説明

過冷却解除方法及び過冷却解除装置、貯留槽を備える装置並びに、包接水和物の存在比率を増加させる方法及びそのための装置

【課題】液相流動床型熱交換器を応用した原料溶液又は原料スラリーの過冷却に起因する問題を解消又は抑制することができる技術を提供すること。
【解決手段】本発明に係る過冷却解除方法は、包接水和物のゲスト化合物の水溶液の過冷却を解除する方法であって、過冷却状態にある前記水溶液を流動床の少なくとも一部に流通させる工程を有することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相流動床を応用した原料溶液の過冷却解除技術、過冷却解除装置を収容する貯留槽を備える装置並びに、包接水和物スラリーにおける包接水和物の存在比率を増加させる技術に関する。
【0002】
なお、本発明において、次に掲げる用語の意味又は解釈は、以下のとおりとする。この用語の意味又は解釈は、本発明の技術的範囲が均等の範囲にまで及ぶことを妨げるものではない。
(1)「液相流動床」とは、容器内の特定の領域に粒子を充填して、その領域に液体を流通させることによって粒子を流動化させる又は制限された範囲内で流動可能にする装置をいう。充填する粒子の大きさとしては、例えば直径1〜数mm程度の場合もあれば、数mm〜数十mm程度の場合もあり、用途、目的、奏効性等の観点から適宜選択される。本発明においては、「液相流動床」を「液相流動層」又は、文脈上若しくは便宜上単に「流動床」若しくは「流動層」という場合がある。
(2)ホストまたはホスト物質と呼ばれる分子または化合物(即ち、ホスト分子)が構成するトンネル形、層状、網状、籠状などの構造(包接格子)内に、ゲスト物質と呼ばれる他の分子または化合物(即ち、ゲスト分子)が入り込む又は取り込まれることで形成され、生成する物質を包接化合物という。ゲスト分子の例としてはアルキルアンモニウム塩に代表される第四級アンモニウム塩、アルキルホスホニウム塩、アルキルスルホニウム塩などがある。ホスト分子の例としては水やシクロデキストリン、特許文献9に開示された物質などの非水がある。ホスト分子が水である包接化合物が「包接水和物」である。本発明における「包接水和物」には準包接水和物が含まれる。なお、「包接水和物」を、文脈上又は便宜上単に「水和物」という場合がある。
(3)「包接水和物スラリー」とは、包接水和物がそのゲスト化合物又はゲスト分子の水溶液又は水溶媒の中に分散又は懸濁してスラリー状を呈するに至ったものをいう。包接水和物が少量であっても(換言すれば包接水和物の存在比率が低くても)当該水溶液又は水溶媒に分散又は懸濁しているのであれば、それは「包接水和物スラリー」に該当する。なお、「包接水和物スラリー」を、文脈上又は便宜上単に「水和物スラリー」若しくは「スラリー」という場合がある。
(4)「原料溶液」とは、包接水和物のゲスト化合物の水溶液であって包接水和物スラリーの原料となるものをいう。
(5)「原料スラリー」とは、包接水和物の存在比率がより高い包接水和物スラリーの原料となる、当初の包接水和物スラリーをいう。
【背景技術】
【0003】
包接水和物は潜熱蓄熱性を有するので、これを蓄熱材として使用することができる(特許文献1)。このような包接水和物の中でも少なくとも包接水和物のゲスト化合物の水溶液又は水溶媒に分散又は懸濁し、潜熱蓄熱性を維持したままでスラリー状を呈するものであれば、そのスラリー自体を蓄熱材として使用することができる(特許文献2)。
包接水和物を生成させるためには、そのゲスト化合物の水溶液を、例えば冷媒との熱交換を通じてその包接水和物の生成温度未満に冷却してやればよい。この冷却により生成した包接水和物が当該水溶液又は水溶媒の中に分散又は懸濁すれば包接水和物スラリーになる。当該水溶液を包接水和物の生成温度未満に冷却しても、包接水和物が生成されず液状のままであるという過冷却現象により、直ちに包接水和物が生成してこない場合もあるが、その過冷却が解除され、包接水和物が生成し、生成した包接水和物が当該水溶液又は水溶媒の中に分散又は懸濁すれば包接水和物スラリーになる。なお、いずれの場合であれ、包接水和物のゲスト化合物の水溶液であって、包接水和物スラリーの原料となるものが原料溶液に相当する。
【0004】
また、包接水和物スラリー中の液相部分にゲスト化合物が溶質として残存している場合には、その包接水和物スラリーをより低温に冷却してやれば、包接水和物の存在比率がより高い包接水和物スラリーになる。当該液相部分が局所的に過冷却現象を起こしている場合もあるかもしれないが、その過冷却が解除されれば、包接水和物の存在比率がより高い包接水和物スラリーになる。なお、いずれの場合であれ、当該包接水和物が当該水溶液又は水溶媒に分散又は懸濁してできるスラリーであって、包接水和物の存在比率がより高い包接水和物スラリーの原料となるものが原料スラリーに相当する。
【0005】
原料溶液又は原料スラリーを包接水和物の生成温度未満に冷却することにより、またその冷却の際原料溶液に過冷却現象が起こる場合にはその過冷却を解除することにより、包接水和物スラリーを製造することができる。実際、包接水和物スラリーを製造するためには、原料溶液又は原料スラリーと、これを冷却するための冷媒と、両者間の熱交換を可能にする熱交換器とが少なくとも必要になる。上記の熱交換器の例としては、プレート型、シェルアンドチューブ型等の公知の熱交換器を採用することができる(特許文献3及び4参照)。また、原料溶液に起こった過冷却を解除するためには、過冷却解除手段も必要になる(特許文献5参照)。
【0006】
一方、液相流動床は、伝熱面での熱伝導率が高く、当該伝熱面の汚れの防止・除去性能が高く、保守管理も容易であることが知られており、熱交換器への応用が期待されている(非特許文献1)。そして液相流動床を応用した熱交換器(以下「液相流動床型熱交換器」という)を用いた応用例として、固体結晶性ガス水和物を製造する例(特許文献6)、被処理水に含まれた目的成分を晶析法により種結晶の表面に析出させて除去し、回収する例(特許文献7)、製氷器の熱交換面に付着した氷を剥離させるために、氷結緩和剤を添加して結合力を弱めたうえで硬粒子流動床により擦過や衝突作用により当該氷を除去する例(特許文献8)などが知られている。
【特許文献1】特公昭57−35224号公報
【特許文献2】特許3641362号公報
【特許文献3】特開2002−263470号公報
【特許文献4】特開2004−85008号公報
【特許文献5】特開2004−3718号公報
【特許文献6】特表2002−540223号公報
【特許文献7】特開2006−122896号公報
【特許文献8】特開平3−13750号公報
【特許文献9】特開2005−36197号公報
【非特許文献1】橋詰健一著「液相流動床」第1章、第8章、第10〜12章(発行:アイピーシー、発行年:平成12年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、発明者らが知る限り、原料溶液又は原料スラリーと冷媒との熱交換により包接水和物スラリーを製造する際、熱交換器として液相流動床型熱交換器が使用された例はなく、原料溶液に生じた過冷却状態を解消する手段として流動床が応用された例もなく、スラリーにおける包接水和物の存在比率を高めるための手段として流動床が応用された例もない。
また、原料溶液又は原料スラリーと冷媒との熱交換により包接水和物スラリーを製造するために熱交換器や過冷却解除手段とを設ける必要がある場合や、そのような水和物スラリーの製造装置に付随して、大量に製造された包接水和物スラリーを一時的に収容する蓄熱装置を設ける必要がある場合には、例えば設計や保守管理の要請上又は経済性の観点から、より構成が簡素又は小型であることが基本的に要請されているところ、熱交換器と過冷却解除手段とを別々に設ける(しかも、それらに加えて蓄熱装置を別途設ける)という従来の考え方では、そのような要請に応えることは容易ではない。
【0008】
本発明は以上の事情及び問題に鑑みてなされたものであり、液相流動床型熱交換器を使用した包接水和物スラリーの製造技術、液相流動床を応用して原料溶液の過冷却現象を解消又は抑制する技術並びに、スラリーにおける包接水和物の存在比率を高める技術を提供し、これらにより包接水和物スラリーを長期に亘り安定的に製造することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための、本発明の第1の態様に係る包接水和物スラリーの製造方法は、包接水和物がそのゲスト化合物の水溶液又は水溶媒の中に分散又は懸濁してなる包接水和物のスラリーの製造方法であって、前記水溶液(即ち原料溶液)若しくは前記水溶媒又は前記スラリー(即ち原料スラリー)と冷媒との熱交換を、前記水溶液若しくは前記水溶媒又は前記スラリーが流通する流動床の少なくとも一部と接触する伝熱面を介して行う熱交換工程を有することを特徴とするものである。
【0010】
なお、伝熱面又はその少なくとも一部が流動床又はその少なくとも一部と接触していれば足りる。従って、伝熱面は流動床の中に配置されていてもよく、流動床を取り囲む壁面を構成するように配置されていてもよい。このことは第1の形態に限ったことではなく、熱交換器を構成要件とする本発明の他の形態においても同様にいえることである。
【0011】
本発明の第2の形態に係る包接水和物スラリーの製造装置は、包接水和物がそのゲスト化合物の水溶液中に分散又は懸濁してなる包接水和物のスラリーの製造装置であって、前記水溶液(即ち原料溶液)若しくは前記水溶媒又は前記スラリー(即ち原料スラリー)が流通する流動床と、前記水溶液若しくは前記水溶媒又は前記スラリーと冷媒との熱交換を行う熱交換器とを備え、該熱交換器の伝熱面の少なくとも一部が、前記流動床の少なくとも一部と接触するように配置されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第3の形態に係る包接水和物スラリーの製造装置は、包接水和物がそのゲスト化合物の水溶液又は水溶媒の中に分散又は懸濁してなる包接水和物のスラリーの製造装置であって、冷媒が流通する第1の隔室と、前記水溶液若しくは前記水溶媒又は前記スラリーが流通する第2の隔室と、第1の隔室と第2の隔室とを仕切る伝熱面とを備え、第2の隔室には前記伝熱面の少なくとも一部が流動床の少なくとも一部と接触するように配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
なお、第1の隔室と第2の隔室とからなる一対の隔室を連続して並列に配置してもよく、直列に配置してもよく、直列及び並列が混在する態様で配置してもよい。また、当該一対の隔室における第2の隔室(即ち、前記水溶液若しくは前記水溶媒又は前記スラリーが流通する隔室)に隣接して冷媒が流通する隔室をさらに設け、第2の隔室が両側から冷却されるようにしてもよい。
【0014】
本発明の第4の形態に係る包接水和物スラリーの製造装置は、第2又は第3の形態に係る製造装置であって、前記流動床が複数の粒子で構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第5の形態に係る包接水和物スラリーの製造装置は、第2又は第3の形態に係る製造装置であって、流動床が複数の粒子から構成され、該流動床に供給される前記水溶液若しくは前記水溶媒又は前記スラリーの流れを分散させる分散機構を備えていることを特徴とするものである。
分散機構は、流動床を構成する粒子よりも粒径が大きな粒子により構成した固定床を備えるものであってよく、ヘッダーに多数の孔を設けて構成されるものであってもよい。
【0016】
本発明の第6の形態に係る包接水和物スラリーの製造装置は、第4又は第5の形態に係る製造装置であって、前記複数の粒子の少なくとも一部に前記包接水和物が少なくとも一時的に付着していることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の第7の形態に係る包接水和物スラリーの製造装置は、第4乃至第6のいずれかの形態に係る製造装置であって、前記複数の粒子の少なくとも一部が互いに擦過又は衝突することを特徴とするものである。
【0018】
本発明の第8の形態に係る過冷却解除方法は、包接水和物のゲスト化合物の水溶液の過冷却を解除する方法であって、過冷却状態にある前記水溶液を流動床の少なくとも一部に流通させる工程を有することを特徴とするものである。
【0019】
本発明の第9の形態に係る過冷却解除装置は、包接水和物のゲスト化合物の水溶液の過冷却を解除する装置であって、流動床を備え、過冷却状態にある前記水溶液が前記流動床の少なくとも一部を流通するように構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の第10の形態に係る過冷却解除装置は、第9の形態に係る過冷却解除装置であって、前記流動床が複数の粒子で構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の第11の形態に係る過冷却解除装置は、第10の形態に係る過冷却解除装置であって、前記複数の粒子の少なくとも一部に前記包接水和物が少なくとも一時的に付着していることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の第12の形態に係る過冷却解除装置は、第10又は第11の形態に係る過冷却解除装置であって、前記複数の粒子の少なくとも一部が互いに擦過又は衝突することを特徴とするものである。
【0023】
本発明の第13の形態に係る包接水和物の存在比率を増加させる方法は、包接水和物がそのゲスト化合物の水溶液の中に分散又は懸濁してなるスラリーにおける前記包接水和物の存在比率を増加させる方法であって、前記スラリーを、その冷却後又はその冷却の過程で、包接水和物が存在している流動床の少なくとも一部に流通させる工程を有することを特徴とするものである。
【0024】
本発明の第14の形態に係る包接水和物の存在比率を増加させる装置は、包接水和物がそのゲスト化合物の水溶液の中に分散又は懸濁してなるスラリーにおける前記包接水和物の存在比率を増加させる装置であって、複数の粒子から構成される流動床を備え、前記水溶液が冷却された後又は冷却される過程で前記流動床の少なくとも一部を流通するように構成されていることを特徴とするものである。
【0025】
本発明の第15の形態に係る貯留槽を備える装置は、包接水和物のゲスト化合物の水溶液又は包接水和物スラリーを収容する貯留槽を備える装置であって、第2の形態に係る包接水和物スラリーの製造装置、第9乃至第12のいずれかの形態に係る過冷却解除装置及び第14の形態に係る包接水和物の存在比率を増加させる装置のうちいずれかを備えることを特徴とするものである。この場合、当該貯留槽を備える装置における第2の形態に係る包接水和物スラリーの製造装置は、第4乃至第7のいずれかの形態の特徴を備えるものであってもよい。また、当該貯留槽は包接水和物スラリーを収容する蓄熱槽であってもよく、その場合には、当該貯留槽を備える装置は蓄熱装置であってもよい。
【0026】
なお、本発明のいずれの形態においても、原料溶液又は原料スラリーから製造された包接水和物スラリーを原料スラリーとして還流させて、再度冷媒との熱交換に供してもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、液相流動床を用いる包接水和物スラリーの製造技術を実現することができる。包接水和物スラリーの製造の際、液相流動床型熱交換器を用いて原料溶液又は原料スラリーと冷媒との熱交換を行うので、流動床を構成する粒子の流動の作用により、熱交換器の伝熱面に原料溶液や原料スラリーに比べて熱伝導性が低い包接水和物が付着し難くなり、また汚れも付き難くなる。それ故、熱交換器の伝熱面の伝熱効率を高いまま維持でき、保守管理も容易になるので、長時間に亘り安定的に包接水和物スラリーを製造することができる。
【0028】
また、本発明によれば、液相流動床を用いる過冷却解除技術を実現することができる。過冷却状態にある原料溶液を液相流動床に流通させるので、当該原料溶液の過冷却を解除することができる。その理由は、(ア)流動床を構成する複数の粒子同士の接触、擦過、衝突等が契機となって包接水和物が生成し易くなる、(イ)流動床による混合又は攪拌の結果包接水和物が生成し易くなる、(ウ)(ア)又は(イ)が理由となって生成した包接水和物が別の包接水和物の生成核として機能するため新たな包接水和物が生成し易くなる、或いは上記(ア)乃至(ウ)の任意の組合せが原因となって、包接水和物の生成遅延が起こりにくくなるためと考えられる(以下、この理由を「理由1」という)。
【0029】
更に、本発明によれば、包接水和物スラリーにおける包接水和物の存在比率を効果的に高めることができる。過冷却状態にある原料溶液を液相流動床に流通させるとその過冷却が解除されるので、包接水和物の存在比率を高めることができる。それに加えて、原料スラリーを液相流動床に流通させても包接水和物の存在比率を高めることができる。その理由は、原料スラリーは、新たな包接水和物の生成核となり得る包接水和物を既に含んでいるので包接水和物がより多く生成し易い状態にあるため並びに、そのような生成核を既に含んでいる原料スラリーが流動床を通過する場合であっても、上記(ア)乃至(ウ)のうち少なくとも一つが原因になって、包接水和物がより多く生成し易くなるためと考えられる(以下、この理由を「理由2」という)。
【0030】
上記のような過冷却解除効果や包接水和物スラリーにおける包接水和物の存在比率を増加させる効果は包接水和物の生成・融解を繰返しても低下することがない。その理由は、流動床を構成する複数の粒子同士の接触、擦過、衝突等を通じて当該粒子の表面に包接水和物が付着しても除去され、当該粒子の表面が当初の状態に回復し易く、同時に粒子同士の付着が阻止され、流動状態が長時間維持されるためと考えられる。これらの効果が長時間維持されることは、包接水和物スラリーを長期に亘り安定的に製造する技術において、非常に有益である。
【0031】
本発明の各形態が奏する作用効果は、以下のとおりである。
本発明の第1の形態によれば、まず、液相流動床型熱交換器を応用した包接水和物スラリーの製造方法を実現することができる。また、流動床を構成する粒子の流動の作用により、熱交換器の伝熱面に原料溶液や原料スラリーに比べて熱伝導性が低い包接水和物が付着することがなく、汚れも付着しにくくなり、当該伝熱面の伝熱効率を高いまま維持することができるとともに、保守管理も容易になる。
また、原料溶液の過冷却が解除され易くなり、包接水和物スラリーにおける包接水和物の存在比率も増加し易くなる。その理由については、原料溶液を流動床に流通させる場合には、理由1により説明することができ、原料スラリーを流動床に流通させる場合には、理由2により説明することができる。原料スラリーが均質とはいえず、その中に過冷却が起こり得る部分が存在し、かかる原料スラリーが流動床を流通する場合には、理由1により説明することができる。過冷却が解除された結果包接水和物が既に生成している原料溶液(原料スラリーといえる状態にあるもの)を流動床に流通させる場合には、理由2により説明することができる。
それ故、この第1の形態によれば、長時間に亘り安定的に包接水和物スラリーを製造することができる方法を実現することができる。
【0032】
本発明の第2の形態によれば、まず、液相流動床型熱交換器を応用した包接水和物スラリーの製造装置又は第1の形態に係る製造方法が実施される装置を実現することができる。
この製造装置においては、流動床を構成する粒子の流動の作用により、熱交換器の伝熱面に原料溶液や原料スラリーに比べて熱伝導性が低い包接水和物が付着することがなく、汚れも付着しにくくなり、当該伝熱面の伝熱効率を高いまま維持することができるとともに、保守管理も容易になる。
また、原料溶液の過冷却が解除され易くなり、包接水和物スラリーにおける包接水和物の存在比率も増加し易くなる。その理由については、原料溶液が流動床を流通する場合には、理由1により説明することができ、原料スラリーが流動床を流通する場合には、理由2により説明することができる。原料スラリーが均質とはいえず、その中に過冷却が起こり得る部分が存在し、かかる原料スラリーが流動床を流通する場合には、理由1により説明することができる。過冷却が解除された結果包接水和物が既に生成している原料溶液(原料スラリーといえる状態にあるもの)が流動床を流通する場合には、理由2により説明することができる。
それ故、この第2の形態によれば、長時間に亘り安定的に包接水和物スラリーを製造することができる装置を実現することができる。
【0033】
本発明の第3の形態に係る装置は、第2の形態に係る装置の構成をより限定したものに相当する。第3の形態に係る装置においては、原料溶液又は原料スラリーが流通する第2の隔室に伝熱面と接触する流動床が配置され、原料溶液又は原料スラリーが流動床を流通する際、第1の隔室に流通している冷媒により伝熱面を介して冷却される。それ故、第3の形態によれば、流動床を構成する粒子の流動の作用により、熱交換器の伝熱面に原料溶液や原料スラリーに比べて熱伝導性が低い包接水和物が付着することがなく、汚れも付着しにくくなり、当該伝熱面の伝熱効率を高いまま維持することができるとともに、保守管理も容易になる。原料溶液の過冷却が解除され易くなり、包接水和物スラリーにおける包接水和物の存在比率も増加し易くなる。その理由については、第2の形態の場合と同様に説明することができる。
それ故、この第3の形態によれば、長時間に亘り安定的に包接水和物スラリーを製造することができる装置を実現することができる。
【0034】
また、第3の形態に係る装置においては、隣接する一対の隔室(第1の隔室と第2の隔室)を仕切る仕切壁を伝熱面として各隔室に流通する流体間で熱交換を行うといういわゆるプレート式熱交換器と類似の構成が採用されており、しかも、上記の一対の隔室を横並びに接続することにより、冷媒が流通する隔室と原料溶液又は原料スラリーが流通する隔室とが交互に隣接して構成されている。それ故、第3の形態によれば、他の方式の熱交換器が採用される場合より大きな伝熱面積、従って高い熱交換性能を確保することができる。
なお、一般的なプレート式熱交換器のプレート間隔はかなり狭いものであるが、原料溶液又は原料スラリーが流通する第2の隔室の幅は流動床が形成される程度の広さを有するものである。他方、冷媒が通流する第1の隔室の幅は一般的なプレート式熱交換器と同様に狭くてもよい。
【0035】
第2及び第3の各形態に係る装置においては、原料溶液又は原料スラリーが流通する領域(第3の形態では主として第2の隔室が構成する領域)に、包接水和物の分散・懸濁領域A、流動床領域B、固定床領域Cという3つの領域が構成されるのが普通であり、好ましい。当該領域をこのように構成することにより、原料溶液の場合には、その流れが固定床領域Cで分散され、流動床領域Bにおいて伝熱面により過冷却され、過冷却が解除される(この段階で包接水和物が生成しているので、原料溶液は原料スラリーといえる状態である)と考えられ、過冷却解除された原料溶液が分散・懸濁領域Aにおいて更に伝熱面により冷却されるので、領域Aを通過するときには、原料溶液中の包接水和物の存在比率又は包接水和物スラリーの固相率は増加している。また、原料スラリーの場合には、その流れが固定床領域Cで分散され、流動床領域Bにおいて伝熱面により冷却され、より多くの包接水和物が生成し、分散・懸濁領域Aにおいて更に伝熱面により冷却されるので、領域Aを通過するときには、原料スラリー中の包接水和物の存在比率又は包接水和物スラリーの固相率は増加している。かくして、包接水和物の生成量が増加し、その固相率、延いては蓄熱量又は蓄熱密度が高くなる。
【0036】
本発明の第4の形態によれば、流動床が複数の粒子で構成されるので、過冷却解除の契機となる粒子同士の接触、擦過、衝突等が多い流動床を実現することができる。それ故、効率良い包接水和物スラリーの製造装置を実現することができる。
【0037】
本発明の第5の形態によれば、流動床が複数の粒子から構成され、該流動床に供給される水溶液(即ち原料溶液)又は包接水和物スラリー(即ち原料スラリー)の流れを分散させる分散機構を備えているので、原料溶液又は原料スラリーが流通する過程で流動床を構成する粒子の沈降や圧力損失の増加を抑制又は防止することができる。また流動床を構成する複数の粒子の流動性、例えば粒子の移動し易さや過冷却解除の契機となる粒子同士の接触、擦過、衝突等の起こり易さを流動床全域(特に原料溶液又は原料スラリーの流通方向に垂直な断面全体)に亘り略均質に維持することが容易になる。
【0038】
本発明の第6の形態によれば、流動床を構成する複数の粒子の少なくとも一部に包接水和物が付着しているので、当該包接水和物が別の包接水和物の生成核として機能し、包接水和物スラリーを効率良く製造することができる。このような一時的付着は、例えば、当該複数の粒子の中にその一部として、包接水和物が表面に付着し易い又は付着し易くなるように加工を施してある粒子を混在させることにより実現することができる。
【0039】
本発明の第7の形態によれば、複数の粒子の少なくとも一部が互いに擦過又は衝突するので、このような機械的衝撃が契機となって包接水和物が生成し易くなり、包接水和物スラリーを効率良く製造することができる。
【0040】
本発明の第8の形態によれば、液相流動床を応用した過冷却解除方法を実現できる。過冷却解除が起こる理由については、上記の理由1が考えられる。なお、流動床を流通させて過冷却を解除させる対象は、過冷却状態にある原料溶液に限られない。原料スラリーに分散又は懸濁している包接水和物のその状態が均質とはいえず、一部に過冷却が起こり得る部分(原料溶液に相当するような部分)が存在する場合には、かかる原料スラリーを流動床に流通させることにより、当該部分に生じた過冷却を解除することができる。
【0041】
本発明の第9乃至第12の各形態によれば、液相流動床を応用した過冷却解除装置又は第8の形態に係る過冷却解除方法が実施される装置を実現することができる。
【0042】
特に第10の形態によれば、流動床が複数の粒子で構成されるので、過冷却解除の契機となる粒子同士の接触、擦過、衝突等が多い流動床を実現することができる。それ故、効率良い過冷却解除装置を実現することができる。
【0043】
本発明の第11の形態によれば、流動床を構成する複数の粒子の少なくとも一部に包接水和物が付着しているので、当該包接水和物が別の包接水和物の生成核として機能し、包接水和物が生成し易いなり、効率良い過冷却解除装置を実現することができる。なお、このような一時的付着は、第6の形態の場合と同様、例えば、当該複数の粒子の中にその一部として、包接水和物が表面に付着し易い又は付着し易くなるように加工を施してある粒子を混在させることにより実現することができる。
【0044】
本発明の第12の形態によれば、複数の粒子の少なくとも一部が互いに擦過又は衝突するので、このような機械的衝撃が契機となって包接水和物が生成し易くなり、過冷却解除に資する。それ故、効率良い過冷却解除装置を実現することができる。
【0045】
本発明の第13の形態によれば、原料スラリーを、その冷却後又はその冷却の過程で、流動床の少なくとも一部に流通させるので、その原料スラリーの中で包接水和物をより多く生成させることができ、またこのような生成を促進させることができる。その理由は、上記の理由2により説明することができる。それ故、包接水和物スラリーにおける包接水和物の存在比率を増加させる方法を実現することができる。
【0046】
本発明の第14の形態によれば、液相流動床を応用して包接水和物スラリーにおける包接水和物の存在比率を増加させる装置又は第13の形態に係る方法が実施される装置を実現することができる。
【0047】
本発明の第15の形態によれば、原料溶液又は原料スラリーを収容する貯留槽の中に、第2の形態に係る包接水和物スラリーの製造装置、第9乃至第12のいずれかの形態に係る過冷却解除装置又は第14の形態に係る包接水和物の存在比率を増加させる装置のうちいずれかが配置されるので、これらの装置のそれぞれに対応した作用効果を奏するとともに、各装置の敷設に本来必要な空間や床面積を削減することができ、故に全体としての装置規模を相対的に小さくすることができる。例えば、当該貯留槽が包接水和物スラリーを収容する蓄熱槽であり、当該貯留槽を備える装置が蓄熱装置である場合には、第2の形態に係る包接水和物スラリーの製造装置を蓄熱槽内に配置することにより、包接水和物スラリーを製造する機能を保有する蓄熱装置を構成することができる。このような蓄熱装置は、包接水和物スラリーの製造と蓄積に要する設備として考えると、設備全体として従前より小型になり得る。また、当該貯留槽が包接水和物スラリーを収容する蓄熱槽であり、当該貯留槽を備える装置が蓄熱装置である場合に、第9乃至第12のいずれかの形態に係る過冷却解除装置を蓄熱槽内に配置することにより、原料溶液または原料スラリーの過冷却を解除する機能を保有する蓄熱装置を構成することができる。また、当該貯留槽が包接水和物スラリーを収容する蓄熱槽であり、当該貯留槽を備える装置が蓄熱装置である場合に、第14の形態に係る包接水和物の存在比率を増加させる装置を蓄熱槽内に配置することにより、包接水和物スラリーの包接水和物の存在比率を増加させる機能を保有する蓄熱装置を構成することができる。
【0048】
なお、本発明のいずれの形態においても、原料溶液又は原料スラリーから製造された包接水和物スラリーを原料スラリーとして還流させて、再度冷媒との熱交換に供すれば、包接水和物スラリーを構成する包接水和物の存在比率(固相率)を還流の都度高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る包接水和物スラリーの製造装置の説明図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る包接水和物スラリーの製造装置の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る過冷却解除装置の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る包接水和物スラリーを収容する貯留槽を備える装置の説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る包接水和物スラリーを収容する貯留槽を備える装置の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、実施形態により発明を詳細に説明する。
なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0051】
[実施形態1]
<包接水和物スラリーの製造装置>
図1は、本発明に係る包接水和物スラリーの製造装置の一実施形態の説明図である。
この実施形態において、包接水和物スラリーの製造装置1は、原料溶液を冷却して包接水和物スラリー3を生成する縦型円筒状の生成槽5を備えている。生成槽5の上端部には生成された包接水和物スラリー3を排出する排出管7が接続され、生成槽5の下面には原料溶液を供給する供給管9が接続されている。排出管7の下流側端部には生成された包接水和物スラリーを貯蔵するスラリー貯蔵槽11が設けられている。供給管9の上流側端部には原料溶液貯蔵槽13が設けられている。供給管9には、原料溶液を生成槽5に送るためのポンプ15、流量を調整するバルブ17、原料溶液の流量を計測する流量計測装置19がそれぞれ設けられている。
【0052】
生成槽5は、内径80mm、高さ約1mの透明塩化ビニール製パイプから形成される。生成槽5はこのように縦型円筒形からなるが、必ずしも縦型や円筒形である必要はない。
生成槽5は、少なくとも一部が透明の材質で形成することが好ましい。生成槽5の少なくとも一部を透明体で形成することにより、生成槽5内の液体が白濁化しているかどうかを確認することができ、これにより包接水和物がゲスト化合物の水溶液中に分散又は懸濁していること(本発明における包接水和物スラリーになっていること)を確認することができる。
生成槽5の最も下部(水箱部分)には、生成槽5に供給される原料溶液を均一に分散して(生成槽5の断面内分布を均一にさせて)、後述の流動床25に供給する機能を有する分散機構21が設けられる。分散機構21は、例えば直径約20mmのアルミナボールで構成される。
【0053】
分散機構21の上方には、後述の流動床25を構成するアルミナ粒子の沈降を防止する係留手段23が設けられる。この係留手段23は、金網又は多孔板が典型例であり、アルミナ粒子が沈降しない程度の目開きであればよい。
係留手段23の上方には、流動粒子を積層した流動床25が形成される。流動床25を形成する典型的な流動粒子(流動媒体)は、アルミナ、シリカ、ジルコニア等のセラミックス粒子やステンレス鋼、チタン等の金属粒子である。原料溶液の種類と設定される原料溶液の流量、生成する包接水和物スラリーの滞留時間等に応じて最適な材質、粒子径等が選択される。
【0054】
流動床25は、例えば直径約1mmのアルミナ粒子1リットル分を生成槽5に充填することにより形成される。
流動床25には熱交換器27が設置されている。熱交換器27は、伝熱管をコイル状にしたものであり、内部に冷媒を流通させることで、伝熱管の外表面を伝熱面(熱交換面)として機能させる。熱交換器27には、冷媒の流量などを調整して、原料溶液の冷却温度を設定する冷却温度設定装置(図示せず)が付随する。
冷媒温度は、例えば0℃に設定される。
伝熱管の材質はステンレス鋼、チタン等が典型例であるが、少なくとも熱伝導率と耐磨耗性に優れた材質の中から選択するのが好ましい。
【0055】
流動床25の上方には包接水和物の分散又は懸濁を行うための空間が設けられている。そして、生成槽5の上端部には、生成された包接水和物スラリー3を排出するためのオーバーフロー排出口29が設けられ、このオーバーフロー排出口29に前述の排出管7が接続されている。
生成槽5の上端面は、開放しても、蓋を被せてもよい。
【0056】
上記のように構成された生成槽5は、図1に示すように、包接水和物の分散・懸濁領域A、流動床領域B、固定床領域Cという3つの領域から構成されることになる。
包接水和物の分散・懸濁領域Aは、生成槽5内で流動床領域Bの下流側に配設され、包接水和物の分散又は懸濁を行うための領域である。
流動床領域Bは、生成槽5内で流動床25が配設され、固定床領域Cの下流側に配設される領域である。
固定床領域Cは、生成槽5内で分散機構21が配設されている領域である。係留手段23を含めて固定床領域Cと定義してもよい。
【0057】
各領域A,B,Cには、各領域A,B,Cの温度を計測するための温度計測装置31が少なくとも一つ設けられている。温度計測装置31によって、各領域A,B,Cの温度を計測することで、製造装置1の運転状態をモニターできるようにしている。
なお、製造装置1には、供給管9を通じて原料溶液を所定の温度(例えば8℃)で供給できるように温度調整手段(図示せず)が設けられている。
【0058】
この実施形態では、原料溶液貯蔵槽13とスラリー貯蔵槽11を別々に設けているが、これらを一つの槽にして、原料溶液又は原料スラリーを製造装置1に供給するように構成してもよい。即ち、原料溶液貯蔵槽13とスラリー貯蔵槽11を一つの槽にして、製造装置1内で生成された包接水和物スラリーを当該一つの槽に蓄え、当該一つの槽に蓄えられた包接水和物スラリーを原料スラリーとして製造装置1に還流させて、再度冷媒との熱交換に供するようにしてもよい。これにより包接水和物スラリーを構成する包接水和物の存在比率(固相率)を還流の都度高めることができる。
【0059】
<運転方法>
次に、上記の包接水和物スラリー製造装置の運転方法について説明する。
(1) 原料溶液貯蔵槽13に予め所定濃度の原料溶液を貯蔵しておく。
(2) ポンプ15を起動するとともに、流量計測装置19によって流量を測定し、この測定値に基づいて原料溶液の流量が所定の流量、例えば13.5L/min(生成槽5の高さ方向において毎秒4.5cmの流速に相当)となるようにバルブ17を制御して、原料溶液を生成槽5に供給する。
(3) 外部から目視にてアルミナ粒子が流動していること、即ち、流動層が形成されていることを確認した後、熱交換器27に冷媒を流し始め、冷却温度設定装置にて冷媒温度を0℃に設定し、0℃の冷媒を熱交換器27に循環させる。
(4) 流動床領域Bにおいて熱交換器27により原料溶液を冷却し、包接水和物を生成して包接水和物スラリーを製造し、その後、生成された包接水和物スラリー3をスラリー貯蔵槽11に回収する。
なお、原料溶液の代わりに原料スラリーを原料溶液貯蔵槽13に貯蔵しておき、これを生成槽5に供給することにより包接水和物スラリーを製造するようにしてもよい。
【0060】
<効果確認>
次に、上記の運転方法の実施により生じる効果について比較例と対比しつつ説明する。
(i) 比較例1
製造装置1から直径約1mmのアルミナ粒子、および直径約20mmのアルミナ粒子をそれぞれ流動床領域B及び固定床領域Cから除いた状態にして上記運転方法を実施した。
8℃(温度計測装置31cの測定値)の11wt%の臭化テトラn−ブチルアンモニウム(TBAB)水溶液を、流量13.5L/minで生成槽5の底部から流しながら、熱交換器27に0℃に設定された冷媒を流すことで当該水溶液を冷却した。熱交換器27が設けられた領域の温度計測装置31bの測定値が3℃まで下がった時点では排出管7を流れる液体は白濁しておらず、包接水和物スラリーの生成は確認されなかった。また、温度計測装置31aの測定値も3.5℃程度であった。
【0061】
(ii) 比較例2
製造装置1の固定床領域Cに直径約20mmのアルミナ粒子を充填した状態で、且つ、その他の条件を上記比較例1と同じにして上記運転方法を実施した。しかし、排出管7を流れる液体は白濁化しておらず、包接水和物スラリーの生成は確認されなかった。また、温度計測装置31aの測定値も3.5℃程度であった。
【0062】
(iii) 上記(i)及び(ii)の場合において、スラリー貯蔵槽11に収容された液体は、時間の経過に伴い白濁し、包接水和物スラリーの生成が確認された。また、スラリー貯蔵槽11に収容された包接水和物スラリーの生成が確認されなかった原料溶液を再び製造装置1に供給して還流させると、排出管7を流れる液体が白濁し、包接水和物スラリーの生成が確認された。これらの現象は、熱交換器27で原料溶液が過冷却され、時間の経過や機械的衝撃(還流時のポンプ15通過など)により過冷却解除されたことが原因であると推察される。
いづれにしても、比較例1及び比較例2では、生成槽5から排出される時点で、包接水和物スラリーの生成は確認されなかった。
【0063】
(iv) 実施例1
一方、製造装置1の流動床領域B及び固定床領域Cにそれぞれ直径約1mmのアルミナ粒子及び直径約20mmのアルミナ粒子を充填した状態で、且つ、その他の条件を上記比較例1(上記(i))と同じにして上記運転方法を実施した。
まず、8℃(温度計測装置31cの測定値)の11wt%のTBAB溶液を底部より流量13.5L/minで流したところ、流動床領域Bにおけるアルミナ粒子充填層の層高が約1.5倍程度に膨張し、アルミナ粒子の流動層が形成されることが目視にて確認された。
引き続き、熱交換器27に0℃に設定された冷媒を流して、TBAB水溶液を冷却したところ、流動床領域Bに設けられた温度計測装置31bの測定値が4℃にまで低下した後、5℃まで上昇し、排出管7を流れる液体が白濁し、包接水和物スラリーの生成が確認された。この現象は、流動床領域Bにおいて原料溶液が液相流動床を流通することにより、当該原料溶液の過冷却が解除されたこと、更にはその過冷却解除により生成した包接水和物が少なくとも分散・懸濁領域Aにおいて原料溶液に分散又は懸濁し、包接水和物スラリーになったことを意味している。
【0064】
また、スラリー貯蔵槽11に収容された包接水和物スラリーを還流させ、原料スラリーとして再び製造装置1に供給するようにすると、原料スラリー中の包接水和物の存在比率(固相率)が過度に高くない段階では流動床領域Bにおけるアルミナ粒子の流動状態は維持され、流動床領域Bを通過する原料スラリーの白濁度が増すことが確認され、固相率が増加していることが確認された。
以上のとおり、製造装置1を用いて流動床領域で原料溶液を熱交換して冷却することにより、包接水和物スラリーの製造ができること、原料溶液又は原料スラリーの過冷却解除を促進することができること並びに、包接水和物スラリー中の包接水和物の存在比率が増加することが判明した。
【0065】
[実施形態2]
<包接水和物スラリーの製造装置(プレート式熱交換器)>
図2は、本発明に係る包接水和物スラリーの製造装置の他の実施形態の説明図である。
この実施形態において、包接水和物スラリーの製造装置101は、いわゆるプレート式熱交換器と類似の構造を採用する熱交換器を備えている。
【0066】
製造装置101は、伝熱面107によって仕切られた9個の略直方体形状の隔室を備えている。これらの隔室は、原料溶液又は原料スラリーが流通する原料隔室105と冷媒が流通する冷媒隔室103とが交互に配置される構成となっている。つまり、原料隔室105と冷媒隔室103とが伝熱面107を介して交互に隣接して配置され、原料溶液又は原料スラリーと冷媒とが熱交換をするように構成されている。原料隔室105に流動粒子を入れて原料溶液又は原料スラリーを流通させることにより粒子を流動化させてなる流動床125を形成する。
なお、冷媒隔室103及び原料隔室105は、それぞれ、本発明の第3の形態に係る製造装置における第1の隔室及び第2の隔室に対応する。
【0067】
各原料隔室105の下部には各原料隔室105に通じる接続管108cが設けられ、接続管108cは原料溶液供給ヘッダー105hを介して原料溶液供給管108に接続されている。
各原料隔室105の上部には、冷媒隔室103を貫いて隣接する原料隔室105間を連通する連通管109が設けられている。この連通管109を設けることにより、図中右側に配置された原料隔室105の包接水和物スラリー102が連通管109を通じて順次図中左側の原料隔室105に移動して、最後に左端に配置された原料隔室105に連結された包接水和物スラリー排出管110から排出される。
【0068】
なお、包接水和物スラリー排出管110の下流側端部には生成された包接水和物スラリー102を貯蔵するスラリー貯蔵槽が設けられ、原料溶液供給管108の上流側端部には原料溶液又は原料スラリーを貯蔵する原料溶液貯蔵槽が設けられている(いずれも図示せず)。原料溶液供給管108には、原料溶液又は原料スラリーを原料隔室105に送るためのポンプ、流量を調整するバルブ、原料溶液又は原料スラリーの流量を計測する流量計測装置がそれぞれ設けられている(いずれも図示せず)。
【0069】
以下、各構成をさらに詳細に説明する。
<伝熱面>
伝熱面107の材質は、ステンレス鋼等が典型例であるが、熱伝導率と耐磨耗性に優れた材質の中から選択すればよい。
【0070】
<原料隔室>
原料隔室105は、包接水和物の分散・懸濁領域A、流動床領域B、固定床領域Cという3つの領域から構成されている。
これらの3つの領域から構成される原料隔室105においては、まず固定床領域Cで原料溶液又は原料スラリーの流れを分散し、流動床領域Bにおいて伝熱面107により、原料溶液の場合にはこれを過冷却し、粒子の流動によりその過冷却を解除することにより(上記理由1参照)、原料スラリーの場合には、これを冷却し、既に存在する包接水和物を生成核として或いは粒子の流動により(上記理由2参照)、それぞれ包接水和物を生成させる。かくして包接水和物を、分散・懸濁領域Aにおいて原料溶液又は原料スラリーに分散又は懸濁させ、更に伝熱面107により冷却する。これによって、包接水和物の生成量を高めることができ、包接水和物スラリーの固相率を高める(蓄熱量又は蓄熱密度を高める)ことが可能になる。
【0071】
以下、各領域を詳細に説明する。
(固定床領域)
固定床領域Cは、原料隔室105の最も下部に位置して、原料隔室105に供給される原料溶液又は原料スラリーを均一に分散して(原料隔室105の断面内分布を均一にさせて)、後述の流動床125に供給する機能を有する領域である。固定床領域は、例えば直径20mm程度のアルミナボールを積層して形成された分散機構121と、分散機構121の上方に設けられて後述の流動床125を構成するアルミナ粒子の沈降を防止する係留手段123(分散板)と、から構成されている。
固定床領域Cは、原料隔室105の最も下部に特に設けた水箱内にアルミナボールを堆積することで形成されるものであってもよい。係留手段123は、金網又は多孔板が典型例であり、アルミナ粒子が沈降しない程度の目開きであればよい。
【0072】
(流動床領域)
流動床領域Bは、係留手段123の上方に位置して、流動粒子を充填した流動床125によって形成される領域である。伝熱面107により原料溶液を過冷却状態にした後粒子の流動により過冷却を解除することにより(上記理由1参照)又は、原料スラリーを冷却した後既に存在している包接水和物を生成核として若しくは粒子の流動により(上記理由2参照)、包接水和物を生成させる。
流動床125を形成する典型的な流動媒体として、アルミナ、シリカ、ジルコニア等のセラミックス粒子やステンレス鋼、チタン等の金属粒子を用いることができる。そして、原料溶液又は原料スラリーの種類と設定される原料溶液又は原料スララリーの流量、生成する包接水和物スラリーの滞留時間等に応じて最適な材質、粒子径を選択する。この実施形態では、直径約1mmのアルミナ粒子を充填し、流動床125とすればよい。
【0073】
また、この流動床領域Bにおける伝熱面107に突起又はフィンを設けて伝熱面積を増やすことにより冷却効果を高めることができる。この流動床領域Bに別途熱交換器を設定して更に冷却効果を高めるようにしてもよい。例えば隣接する冷媒隔室103を連通するように、冷媒が内部を流通する伝熱管を設け、各原料隔室105の流動床領域Bに伝熱管を配置するようにしてもよい。
【0074】
(分散・懸濁領域)
分散・懸濁領域Aは、流動床125の上方に位置して、包接水和物の分散又は懸濁を行いながら、更に伝熱面107により冷却するための空間である。これによって、包接水和物の生成量を高めることができ、包接水和物スラリーの固相率を高める(蓄熱量又は蓄熱密度を高める)ことが可能になる。
なお、分散・懸濁領域Aにおける冷却効果をさらに高める場合には、分散・懸濁領域Aにおける伝熱面107に突起やフィンを設けて伝熱面積を増加したり、熱交換器を追加したりすればよい。或いは包接水和物スラリー排出管110の下流側に更に熱交換器を追加設置して原料隔室105から排出される包接水和物スラリー102をさらに冷却するようにしてもよい。
【0075】
<冷媒隔室>
各冷媒隔室103の下部には、各冷媒室に冷媒を供給する冷媒供給管111が接続されている。冷媒供給管111の上流側には、冷媒の流量などを調整して、原料溶液の冷却温度を設定する冷却温度設定装置(図示せず)が設けられている。各冷媒隔室103の上部には、冷媒排出管112が接続されて、熱交換した冷媒を排出するようになっている。
なお、一般的なプレート式熱交換器のプレート即ち伝熱面107の間隔はかなり狭いが、原料隔室105の幅は流動床125が形成される程度の広さを有している。冷媒隔室103の幅は一般的なプレート式熱交換器のプレート間の間隔と同様に狭くてもよい。
【0076】
上記のように構成された包接水和物スラリーの製造装置101においては、原料隔室105に流動床125を形成して原料溶液又は原料スラリーを流通させ、伝熱面107を介して冷媒により冷却するように構成されているので、伝熱面107に原料溶液又は原料スラリーに比べて熱伝導性が低い包接水和物が付着して伝熱面107の伝熱効率が低下することを、流動床125を構成する粒子の流動により防止でき、熱交換器の伝熱面107の伝熱効率を高いまま維持でき、高い効率で包接水和物スラリーを製造することができる。また、伝熱面107の汚れの防止・除去性能も高いため、保守管理も容易になる。
【0077】
しかも、原料隔室105と冷媒隔室103をプレート状の伝熱面107によって仕切るというプレート式熱交換器と類似の構造を採用しているので、他の方式、例えばシェルアンドチューブ方式の熱交換器に比べて伝熱面積が大きく、熱交換性能が高くなる。また、複数の冷媒隔室103と原料隔室105とが交互に隣接して構成されるので、製造装置の設置面積に対して伝熱面積を大きく設けることができ、熱交換性能が高くなる。更に、原料溶液又は原料スラリーを冷却しながら又は冷却する過程で流動床125を流通させるので、上記の理由1及び理由2により、包接水和物が生成し易くなり、高い効率で包接水和物スラリーを製造することが可能になる。
【0078】
<運転方法>
次に上記のように構成された包接水和物スラリーの製造装置の運転方法について説明する。
(1) 原料溶液貯蔵槽に予め所定濃度の原料溶液を貯蔵しておく。
(2) ポンプを起動させ、流量計測装置によって流量を測定し、この測定値に基づいて原料溶液の流量が所定の流量(原料隔室105に充填された流動粒子が流動するような流速となるような流量)となるようにバルブを制御して、原料溶液を原料隔室105に供給する。
(3) 流動粒子が流動していること、即ち、流動床125が形成されていることを確認した後、冷媒隔室103に冷媒を流し始め、冷却温度設定装置にて冷媒温度を所定温度に設定し、冷媒を冷媒隔室103に流通させる。
(4) 流動床領域Bにおいて伝熱面107を介して原料溶液を過冷却した後、流動粒子の流動により過冷却解除し、包接水和物を生成して包接水和物スラリーを製造し、その後、生成された包接水和物スラリーを、包接水和物スラリー排出管110を通じてスラリー貯蔵槽に回収する。
なお、原料溶液の代わりに原料スラリーを原料溶液貯蔵槽に貯蔵しておき、これを原料隔室105に供給することにより包接水和物スラリーを製造するようにしてもよい。
【0079】
図2に示す例では、各原料隔室105の上部を連通管109で接続することによって、各原料隔室105で生成された包接水和物スラリー102を、図中左端に配置された原料隔室105に連結された包接水和物スラリー排出管110から排出するように構成したが、包接水和物スラリー102を排出するための構成としては、各原料隔室105に排出管を設けて、その原料隔室105で製造された包接水和物スラリー102を各室に設けた排出管から個別に取り出すように構成してもよい。
【0080】
[実施の形態3]
<過冷却解除装置>
図3は、本発明の一実施形態に係る過冷却解除装置201の説明図である。過冷却解除装置201は、既に過冷却状態にある原料溶液又は原料スラリーを流通させることによって、原料溶液又は原料スラリーの過冷却を解除し、包接水和物スラリー203にするものである。
【0081】
この実施形態において、過冷却解除装置201は、過冷却状態にある原料溶液を過冷却解除する縦型円筒状の過冷却解除槽205を備えており、過冷却解除槽205の上端部には過冷却解除後の原料溶液203(即ち包接水和物スラリー203)を排出する排出管207が接続され、過冷却解除槽205の下面には別の熱交換器(図示せず)により冷却されて過冷却状態にある原料溶液を過冷却解除装置201に供給する供給管209が接続されている。
過冷却解除槽205は、図1に示した生成槽5において、熱交換器27を取り除いたものに相当し、他の構造は図1に示した生成槽と同様である。以下において、その構造を説明する。
【0082】
過冷却解除槽205は、縦型円筒形からなるが、必ずしも縦型や円筒形である必要はない。しかし、少なくとも一部が透明の材質で形成することが好ましい。過冷却解除槽205の少なくとも一部を透明にすることにより、過冷却解除槽205内の液体が白濁化しているかどうかが確認でき、これによって過冷却状態の原料溶液が過冷却解除されて包接水和物スラリー203になっていること)が確認できる。
過冷却解除槽205の最も下部(水箱部分)には、過冷却解除槽205に供給される原料溶液を均一に分散して(過冷却解除槽205の断面内分布を均一にさせて)、後述の流動床215に供給する機能を有する分散機構211が設けられている。
【0083】
分散機構211の上方には、後述する流動床215を構成するアルミナ粒子の沈降を防止する係留手段213が設けられている。この係留手段213は、金網又は多孔板が典型例であり、アルミナ粒子が沈降しない程度の目開きであればよい。
係留手段213の上方には、流動粒子を積層した流動床215が形成されている。流動床215を形成する典型的な流動粒子(流動媒体)は、アルミナ、シリカ、ジルコニア等のセラミックス粒子やステンレス鋼、チタン等の金属粒子である。原料溶液の種類と設定される原料溶液の流量、生成する包接水和物スラリーの滞留時間等に応じて最適な材質、粒子径を選択する。
【0084】
流動床215の上方には包接水和物の分散又は懸濁を行うための空間が設けられている。そして、過冷却解除槽205の上端部には、過冷却解除されて生成された包接水和物スラリーを排出するためのオーバーフロー排出口217が設けられ、このオーバーフロー排出口217に前述の排出管207が接続されている。
過冷却解除槽205の上端面は、開放しても、蓋を被せてもよい。
【0085】
上記のように構成された過冷却解除槽205は、図3に示すように図1の場合と同様に、包接水和物の分散・懸濁領域A、流動床領域B、固定床領域Cという3つの領域から構成されることになる。
包接水和物の分散・懸濁領域Aは、過冷却解除槽205内で流動床領域Bの下流側に配設される領域である。
流動床領域Bは、過冷却解除槽205内で流動床215が配設され、固定床領域Cの下流側に配設される領域である。
固定床領域Cは、過冷却解除槽205内で分散機構211が配設されている領域である。係留手段213を含めて固定床領域Cと定義してもよい。
【0086】
次に上記のように構成された本実施形態の動作及び効果を説明する。
(1) ポンプ(図示せず)を駆動させ、供給管209を通じて、過冷却状態にある原料溶液を過冷却解除装置201に供給する。
(2) 過冷却状態にある原料溶液は、固定床領域で均一分散されて、分散板の上方に配置している流動床215に至る。当該原料溶液は、流動床215を通過する際に、流動床215を構成する複数の粒子(流動媒体)を流動させる。
(3) 流動床を構成する複数の粒子同士が接触、擦過、衝突等を起こす。このような接触、擦過、衝突等が契機となって包接水和物が生成し易くなり、原料溶液の過冷却解除に資する。
(4) しかして、原料溶液の過冷却状態は、流動床領域Bを通過することにより解除される。そして分散・懸濁領域Aにおいて、新たに生成した包接水和物が流動床領域Bを通過した原料溶液に分散又は懸濁することにより、包接水和物のスラリーとなる。
(5)かくして、原料溶液の過冷却解除が可能になる。
【0087】
この実施形態においては、流動床215が複数の粒子で構成されるので、原料溶液が流通し易く、過冷却解除の契機となる機械的接触が多い流動床215を実現できる。なお、原料溶液の過冷却解除により生成される包接水和物が、新たな包接水和物の生成核として機能するので、過冷却解除が更に促進されることも起こり得る。こうして、この実施形態によれば、液相流動床を応用した効率のよい過冷却解除装置が実現できる。
なお、流動床215を構成する流動粒子の一部に、包接水和物が表面に付着し易い又は付着し易くなるように加工を施してある粒子を混在させておくことが好ましい。これにより、粒子の表面に少なくとも一時的に付着した包接水和物を別の包接水和物の生成核として機能させることができ、故に包接水和物スラリーをより効率良く製造することができる。
【0088】
[実施の形態4]
図4は、本発明の一実施の形態に係る貯留槽を備える装置の要部を示した図であり、本実施の形態に係る貯留槽を備える装置は、包接水和物スラリーを製造する包接水和物スラリー製造装置301(以下製造装置301という)が貯留槽300内に収容されてなるものである。以下、装置の詳細を説明し、その後装置の運転方法を説明する。
【0089】
(装置の説明)
<貯留槽>
貯留槽300は製造された包接水和物スラリー302を貯留するためのものであるが、包接水和物スラリー製造装置301で包接水和物スラリーが製造される前は、原料溶液や原料スラリーを収容して、原料溶液等の貯留槽として利用する。もっとも、原料溶液や原料スラリーを収容しておく槽が別にあるのであれば、貯留槽300は当初は空であってもかまわない。
貯留槽300には、製造装置301の外周に一定の区画を形成する区画部材340が製造装置301を囲むように無底状態で設置されている。区画部材340を設けることにより、製造装置301で製造された包接水和物スラリーを後述する包接水和物スラリー排出管310から円滑に排出することができる。
また、貯留槽300には貯留されている包接水和物スラリー302を槽外に排出するための包接水和物スラリー排出管310が設けられている。包接水和物スラリー排出管310の一端側は区画部材340と製造装置301の間に配置されている。
なお、貯留槽内に収容される包接水和物スラリー302が蓄熱材(冷熱輸送媒体を含む)として使用される場合であれば、当該貯留槽300は蓄熱槽と見ることができる。
【0090】
<製造装置>
製造装置301は実施形態1の包接水和物スラリー製造装置1とほぼ同じ構成である。すなわち、製造装置301は、円筒状の生成槽305と、生成槽305の内部に分散機構321、係留手段323、流動床325、熱交換器327を備えてなる構成である。
生成槽305は貯留槽300の天井部分から吊り下げることにより貯留槽300内に設置されている。生成槽305は、熱交換器327が配置される流動床325の部分が貯留槽300内に収容される原料溶液や原料スラリー302の液面より下になるように、すなわち流動床325部分が水没するように配置されている。このような配置にすることにより、熱交換器327を流通する冷媒による冷却効果が原料溶液や原料スラリー302にまで及び、その冷却効果を利用して生成槽305外の貯留槽300内における新たな包接水和物の生成又は生成した包接水和物スラリーの状態維持を効率的に行うことができる。
なお、生成槽305における外殻の水没している部分を熱伝導性の高い材料で構成すれば、上記の冷却効果が及び易くなるのでより好適である。
【0091】
生成槽305の底部には原料溶液又は原料スラリーを供給する原料溶液供給管308の一端が接続されており、原料溶液供給管308の他端側は貯留槽300内を通過して貯留槽300の外部まで延出している。
【0092】
生成槽305の上部には天井部307が設けられ、この天井部307および生成槽305の上部側面には生成された包接水和物スラリーを生成槽305から貯留槽300側に排出するためのオーバーフロー排出口317が設けられている。
オーバーフロー排出口317から排出された包接水和物スラリー302は一旦貯留槽300内に収容され、貯留槽300に設けられた包接水和物スラリー排出管310を通じて排出される。
【0093】
オーバーフロー排出口317のうち生成槽305の上部側面に設けたものは、貯留槽300が収容する包接水和物スラリー(又は原料溶液)302の液面と概ね同じ位置になるように設けられている。
しかし、オーバーフロー排出口317の設置位置はこれに限定されるものではなく、その設置位置、寸法、形状等は、流動床325を通過してできた包接水和物スラリーが製造装置外に排出され易くなるように適宜工夫される。
【0094】
生成槽305内に設置された分散機構321、係留手段323、流動床325、熱交換器327の構成は実施の形態1のものと同様である。したがって、実施の形態1と同様に、生成槽305内には、包接水和物の分散・懸濁領域A、流動床領域B、固定床領域Cという3つの領域が形成されることになる(図1参照)。
なお、熱交換器327には、熱交換器327に製造装置301外から冷媒を供給する冷媒供給管311と、熱交換した後の冷媒を製造装置301外に排出する冷媒排出管312が接続されている。
【0095】
(運転方法の説明)
貯留槽300には、当初は、原料溶液や原料スラリー302を収容しておく。原料溶液や原料スラリーを収容しておく槽が別にあるのであれば、槽300は当初は空であってもいてもよい。
図示していないポンプにより貯留槽300内に貯留されている原料溶液又は原料スラリー302を包接水和物スラリー排出管310から貯留槽300外に排出し、排出された原料溶液又は原料スラリーを原料溶液供給管308を通じて製造装置301に供給する。
なお、原料溶液や原料スラリーを収容しておく槽を別に設けた場合には、その別の槽から原料溶液又は原料スラリーを原料溶液供給管308を通じて製造装置301に供給する。
【0096】
製造装置301に供給された原料溶液又は原料スラリーは、分散機構321や係留手段323を通過し、流動床325を通過する過程で熱交換器327を介して冷媒により冷却される。その冷却の際、過冷却された原料溶液は、流動床325を通過する過程で過冷却の解除を受け、その結果生成した包接水和物が原料溶液に分散又は懸濁して包接水和物スラリーになる。
【0097】
流動床325を通過する過程では、流動床を構成する粒子の流動の作用により、熱交換器327の伝熱面に包接水和物が付着することがなく、汚れも付着しにくくなり、当該伝熱面の伝熱効率を高いまま維持することができるとともに、保守管理も容易になる。
また、原料溶液の過冷却が解除され易くなり、包接水和物スラリーにおける包接水和物の存在比率も増加し易くなる。
さらに、原料溶液又は原料スラリーの冷却の際、流動床を構成する流動粒子表面に包接水和物が付着していれば、それが生成核となって、新たな包接水和物の生成が促進される。
従って、原料溶液であれ、原料スラリーであれ、流動床を通過することにより、通過前に比べて包接水和物の存在比率が高まった包接水和物スラリーとなる。この包接水和物スラリーは、オーバーフロー排出口17を通じて生成槽305外の貯留槽300内に移動して、貯留槽300に収容されることになる。このとき、貯留槽300内に移動した包接水和物スラリー302は、区画部材340によって一定の区画内に集められるので、包接水和物スラリー排出管310による排出が円滑に行なわれる。
【0098】
貯留槽300内に収容された包接水和物スラリー302は、包接水和物スラリー排出管310を通じて貯留槽300外に送られ、空調システムの冷熱等所望の目的に使用される。所望の目的に使用された結果、包接水和物の一部又は全部が融解して水溶液に戻った後は、原料溶液又は原料スラリーとして貯留槽300内に戻せばよい。このときの原料溶液は、過冷却状態であっても、そうでなくてもよい。
【0099】
貯留槽300内に包接水和物スラリーを蓄積する必要がある場合には、当該包接水和物スラリーを包接水和物スラリー排出管310から槽外に取り出さなければよい。また、貯留槽300内における包接水和物の存在量(従って包接水和物スラリーの固相率)を高める必要がある場合には、貯留槽300内に収容された包接水和物スラリーを、包接水和物スラリー排出管310を通じて貯留槽300外に送出し、再度原料スラリーとして貯留槽300内に戻し、以後所望の存在量になるまで包接水和物スラリーの循環を繰り返せばよい。
【0100】
本実施の形態における貯留槽を備える装置であれば、原料溶液又は原料スラリーを収容する貯留槽300の中に本発明に係る包接水和物スラリーの製造装置301が配置されるので、当該製造装置301に対応した作用効果を奏するとともに、当該製造装置301の敷設に本来必要な空間や床面積を削減することができ、故に全体としての装置規模を相対的に小さくすることができる。
例えば、貯留槽300が包接水和物スラリーを収容する蓄熱槽であり、貯留槽300を備える装置が蓄熱装置である場合には、包接水和物スラリーを製造するための包接水和物スラリーの製造装置301が蓄熱槽内に配置され、包接水和物スラリーを製造する機能を有する蓄熱装置が構成されることになる。これにより、包接水和物スラリーの製造と蓄積に要する設備を全体として従前より小型にすることができる。
本実施の形態では、製造装置301を貯留槽300内の原料溶液や原料スラリー又は包接水和物スラリーに水没させている。この構成も、包接水和物スラリーの製造と蓄積に要する設備を全体として従前より小型にするという効果の発現に通じている。
【0101】
なお、本実施の形態においては、生成槽305を、貯留槽300の天井部分から吊り下げることにより据え付けた例を示したが、生成槽305の設置方法はこの方法に限定されない。例えば、生成槽305を貯留槽300の底部に直接又は適切な支持機構(台座を含む)を介在させて据え付けるようにしてもよい。
【0102】
また、上記の実施の形態では、貯留槽300内へオーバーフローした水和物スラリーが貯留槽300内で散逸して包接水和物スラリー排出管310から貯留槽外に取り出しにくくなる場合の対策として、製造装置301を包囲するように区画部材340を設ける例を示した。
しかし、区画部材340は必ずしも製造装置301を包囲するようにこれを設ける必要はなく、オーバーフロー排出口317から出てきた包接水和物スラリーが包接水和物スラリー排出管310に集まり易くなるようにその設置位置、寸法、形状等を決めればよい。これにより、包接水和物スラリーの散逸を適度に抑制することができ、包接水和物スラリー排出管310による槽外への取り出しを容易にすることができる。
でき、故に包接水和物スラリーをより効率良く製造することができる。
【0103】
[実施の形態5]
図5は、本発明の一実施の形態に係る貯留槽を備える装置の要部を示した図であり、本実施の形態に係る貯留槽を備える装置は、過冷却状態にある原料溶液又は原料スラリーの過冷却を解除する過冷却解除装置401が貯留槽400内に収容されてなるものである。過冷却解除装置401により過冷却状態にある原料溶液又は原料スラリーの過冷却が解除され、包接水和物スラリーが生成される。以下、装置の詳細を説明し、その後装置の運転方法を説明する。
【0104】
(装置の説明)
<貯留槽>
貯留槽400は製造された包接水和物スラリー402を貯留するためのものであるが、過冷却解除装置401で原料溶液又は原料スラリーの過冷却が解除され包接水和物スラリーが生成される前は、原料溶液や原料スラリーを収容して、原料溶液等の貯留槽として利用する。もっとも、原料溶液や原料スラリーを収容しておく槽が別にあるのであれば、貯留槽400は当初は空であってもかまわない。
貯留槽400には、過冷却解除装置401の外周に一定の区画を形成する区画部材440が過冷却解除装置401を囲むように無底状態で設置されている。区画部材440を設けることにより、過冷却解除装置401で過冷却が解除されて生成された包接水和物スラリーを後述する包接水和物スラリー排出管410から円滑に排出することができる。
また、貯留槽400には貯留されている包接水和物スラリー402を槽外に排出するための包接水和物スラリー排出管410が設けられている。包接水和物スラリー排出管410の一端側は区画部材440と過冷却解除装置401の間に配置されている。
なお、貯留槽400内に収容される包接水和物スラリー402が蓄熱材(冷熱輸送媒体を含む)として使用される場合であれば、当該貯留槽400は蓄熱槽と見ることができる。
【0105】
<過冷却解除装置>
過冷却解除装置401は実施形態3の過冷却解除装置201とほぼ同じ構成である。すなわち、過冷却解除装置401は、円筒状の過冷却解除槽405と、過冷却解除槽405の内部に分散機構421、係留手段423、流動床425を備えてなる構成である。
過冷却解除槽405は貯留槽400の天井部分から吊り下げることにより貯留槽400内に設置されている。
【0106】
過冷却解除槽405の底部には原料溶液又は原料スラリーを供給する原料溶液供給管408の一端が接続されており、原料溶液供給管408の他端側は貯留槽400内を通過して貯留槽400の外部まで延出している。
【0107】
過冷却解除槽405の上部には天井部407が設けられ、この天井部407および過冷却解除槽405の上部側面には生成された包接水和物スラリーを過冷却解除槽405から貯留槽400側に排出するためのオーバーフロー排出口417が設けられている。
オーバーフロー排出口417から排出された包接水和物スラリーは一旦貯留槽400内に収容され、貯留槽400に設けられた包接水和物スラリー排出管410を通じて排出される。
【0108】
オーバーフロー排出口417のうち過冷却解除槽405の上部側面に設けたものは、貯留槽400が収容する包接水和物スラリー(又は原料溶液)402の液面と概ね同じ位置になるように設けられている。
しかし、オーバーフロー排出口417の設置位置はこれに限定されるものではなく、その設置位置、寸法、形状等は、流動床425を通過してできた包接水和物スラリーが製造装置外に排出され易くなるように適宜工夫される。
【0109】
過冷却解除槽405内に設置された分散機構421、係留手段423、流動床425の構成は実施の形態3のものと同様である。したがって、実施の形態3と同様に、過冷却解除槽405内には、包接水和物の分散・懸濁領域A、流動床領域B、固定床領域Cという3つの領域が形成されることになる(図3参照)。
【0110】
(運転方法の説明)
貯留槽400には、当初は、原料溶液や原料スラリー402を収容しておく。原料溶液や原料スラリーを収容しておく槽が別にあるのであれば、槽400は当初は空であってもいてもよい。
図示していないポンプにより貯留槽400内に貯留されている原料溶液又は原料スラリーを包接水和物スラリー排出管410から貯留槽400外に排出し、排出された原料溶液又は原料スラリーを図示しない熱交換器を介して冷媒と熱交換させることにより冷却し、過冷却状態にする。その後、過冷却状態の原料溶液又は原料スラリーを、原料溶液供給管408を通じて過冷却解除装置401に供給する。なお、原料溶液や原料スラリーを収容しておく槽を別に設けた場合には、その別の槽から原料溶液又は原料スラリーを過冷却状態にした後、原料溶液供給管408を通じて過冷却解除装置401に供給する。
【0111】
過冷却解除装置401に供給された過冷却状態の原料溶液又は原料スラリーは、分散機構421や係留手段423を通過し、流動床425を通過する過程で過冷却の解除を受け、その結果生成した包接水和物が原料溶液に分散又は懸濁して包接水和物スラリーが生成される。また、その包接水和物生成の際、流動床425を構成する流動粒子表面に包接水和物が付着していれば、それが生成核となって、新たな包接水和物の生成が促進される。従って、原料溶液であれ、原料スラリーであれ、流動床425を通過することにより、通過前に比べて包接水和物の存在比率が高まった包接水和物スラリーとなる。この包接水和物スラリーは、オーバーフロー排出管417を通じて過冷却解除槽405外の貯留槽400内に移動して、貯留槽400に収容されることになる。このとき、貯留槽400内に移動した包接水和物スラリー402は、区画部材440によって一定の区画内に集められるので、包接水和物スラリー排出管410による排出が円滑に行なわれる。
【0112】
貯留槽400内に収容された包接水和物スラリー402は、包接水和物スラリー排出管410を通じて貯留槽400外に送られ、空調システムの冷熱等所望の目的に使用される。所望の目的に使用された結果、包接水和物の一部又は全部が融解して水溶液に戻った後は、図示しない熱交換器を介して冷媒と熱交換させることにより冷却され、過冷却状態にされた後、貯留槽400内に戻される。
【0113】
貯留槽400内に包接水和物スラリーを蓄積する必要がある場合には、当該包接水和物スラリーを包接水和物スラリー排出管410から槽外に取り出さなければよい。また、貯留槽400内における包接水和物の存在量(従って包接水和物スラリーの固相率)を高める必要がある場合には、貯留槽400内に収容された包接水和物スラリーを、包接水和物スラリー排出管410を通じて貯留槽400外に送出し、図示しない熱交換器を介して冷媒と熱交換させることにより冷却し、再度原料スラリーとして貯留槽400内に戻し、以後所望の存在量になるまで包接水和物スラリーの循環を繰り返せばよい。
【0114】
本実施の形態における貯留槽を備える装置であれば、原料溶液又は原料スラリーを収容する貯留槽400の中に本発明に係る過冷却解除装置401が配置されるので、当該過冷却解除装置401に対応した作用効果を奏するとともに、当該過冷却解除装置401の敷設に本来必要な空間や床面積を削減することができ、故に全体としての装置規模を相対的に小さくすることができる。
例えば、貯留槽400が包接水和物スラリーを収容する蓄熱槽であり、貯留槽400を備える装置が蓄熱装置である場合には、原料溶液又は原料スラリーの過冷却を解除し包接水和物スラリーを生成するための過冷却解除装置401が蓄熱槽内に配置され、過冷却を解除する機能を有する蓄熱装置が構成されることになる。これにより、過冷却解除と包接水和物スラリーの蓄積に要する設備を全体として従前より小型にすることができる。
本実施の形態では、過冷却解除装置401を貯留槽400内の原料溶液や原料スラリー又は包接水和物スラリー402に水没させている。この構成も、過冷却解除と包接水和物スラリーの蓄積に要する設備を全体として従前より小型にするという効果の発現に通じている。
【0115】
なお、本実施の形態においては、過冷却解除槽405を、貯留槽400の天井部分から吊り下げることにより据え付けた例を示したが、過冷却解除槽405の設置方法はこの方法に限定されない。例えば、過冷却解除槽405を貯留槽400の底部に直接又は適切な支持機構(台座を含む)を介在させて据え付けるようにしてもよい。
【0116】
また、上記の実施の形態では、貯留槽400内へオーバーフローした水和物スラリーが貯留槽400内で散逸して包接水和物スラリー排出管410から貯留槽外に取り出しにくくなる場合の対策として、過冷却解除装置401を包囲するように区画部材440を設ける例を示した。
しかし、区画部材440は必ずしも過冷却解除装置401を包囲するようにこれを設ける必要はなく、オーバーフロー排出口417から出てきた包接水和物スラリー402が包接水和物スラリー排出管410に集まり易くなるようにその設置位置、寸法、形状等を決めればよい。これにより、包接水和物スラリーの散逸を適度に抑制することができ、包接水和物スラリー排出管410による槽外への取り出しを容易にすることができる。
【0117】
以上の各実施の形態の説明において、流動床を構成する流動粒子が原料溶液又は原料スラリーよりも比重が大きく、原料溶液又は原料スラリーが流動床を下方から上方に流通する形態について説明されているが、本発明はそのような形態に限定されない。即ち、流動床を構成する流動粒子が原料溶液又は原料スラリーよりも比重が小さく、原料溶液又は原料スラリーが流動床を上方から下方に流通する形態も、本発明の実施形態として含まれる。
【0118】
1 製造装置
3、102 包接水和物スラリー
5 生成槽
7、207 排出管
9、209 供給管
11 スラリー貯蔵槽
13 原料溶液貯蔵槽
15 ポンプ
17 バルブ
19 流量計測装置
21、121、211 分散機構
23、123、213 係留手段
25、125、215 流動床
27 熱交換器
29、217 オーバーフロー排出口
31 温度計測装置
101 製造装置
103 冷媒隔室(第1の隔室)
105 原料隔室(第2の隔室)
107 伝熱面
108 原料溶液供給管
109 連通管
110 包接水和物スラリー排出管
111 冷媒供給管
112 冷媒排出管
201 過冷却解除装置
203 過冷却解除後の原料溶液(包接水和物スラリー)
205 過冷却解除槽
300 貯留槽(蓄熱槽)
301 製造装置
302 包接水和物スラリー(又は原料溶液若しくは原料スラリー)
305 生成槽
307 天井部
308 原料溶液供給管
310 包接水和物スラリー排出管
311 冷媒供給管
312 冷媒排出管
317 オーバーフロー排出口
321 分散機構
323 係留手段
325 流動床
327 熱交換器
340 区画部材
400 貯留槽(蓄熱槽)
401 過冷却解除装置
402 包接水和物スラリー(又は原料溶液若しくは原料スラリー)
405 過冷却解除槽
407 天井部
408 原料溶液供給管
410 包接水和物スラリー排出管
417 オーバーフロー排出口
421 分散機構
423 係留手段
425 流動床
440 区画部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包接水和物のゲスト化合物の水溶液の過冷却を解除する方法であって、
過冷却状態にある前記水溶液を流動床の少なくとも一部に流通させる工程を有することを特徴とする過冷却解除方法。
【請求項2】
包接水和物のゲスト化合物の水溶液の過冷却を解除する装置であって、流動床を備え、過冷却状態にある前記水溶液が前記流動床の少なくとも一部を流通するように構成されていることを特徴とする過冷却解除装置。
【請求項3】
包接水和物がそのゲスト化合物の水溶液の中に分散又は懸濁してなるスラリーにおける前記包接水和物の存在比率を増加させる方法であって、
前記スラリーを、その冷却後又はその冷却の過程で、流動床の少なくとも一部に流通させる工程を有することを特徴とする方法。
【請求項4】
包接水和物がそのゲスト化合物の水溶液の中に分散又は懸濁してなるスラリーにおける前記包接水和物の存在比率を増加させる装置であって、流動床を備え、前記水溶液が冷却された後又は冷却される過程で前記流動床の少なくとも一部を流通するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項5】
包接水和物のゲスト化合物の水溶液又は包接水和物スラリーを収容する貯留槽を備える装置であって、請求項2に記載の過冷却解除装置及び請求項4に記載の包接水和物の存在比率を増加させる装置のうちいずれかを備えることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−158243(P2011−158243A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42480(P2011−42480)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【分割の表示】特願2007−204943(P2007−204943)の分割
【原出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】