説明

運転支援装置

【課題】 車両間の情報伝達に関してサンキュー事故の防止に寄与することが可能な運転支援装置を提供することができる。
【解決手段】 本発明に係る運転支援装置は、直進車両である第1の優先車両に対向する車線の右折車両である非優先車両に対して、第1の優先車両から進行許可の意思を伝達する意思伝達手段を備える運転支援装置において、非優先車両の進路と進路が交差する第2の優先車両を検出する検出手段と、意思伝達手段が非優先車両に進行許可の意志を伝達することを禁止する禁止手段とを備える。この運転支援装置によれば、第1の優先車両の運転者が進行許可の意思伝達を入力しても、非優先車両と進路が交差する第2の優先車両が存在する場合には、進行許可の意思伝達を禁止するため、非優先車両と第2の優先車両とによるサンキュー事故の防止に寄与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他車両に対して進行許可の意思を伝達する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車々間通信等を用いて、自車両と他車両との情報伝達を行う運転支援装置が知られている(たとえば、特許文献1)。特許文献1に記載の運転支援装置は、自車両が直進車両であり、対向車線に自車両の進路と進路が交差する右折車両が存在する場合に、運転者が所定の操作をすることで右折車両に進行許可のメッセージを伝達するものである。
【特許文献1】特開2007−148524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載の運転支援装置においては、自車両以外に対向車線の右折車両の進路と進路が交差する第2の直進車両が存在する場合にも、進行許可のメッセージの伝達を実行する。その結果、メッセージを受け取った右折車両が第2の直進車両前方へ進行し、右折車両と第2の直進車両とが接触するいわゆるサンキュー事故を招く可能性があった。
【0004】
特に、第2の直進車両が自車両の後側方を走行中であり、右折車両の死角に位置する場合に、自車両から右折車両に進行許可のメッセージを伝達すると、サンキュー事故を招く可能性が高まる。
【0005】
そこで、本発明の課題は、車両間の情報伝達に関してサンキュー事故の防止に寄与することができる運転支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運転支援装置は、直進車両である第1の優先車両に対向する車線の右折車両であり、第1の優先車両の進路と進路が交差する非優先車両に対して、第1の優先車両から進行許可の意思を伝達する意思伝達手段を備える運転支援装置において、
非優先車両の進路と進路が交差する第2の優先車両を検出する検出手段と、検出手段が第2の優先車両を検出した場合に、意思伝達手段が非優先車両に進行許可の意志を伝達することを禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る運転支援装置においては、第1の優先車両の運転者が進行許可の意思伝達を入力しても、非優先車両と進路が交差する第2の優先車両が存在する場合には、進行許可の意思伝達を禁止する。その結果、第2の優先車両が存在する場合には進行許可の意思伝達は実行されないため、非優先車両と第2の優先車両とによるサンキュー事故の防止に寄与することができる。
【0008】
また、第2の優先車両は、非優先車両の死角領域に存在する車両である態様とすることができる。非優先車両の運転者の視界に入らない領域である死角領域に第2の優先車両が存在する場合に、第1の優先車両から進行許可の意思伝達を行うと、非優先車両の運転者が第2の優先車両の存在を認識できずに進行する可能性が高くなる。その結果、第1の優先車両の行う進行許可の意思伝達が、非優先車両と第2の優先車両とによるサンキュー事故を招いてしまう可能性が高い。そこで、第2の優先車両が非優先車両の死角領域に存在する場合に、進行許可の意思伝達を禁止することで、非優先車両と第2の優先車両とによるサンキュー事故の防止に効果的に寄与することができる。
【0009】
また、意思伝達手段は、進行許可の意思の伝達としてのパッシングの実施を行うヘッドライトであり、禁止手段は、検出手段が第2の優先車両を検出した場合にヘッドライトによるパッシングの実施を禁止する態様とすることができる。対向車線の右折車両に対するパッシングの実施には、慣習として、進行許可の意思伝達という意味がある。そこで、運転支援装置は、運転者が対向車線の右折車両に対するパッシングの操作をしても、第2の優先車両が存在する場合にはパッシングの実施を禁止する。その結果、運転支援装置は、慣習に対応してサンキュー事故の防止に効果的に寄与することができる。
【0010】
また、第1の優先車両と第1の優先車両の後方に位置する後方車両との通信を行う車々間通信手段をさらに備え、検出手段は、車々間通信手段の通信結果に基づいて、第2の優先車両を検出する態様とすることができる。第1の優先車両は、第2の優先車両を含む他車両を検出するための他車両センサを搭載しているが、この他車両センサは、後方車両等の障害物によって検出範囲を制限される場合がある。そこで、運転支援装置は、第1の優先車両と後方車両との車々間通信によって、後方車両における他車両センサの検出結果を取得する。検出手段は、後方車両による他車両センサの検出結果に基づき、第2の優先車両の検出を行うことで、より確実に第2の優先車両の検出を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両間の情報伝達に関してサンキュー事故の防止に寄与することが可能な運転支援装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の運転支援装置に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明においては、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
本実施形態に係る発明は、運転者の意思に応じて、自車両から他車両に対して進行許可の意思を伝達する運転支援装置であり、所定の禁止条件が成立する場合には、自車両による進行許可の意志の伝達を禁止するものである。なお、進行許可の意思の伝達は、自車両のヘッドライトによるパッシングの実施によって行われる。
【0014】
図1は、本実施形態に係る運転支援装置のブロック図である。図1に示すように、本発明に係る運転支援装置は、運転支援の制御を行う運転支援ECU5を備えている。運転支援ECU5には、パッシングセンサ1、レーダセンサ2、路車間通信部3、車々間通信部4、および運転支援出力部6が電気的に接続されている。
【0015】
パッシングセンサ1は、車両の方向指示器レバーに設けられており、運転者によるパッシング操作を検出する。パッシングセンサ1は、パッシング操作を検出した場合、パッシング信号を運転支援ECU5に送信する。レーダセンサ2は、車両外部に設けられており、自車両周囲に存在する他車両の位置を検出する。レーダセンサ2は、検出した他車両の位置を他車両信号として運転支援ECU5に送信する。
【0016】
路車間通信部3は、道路に設けられた路側送受信機との路車間通信を行う。路車間通信部3は、路車間通信によって自車両の位置情報や自車両周辺の信号機に関する信号機情報を取得すると共に、取得した自車両の位置情報および信号機情報を含む周辺状況情報を運転支援ECU5に送信する。
【0017】
車々間通信部4は、車々間通信機能を有する車両である通信車両のうち自車両周辺に位置する車両との間で車々間通信を行う。車々間通信部4は、通信車両との車々間通信によって、通信車両周辺に存在する他車両の位置に関する情報を通信車両情報として取得すると共に、取得した通信車両情報を運転支援ECU5に送信する。
【0018】
運転支援ECU5は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)、記憶部となるROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などにより構成されている。
【0019】
運転支援ECU5は、パッシングセンサ1から送信されたパッシング信号に応じて、パッシングを実施するためのパッシング実施信号を運転支援出力部6に送信するものである。この運転支援ECU5は、路車間通信部3から送信された周辺状況情報、レーダセンサ2から送信された他車両信号、および車々間通信部4から送信された後方他車両情報に基づいて、所定の禁止条件が成立するか否かを判定する。所定の禁止条件としては、自車両前方の信号機が青色状態ではないことおよび自車両背後の通信車両または自車両の左側方において他車両を検出することが規定されている。運転支援ECU5は、禁止条件が成立すると判定した場合には、パッシング実施信号を送信せずに、パッシングを禁止するためのパッシング禁止信号を運転支援出力部6に送信する。
【0020】
運転支援出力部6は、運転支援を実行するものであり、運転者に対して音声や画像によって情報を伝達する情報伝達手段と自車両のヘッドライトとを備えている。運転支援出力部6は、運転支援ECU5からパッシング実施信号を送信された場合、自車両のヘッドライトによってパッシングを実施する。また、運転支援ECU5からパッシング禁止信号を送信された場合、パッシングを実施せず、情報伝達手段によって運転者にパッシングを禁止したことを伝達する。
【0021】
以上の構成を有する運転支援装置の工程について、図面を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る運転支援装置の工程を示すフローチャートである。また、図3は、本実施形態に係る運転支援装置を有する自車両と他車両との関係の一例を示す説明図である。
【0022】
まず、運転支援ECU5は、パッシングセンサ1から送信されたパッシング信号に基づいて、運転者のパッシング操作を認識する(S1)。このとき、図3に示す例では、直進車両である自車両A(第1の優先車両)は、自車両Aに先行する先行車両Dが進行しないため、信号機Sが青色状態の交差点入り口において停車している。この自車両Aの後方には、車々間通信機能を有する後方車両C(後方車両)が停車しており、自車両Aと対向する車線には、自車両Aの進路と進路が交差する右折車両B(非優先車両)が右折待ちをしている。また、自車両Aが停車中の車線は単車線であり、この車線の幅方向において、自車両A左側の路肩と自車両Aとの間には、二輪車両が通行可能な間隔wが存在する。
【0023】
この図3に例示する状況において、自車両Aから対向車線の右折車両Bに対してパッシングを実施することは、慣習として、右折車両Bに対する進行許可の意思伝達という意味を持っている。そこで、運転支援ECU5は、運転者が右折車両Bに対するパッシングの操作を認識することにより、慣習に対応して、運転支援を行うことができる。
【0024】
次に、運転支援ECU5は、路車間通信部3から送信された信号機情報に基づいて、自車両前方の信号機Sが青色状態であるか否かを判定する(S2)。信号機Sが青色状態ではなく黄色状態または赤色状態である場合は、停車中の自車両Aは交差点に進入しないので、進行許可の意思伝達を行う必要はない。そこで、運転支援ECU5は、信号機Sが青色状態ではないと判定した場合には、パッシングを禁止するため、ステップS7のパッシング禁止処理へ移行する。
【0025】
運転支援ECU5は、信号機Sが青色状態であると判定した場合には、レーダセンサ2から送信された他車両信号に基づき、自車両Aの左側方に、右折車両Bの進路と進路が交差する他車両である二輪車両X(第2の優先車両)を検出したか否かを判定する(S3)。運転支援ECU5は、自車両の左側方に二輪車両Xを検出したと判定した場合には、ステップS7のパッシング禁止処理へ移行する。
【0026】
運転支援ECU5は、自車両Aの左側方に二輪車両Xを検出していないと判定した場合には、レーダセンサ2から送信された他車両信号に基づいて、自車両Aの後方に位置する後方車両Cを検出したか否かを判定する(S4)。運転支援ECU5は、後方車両Cを検出していないと判定した場合には、パッシングを実施するため、ステップS6のパッシング実施処理へ移行する。
【0027】
運転支援ECU5は、後方車両Cを検出したと判定した場合には、車々間通信部4から送信された通信車両情報に基づいて、後方車両Cの左側方に二輪車両Xを検出したか否かを判定する(S5)。運転支援ECU5は、後方車両Cの左側方に二輪車両Xを検出したと判定した場合には、ステップS6のパッシング実施処理へ移行し、後方車両Cの左側方に二輪車両Xを検出していないと判定した場合には、ステップS7のパッシング禁止処理へ移行する。
【0028】
ステップS6において、運転支援ECU5は、パッシング実施処理として運転支援出力部6にパッシング実施信号を送信する。パッシング実施信号を送信された運転支援出力部6は、自車両Aのヘッドライトによってパッシングを実施する。
【0029】
ステップS7において、運転支援ECU5は、パッシング禁止処理として運転支援出力部6にパッシング禁止信号を送信する。パッシング禁止信号を送信された運転支援出力部6は、パッシングを実施せず、情報伝達手段によって運転者にパッシングを禁止したことを伝達する。
【0030】
このように、本実施形態に係る運転支援装置によれば、図4(a)に示すように、右折車両Bの進路と進路が交差する二輪車両Xが検出されない場合に、運転者のパッシング操作に応じて自車両Aのヘッドライトによるパッシングを実施することができる。このときには、自車両Aおよび後方車両Cの左側方に二輪車両Xは存在しない。したがって、自車両Aのパッシングに応じて右折車両Bが進行した際に、二輪車両Xが交差点に進入して来る可能性を低くすることができる。このように、運転支援装置は、自車両Aのパッシングに応じて右折車両Bが進行した場合に、二輪車両Xが交差点に進入して来る可能性を低くすることにより、右折車両Bと二輪車両Xとによるサンキュー事故の防止に寄与することができる。
【0031】
一方、図4(b)に示すように、右折車両Bの進路と進路が交差する二輪車両Xが検出された場合に、自車両Aのヘッドライトによるパッシングの実施を禁止することができる。図4(a)に示す状況において、自車両Aが右折車両Bに対してパッシングを実施してしまうと、パッシングを受けた右折車両Bが周辺他車両への十分な注意を払わずに進行する場合がある。その結果、自車両Aに検出された二輪車両Xとパッシングを受けた右折車両Bとが接触するいわゆるサンキュー事故が起こる可能性がある。そこで、運転支援装置は、二輪車両Xが検出された場合に自車両Aのパッシングの実施を禁止することにより、右折車両Bの不注意な進行を招くことなく、右折車両Bと二輪車両Xとによるサンキュー事故の防止に寄与することができる。
【0032】
また、本実施形態に係る運転支援装置は、後方車両Cとの車々間通信を行い、車々間通信の通信結果である通信他車両情報に基づいて、二輪車両Xを検出したか否かを判定する。このため、運転支援装置は、自車両Aによる検出結果に加えて後方車両Cによる検出結果に基づいて二輪車両Xの検出を行うことができるので、より確実に二輪車両Xの検出を行うことができる。
【0033】
さらに、本実施形態に係る運転支援装置は、自車両Aの左側方または後方車両Cの左側方に存在する二輪車両Xを検出する。二輪車両Xが自車両Aの左側方または後方車両Cの左側方に存在する場合には、二輪車両Xが右折車両Bの運転者の視界に入らない領域である死角領域に位置している可能性が高い。そこで、二輪車両Xが自車両Aの左側方または後方車両Cの左側方に存在する場合に、右折車両Bに対する進行許可の意思伝達を禁止することにより、右折車両Bと二輪車両Xとによるサンキュー事故の防止に効果的に寄与することができる。
【0034】
次に、本発明の応用例について説明する。この応用例に係る運転支援装置は、上記実施形態に係る運転支援装置において、図4(a)に示すように自車両Aのパッシングを実施した後、さらに右折車両Bの進路と進路が交差する他車両である二輪車両Xの検出を行い、二輪車両Xが検出された場合に右折車両Bに関する情報を二輪車両Xに対して送信するものである。
【0035】
この応用例における運転支援ECU5は、パッシング実施信号を送信した後に、レーダセンサ2から送信された進路交差車両信号および車々間通信部4から送信された後方進路交差車両情報に基づいて、二輪車両Xの検出を行う。運転支援ECU5は、二輪車両Xを検出していないと判定した場合には、路車間通信部3から送信された周辺状況情報およびレーダセンサ2から送信された他車両信号に基づき、所定の繰り返し条件が成立するか否かを判断する。所定の繰り返し条件としては、自車両前方の信号機Sが青色状態であることおよび右折車両Bが交差点を通り抜けていないことが規定されている。運転支援ECU5は、繰り返し条件が成立しないと判断した場合には、再び二輪車両Xの検出を繰り返す。
【0036】
また、運転支援ECU5は、二輪車両Xを検出したと判定した場合には、車々間通信部4に車両情報信号を送信する。車両情報信号を送信された車々間通信部4は、自車両Aが右折車両Bに対してパッシングを実施したことおよび右折車両Bに関する情報を右折車両情報として二輪車両Xに送信する。
【0037】
続いて、応用例における運転支援装置の工程について、図面を参照して説明する。図5は、応用例における運転支援装置の工程を示すフローチャートである。なお、図5におけるステップS1〜ステップS7は上記実施形態と同一の工程であり、説明を省略する。
【0038】
ステップS6においてパッシング実施処理を行った後、運転支援ECU5は、レーダセンサ2から送信された進路交差車両信号に基づいて、自車両の左側方に右折車両Bの進路と進路が交差する他車両である二輪車両Xを検出したか否かを判定する(S8)。運転支援ECU5は、二輪車両Xを検出したと判定した場合には、二輪車両Xに右折車両情報を送信するため、ステップS12の情報送信処理へと移行する。
【0039】
運転支援ECU5は、二輪車両Xを検出していないと判定した場合には、レーダセンサ2から送信された他車両信号に基づいて、自車両Aの後方に位置する後方車両Cを検出したか否かを判定する(S9)。運転支援ECU5は、後方車両Cを検出していないと判定した場合には、所定の繰り返し条件が成立するか否かを判断するため、ステップS11の条件判断処理へと移行する。
【0040】
運転支援ECU5は、後方車両Cを検出したと判定した場合には、車々間通信部4から送信された後方他車両情報に基づいて、後方車両Cの左側方に二輪車両Xを検出したか否かを判定する(S10)。運転支援ECU5は、後方車両Cの左側方に二輪車両Xを検出したと判定した場合には、ステップS12の車両情報送信処理へと移行する。また、運転支援ECU5は、後方車両Cの左側方に二輪車両Xを検出していないと判定した場合には、ステップS11の条件判断処理へと移行する。
【0041】
ステップS11において、運転支援ECU5は、条件判断処理として、路車間通信部3から送信された周辺状況情報に基づいて信号機Sが青色状態であるか否かを判定すると共に、レーダセンサ2から送信された他車両信号に基づいて右折車両Bが交差点を通り抜けたか否かを判定する。
【0042】
このとき、信号機Sが青色状態ではなく黄色状態または赤色状態である場合には、二輪車両Xは、信号機Sの表示に従って交差点に進入せずに停車する。このため、二輪車両Xと右折車両Bとが接触する可能性は低いので、信号機Sが青色状態ではない場合に右折車両情報を二輪車両Xに送信する必要はない。同様に、右折車両Bが交差点を通り抜けた場合には、これから交差点に進入する二輪車両Xと右折車両Bとが接触する可能性はほとんどない。このため、右折車両Bが交差点を通り抜けた場合には、右折車両情報を二輪車両Xに送信する必要はない。そこで、運転支援ECU5は、信号機Sが青色状態ではないと判定した場合、または、右折車両Bが交差点を通り抜けたと判定した場合には、繰り返し条件が成立しないと判断して処理を終了する。一方、運転支援ECU5は、信号機Sが青色状態であり、かつ、右折車両Bが交差点を通り抜けていないと判定した場合には、繰り返し条件が成立したと判断してステップS8に戻り、工程を繰り返す。
【0043】
ステップS12において、運転支援ECU5は、情報送信処理として車々間通信部4に車両情報信号を送信する。車々間通信部4は、車両情報信号を送信された場合、右折車両情報を二輪車両Xに送信する。
【0044】
続いて、自車両Aから右折車両情報を送信された二輪車両Xについて説明を行う。
【0045】
二輪車両Xは、音声や警告音を発するスピーカと、スピーカによって二輪車両Xの運転者に注意喚起を行う運転支援システムとを備えている。この運転支援システムは、車々間通信機能を有し、車々間通信などにより二輪車両X周辺の他車両を認識する。運転支援システムは、認識した他車両の進行方向や速度などに基づいて、所定のプログラムにより、他車両と二輪車両Xとが接触する危険性を危険レベルとして設定する。運転支援システムは、設定した危険レベルが所定のしきい値以上である他車両に関して運転者に注意喚起を行う。
【0046】
この運転支援システムの工程について、図面を参照して説明する。図6は、運転支援システムの工程を示すフローチャートである。
【0047】
まず、運転支援システムは、自車両Aから送信された右折車両情報を受信する(S20)。運転支援システムは、自車両Aから送信された右折車両情報に基づいて、右折車両Bの危険レベルを最大に設定する(S21)。運転支援システムは、危険レベルが最大に設定された右折車両Bに関して二輪車両Xの運転者に注意喚起を行う(S22)。
【0048】
このように、応用例における運転支援装置によれば、図7に示すように、パッシング実施後に、二輪車両Xが検出された場合において、右折車両情報を二輪車両Xに送信することができる。そして、二輪車両Xに搭載された運転支援システムが、二輪車両Xの運転者に対して右折車両Bに関する注意喚起を行うことにより、二輪車両Xの運転者は、右折車両Bに気づきやすくなる。その結果、二輪車両Xが右折車両Bに気づかずに交差点に進入して、右折車両Bと接触する可能性を低くすることができる。このようにして、運転支援装置は、パッシングを実施した後に検出された二輪車両Xに対して右折車両情報を送信することにより、二輪車両Xと右折車両Bとのサンキュー事故防止に寄与することができる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、本実施形態においては、進行許可の意思伝達としてヘッドライトによるパッシングの実施を行ったが、右折車両Bが車々間通信機能を有する場合には、進行許可の意思伝達を車々間通信によって行ってもよい。進行許可の意思伝達を車々間通信により行うことで、自車両Aからの進行許可の意思を右折車両Bにより確実に伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態に係る運転支援装置のブロック図である。
【図2】本実施形態に係る運転支援装置の工程を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態に係る運転支援装置を有する自車両と他車両との関係の一例を示す説明図である。
【図4】(a)図3において二輪車両が検出されない状況を示す説明図である。(b)図3において二輪車両が検出された状況を示す説明図である。
【図5】応用例における運転支援装置の工程を示すフローチャートである。
【図6】運転支援システムの工程を示すフローチャートである。
【図7】応用例におけるパッシング実施後の自車両と他車両との関係の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1…パッシングセンサ、2…レーダセンサ、3…路車間通信部、4…車々間通信部、5…運転支援ECU(検出手段、禁止手段)、6…運転支援出力部(意思伝達手段)、A…自車両(第1の優先車両)、B…右折車両(非優先車両)、C…後方車両、D…先行車両、X…二輪車両(第2の優先車両)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直進車両である第1の優先車両に対向する車線の右折車両であり、前記第1の優先車両の進路と進路が交差する非優先車両に対して、前記第1の優先車両から進行許可の意思を伝達する意思伝達手段を備える運転支援装置において、
前記非優先車両の進路と進路が交差する第2の優先車両を検出する検出手段と、前記検出手段が前記第2の優先車両を検出した場合に、前記意思伝達手段が前記非優先車両に進行許可の意志を伝達することを禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記第2の優先車両は、前記非優先車両の死角領域に存在する車両である請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記意思伝達手段は、進行許可の意思の伝達としてのパッシングの実施を行うヘッドライトであり、前記禁止手段は、前記検出手段が前記第2の優先車両を検出した場合に前記ヘッドライトによる前記パッシングの実施を禁止する請求項1または2記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記第1の優先車両と前記第1の優先車両の後方に位置する後方車両との通信を行う車々間通信手段をさらに備え、
前記検出手段は、前記車々間通信手段の通信結果に基づいて、前記第2の優先車両を検出する請求項1〜3記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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