運転支援情報提供装置
【課題】車両の後方に存在する障害物の形状によらず、当該車両が有するテールゲートの開閉に必要な最小空間を確保できない状態となるまでの正確な情報を提供する運転支援情報提供装置を提供すること。
【解決手段】運転支援情報提供装置は、跳ね上げ式のテールゲートを有する車両の後方領域に基づく情報から当該後方領域の空間座標を導出する後方領域空間座標導出部と、後方領域に存在する障害物の位置を空間座標上で検出する障害物検出部と、障害物検出部が検出した障害物の位置とテールゲートがその開閉時に通過するテールゲート開閉領域を空間座標上で比較して、3次元空間における障害物とテールゲート開閉領域とが最も近接した最近接距離を算出する最近接距離算出部と、最近接距離に関する情報を出力するよう処理する出力処理部とを備える。
【解決手段】運転支援情報提供装置は、跳ね上げ式のテールゲートを有する車両の後方領域に基づく情報から当該後方領域の空間座標を導出する後方領域空間座標導出部と、後方領域に存在する障害物の位置を空間座標上で検出する障害物検出部と、障害物検出部が検出した障害物の位置とテールゲートがその開閉時に通過するテールゲート開閉領域を空間座標上で比較して、3次元空間における障害物とテールゲート開閉領域とが最も近接した最近接距離を算出する最近接距離算出部と、最近接距離に関する情報を出力するよう処理する出力処理部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバが車両を後方に運転する際、当該車両の後方領域の状態に基づく運転支援情報をドライバに提供する運転支援情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている車両用後方視界表示装置は、図7に示される車両21の開放されたテールゲート23を表す車両指標をCCDカメラが撮影した後方視界画像に合成して、モニタ装置上に表示する。図8は、特許文献1の車両用後方視界表示装置がモニタ装置に表示する後方視界画像の一例を示す図である。なお、図8に示されるテールゲートラインA,Bは、段階的に開放維持可能なテールゲート23の開放量に応じたその後端の位置を示す。
【0003】
また、特許文献2に開示されている運転支援装置は、車両走行方向の撮影画像をモニタ画面に表示することにより車両の運転を支援する。図9は、特許文献2の運転支援装置における基本原理を説明する模式図である。図9に示すように、特許文献2の運転支援装置は、車両走行方向にある注目部(積荷やバックドア等)の位置における基準鉛直面3と地面2との交線をベースライン32としてモニタ30に表示するとともに、基準鉛直面3における注目部の地上高さを示すレベルライン33をモニタ30に表示する。
【0004】
上記説明した装置によれば、図10に示すように、跳ね上げ式のテールゲート(tailgate)を有する車両の進行方向に壁等の障害物があれば、モニタに表示されるテールゲートの張り出し量を示す線を基準に停車すれば、テールゲートの開放時にその端部が障害物に当たらないとされる。図11は、図10に示した状態のときモニタに映る車両の後方視界画像とテールゲートの張り出し量を示す線の一例を示す図である。ドライバは、モニタを見ながら、テールゲートの張り出し量を示す線が後方壁の下端と重なる前に停車する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−87780号公報
【特許文献2】特開2007−91157号公報
【特許文献3】特開平11−334536号公報
【特許文献4】特開平11−208420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10に示した例は、車両の進行方向に存在する障害物の形状が路面に対して垂直かつ平らである。この場合、ドライバが車両を後方に運転する際、テールゲートの張り出し量を示す線が障害物の下端を超える前に停車すれば、障害物に当たることなくテールゲートを開けることができる。しかし、図12及び図7に示すように、車両の進行方向に存在する障害物が樹木や車両等の場合、テールゲートの張り出し量を示す線を基準に停車すると、テールゲートが障害物に当たって開けられない場合があり得る。
【0007】
すなわち、図12に示す例のように、テールゲートの張り出し量を示す線を樹木の幹の下端に合わせて停車すると、枝葉が障害となってテールゲートを開けることができない。また、図13に示す例では、障害物が他の車両である。なお、図14は、図13に示す状態のときモニタに映る後方視界画像とテールゲートの張り出し量を示す線の関係を示す図である。図13及び図14に示す例のように、テールゲートの張り出し量を示す線を障害物である他の車両のバンパーの下端に合わせて停車すると、テールゲートが当該他の車両の車体に当たってしまう。
【0008】
このように、上記説明した装置によれば、進行方向に存在する障害物の形状によっては、テールゲートの張り出し量を示す線を基準に停車しても、テールゲートの開閉スペースを十分に確保できない。
【0009】
本発明の目的は、車両の後方に存在する障害物の形状によらず、当該車両が有するテールゲートの開閉に必要な最小空間を確保できない状態となるまでの正確な情報を提供する運転支援情報提供装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、跳ね上げ式のテールゲートを有する車両の後方領域に基づく情報から当該後方領域の空間座標を導出する後方領域空間座標導出部と、前記後方領域に存在する障害物の位置を空間座標上で検出する障害物検出部と、前記障害物検出部が検出した障害物の位置と前記テールゲートがその開閉時に通過するテールゲート開閉領域を空間座標上で比較して、3次元空間における前記障害物と前記テールゲート開閉領域とが最も近接した最近接距離を算出する最近接距離算出部と、前記最近接距離に関する情報を出力するよう処理する出力処理部と、を備えた運転支援情報提供装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る運転支援情報提供装置によれば、車両の後方に存在する障害物の形状によらず、当該車両が有するテールゲートの開閉に必要な最小空間を確保できない状態となるまでの正確な情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態の運転支援情報提供装置の内部構成及び周辺機器との関係を示すブロック図
【図2】車両後部の正面図
【図3】跳ね上げ式のテールゲートを有する車両が進行方向に他の車両が存在する駐車スペースに後退して進入する際の状況を示す図
【図4】図3に示した状態のときモニタに映る車両の後方視界画像に最近接距離を示す数値が合成された合成画像の一例を示す図
【図5】図1に示した運転支援情報提供装置100の動作を示すフローチャート
【図6】図1に示した運転支援情報提供装置100の動作を示すフローチャート
【図7】特許文献1の車両用後方視界表示装置を用いて駐車した場合の車両と障害物との相対位置を示す図
【図8】特許文献1の車両用後方視界表示装置がモニタ装置に表示する後方視界画像の一例を示す図
【図9】特許文献2の運転支援装置における基本原理を説明する模式図
【図10】跳ね上げ式のテールゲートを有する車両と障害物との相対位置を示す図
【図11】図10に示した状態のときモニタに映る車両の後方視界画像とテールゲートの張り出し量を示す線の一例を示す図
【図12】跳ね上げ式のテールゲートを有する車両と障害物である樹木との相対位置を示す図
【図13】跳ね上げ式のテールゲートを有する車両と障害物である他の車両との相対位置を示す図
【図14】図13に示す状態のときモニタに映る後方視界画像とテールゲートの張り出し量を示す線の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る運転支援情報提供装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下説明する実施形態では、本発明に係る運転支援情報提供装置は、跳ね上げ式のテールゲートを有する車両に設けられている。
【0014】
図1は、一実施形態の運転支援情報提供装置の内部構成及び周辺機器との関係を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の運転支援情報提供装置100は、後方領域空間座標導出部101と、障害物検出部103と、テールゲート開閉領域情報記憶部105と、最近接距離算出部107と、映像表示処理部109と、制御部111と、音声出力処理部113とを備える。なお、運転支援情報提供装置100には、一対のCCDカメラ121、モニタ123及びスピーカ125が接続されている。また、運転支援情報提供装置100には、図示しないイグニッションスイッチセンサからイグニッション状態信号が入力され、図示しないシフトレバー位置センサからシフトレバー位置信号が入力される。
【0015】
一対のCCDカメラ121は、車両後部の同じ高さかつ車幅方向に異なる位置に設けられ、車両の後方領域を撮影する。図2は、車両後部の正面図である。一対のCCDカメラ121が撮影した各映像の信号は運転支援情報提供装置100に送られる。上述したように、一対のCCDカメラ121は同じ高さかつそれぞれが左右にずれた位置に設けられているため、同時間に撮影された2つの映像を合成した映像から、車両の後方領域の空間座標が得られる。
【0016】
モニタ123は、いずれか一方のCCDカメラの映像等を表示する。スピーカ125は、障害物の接近等を報知する音声を出力する。なお、モニタ123及びスピーカ125は、車両内部に設けられている。
【0017】
以下、運転支援情報提供装置100が備える各構成要素について、図1及び図3を参照して説明する。図3は、跳ね上げ式のテールゲートを有する車両が進行方向に他の車両が存在する駐車スペースに後退して進入する際の状況を示す図である。
【0018】
後方領域空間座標導出部101は、一対のCCDカメラ121が撮影した各映像を合成し、当該合成映像に基づく車両の後方領域の空間座標(以下「後方領域空間座標」という)を導出する。なお、後方領域空間座標は、直交座標系であっても極座標系であっても良い。障害物検出部103は、一対のCCDカメラ121が撮影した領域に存在する障害物の位置を後方領域空間座標上で検出する。テールゲート開閉領域情報記憶部105は、車両のテールゲートがその開閉時に通過する仮想空間上の領域に関する情報(以下「テールゲート開閉領域情報」という)を記憶する。なお、テールゲート開閉領域情報は、後方領域空間座標の座標系と同じ座標系上での情報である。
【0019】
最近接距離算出部107は、テールゲート開閉領域を後方領域空間座標にあてはめて、障害物検出部103が検出した障害物の位置とテールゲート開閉領域を空間座標上で比較する。さらに、最近接距離算出部107は、当該比較結果に基づいて、3次元空間における障害物とテールゲート開閉領域とが最も近接した距離(以下「最近接距離」という)を算出する。なお、最近接距離は、車両の進行方向を軸線としたときの、当該軸線上の距離である。最近接距離算出部107は、最近接距離を数値で示す情報(最近接距離情報)を映像表示処理部109及び制御部111に送る。
【0020】
映像表示処理部109は、いずれか一方のCCDカメラの映像に最近接距離を示す数値を重ねて合成し、当該合成映像の信号をモニタ123に出力する。なお、映像表示処理部109は、障害物のテールゲート開閉領域に最も近接した部分を示すアイコンを映像に合成しても良い。図4は、図3に示した状態のときモニタに映る車両の後方視界画像に最近接距離を示す数値が合成された合成画像の一例を示す図である。図4中の星印は、障害物のテールゲート開閉領域に最も近接した部分を示す。
【0021】
制御部111は、最近接距離が所定値以下のとき、障害物の接近を報知する音声(警告音)をスピーカ125が出力するよう音声出力処理部113に指示する。音声出力処理部113は、制御部111から指示された際に警告音信号をスピーカ125に出力する。
【0022】
また、制御部111は、運転支援情報提供装置100に入力されたイグニッション状態信号に応じて、運転支援情報提供装置100全体の動作の可否を決定する。すなわち、制御部111は、イグニッション状態信号がオフのとき運転支援情報提供装置100が動作しない状態に設定し、オンのとき運転支援情報提供装置100が動作可能な状態に設定する。さらに、制御部111は、運転支援情報提供装置100に入力されたシフトレバー位置信号に応じて、後方領域空間座標導出部101、障害物検出部103、最近接距離算出部107及び映像表示処理部109の動作の可否を決定する。すなわち、制御部111は、シフトレバー位置信号が「後退(Reverse)」を示すときに限り、後方領域空間座標導出部101、障害物検出部103、最近接距離算出部107及び映像表示処理部109の動作を許可する。
【0023】
図5及び図6は、図1に示した運転支援情報提供装置100の動作を示すフローチャートである。制御部111は、イグニッション状態信号がオンか否かを判断し(ステップS101)、オンであればステップS103に進み、オフであればステップS151に進む。ステップS151では、制御部111は、スピーカ125が発音中か否かを判断し、発音中であればステップS153に進み、発音中でなければステップS155に進む。ステップS153では、制御部111は、スピーカ125の発音を停止する。ステップS155では、制御部111は、モニタ123の表示を停止する。
【0024】
ステップS103では、制御部111は、シフトレバー位置信号が「後退」を示すか否かを判断し、「後退」の場合はステップS105に進み、「後退」以外の場合はステップS151に進む。ステップS105では、後方領域空間座標導出部101は、一対のCCDカメラ121が撮影した各映像から後方領域空間座標を導出する。次に、障害物検出部103は、一対のCCDカメラ121が撮影した領域に存在する障害物の位置を後方領域空間座標上で検出する(ステップS107)。次に、最近接距離算出部107は、障害物の位置とテールゲート開閉領域を空間座標上で比較して、最近接距離を算出する(ステップS109)。
【0025】
次に、制御部111は、最近接距離が所定値以下か否かを判断し(ステップS111)、最近接距離が所定値以下(最近接距離≦所定値)のときはステップS113に進み、所定値より大きい(最近接距離>所定値)ときはステップS121に進む。ステップS113では、制御部111は、スピーカ125から警告音を出すよう音声出力処理部113に指示する。次に、映像表示処理部109は、最近接距離を示す数値及び障害物のテールゲート開閉領域に最も近接した部分(最近接部位)を示すアイコンをいずれか一方のCCDカメラの映像に重ねて合成する(ステップS115)。
【0026】
一方、ステップS121では、制御部111は、スピーカ125が発音中か否かを判断し、発音中であればステップS123に進み、発音中でなければステップS125に進む。ステップS123では、制御部111は、スピーカ125の発音を停止する。ステップS125では、映像表示処理部109は、ステップS115と同様に、最近接距離を示す数値及び障害物のテールゲート開閉領域に最も近接した部分(最近接部位)を示すアイコンをいずれか一方のCCDカメラの映像に重ねて合成する。ステップS115又はステップS125の後、映像表示処理部109は、合成映像をモニタ123に表示するよう処理する(ステップS117)。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の運転支援情報提供装置100は、一対のCCDカメラ121が撮影した領域に存在する障害物の位置を空間座標上で検出し、当該障害物の位置とテールゲート開閉領域を空間座標上で比較するため、3次元空間における障害物とテールゲート開閉領域とが最も近接した距離を算出することができる。また、運転支援情報提供装置100は、いずれか一方のCCDカメラの映像に最近接距離を示す数値を重ねて合成する。
【0028】
このため、ドライバは、車両の進行方向に存在する障害物の形状によらず、当該車両が有するテールゲートの開閉に必要な最小空間を確保できない状態となるまでの距離(最近接距離)を把握することができる。また、ドライバは、当該距離を数値で把握できるため、テールゲートの開閉に必要な最小空間を確実に確保できる。
【0029】
なお、上記実施形態では、後方領域空間座標導出部101は、一対のCCDカメラ121が撮影した各映像の合成映像に基づいて後方領域空間座標を導出しているが、60GHz帯又は76GHz帯のミリ波レーダーを用いて後方領域空間座標を導出しても良い。また、障害物検出部103が複数の障害物を検出した場合、最近接距離算出部107は、テールゲート開閉領域と各障害物との最近接距離の内、最も短い最近接距離を数値で示す情報を映像表示処理部109及び制御部111に送る。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る運転支援情報提供装置は、車両に搭載されるバックカメラシステム等として有用である。
【符号の説明】
【0031】
100 運転支援情報提供装置
101 後方領域空間座標導出部
103 障害物検出部
105 テールゲート開閉領域情報記憶部
107 最近接距離算出部
109 映像表示処理部
111 制御部
113 音声出力処理部
121 一対のCCDカメラ
123 モニタ
125 スピーカ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバが車両を後方に運転する際、当該車両の後方領域の状態に基づく運転支援情報をドライバに提供する運転支援情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている車両用後方視界表示装置は、図7に示される車両21の開放されたテールゲート23を表す車両指標をCCDカメラが撮影した後方視界画像に合成して、モニタ装置上に表示する。図8は、特許文献1の車両用後方視界表示装置がモニタ装置に表示する後方視界画像の一例を示す図である。なお、図8に示されるテールゲートラインA,Bは、段階的に開放維持可能なテールゲート23の開放量に応じたその後端の位置を示す。
【0003】
また、特許文献2に開示されている運転支援装置は、車両走行方向の撮影画像をモニタ画面に表示することにより車両の運転を支援する。図9は、特許文献2の運転支援装置における基本原理を説明する模式図である。図9に示すように、特許文献2の運転支援装置は、車両走行方向にある注目部(積荷やバックドア等)の位置における基準鉛直面3と地面2との交線をベースライン32としてモニタ30に表示するとともに、基準鉛直面3における注目部の地上高さを示すレベルライン33をモニタ30に表示する。
【0004】
上記説明した装置によれば、図10に示すように、跳ね上げ式のテールゲート(tailgate)を有する車両の進行方向に壁等の障害物があれば、モニタに表示されるテールゲートの張り出し量を示す線を基準に停車すれば、テールゲートの開放時にその端部が障害物に当たらないとされる。図11は、図10に示した状態のときモニタに映る車両の後方視界画像とテールゲートの張り出し量を示す線の一例を示す図である。ドライバは、モニタを見ながら、テールゲートの張り出し量を示す線が後方壁の下端と重なる前に停車する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−87780号公報
【特許文献2】特開2007−91157号公報
【特許文献3】特開平11−334536号公報
【特許文献4】特開平11−208420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10に示した例は、車両の進行方向に存在する障害物の形状が路面に対して垂直かつ平らである。この場合、ドライバが車両を後方に運転する際、テールゲートの張り出し量を示す線が障害物の下端を超える前に停車すれば、障害物に当たることなくテールゲートを開けることができる。しかし、図12及び図7に示すように、車両の進行方向に存在する障害物が樹木や車両等の場合、テールゲートの張り出し量を示す線を基準に停車すると、テールゲートが障害物に当たって開けられない場合があり得る。
【0007】
すなわち、図12に示す例のように、テールゲートの張り出し量を示す線を樹木の幹の下端に合わせて停車すると、枝葉が障害となってテールゲートを開けることができない。また、図13に示す例では、障害物が他の車両である。なお、図14は、図13に示す状態のときモニタに映る後方視界画像とテールゲートの張り出し量を示す線の関係を示す図である。図13及び図14に示す例のように、テールゲートの張り出し量を示す線を障害物である他の車両のバンパーの下端に合わせて停車すると、テールゲートが当該他の車両の車体に当たってしまう。
【0008】
このように、上記説明した装置によれば、進行方向に存在する障害物の形状によっては、テールゲートの張り出し量を示す線を基準に停車しても、テールゲートの開閉スペースを十分に確保できない。
【0009】
本発明の目的は、車両の後方に存在する障害物の形状によらず、当該車両が有するテールゲートの開閉に必要な最小空間を確保できない状態となるまでの正確な情報を提供する運転支援情報提供装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、跳ね上げ式のテールゲートを有する車両の後方領域に基づく情報から当該後方領域の空間座標を導出する後方領域空間座標導出部と、前記後方領域に存在する障害物の位置を空間座標上で検出する障害物検出部と、前記障害物検出部が検出した障害物の位置と前記テールゲートがその開閉時に通過するテールゲート開閉領域を空間座標上で比較して、3次元空間における前記障害物と前記テールゲート開閉領域とが最も近接した最近接距離を算出する最近接距離算出部と、前記最近接距離に関する情報を出力するよう処理する出力処理部と、を備えた運転支援情報提供装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る運転支援情報提供装置によれば、車両の後方に存在する障害物の形状によらず、当該車両が有するテールゲートの開閉に必要な最小空間を確保できない状態となるまでの正確な情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態の運転支援情報提供装置の内部構成及び周辺機器との関係を示すブロック図
【図2】車両後部の正面図
【図3】跳ね上げ式のテールゲートを有する車両が進行方向に他の車両が存在する駐車スペースに後退して進入する際の状況を示す図
【図4】図3に示した状態のときモニタに映る車両の後方視界画像に最近接距離を示す数値が合成された合成画像の一例を示す図
【図5】図1に示した運転支援情報提供装置100の動作を示すフローチャート
【図6】図1に示した運転支援情報提供装置100の動作を示すフローチャート
【図7】特許文献1の車両用後方視界表示装置を用いて駐車した場合の車両と障害物との相対位置を示す図
【図8】特許文献1の車両用後方視界表示装置がモニタ装置に表示する後方視界画像の一例を示す図
【図9】特許文献2の運転支援装置における基本原理を説明する模式図
【図10】跳ね上げ式のテールゲートを有する車両と障害物との相対位置を示す図
【図11】図10に示した状態のときモニタに映る車両の後方視界画像とテールゲートの張り出し量を示す線の一例を示す図
【図12】跳ね上げ式のテールゲートを有する車両と障害物である樹木との相対位置を示す図
【図13】跳ね上げ式のテールゲートを有する車両と障害物である他の車両との相対位置を示す図
【図14】図13に示す状態のときモニタに映る後方視界画像とテールゲートの張り出し量を示す線の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る運転支援情報提供装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下説明する実施形態では、本発明に係る運転支援情報提供装置は、跳ね上げ式のテールゲートを有する車両に設けられている。
【0014】
図1は、一実施形態の運転支援情報提供装置の内部構成及び周辺機器との関係を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の運転支援情報提供装置100は、後方領域空間座標導出部101と、障害物検出部103と、テールゲート開閉領域情報記憶部105と、最近接距離算出部107と、映像表示処理部109と、制御部111と、音声出力処理部113とを備える。なお、運転支援情報提供装置100には、一対のCCDカメラ121、モニタ123及びスピーカ125が接続されている。また、運転支援情報提供装置100には、図示しないイグニッションスイッチセンサからイグニッション状態信号が入力され、図示しないシフトレバー位置センサからシフトレバー位置信号が入力される。
【0015】
一対のCCDカメラ121は、車両後部の同じ高さかつ車幅方向に異なる位置に設けられ、車両の後方領域を撮影する。図2は、車両後部の正面図である。一対のCCDカメラ121が撮影した各映像の信号は運転支援情報提供装置100に送られる。上述したように、一対のCCDカメラ121は同じ高さかつそれぞれが左右にずれた位置に設けられているため、同時間に撮影された2つの映像を合成した映像から、車両の後方領域の空間座標が得られる。
【0016】
モニタ123は、いずれか一方のCCDカメラの映像等を表示する。スピーカ125は、障害物の接近等を報知する音声を出力する。なお、モニタ123及びスピーカ125は、車両内部に設けられている。
【0017】
以下、運転支援情報提供装置100が備える各構成要素について、図1及び図3を参照して説明する。図3は、跳ね上げ式のテールゲートを有する車両が進行方向に他の車両が存在する駐車スペースに後退して進入する際の状況を示す図である。
【0018】
後方領域空間座標導出部101は、一対のCCDカメラ121が撮影した各映像を合成し、当該合成映像に基づく車両の後方領域の空間座標(以下「後方領域空間座標」という)を導出する。なお、後方領域空間座標は、直交座標系であっても極座標系であっても良い。障害物検出部103は、一対のCCDカメラ121が撮影した領域に存在する障害物の位置を後方領域空間座標上で検出する。テールゲート開閉領域情報記憶部105は、車両のテールゲートがその開閉時に通過する仮想空間上の領域に関する情報(以下「テールゲート開閉領域情報」という)を記憶する。なお、テールゲート開閉領域情報は、後方領域空間座標の座標系と同じ座標系上での情報である。
【0019】
最近接距離算出部107は、テールゲート開閉領域を後方領域空間座標にあてはめて、障害物検出部103が検出した障害物の位置とテールゲート開閉領域を空間座標上で比較する。さらに、最近接距離算出部107は、当該比較結果に基づいて、3次元空間における障害物とテールゲート開閉領域とが最も近接した距離(以下「最近接距離」という)を算出する。なお、最近接距離は、車両の進行方向を軸線としたときの、当該軸線上の距離である。最近接距離算出部107は、最近接距離を数値で示す情報(最近接距離情報)を映像表示処理部109及び制御部111に送る。
【0020】
映像表示処理部109は、いずれか一方のCCDカメラの映像に最近接距離を示す数値を重ねて合成し、当該合成映像の信号をモニタ123に出力する。なお、映像表示処理部109は、障害物のテールゲート開閉領域に最も近接した部分を示すアイコンを映像に合成しても良い。図4は、図3に示した状態のときモニタに映る車両の後方視界画像に最近接距離を示す数値が合成された合成画像の一例を示す図である。図4中の星印は、障害物のテールゲート開閉領域に最も近接した部分を示す。
【0021】
制御部111は、最近接距離が所定値以下のとき、障害物の接近を報知する音声(警告音)をスピーカ125が出力するよう音声出力処理部113に指示する。音声出力処理部113は、制御部111から指示された際に警告音信号をスピーカ125に出力する。
【0022】
また、制御部111は、運転支援情報提供装置100に入力されたイグニッション状態信号に応じて、運転支援情報提供装置100全体の動作の可否を決定する。すなわち、制御部111は、イグニッション状態信号がオフのとき運転支援情報提供装置100が動作しない状態に設定し、オンのとき運転支援情報提供装置100が動作可能な状態に設定する。さらに、制御部111は、運転支援情報提供装置100に入力されたシフトレバー位置信号に応じて、後方領域空間座標導出部101、障害物検出部103、最近接距離算出部107及び映像表示処理部109の動作の可否を決定する。すなわち、制御部111は、シフトレバー位置信号が「後退(Reverse)」を示すときに限り、後方領域空間座標導出部101、障害物検出部103、最近接距離算出部107及び映像表示処理部109の動作を許可する。
【0023】
図5及び図6は、図1に示した運転支援情報提供装置100の動作を示すフローチャートである。制御部111は、イグニッション状態信号がオンか否かを判断し(ステップS101)、オンであればステップS103に進み、オフであればステップS151に進む。ステップS151では、制御部111は、スピーカ125が発音中か否かを判断し、発音中であればステップS153に進み、発音中でなければステップS155に進む。ステップS153では、制御部111は、スピーカ125の発音を停止する。ステップS155では、制御部111は、モニタ123の表示を停止する。
【0024】
ステップS103では、制御部111は、シフトレバー位置信号が「後退」を示すか否かを判断し、「後退」の場合はステップS105に進み、「後退」以外の場合はステップS151に進む。ステップS105では、後方領域空間座標導出部101は、一対のCCDカメラ121が撮影した各映像から後方領域空間座標を導出する。次に、障害物検出部103は、一対のCCDカメラ121が撮影した領域に存在する障害物の位置を後方領域空間座標上で検出する(ステップS107)。次に、最近接距離算出部107は、障害物の位置とテールゲート開閉領域を空間座標上で比較して、最近接距離を算出する(ステップS109)。
【0025】
次に、制御部111は、最近接距離が所定値以下か否かを判断し(ステップS111)、最近接距離が所定値以下(最近接距離≦所定値)のときはステップS113に進み、所定値より大きい(最近接距離>所定値)ときはステップS121に進む。ステップS113では、制御部111は、スピーカ125から警告音を出すよう音声出力処理部113に指示する。次に、映像表示処理部109は、最近接距離を示す数値及び障害物のテールゲート開閉領域に最も近接した部分(最近接部位)を示すアイコンをいずれか一方のCCDカメラの映像に重ねて合成する(ステップS115)。
【0026】
一方、ステップS121では、制御部111は、スピーカ125が発音中か否かを判断し、発音中であればステップS123に進み、発音中でなければステップS125に進む。ステップS123では、制御部111は、スピーカ125の発音を停止する。ステップS125では、映像表示処理部109は、ステップS115と同様に、最近接距離を示す数値及び障害物のテールゲート開閉領域に最も近接した部分(最近接部位)を示すアイコンをいずれか一方のCCDカメラの映像に重ねて合成する。ステップS115又はステップS125の後、映像表示処理部109は、合成映像をモニタ123に表示するよう処理する(ステップS117)。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の運転支援情報提供装置100は、一対のCCDカメラ121が撮影した領域に存在する障害物の位置を空間座標上で検出し、当該障害物の位置とテールゲート開閉領域を空間座標上で比較するため、3次元空間における障害物とテールゲート開閉領域とが最も近接した距離を算出することができる。また、運転支援情報提供装置100は、いずれか一方のCCDカメラの映像に最近接距離を示す数値を重ねて合成する。
【0028】
このため、ドライバは、車両の進行方向に存在する障害物の形状によらず、当該車両が有するテールゲートの開閉に必要な最小空間を確保できない状態となるまでの距離(最近接距離)を把握することができる。また、ドライバは、当該距離を数値で把握できるため、テールゲートの開閉に必要な最小空間を確実に確保できる。
【0029】
なお、上記実施形態では、後方領域空間座標導出部101は、一対のCCDカメラ121が撮影した各映像の合成映像に基づいて後方領域空間座標を導出しているが、60GHz帯又は76GHz帯のミリ波レーダーを用いて後方領域空間座標を導出しても良い。また、障害物検出部103が複数の障害物を検出した場合、最近接距離算出部107は、テールゲート開閉領域と各障害物との最近接距離の内、最も短い最近接距離を数値で示す情報を映像表示処理部109及び制御部111に送る。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る運転支援情報提供装置は、車両に搭載されるバックカメラシステム等として有用である。
【符号の説明】
【0031】
100 運転支援情報提供装置
101 後方領域空間座標導出部
103 障害物検出部
105 テールゲート開閉領域情報記憶部
107 最近接距離算出部
109 映像表示処理部
111 制御部
113 音声出力処理部
121 一対のCCDカメラ
123 モニタ
125 スピーカ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
跳ね上げ式のテールゲートを有する車両の後方領域に基づく情報から当該後方領域の空間座標を導出する後方領域空間座標導出部と、
前記後方領域に存在する障害物の位置を空間座標上で検出する障害物検出部と、
前記障害物検出部が検出した障害物の位置と前記テールゲートがその開閉時に通過するテールゲート開閉領域を空間座標上で比較して、3次元空間における前記障害物と前記テールゲート開閉領域とが最も近接した最近接距離を算出する最近接距離算出部と、
前記最近接距離に関する情報を出力するよう処理する出力処理部と、
を備えたことを特徴とする運転支援情報提供装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援情報提供装置であって、
前記出力処理部は、前記最近接距離を示す数値をモニタに表示するよう処理することを特徴とする運転支援情報提供装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の運転支援情報提供装置であって、
前記車両の後方領域に基づく情報は、一対のカメラが撮影した各映像を合成した映像情報であることを特徴とする運転支援情報提供装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の運転支援情報提供装置であって、
前記最近接距離は、前記車両の進行方向を軸線としたときの、当該軸線上の距離であることを特徴とする運転支援情報提供装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の運転支援情報提供装置であって、
前記出力処理部は、前記最近接距離が所定値以下のとき、前記障害物の接近を報知する音声をスピーカが出力するよう処理することを特徴とする運転支援情報提供装置。
【請求項1】
跳ね上げ式のテールゲートを有する車両の後方領域に基づく情報から当該後方領域の空間座標を導出する後方領域空間座標導出部と、
前記後方領域に存在する障害物の位置を空間座標上で検出する障害物検出部と、
前記障害物検出部が検出した障害物の位置と前記テールゲートがその開閉時に通過するテールゲート開閉領域を空間座標上で比較して、3次元空間における前記障害物と前記テールゲート開閉領域とが最も近接した最近接距離を算出する最近接距離算出部と、
前記最近接距離に関する情報を出力するよう処理する出力処理部と、
を備えたことを特徴とする運転支援情報提供装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援情報提供装置であって、
前記出力処理部は、前記最近接距離を示す数値をモニタに表示するよう処理することを特徴とする運転支援情報提供装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の運転支援情報提供装置であって、
前記車両の後方領域に基づく情報は、一対のカメラが撮影した各映像を合成した映像情報であることを特徴とする運転支援情報提供装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の運転支援情報提供装置であって、
前記最近接距離は、前記車両の進行方向を軸線としたときの、当該軸線上の距離であることを特徴とする運転支援情報提供装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の運転支援情報提供装置であって、
前記出力処理部は、前記最近接距離が所定値以下のとき、前記障害物の接近を報知する音声をスピーカが出力するよう処理することを特徴とする運転支援情報提供装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−165138(P2012−165138A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23172(P2011−23172)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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