説明

運搬車輌におけるプラットホームの防護壁

【課題】構造が簡単で、しかも使い易くてプラットホームの側部に簡単に配置することができる運搬車輌におけるプラットホームの防護壁を提供する。
【解決手段】車体1上に荷箱2が昇降自在に搭載され、荷箱2の前面には、その底部にプラットホーム4が車輌の前方に張出自在に設けられるとともに、この前面にプラットホーム出入口が形成され、さらに荷箱2の前部にはプラットホーム4の側部開口を覆う防護壁6が設けられてなる運搬車輌において、防護壁6は、一枚もので且つ荷箱2の前部から引出し自在な引出し式に構成されてなるものである。防護壁6は、荷箱の前部に巻取られた状態で格納される巻取り式のものである。防護壁6は、上端部に垂直軸によって回転自在に支持されたガイドローラを備え、また、下端部に水平軸によって回転自在に支持されたガイドローラを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降自在な荷箱を備えた運搬車輌において、荷箱の前部に設けられたプラットホームの側部開口を覆うための防護壁の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、荷箱の前面底部に前方に張出自在なプラットホームを備えた運搬車輌としては、例えば、高所にある航空機のドアを通じて機内に食料や荷物を搬入出するために使用する運搬車輌が既知である。
【0003】
具体的には、この運搬車輌は、車体上に荷箱が昇降自在に搭載され、該荷箱の前面には、その底部にプラットホームが車輌の前方に張出自在に設けられるとともに、その前面にプラットホーム出入口が形成され、さらに荷箱の前部には上記プラットホームの側部開口を覆う防護壁が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3550020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のものでは、防護壁は、プラットホーム出入口を開閉する開閉扉も兼用するものであり、このためプラットホーム出入口に対して水平方向に開閉する機構と、プラットホーム出入口を開放して荷箱の側部に配置した状態で前方にスライドする機構とを備えなければならず、構造が複雑になるとともにこの複雑化により操作性も悪くなり使い勝手が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、構造が簡単で、しかも使い易くてプラットホームの側部に簡単に配置することができる運搬車輌におけるプラットホームの防護壁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明の運搬車輌におけるプラットホームの防護壁は、車体上に荷箱が昇降自在に搭載され、該荷箱の前面には、その底部にプラットホームが車輌の前方に張出自在に設けられるとともに、この前面にプラットホーム出入口が形成され、さらに荷箱の前部には上記プラットホームの側部開口を覆う防護壁が設けられてなる運搬車輌において、前記防護壁は、一枚もので且つ荷箱の前部から引出し自在な引出し式に構成されてなるものである。
【0007】
請求項2に係る発明の運搬車輌におけるプラットホームの防護壁では、前記防護壁は、荷箱の前部に巻取られた状態で格納される巻取り式のものである。
【0008】
請求項3に係る発明の運搬車輌におけるプラットホームの防護壁では、前記防護壁は、上端部に垂直軸によって回転自在に支持されたガイドローラを備え、また、下端部に水平軸によって回転自在に支持されたガイドローラを備えてなるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、防護壁を荷箱の前部から引出すだけの簡単な操作によって、当該防護壁をプラットホームの側面開口に配置することができ使い勝手が良いとともに、構造も簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、運搬車輌の全体構成を示している。
【0012】
この運搬車輌は、車体1上に荷箱2が昇降機構3により昇降自在に搭載されている。
【0013】
荷箱2は、内部に収容物を収容可能な箱状体であって、荷箱2の前面には後述するプラットホーム出入口21(図2参照)が観音式の開閉扉21aによって開閉自在に設けられている。
【0014】
また、荷箱2の後面には当該荷箱内に収容物を搬入出する際に使用する搬入出口22が観音式の開閉扉(図示省略)によって開閉自在に設けられている。そして、この搬入出口22には荷受台昇降装置23が設けられており、水平に配置した荷受台23aを地上と荷箱2の床面との間で昇降させることによって荷物を搬入出するようにしている。
【0015】
昇降機構3は、×状に配置された2本のリンク31、32を備えており、これらリンク31、32を図示しない油圧シリンダ等のアクチュエータによって上下端同士を近接・離間させることによって、図1に一点鎖線で示すように上端に連結した荷箱2を車体1上から適宜な高さ位置までの間で昇降させるようにしている。
【0016】
また、荷箱2は上記リンク31、32の上端に対して車輌前方に所定長さスライド自在に支持されている。
【0017】
そして、このように昇降自在に且つ前後にスライド自在に設けられた荷箱2には、その前面にプラットホーム4と天蓋5とが設けられている。
【0018】
プラットホーム4は、荷箱2の前面両側に立設配置されたガイドレール45に沿って昇降可能に設けられており、図1に一点鎖線で示すような作業時においては荷箱2の床面と略同一平面上となるように当該荷箱2の前面底部に配置し、また図1に実線で示すような格納時には荷箱2の前面上部に上昇させて運転席1aと干渉しないように当該運転席1aの上方に配置している。
【0019】
そして、このプラットホーム4は、固定側となる主プラットホーム41と、主プラットホーム41に対して油圧シリンダなどのアクチュエータ(図示省略)により前方に張出自在に設けられた移動側となる副プラットホーム42とで構成されている。
【0020】
また、これら主プラットホーム41と副プラットホーム42の各両側には手摺り43、44が設けられており、副プラットホーム42を張出して配置した際には、この副プラットホーム42の両側に立設された手摺り44が主プラットホーム41の両側に立設された手摺り43の前方延長上に配置され、作業者並びに荷物の落下などを防止するようにしている。なお、手摺り44の前端部は折畳み自在に構成されている。
【0021】
さらに、副プラットホーム42は、主プラットホーム41に対して水平方向に首振り自在に設けられており、その先端縁には緩衝部材45が設けられている。
【0022】
一方、天蓋5は、固定側となる主天蓋51と、主天蓋51に対して油圧シリンダなどのアクチュエータ(図示省略)により前方に張出自在に設けられた移動側となる副天蓋52とで構成されている。これら主天蓋51と副天蓋52とは、開口部が下向きになるコ字状に形成されている。
【0023】
そして、上述のように構成されたプラットホーム4と天蓋5とは、プラットホーム4が上昇した際に当該プラットホーム4の左右の各手摺り43、44間に天蓋5が配置されるようになされている。
【0024】
また、前記荷箱2の前部両側には、上記プラットホーム4及び天蓋5を前方に張出した際に、これら両側にできる開口を覆う防護壁6が設けられている。
【0025】
この防護壁6は、図2に示すように荷箱2の前面に形成されたプラットホーム出入口21の両側に配設された収容ボックス61内に巻取った状態で格納配置されており、当該収容ボックス61から前方に引出し可能に、また引出した防護壁6を収容ボックス61内に巻取り自在に設けられている。即ち、防護壁6は筒状に巻取ることができるように構成されており、収容ボックス61から引出すことによって一直線状に配置されるようになっている。
【0026】
上述した防護壁6の引出し・巻取りはガイド手段を介して円滑に行うように構成されている。このガイド手段は、図3に示すように防護壁6の上端部を案内する上部ガイド手段7と、防護壁6の下端部を案内する下部ガイド手段8とを備えている。
【0027】
上部ガイド手段7は、図3及び図4に示すように前記主天蓋51に設けられた固定ガイドレール71と、副天蓋52に設けられ上記固定ガイドレール71内に前方へスライド自在に配置されたスライドガイドレール72と、前記収容ボックス61と上記固定ガイドレール71間に配置された荷箱側固定ガイドレール(図示省略)と、防護壁6の上端にブラケットを介して設けられ上記各ガイドレール内を転動自在なガイドローラ73を備えている。
【0028】
上記スライドガイドレール72は副天蓋52のスライド動作に連動してスライドするように構成されている。
【0029】
ガイドローラ73は、垂直軸によって回転自在に支持されており、上記各ガイドレール内において左右のフレを規制しながら転動することによって防護壁6の上端部を円滑に移動させるようにしている。
【0030】
下部ガイド手段8は、図3及び図5に示すように前記主プラットホーム41に設けられた固定ガイドレール81と、副プラットホーム42に設けられ上記固定ガイドレール81内に前方へスライド自在に配置されたスライドガイドレール82と、前記収容ボックス61と上記固定ガイドレール81間に配置された荷箱側固定ガイドレール(図示省略)と、防護壁6の下端にブラケットを介して設けられた左右一対のガイドローラ83を備えている。
【0031】
上記スライドガイドレール82は副プラットホーム42のスライド動作に連動してスライドするように構成されている。
【0032】
ガイドローラ83は、両側に鍔83aを有するもので、これら左右の鍔83aで各ガイドレールの立上げ部(例えば、固定ガイドレール81では図3に示す右側のガイドローラ83が立上げ部81aを、スライドガイドレール82では図3に示す左側のガイドローラ83が立上げ部82a、)を挟持する形で転動することで、左右のフレを規制しながらを防護壁6の下端部を円滑に移動させるようにしている。
【0033】
次に、このように構成された運搬車輌について、例えば航空機などに食料または荷物を搬入する場合を例に採って説明する。
【0034】
まず、荷箱2内に必要な食料や荷物を搭載したカートなどを例えば荷箱2後面の搬入出口22を通じて収容する。
【0035】
そして、この運搬車輌を航空機に接近させて当該航空機の搬入出口に対応する位置に停車する。次に、荷箱2を上記搬入出口に対応する高さまで上昇させ、必要に応じて荷箱2を前方にスライドさせる。
【0036】
この後、まず、副プラットホーム42を主プラットホーム41から前方に張出させてその先端の緩衝部材45を航空機の搬入出口の下端縁に当接させる。この際、副プラットホーム42の張出動作とともにスライドガイドレール82も同様に前方にスライドして配置される。
【0037】
続いて、防護壁6を収容ボックス61から引出して荷箱2側から主プラットホーム41に導く。この場合、防護壁6の上端部は、ガイドローラ73が荷箱2側のガイドレールと固定ガイドレール71に案内されながら主天蓋51に導かれる。また、防護壁6の下端部もガイドローラ83が荷箱2側のガイドレールと固定ガイドレール81に案内されながら主プラットホーム41に導かれる。
【0038】
次に、副天蓋52を主天蓋51から前方に引出す。この際、副天蓋52の張出動作とともにスライドガイドレール72も同様に前方にスライドして配置される。
【0039】
この後、防護壁6を収容ボックス61からさらに引出して副天蓋52と副プラットホーム42との間に配置し、この防護壁6の先端を固定ピンなどで副プラットホーム42に固定する。
【0040】
このようにしてプラットホーム4と天蓋5との側面開口を防護壁6によって覆うことで、暴風雨などの悪天候の場合であってもこの防護壁6によりプラットホーム4内を外部から遮断することができ、このプラットホーム4を通じて荷箱2内の食料等を航空機に円滑に搬入することができる。
【0041】
また、上述とは逆の動作によって、副天蓋52を主天蓋51側にスライド配置するとともに、副プラットホーム42を主プラットホーム41にスライド配置しながら、防護壁6を収容ボックス61内に巻取って収容していく。
【0042】
このように防護壁6を荷箱2の前部から引出すだけの簡単な操作によって、当該防護壁6をプラットホーム4の側面開口に配置することができ使い勝手が良いとともに、構造も簡素化することができる。
【0043】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれに限定されることなく、その範囲内において種々設計変更可能である。
【0044】
例えば、防護壁6は、収容ボックス61内に巻取るものについて説明したが、巻取り方式に限らず、荷箱2側ら引戸のように引出すタイプのものであっても良い。このように引戸のように引出すタイプのものでは、収容ボックスに収容するものに比べてプラットホーム出入口21を大きく確保できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】運搬車輌の全体構成を示す側面図である。
【図2】車輌の荷箱側を示す平面図である。
【図3】ガイド手段を示す正面図である。
【図4】上部ガイド手段を示す側面図である。
【図5】下部ガイド手段を示す側面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 車体
2 荷箱
21 プラットホーム出入口
3 昇降機構
4 プラットホーム
6 防護壁
61 収容ボックス
7 上部ガイド手段
8 下部ガイド手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上に荷箱が昇降自在に搭載され、該荷箱の前面には、その底部にプラットホームが車輌の前方に張出自在に設けられるとともに、この前面にプラットホーム出入口が形成され、さらに荷箱の前部には上記プラットホームの側部開口を覆う防護壁が設けられてなる運搬車輌において、
前記防護壁は、一枚もので且つ荷箱の前部から引出し自在な引出し式に構成されてなることを特徴とする運搬車輌におけるプラットホームの防護壁。
【請求項2】
前記防護壁は、荷箱の前部に巻取られた状態で格納される巻取り式のものであることを特徴とする請求項1記載の運搬車輌におけるプラットホームの防護壁。
【請求項3】
前記防護壁は、上端部に垂直軸によって回転自在に支持されたガイドローラを備え、また、下端部に水平軸によって回転自在に支持されたガイドローラを備えてなることを特徴とする請求項1又は2記載の運搬車輌におけるプラットホームの防護壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−13187(P2008−13187A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183377(P2006−183377)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】