説明

運転者状態検出システム及び運転者状態検出方法

【課題】適切な運転者状態判定しきい値を用いて運転者の異常運転を正確に特定する。
【解決手段】車両のヨーレイトを検出し(S1)、検出されたヨーレイトの実測値の増減が反転する反転ポイントを特定し(S3)、特定された2つの反転ポイントを結ぶ線分から決まる所定時間毎のヨーレートを演算し(S4)、演算された所定時間毎のヨーレートとヨーレイトの実測値との偏差を演算し(S5、S6)、偏差を運転者状態判定しきい値と比較して運転者の状態が異常であるか否かを判断し(S22、S8、S9)、車両の挙動及び運転者による運転操作の少なくとも一方に応じて運転者状態判定しきい値を可変設定する(S21)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者状態検出システム及び運転者状態検出方法に関し、特に、車両のヨーレイトに基づいて運転者の状態が異常であるか否かを検出するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の特徴の観察、運転能力及び運転行為のみならず、移動中の車両の観察から運転者の異常を判定することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−57016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの技術は、判定レベルを高くすると過敏になり、通常の運転者の特徴を、異常運転状態の運転者と判断してしまったり、或いはこれと逆に判定レベルを低くすると異常運転を充分検出できなくなる可能性がある。したがって、運転者の異常運転をより正確に特定する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの従来の技術に鑑みて、本発明は、第1の態様として、車両のヨーレイトを検出するヨーレイト検出器と、検出されたヨーレイトから運転者の状態が異常であるか否かを判断する制御部とを有する運転者状態検出システムに関する。制御部は、検出されたヨーレイトの実測値の増減が反転する反転ポイントを特定する特定手段と、特定された2つの反転ポイントを結ぶ線分から決まる所定時間毎のヨーレートを演算する手段と、演算された所定時間毎のヨーレートとヨーレイト実測値との偏差を演算する偏差演算手段と、偏差を運転者状態判定しきい値と比較して運転者の状態が異常であるか否かを判断する異常判定手段と、車両の挙動及び運転者による運転操作の少なくとも一方に応じて運転者状態判定しきい値を可変設定する閾値可変設定手段とを備える。
【0006】
本願発明は、第2の態様として、運転者状態検出方法に関する。この運転者状態検出方法は、車両のヨーレイトを検出し、検出されたヨーレイトの実測値の増減が反転する反転ポイントを特定し、特定された2つの反転ポイントを結ぶ線分から決まる所定時間毎のヨーレートを演算し、演算された所定時間毎のヨーレートとヨーレイト実測値との偏差を演算し、偏差を運転者状態判定しきい値と比較して運転者の状態が異常であるか否かを判断し、車両の挙動及び運転者による運転操作の少なくとも一方に応じて運転者状態判定しきい値を可変設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、適切な運転者状態判定しきい値を用いて、運転者の異常運転を正確に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係わる運転者状態検出システムを備える車両を上方から見た時の概念的な平面図である。
【図2】図2(a)は、運転者の状態を判断するための検出期間における車両のヨーレイトの実測値の一例(異常運転状態)を示すグラフであり、図2(b)は、図2(a)に示したヨーレイトの実測値とヨーレイトの線形変化率との時間差を示すグラフである。
【図3】図3は、図2(a)のグラフの一部(F4)を拡大して詳細に示すグラフであり、ヨーレイトの実測値における極大値18−1〜18−3と極小値20−1〜20−3をより明確に特定する。
【図4】図4は、図3のグラフにおいて決定される、時間軸上で連続する1つの極大値と1つの極小値を結ぶ線分からなるヨーレイトの線形変化率22−1〜22−5を例示するグラフである。
【図5】図5は、図4のグラフにおいて決定される、ヨーレイトの実測値とヨーレイトの線形変化率との時間差の最大値を例示するグラフである。
【図6】図6は、図1の運転者状態検出システムが備える制御部14により実行される、運転者の状態を判断する手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、図6のステップS21において参照される、ヨーレイトと時間差しきい値との対応関係の一例を示すグラフである。
【図8】図8は、図6のステップS21において参照される、横加速度と時間差しきい値との対応関係の一例を示すグラフである。
【図9】図9は、図6のステップS21において参照される、車速と時間差しきい値との対応関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下に示す実施形態の記載は、特許請求の範囲の記載により特定される発明及び均等の範囲を限定する目的とするものではない。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係わる運転者状態検出システム10を装備する自動車などの車両HVの一例を示す。ここでは自動車を図示したが、「車両」という用語には、あらゆるタイプの車両、例えば、トラック、オートバイ、その他の1又は2以上の車輪を有する陸上の車両、ボードその他の水上車両、飛行機、ヘリコプターその他の航空車両、機械その他の産業用装置、スノーモービルその他のウィンタースポーツ車両などが含まれる。運転者状態検出システム10は、車両外において処理する状況、データ発掘用途に適用することができる。ここでは、サーバ(以下に述べるサーバ39)に蓄積されたセンサデータは、記録されてから長時間が経過した後に処理される。図1において、X軸は車両HVの長さ方向(走行方向)に相当し、Y軸は車両HVの幅方向に相当し、Z軸は車両HVの垂直方向に相当する。
【0011】
車両HVは、車速を検出する速度検出器及び、車両HVに加わる横加速度を検出する横加速度検出器を備える。速度検出器及び横加速度検出器としては、一般的に知られているものを使用することができる。また、車両HVは、方向指示器、ライトスイッチ、ナビゲーション装置、空調設備、シートポジションを調整する装置、及びシフトレバーなど、運転者による運転操作の対象となるものを備える。
【0012】
運転者状態検出システム10は、少なくとも1つのヨーレイト検出器12と制御部14とを備える。ヨーレイト検出器12は、水晶変換器、半導体装置、ジャイロスコープのような一般的なヨーレイト検出器であって、垂直軸(Z軸)周りの車両HVの回転速度を測定する。或いは、全地球測位システム(GPS)を車両HVのヨーレイトを検出するために使用することができ、ヨーレイト検出器として採用することができる。もちろん、車輪の速度を検出する車速検出器を車両HVのヨーレイトを検出するために使用することもできる。しかし、複数のヨーレイト検出器12を配置する場合又は異なるタイプのヨーレイト検出器を用いる場合の各ヨーレイト検出器12に、上記したヨーレイト検出器12の位置及び特徴を適用することは可能である。
【0013】
ヨーレイト検出器12は、制御部14に電気的に組み合わされ、車両HVに生じるヨーレイトを表す信号を制御部14へ供給する。ヨーレイト検出器12は、例えば車両HVの重心(CG)の近くを含む、車両HVの複数の箇所に配置することができる。実施形態では、後部座席近くのトランクの中に配置されている。ヨーレイト検出器12は、車両HVの長さ方向の中心軸(CL)の近くに配置されることが望ましい。剛体力学の標準的な計算が制御部14により実行され、制御部14は、ヨーレイト検出器12から出力されたヨーレイトを車両の重心CGにおけるヨーレイトに変換することが望ましい。もちろん、ヨーレイト検出器12は垂直軸(Z軸)に沿った車両HVのの回転を測定するため、ヨーレイト検出器12は車両HVが属するX−Y平面に対して、傾斜していない、或いは実質的に傾斜していない。
【0014】
制御部14は、制御プログラムがインストールされたマイクロコンピュータを含むことが望ましい。制御プログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、以下に示すように、運転者の異常運転状態を突き止めるために、所定の検出期間においてヨーレイトを監視し、ヨーレイトの先行状態(LEAD状態)及び遅滞状態(LAG状態)を決定する。運転者の異常運転状態には、アルコール或いは薬物によって運転者が酩酊した状態、運転者の疲労、病気、注意散漫、その他、運転者が車両運転能力に悪影響を与える生理学的、生物学的、或いは科学的な状態が含まれる。
【0015】
制御部14は、入力インターフェース回路、出力インターフェース回路、及び制御プログラムや処理実行結果を蓄積する、ROM(読み出し専用メモリ)及びRAM(ランダムアクセスメモリ)を含むデータ蓄積装置を含む一般的なマイクロコンピュータにより構成される。例えば、制御部14の内部RAMは、制御フラグの状態や様々な制御データを蓄積し、様々な制御動作の制御プログラムを蓄積している。制御部14は、一般的な方法で下記の構成要素と結合し、制御プラグラムにしたがってあらゆる構成要素を選択的に制御することができる。本発明の実施形態を実行するための様々なハードウェアとソフトウェアの組合せを、制御部14の詳細な構造やアルゴリズムに適用できることは本明細書の開示から明らかである。
【0016】
本発明の実施形態では、後で述べるように、車両HVの運転者の状態が異常であるか否かを判断するために、所定の検出期間におけるヨーレイトの変化を監視する。図6の例示的なフローチャートに示すように、ステップS1において、ヨーレイト検出器12は、車両のヨーレイトを検出し、制御部14は、検出期間における車両のヨーレイトの実測値を示す信号をヨーレイト検出器12から受信する。図2(a)は、検出されたヨーレイトの実測値(以後、「ヨーレイトカーブ16」という)を例示するグラフであり、この例ではおよそ80秒間継続する検出期間におけるヨーレイトカーブ16を示している。図2(a)の縦軸はヨーレイトの実測値を示し、図2(b)の縦軸は時間差を示し、図2(a)及び図2(b)の横軸は時間(秒)を示す。また、ヨーレイトには、車両HVの左側方向へのヨーレイトを表す左ヨーレイト要素と、車両HVの右側方向へのヨーレイトを表す右ヨーレイト要素とが含まれる。図2(a)においては、左側方向へのヨーレイトを正の値で示し、右側方向へのヨーレイトを負の値で示す。
【0017】
次に、ステップS2において、制御部14は、所望のサンプリングレートにて、ヨーレイトカーブ16をサンプリングする。本発明の実施形態では、サンプリングレートは10Hz(すなわち毎秒10回のサンプリング)である。しかし、サンプリングレートは、当業者が理解する適切な値を可変に設定することができる。さらに、制御部14は、ヨーレイト検出器12からヨーレイトを示す信号を受信した時或いはその近傍において、ヨーレイトカーブ16をサンプリングしてもよい。或いは、制御部14は、ヨーレイトの信号を蓄積してから所定の時間が経過した後に、ヨーレイトカーブ16をサンプリングしてもよい。
【0018】
本発明の実施形態において、制御部14は、移動平均或いはローパスフィルターのような一般的な平滑化アルゴリズムをヨーレイトカーブ16に適用する。この平滑化により、数秒、数分の一秒程度の小さな遅延が生じる。しかし、この遅延時間よりも長い検出期間(例えば80秒)にわたってヨーレイトの実測値を検出するため、このわずかな遅延時間は、運転者の状態の判断精度を下げる要因とはならない。
【0019】
ヨーレイトカーブ16に対して平滑化処理が施された後、ステップS3において、制御部14は、検出されたヨーレイトカーブ16の増減が反転する反転ポイントを特定する(特定手段)。具体的には、制御部14は、ステップS3において、ヨーレイトカーブ16における極大値及び極小値に相当する反転ポイントを特定する。図3には、図2(a)のヨーレイトカーブ16の一部F4を拡大して示す。ヨーレイトカーブ16の一部F4において、極大値18−1、18−2、18−3、極小値20−1、20−2、20−3を特定することができる。2つの最小値の間の最大値は「極大値」であり、2つの最大値の間の最小値は「極小値」である。
【0020】
制御部14は、一般的に方法を用いて、ヨーレイトカーブ16における極大値及び極小値を特定する。本発明の実施形態では、一般的な数学上のアルゴリズムを用いて、極大値及び極小値を特定する。具体的には、ヨーレイトカーブ16において、連続する複数のサンプリングポイントのうち、接線の傾きの符号が反転する時のサンプリングポイントを極大値又は極小値として特定する。
【0021】
複数の極大値及び複数の極小値を特定すると、制御部14は、ステップS4において、例えば図4に示すように、特定された2つの反転ポイントを結ぶ線分から決まる所定時間毎のヨーレートを演算する(所定時間毎のヨーレートを演算する手段)。詳細には、時間軸上で連続する1つの極大値と1つの極小値を結ぶ線分からなるヨーレイトの線形変化率を演算する。例えば、制御部14は、極小値20−1及び極大値18−1を結ぶ線分からなるヨーレイトの線形変化率22−1を演算する。同様に、制御部14は、極大値18−1及び極小値20−2の間、極小値20−2及び極大値18−2の間、極大値18−2及び極小値20−3の間、極小値20−3及び極大値18−3の間をそれぞれ結ぶ線分からなるヨーレイトの線形変化率22−2、22−3、22−4、22−5を演算する。図2(a)には明示しないが、検出期間全体にわたって、連続する極大値及び極小値の間をそれぞれ結ぶ線分からなるヨーレイトの線形変化率を求めることができることは明らかである。
【0022】
次に、制御部14は、演算されたヨーレイトの線形変化率とヨーレイト実測値との偏差を演算する(偏差演算手段)。先ず、制御部14は、ステップS5において、極大値及び極小値の間においてヨーレイトカーブ16が測定される時刻と、極大値及び極小値の間においてヨーレイトの線形変化率が生じであろう時刻とを対比する。
【0023】
例えば、図5に示すように、制御部14は、反転ポイントを境にしてヨーレイトカーブ16を区画し、その1つの区画16−1における総てのサンプリングポイントと、ヨーレイトの線形変化率22−1を構成する計算値との間の時間差を見積もる。同様に、制御部14は、ヨーレイトカーブ16の各区間16−2、16−3、16−4、16−5における総てのサンプリングポイントと、ヨーレイトの線形変化率22−2、22−3、22−4、22−5を構成する計算値との間の時間差を見積もる。図2(a)には明示しないが、極大値及び極小値の間におけるヨーレイトカーブ16のサンプリングポイントと極大値及び極小値の間におけるヨーレイトの線形変化率との比較は、検出期間全体にわたって実施されることは明らかである。
【0024】
本発明の実施形態では、この時間差を計算することにより上記した比較を実施する。ここで、「時間差」とは、ヨーレイトカーブ16(ヨーレイトの実測値)とヨーレイトの線形変化率が同じ値となる時刻の差を示す。制御部14は、各サンプリング時刻(すなわち10Hzサンプリング周波数)におけるヨーレイトカーブ16の値と、各サンプリング時刻に対応するヨーレイトの線形変化率の値との間の時間差を計算する。例えば、制御部14は、ヨーレイトカーブ16の区画16−1に各サンプリング時刻におけるヨーレイトカーブ16の値とヨーレイトの線形変化率の値との一致(すなわち、補間及び四捨五入により同値となること)を検索し、値が一致するヨーレイトカーブ16とヨーレイトの線形変化率との時間差を求める。しかし、制御部14は、ヨーレイトカーブ16の値とヨーレイトの線形変化率の値とを、任意のサンプリングレートにおいて比較しても構わない。ここでいうサンプリングレートは、ステップS2におけるサンプリングレートとは異なる値であって構わない。
【0025】
次に、ステップS6において、制御部14は、ヨーレイトカーブ16の各区画における時間差の符号に基づいて、各区画に「先行状態」或いは「遅滞状態」を割り当てる。制御部14は、ヨーレイトの線形変化率が所定の値となる第2の時刻の値から、ヨーレイトカーブ16が前記した所定の値となる第1の時刻の値を減じることにより、時間差を取得する。この時間差が正の値であることは、時間軸上で連続する1つの極大値と1つの極小値の間において、ヨーレイトカーブ16がヨーレイトの線形変化率よりも先に生じる「先行状態」を示す。一方、この時間差が負の値であることは、連続する1つの極大値と1つの極小値の間において、ヨーレイトカーブ16がヨーレイトの線形変化率よりも後に生じる「遅滞状態」を示す。このように、制御部14は、ヨーレイトカーブ16が所定の値となる第1の時刻が、ヨーレイトの線形変化率が前記した所定の値となる第2の時刻よりも早いか或いは遅いかを決定することにより、各区画に「先行状態」或いは「遅滞状態」を割り当てる。
【0026】
例えば、ヨーレイトカーブ16の区画16−1とヨーレイトの線形変化率22−1の間における時間差の絶対値の最大値は、図5に示す時刻24−1において発生する。時間差の絶対値の最大値において、ヨーレイトカーブ16の区画16−1がヨーレイトの線形変化率22−1よりも後に位置する。したがって、ヨーレイトカーブ16の区画16−1では、図5の時刻24−1において、ヨーレイトカーブ16の区画16−1とヨーレイトの線形変化率22−1との時間差が最小値となる。ヨーレイトカーブ16の区画16−1における時間差は負の値となり、ヨーレイトカーブ16がヨーレイトの線形変化率よりも後に生じる「遅滞状態」が割り当てられる。このように、ステップS6において、制御部14は、ヨーレイトの実測値とヨーレイトの演算値(演算されたヨーレイトの線形変化率)が同じ値となる時間差の最大値を求める。
【0027】
このように、制御部14は、時間軸上で連続する1つの極大値及び1つの極小値により区画されるヨーレイトカーブ16の各区画について、ヨーレイトの線形変化率とヨーレイトカーブ16との時間差を求める。これらの時間差を、図2(b)のグラフに示す。図2(a)に示すように、時間差には、先行状態における時間差(これを「先行時間差ATD」という)と、遅滞状態における時間差(これを「遅滞時間差GTD」という)とが含まれる。時間差は、ヨーレイトの線形変化率が所定の値となる第2の時刻の値から、ヨーレイトカーブ16が前記した所定の値となる第1の時刻の値を減じることにより算出される。このため、図2(b)においては、先行時間差ATDを正の値で示し、遅滞時間差GTDを負の値で示す。
【0028】
図2(b)に示すように、ヨーレイトカーブ16の各区画において、先行時間差の最大値26−1〜26−7は、先行しきい値LETよりも大きく、遅滞時間差の最小値28−1〜28−7は、遅滞しきい値LGTよりも小さい。
【0029】
なお、図2(a)のグラフに示すヨーレイトカーブ16において、連続する(隣接する)極小値と極大値が同じ値であったり、時間的に近づき過ぎて2つのカーブに分けることができない場合に、周期的に中断部分が生じる。したがって、ヨーレイトカーブ16とヨーレイトの線形変化率の間の時間差が零或いは本質的に零である場合、図2(b)のグラフにも中断部分が現れる。
【0030】
その後、制御部14は、ステップS21において、制御部14は、車両HVの挙動及び運転者による運転操作の少なくとも一方に応じて、運転者の状態が異常であるか否かを判定する運転者状態判定しきい値として、時間差しきい値を可変設定する(閾値可変設定手段)。ここで、「車両HVの挙動」には、ヨーレイト検出器12により検出されたヨーレイト、速度検出器により検出された車両HVの速度、横加速度検出器により検出された横加速度の少なくとも1つが含まれる。また、「運転者による運転操作」には、車両HVが備える方向指示器、ライトスイッチ、ナビゲーション装置、空調設備、シートポジションを調整する装置、及びシフトレバーの少なくとも1つの運転者による運転操作が含まれる。なお、車両HVの挙動及び運転者による運転操作に応じた時間差しきい値を設定方法の具体例については、図7〜図9を参照して後述する。
【0031】
次に、制御部14は、ステップS22において、可変に設定された時間差しきい値と各区画における時間差の絶対値の最大値とを比較して、運転者の状態が異常であるか否かを判断する(異常判定手段)。ここで、時間差には、先行時間差及び遅滞時間差が含まれる。よって、ステップS22では、先行時間差及び遅滞時間差の絶対値の最大値と時間差しきい値とを比較する。図2(a)に示したように、検出期間(例えば80秒間)において、複数の先行時間差の最大値26−1〜26−7、及び遅滞時間差の最小値28−1〜28−7がヨーレイトカーブ16の各区画に発生する。本発明の実施形態では、所定の時間差しきい値を超える先行時間差の最大値及び遅滞時間差の最小値の回数を計数せずに、複数の先行時間差の最大値及び遅滞時間差の最小値の絶対値を、ステップS21で設定された時間差しきい値と比較して、その比較結果に基づいて、運転者の状態が異常であるか否かを判断する。これにより、処理される情報量を軽減し必要なメモリ量を削減して、より簡易的な処理によって運転者の異常運転を特定することができる。
【0032】
例えば、複数の先行時間差の最大値及び遅滞時間差の最小値の絶対値の各々をステップS21で設定された時間差しきい値と比較し、時間差しきい値を超える最大値及び最小値の絶対値が1つでもあった場合、運転者の状態が異常であると判断すればよい。すなわち、複数の先行時間差の最大値及び遅滞時間差の最小値の絶対値のうちで最も大きな値と、ステップS21で設定された時間差しきい値と比較し、この最も大きな値が時間差しきい値を超えていれば、ステップS9に進み、運転者の状態が異常であると判断する。一方、この最も大きな値が時間差しきい値を超えていなければ、ステップS8に進み、運転者の状態が正常であると判断する。
【0033】
また或いは、先行時間差の最大値及び遅滞時間差の最小値に対して、異なる時間差しきい値(先行しきい値及び遅滞しきい値)と比較してもよい。つまり、ステップS21において、車両HVの挙動及び運転者による運転操作の少なくとも一方に応じて、先行しきい値及び遅滞しきい値をそれぞれ可変に設定する。そして、S22において、可変に設定された先行しきい値と先行時間差の最大値とを比較し、可変に設定された遅滞しきい値と遅滞時間差の最小値とを比較してもよい。先行時間差の最大値が先行しきい値よりも大きい場合、及び遅滞時間差の最小値が遅滞しきい値よりも小さい場合、ステップS9で異常運転状態であると判断し、先行時間差の最大値が先行しきい値以下である場合、及び遅滞時間差の最小値が遅滞しきい値以上である場合、ステップS8で正常運転状態であると判断すればよい。
【0034】
制御部14は、ステップS10において、図1に示すように、例えば、アラームベルやブザーなどの音声による警告を発する音声警報装置30、ディスプレイ装置に警告文を表示するような視覚に訴える警告を発する視覚警報装置32、又は、ステアリング・コラム及びブレーキペダルの少なくとも一方に設けた振動装置など、触覚に訴える警告を発する触覚警報装置34を起動させる。なお、制御部14は、音声警報装置30、視覚警報装置32、及び触覚警報装置34を組み合わせて起動させてもよい。制御部14は、車速を減ずる又は車両HVを使用不能にするといった車両統制を含む対策を適用してもよい。減速又は車両HVの使用不能化は、ブレーキ/操舵/イグニション制御装置、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、車線逸脱警報(KDW)システムを起動することにより実現される。車線逸脱警報(KDW)システムとは、たとえば高速道路での定速走行時に意図せずに走行車線を外れてしまいそうな時、ドライバーに操作を促すシステムであり、車線から逸脱しそうな場合、車線逸脱警報はブザーとディスプレイ表示で運転者に注意を喚起する。車速を減ずる又は車両HVを使用不能にするといった車両統制を含む対策は、既知の装置を用いて実施されるため、その詳細な構成について言及しないが、より正確には、本発明の実施に用いることができる様々なハードウェア構成及びソフトウェア構成は、本願の開示内容から明らかである。
【0035】
更に、制御部14は、ふらつき検出器40から供給される信号に基づいて、車両のふらつき状態を監視することができる。更にその上、制御部14は、運転者の映像を表示する映像検出器42から供給される信号に基づいて、運転者の顔の表情及び運転者の注意力を監視することができる。更に、制御部14は、アルコール検出器44から供給される信号に基づいて、車両HV内のアルコールの存在を監視することができる。連続する1つの極大値と1つの極小値により区画される各区画における時間差の絶対値の最大値のみに基づいて異常運転状態を判断する代わりに、制御部14は、時間差の絶対値の最大値のみならず、車両HVのふらつき状態、運転者の顔の表情、運転者の注意力、車室内のアルコールの存在の少なくとも1つの情報を付加して、運転者が異常運転状態であるか否かを判断してもよい。
【0036】
ふらつき検出器40、映像検出器42、アルコール検出器44は、一般的に知られている構成を用いることができるので、その詳細な構成について言及しないが、より正確には、本発明の実施形態に係わる運転状態検出方法の実施に用いることができる様々なハードウェア構成及びソフトウェア構成は、本願の開示内容から明らかである。
【0037】
最初の検出期間が経過した後、検出期間が、開示時刻が各サンプリング時間について移動する時間枠として振るまいながら、制御部14による図6の処理が繰り返し実行される。例えば、検出期間が80秒間でサンプリングレートが10Hzであるとした場合、最初のサンプリングが行われた時刻を0秒とすると、最初の検出期間は、0〜80秒まで継続する。このように、ステップS1〜S10の処理は、最初の80秒間の検出期間において継続される。最初の80秒間の検出期間において、制御部14は、車両HVの挙動及び運転者による運転操作の少なくとも一方に応じて、時間差しきい値を可変に設定し(S21)、先行時間差及び遅滞時間差の絶対値の最大値が所定の時間差しきい値を超えるか否かを判断する(S22)。最初の80秒間の検出期間が経過した後、サンプリングは80.1秒において行われ、次の検出期間は、0.1〜80.1秒まで継続する。この時、0.1〜80.1秒の間において、制御部14は、車両HVの挙動及び運転者による運転操作の少なくとも一方に応じて、時間差しきい値を可変に設定し(S21)、先行時間差及び遅滞時間差の絶対値の最大値が所定の時間差しきい値を超えるか否かを判断する(S22)。同様にして、その後のサンプリングは80.2秒において行われ、次の検出期間は、0.2〜80.2秒まで継続する。したがって、制御部14は、直近のサンプリングを含む80秒間の検出期間においてヨーレイトカーブ16を効果的且つ継続的に監視することができる。
【0038】
更に、上記した本発明の実施形態では、ヨーレイトの実測値とヨーレイトの線形変化率との偏差の一例として、ヨーレイトの実測値とヨーレイトの線形変化率との時間差を求める場合を示しているが、運転者の状態が異常であるか否かを識別するためにその他の偏差を求めても構わない。例えば、ヨーレイトの実測値とヨーレイトの線形変化率との偏差として、同時刻における、ヨーレイトカーブ16の各区画16−1〜16−5と、ヨーレイトの線形変化率22−1〜22−5との間のヨーレイトの値の差(「ヨーレイト差」という)を求めてもよい。この場合、制御部14は、連続する1つの極大値と1つの極小値により区画される各区画におけるヨーレイト差の最大値を求める。制御部14は、車両HVの挙動や運転者による運転操作に応じて、異常と思われる運転と通常の運転とを見分けるための運転者状態判定しきい値(ヨーレイトしきい値)を可変に設定する。そして、制御部14は、可変に設定されたヨーレイトしきい値とヨーレイト差の最大値とを比較して、運転者の状態を判断する。
【0039】
上記した本発明の実施形態では、制御部14のように、車両HVに搭載された構成要素が、異常運転状態であるか否かを識別するための図6の制御動作を実行する。或いは、制御部14の代わりに、車両の外に配置されたサーバ39が制御部14と同様な手段を有していてもよい。サーバ39は、トランシーバ38から転送されるデータを即時に受け取ることができるように接続されていてもよい。また或いは、サーバ39は、実験においてダウンロードされたデータや、運転研究や製品開発試験のような広範な期間において収集されたデータを受け取ることができるように接続されていてもよい。そして、サーバ39は、上記した図6の処理を実行して、検出期間における異常運転状態/正常運転状態を識別してもよい。この場合、ステップS10において対策を実行する代わりに、サーバ39は、異常運転状態である判断している総ての検出期間にフラグを立てる対策を実施することができる。サーバ39は、月、年、その他のあらゆる所定の期間において収集されたヨーレイトのデータを蓄積し、特定の車両から受け取ったヨーレイトのデータの総てについて、異常運転状態であるか否かを識別することができる。もちろん、サーバ39は、複数の車両の各々からヨーレイトのデータを受け取り、ヨーレイトのデータの各々について図6の処理を実行し、車両の各々について異常運転状態であるか否かを識別することができる。
【0040】
上記からも分かるように、車両の異常運転状態は、極大値と極小値の間に挿入されるヨーレイトの線形変化率とヨーレイトの実測値との先行時間差及び遅滞時間差をたどることにより検出することができる。車両HVが走行する時、ヨーレイトカーブ16上の極大値及び極小値、すなわち極値をたどることによりヨーレイトの線形変化率が求まり、連続する極小値と極大値の間を結ぶ線分から定まるヨーレイトの線形変化率を描くことができる。「先行状態」は、ヨーレイトカーブ16がヨーレイトの線形変化率よりも先に生じる時に検出される。「遅滞状態」は、ヨーレイトカーブ16がヨーレイトの線形変化率よりも後に生じる時に検出される。先行状態及び遅滞状態は、異常運転状態においてよく起こるため、異常運転状態を検出するための正確な指標となる。
【0041】
次に、図7〜図9を参照して、車両HVの挙動の例としてのヨーレイト、横加速度、及び車速に応じた時間差しきい値を設定方法の具体例について説明する。図7〜図9は、ヨーレイト、横加速度、及び車速と時間差しきい値との対応関係の一例をそれぞれ示す。制御部14は、図7〜図9に示す対応関係を表すデータの少なくとも1つをデータ蓄積装置に記憶している。図6のステップS21において制御部14は、図7〜図9に示す対応関係を表すデータを、車両HVの挙動に応じて時間差しきい値を可変に設定する際に参照する。
【0042】
図7〜図9に示す例では、ヨーレイト、横加速度、及び車速がそれぞれ所定の範囲内である場合において、ヨーレイトが大きくなるほど時間差しきい値が大きくなる。ヨーレイト、横加速度、及び車速がそれぞれ所定の範囲外である場合において、ヨーレイトに係わらず、時間差しきい値は一定の値を取る。よって、図6のステップS21において図7に示されたデータを参照した場合、制御部14は、所定の範囲内においてヨーレイト検出器12で検出されたヨーレイトが大きくなるほど時間差しきい値が大きくなるように、時間差しきい値を可変に設定する。図6のステップS21において図8に示されたデータを参照した場合、制御部14は、所定の範囲内において横加速度検出器で検出された横加速度が大きくなるほど時間差しきい値が大きくなるように、時間差しきい値を可変に設定する。或いは、図6のステップS21において図9に示されたデータを参照した場合、制御部14は、所定の範囲内において速度検出器で検出された車速が大きくなるほど時間差しきい値が大きくなるように、時間差しきい値を可変に設定する。なお、図9に示す例では、所定の下限値を下回る車速が検出された場合には、この車速に対応する時間差しきい値のデータが無いため、制御部14は、時間差しきい値の初期設定値を用いればよいし、或いは、重大、且つしばしば生命を脅かす問題を引き起こすおれが無いと判断して、時間差しきい値を設定せずに、運転者状態の判断処理を中断しても構わない。また或いは、ヨーレイト又は横加速度に応じた時間差しきい値の設定へ切り替えても構わない。
【0043】
次に、運転者による運転操作に応じて時間差しきい値を設定する方法の具体例について説明する。制御部14は、図6のステップS21において、上記した運転者による運転操作が検出された場合、上記した運転者による運転操作が検出されてから所定の期間が経過するまで、運転者による運転操作が検出されていない時よりも大きな時間差しきい値を設定する。これにより、制御部14が、上記した運転者による運転操作による擬似的な先行状態或いは遅滞状態に基づいて、異常運転状態であると誤って判断することを抑制できる。
【0044】
例えば、(1)式に従って、時間しきい値を設定すればよい。(1)式において、THは、運転者による運転操作が検出されていない通常時の時間差しきい値を示し、TH’は、運転者による運転操作が検出されてから所定の期間が経過するまでの時間差しきい値を示し、Kは、運転操作の検出に係わる係数を示す。
【0045】
TH’=K * TH (1)
【0046】
また或いは、異常運転状態であるとの誤判断を抑制するために、制御部14は、運転者による運転操作が検出されてから所定の期間(例えば10秒間)が経過するまで、時間差しきい値と時間差の絶対値の最大値との比較結果にかかわらず、運転者の状態が正常であると判断しても構わない。すなわち、運転者による運転操作が検出されてから所定の期間が経過するまで、運転者の運転状態の判断を、休止しても構わない。
【0047】
本発明の範囲を理解する上で、ここで使用される「備える」という用語及び派生語は、本発明を特定するために必要な特徴、構成要素、構成部材、構成部材群、ステップの存在を明記する用語であるが、本発明が、明記されていない他の特徴、構成要素、構成部材、構成部材群、ステップを更に備えることを排除するものではない。「含む」及び「有する」及びこれらの派生語についても同様である。第1及び第2の実施形態で記載したように、方向を示す用語である「前向き」、「後向き」、「上向き」、「下向き」、「垂直」、「水平」、「下方」及び「横」及びその他の同様な方向を示す用語は、運転者状態検出方法を実行するための構成を装備する車両におけるこれらの方向を参照している。したがって、これらの用語は、本発明を表すために利用できるように、運転者状態検出方法を実行するための構成を装備する車両に関連して解釈すべきである。構成要素、階級、装置などにより実行される作用を表す「検出」には、物理的な検出を必要としない構成要素、階級、装置などにより実行される行為も含まれる。より正確に言うと、「検出」の用語には、「決定」、「測定」「模型制作」「予測」「計算」、その他の作用を実行する用語の意味が含まれる。装置の一部や一要素を表現するために用いられている「備える」には、所望の手段を実行するために構成され、或いはプログラムされたハードウェア或いはソフトウェアが含まれる。ここで使用されている「実質的」「およそ」「だいたい」のような程度を示す用語は、結果が大きく変化しない適当量の逸脱を意味する。
【0048】
本発明の実施形態は、本発明を表すために選択されたものだが、当業者であればこの開示内容から、特許請求の範囲に規定された発明の範囲を逸脱しない範囲において、様々な変更及び変形が可能である。例えば、様々な構成要素の大きさ、形状、配置、方向は、要望や希望に応じて変更することができる。互いに直接に接続或いは接触して表現された構成要素の対は、その間に中間部材が介在する構造を有していてもよい。1つの要素は、2つの要素によって実現されてもよいし、その逆であっても構わない。1つの実施形態の構造や手段は、他の実施形態の中に採用することができる。個々の実施形態に総ての利点が同時に存在する必要はない。従来技術に比して特有な総ての特徴は、単独或いは他の特徴と結合して、これらの1又は2以上の特徴を具現化した構造的或いは手段的概念を含む、本発明者による別個の独立した発明の記述を成すとみなすべきである。このように、前記した本発明の実施形態は、特許請求の範囲の記載により特定される発明及び均等の範囲を限定する目的とするものではない。
【0049】
以上説明したように、本発明の実施形態では、車両の挙動及び運転者による運転操作の少なくとも一方に応じて運転者状態判定しきい値(時間差しきい値、ヨーレイトしきい値)を可変設定し、演算された率所定時間毎のヨーレート(ヨーレイトの線形変化)とヨーレイトの実測値との偏差を、可変に設定された運転者状態判定しきい値と比較して、運転者の状態が異常であるか否かを判断する。よって、異常運転状態を短い期間においてより正確に検出し、そして、異常運転状態であると誤って判断することを回避或いは抑制することができる。また、時間差の絶対値の最大値26−1〜26−7、28−1〜28−7が時間差しきい値(LET、LGT)を超える回数を計数しないので、処理される情報量を軽減し必要なメモリ量を削減して、より簡易的な処理によって運転者の異常運転を特定する運転者状態検出方法及び運転者状態検出システムを提供することができる。
【0050】
制御部14は、ヨーレイトの実測値とヨーレイトの演算値(ヨーレイトの線形変化)が同じ値となる時間差の最大値を求め、時間差の最大値と運転者状態判定しきい値とを比較する。よって、万人が異常状態であると認めるヨーレイトの実測値とその演算値とから運転者の異常を判定しているため、確実に異常を判定することができる。
【0051】
本発明の実施形態に依れば、車両HVの挙動を運転者の操作の結果として現れるヨーレートを用いて検出しているため、単に車両HVの挙動を検出するだけでなく運転者の操作も含めた情報から車両情報を把握でき、より正確に状況を判定できる。
【0052】
本発明の実施形態に依れば、ヨーレートの大きさに比例して運転者状態判定しきい値を可変にしたため、例えばヒル&トーのような過激な運転をしている場合でも不用意に異常と判定することがなく、判定を信頼することが出来ると共に煩わしさをなくすることが出来る。
【0053】
本発明の実施形態に拠れば、ヨーレートの基となる横加速度から車両HVの挙動を直接把握するため、適確に車両状態を把握することが出来る。
【0054】
本発明の実施形態に拠れば、横加速度が大きくなるほど運転者状態判定しきい値を大きくしたため、例えばヒル&トーのような過激な運転をしている場合でも不用意に異常と判定することがなく、判定を信頼することが出来ると共に煩わしさをなくすることが出来る。
【0055】
本発明の実施形態に拠れば、車両HVの挙動検出に速度を用いているので車両HVの状態を正確に把握することが出来、車両状態の検出精度を向上させることが出来る。
【0056】
本発明の実施形態に拠れば、車速が大きくなるほど運転者状態判定しきい値を大きくし、高速道路での判定精度を向上させることが出来る。
【0057】
本発明の実施形態に拠れば、方向指示器、ライトスイッチ、ナビゲーション装置、空調設備、シートポジションを調整する装置、及びシフトレバーの操作のうち少なくとも1つの操作から運転者の異常を判定する信号を抽出することができ、車両運転に直接関連のあるものの操作以外からも判定を行うことができ判定精度を向上させることができる。
【0058】
本発明の実施形態に係わる運転者状態検出システムに拠れば、所定時間が経過するまではより大きな閾値を設定するため、多くの動作をしなければならない運転開始初期に不用意に運転者が異常であると判定することがなく、判断の信頼性を向上することが出来る。
【0059】
本発明の実施形態に係わる運転者状態検出システムによれば、所定時間が経過するまで運転状態が正常であると判断されるため判断結果が不用意にぶれることがなく、判断結果がぶれることによる煩わしさを防止することが出来る。
【0060】
本発明の実施形態に係わる運転状態検出方法によれば、車両の挙動及び運転者による運転操作の少なくとも一方に応じて運転者状態判定しきい値を可変設定することが出来るため、運転者状態をより正確に検出することが出来る。
【符号の説明】
【0061】
10…運転者状態検出システム
12…ヨーレイト検出器
14…制御部
16…ヨーレイトカーブ(ヨーレイトの実測値)
16−1〜16−5…区画
18−1〜18−3…極大値(反転ポイント)
20−1〜20−3…極小値(反転ポイント)
22−1〜22−5…ヨーレイトの線形変化率(所定時間毎のヨーレート)
24−1…時刻(偏差、時間差)
26−1〜26−7…先行時間差の最大値(時間差の最大値)
28−1〜28−7…遅滞時間差の最小値(時間差の最大値)
30…音声警報装置
32…視覚警報装置
34…触覚警報装置
38…トランシーバ
39…サーバ(制御部)
40…ふらつき検出器
42…映像検出器
44…アルコール検出器
ATD…先行時間差(時間差)
CG…重心
GTD…遅滞時間差(時間差)
HV…車両
LET…先行しきい値(運転者状態判定しきい値)
LGT…遅滞しきい値(運転者状態判定しきい値)
S3…特定手段
S4…所定時間毎のヨーレートを演算する手段
S5…偏差演算手段
S21…閾値可変設定手段
S22…異常判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のヨーレイトを検出するヨーレイト検出器と、
検出された前記ヨーレイトから運転者の状態が異常であるか否かを判断する制御部とを有し、
前記制御部は、
検出されたヨーレイトの実測値の増減が反転する反転ポイントを特定する特定手段と、
特定された2つの前記反転ポイントを結ぶ線分から決まる所定時間毎のヨーレートを演算する手段と、
該演算された所定時間毎のヨーレートと前記ヨーレイトの実測値との偏差を演算する偏差演算手段と、
該偏差を運転者状態判定しきい値と比較して運転者の状態が異常であるか否かを判断する異常判定手段と、
車両の挙動及び前記運転者による運転操作の少なくとも一方に応じて前記運転者状態判定しきい値を可変設定する閾値可変設定手段と、
を備えることを特徴とする運転者状態検出システム。
【請求項2】
前記偏差演算手段は、前記ヨーレイトの実測値と前記ヨーレイトの演算値が同じ値となる時間差の最大値を求めることを特徴とする請求項1に記載の運転者状態検出システム。
【請求項3】
前記車両の挙動には、前記ヨーレイトが含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の運転者状態検出システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記閾値可変設定手段として、前記ヨーレイトが大きくなるほど前記前記運転者状態判定しきい値が大きくなるように、前記運転者状態判定しきい値を可変に設定する手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の運転者状態検出システム。
【請求項5】
前記車両の挙動には、前記車両の横加速度が含まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の運転者状態検出システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記閾値可変設定手段として、前記横加速度が大きくなるほど前記しきい値が大きくなるように、前記運転者状態判定しきい値を可変に設定する手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の運転者状態検出システム。
【請求項7】
前記車両の挙動には、前記車両の速度が含まれることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の運転者状態検出システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記閾値可変設定手段として、前記車両の速度が大きくなるほど前記しきい値が大きくなるように、前記運転者状態判定しきい値を可変に設定する手段を備えることを特徴とする請求項7に記載の運転者状態検出システム。
【請求項9】
前記運転者による運転操作には、方向指示器、ライトスイッチ、ナビゲーション装置、空調設備、シートポジションを調整する装置、及びシフトレバーの操作のうち少なくとも1つが含まれることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の運転者状態検出システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記閾値可変設定手段として、前記運転者による運転操作が検出されてから所定の期間が経過するまで、前記運転者による運転操作が検出されていない時よりも大きなしきい値を設定する手段を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の運転者状態検出システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記運転者による運転操作が検出されてから所定の期間が経過するまで、前記しきい値と前記時間差の絶対値の最大値との比較結果にかかわらず、運転者の状態が正常であると判断する手段を備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の運転者状態検出システム。
【請求項12】
車両のヨーレイトを検出し、
検出されたヨーレイトの実測値の増減が反転する反転ポイントを特定し、
特定された2つの前記反転ポイントを結ぶ線分から決まる所定時間毎のヨーレートを演算し、
該演算された所定時間毎のヨーレートと前記ヨーレイトの実測値との偏差を演算し、
該偏差を運転者状態判定しきい値と比較して運転者の状態が異常であるか否かを判断し、
車両の挙動及び前記運転者による運転操作の少なくとも一方に応じて前記運転者状態判定しきい値を可変設定する
ことを特徴とする運転者状態検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−212379(P2012−212379A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78455(P2011−78455)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】