説明

運転室側面引戸の二段二連錠装置

【課題】運転室側面引戸の2組の開錠装置のうち何れか一方のロックを解除するだけで他方の錠装置のロックも解除することができる二段二連錠装置を提供する。
【解決手段】車体側の錠受けに係合可能な錠部材を有する錠付き従動機構と、従動部材を有する下部従動機構と、これらを連動する第1リンク機構13と、錠付き従動機構を運転室内と室外とから夫々操作可能な第1操作ハンドルおよび第2操作ハンドル25と、下部従動機構を室外から操作可能な第3操作ハンドル35とを有し、錠部材と従動部材をロック部材で回動不能にロックするロック位置と、ロック解除位置とに切換え可能な第1,第2ロック機構23,33と、第1ロック機構23を運転室内から操作可能な操作片と、第1,第2ロック機構を室外から鍵で操作可能な第1,第2鍵連結部27,37と、第1,第2ロック機構23,33のロック部材を連動連結する第2リンク機構14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の運転室側面引戸の二段二連錠装置に関して、乗務員がプラットホームから運転室に入るときは引戸の中段部に設けられた開錠装置を操作し、線路側の地上から運転室に入るときは引戸の下部に設けられた開錠装置を操作することで、運転室側面引戸を開錠状態にする二段二連錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の運転室の回動式側面ドアの中段部と下部には、錠装置がそれぞれ装備されていることがある。これら錠装置は、車体側の錠受けに係合されている錠部材を、運転室外から回動操作可能なハンドルを夫々有している。プラットホームから運転室に入るときは、中段部のハンドルを回動操作して錠部材を回動させ、中段部の錠装置を開錠状態にする。線路側の地上から運転室に入るときは、下部のハンドルを回動操作して錠部材を回動させ、下部の錠装置を開錠状態にする。
【0003】
ここで、これら錠装置の錠部材はリンク機構で連動連結されている場合が多いので、一方の錠部材が回動されると他方の錠部材も回動される。従って、何れか一方のハンドルを回動操作するだけで、側面ドアを開錠状態にでき、乗務員が運転室外から室内に入ることができる。これら錠装置が設けられた側面ドアは、例えば、特許文献1に記載されている。これら錠装置のうち下部の錠装置には、錠部材を回動不能にロックするロック機構が設けられている。
【0004】
上記下部の錠装置のように、一般的に側面ドアに設けられた錠装置には、ロック機構が設けられている。例えば、特許文献2には、1つの住宅用の回動式ドアに2組の施錠装置を装着した所謂ワンドア・ツーロックの構成が記載されている。ドアを開錠状態にするときは、2組の施錠装置の各シリンダ錠を1つの合鍵で夫々開錠操作しなければドアが開錠状態にされない。ドアを施錠状態にするときは、何れか一方のシリンダ錠を施錠操作すると連動して他方のシリンダ錠も施錠操作され、ドアが施錠状態にされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−114474号公報
【特許文献2】特開2001−254551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の側面ドアにおいて、線路側の地上から運転室に入る場合、乗務員は姿勢を変えずに手が余裕で届く範囲に錠装置のロック機構が設けられているので、鍵を用いて錠装置のロックを解除するには問題はないが、プラットホームから運転室に入る場合、乗務員は下方に腕を延ばして無理な姿勢で、鍵を用いて錠装置のロックを解除しなければならず、非効率的なものになる。
【0007】
また、2組の錠装置にロック機構が夫々設けられている場合があるが、プラットホームから入る場合、中段部と下部の錠装置の両方のロックを解除しなければならず、上記と同様に非効率的なものになる。地上から入る場合も同様であるが、乗務員は下部の錠装置のロックを解除してから、車体に設けられたステップに乗り、車体の手摺りを片手で掴んだ状態で、もう一方の手に鍵を持って中段部の錠装置のロックを解除することになる。このため、乗務員は不安定な状態下での作業が強いられ、危険が伴うものになってしまう。
【0008】
特許文献2の2組の施錠装置の構成を側面ドアに適応することは可能と思われるが、1つの鍵で夫々開錠操作しなくてはならず、結局上記のように線路側の地上から運転室に入る場合、下部の錠装置の開錠操作とともに中段部の錠装置を開錠操作をしなくてはならないので、乗務員は不安定な状態で作業をしなければならない。何れにしても、2組の錠装置にロック機構が夫々設けられている場合、ロック解除操作を2度行わなければならず、乗務員にとって負担があるものになってしまう。
尚、鉄道車両の運転室の側面に設けられた側面ドアは、回動式のものが一般的であり、引戸は使用されていない場合が殆どであるが、外国の鉄道車両では、引戸を採用しているケースが少なくない。
【0009】
本発明の目的は、乗務員の作業能率と安全性を向上させ得る運転室側面引戸の二段二連錠装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1の運転室側面引戸の二段二連錠装置は、鉄道車両の運転室の側面引戸の中段部に装備され且つ車体側の錠受けに係合可能な錠部材を有する錠付き従動機構と、前記側面引戸の下部に装備され且つ錠部材と連動する従動部材を有する下部従動機構と、前記錠付き従動機構の錠部材と下部従動機構の従動部材を連動連結する第1リンク機構と、錠付き従動機構を運転室内と室外とから夫々操作可能な第1、第2操作ハンドルと、下部従動機構を室外から操作可能な第3操作ハンドルとを有する運転室側面引戸の二段二連錠装置において、前記錠付き従動機構の錠部材をロック部材で回動不能にロックするロック位置と、ロック解除位置とに切換え可能な第1ロック機構と、前記第1ロック機構を運転室内から操作可能な操作片と、前記第1ロック機構を室外から鍵で操作可能な第1鍵連結部と、前記下部従動機構の従動部材をロック部材で回動不能にロックするロック位置と、ロック解除位置とに切換え可能な第2ロック機構と、前記第2ロック機構を室外から鍵で操作可能な第2鍵連結部と、前記第1,第2ロック機構のロック部材を連動連結する第2リンク機構と、を備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項2の運転室側面引戸の二段二連錠装置は、請求項1の発明において、前記第1,第2ロック機構は、前記ロック部材に固着された軸部材と、この軸部材の一端部を側面引戸と直交する軸心回りに回動可能に支持する支持部材を有し、この支持部材に形成された円弧状の案内孔に、ロック部材に設けられた案内ピンを係合したことを特徴としている。
【0012】
請求項3の運転室側面引戸の二段二連錠装置は、請求項1又は2の発明において、前記第1,第2ロック機構は、前記ロック部材がロック位置のときロック位置に保持すると共にロック部材がロック解除位置のときロック解除位置に保持する保持用捩じりバネを備えたことを特徴としている。
【0013】
請求項4の運転室側面引戸の二段二連錠装置は、請求項1〜3の何れかの発明において、前記錠付き従動機構は、前記錠部材を施錠位置に弾性付勢する少なくとも1つの引っ張りバネを有することを特徴としている。
【0014】
請求項5の運転室側面引戸の二段二連錠装置は、請求項1〜4の何れかの発明において、前記第2,第3操作ハンドルを収容する第1,第2ハンドル収容部を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、プラットホームや線路側の地上などの運転室外から室内に入る場合、第1,第2鍵連結部のいずれか一方に鍵を連結して回動操作することで、第1,第2ロック機構の一方が操作されて一方のロック部材がロック位置からロック解除位置に切換えられる。すると、第2リンク機構を介して他方のロック部材もロック位置からロック解除位置に切換えられ、錠付き従動機構と下部従動機構のロックが同時に解除される。そして、第2,第3操作ハンドルの何れか一方を回動操作して、錠付き従動機構の錠部材を錠受けから離脱させることで、容易に側面引戸を開錠状態にすることができる。
【0016】
また、運転室内から室外に出る場合、操作片を回動操作することで、第1ロック機構が操作されてロック部材がロック位置からロック解除位置に切り換えられる。すると、第2リンク機構を介して第2ロック機構のロック部材もロック位置からロック解除位置に切換えられ、錠付き従動機構と下部従動機構のロックが同時に解除される。そして、第1操作ハンドルを回動操作して、錠付き従動機構の錠部材を錠受けから離脱させることで、容易に側面引戸を開錠状態にすることができる。
【0017】
このように、プラットホームから運転室に入る場合も、線路側の地上から運転室に入る場合も、運転室内から室外に出る場合も、錠付き従動機構と下部従動機構のロックを一度のロック解除操作でロック解除が可能になる。従って、乗務員に無理な姿勢での作業を強いることがなくなるので、乗務員の作業能率と安全性を向上させることができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、前記第1,第2ロック機構は、前記ロック部材に固着された軸部材と、この軸部材の一端部を側面引戸と直交する軸心回りに回動可能に支持する支持部材を有し、この支持部材に形成された円弧状の案内孔に、ロック部材に設けられた案内ピンを係合したので、ロック部材の回動を案内孔と案内ピンにより規制することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、前記第1,第2ロック機構は、前記ロック部材がロック位置のときロック位置に保持すると共にロック部材がロック解除位置のときロック解除位置に保持する保持用捩じりバネを備えたので、保持用捩じりバネによりロック部材をロック位置とロック解除位置とに確実に保持することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、前記下部従動機構は、前記錠部材を施錠位置に弾性付勢する少なくとも1つの引っ張りバネを有するので、引っ張りバネの弾性付勢により錠部材を施錠位置に戻すことができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、前記第2,第3操作ハンドルを収容する第1,第2ハンドル収容部を備えたので、第2,第3操作ハンドルを第1、第2ハンドル収納部に収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例に係る本発明の運転室側面引戸の二段二連錠装置が設けられた側面引戸を運転室外から視た正面図である。
【図2】側面引戸を運転室内から視た正面図である。
【図3】二段二連錠装置を運転室外から視た正面図である。
【図4】二段二連錠装置の側面図である。
【図5】二段二連錠装置の上側開錠装置の錠付き従動機構とロック機構の正面図である。
【図6】側面引戸と車体の要部の横断面図である。
【図7】側面引戸と車体の要部の縦断面図である
【図8】二段二連錠装置の下側開錠装置の下部従動機構とロック機構の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0024】
先ず、本発明の運転室側面引戸の二段二連錠装置10が適用される運転室の側面引戸2について簡単に説明する。
図1,図2に示すように、鉄道車両1の運転室の両側面には、側面引戸2が設けられている。側面引戸2の上部は、車両1の上側レール部材3にスライド自在に係合されている1対の吊持部材4と複数の吊持ローラを介して吊持され、側面引戸2の下部は、車両1の床上面の下側レール部材5に係合している。これにより、側面引戸2が開錠状態の場合、側面引戸2は上下レール部材3,5に沿って左右方向にスライド可能である。側面引戸2の一方の側端部には、衝撃吸収用且つ室内気密保持用のゴム状の緩衝部材7が装着されている(図6参照)。尚、図2,図5,図7,図8の上下左右を上下左右として説明する。
【0025】
次に、本発明の運転室側面引戸の二段二連錠装置10の全体構成について説明する。
図1〜図8に示すように、運転室側面引戸の二段二連錠装置10(以下、二段二連錠装置10と言う)は、上側開錠装置11と、下側開錠装置12と、第1,第2リンク機構13,14と、ベース板15と、第1,第2側面板17,18などから構成されている。上側開錠装置11と下側開錠装置12は、ベース板15を介して側面引戸2の中段部と下部に夫々装備されている。
【0026】
図3,図4に示すように、このベース板15は、長方形状の金属板から形成され、側面引戸2の室内側ドア面の中段部から下段部にかけて、長手方向を縦向きにして複数のビス部材15dで固定されている(図2参照)。第1,第2側面板17,18は、側面引戸2の室外側ドア面の中段部と下部に設けられ且つドア面と略同一平面を形成している。側面板17,18は、複数のスペーサ19を介して複数のビス部材によりベース板15に夫々固定されている。側面板17,18には、後述する第1,第2鍵連結部27,37に通ずる鍵穴17a,18aが夫々形成されている。
【0027】
次に、上側開錠装置11と下側開錠装置12について説明する。
図1〜図8に示すように、上側開錠装置11は、第1ケース部材21と、錠付き従動機構22と、第1ロック機構23と、第1,第2操作ハンドル24,25と、操作片26と、第1鍵連結部27と、第1収容部28などを備えている。下側開錠装置12は、第2ケース部材31と、下部従動機構32と、第2ロック機構33と、第3操作ハンドル35と、第2鍵連結部37と、第2収容部38などを備えている。上側開錠装置11と下側開錠装置12は、第1,第2リンク機構13,14で連動連結されている。上側開錠装置11は、運転室内側から二段二連錠装置10を操作可能にするための第1操作ハンドル24と操作片26と、錠付き従動機構22の錠部材42の爪部46以外の構成に関して、下側開錠装置12と同様に構成されている。
【0028】
次に、第1,第2ケース部材21,31について説明するが、第1,第2ケース部材21,31は略同じ構成を有するので、ここでは、第1ケース部材21について説明する。
図2,図4に示すように、第1ケース部材21は、金属板で箱状に形成されている。このケース部材21は、ベース板15に複数のビス部材で固定されている。ベース板15とこのケース部材21との間に、錠付き従動機構22や第1ロック機構23などの他の構成部品が設けられている。第1ケース部材21の側面には、錠部材42の爪部46が所定の角度回動可能な開口部21aが形成されている。尚、第2ケース部材31の側面には、開口部はなく、ベース板15とこのケース部材31との間に、下部従動機構32や第2ロック機構33などの他の構成部品が設けられている。
【0029】
次に、錠付き従動機構22について説明する。
図1〜図8に示すように、錠付き従動機構22は、回動軸部41と、回転軸部41に固着された錠部材42(錠付き従動部材)と、錠部材42を施錠位置へ弾性付勢する2つの引っ張りバネ43,44などを有している。錠付き従動機構22は、鉄道車両1の運転室の側面引戸2の中段部に装備されている。
【0030】
図5に示すように、回動軸部41は、ベース板15とケース部材21とで側面引戸2と直交する軸心回りに回動自在に支持されている。この回動軸部41の回動操作により、錠付き従動機構22は、錠部材42の爪部46が錠受け49に係合する施錠位置と、錠部材42が錠受け49から離脱する開錠位置とに切り換え可能である。
【0031】
図5,図6に示すように、錠部材42は、複数の金属板を積層した積層体から形成されている(図6参照)。錠部材42は、回動軸部41に外嵌固着された枢支部45と、錠受け49に係合される爪部46と、第1リンク機構13が連結される連結部48などから構成されている。錠部材42の下端部には、引っ張りバネ43が連結される小径孔42aと、ロック部材52が当接される規制部42bが形成され、錠部材42の中段部には、引っ張りバネ44が連結される連結ピン42cが設けられている。図5において、この錠部材42が時計回りに回動された場合、第1ケース部材21の開口部21aの上縁で規定されるため約20°まで回動可能である。
【0032】
図3,図5に示すように、錠部材42の連結部48は、細長い金属板の途中部をクランク状に屈曲して形成されている。この連結部48の左端部(室内側端部)は、回動軸部41と枢支部45に溶接などにより固着され、途中部はベース板15の開口部15aに挿通され、連結部48の右端部(室外側端部)は、第1リンク機構13の上端部と連結されている。
【0033】
図5に示すように、引っ張りバネ43は、その一端部が支持部材53に設けられた連結ピン53aに連結され、他端部が錠部材42の小径孔42aに連結されている。引っ張りバネ44は、その一端部がベース板15に設けられた連結ピン15bに連結され、他端部が錠部材42の連結ピン42cに連結されている。これら引っ張りバネ43,44は、錠部材42を施錠位置に弾性付勢している。
【0034】
次に、錠受け49について説明する。
図2,図6,図7に示すように、錠受け49は、運転室の側面引戸2のドア開口部左側面の中段部に複数のビス部材49bにより固定されている。この錠受け49は、縦長の矩形状の開口部49aを有し、この開口部49aの下側の壁部に錠部材42の爪部46が係合することで、側面引戸2を施錠状態にすることができる。
【0035】
次に、下部従動機構32について説明する。
図1〜図4,図8に示すように、下部従動機構32は、錠部材42の代わりに錠部材42の爪部46を省略した形状の従動部材47を有している以外、錠付き従動機構22と略同じ構成に構成されている。この下部従動機構32は、運転室の側面引戸2の下部に装備されている。従動部材47の連結部48の右端部(室外側端部)は、第1リンク機構13の下端部と連結され、従動部材47の回動軸部41の回動操作を介して、錠付き従動機構22の錠部材42の爪部46が錠受け49に係合する施錠位置と、錠部材42が錠受け49から離脱する開錠位置とに切り換え可能である。
【0036】
次に、第1,第2ロック機構23,33について説明するが、第1,第2ロック機構23,33は同じ構成を有するので、ここでは第1ロック機構23について説明する。
図5に示すように、第1ロック機構23は、回動軸部51(軸部材に相当する)と、回動軸部51に固着されたロック部材52と、ロック部材52を案内する案内ピン52aと、回動軸部51の一端部を支持する支持板53(支持部材に相当する)などから構成されている。第1ロック機構23は、錠付き従動機構22の錠部材42をロック部材51で回動不能にロックするロック位置と、ロック解除位置とに切換え可能である。尚、第2ロック機構33は、下部従動機構32の従動部材42をロック部材51で回動不能にロックするロック位置と、ロック解除位置とに切換え可能である。
【0037】
図5に示すように、回動軸部51は、ベース板15と支持板53とで側面引戸2と直交する軸心回りに回動自在に支持されている。この回動軸部51の回動操作により、ロック部材52が錠部材42の規制部42bに当接するロック位置と、ロック部材52が錠部材42の規制部42bから離脱するロック解除位置とに切り換え可能である。
【0038】
図5に示すように、ロック部材52は、金属板から正面視略逆P字形に形成され、回動軸部51に外嵌固着されている。ロック部材52の中段部には、案内ピン52aが設けられ、ロック部材52の室外側端面(図5裏面側)には、金属板で正面視略C字形に形成されたロック部52bが固着されている。ロック状態(図5の状態)のときは、ロック部52bの上端面が、錠部材42の規制部42bの下端面に当接して錠部材42の回動を規制している。尚、第2ロック機構33の場合は、従動部材47の規制部42bの下端面に当接して従動部材47の回動を規制している。ロック解除状態のときは、ロック部52bが図5の状態から反時計回りに90°回動されて横向きになり、ロック部52bが規制部42bから離脱することで錠部材42(第2ロック機構33の場合は従動部材47)の回動に干渉しなくなる。ロック部材52の下端部には、第2リンク機構14の上端部が連結されている。尚、第2リンク機構14の下端部は、第2ロック機構33のロック部材51の下端部に連結されている。
【0039】
支持板53は、ベース板15の開口部15aに架橋状に設けられ、複数のビス部材53cでベース板15に固定されている。この支持板53は、回動軸部51の一端部を回動可能に支持している。この支持板53に形成された円弧状の案内孔53bに、案内ピン52aが係合しているので、ロック部材52を回動する場合、ロック部材52は円弧状の案内孔53bに規定されるためロック状態(図5の状態)から反時計回りに約90°まで回動可能である。
【0040】
次に、保持用捩じりバネ55について説明する。
図5に示すように、保持用捩じりバネ55は、一端部がベース板15に設けられた連結ピン15cに固定され、他端部が案内ピン52aに固定されている。ロック部材52の切換え時に、連結ピン15cを軸にして案内ピン52aを弾性付勢して、ロック部材52を、ロック部52bが規制部42bに当接するロック位置と、ロック部52bが規制部42bから離脱するロック解除位置とに切換え可能である。保持用捩じりバネ55は、ロック部材52がロック位置のときロック位置に保持すると共にロック部材52がロック解除位置のときロック解除位置に保持する。
【0041】
次に、第1〜第3操作ハンドル24,25,35について説明する。
図2,図4,図6,図7,図8に示すように、第1操作ハンドル24は、第1ケース部材21に側面引戸2のドア面と平行に回動自在に装着されて、その軸部が錠付き従動機構22の回動軸部41の室内側端部の係合孔に係合されている。第1操作ハンドル24が、錠付き従動機構22に連結されているので、錠付き従動機構22を運転室内から操作可能である。第1操作ハンドル24は、図2,図7の状態において、時計回りに約20°回動可能である。
【0042】
図3,図5に示すように、第2操作ハンドル25は、第1収容部28に側面引戸2のドア面と平行に回動自在に装着されて、その軸部が錠付き従動機構22の回動軸部41の室外側端部の係合孔に係合されている。第2操作ハンドル25が、錠付き従動機構22に連結されているので、錠付き従動機構22を運転室外から操作可能である。
【0043】
図3,図8に示すように、第3操作ハンドル35は、第2収容部38に側面引戸2のドア面と平行に回動自在に装着されて、その軸部が下部従動機構32の回動軸部41の室外側端部の係合孔に係合されている。第3操作ハンドル35が、下部従動機構32に連結されているので、下部従動機構32を運転室外から操作可能である。尚、第2,第3操作ハンドルは、図3において時計回りに約20°回動可能である。
【0044】
次に、第1,第2ハンドル収容部28,38について説明する。
図1,図3に示すように、第1,第2ハンドル収容部28,38は、第2、第3操作ハンドル25,35を収容している。ハンドル収容部28,38は、金属板から箱状に形成され、第1,第2側面板17,18に夫々一体的に設けられている。
【0045】
次に、操作片26について説明する。
図2,図4,図7に示すように、操作片26は、第1ケース部材21に取り付けられて、その軸部が第1ロック機構23の回動軸部51の室内側先端部の係合孔に係合されている。この操作片26は、運転室内から第1ロック機構を操作可能である。操作片26が横向きの場合、錠付き従動機構22はロック状態にあり、操作片26が縦向きの場合は、錠付き従動機構22はロック解除状態である。
【0046】
次に、第1,第2鍵連結部27,37について説明する。
図3,図4に示すように、第1鍵連結部27は、第1ロック機構23の回動軸部51の室外側軸部の先端部に形成され、第1ロック機構23を運転室外から鍵で操作可能である。第2鍵連結部37は、第2ロック機構33の回動軸部51の室外側軸部の先端部に形成され、第2ロック機構33を運転室外から鍵で操作可能である。第1,第2ロック機構23,33を操作する場合、第1,第2鍵連結部27,37には、側面板17,18の表面に形成された鍵孔17a,18aから鍵が挿入されて連結される。
【0047】
ここで、第1,第2リンク機構13,14について説明する。
図3〜図5,図8に示すように、第1リンク機構13は、ストレート状の金属棒材から形成され、その上端部が錠付き従動機構22の錠部材42の連結部48に連結され、その下端部が下部従動機構32の従動部材47の連結部48に連結されて、錠付き従動機構22の錠部材42と下部従動部材32の従動部材47を連動連結する。この第1リンク機構13により、錠付き従動機構22の錠部材42は、第1〜第3操作ハンドル24,25,35の何れかの回動操作を介して、錠部材42が錠受け49に係合する施錠状態と、錠部材42が錠受け49から離脱する開錠状態とに切り換えられる。
【0048】
図3〜図5,図8に示すように、第2リンク機構14は、金属棒材の下部が屈折されて形成され、その上端部が第1ロック機構23のロック部材52に連結され、その下端部が第2ロック機構33のロック部材52に連結され、第1,第2ロック機構23,33のロック部材52を連動連結する。この第2リンク機構14により、第1,第2ロック機構23,33は、操作片26と、第1,第2鍵連結部27,37の何れかの回動操作を介して、ロック部52bが規制部42bに当接するロック状態と、ロック部52bが規制部42bから離脱するロック解除状態とに切り換えられる。
【0049】
次に、二段二連錠装置10の作用及び効果について説明する。
プラットホームから運転室内に入る場合、乗務員は鍵穴17aから鍵を挿入し、第1鍵連結部27に鍵を連結して回動操作することで、第1ロック機構23が操作されてロック部材52がロック位置からロック解除位置に切換えられる。すると、第2リンク機構14を介して第2ロック機構33のロック部材52もロック位置からロック解除位置に切換えられ、第1開錠装置11の錠付き従動機構22と第2開錠装置12の下部従動機構32のロックが同時に解除される。そして、第2操作ハンドル25を回動操作すると、第1リンク機構13で連動連結さられている第3操作ハンドル35も回動操作され、錠付き従動機構22の錠部材42を錠受け49から離脱させることで、容易に側面引戸2を開錠状態にすることができる。
【0050】
地上から運転室内に入る場合、乗務員は鍵穴18aから鍵を挿入し、第2鍵連結部37に鍵を連結して回動操作することで、第2ロック機構33が操作されてロック部材52がロック位置からロック解除位置に切換えられると、第2リンク機構14を介して第1ロック機構23のロック部材52もロック位置からロック解除位置に切換えられ、錠付き従動機構22と下部従動機構32のロックが同時に解除される。そして、第3操作ハンドル35を回動操作すると、第1リンク機構13で連動連結さられている第2操作ハンドル25も回動操作され、錠付き従動機構22の錠部材42を錠受け49から離脱させることで、容易に側面引戸2を開錠状態にすることができる。
【0051】
運転室内から室外に出る場合、操作片26を回動操作することで、第1ロック機構23が操作されてロック部材52がロック位置からロック解除位置に切り換えられると、第2リンク機構14を介して第2ロック機構33のロック部材52もロック位置からロック解除位置に切換えられ、錠付き従動機構22と下部従動機構32のロックが同時に解除される。そして、第1操作ハンドル24を回動操作して、錠付き従動機構22の錠部材42を錠受け49から離脱させることで、容易に側面引戸2を開錠状態にすることができる。
【0052】
このように、プラットホームから運転室に入る場合も、線路側の地上から運転室に入る場合も、運転室から室外に出る場合も、第1開錠装置11の錠付き従動機構22と第2開錠装置12の下部従動機構32のロックを一度のロック解除操作でロックの解除ができるので、乗務員に無理な姿勢での作業を強いることがなくなるので、乗務員の作業能率と安全性を向上させることができる。
【0053】
第1,第2ロック機構23,33は、ロック部材52に固着された回動軸部51と、この回動軸部51の一端部を側面引戸2と直交する軸心回りに回動可能に支持する支持板53を有し、この支持板53に形成された円弧状の案内孔53bに、ロック部材52に設けられた案内ピン52aを係合したので、ロック部材52の回動を案内孔53bと案内ピン52aにより規制することができる。
【0054】
第1,第2ロック機構23,33は、ロック部材52がロック位置のときロック位置に保持すると共にロック部材52がロック解除位置のときロック解除位置に保持する保持用捩じりバネ55を備えたので、保持用捩じりバネ55によりロック部材52をロック位置とロック解除位置とに確実に保持することができる。
【0055】
第1開錠装置11の錠付き従動機構22は、錠部材42を施錠位置に弾性付勢する2つの引っ張りバネ43,44を有するので、引っ張りバネ43,44の弾性付勢により錠部材42を施錠位置に戻すことができる。第2開錠装置12の下部従動機構32は、従動部材47を施錠位置に弾性付勢する2つの引っ張りバネ43,44を有するので、引っ張りバネ43,44の弾性付勢により従動部材47を施錠位置に戻すことができる。
【0056】
次に、前記実施例を部分的に変更した変更例について説明する。
1]実施例に図示の錠部材の形状やロック部材の形状は一例に過ぎず、適宜変更可能である。
2]その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の二段二連錠装置は、鉄道車両の種々の運転室側面引戸の二段二連錠装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 鉄道車両
2 側面引戸
10 二段二連錠装置
11 上側開錠装置
12 下側開錠装置
13 第1リンク機構
14 第2リンク機構
22 錠付き従動機構
23 第1ロック機構
24 第1操作ハンドル
25 第2操作ハンドル
26 操作片
27 第1鍵連結部
28 第1収容部
32 下部従動機構
33 第2ロック機構
34 第3操作ハンドル
37 第2鍵連結部
38 第2収容部
42 錠部材
43,44 引っ張りバネ
47 従動部材
49 錠受け
52 ロック部材
52a 案内ピン
53 支持板
55 保持用捩じりバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の運転室の側面引戸の中段部に装備され且つ車体側の錠受けに係合可能な錠部材を有する錠付き従動機構と、前記側面引戸の下部に装備され且つ錠部材と連動する従動部材を有する下部従動機構と、前記錠付き従動機構の錠部材と下部従動機構の従動部材を連動連結する第1リンク機構と、錠付き従動機構を運転室内と室外とから夫々操作可能な第1、第2操作ハンドルと、下部従動機構を室外から操作可能な第3操作ハンドルとを有する運転室側面引戸の二段二連錠装置において、
前記錠付き従動機構の錠部材をロック部材で回動不能にロックするロック位置と、ロック解除位置とに切換え可能な第1ロック機構と、
前記第1ロック機構を運転室内から操作可能な操作片と、
前記第1ロック機構を室外から鍵で操作可能な第1鍵連結部と、
前記下部従動機構の従動部材をロック部材で回動不能にロックするロック位置と、ロック解除位置とに切換え可能な第2ロック機構と、
前記第2ロック機構を室外から鍵で操作可能な第2鍵連結部と、
前記第1,第2ロック機構のロック部材を連動連結する第2リンク機構と、
を備えたことを特徴とする運転室側面引戸の二段二連錠装置。
【請求項2】
前記第1,第2ロック機構は、前記ロック部材に固着された軸部材と、この軸部材の一端部を側面引戸と直交する軸心回りに回動可能に支持する支持部材を有し、この支持部材に形成された円弧状の案内孔に、ロック部材に設けられた案内ピンを係合したことを特徴とする請求項1に記載の運転室側面引戸の二段二連錠装置。
【請求項3】
前記第1,第2ロック機構は、前記ロック部材がロック位置のときロック位置に保持すると共にロック部材がロック解除位置のときロック解除位置に保持する保持用捩じりバネを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の運転室側面引戸の二段二連錠装置。
【請求項4】
前記錠付き従動機構は、前記錠部材を施錠位置に弾性付勢する少なくとも1つの引っ張りバネを有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の運転室側面引戸の二段二連錠装置。
【請求項5】
前記第2,第3操作ハンドルを収容する第1,第2ハンドル収容部を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の運転室側面引戸の二段二連錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−1749(P2011−1749A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145568(P2009−145568)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【出願人】(000108708)タキゲン製造株式会社 (256)
【Fターム(参考)】