説明

運転操作適正判定システム

【課題】 人間と飲酒検出システムとのインターフェースを十分に確保し、飲酒運転防止の抑制効果を向上させ、商品性を向上させることが可能な運転操作適性判定システムを提供する。
【解決手段】 運転操作適性判定システム1は、車両運転者の運転適正状態を判断し、被制御機器6に制御信号を出力する。報知手段2A,2Bは、車両運転者が非運転適正状態であることを報知する。制御手段4は、車両運転者が前記非運転適正状態であると判断した場合に、運転意欲を損なう情報を報知手段2A,2Bによって報知させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運転者が運転適正状態であるか否かを判定する運転操作適正判定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両運転者の運転の適性状態を検出する運転操作適性判定システムが種々提案され、例えば特許文献1に開示されている。斯かる運転操作適性判定システムは、呼気によるアルコール濃度の検出、汗の測定装置を用いた発汗状態による検出、CCD(Charge Coupled Device)撮像情報による網膜動きによる検出等に見られるように、専用のセンサや検出システムを飲酒検出用ECU(Electronic
Control Unit)として追加するものである。
【特許文献1】特開2007−106277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような運転操作適性判定システムは、アルコールを検出するとブザーやランプによって報知するか、「アルコールが検出されました。運転を中止します。」等の運転を停止させるメッセージを単に報知するものであり、どうしても運転をしたいと思う運転者は、アルコールの検出を逃れる行為(アルコールを摂取していない助手席の人に替わるなりすまし運転や、検出された後に手袋、サングラス、マスク等の使用により検出を回避して再度走行する等)が後を絶たず、飲酒運転を抑制するシステムとしては効果に乏しいという問題点を有している。
本発明は、この問題に鑑みなされたものであり、人間と飲酒検出システムとのインターフェースを十分に確保し、飲酒運転防止の抑制効果を向上させ、商品性を向上させることが可能な運転操作適性判定システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、請求項1に記載したように、車両運転者の運転適正状態を判断し、被制御機器6に制御信号を出力する運転操作適性判定システム1において、前記車両運転者が非運転適正状態であることを報知する報知手段2A,2Bと、前記車両運転者が前記非運転適正状態であると判断した場合に運転意欲を損なう情報を前記報知手段2A,2Bによって報知させてなる制御手段4と、を備えたものである。
【0005】
また、本発明は、請求項2に記載したように、前記報知手段は、前記車両運転者が前記非運転適正状態であることを視覚的に認識可能とする視覚情報確認手段2Aからなり、前記制御手段4は、アルコール検出レベル情報に応じて前記視覚情報確認手段の所定領域の色若しくは輝度を変化させてなるものである。
【0006】
また、本発明は、請求項3に記載したように、前記報知手段は、前記車両運転者が前記非運転適正状態であることを聴覚的に認識可能とする聴覚情報確認手段2Bからなり、前記制御手段4は、アルコール検出レベル情報に応じて前記聴覚情報確認手段の音色若しくは音量の少なくとも一方を変化させてなるものである。
【0007】
また、本発明は、請求項4に記載したように、前記報知手段は、前記車両運転者が前記非運転適正状態であることを視覚的に認識可能とする視覚情報確認手段2A若しくは聴覚的に認識可能とする聴覚情報確認手段2Bの少なくとも一方からなり、前記制御手段4は、アルコール検出レベル情報に応じて運転意欲を損なうメッセージを前記視覚情報確認手段2A若しくは前記聴覚情報確認手段2Bの少なくとも一方にて報知させてなるものである。
【0008】
また、本発明は、請求項5に記載したように、前記報知手段は、前記車両運転者が前記非運転適正状態であることを視覚的に認識可能とする視覚情報確認手段2Aからなり、前記制御手段4は、アルコール検出レベル情報に応じて運転意欲を損なう画像を前記視覚情報確認手段2Aにて表示させてなるものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明は、車両運転者の運転適正状態を判断し、前記車両運転者が非運転適正状態と判断した際に、報知手段によって車両運転者の運転意欲を損なう視覚情報若しくは聴覚情報を報知し、飲酒運転防止の抑制効果を向上させることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、車両運転者が非運転適正状態であることを視覚的に認識可能とする視覚情報確認手段を備え、制御手段は、アルコール検出レベル情報に応じて前記視覚情報確認手段の所定領域の色を変化させ、アルコール検出レベルを強調的に車両運転者に対して報知し、車両運転者に対して視覚情報によって視覚的な不快感を与えることで飲酒運転防止の抑制効果を向上させることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、車両運転者が非運転適正状態であることを聴覚的に認識可能とする聴覚情報確認手段を備え、制御手段は、アルコール検出レベル情報に応じて前記聴覚情報確認手段の音色若しくは音量の少なくとも一方を変化させることから、車両運転者に対して聴覚情報による聴覚的な不快感を与えて飲酒運転防止の抑制効果を向上させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、車両運転者が非運転適正状態であることを視覚的に認識可能とする視覚情報確認手段若しくは聴覚的に認識可能とする聴覚情報確認手段の少なくとも一方を備え、制御手段は、アルコール検出レベル情報に応じて運転意欲を損なうメッセージを前記視覚情報確認手段若しくは前記聴覚情報確認手段の少なくとも一方にて報知させることから、車両運転者に対し視覚的若しくは聴覚的に飲酒運転が違法であることを積極的に報知することで運転意欲を損ない、飲酒運転防止の抑制効果を向上させることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、車両運転者が非運転適正状態であることを視覚的に認識可能とする視覚情報確認手段を備え、制御手段は、アルコール検出レベル情報に応じて運転意欲を損なう画像を前記視覚情報確認手段にて表示させ、車両運転者に対し視覚的に飲酒運転が違法であることを積極的に報知することで運転意欲を損ない、飲酒運転防止の抑制効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態を説明する。
【0015】
図1は、運転操作適正判定システム1の報知手段を表示器(視覚情報確認手段)2Aから構成した第一実施形態を示すものである。運転操作適正判定システム1は、表示器2Aと、車両運転者が非運転適正状態であると判断した場合に運転意欲を損なう情報を表示器2Aによって報知させる制御手段4と、車両運転者の呼気若しくは発汗状態からアルコール濃度を検出する検出器5と、を備えるものであり、車両運転者の運転適正状態を判断し、車両運転者が非運転適正状態と判断した際に車両の制動を制御する車両制御部(被制御機器)6に制御信号を出力する。
【0016】
表示器2Aは、専用に設けたTFTからなるディスプレイまたはナビゲーション或いは車両用メータ内に設けられたマルチディスプレイからなるものである。制御手段4は、マイコンからなるものであり、検出器5が出力したアルコール検出濃度レベル情報に応じて、表示器2Aの画面の所定箇所の色若しくは輝度を変化させる。
【0017】
例えば、アルコール検出濃度がレベル0の場合は、エンジン始動後に緑色表示が数秒間点灯した後消灯し通常走行状態となる。アルコール検出濃度がレベル1の場合は、所定箇所の色を通常時の緑色から橙色に変化させエンジン停止まで点灯し続ける。アルコール検出濃度がレベル2の場合は、所定箇所の色を通常時の緑色から赤色に変化させる。アルコール検出濃度がレベル3の場合は、所定箇所の色を通常時の緑色から赤色に変化させると共に、前記所定箇所を明るく光輝或いは点滅させる制御をエンジン停止まで継続する。
【0018】
アルコール検出濃度のレベル判定は、以下の基準によるものである。
検出濃度レベル0:検出不能
検出濃度レベル1:酒気帯び基準値以下(0.15mg/l未満)
検出濃度レベル2:酒気帯び運転(0.15mg/l以上)
検出濃度レベル3:酒酔い運転(直立不動不能、歩行困難、会話が不明確)
【0019】
なお、第一実施形態においては視覚情報確認手段が表示器2Aであったが、視覚情報確認手段はヘッドアップディスプレイ(HUD)であっても良い。視覚情報確認手段としてHUDを用いた場合、制御手段4は、検出器5が出力したアルコール検出濃度レベル情報に応じて、HUDに搭載された表示パネルの表示領域の色若しくは輝度を変化させる。
【0020】
例えば、アルコール検出濃度がレベル0の場合は、エンジン始動後に前記表示素子は通常表示となる。アルコール検出濃度がレベル1の場合は、強制的に表示ONの状態になり表示領域全域を橙色に変化させエンジン停止まで点灯し続ける。アルコール検出濃度がレベル2の場合は、強制的に表示ONの状態になり、表示領域全域を赤色に変化させエンジン停止まで点灯し続ける。アルコール検出濃度がレベル3の場合は、強制的に表示ONの状態になり、表示領域全域を赤色に変化させると共に、表示領域全域を明るく光輝或いは点滅させる制御をエンジン停止まで継続する。
【0021】
図2は、第二実施形態を示すものである。第二実施形態は、運転操作適正判定システム1の報知手段を警報器(聴覚情報確認手段)2Bから構成したものであり、他の構成は第一実施形態と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0022】
警報器2Bは、専用に設けられたスピーカまたはオーディオシステムに設けられたスピーカである。制御手段4は、検出器5が出力したアルコール検出レベル情報に応じて、警報器2Bが発するブザー音の音色若しくは音量の少なくとも一方を変化させる。
例えば、アルコール検出濃度がレベル1の場合は、エンジン始動から停止まで、5秒間に矩形波2単位の警告音(80dB)が鳴る。アルコール検出濃度がレベル2の場合は、エンジン始動から停止まで、3秒間に矩形波2単位の警告音(80dB)が鳴る。アルコール検出濃度がレベル3の場合は、エンジン始動から停止まで、警告音(80dB)が連続で鳴る。
【0023】
なお、第二実施形態は、警報器2Bからブザー音を発するものであったが、不快感を与える可聴周波数領域の高周波領域の音(15kHz以上で非周期的な波形(例えばスティックスリップ音))であっても良く、人間が潜在的に記憶している危険信号に近いため、更に運転意欲を損なう効果が高い。
【0024】
図3及び図4は、第三実施形態を示すものである。第三実施形態は、運転操作適正判定システム1の報知手段を表示器2A及び警報器2Bから構成したものである。
制御手段4は、検出器5が出力したアルコール検出レベル情報に応じて、運転意欲を損なうメッセージを表示器2A及び警報器2Bによって報知させる。
表示器2Aは、アルコール検出濃度がレベル0の場合は、通常画面の表示を行い、アルコール検出濃度がレベル1〜3の場合は、以下のように、事故を起こした場合の死亡事故につながる確率が表示する。
【0025】
アルコール検出濃度がレベル1の場合は、「あなたは交通事故を起こした場合、正常時の5倍の確率で死亡します。」(図4(a)参照)
アルコール検出濃度がレベル2の場合は、「あなたは交通事故を起こした場合、正常時の7倍の確率で死亡します。」(図4(b)参照)
アルコール検出濃度がレベル3の場合は、「あなたは交通事故を起こした場合、正常時の36倍の確率で死亡します。」(図4(c)参照)
【0026】
制御手段4は、表示器2Aにメッセージを表示させると同時に、警報器2Bからも表示器2Aに表示されたメッセージと同じメッセージを音声にて報知する。
【0027】
次に、第四実施形態について説明する。第四実施形態は、運転操作適正判定システム1の報知手段を表示器2A及び警報器2Bから構成したものである。
制御手段4は、検出器5が出力したアルコール検出レベル情報に応じて、運転意欲を損なう情報を表示器2A及び警報器2Bによって報知させる。
表示器2Aは、アルコール検出濃度がレベル0の場合は、通常画面の表示を行い、アルコール検出濃度がレベル1〜3の場合は、以下のように、交通事故現場の衝突映像を表示する。
【0028】
アルコール検出濃度がレベル1の場合は、車両の損傷レベル1(半損、自動車の1/4の原形が無くなる程度の損傷)の動画
アルコール検出濃度がレベル2の場合は、車両の損傷レベル2(半損、自動車の1/2の原形が無くなる程度の損傷)の動画
アルコール検出濃度がレベル3の場合は、車両の損傷レベル3(全損、自動車の原形が無くなる程度の損傷)の動画
【0029】
制御手段4は、表示器2Aに衝突映像を表示させると同時に、警報器2Bから衝突音を大音量で発する。
【0030】
なお、アルコール検出濃度がレベル1〜3の場合に、制御手段4は、検出濃度レベルに応じて顔色が悪くなる自分の顔を表示器2Aに表示させても良い。
【0031】
各実施形態によれば、アルコール検出レベルを強調的に車両運転者に対して報知し、車両運転者に対して視覚的若しくは聴覚的な不快感を与えることで飲酒運転を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第一実施形態を示すブロック図。
【図2】本発明の第二実施形態を示すブロック図。
【図3】本発明の第三実施形態を示すブロック図。
【図4】同上第三実施形態を示す表示例の説明図。
【符号の説明】
【0033】
1 運転操作適性判定システム
2A 表示器(視覚情報確認手段)
2B 警報器(聴覚情報確認手段)
4 制御手段
5 検出器
6 車両制御部(被制御機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両運転者の運転適正状態を判断し、被制御機器に制御信号を出力する運転操作適性判定システムにおいて、
前記車両運転者が非運転適正状態であることを報知する報知手段と、前記車両運転者が前記非運転適正状態であると判断した場合に運転意欲を損なう情報を前記報知手段によって報知させてなる制御手段と、を備えたことを特徴とする運転操作適正判定システム。
【請求項2】
前記報知手段は、前記車両運転者が前記非運転適正状態であることを視覚的に認識可能とする視覚情報確認手段からなり、前記制御手段は、アルコール検出レベル情報に応じて前記視覚情報確認手段の所定領域の色若しくは輝度を変化させてなることを特徴とする請求項1に記載の運転操作適正判定システム。
【請求項3】
前記報知手段は、前記車両運転者が前記非運転適正状態であることを聴覚的に認識可能とする聴覚情報確認手段からなり、前記制御手段は、アルコール検出レベル情報に応じて前記聴覚情報確認手段の音色若しくは音量の少なくとも一方を変化させてなることを特徴とする請求項1に記載の運転操作適正判定システム。
【請求項4】
前記報知手段は、前記車両運転者が前記非運転適正状態であることを視覚的に認識可能とする視覚情報確認手段若しくは聴覚的に認識可能とする聴覚情報確認手段の少なくとも一方からなり、前記制御手段は、アルコール検出レベル情報に応じて運転意欲を損なうメッセージを前記視覚情報確認手段若しくは前記聴覚情報確認手段の少なくとも一方にて報知させてなることを特徴とする請求項1に記載の運転操作適正判定システム。
【請求項5】
前記報知手段は、前記車両運転者が前記非運転適正状態であることを視覚的に認識可能とする視覚情報確認手段からなり、前記制御手段は、アルコール検出レベル情報に応じて運転意欲を損なう画像を前記視覚情報確認手段にて表示させてなることを特徴とする請求項1に記載の運転操作適正判定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−211508(P2009−211508A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54971(P2008−54971)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】