説明

運転操作における危険防止装置

【課題】飲酒運転による交通事故を防止するため、運転しようとする者が酩酊している場合は自動車が走行できないようにする。
【解決手段】(C)図に示すように、電子キー2にアルコールセンサ2aを設けるとともに、マイクロコンピュータ2b、及びボタン電池2dを内蔵してある。上記アルコールセンサ2aがアルコールを検知すると、マイクロコンピュータ2bはイグニション作動阻止信号を出力する。出力されたイグニション作動阻止信号は電極2cを経てイグニション回路((A)図参照)に送られる。これによってエンジンは始動できなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲酒運転操作による危険を未然に防止する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲酒して酩酊した者が自動車を運転操作することは、重大な交通事故の原因となるから、厳禁されなければならない。
従来の飲酒運転防止は、主として法的規制と、運転者本人の自覚とによっていた。しかし、飲酒運転に起因する人身事故は、なかなか跡を絶たない。
運転者の資格,条件を科学的に判定して、失格者が運転しようとしても当該自動車のエンジンが始動しないようにする技術として、特開2001−331887号公報「車両管理装置及び携帯情報部材」が公知である。
【0003】
上記の公知技術は、例えば危険物運搬車など特定の車両を運転する場合、該特定の車両を運転する資格を持たないドライバがその車両を運転できないようにするものである。具体的には、ドライバが携帯している資格カードを電磁的に読み取って、「資格有り」と判定したとき、自動的に運転可能な状態ならしめる。
この作動原理から明らかなように、この公知技術は「運転者が携帯している資格カードが有効であるか否か」を判定の対象とするものであって、該運転者の身体的状態や精神的状態を問わない。従って、該運転者が酩酊していても「資格有り」と判定してしまうことになる。
【0004】
本発明を創作する過程において案出した試案の危険運転防止装置について、図4を参照して説明する。
運転席付近に運転席アルコールセンサ1Aを設けるとともに、客席付近に客席アルコールセンサ1Bを設け、空気中のアルコール蒸気濃度を検出する。
運転席アルコールセンサ1Aの検出信号および客席アルコールセンサ1Bの検出信号は、それぞれアルコール検出回路3Aおよびアルコール検出回路3Bに入力される。
上記双方の検出回路で検出された空気中のアルコール濃度(厳密にはアルコール類およびアルデヒト類の総合濃度、以下同様)は比較判定回路4に入力される。
【0005】
比較判定の結果、運転席アルコールセンサ1Aが空気中アルコールを検知していないか、または所定値以下であれば「運転者は酩酊していない」と判定し、別段の信号出力を行わない。
運転席アルコールセンサ1で検出した空気中アルコール濃度が所定値以上であれば、客席アルコールセンサ1Bによる空気中アルコール濃度と比較し、
運転席アルコールセンサ1の検出値の方が有意的に低ければ「運転者は酩酊していない」と判定する。
また、運転席アルコールセンサ1の検出値が客席アルコールセンサ1Bの検出値と同程度以上であれば「運転者が酩酊している」と判定する。
【0006】
比較判定回路4が「運転者酩酊」と判定すると、次の段落0007で述べるようにして、当該自動車の運転を阻止する指令信号を出力する。
以上に述べた構造機能から明らかなように、例えばタクシーの客席に泥酔者を担ぎ入れた場合、該泥酔者の呼気が車室内に流れるので、運転席アルコールセンサ1も空気中アルコールを感知する。
しかし、運転席アルコールセンサ1よりも客席アルコールセンサ1Bの方が高濃度の空気中アルコールを検出するので、前記の比較判定回路4は「運転者が酩酊していない」と判定し、次の段落で述べる「運転を阻止する指令信号」を出力しない。このような機能は、公共的な交通機関のように不特定の者を同乗させる機会の多い自動車において特に実用価値が高い。
【0007】
比較判定回路4が「運転席アルコールセンサ1の出力信号の値が所定値以上であり、かつ、客席アルコールセンサ1Bの出力信号値よりも大きい」と判定したとき、次の指令信号5,7,9,11,13の内の少なくとも何れか一つを出力する。複数の指令信号を出力しても構わないが、通常は一つで足りる。
変速機中立位置ロック指令信号5は、トランスミッション6を、中立位置から動かせないようにロックして、エンジンから車輪に至る伝動系統を遮断する。
【0008】
点火系統作動阻止指令信号7は、キースイッチ8の電気回路を開いて、ガソリンエンジン用点火プラグに高圧電気パルスが印加されないようにする(ただし、ガソリンエンジンにのみ適用される)。
操向系統作動阻止指令信号9は、パワーステアリング10、または、これに類似する機構部分が作動できないようにする。
【0009】
始動電動機作動阻止指令信号11は、セルモータ12のリレースイッチ1次回路を開いて、エンジンを始動できないようにする。
燃料供給遮断指令信号13は、燃料系統の機器(例えば燃料ノズル14、または燃料パイプ)の燃料送給を遮断して、エンジンが回転できないように、少なくとも回転を継続できないようにする。
上記5種類の指令信号の何れが出力されても、当該自動車の走行機能を分担している重要な機構が作動しなくなって、自動車は走行できなくなる。
すなわち、運転者が酩酊していれば自動車の走行が自動的に阻止され、酩酊運転が防止される。
【特許文献1】特開2001−331887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
飲酒運転の禁止規定(道路交通法第65条)の罰則を強化することも効なしとしない。 しかし乍ら、酩酊状態で運転して人身事故を起こしてしまった犯人を厳罰に処したところで、失われた人命は二度と還ってこない。
そこで、事故を起こす前に、酩酊したドライバーによる運転を自動的に阻止する科学的な方法の開発が望まれる。これは正に社会的要請である。
前記の公知技術(特開2001−331887号公報)は、ドライバーの免許資格を記録した磁気カードによって運転の可否を判定するものであるが、この免許資格は永続的なものである。すなわち、一旦免許資格を付与されると次回の更新時まで磁気カードが有効である。
【0011】
免許資格が永続的であるのに比して、酩酊・覚醒は身体の一時的現象であって、時間的経過に伴って変化する。
従って、ドライバーの酩酊状態を検知して運転の可否を自動的に判定することは、前記公知技術を適用しても達成できない。
本発明は上述の事情の鑑みて為されたものであって、酩酊したドライバーが自動車の運転席に坐ったとき、自動的に酩酊していることを検知して、自動的に運行を阻止する装置を提供しようとするものである。
【0012】
前記の試案に係る装置は、運転者を標的として呼気中のアルコール濃度を検知するので、前記公知技術に比して格段に優れている。
しかし-自動車の窓が開け放されているときは、運転者の酩酊を検知することが困難であって、「酩酊状態」を「ほろ酔い状態」と誤る虞れが有る。
【0013】
本発明は上述の事情に鑑みて為されたものであって、その目的は、自動車の窓が開放されていても誤作動する虞れ無く、酩酊者が同乗していても誤作動する虞れの無い危険運転防止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために創作した請求項1の発明に係る危険運転防止装置は、
自動車の運転席付近に設けられている電子スイッチ(22)に挿入して該電子スイッチを運転可能状態ならしめる電子キー(2)であって、アルコールを検知するアルコールセンサ(2a)と、湿度を検知する湿度センサ(2e)とが設けられていることを特徴とする。
この[課題を解決するための手段]の欄においては、図面との対照を容易ならしめるよう、構成部材の符号に図面参照符号を括弧書きで付記してあるが、この符号は本発明の構成を図面どおりに限定するものではない。
【0015】
請求項2の発明に係る危険運転防止装置は、前記電子キー(2)は、マイクロコンピュータ(2b)を内蔵しており、
該マイクロコンピュータは、前記アルコールセンサ(2a)からアルコール検出信号を入力されると、イグニション回路に対して作動阻止の指令信号を出力することを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明に係る危険運転防止装置は、前記電子キー(2)は、マイクロコンピュータ(2b)を内蔵しており、
該マイクロコンピュータは、前記アルコールセンサ(2a)からアルコール検出信号を入力されると、始動モータの1次回路を開かせる始動阻止指令信号を出力することを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明に係る危険運転防止装置は、前記電子キー(2)は、マイクロコンピュータ(2b)を内蔵しており、
このマイクロコンピュータは、前記のアルコールセンサ(2a)からアルコール検出信号を入力されると、燃料供給系統に対して、燃料供給系統の作動を阻止する指令信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明に係る危険運転防止装置を適用すると、
電子キーにアルコールセンサと、湿度センサとが設けられているので、上記湿度センサによって「該電子キーが人の手に持たれていること」を確認した上で、前記アルコールセンサによって酩酊しているか否かを検知することができる。
【0019】
請求項2の発明に係る危険運転防止装置を適用すると、アルコールセンサからアルコール検出信号を入力されたマイクロコンピュータがイグニション回路に対して作動阻止の指令信号を出力し、その作動を阻止するので自動車が発進できず、飲酒運転による危険が未然に防止される。
この請求項2の発明装置はガソリンエンジン搭載車に好適である。
【0020】
請求項3の発明に係る危険運転防止装置を適用すると、アルコールセンサからアルコール検出信号を入力されたマイクロコンピュータが始動モータの作動を阻止するので自動車が発進できず、飲酒運転による危険が未然に防止される。
【0021】
請求項4の発明に係る危険運転防止装置を適用すると、アルコールセンサからアルコール検出信号を入力されたマイクロコンピュータが燃料供給系統の作動を阻止するので自動車が発進できない。
このため、飲酒運転による危険が未然に防止される。
この請求項4の発明装置は、ガソリンエンジン搭載車であってもディゼルエンジン搭載車であっても適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、酩酊者の汗にアルコールが含まれていることを利用して、運転者が酩酊しているか否かを判定する。
図1は、本発明に係る自動車用電子キーを示す概要的な模式図である。
(図1(A)参照)ダッシュボード21に電子スイッチ22が設けられていて、電子キーを挿し込んで回すとイグニション回路が作動する。
図示を省略するが、上記のイグニション回路をスタータモータ回路と読み換えることもできる。
要するに、従来のキースイッチが機械的接点を有する機器であったのに比し、電子スイッチ22は電子キーと接続されて初めて回路を形成し得る構造である。電子キーは単なる機械的な駆動用具ではなく、導電回路の一部を内蔵している。
【0023】
(B)は、電子キーによって自動車のエンジンを始動するため指先で持った状態の外観図である。
(C)は、本発明を適用して構成された電子キーを指先で持った状態を描いた模式図である。
この実施形態の電子キーは、これを持ったとき指先に触れる箇所にアルコールセンサ2aが設けられるとともに、超小形のマイクロコンピュータ2bとボタン電池2dとを内蔵している。
運転者が酩酊していると、汗の中にアルコールおよびアセトアルデヒトが含まれているので、アルコールセンサ2aがアルコール蒸気を感知する。
【0024】
アルコールセンサ2aがアルコールを検出すると、マイクロコンピュータ2bがアルール検出信号を入力され、イグニション回路に対して作動阻止の指令信号を出力する。該作動阻止指令信号は、電極2cを介してイグニション回路に送られ、その点火機能を喪失させる。
図示を省略するが、前記マイクロコンピュータ2bによってイグニション回路の作動を阻止する指令信号を発信させることに代えて、始動モータの1次回路を開く形の始動阻止指令信号を発信させても良い。
【0025】
発明を実施する場合、その構成に欠くことのできないアルコールセンサについて説明する。
学術的には、酩酊を第1度から第4度までの4段階に分類されている。判定基準は血中アルコール濃度である。
なお一般に、単にアルコールと言えばエチルアルコールを指す場合が多いが、科学的にアルコールと言えばCOOH基を有するアルコール類全般を意味することが多く、その前後の記事との関連に留意しなければならない。
【0026】
本発明においては、紛らわしくない場合に限ってエチルアルコールをアルコールと略称し、エチルアルコール以外のアルコールを含むときはアルコール類と呼んで区別する。
第1度酩酊:血中アルコール濃度0.5〜1.5mg/ml(ほろ酔い)
第2度酩酊:血中アルコール濃度1.5〜2.5mg/ml(御機嫌)
第3度酩酊:血中アルコール濃度2.5〜3.5mg/ml(深酔い)
第4度酩酊:血中アルコール濃度3.5〜4.5mg/ml(意識喪失)
【0027】
医学的に患者を診断する場合であれば、量の血液を採取して血中アルコール濃度を測定することが可能であるが、例えば交通規制の場合には一々血液検査することは極めて困難である。
そこで道路交通法第65条や航空法第70条に基く規定により、被検者の呼気中に含まれているアルコール濃度を基準として、呼気1リットル中にアルコール0.15mg以上を含んでいてはならないと定めている。
【0028】
前記の「呼気中アルコール濃度」は「血中アルコール濃度」と良く相関していて、この呼気中アルコール濃度0.15mg/lは酒気帯び運転に対応する(道路交通法施行令第44条の3)。
法的に処罰するための証拠としては高精度の計測を必要とするため、容疑者の呼気100mlを採取し、これを重クロム酸カリ(黄色)と接触させて、緑色に変化するか否かを目視検査する(化学的変化は難しいが、この検査方法は俗称風船方式として広く知られている)。
【0029】
本発明の目的を達成するために必要な「アルコール検知性能」は、前記の呼気採取方式(風船方式)に比して次のように異なる。
a.権力を以て容疑者を取調べるのではないから、披検者に対して「風船を膨らませる」といった行為を行なわせる必要の無いものであること、すなわち被検者の行動を制約することなく酩酊を検知できることが必要である。
b.アルコールの検知によって変色することを利用する目視方式の比色検査は望ましくなく、なるべく直接的に電気信号を出力することが望ましい。
c.格別に高精度を要しない。すなわち、法的刑罰を与えるか否かの境界は厳正に明確でなければならないが、本発明に係る酩酊運転防止は別段の処罰ではないから、安全側に若干の誤差が有っても宥される。
d.さらに、酩酊の程度を4段階に区分して表示する必要は無く、運転可・否の2段階に判定すれば足りる。
こうした諸条件を勘案して、本実施形態ではアントラセン センサを用いた。
【0030】
アントラセンは有機半導体であって、ベンゼン環3個の縮合環を有する芳香族炭化水素である。分子式はC1410であり、分子量178.3である。
コールタールに含まれているので、これから分離して精製される。純粋なものは板状に結晶し、紫色の蛍光性を有し、融点217〜218℃、沸点340℃、比重1.25の半導体物質である。
上記のアントラセンを用いたアルコールセンサのトランスジューサは、1対の電極の間に膜状のアントラセンが配置された構造である。本実施形態においては、基板の上に櫛歯状の1対の電極を対向せしめて配置し、これらの電極をアントラセンの薄膜で覆った構造である。
【0031】
上述のように構成されたセンサのアントラセン膜の表面にアルコール蒸気が接触すると、該アルコール蒸気が有機半導体(アントラセン)膜の表面に化学吸着されて電荷授受が行なわれ、電気抵抗が減少する。
これにより、前記1対の電極の間に交流電圧を与えて電流値を計測し、アルコール蒸気を検知することができる。直流でなく交流を印加するのは、分極現象の発生を防止するためである。
【0032】
以上に説明したアントラセン センサは、エチルアルコール以外のアルコール類、およびアルデヒト類を化学吸着しても電気抵抗が減少する。こうした性質は、本発明の目的を達成するために障害とはならない。すなわち、
イ.酩酊者の呼気中に含まれているアルコール類は、実際問題としては純粋にと言い得る程度に、エチルアルコールのみであって、例えばメチルアルコールやプチルアルコール,プロピルアルコール等は含まれていない。
従って、呼気に触れて電気抵抗が減少したとき、その呼気を吐き出した者が酩酊していると判定して間違い無い。
【0033】
ロ.アントラセンはアルデヒト類にも感応する。
エチルアルコールが消化管で吸収されて人体内に入ると、肝臓に運ばれて酸化され、アセトアルデヒトになる。アセトアルデヒトの分子式はCH3CHOであり、特異な刺激臭を有する。
運転者の呼気にアセトアルデヒトが混入していることは、該運転者が酩酊していることを意味するから、アントラセンがアセトアルデヒトに感応するという特性は不都合を生じない。
【0034】
微量の汗の中に含まれている微少なアルコール類を、前記アルコールセンサ2aによって検知し得るか否かという問題は、運転者が素手である限り心配無い。その理由は次のとおりである。
すなわち、通常の状態において指先が完全に乾燥しているように思われても、指で触れたガラスコップ等に指紋が着くことは誰しも疑わないであろう。
指先の、いわゆる指の腹は乾いているように見えても、転写可能な程度のや汗を分泌しているのである。
特に、酩酊している者は交感神経の作用で発汗が盛んになるので、先に述べたアントラセン センサによって確実に検知し得る。
しかし、運転者が不透水性の手袋を装着しているときはアルコールの検知が困難となる。このような場合を想定して本実施形態は図を参照して次の段落で説明するように、湿度センサを併用する。
【0035】
は前記電子キーを示す模式図であって、(A)は表面を、(B)は裏面を、それぞれ描いてある。ただし、表,裏の呼称は便宜上のものであって、相互に変換することもできる。
電子キーは、前掲の図(C)を参照して説明したように、マイクロコンピュータ2bとボタン電池2dとを内蔵し、かつ、指先で触れる位置にアルコールセンサ2aが設けられている。
【0036】
なお、本発明を実施する際、電子キーに内蔵するボタン電池2dを省略することができる。省略した場合は、車体側から電子スイッチ22(図(A)および電極2cを介して電源の供給を受けるように構成すれば良い。
同様にしてマイクロコンピュータ2bを車体側に移すことも不可能ではない。このようにして、電子キーに内蔵すべき部品の一部を車体側に移した場合は本実施形態の変形例として本発明の技術的範囲に属する
【0037】
(図参照)本例の電子キーは、指先で触れる箇所にアルコールセンサ2aが設けられており、かつ、その裏側に湿度センサ2eが設けられている。
この湿度センサ2eが所定値以上の湿度を検知し、または湿度の不連続的な上昇を検知したときは、運転者が素手で電子キーを持ったものと判断される。
従って、湿度が検知され、かつアルコール蒸気を感知しなかったときは「酩酊していない」と判断される。
アルコール蒸気が検知されなくても、湿度を検知しないとき(詳しくは、所定値以上の湿度も、湿度の不連続的上昇も検知しなかったとき)は、運転者が未だ素手で電子キーに触れていないと判断されるので、ゴーサインの出力は保留する。
【0038】
次に、湿度センサ2eについて説明する。
湿度は人間生活と密接に関連しており、保健衛生をはじめ農業,園芸,畜産,食品加工(特に醗酵)、さらには最先端技術である電子機器生産やバイオテクノロジーに至るまで、ほとんど有りとあらゆる面で湿度の管理が必要である。
このため、湿度の計測は古くから行なわれていて、古典的な乾湿球湿度計や毛髪温度計から近代的な半導体温度計に至るまで、多種多様の湿度計が公知であり、かつ実用されている。
【0039】
これら多種類の湿度計の中から、小形,軽量でメンティナンス性の良いもの、望ましくは直接的に電気信号を出力するものを選定して用いることができる。
これらの条件を満たし得るものとして、吸湿して物性を変化させる高分子化合物が有り、簡単に分類すると次のごとくである。
(a)吸湿によってイオン伝導効果を生じるもの:高分子電解質など、
(b)吸湿によって体積が変化するもの:セルローズ系高分子。
(c)吸湿によって電気伝導度が変化するもの:炭素粒子分散吸湿性樹脂。
(d)湿度に伴って振動子負荷が変化するもの:水晶振動子+ポリアミド。
【0040】
本発明の実施に好適なものの1例として、株式会社サイマレックス社製の高分子湿度センサHS12(商標名)が挙げられる。
この製品の本体部は15mm×12mmの方形薄板状であるから電子キーに半ば埋設して固定することができる。
この湿度センサの要部は、焼結体に1対の電極を設けるとともに、この電極を覆って感湿性ペーストが成膜されている。湿度が上昇すると、多孔質の感湿性ペーストに吸着された表面水分子が焼結体の導電性粒子と結合してイオンを生じ、電気抵抗が減少するので湿度センサとして機能する。
【0041】
は、前掲の図および図に示した電子キーを用いた実務形態における作動を説明するためのフローチャートである。(これらの図を併せて参照)、
ステップaで電子キーが挿入されると、ステップbでマイクロコンピュータ2bが作動を開始し、ステップcで湿度センサ2eが湿度検知を行なう。
湿度が検知されるとステップdに進んで、アルコールセンサ2aによるアルコール検知を行なうが、このステップcで湿度を検知しなければ運転者の指が直接的に電子キーに触れられていないものと判定してステップdに進まない。
ステップdでアルコールを検知すると、ステップfに進んでイグニッション阻止信号を発信する。
ステップdでアルコールを検知しなければ、ステップeに進んでイグニション回路の作動を開始させる。
【0042】
この図は、電子キーによってイグニション回路を制御することにより酩酊運転を防止する場合を描いてある。
図示を省略するが、イグニション回路に代えてスタータ回路を制御したり、燃料系統を制御したりすることもできる。これらの場合も、図のステップaからステップdまでは同様であり、
ステップfの「イグニション阻止信号発信」を「スタータ阻止信号発信」と読み換えるとともに、ステップeの「イグニション回路作動開始」を「スタータ1次回路作動開始」と読み換え、
又は、ステップfの「イグニション阻止信号発信」を、「燃料供給阻止信号発信」と読み換え、ステップeの「イグニション回路作動開始」を、「燃料供給作動開始」と読み換えればよい。
【0043】
上記と同様に、トランスミッションを制御して自動車の運転を阻止することもでき、操向系統を制御して自動車の運転を阻止することもできる。
これらの場合もステップaからステップdまでは図3のフローチャートと同様であり、ステップfとステップeとを前例に倣って読み換える。
すなわち、
ステップfの「イグニション阻止信号発信」を「トランスミッション強制中立信号発信」と読み換えるとともに、ステップeの「イグニション回路作動開始」を「トランスミッション強制中立解除」と読み換え、
又は、ステップfの「イグニション阻止信号発信」を、「操向系統作動阻止信号発信」と読み換え、ステップeの「イグニション回路作動開始」を、「操向系統作動阻止解除」と読み換えればよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明における電子キーの概念を表すための図であって、(A)は電子キーを電子スイッチに対応させた状態を、(B)は電子キーを指先で持ったときの外観を、(C)は該電子キーの主要構成部材を、それぞれ描いてある。
【図2】前掲の図1に示した電子キーの拡大詳細図であって、(A)は表面を(B)は裏面をそれぞれ描いてある。
【図3】前掲の図1および図2に示した実施形態における作動を表したフローチャートである。
【図4】危険運転防止装置に係る試案を描いた模式的な正面図に自動制御の系統図を付記した図である。
【符号の説明】
【0045】
1A…運転席アルコールセンサ
1B…客席アルコールセンサ
…電子キー
2a…アルコールセンサ
2b…マイクロコンピュータ
2c…電極
2d…ボタン電池
2e…湿度センサ
3A,3B…アルコール検出回路
4…比較判定回路
5…変速機中立位置ロック信号
6…トランスミッション
7…点火系統作動阻止信号
8…キースイッチ
9…操向系統作動阻止信号
10…パワーステアリング
11…始動系統作動阻止信号
12…セルモータ
13…燃料系統遮断信号
14…燃料ノズル
15…風向センサ
16…比較回路
21…ダッシュボード
23…点火系統
a…フロー図におけるキー挿入ステップ
b…フロー図におけるマイコン作動開始ステップ
c…フロー図における湿度検知ステップ
d…フロー図におけるアルコール検知ステップ
e…フロー図におけるイグニション作動開始ステップ
f…フロー図における作動阻止ステップ
ACU…自動制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の運転席付近に設けられた電子スイッチ(22)に挿入して該電子スイッチを運転可能状態ならしめる電子キー()であって、アルコールを検知するアルコールセンサ(2a)と、湿度を検知する湿度センサ(2e)とが設けられていることを特徴とする、運転操作における危険防止装置。
【請求項2】
前記電子キー(2)は、マイクロコンピュータ(2b)を内蔵しており、
該マイクロコンピュータは、前記アルコールセンサ(2a)からアルコール検出信号を入力されると、イグニション回路に対して作動阻止の指令信号を出力することを特徴とする、請求項1に記載した運転操作における危険防止装置
【請求項3】
前記電子キー(2)は、マイクロコンピュータ(2b)を内蔵しており、
該マイクロコンピュータは、前記アルコールセンサ(2a)からアルコール検出信号を入力されると、始動モータの1次回路を開かせる始動阻止指令信号を出力することを特徴とする、請求項1に記載した運転操作における危険防止装置
【請求項4】
前記電子キー(2)は、マイクロコンピュータ(2b)を内蔵しており、
該マイクロコンピュータは、前記アルコールセンサ(2a)からアルコール検出信号を入力されると、燃料供給系統に対して作動阻止指令信号を出力することを特徴とする、請求項1に記載した運転操作における危険防止装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−7100(P2008−7100A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147959(P2007−147959)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【分割の表示】特願2003−42756(P2003−42756)の分割
【原出願日】平成15年2月20日(2003.2.20)
【出願人】(000114019)ミクロン精密株式会社 (24)
【Fターム(参考)】