説明

過増殖性疾患、自己免疫疾患、および心疾患の治療のための3−キヌクリジノンを含有する水溶液

式(I):


の化合物の水溶液である液体組成物であって、前記水溶液が約3.0〜約5.0のpHを有する、前記組成物。上記液体組成物を、過剰増殖性疾患、自己免疫疾患および心疾患から選択される疾患の治療に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キヌクリジノン誘導体の製剤およびそのような製剤の調製方法ならびにそのような製剤の使用に関する。
【発明の概要】
【0002】
例えば、過剰増殖性疾患、自己免疫疾患および心疾患などの様々な疾患の治療に使用される3−キヌクリジノン誘導体が、国際公開第05/090341号に記載されている。同様に、特に腫瘍性疾患の治療に使用される3−キヌクリジノン誘導体が、国際公開第04/084893号、第02/024692および第03/070250号に開示されている。
【0003】
国際公開第05/090341号には、その中に開示されているキヌクリジノン組成物を、例えば、経口、静脈内、皮膚もしくは皮下、経鼻、筋肉内または腹膜内などの任意の投与経路のために調製することができ、かつ担体または他の材料の正確な性質は投与経路によって決まることが述べられている。また、非経口投与のために、発熱性物質を含有せず、かつ必要なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容される水溶液を用いることも指摘されている。
【0004】
しかし、本発明者らは、非経口投与に有用な水溶液(すなわち、一般に6.5〜7.5のpHを有する)などの水溶液または非経口投与可能な溶液を調製するための対応する原液中では、本発明の化合物は容認できない程に安定性が低く、可溶化後ほんの数時間以内に分解生成物が形成されることに気づいた。溶液中でのこの化学的安定性の欠如は、上記先行技術文献に記載されている化合物にとって非常に予想外であった。
【0005】
本発明の1つの目的は、特に先行技術の製剤と比べて貯蔵寿命が向上した本明細書に定義されている3−キヌクリジノン誘導体の製剤を提供することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、例えば、癌などの過剰増殖性疾患、自己免疫疾患および心疾患から選択される疾患の治療に有用な本明細書に定義されている3−キヌクリジノン誘導体を含んでなる貯蔵寿命が向上した、特に先行技術の製剤と比べて貯蔵寿命が向上した製剤を提供することにある。
【0007】
さらに別の目的は、分解率が減少した本明細書に定義されている3−キヌクリジノン誘導体を含有する液体製剤を提供することにある。
本発明さらなる目的は、本明細書で以下に定義され、かつ特に先行技術の製剤と比べて貯蔵寿命が向上した3−キヌクリジノン誘導体を含有する、過剰増殖性疾患、自己免疫疾患および心疾患の治療のための医薬製剤を提供することにある。
【0008】
本発明のさらなる目的は、本明細書に定義されている3−キヌクリジノン誘導体の長期間の貯蔵を可能にする製剤を提供することにある。
本発明の別の目的は、本発明に係る製剤の調製方法を提供することにある。
【0009】
特定の一態様では、本発明は、式(I):
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、
は、H、−CH−O−R、−CH−S−Rおよび−CH−NRから選択され、
は、−CH−O−R、−CH−S−Rおよび−CH−NRから選択され、
およびRは同じであるか異なっており、H、置換もしくは非置換の非分岐鎖状もしくは分岐鎖状の飽和もしくは不飽和C3〜C12シクロアルキルもしくはC1〜C10アルキル、置換もしくは非置換ベンジル、置換もしくは非置換の単環式もしくは二環式アリール、N、OおよびSから独立に選択される1つ以上のヘテロ原子を含む置換もしくは非置換の単環式、二環式もしくは三環式C2〜C10ヘテロアリールもしくは非芳香族C2〜C10ヘテロシクリルから独立に選択されるか、あるいは、−CH−NR中のRおよびRは互いに結合され、かつそれらが結合している窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから独立に選択される1つ以上のさらなるヘテロ原子を含んでよく、かつ1つ以上の環式ケト基を含んでよい、置換もしくは非置換の非芳香族C2〜C10単環式もしくは二環式ヘテロシクリルを形成しており、
ここで、該置換された基の置換基は、非分岐鎖状もしくは分岐鎖状の飽和もしくは不飽和C3〜C12シクロアルキルもしくはC1〜C10アルキル、ハロゲン、ハロゲン置換されたC1〜C10アルキル、単環式もしくは二環式アリール、N、OおよびSから独立に選択される1つ以上のヘテロ原子を含む単環式、二環式もしくは三環式C2〜C10ヘテロアリールもしくは非芳香族C2〜C10ヘテロシクリル、C1〜C10アルコキシ、アミノおよびC1〜C10アルキルアミノから独立に選択される]
の3−キヌクリジノン誘導体またはその医薬的に許容される塩、および水溶液のpHを約3.0〜約5.0にするような量の少なくとも1種のpH調整剤の水溶液である製剤を提供する。
【0012】
一態様では、該製剤は医薬製剤である。従って、治療で使用される本明細書に定義されている液体製剤が提供される。
一態様では、該製剤は、その中に溶解された式(I)の3−キヌクリジノン誘導体の長期間の貯蔵を可能にする原液である。
【0013】
一態様では、本発明の製剤に含まれている式(I)の3−キヌクリジノン誘導体は、癌などの過剰増殖性疾患、自己免疫疾患および心疾患から選択される疾患の治療、特に癌の治療に有用である。
【0014】
さらなる一態様では、例えば、癌などの過剰増殖性疾患、自己免疫疾患または心疾患の病態生理学的状態の予防および/または治療方法で使用される本明細書に定義されている3−キヌクリジノン誘導体の液体製剤が提供される。
【0015】
別の態様は、例えば、癌などの過剰増殖性疾患、自己免疫疾患または心疾患の病態生理学的状態の予防および/または治療のための薬を製造するための、本明細書に定義されている3−キヌクリジノンの液体製剤の使用に関する。
【0016】
さらなる一態様では、それを必要としている哺乳類への有効量の本発明の組成物の投与
、好ましくは非経口投与を含む病態生理学的状態の予防および/または治療方法が提供される。
【0017】
さらなる一態様では、それを必要としている哺乳類への本発明に係る液体製剤の使用によって調製された有効量の組成物の投与、好ましくは非経口投与を含む病態生理学的状態の予防および/または治療方法が提供される。
【0018】
さらに、有効量の本発明の組成物または本発明に係る液体製剤の使用によって調製された組成物を哺乳類に非経口もしくは経口投与することを含む、異常な細胞増殖によって媒介される病態生理学的状態の予防および/または治療方法が提供される。
【0019】
特定の一態様では、病態生理学的状態を制御するための治療的介入を必要としている哺乳類に、有効量の本発明の組成物を非経口もしくは経口投与することを含み、かつ異常な細胞増殖が制御される、異常な細胞増殖によって媒介される病態生理学的状態の予防および/または治療方法が提供される。
【0020】
式(I)化合物またはその医薬的に許容される塩、添加されてもよい少なくとも1種のさらなる治療活性剤、および組成物のpHを3.0〜5.0にするような量のpH調整剤を水相に添加することを含んでなる、本発明の液体製剤の調製方法も提供される。
【0021】
以下、本発明のさらなる態様について本明細書に記載し、かつ特許請求の範囲に定義する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、3〜4日/週で1日に2回、100mg/kgの用量で、2−(ヒドロキシメチル)−2−(メトキシメチル)キヌクリジン−3−オン(APR−246)またはPBS(媒体、対照)で静脈内治療されたSCIDマウスのp53変異体異種移植片腫瘍の体積を示す。明らかなように、治療期間の終了時の対照動物の平均腫瘍体積は、APR−246で治療した動物の体積の3倍以上の大きさであった。マンホイットニー検定で腫瘍体積の差を分析した。統計学的に有意な抗癌効果を発見した。
【図2】図2は、生体内での中空繊維モデルにおけるAML MV-4-11細胞に対するAPR−246の効果を示す。データは、平均±SEM(n=7〜8)として示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
特に定義されていない限り、本明細書に使用されている全ての技術および科学用語は、本発明が属している技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。
【0024】
従って、特に明記されていない限り、「原液」とは、実際の使用のためにそれより低い濃度に希釈される一般に濃縮された溶液を指す。当業者には知られているように、例えば、調製時間を節約し、材料を保存し、貯蔵空間を減らし、かつ使用液を調製する精度を向上させるために、原液を使用する。
【0025】
「貯蔵寿命」とは、使用または消費に適さない状態にならずに貯蔵することができる、製品の貯蔵時間の長さを意味する。
本発明によれば、驚くべきことに、最大約5.0のpHを有する水溶液では、本明細書で先に参照されている3−キヌクリジノンの化学的安定性は実質的に上昇することが分かった。実際に、場合によっては、より高いpHの対応する溶液と比べて10倍以上も分解率が減少することが分かった。
【0026】
従って、本発明は、本明細書に定義されている3−キヌクリジノン誘導体の水溶液を含む組成物であって、上記水溶液のpHが約3.0から約5.0、好ましくは約4.7、約4.5、約4.2、例えば、約4.0である、前記組成物を提供する。例えば、上記pHは、下限がpH3.0またはpH3.5で上限がpH5またはpH4.5の範囲であってもよく、好ましくはpH3.8〜pH4.2の範囲、例えば、約4.0であってもよい。例えば、本発明の水溶液のpHは、約3.0または約3.2、例えば、約3.4、約3.6または約3.8などのpHから選択される下限と、約5.0、約4.7、約4.5または約4.2、例えば、約4.0の上限を有していてもよい。
【0027】
本発明のpHでは、本発明の水溶液に溶解された式(I)の3−キヌクリジノン誘導体の分解に対する化学的安定性は、先行技術に係る水溶液中の本化合物の安定性と比べて実質的に向上している。事実、本発明に係る3−キヌクリジノン誘導体の水溶液は、2〜8℃で24ヶ月以上の貯蔵寿命を有することができる。
【0028】
本発明の製剤中に存在する3−キヌクリジノン誘導体は、式(I):
【0029】
【化2】

【0030】
[式中、
は、H、−CH−O−R、−CH−S−Rおよび−CH−NRから選択され、
は、−CH−O−R、−CH−S−Rおよび−CH−NRから選択され、
およびRは同じであるか異なっており、H、置換もしくは非置換の非分岐鎖状もしくは分岐鎖状の飽和もしくは不飽和C3〜C12シクロアルキルもしくはC1〜C10アルキル、置換もしくは非置換ベンジル、置換もしくは非置換の単環式もしくは二環式アリール、N、OおよびSから独立に選択される1つ以上のヘテロ原子を含む置換もしくは非置換の単環式、二環式もしくは三環式C2〜C10ヘテロアリールもしくは非芳香族C2〜C10ヘテロシクリルから独立に選択されるか、あるいは−CH−NR中のRおよびRは互いに結合し、それらが結合している窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから独立に選択される1つ以上のさらなるヘテロ原子を含んでよく、かつ1つ以上の環式ケト基を含んでよい、置換もしくは非置換の非芳香族C2〜C10単環式もしくは二環式ヘテロシクリルを形成しており、
ここで、置換された基の置換基は、非分岐鎖状もしくは分岐鎖状の飽和もしくは不飽和C3〜C12シクロアルキルもしくはC1〜C10アルキル、ハロゲン、ハロゲン置換されたC1〜C10アルキル、単環式もしくは二環式アリール、N、OおよびSから独立に選択される1つ以上のヘテロ原子を含む単環式、二環式もしくは三環式C2〜C10ヘテロアリールもしくは非芳香族C2〜C10ヘテロシクリル、C1〜C10アルコキシ、アミノおよびC1〜C10アルキルアミノから独立に選択される]
の化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0031】
式(I)の化合物の医薬的に許容される塩は、例えば、無機鉱酸または有機酸の酸付加塩であってもよい。
式(I)の化合物では、Rは、H、−CH−O−R、−CH−S−Rおよび−CH−NRから選択される。いくつかの態様では、Rは、H、−CH−O
−Rおよび−CH−S−Rから選択される。いくつかの態様では、Rは、Hおよび−CH−O−Rから選択される。他の態様では、Rは、−CH−O−Rおよび−CH−S−Rから選択される。いくつかの態様では、RはHである。
【0032】
式(I)中のRは、−CH−O−R、−CH−S−Rおよび−CH−NRから選択される。いくつかの態様では、Rは、−CH−O−Rおよび−CH−S−Rから選択される。さらに他の態様では、Rは−CH−O−Rである。
【0033】
一態様では、Rは、H、−CH−O−Rおよび−CH−S−Rから選択され、Rは、−CH−O−Rおよび−CH−S−Rから選択される。
一態様では、RはHであり、Rは、−CH−O−R、−CH−S−Rおよび−CH−NRから、例えば、−CH−O−Rおよび−CH−S−Rから選択され、特に−CH−O−Rである。
【0034】
一態様では、Rは、Hおよび−CH−O−Rから選択され、Rは、−CH−O−Rである。
一態様では、RおよびRはどちらも−CH−O−Rである。
【0035】
一態様では、各Rは、H、置換もしくは非置換の非分岐鎖状もしくは分岐鎖状の飽和もしくは不飽和C3〜C12シクロアルキルおよびC1〜C10アルキルおよびベンジルから独立に選択される。例えば、各Rは、HおよびC1〜C10アルキルから、例えば、HおよびC1〜C6アルキル、HおよびC1〜C4アルキルまたはHおよびC1〜C3アルキルから、特に、Hおよびメチルから独立に選択されてもよい。
【0036】
一態様では、Rは、Hおよび−CH−O−Rから選択され、Rは−CH−O−Rであり、各Rは、H、置換もしくは非置換の非分岐鎖状もしくは分岐鎖状の飽和もしくは不飽和C3〜C12シクロアルキルおよびC1〜C10アルキルおよびベンジルから、特に、HおよびC1〜C10アルキルから、例えば、HおよびC1〜C6アルキル、HおよびC1〜C4アルキルまたはHおよびC1〜C3アルキルから、特に、Hおよびメチルから独立に選択される。
【0037】
一態様では、RおよびRはどちらも−CH−O−Rであり、各Rは、H、置換もしくは非置換の非分岐鎖状もしくは分岐鎖状の飽和もしくは不飽和C3〜C12シクロアルキルおよびC1〜C10アルキルから、特に、HおよびC1〜C10アルキルから、例えば、HおよびC1〜C6アルキル、HおよびC1〜C4アルキルまたはHおよびC1〜C3アルキルから、特に、Hおよびメチルから独立に選択される。
【0038】
本明細書で先に定義されている式(I)の化合物では、任意のC1〜C10アルキルは、例えば、C1〜C6アルキルまたはC1〜C4アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピルまたはブチルであってもよい。任意のC3〜C12シクロアルキルは、例えば、C3〜C8シクロアルキルまたはC3〜C6シクロアルキルであってよい。任意の単環式もしくは二環式アリールは、例えばフェニルなどの単環式アリールであってもよい。任意の単環式、二環式もしくは三環式C2〜C10ヘテロアリールは、例えば、単環式もしくは二環式C2〜C5ヘテロアリール、例えば、5もしくは6員の単環式または9員の二環式C2〜C5ヘテロアリールであってもよい。任意の単環式、二環式もしくは三環式の非芳香族C2〜C10ヘテロシクリルは、例えば、単環式もしくは二環式のC2〜C5ヘテロシクリル、例えば、5もしくは6員の単環式または9もしくは10員の二環式C2〜C5ヘテロシクリルであってもよい。任意のハロゲンは、F、Cl、BrおよびIから、好ましくはFおよびClから選択されてもよい。例えば、N、OおよびSから独立に選択される1つ以上のヘテロ原子を含む任意の複素環(芳香族または非芳香族)は、例えば、Nお
よびOから独立に選択される1〜5つのヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0039】
一態様では、本明細書で先に定義されている式(I)の化合物では、任意の置換もしくは非置換のC3〜C12シクロアルキルもしくはC1〜C10アルキルは置換されていない。
【0040】
一態様では、任意の置換もしくは非置換ベンジルは置換されていない。
一態様では、任意の置換もしくは非置換の単環式もしくは二環式アリールは置換されていない。
【0041】
一態様では、任意の置換もしくは非置換の単環式、二環式もしくは三環式C2〜C10ヘテロアリールもしくは非芳香族C2〜C10ヘテロシクリルは、置換されていない。
一態様では、上記いずれかの基が置換されている場合、各置換基は、C1〜C10アルキル、例えばC1〜C6アルキル、C1〜C4アルキルまたはC1〜C3アルキル(例えばメチル)、ハロゲン(例えばCl)、ハロゲン置換されたC1〜C10アルキル(例えばトリフルオロメチル)、単環式C2〜C5ヘテロアリール(例えばピリジル)、C1〜C10アルコキシ、例えばC1〜C6アルコキシ、C1〜C4アルコキシまたはC1〜C3アルコキシ(例えば、メトキシ)およびアミノから選択される。
【0042】
一態様では、上記いずれかの基が置換されている場合、各置換された基の置換基数は1、2または3である。
他の態様では、本発明の3−キヌクリジノン誘導体は、本明細書で先に参照されている先行技術文献、例えば、国際公開第05/090341号、第04/084893号、第02/024692号および第03/070250号に例示されているもの、例えば、表1に示されているものから選択される。
【0043】
【表1−1】

【0044】
【表1−2】

【0045】
【表1−3】

【0046】
一態様では、本発明の3−キヌクリジノン誘導体すなわち式(I)の化合物は、2−(ヒドロキシメチル)−2−(メトキシメチル)キヌクリジン−3−オンおよび2,2−ビス(ヒドロキシメチル)キヌクリジン−3−オンおよびこれらの化合物の医薬的に許容される塩から選択される。
【0047】
一態様では、式(I)の化合物は、2−(ヒドロキシメチル)−2−(メトキシメチル)キヌクリジン−3−オンまたはその医薬的に許容される塩である。
別の態様では、式(I)の化合物は、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)キヌクリジン−3−オンまたはその医薬的に許容される塩である。
【0048】
一態様では、本製剤は原液であり、好ましくは、濃縮された原液の形態の医薬製剤である。本製剤は好ましくは無菌であり、これは濾過などの公知の滅菌方法によって達成してもよく、例えば化学分解反応による本発明の化合物のどのような劣化も本質的に生じさせず、かつ分解生成物を本質的に形成せずに長期間の貯蔵を可能にする。
【0049】
例えば、それを必要としている患者に、直接注射すなわち静脈内注射のために適当な注射溶液で選択的に希釈された注射で投与するために、本発明に係る製剤を使用することができる。
【0050】
また、例えばその中に含まれている3−キヌクリジノン誘導体のさらなる調査のために、例えば、生体外試験またはマウス、ラット、ウサギまたはイヌなどの実験動物への投与による生体内試験などで、本発明に係る製剤をそのまま、または希釈して使用してもよい。
【0051】
一態様では、本発明に係る製剤は、本明細書に定義されている式(I)の3−キヌクリジノン誘導体の水溶液であり、前記誘導体は、本製剤の約10mg/mL〜約250mg/mLの範囲、特に約50mg/mL〜約200mg/mLの範囲、特に約75mg/mL〜約150mg/mLの範囲内の濃度で存在する。
【0052】
本発明の製剤を使用前、例えば患者への投与前に希釈してもよい。希釈係数は、製剤中の3−キヌクリジノン誘導体の濃度と、必要とされている化合物の例えば治療的有効量を満たすのに必要な量によって決まる。非経口投与の場合、最終希釈生成物は、好ましくは約4〜約6の範囲内のpHを有するものでなければならず、より好ましくは、非経口投与のための最終希釈生成物は、約4.2〜約5.5の範囲内のpHを有するものでなければならない。
【0053】
液体製剤は、本製剤の0重量/体積%〜3重量/体積%の濃度、特に0.5重量/体積%〜1.5重量/体積%の濃度であるが、特に0.8重量/体積%〜1重量/体積%の濃度の塩化ナトリウムを含有していてもよい。
【0054】
本発明の一態様では、3−キヌクリジノンは、1種以上の異なる医薬的に許容される酸
との酸付加塩の形態で液体製剤中に存在する。医薬的に許容される酸は、例えば、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、硝酸およびリン酸などからなる群から選択される鉱酸であってもよい。あるいは、医薬的に許容される酸は、有機酸、例えば、スルホン酸またはカルボン酸、特に、アルキルもしくはアリールスルホン酸、またはメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸およびアスコルビン酸などからなる群から選択されるようなアルキルもしくはアリールカルボン酸であってもよい。
【0055】
必要なpHにするために、本発明の組成物はpH調整剤を含有する。本明細書に使用されているpH調整剤という用語は、少なくとも1種の医薬的に許容される有機もしくは無機(鉱)酸、少なくとも1種の医薬的に許容される酸緩衝液またはこれらのいずれかの混合物を意味する。従って、pH調整剤は、任意のそのような酸または緩衝液、酸と緩衝液との混合物または1種以上の酸と1種以上の緩衝液との混合物であってもよい。有用な酸および緩衝液の例は、本明細書に示されているようなものである。
【0056】
例えば、本発明に係る組成物は、少なくとも1種の医薬的に許容される酸を含有していてもよい。上記酸は、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などからなる群から選択される無機鉱酸であっても、例えば、酢酸、コハク酸、酒石酸、マレイン酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルタミン酸、安息香酸、アスコルビン酸、メタンスルホン酸およびエタンスルホン酸などからなる群から選択される有機酸であってもよい。本組成物は、無機および有機酸から選択される1種以上の酸を含有してもよいことが想定される。一態様では、本製剤の必要なpHを塩酸の添加によって達成する。
【0057】
また、本発明の組成物は、特にクエン酸緩衝液、酢酸緩衝液およびリン酸緩衝液などからなる群から選択される少なくとも1種の医薬的に許容される緩衝液を、別々にまたはそれらの混合物として、本明細書に定義されている任意の医薬的に許容される酸、例えば塩酸と組み合わせて含んでいてもよい。
【0058】
本発明の液体組成物は水性である、つまり、水を含有する。但し、本発明の組成物を調製するために使用される水溶液および水相は、溶媒相として他の医薬的に許容される液体、例えばポリエチレングリコール(PEG)およびアルコール類、例えばエタノールも含有してよいことが想定される。しかし、上記水相は主に溶媒として水を含むことが好ましい。例えば、溶媒相は、50〜100%の水、より好ましくは少なくとも80%の水、少なくとも90%の水、少なくとも95%の水、少なくとも98%水または100%水からなる。
【0059】
一態様では、本明細書に記載されている本発明に係る組成物は、容器、特に密閉および滅菌された容器の中に2〜8℃の温度範囲で長期間貯蔵するための安定な原液として、特に濃縮された原液として提供される。例えば、本組成物は、約10mg/mL〜約250mg/mLの濃度、特に約50mg/mL〜約200mg/mLの範囲であるが、特に約75mg/mL〜約150mg/mLの範囲の濃度で、酸付加塩、特に塩酸付加塩であってよい本発明の化合物の安定な水性注射用水(WFI:water for injection)溶液と、上記溶液のpHをpH3.0〜pH5.0の範囲、特にpH3.2〜pH4.7、例えばpH3.5〜pH4.5の範囲、特にpH3.8〜pH4.2の範囲、例えば約4.0にするような量のpH調整剤を含んでいてもよい。例えば、原液のpHは、約3.0または約3.2、例えば約3.4、約3.6または約3.8などのpHから選択される下限と、約5.0、約4.7、約4.5または約4.2、例えば約4.0の上限を有していてもよい。
【0060】
本発明は、本発明に係る化合物の製剤の調製方法も提供する。一般に、本方法は、式(
I)の化合物またはその医薬的に許容される塩とpH調整剤を、水相と混合することを含む。この方法では、式(I)の化合物の添加前または後のいずれかに、本明細書に定義されているpH調整剤を添加して、水相のpHを所望の範囲に調整する。例えば、式(I)の化合物の添加前に、水相のpHをpH6未満、例えばpH5またはpH4.5未満のpHに調整し、その後、式(I)の化合物を添加する。次いで、本組成物が確実に本発明に係る所望の値になるようにpHを再度調整してもよい。但し、あまり好ましくはないが、任意のpH調整剤の添加前に、式(I)の化合物を水相に添加してもよく、続いて、pH調整剤を添加して、液体製剤のpHを所望の範囲に調整する。
【0061】
調製過程の大部分にわたって、より好ましくは全調製過程にわたって、液相のpHを、6未満、例えば5.0未満または4.5未満、例えば3.0〜6.0の範囲内に維持することが好ましい。
【0062】
一態様では、本発明の液体製剤の調製方法は、pH6.0未満のpHを有する水相を調製することと、必要であれば、好ましくは全調製過程にわたって液体製剤のpHをpH6.0未満、例えばpH5未満またはpH4.5未満に維持するように、pH調整剤を少しずつ添加しながら式(I)の化合物を漸増部分に混合することを含む。
【0063】
調製過程の間に、水性製剤のpHを連続的または断続的に測定してもよい。
また、医薬的に許容される無機塩、例えばNaCl、防腐剤またはさらなる医薬的に許容される化合物、例えば、細胞増殖抑制剤(特に、シスプラチン、ダウノルビシン、セルビジン、シタラビンおよびフルダラビン)などのさらなる治療用有効成分などの他の成分を水相に添加しても、水相中に存在させてもよい。
【0064】
一態様では、本製剤の0重量/体積%〜3重量/体積%の濃度、特に0.5重量/体積%〜1.5重量/体積%の濃度であるが、特に0.8重量/体積%〜1重量/体積%の濃度でNaClを含有する本明細書に先に定義されている最終液体組成物を得るような量でNaClを水相に添加する。
【0065】
一態様では、本発明に係る組成物は無菌製剤である。この場合、本製剤(例えば、製剤化された原液)を、名目細孔径が0.2μmの無菌フィルタに通して洗浄および滅菌した容器の中に入れ、本発明に係る組成物の滅菌を達成してもよい。
【0066】
従って、本発明の方法は、液体製剤を滅菌する工程と、無菌容器の中に製剤を充填する工程と、容器に蓋をする工程とを含んでもよい。
すぐに利用可能な注射溶液として本発明に係る組成物を提供してもよく、ここでは、WFI、グルコース溶液、アミノ酸、脂質類、ビタミン類および他のミネラル類を含有する電解質溶液、リンガー液、ハルトマンの溶液、または等張、低張もしくは高張溶液の形態の塩化ナトリウム溶液からなる群から選択されるような1種以上の医薬的に許容される溶媒の添加によって、本発明の液体製剤(例えば原液)を所望の体積にする。そのような医薬的に許容される溶液の例は、Baxter Viaflo 9mg/mlである。
【0067】
一態様では、さらなる生物学的活性化合物または生物学的活性剤を、本発明に係る組成物中に存在させるか、そこに添加することができる。例えば、本発明に係る製剤を注入液として投与する場合、患者への投与前に、さらなる治療用有効成分を注入液に添加してもよい。そのような治療用有効成分の例は、従来の細胞増殖抑制剤、特に、シスプラチン、ダウノルビシン、セルビジン、シタラビンおよびフルダラビンである。
【0068】
本発明の組成物は、過剰増殖性疾患、自己免疫疾患および心疾患から選択される疾患の治療に有用である。過剰増殖性疾患の例は癌である。本発明の目的では、自己免疫疾患の
例は強皮症および関節リウマチであり、心疾患の例は心筋梗塞である。
【0069】
参照により本明細書に組み込まれるPCT出願の国際公開第05/090341号、第04/084893号、第02/024692号および第03/07025号には、式(I)の化合物の治療活性が実証されている。
【0070】
従って、国際公開第02/024692号および第03/07025号には、例えば、変異体p53媒介性癌の治療における式(I)の化合物の使用が開示されている。そのような癌の例は、骨肉腫、肺腺癌、バーキットリンパ腫、卵巣癌および結腸癌である。p53のアポトーシス誘発機能を回復させることができるため、式(I)の化合物は、例えば、関節リウマチおよびシェーグレン症候群などの自己免疫疾患などの他の変異体p53媒介性疾患(例えば、Yamanishi Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99(15):10025-30 (2002), Inazuka M. et al., Rheumatology, 39(3):262-6 (2000), Firestein G.S. et
al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 30;94(20):10895-900 (1997)およびTapinos N.I. et
al., Arthritis Rheum.42(7):1466-72 (1999))ならびに遺伝性特発性心筋症などの心疾患(例えば、Gudkova A.Ya. et al.、Identification of the TP53 tumor suppressor mutations in patients with family idiopathic cardiomyopathy(家族性特発性心筋症患者におけるTP53腫瘍抑制因子変異体の同定)、Abstract at the International Congress of the European Society of Pathology(欧州病理学会国際会議での要約)、2002年5月19〜21日、イタリア、マジョーレ湖、バヴェーノ)の治療にも有用であると考えられている。
【0071】
国際公開第04/084893号は、悪性黒色腫および望ましくない血管新生に伴う病状の治療での式(I)の化合物、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−キヌクリジン−3−オンの使用を開示している。
【0072】
国際公開第05/090341号には、ヒトの肺癌細胞株を用いた生体外アッセイにおける式(I)の化合物の抗増殖効果およびアポトーシス誘発効果が示されている。
様々な癌細胞株(表2を参照、ここには、様々な種類の癌細胞におけるAPR−246のIC50を示している)を用いた生体外アッセイから、様々な癌の治療での化合物2−(ヒドロキシメチル)−2−(メトキシメチル)−キヌクリジン−3−オン(本明細書ではAPR−246ともいう)の治療活性がわかっている。
【0073】
【表2】

【0074】
表2に、この結果を平均±SDとして示す。個々の実験でのIC50値の平均としてIC50値を計算する。
また、生体内での調査により、式(I)の化合物が顕著な抗癌活性を有することが分かる。従って、マウスのおける生体内での異種移植片実験により、式(I)の化合物が有意な抗癌効果を有することが分かった。実際に、変異体p53骨肉腫細胞SaOS−2−His273を用いた生体内での異種移植片実験(図1)では、本発明の化合物について統計学的に有意な抗癌効果があることが実証された。
【0075】
さらに、2−(ヒドロキシ−メチル)−2−(メトキシメチル)キヌクリジン−3−オンを含む中空繊維マウスモデルを用いた生体内実験では、本発明の化合物が有意な抗白血病効果を有することが分かる。中空繊維生体内マウスモデルを用いてこれらの実験を行った(このモデルの簡潔な説明については、インターネットウェブサイトhttp://dtp.nci.nih.gov/timeline/noflash/milestones/M13_hollow_fiber.htmを参照)。
【0076】
図2に示すように、媒体(対照)のみで治療したマウスでは、実験の終了時の白血病細胞(AML MV-4-11細胞)の純増殖は約25%(数による)であった。他方、本発明の化合物で治療したマウスでは、実験の終了時までの白血病細胞の純増殖は約−25%であり、すなわち、白血病細胞の数は効果的に減少していた。
【0077】
上記データを鑑みると、本発明の組成物は、本明細書で先に述べた様々な疾患、例えば、骨肉腫、肺腺癌、バーキットリンパ腫、卵巣癌、結腸癌、悪性黒色腫、骨肉腫、乳管癌、前立腺腺癌、前立腺癌、結腸直腸腺癌、非小細胞肺癌、白血病、急性骨髄単球性白血病、関節リウマチおよびシェーグレン症候群などの自己免疫疾患および遺伝性特発性心筋症
などの心疾患の治療で有用になると想定される。
【実施例】
【0078】
以下、本発明の具体的な実施例をより詳細に説明し、本発明に係る具体的な実施例を提供するが、これらは単に本発明を例示するためのものであり、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0079】
実施例1
異なるpHの水溶液中のAPR−246の安定性試験
APR−246およびAPR−246の塩酸付加塩のいくつかの水性製剤を調製し、安定性について試験した。APR−246は水溶液に容易に溶解し、APR−246のpKaによって、約9〜9.5のpHを有するアルカリ水溶液を得る。
【0080】
濃度プロファイルとは無関係に、室温だけでなくそれより低温であっても、APR−246は水溶液中で分解されることが観察された。
製剤開発の間に、溶液中でのAPR−246の安定性は、pHと温度に依存していることが分かった。この安定性は、pHを下げると増加する。安定性に関してAPR−246に適したpHを確立するために、異なるpHの異なる溶液に入れた原薬を用いて調査を行った。
【0081】
結果の要約を表3に示す。これらのモデル系では、6を越えるpHを有する製剤は、安定性の問題を示した。HPLC分析では、APR−246の分解生成物を表す新しいピークがさらに検出された。
【0082】
【表3】

【0083】
実施例2
緩衝液中のAPR−246の安定性試験
水溶液中での安定性をさらに解明し、かつ溶液の緩衝の必要性を評価するために、クエン酸緩衝液を含むまたは含まない生理食塩水中でAPR−246の調査を行った。結果の要約を表4に示す。この結果から、pHおよび温度と共に分解が促進されることが分かる。この溶液を緩衝する必要はなく、pHは緩衝液なしで十分に安定していることも分かる。
【0084】
【表4】

【0085】
これらの試験結果を合わせると、0.5%〜1.0%の生理食塩水濃度およびpH3.5〜pH4.5の範囲、例えばpH4のpHを有するAPR−246の水性WFI原液は、臨床用製剤にとって有利であると結論づけられる。
【0086】
さらに、上記モデル系から、標準製剤は、通常の熱滅菌に対する感受性が高いと結論づけられる。代わりに、最終生成物製剤を名目細孔径が0.2μmの無菌フィルタを通して洗浄および滅菌した容器の中に入れて、滅菌を行った。次いで、そのように滅菌した溶液を、発熱性物質を除去した適当な大きさの清潔な無菌ガラス瓶の中に分注した後、瓶に蓋をしてもよい。この製造方法は、現行の製造管理および品質管理に関する基準(Good Manufacturing Practices)規則を遵守した。
【0087】
実施例3
水溶液中のAPR−246の長期間安定性試験
約150mg/mLの濃度でpH3.9のAPR−246原液を製造した。最終製品を、事前滅菌した50mLのガラス瓶の中に無菌的に充填した21.5〜22.0mLの製剤で構成した。この製造方法は、製造管理および品質管理に関する基準規制を遵守した。2種類のバッチの結果の要約を表5に示す。
【0088】
【表5】

【0089】
臨床的使用のために本明細書に記載されているように製剤化したAPR−246に関する長期間の安定性のデータから、本発明の製剤中でAPR−246は安定であることが分かり、本製品が2〜8℃で貯蔵されている場合、2年間にわたって有意な分解が生じないと予測される。
【0090】
実施例4
150mg/mLを含有するpH3.9の安定なAPR−246原液からなる製剤
pHを監視するためのpHプローブを備えた25Lの滅菌容器に入れたHCl(1890g、5.03M)およびWFI(7960g)水溶液の混合物に、室温で撹拌しながらNaCl(105g)を添加した。NaClを完全に溶解したら、撹拌溶液にAPR−246(1747g)を数回に分けて添加して、pHを4.75にした。HCl水溶液(11.1mL、5.03M)を少しずつ添加して、pHをpH4.0に調整した。最後に、混合物にAPR−246(3.0g)を添加し、その結果得られたpH4.40を、HCl水溶液(3.5mL、5.03M)を慎重に添加してpH3.9に調整した。最後に、さらに5分間撹拌しながら混合物にWFI(484g)を添加した。
【0091】
原液をOpticap XL4フィルタ(1.0/0.5μm)で濾過して、清潔なガラス容器に入れ、次いで、Kleenpak KA1フィルタ(0.22μm)でさらに濾過して無菌容器に入れた(クラスB領域)。無菌条件下で無菌の瓶に分注し、かつ無菌の栓/蓋で蓋をした(クラスA領域)。フィルタの完全性を試験し、アッセイおよび無菌分析ならびに安定性試験のために、製造物から試料(瓶)を回収した。本明細書に記載されている手順を用いていくつかのバッチを製造すると共に、指定された限界の範囲内でアッセイおよび無菌分析を行った。
【0092】
実施例5
分析方法
Purospher Star RP-18e(5μm(250×4.6)mmカラム)を用いて、Agilent1100/1200シリーズHPLCシステムでHPLCクロマトグラフィを20℃で行った。サーモスタットで試料温度を5℃に設定した。210nmのUV/VIS DAD検出器を用いて検出を達成した。流量を1.0mL/分に設定し、注入体積は10μLであっ
た。使用した移動相は、リン酸緩衝液(A)/アセトニトリル(B)の勾配:0〜5分:90%A、5〜20分:70%A、20〜35分:20%A、35〜45分:90%Aであった。分析前に新しく調製した純粋なAPR−246標準溶液を用いて較正を行った。電子的にデータを取得した。本方法は有効であった。
【0093】
実施例6
微生物学的特性
APR−246製剤は、注入用溶液のための無菌濃縮物であった。この溶液をヨーロッパ薬局方(Ph Eur)標準方法に従って濾過で滅菌し、無菌的に瓶に充填した。
【0094】
最終容器内の溶液を加圧滅菌できるかを調査したが、分解があまりに顕著であるため、その過程を行うことができなかった。121℃で滅菌した2種類のバッチの結果の要約を表6に示す。
【0095】
【表6】

【0096】
実施例7
注入バッグ適合性
本実施例は、6つの注入バッグに入れたAPR−246製剤(150mg/mL原液)の適合性調査の結果の要約であり、本製剤のNaCl溶液の物理的および化学的安定性ならびに注入バッグおよび管状装置材料との適合性を確認する。本製剤を、注入のために無菌0.9%NaCl溶液で希釈して、投与前に総体積を500mLにしなければならない。
【0097】
調査の持続時間は、患者への注入終了後の期間を包含する。本調査は、最悪の事例の最低用量0.15mg/mLまたは最悪の事例の最高用量24mg/mLに対して設計した。
【0098】
薬物と注入システムとの相互作用にとって重要な要因は、注入バッグの表面と薬物量(mg/cm)との関係であり、最低薬物濃度は、適合性調査にとって最も速い事例を示す。用量範囲を包含し、かつこの用量範囲にわたる注入用最終溶液のpHを解明するために、高濃度を含めた。
【0099】
この調査は、Baxter注入バッグ(Viaflo社)ロット番号08F22E1Cを用いて室温で行った。スケジュール設計を表7に示す。
【0100】
【表7】

【0101】
「高」および「低」濃度のそれぞれに対して3つの注入バッグを調製した。1日につき1つの注入バッグを調査し、冷凍したAPR−246原液から新しく調製した。
低濃度
この結果を表8に示し、調査範囲にわたって満足な安定性があることが分かる。
【0102】
【表8】

【0103】
高濃度
この結果を表9に示し、調査範囲にわたって満足な安定性があることが分かる。
【0104】
【表9】

【0105】
これらの表は共に、150mg/mLのAPR−246液体製剤から調製した低および高濃度注入バッグ溶液が少なくとも22時間にわたって安定していることを示している。
従って、本実施例から、適切な安定性を有し、実用的かつ安全な方法で操作および投与を可能にする非経口投与可能な希釈溶液を調製するために本発明の液体製剤を使用し得ることが分かる。
【0106】
以上、本明細書に示されているように、本発明によって、本明細書に定義されている式(I)に係る化合物を含む貯蔵安定な液体組成物またはその医薬的に許容される塩が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
は、H、−CH−O−R、−CH−S−Rおよび−CH−NRから選択され、
は、−CH−O−R、−CH−S−Rおよび−CH−NRから選択され、
およびRは同じであるか異なっており、H、置換もしくは非置換の非分岐鎖状もしくは分岐鎖状の飽和もしくは不飽和C3〜C12シクロアルキルもしくはC1〜C10アルキル、置換もしくは非置換ベンジル、置換もしくは非置換の単環式もしくは二環式アリール、N、OおよびSから独立に選択される1つ以上のヘテロ原子を含む置換もしくは非置換の単環式、二環式もしくは三環式のC2〜C10ヘテロアリールもしくは非芳香族C2〜C10ヘテロシクリルから独立に選択されるか、あるいは−CH−NR中のRおよびRは互いに結合し、かつそれらが結合している窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから独立に選択される1つ以上のさらなるヘテロ原子を含んでよく、かつ1つ以上の環式ケト基を含んでよい置換もしくは非置換の非芳香族C2〜C10単環式もしくは二環式ヘテロシクリルを形成しており、
ここで、該置換された基の置換基は、非分岐鎖状もしくは分岐鎖状の飽和もしくは不飽和C3〜C12シクロアルキルもしくはC1〜C10アルキル、ハロゲン、ハロゲン置換されたC1〜C10アルキル、単環式もしくは二環式アリール、N、OおよびSから独立に選択される1つ以上のヘテロ原子を含む単環式、二環式もしくは三環式C2〜C10ヘテロアリールもしくは非芳香族C2〜C10ヘテロシクリル、C1〜C10アルコキシ、アミノ、C1〜C10アルキルアミノから独立に選択される]
の化合物およびその医薬的に許容される塩とpH調整剤の水溶液であり、3.0〜5.0のpHを有する液体組成物。
【請求項2】
が、Hおよび−CH−O−Rから選択され、Rが−CH−O−Rである、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
各Rが、Hおよび置換もしくは非置換の非分岐鎖状もしくは分岐鎖状の飽和もしくは不飽和C1〜C6アルキルから独立に選択される、請求項1または2に記載の液体組成物。
【請求項4】
各RがHおよびメチルから独立に選択される、請求項3に記載の液体組成物。
【請求項5】
該化合物が、2−(ヒドロキシメチル)−2−(メトキシメチル)キヌクリジン−3−オンおよび2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−キヌクリジン−3−オンから選択される、請求項4に記載の液体組成物。
【請求項6】
少なくとも1種のさらなる治療活性剤含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項7】
3.5〜4.5のpHを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項8】
式(I)の該化合物が、10mg/mL〜250mg/mLの濃度で該水溶液中に存在する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項9】
該水溶液が、0〜3重量/体積%の濃度でNaClを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項10】
治療に使用される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項11】
過剰増殖性疾患、自己免疫疾患および心疾患から選択される疾患の治療に使用される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項12】
過剰増殖性疾患、自己免疫疾患および心疾患から選択される疾患の治療のための医薬の製剤のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の液体組成物の使用。
【請求項13】
水相に、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩と、添加されてもよい少なくとも1種のさらなる治療活性剤、および該組成物のpHを3.0〜5.0にするような量のpH調整剤を添加することによる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体組成物の調製方法。
【請求項14】
該組成物のpHを3.5〜4.5にするような量で該pH調整剤を添加する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該液体組成物中のNaClの濃度を0〜3重量/体積%にするような量でNaClを該水相に添加する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
該液体組成物中の式(I)の該化合物の濃度を10mg/mL〜250mg/mLにするような量で式(I)の該化合物またはその医薬的に許容される塩を該水相に添加する、請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
そのような治療を必要としている哺乳類に、治療的有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載の液体組成物を投与することによる、過剰増殖性疾患、自己免疫疾患および心疾患から選択される疾患の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−518036(P2013−518036A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549372(P2012−549372)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050854
【国際公開番号】WO2011/089234
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(503361145)アプレア エイビー (3)
【Fターム(参考)】