説明

運動制御装置

【課題】、強度の低下を招くことなく製造コストの低減を図ることができる運動制御装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る運動制御装置は、第3及び第4通路23,24が、第1及び第2通路21,22とともに第1乃至第4室11〜14の開口部を塞ぐ閉塞部材10cに設けられ、かつ第1乃至第4通路21〜24は、金型を用いて閉塞部材10cと一体成形されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動制御装置に関し、より詳細には、所定値を超える外力が制御対象である可動体に加えられない限り、任意の位置で停止する可動体の運動停止状態を保持することができ、更に可動体の運動が開始された後は、可動体に対する外力が運動開始時よりも低下しても、可動体の運動を継続させることができる運動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、国際公開第2005/073589号パンフレットには、第1室と第2室とを連通させる第1通路と、第3室と第4室とを連通させる第2通路と、第1室と第4室とを連通させる第3通路と、第2室と第3室とを連通させる第4通路と、第1乃至第4室に充填された粘性液体を回転運動により押圧する押圧部材と、第1通路に設けられる第1弁機構と、第2通路に設けられる第2弁機構とを備えた運動制御装置が開示されている。
【0003】
ここで、第1弁機構は、第2室から第1室への粘性液体の逆流を阻止する機能を有する。また、第1弁機構は、第1室の粘性液体が一方向へ回転しようとする押圧部材に押圧されることにより高まる第1室の内圧が所定値以下のときは、第1室の粘性液体が第1通路を通じて第2室へ移動することを阻止し、第1室の内圧が所定値を超えたときは、第1室の粘性液体が第1通路を通じて第2室へ移動することを可能とし、かつその後、第1室の内圧が所定値以下に低下しても第1通路を通じた粘性液体の移動を許容し、押圧部材の回転運動が停止したときは、第1室の粘性液体が第1通路を通じて第2室へ移動することを阻止する機能を有する。さらに、第1弁機構は、第1通路を通過する粘性液体の流量を絞る機能を有する。
【0004】
他方、第2弁機構は、第4室から第3室への粘性液体の逆流を阻止する機能を有する。また、第2弁機構は、第3室の粘性液体が逆方向へ回転しようとする押圧部材に押圧されることにより高まる第3室の内圧が所定値以下のときは、第3室の粘性液体が第2通路を通じて第4室へ移動することを阻止し、第3室の内圧が所定値を超えたときは、第3室の粘性液体が第2通路を通じて第4室へ移動することを可能とし、かつその後、第3室の内圧が所定値以下に低下しても第2通路を通じた粘性液体の移動を許容し、押圧部材の回転運動が停止したときは、第3室の粘性液体が第2通路を通じて第4室へ移動することを阻止する機能を有する。さらに、第2弁機構は、第2通路を通過する粘性液体の流量を絞る機能を有する。
【0005】
従来の運動制御装置では、粘性液体が通過する通路を形成することにより部材の強度が低下することを防止する観点から、第3及び第4通路が、押圧部材の回転中心となる軸に設けられていた。しかしながら、軸に第3及び第4通路を設ける構成では、軸とともに回転する押圧部材の回転角度の大きさに設計上の制約が生じるという問題があった。すなわち、軸が回転する場合、軸の外周面は隔壁の先端面と摺接するため、押圧部材の回転角度が大きすぎると、隔壁によって第3及び第4通路の開口部が塞がれることになる。従って、第3及び第4通路の開口部が隔壁によって塞がれることがないよう、押圧部材の回転角度の大きさを設定しなければならなかった。また、軸に第3及び第4通路を設ける構成では、第3及び第4通路は、軸の中心線に対して直交する方向に軸を貫通するよう形成されるため、第3及び第4通路を形成するために、軸に対して二次加工(ドリル加工)が必要となる。従って、軸に第3及び第4通路を形成することは、製造コストを上昇させる一因となっていた。
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/073589号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、強度の低下を招くことなく押圧部材の回転角度の大きさを従来よりも自由に設定することができる運動制御装置を提供することを課題とするものである。また、本発明は、製造コストの低減を図ることができる運動制御装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の運動制御装置を提供する。
(1)第1室と第2室とを連通させる第1通路と、
第3室と第4室とを連通させる第2通路と、
第1室と第4室とを連通させる第3通路と、
第2室と第3室とを連通させる第4通路と、
第1乃至第4室に充填された粘性液体を回転運動により押圧する押圧部材と、
第1通路に設けられ、第2室から第1室への粘性液体の逆流を阻止するとともに、第1室の粘性液体が一方向へ回転しようとする押圧部材に押圧されることにより高まる第1室の内圧が所定値以下のときは、第1室の粘性液体が第1通路を通じて第2室へ移動することを阻止し、第1室の内圧が所定値を超えたときは、第1室の粘性液体が第1通路を通じて第2室へ移動することを可能とし、かつその後、第1室の内圧が所定値以下に低下しても、第1通路を通じた粘性液体の移動を許容し、押圧部材の回転運動が停止したときは、第1室の粘性液体が第1通路を通じて第2室へ移動することを阻止する第1弁機構と、
第2通路に設けられ、第4室から第3室への粘性液体の逆流を阻止するとともに、第3室の粘性液体が逆方向へ回転しようとする押圧部材に押圧されることにより高まる第3室の内圧が所定値以下のときは、第3室の粘性液体が第2通路を通じて第4室へ移動することを阻止し、第3室の内圧が所定値を超えたときは、第3室の粘性液体が第2通路を通じて第4室へ移動することを可能とし、かつその後、第3室の内圧が所定値以下に低下しても、第2通路を通じた粘性液体の移動を許容し、押圧部材の回転運動が停止したときは、第3室の粘性液体が第2通路を通じて第4室へ移動することを阻止する第2弁機構とを備え、
第3及び第4通路が、第1及び第2通路とともに第1乃至第4室の開口部を塞ぐ閉塞部材に設けられていることを特徴とする運動制御装置。
(2)第1乃至第4通路が、金型を用いて前記閉塞部材と一体成形されていることを特徴とする前記(1)に記載の運動制御装置。
【発明の効果】
【0009】
前記(1)に記載の本発明によれば、第3及び第4通路が、第1及び第2通路とともに第1乃至第4室の開口部を塞ぐ閉塞部材に設けられるため、強度の低下を招くことなく押圧部材の回転角度の大きさを従来よりも自由に設定することが可能となる。
前記(2)に記載の本発明によれば、第1乃至第4通路が、金型を用いて前記閉塞部材と一体成形されるため、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に示した実施例に従って説明する。
【実施例】
【0011】
図1乃至図6は、本発明の一実施例に係る運動制御装置の内部構造を示す図である。これらの図に示したように、本実施例に係る運動制御装置は、第1乃至第4室11〜14、第1乃至第4通路21〜24、押圧部材として機能するベーン31,32又は隔壁41,42、第1弁機構50及び第2弁機構60を有して構成される。
【0012】
第1乃至第4室11〜14は、図1に示したように、ケーシング10内に形成される空間が、2つの隔壁41,42及び2つのベーン31,32によって仕切られることにより形成される。第1乃至第4室11〜14には、粘性液体が充填される。粘性液体としては、シリコンオイルなどを用いることができる。
【0013】
2つの隔壁41,42のうち、一方の隔壁41には、シール部材71が設けられている(図1及び図2参照)。シール部材71は、第1及び第2室11,12の粘性液体が、ケーシング10と隔壁41との間に形成される隙間や軸30と隔壁41との間に形成される隙間などを通じて相互に移動することを防止する働きをするものである。また、他方の隔壁42にも同様に、シール部材72が設けられている(図1及び図2参照)。シール部材72は、第3及び第4室13,14の粘性液体が、ケーシング10と隔壁42との間に形成される隙間や軸30と隔壁42との間に形成される隙間などを通じて相互に移動することを防止する働きをするものである。
【0014】
また、2つのベーン31,32のうち、一方のベーン31には、シール部材73が設けられている(図1参照)。シール部材73は、第1及び第3室11,13の粘性液体が、ケーシング10とベーン31との間に形成される隙間などを通じて相互に移動することを防止する働きをするものである。また、他方のベーン32にも同様に、シール部材74が設けられている(図1参照)。シール部材74は、第2及び第4室12,14の粘性液体が、ケーシング10とベーン32との間に形成される隙間などを通じて相互に移動することを防止する働きをするものである。
【0015】
上記した2つの隔壁41,42は、軸30が回転した場合でも、移動しないようケーシング10に固定されている。上記した2つのベーン31,32は、軸30とともに回転し得るよう軸30と一体に成形されている(図1参照)。
【0016】
ケーシング10は、図2に示したように、筒状部材10aと、筒状部材10aの内部に形成される第1乃至第4室11〜14の一方の開口部を閉塞する蓋部材10bと、第1乃至第4室11〜14の他方の開口部を閉塞する閉塞部材10cと、閉塞部材10cの端面を覆うように設けられる被覆部材10dとを有して構成される。筒状部材10a、蓋部材10b、閉塞部材10c及び被覆部材10dは、複数のボルト10eを用いて結合されている(図2参照)。
【0017】
閉塞部材10cには、第1及び第2通路21,22が設けられている(図2,図3,図5及び図6参照)。第1通路21は、第1室11と第2室12とを連通させるよう形成され、第2通路22は、第3室13と第4室14とを連通させるよう形成される。
【0018】
また、本実施例では、閉塞部材10cに、さらに、第3及び第4通路23,24が設けられている(図1、図2及び図6参照)。第3通路23は、第1室11と第4室14とを連通させるよう形成され、第4通路24は、第2室12と第3室13とを連通させるよう形成される。
【0019】
具体的には、第3通路23は、図6に示したように、閉塞部材10cを厚さ方向に貫通して第1室11に開口する穴23aと、一方の端部が穴23aに接続し、他方の端部が第2通路22を構成する穴に接続するよう閉塞部材10cの端面に形成された溝23bとを有して構成される。ここで、第2通路22を構成する穴は、閉塞部材10cを厚さ方向に貫通して第4室14に開口している。
【0020】
他方、第4通路24は、図6に示したように、閉塞部材10cを厚さ方向に貫通して第3室13に開口する穴24aと、一方の端部が穴24aに接続し、他方の端部が第1通路21を構成する穴に接続するよう閉塞部材10cの端面に形成された溝24bとを有して構成される。ここで、第1通路21を構成する穴は、閉塞部材10cを厚さ方向に貫通して第2室12に開口している。第3及び第4通路23,24をそれぞれ構成する溝23b,24bの開口部は、被覆部材10dによって閉塞される。
【0021】
本実施例によれば、第3及び第4通路23,24が、第1及び第2通路21,22とともに第1乃至第4室11〜14の開口部を塞ぐ閉塞部材10cに設けられ、軸30に設けられていないため、押圧部材の回転角度の大きさを従来よりも自由に設定することが可能となる。また、上記した第1乃至第4通路21〜24は、金型を用いて閉塞部材10cと一体成形することが可能である。従って、本実施例によれば、第3及び第4通路23,24を形成するための二次加工が不要であるため、従来の運動制御装置よりも低いコストで製造することが可能になる。また、閉塞部材10cは、所定の厚みを持って成形されることから、閉塞部材10cに第3及び第4通路23,24を形成しても、それらを軸30に形成する場合と同等の強度が得られる。従って、第3及び第4通路23,24を形成することによる強度の低下も防ぐことができる。さらに、第3及び第4通路23,24を軸30に設けない構成としたことにより、軸の強度を高めることができるという利点もある。
【0022】
なお、本実施例と異なり、第3及び第4通路23,24を蓋10bに設けることもできる。但し、この場合には、第3及び第4通路23,24をそれぞれ構成する溝23b,24の開口部を閉塞する部材等が必要となり、部品点数が増加するため、本実施例と比較して不利である。
【0023】
押圧部材は、第1乃至第4室11〜14に充填された粘性液体を回転運動により押圧するものである。例えば、ケーシング10が固定され、軸30が回転するときには、2つのベーン31,32が押圧部材に相当する。一方、軸30が固定され、ケーシング10が軸30の周りを回転するときには、2つの隔壁41,42が押圧部材に相当する。
【0024】
第1弁機構50は、第1通路21に設けられる(図4参照)。第1弁機構50は、以下の機能を有するものである。
(1)第2室12から第1室11への粘性液体の逆流を阻止する機能、
(2)第1室11の粘性液体が一方向へ回転しようとする押圧部材に押圧されることにより高まる第1室11の内圧が所定値以下のときは、第1室11の粘性液体が第1通路21を通じて第2室12へ移動することを阻止する機能、
(3)第1室11の内圧が所定値を超えたときは、第1室11の粘性液体が第1通路21を通じて第2室12へ移動することを可能とし、かつその後、第1室11の内圧が所定値以下に低下しても、第1通路21を通じた粘性液体の移動を許容する機能、
(4)押圧部材の回転運動が停止したときは、第1室11の粘性液体が第1通路21を通じて第2室12へ移動することを阻止する機能、及び
(5)第1通路21を通過する粘性液体の流量を絞る機能。
【0025】
本実施例で採用した第1弁機構50は、図4に示したように、第1通路21を閉鎖し得る弁部材51と、内部に収容される弁部材51の外周面との間に粘性液体の流量を絞る隙間aを形成する内周面を有する作動室52と、弁部材51が粘性液体の圧力を受けることにより開方向へ移動しようとするときに、弁部材51に抵抗を付与するばね53とを有して構成される。
【0026】
弁部材51は、さらに、球状の弁体51aと、弁体51aとばね53との間に介在するように設けられる弁押さえ51bとを有して構成される(図4参照)。この弁部材51によれば、弁体51aの球面が弁座(作動室52に開口する第1通路21の開口部)に当接することにより、閉弁時の密閉性を高めることができる。
【0027】
第1室11から作動室52へ流入しようとする粘性液体の圧力を受ける弁部材51の受圧面の大きさは、上記した(3)の機能を発揮する上で重要である。つまり、弁部材と、該弁部材が開方向へ移動しようとするときに該弁部材に抵抗を付与するばねと有して構成される通常の逆止弁では、閉弁時における受圧面の大きさと開弁後の受圧面の大きさに大きな差がないため、開弁後に粘性液体の圧力が低下すると、ばねの抵抗力により弁部材が押し戻されることになる。従って、通常の逆止弁では、第1室11の内圧が所定値を超えたときは、第1室11の粘性液体が第1通路21を通じて第2室12へ移動することを可能とすることはできても、その後、第1室11の内圧が所定値以下に低下すると、弁体が第1通路21を閉鎖してしまうので、第1通路21を通じた粘性液体の移動を許容することができない。そこで、開弁後に粘性流体の圧力が低下しても弁部材がばねの抵抗力によって押し戻されないようにするため、閉弁時における受圧面の大きさと開弁後の受圧面の大きさに大きな差を設け、開弁後に大きな受圧面が提供されるよう設定する必要がある。
【0028】
本実施例では、弁体51aの受圧面を小さく設定するとともに、弁押さえ51bの受圧面を大きく設定することにより、開弁後に粘性液体の圧力が低下しても、弁部材51がばね53の抵抗力によって押し戻されないようにされている。
【0029】
図4に示したように、粘性液体の流量を絞る隙間aは、弁押さえ51bの外周面の一部に形成された溝と作動室52の内周面との間に形成されている。ばね53としては、圧縮コイルばねが用いられている。
【0030】
第2弁機構60は、第2通路22に設けられる(図4参照)。第2弁機構60は、以下の機能を有するものである。
(1)第4室14から第3室13への粘性液体の逆流を阻止する機能、
(2)第3室13の粘性液体が逆方向へ回転しようとする押圧部材に押圧されることにより高まる第3室13の内圧が所定値以下のときは、第3室13の粘性液体が第2通路22を通じて第4室14へ移動することを阻止する機能、
(3)第3室13の内圧が所定値を超えたときは、第3室13の粘性液体が第2通路22を通じて第4室14へ移動することを可能とし、かつその後、第3室13の内圧が所定値以下に低下しても、第2通路22を通じた粘性液体の移動を許容する機能、
(4)押圧部材の回転運動が停止したときは、第3室13の粘性液体が第2通路22を通じて第4室14へ移動することを阻止する機能、及び
(5)第2通路22を通過する粘性液体の流量を絞る機能。
【0031】
本実施例で採用した第2弁機構60は、図4に示したように、第1弁機構50と同様に構成される。すなわち、第2弁機構60は、第1弁機構50を構成する弁部材51、作動室52及びばね53とそれぞれ同様に構成される弁部材61、作動室62及びばね63を有して構成される。
【0032】
上記のように構成される運動制御装置は、例えば、ケーシング10が回転不能に固定され、軸30が制御対象である可動体の回転運動により回転するように設置され、使用される。
【0033】
本実施例の運動制御装置を、例えば、自動車のドアに適用した場合には、軸30がドアの開閉に伴う回転運動により回転するように設置される。
【0034】
例えば、ドアを全閉位置から少し開け、その回動を停止させたときに、そのドアに対して突風が吹き付けたり、あるいは人や物が不用意に接触するなどすると、ドアは、そのような意図しない外力を受けることにより回動しようとする。しかし、この際、ドアが回動しようとしても、ドアに対する外力が所定値以下であれば、本実施例の運動制御装置により、ドアの停止状態を保持することができる。
【0035】
すなわち、ドアが意図しない外力を受けることにより、例えば、開方向へ回動しようとすると、軸30とともに押圧部材として機能するベーン31,32が一方向(図1において反時計回り方向)へ回転しようとする。このとき、ドアに対する外力が所定値以下であれば、ベーン31が第1室11の粘性液体を押圧する力も弱いため、第1室11の内圧があまり高まらず、所定値に達しない。第1通路21に設けられた第1弁機構50は、第1室11の粘性液体が一方向へ回転しようとする押圧部材に押圧されることにより高まる第1室11の内圧が所定値以下のときは、弁部材51が第1通路21を閉鎖して、第1室11の粘性液体が第1通路21を通じて第2室12へ移動することを阻止する。また、第2通路22に設けられた第2弁機構60は、第4室14から第3室13への粘性液体の逆流を阻止する。さらに、第4室14の粘性液体は、第1弁機構50が開弁しない限り、第3通路23を通じて第1室11へ移動できない。従って、ベーン31,32は一方向へ回転できなくなる。その結果、ドアの停止状態が保持されることになる。
【0036】
一方、ドアが意図しない外力を受けることにより、例えば、閉方向へ回動しようとすると、軸30とともに押圧部材として機能するベーン31,32が逆方向(図1において時計回り方向)へ回転しようとする。このとき、ドアに対する外力が所定値以下であれば、ベーン31が第3室13の粘性液体を押圧する力も弱いため、第3室13の内圧があまり高まらず、所定値に達しない。第2通路22に設けられた第2弁機構60は、第3室13の粘性液体が逆方向へ回転しようとする押圧部材に押圧されることにより高まる第3室13の内圧が所定値以下のときは、弁部材61が第2通路22を閉鎖して、第3室13の粘性液体が第2通路22を通じて第4室14へ移動することを阻止する。また、第1通路21に設けられた第1弁機構50は、第2室12から第1室11への粘性液体の逆流を阻止する。さらに、第2室12の粘性液体は、第2弁機構60が開弁しない限り、第4通路24を通じて第3室13へ移動できない。従って、ベーン31,32は逆方向へ回転できなくなる。その結果、ドアの停止状態が保持されることになる。
【0037】
本実施例の運動制御装置によれば、上記のように任意の位置で停止状態が保持されたドアを意図的に回動させる際には、ドアの停止状態を解除するときに、一時的に大きな外力を要するが、ドアの回動が開始された後は、小さな外力でドアの回動を継続させることができる。
【0038】
すなわち、停止状態のドアを意図的に開方向へ回動させるときには、停止状態のドアに対して大きな外力を加える。それにより、第1室11の粘性液体がベーン31に強く押圧されることになり、第1室11の内圧が高まる。このとき、第1室11の内圧が所定値を超えると、第1通路21に設けられた第1弁機構50は、第1室11の粘性液体が第1通路21を通じて第2室12へ移動することを可能とする。すなわち、第1室11の内圧が所定値を超えたときには、弁部材51(弁体51a)が受ける粘性液体の圧力がばね53の抵抗力よりも大きくなるため、図7に示したように、弁部材51が開方向へ移動し、粘性液体が第1通路21を通過可能となる。これにより、ベーン32に押圧される第4室14の粘性液体は、第1室11へ移動し、第2室12の粘性液体は、第4通路24を通じて第3室13へ移動する。従って、ベーン31,32は一方向へ回転可能となる。その結果、ドアの停止状態が解除されることになる。
【0039】
ドアの回動が開始された後は、弁部材51が受ける粘性液体の圧力が低下しても、弁部材51(弁押さえ51b)の大きな受圧面が提供されるため、ばね53の抵抗力によって弁部材51が押し戻されることがない。従って、ベーン31,32は一方向への回転を継続することができる。その結果、小さな外力でドアを回動させることができる。
【0040】
また、第1弁機構50は、第1通路21を通過する粘性液体の流量を絞る機能を有するため、ドアの停止状態が解除された後に、そのドアが勢いよく回動することを防止することができる。すなわち、粘性液体が弁部材51の外周面と作動室52の内周面との間に形成される隙間aを通過するときに、第1通路21を通過する粘性液体の流量が絞られることにより、粘性液体に抵抗が生じてベーン31,32の回転運動を緩慢にさせる。その結果、ドアに制動力が付与されることになる。
【0041】
一方、停止状態のドアを意図的に閉方向へ回動させるときには、ドアを開方向へ回動させるときと同様に、停止状態のドアに対して大きな外力を加える。それにより、第3室13の粘性液体がベーン31に強く押圧されることになり、第3室13の内圧が高まる。このとき、第3室13の内圧が所定値を超えると、第2通路22に設けられた第2弁機構60は、第3室13の粘性液体が第2通路22を通じて第4室14へ移動することを可能とする。すなわち、第3室13の内圧が所定値を超えたときには、弁部材61(弁体61a)が受ける粘性液体の圧力がばね63の抵抗力よりも大きくなるため、図8に示したように、弁部材61が開方向へ移動し、粘性液体が第2通路22を通過可能となる。これにより、ベーン32に押圧される第2室12の粘性液体は、第3室13へ移動し、第4室14の粘性液体は、第3通路23を通じて第1室11へ移動する。従って、ベーン31,32は逆方向へ回転可能となり、その結果、ドアの停止状態が解除されることになる。
【0042】
ドアの回動が開始された後は、弁部材61が受ける粘性液体の圧力が低下しても、弁部材61(弁押さえ61b)の大きな受圧面が提供されるため、ばね63の抵抗力によって弁部材61が押し戻されることがない。従って、ベーン31,32は逆方向への回転を継続することができる。その結果、小さな外力でドアを回動させることができる。
【0043】
また、第2弁機構60は、第2通路22を通過する粘性液体の流量を絞る機能を有するため、ドアの停止状態が解除された後に、そのドアが勢いよく回動することを防止することができる。すなわち、粘性液体が弁部材61の外周面と作動室62の内周面との間に形成される隙間bを通過するときに、第2通路22を通過する粘性液体の流量が絞られることにより、粘性液体に抵抗が生じてベーン31,32の回転運動を緩慢にさせる。その結果、ドアに制動力が付与されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例に係る運動制御装置の内部構造を示す図である。
【図2】図1におけるA−A部断面図である。
【図3】図1におけるB−B部部分断面図である。
【図4】図1におけるC−C部部分拡大断面図である。
【図5】図1におけるD−D部部分断面図であって、第1弁機構を構成する弁部材及びばねを取り除いた状態を示す図である。
【図6】図2におけるE−E部断面図であって、第1及び第2弁機構を構成する弁部材及びばねを取り除いた状態を示す図である。
【図7】第1弁機構の作用を説明するための図である。
【図8】第2弁機構の作用を説明するための図である。
【符号の説明】
【0045】
10 ケーシング
10a 筒状部材
10b 蓋部材
10c 閉塞部材
10d 被覆部材
10e ボルト
11 第1室
12 第2室
13 第3室
14 第4室
21 第1通路
22 第2通路
23 第3通路
23a 穴
23b 溝
24 第4通路
24a 穴
24b 溝
30 軸
31,32 ベーン
41,42 隔壁
50 第1弁機構
51 弁部材
51a 弁体
51b 弁押さえ
52 作動室
53 ばね
60 第2弁機構
61 弁部材
61a 弁体
61b 弁押さえ
62 作動室
63 ばね
71〜74 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1室と第2室とを連通させる第1通路と、
第3室と第4室とを連通させる第2通路と、
第1室と第4室とを連通させる第3通路と、
第2室と第3室とを連通させる第4通路と、
第1乃至第4室に充填された粘性液体を回転運動により押圧する押圧部材と、
第1通路に設けられ、第2室から第1室への粘性液体の逆流を阻止するとともに、第1室の粘性液体が一方向へ回転しようとする押圧部材に押圧されることにより高まる第1室の内圧が所定値以下のときは、第1室の粘性液体が第1通路を通じて第2室へ移動することを阻止し、第1室の内圧が所定値を超えたときは、第1室の粘性液体が第1通路を通じて第2室へ移動することを可能とし、かつその後、第1室の内圧が所定値以下に低下しても、第1通路を通じた粘性液体の移動を許容し、押圧部材の回転運動が停止したときは、第1室の粘性液体が第1通路を通じて第2室へ移動することを阻止する第1弁機構と、
第2通路に設けられ、第4室から第3室への粘性液体の逆流を阻止するとともに、第3室の粘性液体が逆方向へ回転しようとする押圧部材に押圧されることにより高まる第3室の内圧が所定値以下のときは、第3室の粘性液体が第2通路を通じて第4室へ移動することを阻止し、第3室の内圧が所定値を超えたときは、第3室の粘性液体が第2通路を通じて第4室へ移動することを可能とし、かつその後、第3室の内圧が所定値以下に低下しても、第2通路を通じた粘性液体の移動を許容し、押圧部材の回転運動が停止したときは、第3室の粘性液体が第2通路を通じて第4室へ移動することを阻止する第2弁機構とを備え、
第3及び第4通路が、第1及び第2通路とともに第1乃至第4室の開口部を塞ぐ閉塞部材に設けられていることを特徴とする運動制御装置。
【請求項2】
第1乃至第4通路が、金型を用いて前記閉塞部材と一体成形されていることを特徴とする請求項1記載の運動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−85506(P2007−85506A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277601(P2005−277601)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000198271)株式会社ソミック石川 (91)
【Fターム(参考)】