】
スライダー3はスライダー取付部33とスライダー取付部33の一端から垂設された略長方形状のスライダー部34とで構成された上面から見てL字状であって、スライダー部34の上部の前方側に扉開閉部材4と係合する凹部31と、後方側にストッパー5を上方に回動させる突部32と、スライダー取付部33が垂設されている反対側の面に、一定の間隔を空けて併設された摺動方向に平行な一対の案内壁35とが形成されている。凹部31は、上向きコの字形状であって摺動方向に対して垂設された前側壁面31aと後側側面31bを有し、突部32は、矩形であって摺動方向に対して垂設された後側面32bを有する。
【0022】
扉開閉部材4は、板形状であって、支軸41を中心に上下方向に回動するが、支軸41方向に突設し前記凹部31と係合して扉開閉部材4を上下回動させる突起42と、支軸41から外周に向かって突設したロック爪43と、ロック爪43とは支軸41を挟んで反対方向に所要間隔をおいて突設した上側レバー44と下側レバー45とを有する。ロック爪43には、遊技機後方向きの段差であるロック面43aが設けられている。
【0023】
ストッパー5は、扉開閉部材4の厚さ以下の板形状であって、支軸51を中心に上下方向に回動するが、支軸51から外周に向かって突設前記ロック面43aに当接して扉開閉部材3の上方回動を規制するロック片52と、スライダー3の突部32を摺動させてロック片52を上方に回動させて扉開閉部材4の回動ロックを解除するための支軸51と平行な係合斜面53と、係合斜面53と対向し後側面32bと係合する係合面54aを備えた係合突起54とを有している。ロック片52の先端面は、ロック面43aよりも小さく形成されている。
【0024】
前扉6は、支軸61を中心に上下方向に回動するが、入賞口1を開閉する扉本体62と、扉本体62の側方に延出して設けられた作用ピン63を有する。この作用ピン63は上下のレバー44、45の間に臨んでおり、扉開閉部材4の回動により前扉6は開閉される。
【0025】
図4は、可変入賞装置の分解斜視図であって、7は、ソレノイド2を固定するための取付部材であり、8は、扉開閉部材4、ストッパー5を回動可能に軸着するための軸81,82を備えた取付部材である。取付部材8の軸81、82が突設された面には、一対の案内壁35の間に挿入され、スライダー3の摺動を確実なものとするガイド壁83が設けられている。また、図5は、可変入賞装置の左側面側の斜視図であって、スライダー取付部33の溝にプランジャ21がはめ込まれた状態を示す。取付部材7、8は、扉開閉部材4の厚さよりも僅かに大きい隙間を設けて固定されており、その隙間に扉開閉部材4及びストッパー5が軸81、82に軸着されている。
【0026】
図3の起立状態にある前扉6の上端を引っ張って不正に開放しようとすると、前扉6には支軸61を中心として反時計回りの力が働く。このとき、作用ピン63が上側レバー44に当接して、扉開閉部材4には支軸41を中心として時計回りの力が働く。しかし、ロック面43aがロック片52の先端に当接しているために、扉開閉部材4の時計回りへの回動は規制されるので、前扉6を開放することはできない(図6)。
【0027】
図3の状態において、ストッパー5は扉開閉部材4の後方に配置されロック片52の先端面は、ロック面43aよりも小さく、さらに、ストッパー5の厚さが扉開閉部材4の厚さ以下であるため、ロック片52はロック爪43の陰に隠れて前側から直接ストッパー5に触れることはできない。よって、前側から針金などを差し込んでもロック爪43や扉開閉部材4が邪魔することによりストッパー5を跳ね上げることはできない。また、スライダー3は、復帰ばねにより既に後方に移動し、後側面32bと係合面54aが当接しているので、この状態ではスライダー3を後方に押圧すると、ストッパー5には支軸51を中心として反時計回りの力が働くが、ロック片52が扉開閉部材4に当接し、反時計回りへの回動が規制されるため、スライダー3は移動することはできない。
【0028】
ロックを解除して前扉6を傾倒するときには、ソレノイド2に通電して、プランジャ21を吸引して前方に移動する。これによってスライダー3も前方に摺動されるので、突部32が係合斜面53の下側を摺動してストッパー5を上方に回動する(図7)。ロック面43aからロック片52の先端が引き上げられるので、ロックが解除されて扉開閉部材4は上方に回動可能となる。
【0029】
その後、プランジャ21の前方移動により凹部31の後方壁面31bが扉開閉部材4の突起42に当接し、扉開閉部材4には時計回りの力が働く。このときは既に、ロックが解除されて扉開閉部材4は上方に回動可能となっているので、下側レバー45が前扉6の作用ピン63を蹴り上げる。これによって、前扉本体62が自重により前傾されて、作用ピン63が上側レバー44に衝突するまで前扉6は開放される(図8、9)。なお、この状態では、作用ピン63が上側レバー44と下側レバー45との間で自由に動くことができる分だけ前扉6も開閉可能であるが、これは前扉6と遊技機前面のガラス板との間で球噛みさせないためである。
【0030】
所定時間が経過して前扉6を閉鎖するときには、ソレノイド2の通電を遮断して復帰ばねによりプランジャ21を突出させて後方に移動させる。これによって凹部31の前方壁面31aが突起42に衝突するので、扉開閉部材4が下方に回動されて、上側レバー44が前扉6の作用ピン63を押し下げる(図3)。これによって、前扉6は閉鎖状態に起立される。また、突部32による係合斜面53の押し上げが解除され、後側面32bと係合面54aが当接するので、ストッパー5は下方に回動されて、ロック面43aにロック片52の先端が当接されることとなって、ロック状態に復帰する。
【0031】
以上に説明したように、本発明の可変入賞装置は、ロック状態では後ろ向きのロック面43aにロック片52の先端が当接されているので、遊技機前方から針金などの工具を差し込んでも、扉開閉部材4を回動することはできない。また、扉開閉部材4が工具の侵入を邪魔するので、ストッパー5を上方に跳ね上げることはできず、ロック面43aとロック片52との係合を解除することはできない。よって、本発明の可変入賞装置は、前扉の不正な開放を確実に防止することができるという大きな利点を有する。
【符号の説明】
【0032】
3 スライダー、4 扉開閉部材、5 ストッパー、6 前扉、43 ロック爪、43a ロック面、52 ロック片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源により前後方向に摺動するスライダーと、スライダーの摺動により上下方向に回動されて前扉を開閉する扉開閉部材と、スライダーにより上下方向に回動されて扉開閉部材の回動を規制するストッパーと、を備える遊技機の可変入賞装置であって、
扉開閉部材には、遊技機後方向きのロック面を有するロック爪を設けるとともに、
ストッパーには、先端が前記ロック面に当接して扉開閉部材の上方回動を規制する前向きのロック片を設けて、このストッパーを扉開閉部材の後方に配置したことを特徴とする遊技機の可変入賞装置。
【請求項2】
前記ロック片の厚さを、ロック爪の厚さ以下として、ロック片の先端面をロック面よりも小さくした請求項1に記載の遊技機の可変入賞装置。
【請求項3】
スライダーの上部には、ストッパーを上方に回動させるための突部を設け、
ストッパーの下部には、前記突部が摺動してロック片先端をロック面から上方に離脱させるための係合斜面を設けて、前記スライダーをストッパーの下方に配置した請求項1又は2に記載の遊技機の可変入賞装置。
【請求項4】
スライダーには、凹部を設け、
扉開閉部材には、前記凹部の前後の壁面と係合して扉開閉部材を上下回動させるための、突起を設けて、前記スライダーを扉開閉部材の後方に配置した請求項1〜3の何れかに記載の遊技機の可変入賞装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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