説明

運転アシストシステム

【課題】より広範な視点からの予測に基づいて、衝突回避などのための的確な運転アシスト動作を行う。
【解決手段】車両に搭載され車両の運転をアシストする運転アシスト装置700を複数含む運転アシストシステムであって、自車両周辺に存在する他車両の画像データを取得するステレオカメラユニット420と、他車両の運転アシスト装置700のID情報を取得するID情報取得手段と、前記ステレオカメラユニット420によって取得された画像データに基づいて、他車両が衝突する可能性を算出する衝突可能性算出手段と、前記衝突可能性算出手段によって算出された衝突可能性が所定値以上である車両が搭載する運転アシスト装置700のID情報を抽出するID抽出手段と、前記ID抽出手段によって抽出されたID情報の運転アシスト装置700に対して、運転アシスト動作要求を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され運転者をアシストする運転アシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、先行車との車間距離を調節して先行車に追従走行する車間クルーズ制御が開発されており、この技術によって、先行車の接近に対して、警報を発したり自動ブレーキをかけたりすることで、衝突を防ぐことができる。また、走行車線を認識し、車線を外れそうになったら、警報を発したり操舵トルクアシストを行ったりすることで、車線からの逸脱を防ぐシステムも提案されている。
【0003】
これらのシステムは、一般的に、運転支援制御装置システム、運転アシストシステムなどと呼ばれ、運転者の運転操作を部分的に代替えしてやることにより、運転負荷を低減させ、より快適なドライブが可能となり、また、交通事故の大きな要因となっている前方不注視を補うため、事故の低減にも役立つものと期待されている。
【0004】
上記のような運転アシストシステムの一例として、特許文献1(特開2001−101592号公報)には、自車両に搭載されるとともに、他の移動体との衝突を回避するための措置を自車両側で採るようにした車両衝突防止装置において、この自車両の少なくとも斜め前方を含む広角の視野の画像を撮る撮像手段と、この撮像手段により撮像された画像から移動中の前記移動体を抽出する抽出手段と、この自車両が現状のまま走行を継続したときに前記移動体と衝突する恐れがあるか否かを判断する判断手段と、この判断手段より衝突の恐れがあると判断されたときに前記措置を自動的に採る衝突回避指令手段とを備えたことを特徴とする車両用衝突防止装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−101592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のような運転アシストシステムにおいては、衝突の可能性があるか否かを判断する判断手段は、自車両に搭載された撮像手段によって撮影された画像に基づいて、判断するように構成されているが、自車両から撮影することが可能な領域は限られており、これにより全ての事故を予測することが困難であるため、的確に衝突回避のためのアシスト動作を行うことができない、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に係る発明は、車両に搭載され車両の運転をアシストする運転アシスト装置を含む運転アシストシステムであって、自車両周辺に存在する他車両の画像データを取得する画像データ取得手段と、自車両周辺に存在する他車両の運転アシスト装置のID情報を取得するID情報取得手段と、前記画像データ取得手段によって取得された画像データ及び前記ID情報により定まる他車両の位置情報に基づいて、他車両が衝突する可能性を算出する衝突可能性算出手段と、前記衝突可能性算出手段によって算出された衝突可能性が所定値以上である車両が搭載する運転アシスト装置のID情報を抽出するID抽出手段と、前記ID抽出手段によって抽出されたID情報の運転アシスト装置に対して、運転アシスト動作要求を行うことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の運転アシストシステムにおいて、前記送信手段が、車車間通信によって、運転アシスト動作要求を前記抽出手段によって抽出されたID情報の運転アシスト装置に直接送信することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、請求項1に記載の運転アシストシステムにおいて、前記送信手段が、サーバー装置を介して、運転アシスト動作要求を前記抽出手段によって抽出されたID情報の運転アシスト装置に直接送信することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の運転アシストシステムにおいて、前記画像データ取得手段がステレオカメラであることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の運転アシストシステムにおいて、運転アシスト装置による運転アシスト動作が警告音の発音であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の運転アシストシステムにおいて、運転アシスト装置による運転アシスト動作が警告の表示であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の運転アシストシステムにおいて、運転アシスト装置による運転アシスト動作がブレーキの制御であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る運転アシストシステムによれば、自らの車両とは異なる車両に搭載された画像データ取得手段によって取得された画像データに基づいて衝突可能性を算出し、この算出結果に基づきアシスト動作を行うこととなるので、より広範な視点からの予測に基づいて、衝突回避などのための的確な運転アシスト動作を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る運転アシストシステムにおける車載システムの概略を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る運転アシストシステムにおける車載システムのブロック構成の概略を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る運転アシストシステムにおける車車間通信ユニット510が送受信するパケットデータの一例を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る運転アシストシステムにおける動作レベルの概念を説明する図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る運転アシストシステムによる処理のフローチャートを示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る運転アシストシステムにおける衝突可能性算出処理のサブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る運転アシストシステムにおける保存要求パケットチェック処理のサブルーチンのフローチャートを示す図である。
【図8】道路上の交通状況の一例を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る運転アシストシステムにおけるデータ送受の一例及びデータ処理の一例を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る運転アシストシステムにおける車両―センターサーバー間の送受信に用いられるパケットデータの一例を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る運転アシストシステムにおける車両側搭載システムのフローチャートを示す図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る運転アシストシステムにおけるセンターサーバー側のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る運転アシストシステムにおける車載システムの概略を示す図であり、図2は本発明の第1実施形態に係る運転アシストシステムにおける車載システムのブロック構成の概略を示す図である。図1及び図2において、10は車両、100はECU、120は計時部、200は走行情報取得部、210は車速センサ、220はステアリングセンサ、230はアクセル開度センサ、240はブレーキペダルセンサ、400は車両周辺情報取得部、420はステレオカメラユニット、500は通信部、510は車車間通信ユニット、511は車両ID記憶部、512は通信管理バッファ、700は運転アシスト装置、710は主制御部、711はスピーカー、712は警告灯、713はブレーキアシスト装置、720は運転アシスト装置ID記憶部、800はナビゲーションシステム部、810はナビゲーションシステム、811は高精度GPS位置情報取得部、820はデータベースをそれぞれ示している。
【0016】
図1及び図2に示す車載システムは、1台の車両に搭載されるものを示しているが、本実施形態に係る車載システムは、複数台の車両に搭載された個々のものが協働することによって、その機能を発揮することができるようになるものである。したがって、以下の説明においては、図1及び図2に示す車両10に搭載さている車載システムが、道路を走行する個々の車両に搭載されているような交通環境が想定されている。なお、本実施形態の運転アシストシステムは、原動機としてエンジンを搭載し、このエンジンの駆動力により走行を行う自動車、或いは、原動機としてモーターを搭載し、モーターの駆動力のみによる走行を行う電気自動車、或いは原動機として上記双方を搭載し、モーター及び/又はエンジンによる駆動に基づいて走行するハイブリッド車などの車両に搭載することが可能である。
【0017】
本実施形態に係る車載システムにおいて、ECU100はエレクトロニックコントロールユニットの略であり、CPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理機構である。ECU100は、図示されているECU100と接続される各構成と協働・動作する。また、ECU100は、本発明の運転アシストシステムにおける種々の制御処理は、ECU100内のROMなどの記憶手段に記憶保持されるプログラムやデータに基づいて実行されるものである。なお、特許請求の範囲に記載された「算出手段」、「判定手段」などは、このECU100の動作を上位概念的に表現したものである。なお、本実施形態においては、上記の各手段はECU100とECU100上で実行されるプログラムによって実現されるものとしているが、これらの各手段はこれに限定されるものではなく、論理回路などのハードウエアのみで実現されるようなものであってもよい。
【0018】
走行情報取得部200は、車両10の実走行に関連する情報、或いは運転捜査情報などを取得する構成であり、例えば、車速センサ210、ステアリングセンサ220、アクセル開度センサ230、ブレーキペダルセンサ240などを含むものである。
【0019】
走行情報取得部200における車速センサ210は、車両10の速度(自車両速度)のセンシング(計測)を行うようになっている。なお、車両の走行状況を取得するものとして、その他のセンサ類を設けるようにしてもよい。
【0020】
また、走行情報取得部200において、ステアリングセンサ220は、車両10のステアリングの操舵角度を検出するものであり、アクセル開度センサ230は運転者によるアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するものであり、また、ブレーキペダルセンサ240は運転者によるブレーキペダルの踏み込み量を検出するものである。
【0021】
車両周辺情報取得部400は、車両10周辺の車外の情報などを取得する構成であり、本実施形態では、車両10前方側を撮像することが可能なステレオカメラユニット420を有している。なお、本実施形態においては、ステレオカメラユニット420は車両10前方のみを撮影するように設けられているが、カメラユニットをより多く搭載して、前方に加え車両10後方を撮影するように構成したり、或いは、車両10の四方に設け、車両10の水平方向の視界全体を網羅するように撮影するように構成したりしてもよい。ステレオカメラユニット420は、ステレオの動画像を撮影が可能なものであり、さらにステレオカメラユニット420で取得された撮影データに基づいて、ECU100が画像解析を行うことにより、撮影された物体とステレオカメラユニット420との間の距離とが算出できるようになっている。本実施形態に係る運転アシストシステムにおいては、このステレオカメラユニット420で取得されたステレオの動画像データの解析によって、自車両とは異なる他車両同士の衝突可能性を算出し、衝突可能性が所定値以上であるような場合には、前記他車両の運転アシスト装置が動作するように動作要求指令を送信するものである。すなわち、本実施形態に係る運転アシストシステムは、自らの車両とは異なる車両に搭載されたステレオカメラユニット420によって取得された画像データに基づいて衝突可能性を算出し、この算出結果に基づき、自らの車両におけるアシスト動作を行うこととなるので、より広範な視点からの予測に基づいて、衝突回避などのための的確な運転アシスト動作を行うことが可能となるのである。
【0022】
通信部500における車車間通信ユニット510は、無線パケット通信により比較的近傍に存在する車両間で通信を行うためのユニットである。車車間通信ユニット510には、通信を行う際に送信元を特定するために用いられる車両IDが記憶される車両ID記憶部511と、近傍に存在し、通信コネクションが確立されている車両から送信されたパケットデータを一時的にプールしておく通信管理バッファ512とが設けられている。車両ID記憶部511における車両IDには、それぞれの車両固有のものが記憶されている。
【0023】
図3は本発明の第1実施形態に係る運転アシストシステムにおける車車間通信ユニット510が送受信するパケットデータの一例を示す図である。図3(A)は定期的な通信に用いられるパケットであり、図3(B)は運転アシストシステムが運転アシスト動作要求を送信する際に用いられるパケットである。
【0024】
定期通信用パケットには、例えば、「パケットナンバー」、「送信元車両ID情報」、「位置情報」、「速度情報」、「ベクトル情報」、「運転アシスト装置ID情報」などの項目のデータが含まれる。
【0025】
定期通信用パケット中の「パケットナンバー」はパケットの連続性などを特定するために用いられるパケット特定用のデータであり、「送信元車両ID情報」は送信元の車車間通信ユニット510における車両ID記憶部511に記憶されているIDデータであり、「位置情報」は高精度GPS位置情報取得部811によって取得される車両位置に係る座標データであり、「速度情報」は車速センサ210によって取得される車両の走行スピードに関するデータであり、「ベクトル情報」はステアリングセンサ220やナビゲーションシステム部800で求められる車両の進行方向に関するデータであり、「運転アシスト装置ID情報」は車両に搭載されている運転アシスト装置700の運転アシスト装置ID記憶部720に記憶されているIDデータである。
【0026】
また、運転アシスト動作要求用パケットには、例えば、「パケットナンバー」、「送信元車両ID情報」、「送信先車両ID」、「要求先運転アシスト装置ID情報」、「動作レベル」などの項目のデータが含まれる。運転アシスト動作要求用パケット中の「パケットナンバー」はパケットの連続性などを特定するために用いられるパケット特定用のデー
タであり、「送信元車両ID情報」は送信元の車車間通信ユニット510における車両ID記憶部511に記憶されているIDデータであり、「送信先車両ID情報」は送信先の車車間通信ユニット510における車両ID記憶部511に記憶されているIDデータであり、「要求先運転アシスト装置ID情報」は、アシスト動作を要求する先の運転アシスト装置700の運転アシスト装置ID記憶部720に記憶されているIDデータであり、「動作レベル」は運転アシストをどのようなレベルで行うかを指定するためのパラメーターである。
【0027】
図4は本発明の第1実施形態に係る運転アシストシステムにおける動作レベルの概念を説明する図である。図4において、衝突可能性Pは、その値が大きければ大きいほど、車両同士の衝突の可能性が大きくなるように定められた値であり、その値がC1以上となる
と運転アシストの動作要求を発するように構成されている。
【0028】
図4の表中において、C1<C2<C3の関係があるが、衝突可能性PがC1≦P<C2
満たす場合、すなわち、衝突の可能性はあるが衝突の可能性は小程度である場合はレベル1として定義され、運転アシスト装置700は警告灯712を点灯させるように動作要求される。
【0029】
また、衝突可能性PがC2≦P<C3を満たす場合、すなわち、衝突の可能性は中程度である場合はレベル2として定義され、運転アシスト装置700は警告灯712の点灯、及びスピーカー711から警告音の発音がなされるように動作要求される。
【0030】
また、衝突可能性PがC3≦Pを満たす場合、すなわち、衝突の可能性が非常に大きい
場合はレベル3として定義され、運転アシスト装置700は警告灯712の点灯、及びスピーカー711から警告音の発音、ブレーキアシスト装置713の動作がなされるように要求される。
【0031】
このように本実施形態に係る運転アシストシステムにおいては、衝突の可能性の大小に応じて、運転アシスト装置700が適切に動作するように動作要求がなされるものであり、状況に応じた的確な運転支援を提供することが可能である。
【0032】
運転アシスト装置700は、車両10の運転車に対し、必要に応じて運転支援を行うものであり、発音することによって運転者に危険の報知を行うスピーカー711、点灯することによって運転者に危険の報知を行う警告灯712、ブレーキペダルを運転者に代わって踏み込む動作を行うブレーキアシスト装置713、そして、これらスピーカー711、警告灯712、ブレーキアシスト装置713を制御する主制御部710を有している。運転アシスト装置700の運転アシスト装置ID記憶部720は、それぞれの運転アシスト装置700の特定用のIDである。
【0033】
ナビゲーションシステム部800は、ナビゲーションシステム810やこのナビゲーションシステム810が参照する地図情報などのナビゲーションシステム用データベース820とからなっている。ナビゲーションシステム810は、GPS衛星からのGPS信号を受信して自らの位置座標データを計算する高精度GPS位置情報取得部811を用いることによって、車両の現在位置情報を取得することができる。本発明の運転アシストシステムにおいては、位置情報を取得するために、高精度なGPS測位を用いることが好ましい。また、本発明の運転アシストシステムにおいては、ナビゲーションシステム用データベース820には、道路情報、施設情報などが記憶されているが、道路情報には道路種別情報(一般道、高速道など)を設けておくことが好ましい。また、ナビゲーションシステム用データベース820の地図データには、スピードを出せるような郊外であるのか、或いはスピードが制限される都心であるかの別を示す領域分けデータが予め含まれているこ
とが好ましい。上記のような道路種別情報や領域分けに応じて、動作要求を行う車両の範囲を決定してもよいからである。
【0034】
次に以上のように構成される本実施形態に係る運転アシストシステムの処理・動作についてフローチャートを用いて説明する。図5は本発明の第1実施形態に係る運転アシストシステムによる処理のフローチャートを示す図である。図5に示すフローチャートは、各車両に搭載される運転アシストシステムの個々の処理であり、それぞれの車両においてこのフローチャートに係る処理がなされるようになっている。
【0035】
図5において、車両10のエンジンやモーター(いずれも不図示)が起動されると、ステップS100で処理が開始され、続いてステップS101に進み、ECU100によって収集された各データによって、図3(A)に示す定期通信用のパケットデータを生成し、通信部500から、生成された定期パケットを送信する処理を実行する。次のステップS102では、近傍に存在する車両からの定期通信用のパケットデータを受信する。このような近傍に存在する車両からのパケットデータで、現在通信コネクションが確立されているものは、通信管理バッファ512にプールされているが、プールされているパケットデータからは、車両IDに対応した運転アシスト装置IDを抽出して把握する。
【0036】
次のステップS103では、衝突可能性算出処理のサブルーチンが実行される。このサブルーチンについて別の図面を参照して説明する。図6は本発明の第1実施形態に係る運転アシストシステムにおける衝突可能性算出処理のサブルーチンのフローチャートを示す図である。
【0037】
図6において、ステップS200で、衝突可能性算出処理のサブルーチンがスタートする。続く、ステップS201乃至ステップS203は、ステレオカメラユニット420によって撮影された全ての車両についての演算を行うためのループである。
【0038】
ループ中のステップS202では、ステレオカメラユニット420、及び、車車間通信ユニット510から得られる車両に係る情報からX秒後の他車両の位置を演算する。ここで、演算対象とする車両は、ステレオカメラユニット420で認識される車両のうち、比較的近接している車両に限定することによって、計算負荷を減らすことが可能である。
【0039】
全ての撮影車両についてループが完了すると、ステップS203を抜けてステップS204へと進む。
【0040】
次のステップS204では、把握している任意の車両同士の衝突可能性Pを演算する。このとき、任意の車両A、車両B同士衝突可能性Pについては、(衝突可能性)=(X秒後の車両A演算位置とX秒後の車両B演算位置との間の距離の逆数)によって、「衝突可能性」なる指数Pを演算する。この衝突可能性なる指数Pは、値が大きくなればなるほど、衝突の可能性が大きくなるようになっている。ステップS205では、メインルーチンに戻る。
【0041】
メインルーチンに戻り、ステップS104では、ステップS103で算出された衝突可能性PがC1以上である車両IDを抽出する。
【0042】
そして、ステップS105では、C3≦Pが成立するか否かが判定される。なお、以下
、C1、C2、C3については図4の表に関連したものと同じものである。ステップS10
5における判定がYESである場合には、ステップS109に進み、パラメーターがレベル3である図3(B)に示すような動作要求パケットを生成して、通信部500から送信する。ステップS105における判定がNOである場合には、ステップS106に進む。
【0043】
ステップS106では、C2≦P<C3が成立するか否かが判定される。ステップS106における判定がYESである場合には、ステップS109に進み、パラメーターがレベル2である図3(B)に示すような動作要求パケットを生成して、通信部500から送信する。ステップS106における判定がNOである場合には、ステップS107に進み、パラメーターがレベル1である図3(B)に示すような動作要求パケットを生成して、通信部500から送信する。
【0044】
ステップS110では、C1以上の全車両に動作要求パケットを送信済みであるか否か
が判定され、この判定がNOであると再びステップS104に戻り、まだ送信していない車両についての処理を続ける。一方、この判定がYESであるときにはステップS111に進み、動作要求パケットチェック処理のサブルーチンを実行する。このサブルーチンについて別の図面を参照して説明する。図7は本発明の第1実施形態に係る運転アシストシステムにおける保存要求パケットチェック処理のサブルーチンのフローチャートを示す図である。
【0045】
図7において、ステップS300で、動作要求パケットチェック処理が開始されると、次のステップS301では、送信先IDとして自車両(のID)が指定されているパケット(図3(B)に示すもの)を受信したか否かが判定される。ステップS301における判定がYESであるときにはステップS302に進み、NOであるときにはステップS308に進みリターンする。
【0046】
ステップS302では、自車両が宛先であるパケット(図3(B)に示すもの)中に、自車両搭載の運転アシスト装置700のIDに対する運転アシスト動作要求が存在するか否かが判定される。当該判定がYESであるときには、ステップS303に進み、NOであるときにはステップS308に進みリターンする。
【0047】
ステップS303では、パケット中のレベルパラメーター指定がレベル3であるかが判定される。ステップS303の判定がYESであるときにはステップS307に進み、運転アシスト装置700において、警告灯712の点灯、及びスピーカー711から警告音の発音、ブレーキアシスト装置713の動作がなされるように制御する。ステップS303の判定がNOであるときにはステップS304に進む。
【0048】
ステップS304では、パケット中のレベルパラメーター指定がレベル2であるかが判定される。ステップS303の判定がYESであるときにはステップS306に進み、運転アシスト装置700において、警告灯712の点灯、及びスピーカー711から警告音の発音がなされるように制御し、ステップS303の判定がNOであるときにはステップS307に進み、運転アシスト装置700において、警告灯712を点灯させるように制御する。ステップS308ではメインルーチンにリターンする。
【0049】
メインルーチンに戻り、ステップS112では、不図示のエンジンやモーターが停止されたか否かが判定される。この判定がNOであるときにはステップS101に戻る。一方判定が、YESであるときにはステップS113に進み処理を終了する。
【0050】
以上のような本実施形態に係る運転アシストシステムがどのように動作するかに係る具体例を説明する。図8に示すような交通状況において、車両1乃至車両3には本実施形態に係る運転アシストシステムが搭載されており、また、それぞれの車車間通信ユニット510によって、互いに車車間通信の通信コネクションが確立しているものとする。
【0051】
ここで、車両1と車両2との事故が予想されるような場合について説明する。このよう
な場合、車両3に搭載された運転アシストシステムにおける衝突可能性が所定値以上となるので、車両3が、車両1及び車両2の運転アシスト装置700に対して運転アシスト動作要求のパケットを送信することとなり、このパケットを受信した車両1及び車両2の運転アシスト装置700において、先に示したようなレベル1から3までのアシスト制御がなされるように処理される。
【0052】
以上のように、本発明の実施形態に係る運転アシストシステムによれば、自らの車両とは異なる車両に搭載されたステレオカメラユニット420によって取得された画像データに基づいて衝突可能性Pを算出し、この算出結果に基づきアシスト動作を行うこととなるので、より広範な視点からの予測に基づいて、衝突回避などのための的確な運転アシスト動作を行うことが可能となるのである。
【0053】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。先の第2実施形態においては、通信部500として、車車間通信方式のものが用いられ、車両同士で通信を行うことを通じて運転アシスト装置700に対して運転アシスト動作要求を行うように構成されていたが、本第2実施形態においては、通信部500として、センターサーバーとの通信を行う方式のものが用いられ、各車両はセンターサーバーにそれぞれの車両データを定期通信パケットにより送信し、センターサーバー側でこれを受信し、これに基づき衝突可能性Pを算出し、必要に応じて各車両(の運転アシスト装置700)に対して運転アシスト動作要求を送信する構成となっている。以下、先の実施形態と相違する点を中心に図面を参照して説明する。
【0054】
図9は第2実施形態に係る運転アシストシステムにおけるデータの送受例・処理例を車両、センターサーバーにつき示したものである。ここで、図9に示す車両1乃至車両3は図8に示すものと同一のものであり、図8と同様の状況下で通信例を示している。センターサーバーとは、各車両からの定期通信パケットデータを受信して各車両の状況を把握すると共に、必要時応じて、各車両に対して運転アシスト動作要求などのパケット通信データを送信するように構成されるものである。
【0055】
図9に示すように、平時においては、(0)車両1乃至車両3は定期通信パケットをセンターサーバーに送信するようにしている。ここで、センターサーバーが車両3から上げられるパケットデータから、例えば、(1)車両1と車両2との衝突可能性が所定値以上となることが判明したような場合、(3)車両1と車両2に対して、運転アシスト動作要求パケットを送信する。
【0056】
図10は本発明の第2実施形態に係る運転アシストシステムにおける車両―センターサーバー間の送受信に用いられるパケットデータの一例を示す図である。図10(A)は定期的な通信に用いられるパケットであり、図10(B)は運転アシストシステムが運転アシスト動作要求を送信する際に用いられるパケットである。
【0057】
定期通信用パケットには、例えば、「パケットナンバー」、「送信元車両ID情報」、「位置情報」、「速度情報」、「ベクトル情報」、「撮影情報」、「運転アシスト装置ID情報」などの項目のデータが含まれる。
【0058】
定期通信用パケット中の「パケットナンバー」はパケットの連続性などを特定するために用いられるパケット特定用のデータであり、「送信元車両ID情報」は送信元の車車間通信ユニット510における車両ID記憶部511に記憶されているIDデータであり、「位置情報」は高精度GPS位置情報取得部811によって取得される車両位置に係る座標データであり、「速度情報」は車速センサ210によって取得される車両の走行スピードに関するデータであり、「ベクトル情報」はステアリングセンサ220やナビゲーショ
ンシステム部800で求められる車両の進行方向に関するデータであり、「撮影情報」はステレオカメラユニット420によって取得されたステレオ動画像データであり、「運転アシスト装置ID情報」は車両に搭載されている運転アシスト装置700の運転アシスト装置ID記憶部720に記憶されているIDデータである。
【0059】
また、運転アシスト動作要求用パケットには、例えば、「パケットナンバー」、「送信先車両ID」、「要求先運転アシスト装置ID情報」、「動作レベル」などの項目のデータが含まれる。運転アシスト動作要求用パケット中の「パケットナンバー」はパケットの連続性などを特定するために用いられるパケット特定用のデータであり、「送信先車両ID情報」は送信先の車車間通信ユニット510における車両ID記憶部511に記憶されているIDデータであり、「要求先運転アシスト装置ID情報」は、アシスト動作を要求する先の運転アシスト装置700の運転アシスト装置ID記憶部720に記憶されているIDデータであり、「動作レベル」は運転アシストをどのようなレベルで行うかを指定するためのパラメーターである。
【0060】
次に、第2実施形態における運転アシストシステムにおける車両側の動作・処理と、センターサーバー側の動作・処理についてそれぞれ説明する。図11は本発明の第2実施形態に係る運転アシストシステムにおける車両側搭載システムのフローチャートを示す図である。
【0061】
図11において、車両10のエンジンやモーター(いずれも不図示)が起動されると、ステップS500で処理が開始され、続いてステップS501に進み、ECU100によって収集された各データによって、図3(A)に示すパケット定期通信用のパケットデータを生成し、通信部500から、生成された定期パケットを送信する処理を実行する。
【0062】
次のステップS502では、保存要求パケットチェック処理のサブルーチンが実行される。このサブルーチンについては図7で説明したものを用いることができるので詳細の説明については省略する。
【0063】
ステップS503では、不図示のエンジンやモーターが停止されたか否かが判定される。この判定がNOであるときにはステップS501に戻る。一方判定が、YESであるときにはステップS504に進み処理を終了する。
【0064】
次に、第2実施形態における運転アシストシステムにおけるセンターサーバー側の動作・処理についてそれぞれ説明する。図12は本発明の第2実施形態に係る運転アシストシステムにおけるセンターサーバー側のフローチャートを示す図である。
【0065】
図12において、ステップS500でセンターサーバー側の処理が開始されると、次にステップS501に進み、各車両の通信部500から送信されてくるパケットデータの受信処理が実行される。続いてステップS502では、衝突可能性P算出処理のサブルーチンが実行される。この衝突可能性算出処理のサブルーチンについては、図6で説明したものとほぼ同様のものを用い、それぞれの車両についての衝突可能性Pの演算を行うことができる。
ステップS503では、ステップS502で算出された衝突可能性PがC1以上である車
両IDを抽出する。
【0066】
そして、ステップS504では、C3≦Pが成立するか否かが判定される。なお、以下
、C1、C2、C3については図4の表に関連したものと同じものである。ステップS50
4における判定がYESである場合には、ステップS508に進み、パラメーターがレベル3である図10(B)に示すような動作要求パケットを生成して、センターサーバー側
から車両に向け送信する。ステップS504における判定がNOである場合には、ステップS505に進む。
【0067】
ステップS505では、C2≦P<C3が成立するか否かが判定される。ステップS505における判定がYESである場合には、ステップS507に進み、パラメーターがレベル2である図10(B)に示すような動作要求パケットを生成して、センターサーバー側から車両に向け送信する。ステップS505における判定がNOである場合には、ステップS506に進み、パラメーターがレベル1である図10(B)に示すような動作要求パケットを生成して、センターサーバー側から車両に向け送信する。
【0068】
ステップS509では、抽出された全ての車両IDについて処理が済んだか否かが判定され、この判定がNOであるときにはステップS501に戻りループを行い、YESであるときには再びステップS500に戻り一連の処理を再実行する。
【0069】
上記のような、本発明の第2実施形態に係る発明においても、先の実施形態と同様の効果を享受することが可能である。
【0070】
以上、本発明に係る運転アシストシステムによれば、自らの車両とは異なる車両に搭載された画像データ取得手段によって取得された画像データに基づいて衝突可能性を算出し、この算出結果に基づきアシスト動作を行うこととなるので、より広範な視点からの予測に基づいて、衝突回避などのための的確な運転アシスト動作を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
10・・・車両、100・・・ECU、200・・・走行情報取得部、210・・・車速センサ、220・・・ステアリングセンサ、230・・・アクセル開度センサ、240・・・ブレーキペダルセンサ、400・・・車両周辺情報取得部、420・・・ステレオカメラユニット、500・・・通信部、510・・・車車間通信ユニット、511・・・車両ID記憶部、512・・・通信管理バッファ、700・・・運転アシスト装置、710・・・主制御部、711・・・スピーカー、712・・・警告灯、713・・・ブレーキアシスト装置、720・・・運転アシスト装置ID記憶部、800・・・ナビゲーションシステム部、810・・・ナビゲーションシステム、811・・・高精度GPS位置情報取得部、820・・・データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され車両の運転をアシストする運転アシスト装置を含む運転アシストシステムであって、
自車両周辺に存在する他車両の画像データを取得する画像データ取得手段と、
自車両周辺に存在する他車両の運転アシスト装置のID情報を取得するID情報取得手段と、
前記画像データ取得手段によって取得された画像データ及び前記ID情報により定まる他車両の位置情報に基づいて、他車両が衝突する可能性を算出する衝突可能性算出手段と、前記衝突可能性算出手段によって算出された衝突可能性が所定値以上である車両が搭載する運転アシスト装置のID情報を抽出するID抽出手段と、
前記ID抽出手段によって抽出されたID情報の運転アシスト装置に対して、運転アシスト動作要求を行うことを特徴とする運転アシストシステム。
【請求項2】
前記送信手段が、車車間通信によって、運転アシスト動作要求を前記抽出手段によって抽出されたID情報の運転アシスト装置に直接送信することを特徴とする請求項1に記載の運転アシストシステム。
【請求項3】
前記送信手段が、サーバー装置を介して、運転アシスト動作要求を前記抽出手段によって抽出されたID情報の運転アシスト装置に直接送信することを特徴とする請求項1に記載の運転アシストシステム。
【請求項4】
前記画像データ取得手段がステレオカメラであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の運転アシストシステム。
【請求項5】
運転アシスト装置による運転アシスト動作が警告音の発音であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の運転アシストシステム。
【請求項6】
運転アシスト装置による運転アシスト動作が警告の表示であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の運転アシストシステム。
【請求項7】
運転アシスト装置による運転アシスト動作がブレーキの制御であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の運転アシストシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−134087(P2011−134087A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292756(P2009−292756)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】