説明

遊技機器用コイン識別機のコイン厚みセンサ

【課題】識別対象のコインの両面に対応する出力が得られ、同一発振周波数で発振させることのできる遊技機器用コイン識別機のコイン厚みセンサを提案すること。
【解決手段】遊技機器用コイン識別機のコイン厚みセンサ1では、コイン識別機のコイン通路2を挟み配置した第1発振コイル3および第2発振コイル4を直列接続してハートレー発振回路5を構成することにより、双方の第1、第2発振コイル3、4を同一発振周波数で発振させ、コイン通路2を通過するコイン20の両側の面に対応する出力V3、V4を得ている。これらの出力の差分をとることにより、コイン20の各面の凹凸状態も識別できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技店に設置されているパチンコ玉、ゲーム用コインなどの遊技媒体の貸し出しを行う遊技媒体貸出機に搭載されている硬貨識別機、または、遊技機に搭載されているゲーム用コインを識別するためのコイン識別機に用いられるコイン厚みセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
遊技店においては、パチンコ玉の貸し出しを行うための玉貸機に搭載されている硬貨識別機では、投入された硬貨が通過するコイン通路にコイン材質センサ、コイン厚みセンサ、コイン外径センサなどのコインセンサが配置されている。これらのセンサによって検出された材質、厚みおよび外径に基づき、投入された硬貨の真偽、種類が識別される。また、遊技媒体としてコインを用いて遊技を行う遊技機においても、投入されたコインを識別するために、同様なコインセンサが取り付けられている。このような遊技機器用コイン識別機のコインセンサとしては、特許文献1、2に開示のものを用いることが可能である。
【0003】
ここで、コインの厚みを検出するためのコイン厚みセンサとしては、図4に示すように、コイン通路100の両側に発振コイル101、102を配置し、これらを直列接続してコルピッツ発振回路103を構成して発振させるものが知られている。この構成では、コイン104の通過により変化する双方の発振コイル101、102の合成出力が、半波整流回路、平滑回路などからなる信号処理回路105を介して得られ、これに基づき、コイン104の厚みが検出される。
【0004】
また、コイン厚みセンサとしては、図5に示すように、コイン通路110の両側に、発振コイル111を備えた発振回路112と、発振コイル113を備えた発振回路114とを配置し、これらを個別に発振させるものが知られている。この構成では、コイン115の通過により変化する各発振回路112、114の出力が、それぞれ、半波整流回路、平滑回路などからなる信号処理回路116、117を介して別個に取り出されて、これらの出力に基づきコイン厚みが検出される。
【特許文献1】特開2004−46572号公報
【特許文献2】特許第2567654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のコイン厚みセンサにおいては次のような問題点がある。まず、前者の図4に示すものでは、コイン通路の両側に配置した発振コイルの合成出力しか得ることができない。このため、例えば、図3(c)、(d)に示すコイン20のようにその中央部分が一方の側に凸となっているコインを、中央部分が両側に凸で同一厚さとなっているコインから識別できない。
【0006】
これに対して、後者の図5に示すものでは、コインの両側の面に対応する出力が得られるものの、双方の発振回路が干渉しないように、これらの発振周波数を離す必要がある。発振周波数が異なるとコイン厚みに対する発振回路の出力特性が相違するので、双方の出力特性を整合させるための補償回路などが必要となってしまう。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、識別対象のコインの両面に対応する出力が得られ、しかも、同一発振周波数で発振させることのできるようにした遊技機器用コイン識別機のコイン厚みセンサを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の遊技機器用コイン識別機のコイン厚みセンサでは、コイン識別機のコイン通路における一方の側に第1発振コイルが配置され、当該コイン通路の他方の側に第2発振コイルが配置されており、前記第1発振コイルおよび前記第2発振コイルを同一発振周波数で発振させるために、これら第1発振コイルおよび第2発振コイルが直列接続されてハートレー発振回路が構成されており、前記第1発振コイルおよび前記第2発振コイルの各電圧変化あるいは各発振周波数変化に基づき、前記コイン通路を通過するコインの厚みが検出されるようになっていることを特徴としている。
【0009】
ここで、前記第1発振コイルおよび前記第2発振コイルの各電圧変化の差分、あるいは各発振周波数の変化の差分を演算し、当該差分に基づき、コインの一方の面の凹凸状態を検出することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の遊技機器用コイン識別機のコイン厚みセンサでは、ハートレー発振回路を採用して、コイン通路の両側に配置されている第1発振コイルおよび第2発振コイルを同一発振周波数で発振させ、これらの出力を個別に取り出すことができるようにしている。したがって、識別対象のコインの両面の凹凸状態を精度良く検出できる。また、双方の発振コイルの発振周波数が同一であるので、その出力特性を整合化させるための補償回路なども不要になり、製造コストを下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した遊技機器用コイン識別機のコイン厚みセンサを説明する。
【0012】
図1は本発明を適用したコイン厚みセンサの概略構成図である。コイン厚みセンサ1は、コイン識別機のコイン通路2の一方の側に配置した第1発振コイル3と、コイン通路2の他方の側に配置した第2発振コイル4とを有している。コイン通路2は、例えば、遊技機器用コイン識別機の本体側部材2aと、この本体側部材2aに対して開閉可能なドア側部材2bとの間に形成されており、第1発振コイル3が本体側部材2aに取り付けられ、第2発振コイル4がドア側部材2bに取り付けられている。
【0013】
本例では、第1発振コイル3と第2発振コイル4とが直列接続されて、同一周波数で発振するハートレー発振回路5が構成されている。第1発振コイル3の出力電圧の変化は、半波整流回路6、平滑回路7などからなる信号処理回路8を介して、本体側出力V3として取り出される。第2発振コイル4の出力電圧の変化も同様に、半波整流回路9、平滑回路10などからなる信号処理回路11を介して、ドア側出力V4として取り出される。
【0014】
これらのコイン厚みセンサ1の本体側出力V3およびドア側出力V4は、コイン識別機の制御回路12に供給される。制御回路12では、これらの本体側出力V3およびドア側出力V4に基づき、コイン通路2を通過したコイン20の厚みが識別される。例えば、本体側出力V3からドア側出力V4を減算して求めた差分に基づき、コイン20の表面あるいは裏面の凹凸形状を識別する。
【0015】
なお、一般的には、コイン通路2には、コイン厚みセンサ1の他に、コイン材質センサおよびコイン外径センサが配置されており、これらの出力に基づき、制御回路12では、通過したコインの材質および外径も識別される。そして、識別したコインの厚み、材質および外径に基づき、コイン20の真偽、種類が判別される。コイン材質センサ、コイン外径センサとしては公知のものを用いることができる。
【0016】
本例のコイン厚みセンサ1のハートレー発振回路5は、図2に示すように、直列接続した第1発振コイル3および第2発振コイル4に、1個のコンデンサ13が並列接続された構成となっている。第1発振コイル3および第2発振コイル4の中点14がコンデンサ13を介して接地されている。したがって、第1発振コイル3および第2発振コイル4の出力を個別に得ることができる。
【0017】
図3(a)および図3(b)には、第1発振コイル3および第2発振コイル4から得られる出力電圧V3、V4の波形例を示してある。これらの図において、実線で示す曲線Aはドア側出力V3の波形であり、破線で示す曲線Bは本体側出力V4の波形であり、一点鎖線で示す曲線Cはドア側出力V3から本体側出力V4を減算した差分を示す波形である。
【0018】
ここで、図3(a)に示す波形は、図3(c)に示す状態でコイン20が通過した場合に得られたものであり、図3(b)に示す波形は、図3(d)に示す状態でコイン20が通過した場合に得られたものである。コイン20は、円形外周縁部分に両側に突出したリブ21が形成されており、その中心には、表面22の側に突出した円形突起23が形成され、裏面24は円形外周縁部分以外が平坦面となっている。図3(a)に示す波形は、コイン20の表面22が本体側部材2a(従って第1発振コイル3)に向いた状態で通過した場合に得られたものである。図3(b)に示す波形は、逆に、コイン20の裏面24が本体側部材2aに向いた状態で通過した場合に得られたものである。
【0019】
これら図3(a)および図3(b)の曲線A、Bから分かるように、本体側出力V3およびドア側出力V4に基づき、コイン20の厚みを識別することができる。また、これらの差分を表す曲線Cは、本体側部材2a(第1発振コイル3)に向いているコイン20の面の凹凸に対応したものとなっていることが分かる。したがって、差分をとることにより、コイン20の表面あるいは裏面の凹凸状態も識別できるので、これに基づき、コイン20の真偽、種類の判別を精度良く行うことができる。
【0020】
なお、本例では、第1発振コイル3および第2発振コイル4の出力変化を電圧変化して得るようにしている。この代わりに、第1発振コイル3および第2発振コイル4の発振周波数の変化を検出し、これらの変化に基づき、コイン厚みを識別することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を適用した遊技機器用コイン識別機のコイン厚みセンサの主要部を示す概略構成図である。
【図2】図1のハートレー発振回路を示す概略ブロック図である。
【図3】(a)および(b)は図1のコイン厚みセンサから得られる本体側出力V3、ドア側出力V4、およびそれらの差分を示す波形図であり、(c)および(d)はコインの断面形状および通過状態を示す説明図である。
【図4】従来のコイン厚みセンサの概略構成図である。
【図5】従来のコイン厚みセンサの概略構成図である。
【符号の説明】
【0022】
1 コイン厚みセンサ
2 コイン通路
2a 本体側部材
2b ドア側部材
3 第1発振コイル
4 第2発振コイル
5 ハートレー発振回路
8、11 信号処理回路
12 制御回路
20 コイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイン識別機のコイン通路における一方の側に第1発振コイルが配置され、当該コイン通路の他方の側に第2発振コイルが配置され、
前記第1発振コイルおよび前記第2発振コイルを同一発振周波数で発振させるために、これら第1発振コイルおよび第2発振コイルが直列接続されてハートレー発振回路が構成されており、
前記第1発振コイルおよび前記第2発振コイルの各電圧変化あるいは各発振周波数変化に基づき、前記コイン通路を通過するコインの厚みが検出されるようになっていることを特徴とする遊技機器用コイン識別機のコイン厚みセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の遊技機器用コイン識別機のコイン厚みセンサにおいて、
前記第1発振コイルおよび前記第2発振コイルの各電圧変化の差分、あるいは各発振周波数の変化の差分を演算し、当該差分に基づき、コインの一方の面の凹凸状態を検出することを特徴とする遊技機器用コイン識別機のコイン厚みセンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−179408(P2007−179408A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378815(P2005−378815)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000128946)マミヤ・オーピー株式会社 (122)
【Fターム(参考)】