説明

過形成性疾患治療用のリグナン及びその誘導体を含む医薬組成物

本発明はLeontopodium alpinum Cass.(エーデルワイス)から得ることができる特定の化合物を含む医薬組成物に関する。前記化合物はレオリギン(=(2S,3R,4R)−4−(3,4−ジメトキシベンジル)−2−(3,4−ジメトキシフェニル)テトラヒドロフラン−3−イル]メチル(2Z)−2−メチルブタ−2−エノエート])である。前記化合物の医学的用途に関する相当する手段及び方法が記載された。本発明はまた前記化合物を含む、含有する、又はそれら化合物に接触した医療機器をも提供する。本明細書において提供された化合物は特に、過形成性の障害、特に内膜過形成、例えば狭窄、再狭窄、アテローム性動脈硬化などの治療において使用され得る。本明細書においてはまた、増殖性の障害、例えば白血病、前立腺癌及び肺癌の治療におけるこれら化合物に使用についても記載された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエーデルワイス(Leontopodium alpinum Cass.)から得ることができる特定の化合物、又は構造的に関連した化合物を含む医薬組成物に関する。好ましい化合物はレオリギン(leoligin)(=(2S,3R,4R)−4−(3,4−ジメトキシベンジル)−2−(3,4−ジメトキシフェニル)テトラヒドロフラン−3−イル]メチル(2Z)−2−メチルブタ−2−エノエート])である。医学的用途におけるこの化合物に関連する手段及び方法を記載した。本発明はまたこの化合物を含む、含有する、又はこの化合物と接触した医療機器をも提供する。本明細書において提供される化合物は特に、過形成性疾患、特に内膜過形成、例えば狭窄、再狭窄、アテローム性動脈硬化などの治療に用いられ得る。本明細書においてはまた、増殖性疾患、例えば白血病、前立腺癌及び肺癌の治療におけるこれら化合物の用途についても記載した。
【背景技術】
【0002】
冠動脈バイパス術(CABG)及び経皮冠動脈インターベンション(PCI)は、世界的な罹病及び死亡の主要な原因の1つである、冠動脈疾患(CAD)を治療するための2つの侵襲的な選択肢である;WHO、cardiovascular disorders, internet communication (2007)及びwww.who.int/cardiovascular_disorders/en/を参照。しかしこの両方の治療アプローチの成功は、過形成性疾患/障害だと考えられる再狭窄及びグラフト不全によってしばしば制限される。CABG後のグラフト開存率においては、選択されるべき血管は明らかに内胸動脈であるTatoulis, Ann Thorac Surg, 77(1), 93-101 (2004)を参照。しかしながら、利用可能性の制限から、CABGにおいては動脈グラフトよりも伏在静脈グラフトがしばしば用いられる(例えばインスブルック医科大学では、2004年に行われたバイパス移植の51%が伏在静脈であった。Schachner, European Surgery 39(2), 72-5 (2007)を参照)。過去数年の臨床上の最適化においては、グラフトの取扱い(例えば病巣に直接触れない手技(no touch techniques))や脂質低下療法などが伏在静脈血管の開存率を劇的に上昇させ、CABGを行ってから10年後の開存率は現在では約60%である(Schachner (2007) loc. cit; Lau, Semin Vasc Med 4(2), 153-9 (2004); Tsui, Eur J Vasc Endovasc Surg 23(3), 202-8 (2002))。早期における開存性消失の主な原因は現在でも血栓症、内膜新生、及び内膜過形成であり(1年後の開存性の消失は10〜20%)、そしてCABGを行った遠隔期における開存性消失の主な原因はグラフトのアテローム性動脈硬化である(Lau (2004), loc. cit.; Hozumi, Heart 76(4), 317-20 (1996); Marin, J Vasc Surg 18(3):407-14 (1993))。従って、グラフト障害は現在でも特に静脈バイパスの耐久性を制限する。
【0003】
一般に静脈のグラフト障害を引き起こす原因及び病態生理についてはよく知られていない。静脈のグラフト障害は、グラフトの外科的取扱い、虚血、及び動脈血化(血圧、血流)によって引き起こされる血管損傷によって始まる様々な事象の結果と考えられている。この最初の損傷が血管壁における組織リモデリング(ポジティブ及びネガティブな)及び内膜過形成など、適応への修復過程を引き起こすと考えられている;Lau (2004), loc. cit., Hozumi (1996), loc. cit., Marin (1993), loc.cit; Lau, Circulation 4, 114(1 Suppl):I435-I440 (2006)を参照。この反応は動脈環境へのグラフトの適応に欠かせないものである一方、過剰な反応が最終的にはグラフト不全となるグラフト障害を引き起こすと考えられる。
【0004】
CABG及び/又はPCI後のグラフト障害の発現における細胞外及び細胞内情報伝達の経路は複雑であるが、組織的レベルで中心となる要素は内膜における内皮障害(露出)及び平滑筋細胞(SMC)の増殖と浸潤である。組織損傷及び細胞壊死によるだけでなく、適応への組織リモデリングの要素としての炎症により誘導される情報伝達もまた、非常に関連のある別の原因である;Mitra, Immunol Cell Biol 84(2), 115-24 (2006)を参照。純粋に機械的な装置を使用する代わりに薬剤溶出性ステント/マトリックスを使用することが、PCI及びCABGを原因とする再狭窄及びグラフト不全の予防において効果的だろうということは非常によい考えであるが、現時点では、これらを適用するための正確にスクリーニング又は設計された実用的な薬剤が特に欠如している。現在用いられている薬剤は主に、癌又は免疫抑制治療のために開発された化学療法薬であり、再狭窄及びグラフト不全に対しては強すぎる、または非特異的な可能性があり、内皮治療(血栓症の予防に重要な)はこれらの薬剤によって十分に機能しない。
【0005】
リグナンは心血管系に関連した疾患/障害の治療において用いられ得る潜在性の高い候補分子と考えられ、本明細書の以下においてより詳細に論じられる。しかしながら、一般には心血管系におけるリグナンの効果については限られた数の出版物が報告しているのみであり、今までのところ、ごくわずかの異なるリグナンが試験されているだけである。当業者におけるリグナンを用いた過形成性の疾患/障害の治療について記述がないことは注目すべきである。現存するデータはリグナンが、脂質低下、抗酸化、降圧、抗血栓、及び抗炎症作用を有する心血管疾患を予防し得る薬剤であることを示唆している。
【0006】
数多くのリグナンに基づく癌治療の研究(インビトロ及びインビボでの)が、これら化合物の著明な細胞毒性および細胞死の誘導を示している;Kim Planta Med, 68(3), 271-4 (2002)及びLin J Cell Biochem 84(3), 532-44 (2002)を参照。過形成性の疾患/障害、及び特に静脈グラフト障害の治療における細胞毒性を有する化合物の使用は一般には、健康な細胞、例えばEC細胞もまた損傷を受ける可能性があることから有害であると考えられている。そのため、この分野において知られている細胞毒性を有するリグナンの使用は、これら疾患の治療において避けられるべきである。このことから、過形成性の疾患/障害の治療に用いられ得る化合物、及びこの分野において知られている化合物の欠点を回避することへの需要がある。
【発明の概要】
【0007】
従って、本発明の根底にある技術的な問題は、過形成性の疾患又は過形成性の障害における医療行為対して提供される手段及び方法である。
【0008】
技術的な問題は特許請求の範囲において特徴付けられる態様を提供することによって解決される。
【0009】
従って本発明は、式(I):
【0010】
【化1】

【0011】
の化合物、又はその薬剤的に許容できる塩又は溶媒和化合物を含む医薬組成物に関し、
式中
、R及びRは、互いに独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、又はアルコキシから選択され;及び
、R及びRは、互いに独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、又はアルコキシから選択され;
は、−OR、−N(R8’)R、−SR、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)OR、−N(R9’)C(O)R、−C(O)N(R9’)R又は−S(O)Rから選択され;ここで、R及びRはアルキル又はアルケニルから互いに独立して選択され、R8’及びR9’はH、アルキル又はアルケニルから互いに独立して選択され;並びに、Rに含まれるいずれのアルキル基又はアルケニル基も、非置換又は、OH、ハロゲン又はアルコキシから選択される、1つ以上の置換基によって置換されていてもよく;
Xは、O、S、C(R10)R10及びNR10から選択され(ここで、R10はH、アルキル又はアルケニルである);並びに
X基を含む環状構造中の破線はそれぞれの結合が一重又は二重結合であってもよいことを示す。
【0012】
好ましい態様においては、前記医薬組成物に含まれる式(I)の化合物は、式(Ia)において示される立体化学を有し:
【0013】
【化2】

【0014】
式中、RからR及びXは上記に記載されているのと同様に定義される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、エーデルワイス(Leontopodium alpinum Cass.)の花、及び、レオリギンの構造式を示す。
【図2A】図2Aは、器官培養においてヒト伏在静脈での内膜過形成の発展が誘導された実験から得られたデータの要約を示す。
【図2B】図2Bは、軽度の内膜過形成を発症していた伏在静脈において器官培養によって引き起こされた内膜の肥厚に対するレオリギンの有無の効果の代表例を示す。
【図3A】図3Aは、アネキシンV/ヨウ化プロピジウム法及びFACS解析によって決定した細胞の生存率の解析を示す。
【図3B】図3Bは、XTTアッセイによる細胞増殖の解析を示す。
【図3C】図3Cは、対照又はレオリギンで処理したSMCの培養24時間後のDNA含量の解析結果を示すヒストグラムブロットである。
【図4A】図4Aは、アネキシンV/ヨウ化プロピジウム法及びFACS解析によって決定した細胞生存率の解析結果を示す。
【図4B】図4Bは、XTTアッセイによるEC増殖の解析を示す。
【図4C】図4Cは、TNFアルファ誘導性のVCAM−1、ICAM−1、及びE−セレクチン(E−Sel)の表面発現へのレオリギンの効果を示す。
【図5A】図5Aは、対照及びレオリギンで処理し、動物の頸動脈に挿入された、大静脈の内膜肥厚の形態学的解析を示す。
【図5B】図5Bは、静脈血管切片のエラスチカ・ワンギーソン染色、ヘマトキシリン染色との併用による内皮細胞CD31/PECAM−1抗原(茶,黒矢印)の染色、及び、ヘマトキシリン染色との併用による細胞周期阻害剤p27/KIP−1(茶)の免疫組織化学的染色を示す。
【図6】図6は、ラリシレシノール及びレオリギンの平滑筋細胞(SMC)増殖を阻害する活性のXTTアッセイによる比較を示す。
【図7】図7は、レオリギン及び示したその2つの誘導体の平滑筋細胞(SMC)増殖を阻害する活性のXTTアッセイによる比較を示す。
【図8】図8は、レオリギンの可能な合成経路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明においては、上記の式(I)及び(Ia)については、以下の態様が好ましい。
【0017】
〜Rとして存在し得るアルキル置換基は好ましくはC1〜C6アルキル基であり、より強く好ましくはC1〜C3アルキル基であり、さらに好ましくはメチルである。
【0018】
ハロゲン置換基はフルオロ−、クロロ−、ブロモ−及びヨウ素−原子を含み、好ましくは、クロロ及びブロモである。
【0019】
上記に示したように、Xは、R10がそれぞれに対して独立してH、アルキル又はアルケニルである、O、S、C(R10)R10及びNR10から選択される。アルキル基として好ましいものはC1〜C6アルキル基であり、特に好ましくはメチル及びエチルである。アルケニル基として好ましいものはC2〜C6アルケニル基である。
【0020】
Xは好ましくはO又はNR10であり、特に好ましくはOである。好ましいR10基はH及びC1〜C6アルキルであり、特に好ましくはH及びメチルである。
【0021】
さらに、上記で説明しているように、X基を含む環状構造中の破線はそれぞれの結合が一重又は二重結合であってもよいことを示す。環状構造はそれぞれの位置に二重結合を含まなくてもよく、1つの二重結合又は2つの二重結合を含んでもよい。二重結合を含まない、つまりX基を含む環状構造が飽和環である場合が好ましい。
【0022】
通常はR〜Rの少なくとも1つがアルコキシ基であることが好ましく、R〜Rの2つ又は3つすべてがアルコキシ基であることがより好ましい。適したアルコキシ基の中でも、通常好ましいものはC1〜C6アルコキシ基であり、より好ましいものはC1〜C3アルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基である。R〜Rの内の2つがアルコキシ基である場合には、ルコキシ基の内の1つがRであることが好ましい。
【0023】
〜Rの1つまたは2つがアルコキシ基である上述の好ましい化合物においては、R〜Rの残る基がH又はアルキル基であることがさらに好ましく、好ましくはHである。好ましいアルキル基はC1〜C6アルキル基であり、より強く好ましくはC1〜C3アルキル基であり、さらに好ましくはメチルである。
【0024】
通常R〜Rの少なくとも1つがアルコキシ基であることが好ましく、及び2つ又は3つすべてがアルコキシ基であることがより好ましい。適したアルコキシ基の内、通常好ましいものはC1〜C6アルコキシ基であり、より好ましくはC1〜C3アルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基である。R〜Rの内の2つがアルコキシ基である場合には、それらの内の1つがRであることが好ましい。
【0025】
〜Rの内の1つ又は2つがアルコキシ基である上述の好ましい化合物においては、R〜Rの残る基がH又はアルキル基であることがさらに好ましく、好ましくはHである。好ましいアルキル基はC1〜C6アルキル基であり、より好ましくはC1〜C3アルキル基であり、さらに好ましくはメチルである。
【0026】
従って、特に好ましいのは、R〜Rの4、5、又は6つすべてがアルコキシであり、R〜Rの残る基が、もしあれば、水素であるものである。具体的には、式中RがH、並びにR及びRがアルコキシ、又はR〜Rのすべてがアルコキシ;並びに式中RがH、並びにR及びRがアルコキシ、又はR〜Rのすべてがアルコキシである化合物が挙げられ得る。適したアルコキシ基の内、通常好ましいものはC1〜C6アルコキシ基であり、より強く好ましくはC1〜C3アルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基である。
【0027】
は好ましくは−OC(O)R、−C(O)OR、−N(R9’)C(O)R、−C(O)N(R9’)又は−S(O)R、つまりエステル、アミド又はスルホキシル基であり、特に好ましくはエステル基−OC(O)R又は−C(O)ORである。Rとしてもっとも好ましい基は−OC(O)Rである。
【0028】
は好ましくは置換されていないアルキル又はアルケニル基である。好ましいアルキル基は2つ以上、特に3つ以上の炭素原子を有する。さらに好ましいアルキル基は、14以下、例えば10以下、特に8以下又は6以下の数の炭素原子を有するものである。好ましいアルケニル基は3つ以上の炭素原子を有する。さらに好ましいアルケニル基は、14以下、例えば10以下、特に8以下又は6以下の数の炭素原子を有するものである。炭素原子の数によらず、アルケニル基が1つのC−C二重結合を有することが好ましい。
【0029】
8’は好ましくはH又は、10以下、例えば8以下、好ましくは6以下の数の炭素原子を有するアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、又はプロピルなどである。
【0030】
は好ましくは置換されていないアルキル又はアルケニル基である。好ましいアルキル基は2つ以上、特に3つ以上の炭素原子を有する。さらに好ましいアルキル基は、14以下、例えば10以下、特に8以下又は6以下の数の炭素原子を有するものである。好ましいアルケニル基は3つ以上の炭素原子を有する。さらに好ましいアルケニル基は、14以下、例えば10以下、特に8以下又は6以下の数の炭素原子を有するものである。炭素原子の数によらず、アルケニル基が1つのC−C二重結合を有することが好ましい。Rとして特に好ましいものは式−C(CH)CH−CHで表されるレオリギン中に生じる分岐アルケニル基である。この基においては、二重結合中のメチル置換基はそれぞれに応じてE−又はZ−立体配置をとる場合があり、好ましくはZ−配置である。
【0031】
9’は好ましくはH又は、10以下、例えば8以下、好ましくは6以下の数の炭素原子を有するアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、又はプロピルなどである。
【0032】
強く好ましい態様において本発明では、XがOである式(I)又は(Ia)の化合物を含む医薬組成物に関する。ここで、式(I)の場合には、式中、Xを含む環状構造は二重結合を含まない;式中4、5、又は6つすべてのR〜Rがアルコキシであり、R〜Rの残る基が、もしあれば、水素である;Rは−OC(O)R又は−C(O)ORであり、特に−C(O)OR9である;及び、Rは、1つの二重結合を含み、8以下の炭素原子を有する置換されていないアルケニル基、又は2以上で8以下の炭素原子を有する置換されていないアルキル基、である。
【0033】
本発明は医薬組成物に関して記述しているため、活性薬剤としてこれら医薬組成物に含有される化合物が本発明において重要な役割を果たすと理解されるべきである。従って、特許請求の範囲は、式中のR〜Rの5又は6つすべてがアルコキシであり;R〜Rの残る基が妥当な場合には水素であり;並びにXを含む環状構造、X基及びRは上記において定義された、上記において定義された式(I)又は(Ia)の化合物などの、その好ましい態様を含む好ましい化合物それ自体をもまた含包する。
【0034】
医薬組成物に関するさらに好ましい態様において、式(I)の化合物は次の構造を有する:
【0035】
【化3】

【0036】
本明細書の上記において示された化学構造は(2S,3R,4R)−4−(3,4−ジメトキシベンジル)−2−(3,4−ジメトキシフェニル)テトラヒドロフラン−3−イル]メチル(2Z)−2−メチルブタ−2−エノエート]であり、この物質は一般に通称「レオリギン」としても知られている。レオリギンは添付の例において細胞増殖、特にSMCの細胞増殖への特に強い阻害剤として示されている。SMCの細胞増殖は過形成性の疾患/障害、特に内膜過形成に特に含まれる中心的な機構であることが知られている。SMCの増殖はまた、本明細書の以下においてより詳細に記述される静脈グラフト障害にも含まれる。
【0037】
本明細書の下記及び添付の例において実証したように、本発明は上記で確認した技術上の問題を解決することによって、驚いたことにエーデルワイス(Leontopodium alpinum Cass.)の根から得られたリグナン、すなわちレオリギン(leoligin)[(2S,3R,4R)−4−(3,4−ジメトキシベンジル)−2−(3,4−ジメトキシフェニル)テトラヒドロフラン−3−イル]メチル(2Z)−2−メチルブタ−2−エノエート]とその誘導体が医療現場において高い有用性を示すことを発見した。本明細書において示されるレオリギンは、この分野において知られている他の化合物、例えばラリシレシノール(例2及び図6;本明細書の下記において示される式を参照)と比較して、血管の平滑筋細胞(SMC)の増殖のより強力な阻害剤となる。
【0038】
【化4】

【0039】
単離された初期のヒト血管平滑筋細胞が内膜の肥厚及び内膜過形成における中心的な細胞型である。このようにSMCの増殖及び移行は過形成性の疾患/障害の根底にある中心的な機構であり、この機構の阻害剤はこれら疾患の発展及び/又は進行を妨げ得る。
【0040】
またさらに驚いたことに、本明細書において記載されるように、レオリギンのみでなく、一般に式(I)で表される化合物及びレオリギン誘導体もまた血管平滑筋細胞(SMC)の増殖を阻害することを見いだした。レオリギンのいくつかの誘導体、例えば5−メトキシ−及び5,5’−ジメトキシ−誘導体は、レオリギンと同等あるいはより低い濃度でSMCの増殖を阻害した;例3及び図7を参照。これと比較して、ラリシレシノール(IC50>100μM)は72時間後に、レオリギン(IC50=54.5μM)及びその5−メトキシ−誘導体、例えば5−メトキシ−レオリギン(IC50=45.9μM)及び5,5’−ジメトキシ−誘導体、例えば5,5’−ジメトキシ−レオリギン(IC50=48.6μM)と比較した場合に、弱いSMCの阻害を誘導した。理論に拘束されないが、メトキシ基が本発明に従って使用される化合物の脂溶性の上昇に寄与し得ると考えられており、そのため、それらの細胞への取り込みが増強及び/又は促進されるのであろう。このことが、例えばレオリギンの5−メトキシ−誘導体がレオリギンと同等あるいはより低い濃度で使用され得ることの理由の1つであると考えられる。
【0041】
本発明における好ましい化合物でもあるメトキシ−誘導体及びジメトキシ−誘導体の具体的な化学構造の例を本明細書の下記において示した。
【0042】
【化5】

【0043】
本発明の医薬組成物に含まれる化合物、特にレオリギン及びその誘導体の、さらに有利な点はSMCにおける細胞死を誘導しないというそれらの特性であり、より重要なことは内皮細胞(EC)における細胞死を誘導しないことである。内皮細胞は内皮と呼ばれ、血管の内面に並ぶ細胞の薄い層を形成する。内皮は循環血液と血管壁のその他の部分との間の界面を形成する。適切な内皮機能は血管の保全に必須であり、その機能の喪失が心血管疾患の特徴である。
【0044】
本発明に従って使用される細胞死を誘導しない化合物の特性は、この分野において知られ本明細書の以下において記載されている細胞毒性を示す化合物、例えばリグナンのホノキオール及びマグノロールとは非常に対照的である。一方、本明細書で提供される化合物は、細胞毒性及び細胞死を誘導する活性を欠損していること、及び細胞周期を阻害する作用から、既知のリグナンとは異なるリグナンを示す。そのため本発明の化合物は過形成性の疾患/障害の治療において特に有利である。
【0045】
本明細書の下記に添付の実験部分において、医薬組成物に含まれる本発明の化合物がグラフト障害のヒト伏在静脈器官培養モデルでの内膜過形成の阻害剤として使用され、成功することが示された。化合物及び特にレオリギンは、内膜過形成を阻害する可能性があり、さらには前障害を受けた血管におけるグラフト障害を改善さえもする。静脈バイパスグラフト障害のマウスモデルにおいては、レオリギンはインビボで内膜過形成を阻害する可能性があり、及び血管内皮の保全において否定的な効果を及ぼさなかった。そのような評価は、より数多くの動物/動物モデルにおいて行うことができる。プロトコルの具体例は本明細書の下記において提供される。特に通称「レオリギン」として知られている特定の化合物の効果を評価するためのブタ(すなわちランドシュバイン(Landschwein))動物モデルを用いたプロトコルの具体例は添付の例において示される。ブタの循環系はヒトの循環系にとてもよく似ているため、本発明において使用される(バイパス−)内膜過形成及び狭窄の動物モデルは好ましくはブタ(ランドシュバインとしてよく知られる特定の種のブタなど)である。当業者は容易にこのプロトコル(例えば、式(I)の化合物について、特にレオリギンの(様々な濃度の)(ジ)メトキシ−誘導体について、又は他の数多くの動物モデルについて)を適用することができ、及びインビボの数多くの動物においてもまた、内膜過形成を阻害する本明細書に記載される式(I)の化合物を評価することができる。上記のことから、ブタにおいて得られた結果は、多くの場合、ヒトにおいても当てはまり得る。
【0046】
次の指標/効果はそれぞれ独立して式(I)の化合物、特にレオリギン(及び/又はその((ジ)メトキシ−)誘導体の例えば上記動物モデル(例えばブタモデル)によって評価される治療成功を定義する:1)対照と比較して治療群において内膜肥厚及び/又は内膜を介した肥厚がより低い、2)対照と比較して治療群において内膜における平滑筋細胞がより少ない、3)対照と比較して治療群においてp27及び/又はp21陽性細胞がより多く存在する、4)対照と比較して治療群において新生内膜の形成の度合いがより少ない、5)対照と比較して治療群において組織リモデリング過程の存在が減少した、6)対照と比較して治療群において血管壁における炎症性の細胞の数がより少ない、7)無傷の内皮、8)血管の収縮性の生理学的度合い、9)内皮表面に発現する接着分子の度合いが低いこと、10)グラフトの開存性及び血栓形成の兆候がないこと、10)対照と比較して治療群においてグラフトの弾性が維持されていること、及び、11)対照と比較して治療群においてグラフトの収縮性が維持されていること。
【0047】
CABG後の静脈グラフト不全の予防において主要な治療の標的は、新生内膜形成及び内膜過形成(早期から中期の合併症)、並びにグラフトのアテローム性動脈硬化(遠隔期合併症)である。過去数年の間にいくつかの進歩があったが、現在のストラテジーにおける主要な制限は前述の通り、適した化合物の欠如である。適用されている薬剤の多くは強すぎ、またしばしばSMCのアポトーシスだけでなく増殖の阻害、ならびに内皮の生存力をもまた特に低下させる。PCI又はCABG後の血管内皮の閉塞は血管治療及び抗血栓症において大変重要であるため、ECに対しては毒性を示さない化合物が血管内及び血管外薬剤溶出性ステント及びマトリックスにとって興味のある薬剤である。本明細書において提供される化合物、特にレオリギンはまさにこのような作用特性を有する。レオリギンは部分的に内皮治療を低減させ得るEC増殖を阻害するが(図4を参照)、循環(EC前駆体及び循環しているEC)を介した損傷修復は可能である(図5を参照)。このインビボでの観察結果の原因は、レオリギンが、露出した血管領域の再定着及びその後の血栓症の低下を促進することがでるECに毒性を示さないことによるものだろう。式(I)の化合物及び特にレオリギン並びにその((ジ)メトキシ)誘導体は、CABG及びPCI後の過形成性疾患/障害、特に内膜過形成及び血栓症の治療、予防及び改善において有利に使用することができるだろう。
【0048】
つまり、驚いたことにレオリギン及びその((ジ)メトキシ)誘導体などの本明細書において記載した式(I)の化合物が、細胞増殖、特にSMCの増殖の阻害に対して医療現場において使用でき、成功することが本発明において見い出された。この分野において知られている化合物とは対照的に、本発明の化合物は毒性を有さず且つ低濃度で使用できる。従って、これらの化合物を含む本発明の医薬組成物は特に過形成性の疾患/障害、特に静脈グラフト障害などの内膜過形成の治療において有効である。この化合物は(そのECを保全する特徴によって)薬剤溶出性ステントにもまた適用できる。
【0049】
数種のリグナンの抗血管形成作用においては報告があるが(Bai, J Biol Chem 278(37), 35501-7 (2003)及びBergman Clin Cancer Res 13(3), 1061-7 (2007)を参照)、医療現場におけるこれら化合物の有用な使用についてのこの分野における記述はない。しかしながら、これらのリグナンは本発明において提供される化合物とは構造的に異なる。
【0050】
例えば、先行技術において使用されたリグナンはモクレン種から得られたホノキオール及びマグノロールである。それぞれの式を以下に示す。
【0051】
【化6】

【0052】
これらの式は、ホノキオールもマグノロールも、本発明において使用される化合物とは構造的に類似していないことを示している。ホノキオールはモクレン科コウボクのリグナンの1つであり、ECにおける細胞死を阻害するがインビボ及びインビトロにおいて細胞死を増加させることが知られている;Zhang, Eur J Pharmacol, 554(1), 1-7 (2007)及びAhn, Mol Cancer Res 4(9), 621-33 (2006)を参照。ホノキオールはまた、p21/WAF1の上昇と関連してSMCでの細胞周期をG1期でさせることが示されている;Lee (2006), loc. cit.を参照。モクレン科コウボクから単離された別のリグナンであるマグノロールは、カスパーゼ依存的に起こるSMCでの細胞死を誘導すること、TNFアルファを介したVCAM−1の発現を阻害すること、並びにECでのIL−6によって誘導されるSTAT3の発現を妨げることが示されている;Chen, Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol 368(2), 127-33 (2003); Chen, Br J Pharmacol 135(1), 37-47 (2002); Chen Br J Pharmacol 148(2), 226-32 (2006)を参照。ラズバエブ(Razuvaev)による研究(J Vasc Surg 46(1), 108-15 (2007))は、シクロリグナンであるピクロポドフィリンがインビボでIGF受容体及びERK情報伝達との相互作用を介して、バルーン障害後の内膜過形成を阻害することを報告した。しかしながら、ピクロポドフィリンが内皮細胞への毒性を有する可能性については試験されていない。炎症、癌、及び心血管疾患の異なるモデル系において、アマ種子からのリグナンなどのその他のごく僅かのリグナン型化合物が試験された。しかしながら異なるリグナンの特異性及び特徴についての情報を欠いていることから、心血管系でのリグナンの相互作用の機構についてはよく分かっていない。
【0053】
理論に拘束されないが、本発明の化合物がその効果を医療現場で及ぼし得る機構の1つは細胞周期阻害剤p27/KIPの蓄積と関連した、G1期における細胞周期停止の誘導である。本発明に従って使用及び提供される化合物によって与えられる作用の根底をなす機構は、細胞周期の停止の誘導である可能性がある。p21を上昇させることによってG1期での細胞周期停止を引き起こすホノキオールとは対照的に(Lee, FEBS Lett 580(22), 5177-84 (2006)を参照)、レオリギンはp27/KIPタンパク質レベルの上昇を誘導する。両方の化合物による結果、つまりG1期停止は同様であるが、そこに含まれる根底をなす情報伝達過程及び作用機構は異なる場合がある。P27/KIPはpRBをリン酸化するサイクリンE/cdk2複合体と結合し、それによってサイクリンE/cdk2複合体を不活性化することがよく知られている。リン酸化されたpRBは、放出されて増殖促進遺伝子のための転写因子として機能するE2Fのような転写因子を阻害する作用を失う。p27/KIPはまた、限られた数の細胞型においては、サイクリンA/cdk2及びサイクリンB/cdk2複合体の干渉を介してG2−S期移行の停止も引き起こすことが報告されている(Pagano, Mol Cell 14(4), 414-6 (2004)を参照)が、SMCの場合には、しばしば観察されるG1期における停止を引き起こすサイクリンE/cdk2複合体とp27/KIPとの相互作用が効果を現すと考えられる。p27/KIP−1の50μMレオリギンにおける27kDから58及び85kDそれぞれへの分子量の変化は、p27/KIP−1からサイクリンE/cdk2複合体への結合、又は分子のオリゴマー形成(ダイマー/トリマー)を示している場合がある。23kDのバンドはp27/KIPの分解産物を示し得る。レオリギンが引き起こすp27/KIP−1タンパク質の蓄積及びp27/KIP−1タンパク質の分子量の変化を介した情報伝達経路についてはまだ明らかになっていない。
【0054】
最近になって、エーデルワイス根抽出物が化学的に特徴付けられた;Dobner et al. (2003), loc. cit.参照。エーデルワイス根抽出物は、クマリン、リグナン、セスキテルペン、ポリアセチレン、ジテルペンなどのいくつかのクラスの化合物のように、植物の二次代謝の複雑なパターンを示した;Schwaiger, Planta Med, 70(10), 978-85 (2004)参照。一般に、リグナンはプロパン側鎖におけるβ−位置間の結合によって2つのフェニルプロパノイド単位がカップリングすることによって合成される、フェニルアラニンに由来するポリフェノール性の代謝産物である。エーデルワイスの根から単離されたこれらリグナンのうちの1つがレオリギン(leoligin)、IUPAC名[(2S,3R,4R)−4−(3,4−ジメトキシベンジル)−2−(3,4−ジメトキシフェニル)テトラヒドロフラン−3−イル]メチル(2Z)−2−メチルブタ−2−エノエート]である。もっとも人気のある高山植物の1つであるエーデルワイス(Leontopodium alpinum Cass.)の根が、下痢、発熱及びリグナンを含む「腹痛」の治療への民間療法において使用されていることが知られているが、これらリグナン、特にレオリギンとその((ジ)メトキシ)誘導体の細胞増殖、特にSMC増殖の阻害剤としての医療上の使用については、この分野において記載も提案もされていない。本明細書において示した一般式(I)として単離された化合物の医療上の使用についても先行技術においては記載されていない。
【0055】
前述の通り、エーデルワイス及びその抽出物は民間療法において使われてきた。しかしながら、エーデルワイス植物の上部組織(つまり花、葉及び茎)のみが、それらがバイオマスの大部分を含み容易に利用できることから、利用されてきたことは注目に値する。1582年来の歴史的な記述にはエーデルワイスとその近縁種が主に下痢及び赤痢の治療に用いられたことが言及されている;Tabernaemontanus, J.T. (1582): Das Ander Buch von Kreutern. In: Bauhin, H. (ed.) (1731): D. Jacobi Theodori Tabernaemontani neu vollkommen Kraeuter-Buch. Reprint Basel, Konig, 1731. Verlag Kolbl, Grunwald (Munchen) 1993)参照。エーデルワイスの伝統的な利用についてのさらなる情報がウィーン大学生薬研究所(Institute of Pharmacognosy of the University of Vienna)において行われた、民間療法における高山植物の利用方法についてのいくつかの卒業研究によって収集された。オーストリア及びイタリア北部の高山帯の年長者に対しての取材によって様々なその土地の知識が明らかになった。フォーラールベルクにおいては、エーデルワイスの頭状花序は牛乳中で煮られ、その試料がヒトの腹痛及び下痢、また特に家畜の治療に用いられた;Kiene, Volksmedizin in verschiedenen Gebieten Vorarlberg, Master Thesis at the University of Vienna (1992); Bitschnau, Arzneidrogen der Volksmedizin im Montafon, Master Thesis at the University of Vienna (1991)を参照。
【0056】
同様の情報が、エーデルワイスがさらに扁桃炎、アンギナ及び気管支炎治療、並びに熱を下げるための解熱剤として使われた北ティロル、東ティロル及び南ティロルから得られた;Knechtl, Volksmedizinisch verwendete Heilpflanzen und Hausmittel im Inntal und umgebenden Seitentalern (Tirol), Master Thesis at the University of Vienna (1992)、“Wieser, Volksmedizinische Verwendung von Heilpflanzen und Hausmitteln im Osttiroler Pustertal mit Seitentalern und im Lesachtal”, Master Thesis at the University of Vienna (1995); Pickl-Herck, Volksmedizinische Anwendung im Norden Sudtirols. Master Thesis at the University of Vienna (1995)を参照。ポーランドの伝統的な薬剤においてL. alpinumは、植物の地上部を用いた湿布の局所的な適用により、乳癌の治療に用いられた;Hartwell, J. Nat. Prod. (Lloydia) 31, 71-170 (1968)を参照。また、Knechtl(1992; loc. cit.)は、エーデルワイスの花の注入が腹痛の改善に用いられ得ることも記載している。特に小児の下痢はエーデルワイス植物体の花を入れて煮た牛乳を用いて治療された;Knechtl (1992; loc. cit.)を参照。Wieser(1995; loc. cit.)はまた、高山の牧草地において刈られた草(つまり回収されたエーデルワイス植物体の上部組織)の中からエーデルワイス植物体を選択して乾燥したことにより、植物の上部組織が民間治療において用いられたことを指摘している。このことは特に、カルクシュタイン(Kalkstein)(海抜1650m)のヴィルグラーテンタール(Villgratental)について記述された。Wieser (1995; loc. cit.)においては、エーデルワイス植物体がカミツレと同様に薬剤中で使用されたことから、高山のカミツレとして記載されている。Wieser (1995; loc. cit.)によれば、牛乳中で煮たエーデルワイスが腹部の痙攣に有効であったことから、エーデルワイスの注入が腹痛の改善に用いられた。Pickl-Herk (1995; loc. cit.)は以下のエーデルワイスの花の医療用途について記載している;花の注入は腹痛(特に汚染された飲料水によるもの)、腹部膨満、及び嘔吐を伴う下痢の改善に有効である。重ねて、エーデルワイス花の注入は特に小児に投与することを目的としている。「エーデルワイスミルク」(つまり4〜5個の花を0.5Lの牛乳中で煮たもの)は次の障害のために用いられた;下痢、めまい、(嘔吐を引き起こす)中毒、ヘビにかまれた場合、敗血症、消化不良、腹部痙攣、腹痛、腹部膨満、又は二日酔い;Pickl-Herk (1995; loc. cit.)参照。またこの文献には、エーデルワイスミルクの獣医学的な薬剤における使用についても開示されている、つまり下痢になった子牛及び腹部膨満になった子牛/ウシの治療について記載されている。
【0057】
重ねて、上記先行技術文献に記載された民間療法におけるエーデルワイスの使用は、根ではなく、植物の上部組織のみからの抽出物を含む。民間療法において使用されるこの抽出物に含まれる特定の化合物については記載されていない。
【0058】
前述の通り及び本明細書下記の実験部分において詳細に示されるように、本発明に従って使用される化合物又は本発明の医薬組成物に含まれる化合物はLeontopodium属に属する植物から、任意には続く標準的な誘導体化反応から、得ることができる。本明細書において提供される化合物は、通称エーデルワイスとしてよく知られるLeontopodium alpinum、特にLeontopodium alpinum Cass.から得られることが特に好ましい。別の命名法によってはエーデルワイスはまた、学名Leontopodium nivale subsp. alpinum (Cass.) Greuterとしても知られる場合がある。しかしながら、「Leontopodium alpinum Cass」及び「Leontopodium nivale subsp. alpinum (Cass.) Greuter」という語は同じ植物種を表し、単に植物の命名法の再編成を反映しているにすぎない。従って本発明においてはこれらの語は互換的に使用することができ、及び本明細書において示されるLeontopodium alpinum Cass.に関してのいずれの定義および説明はLeontopodium nivale subsp. alpinum (Cass.) Greuterにもまた適用され、準用され、そしてその逆もまた同じである。
【0059】
本発明に従って使用される化合物はLeontopodium hybridsなどの市販の栽培種を含むがこれに限らない、その他のLeontopodium種から得ることができることが、本明細書に当然記載される。従ってこの化合物は次の植物から得ることができる。具体的には、キク科ウスユキソウ(Leontopodium)種及び栽培種:L. catipes (DC.) F.Muell.、 L. gnaphalioides Hieron.、L. japonicum var. sandwicense H.Lev.、L. linearifolium Britton、L. meredithae (F.Muell.) F.Muell.、L. albogriseum Hand.-Mazz.、L.aloysiodorum Hort. ex Hand.-Mazz.、L. alpinum Cass.、L. alpinum Colm. ex Willk. & Lange、L. alpinum Cass. subsp. nivale (Ten.) Tutin、L. amrheinii Hort. ex Mollers、L. andersonii C.B.Clarke、L. antennarioides Socz.、L. arbuscula Beauverd、L. artemisiifolium Beauverd、L. aurantiacum Hand.-Mazz.、L. beerianum Beauverd ex Murr、L. blagoveshczenskyi Vorosch.、L. bonatii Beauverd、L. brachyactis Gand.、L. caespitosum Beauverd、L. caespitosum Diels、L. calocephalum Beauverd、L. campestre Hand.-Mazz.、L. catipes F.Muell.、L. chamaejasme Beauverd、L. charkeviczii V.Yu.Barkalov、L. chuii Hand.-Mazz.、L. conglobatum Hand.-Mazz.、L. coreanum Nakai、L. dedekensi Beauverd、L. delavayanum Hand.-Mazz.、L. discolor Beauverd、L. dubium Beauverd、L. evax Beauverd、L. fangingense Ling、L. fauriei Hand.-Mazz.、L. fedtschenkoanum Beauverd、L. fimbrilligerum J.R.Drumm.、L. fischerianum Beauverd、L. foliosum Beauverd、L. forrestianum Hand.-Mazz.、L. francheti Beauverd、L. futtereri Diels、L. giraldii Diels、L. gnaphalioides Hieron. ex Sod.、L. gracile Hand.-Mazz.、L. haastioides Hand.-Mazz.、L. hallaisanense Hand.-Mazz.、L. haplophylloides Hand.-Mazz.、L. hastatum Beavera、L. hayachinense (Takeda) Hara & Kitam.、L. helveticum D.Don ex G.Don、L. himalayanum DC.、Leontopodium × intermedium Sunderm.、L. jacotianum Beauverd、L. jacotianum Beauverd var. haastioides (Hand.-Mazz.) R.C.Srivastava、L. jamesonii Beauverd、L. japonicum Miq.、L. japonicum Miq. f. happoense Hid.Takah. ex T.Shimizu、L. javanicum Zoll. & Mor.、L. junpeianum Kitam.、L. kamtschaticum Komarov、L. krasense Derganc、L. kurilense Takeda、L. leiolepis Nakai、L. leiolepis Nakai var. crinulosum H.S.Pak、L. leiolepis Nakai var. curvicollum H.S.Pak、L. leontopodinum Hand.-Mazz.、L. leontopodioides Beauverd、L. leontopodium Karst.、Leontopodium × lindavicum Sunderm.、L. linearifolium Britton、L. linearifolium Benth. & Hook.f.、L. linearifolium Hand.-Mazz.、L. longifolium Ling、Leontopodium × macranthum Sunderm.、L. maireanum Beauverd ex Hand.-Mazz.、L. makianum Kitam.、L. mariae Muell.、L. melanolepis Ling、L. meredithae F.Muell.、L. micranthum Ling、L. microcephalum (Hand.-Mazz.) Ling、L. microphyllum Hayata、L. monocephalum Edgew.、L. monoicum Benth. & Hook.f.、L. montisganeshii S.Akiyama、L. muscoides Hand.-Mazz.、L. nanum Hand.-Mazz.、L. nivale (Ten.) Huet ex Hand.-Mazz.、L. nivale (Ten.) Huet ex Hand.-Mazz. subsp. alpinum (Cass.) Greuter、L. niveum Hand.-Mazz.、L. nobile Beauverd、L. ochroleucum Beauverd、L. ochroleucum Beauverd subsp. campestre (Ledeb.) V.M.Khanminchun、L. ochroleucum Beauverd subsp. campestre (Hand.-Mazz.) Khanm.、L. ochroleucum Beauverd subsp. conglobatum (Turcz.) V.M.Khanminchun、L. ochroleucum Beauverd subsp. conglobatum (Hand.-Mazz.) Khanm.、L. omeiense Ling、L. palibinianum Beauverd、L. paradoxum J.R.Drumm.、L. perniveum Honda、L. pirinicum Hand.-Mazz.、L pulchellum Beauverd、L. pusillum Hand.-Mazz.、L. roseum Hand.-Mazz.、L rosmarinoides Hand.-Mazz.、L. sachalinense Miyabe & Kudo、L. sandwicense Rock、L. shinanense Kitam.、L. sibiricum Cass.、L. sinense Hemsl. ex Forb. & Hemsl.、L. smithianum Hand.-Mazz.、L. souliei Beauverd、L. spathulatum Kitam.、L. stellatum A.P.Khokhr.、L. stoechas Hand.-Mazz.、L. stoloniferum Hand.-Mazz.、L. stracheyi C.B.Clarke ex Hemsl.、L. subulatum Beauverd、L. suffruticosum Y.L.Chen、L. tataricum Kom.、L. thomsonianum Beauverd、L. umbellatum Bluff. & Fingerh.、L. villosulum A.P.Khokhr.、L. villosum Hand.-Mazz.、及びL. wilsonii Beauverdから得ることができる。
【0060】
もちろん本明細書において提供される化合物はまた、相当する培養細胞、懸濁培養細胞又はカルス培養などの類似のインビトロ培養技術から得ることができる。相当する培養の確立及び維持のための相当する手段及び方法は当業者においてよく知られている。本発明の好ましい態様においては、培養細胞は本明細書の上記において記載したLeontopodium種、特にLeontopodium alpinum(エーデルワイス)の根から得られた。もっとも好ましいものは、毛状根から得られた培養細胞である。
【0061】
当業者は一般的な知識と本明細書において提供される教えに基づいて、本明細書において使用された化合物、特にレオリギンをLeontopodium種から容易に得ることができる。一般に当業者においては、標準的な技術によってLeontopodium属に属する植物から抽出物を調製することが可能である。Leontopodium alpinumの根からこれら化合物を抽出する好ましい方法については本明細書下記の例1において提供される。他のさらなるLeontopodium種、特にこれら植物の根からこの化合物を抽出するために、このプロトコルをどのように適用すればよいかについても技術者は理解できるだろう。この状況において用いられる別のプロトコルについてもまた当業者は理解できるだろう。「抽出物」という語はこの分野においてよく知られ、且つ本明細書に従って使用される。例えばこの語は、通常生の又は乾燥した植物材料から調製される液体状の堅さ(液体の抽出物及び浸出液)、半固体の堅さ(粘性のある抽出物、シロップ状の濃縮物)又は固体の堅さ(乾燥抽出物)の試料を表す。
【0062】
Leontopodium種から得られる抽出物は有機又は非有機溶媒を使用することによって得られるものである。適した溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、ペトロレウムベンゼン、アセトン、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、液体二酸化炭素、エタノール、第三ブチルメチルエーテル(tBMe)及び水とアルコールの混合物である。抽出物は植物材料、特に根をいずれかの溶媒を別々に用いて抽出することによって得ることができる。得られた抽出物を次いで第二の溶媒、又は異なる溶媒の混合物を用いてさらに抽出することが可能である。具体的には、第一の抽出に用いられる制限のない溶媒はヘキサンである。しかしながら、上記溶媒のいずれをも、その第一抽出過程において用いることができる。この第一の抽出過程は、続く上記例の溶媒、例えばジクロロメタン、クロロホルム又は第三ブチルメチルエーテル(tBMe)、の少なくとも1つを用いた第二の(又はそれ以上の)抽出過程を伴う場合がある。本明細書において開示される化合物(特に式(I)の化合物、例えばレオリギン及び/又はその(ジ)メトキシ−誘導体)の本発明に従った抽出はまた、添付の例においても説明される。抽出溶媒として用いられるものは、好ましくは、ジクロロメタン及びメタノールである。続く抽出過程では、化合物は最初にn−ヘキサンを用いて抽出され、次いでジクロロメタン、クロロホルム又はtBMeを用いて抽出されることが好ましい。本明細書において示されるように、リグナン濃度(つまり式(I)の化合物、例えばレオリギン及び/又はその(ジ)メトキシ−誘導体の濃度)は第二の又はそれ以上の、本明細書において記載された方法及び特に上記溶媒を用いた抽出過程によって増加させることができる。この状況においては、セファデックスLH20カラムクロマトグラフィー及び特にシリカゲルカラムクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー手法の使用もまた有効である。添付の例において示したように、セファデックスLH20カラムクロマトグラフィーを用いることでレオリギン濃度を約0.7%から約2.2%にまで増加させることが可能である。本明細書においてはまた、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて約1.4%から約10%にまでレオリギン濃度を顕著に増加させることが可能であることを示した。
【0063】
本明細書において開示された化合物(特に式(I)の化合物、例えばレオリギン及び/又はその(ジ)メトキシ−誘導体)の含量を増加させるために、さらなるクロマトグラフィー手法を上記記載の方法に追加して又は上記記載の方法とは別の方法において使用することができることを本明細書において記載した。例えば、この状況で制限なく使用できるクロマトグラフィー手法は、この分野において知られている、水/アセトニトリル混合液又は類似の溶媒混合液を用いた逆相カラムクロマトグラフィー又は分取HPLCである。また、液液抽出技術(不連続の又は連続した方法)もまた、本明細書において開示された化合物(特に式(I)の化合物、例えばレオリギン及びその(ジ)メトキシ−誘導体)の濃度を上げるために使用することができる。液液抽出の具体例は、混合できない2種類の溶媒の溶媒系を用いた高速向流クロマトグラフィーである。
【0064】
Leontopodium種、特にLeontopodium alpinumの基本的な抽出物の調製は機械的なパルプ化、ソニケーション、乳鉢と乳棒の使用、凍結融解法、ブレンダーの使用(例えばワーリングブレンダー、ポリトロン)、液体ホモジナイゼーション、及び細胞解離(添付の例もまた参照)、又は例えばダウンス型ホモジナイザー、ポッターエルベージェム、フレンチプレスの使用などを含み得る。添付の例においては、機械的な細胞解離が用いられた。しかしながら、抽出物はいずれの機械的な/物理的な又は化学的な手段、例えば界面活性剤の使用、によっても細胞及びLeontopodium種からの細胞を破砕することによって得ることができる。
【0065】
大量の複雑な組織、例えば植物の葉、花、種及び特に根をすりつぶし、破砕するための機械的な方法は回転刃の使用による。この目的のためには一般に、ワーリングブレンダー及びポリトロンが使用される。標準的な家庭用のブレンダーに類似のワーリングブレンダーとは異なり、ポリトロンは回転刃を備えた長いシャフト中に組織を引っ張るものである。
【0066】
液体ベースの均質化は培養細胞においてもっとも広く使用される細胞破砕技術である。細胞又は組織懸濁液を狭い空間に押し入れ、その後細胞膜を剪断することによって細胞を溶解する。3種類の異なる均質化方法が一般的に用いられている。ダウンス型ホモジナイザーは手動でガラス管に入れられる、円筒形のガラス製乳棒から成る。ポッターエルベージェムホモジナイザーは円筒形又は円錐形の管に沿う形の手動又は機械的に動かされるテフロン製の乳棒から成る。ストローク数及び早さはダウンス及びポッターエルベージェム均質化方法において効果を与えるストロークである。どちらのホモジナイザーも、量の幅に適した様々な大きさのものが入手可能である。フレンチプレスは、40から250mlの量の試料をプレスの小さい穴に押し入れて高い圧をかけるためのピストンから成る。この過程における高い圧によって、効果的な溶解のためには2つの工程のみが必要とされる。より工業的な適用においては、Leontopodium種からの抽出物の調製のために、より大きな装置を使用することができることにも注目すべきである。
【0067】
ソニケーションもまた細胞を破砕するために一般的に使用される物理的な破砕方法である。この方法は、細胞及び細かく切られた組織を混合して溶解するためのパルス化された超音波を使用する。過剰な加熱を避けるために氷浴に入れた試料に複数回、短時間の超音波処理が与えられる場合がある。ソニケーションは100mlより少ない量の試料に好適である。
【0068】
凍結/融解法は微生物及び高等生物からの細胞溶解に一般的に使用される。この技術はドライアイス/エタノール浴又は冷凍庫中で細胞懸濁液を凍らせる工程、及びその後その材料を室温又は37℃で融解する工程を含む。溶解のこの方法は細胞を膨張させ、結果として、氷の結晶が凍結過程で形成するのと同様に壊れ、そしてその後溶解過程を通じて収縮する。十分な溶解には複数回の工程が必要であり、この過程はかなりの長時間を要する。
【0069】
破砕過程を補助するために、細胞、微生物、並びに組織は様々な薬剤によって処理され得る。ヘキサン、ペトロレウムベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、エタノール、並びに、水及びアルコールの混合物又は異なる溶媒の混合物などの化学物質が機械的な破砕の経過中又はその前に加えられ得る。溶解は、物理的な剪断によって細胞をより容易に膨張および破裂させる低張緩衝液中で細胞を懸濁することによってもまた促進できる。細胞壁の破砕を促進するために細胞をガラスビーズによって処理することにより、この過程は促進され得る。試料の粘性は核酸材料の放出によって溶解の経過を特に促進する。この問題を低減するために、試料にDNaseが加えられる場合もある。
【0070】
本発明に従って処理される抽出物の調製において、あまり好ましくはないが記載しておくものは、界面活性剤の使用である。界面活性剤は分子の1つの分類であり、その特有な特性が生物試料中における分子間の疎水性−親水性相互作用の操作(妨害又は形成)を可能にする。それらの界面活性剤は細胞溶解、膜タンパク質及び脂質の可溶化に使用される場合もある。通常、中程度の濃度の軽度の(つまり非イオン性の)界面活性剤は細胞膜の保全を損ない、それによって細胞溶解および可溶性タンパク質、しばしば天然型の、抽出を促進する。その他の条件によっては、単離されたリン脂質とミセルを混合するのに効果的な濃度では界面活性剤は膜二重層を効果的に透過する。界面活性剤は例えば、TritonX−100(登録商標)、Triton−X−114(登録商標)、NP−40(登録商標);CHAPS、Tween−20(登録商標)、Tween−40(登録商標)、Tween−80(登録商標)、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、Brij−35、Brij−58、SDSなどである。しかしながらそれらは特定の化学的手段によっては抽出物の安定化に有効な場合もある。薬剤的又は化粧品組成物での安定化剤の実例は本明細書の下記において議論される。
【0071】
基本的な抽出物を得るために使用される細胞及び植物は、天然由来の細胞並びに培養された細胞又は植物であり得る。本明細書の上記において記載したように、機械的な破砕/細胞解離の前に細胞又は植物及び特に植物の根を乾燥させることが本明細書においては好ましい。細胞又は植物は空気乾燥、凍結乾燥、又はあまり好ましくないが、オーブン中で乾燥させることができる。基本材料として用いられる細胞及び植物は生の、つまり抽出物を調製する直前に収穫されたものであることが本明細書においては好ましい。言うまでもなく、抽出物の調製において使用する前に基本材料を保存することが可能である。例えば、基本材料を凍結乾燥、または単に凍らせて低温で、例えば約−20から−30℃又は−80℃程度の低温で保存することができる。
【0072】
本発明においては、本発明の方法によって処理される抽出物を調製するための基本材料として使用される「細胞」及び「植物」という語は、「組織」の使用もまた含む。それらの組織は葉、芽又は生殖器官、例えば花である場合がある。好ましくはその組織は根、特に毛状根である。加えて上記の組織、特に根から誘導され、液体培地又は固化した培地中で培養したカルス又は培養細胞である場合がある。カルス又は培養細胞の適切な培養方法は当業者に周知である。培地は例えば、MS(Murashige and Skoog)培地であってもよく、固化のための薬剤はアガロース、プラントアガー(plant agar)、又はバクトアガー(bacto agar)であってもよい。MS培地などの基本的な培地は、特にpHの範囲、炭素又は窒素源、アミノ酸又はビタミンに関しては改変されてもよい。通常の方法で成長させた又はインビトロで増殖させた植物又は微生物と同様に、それらカルス又は培養細胞から再生した植物体の使用もまた記載された。
【0073】
抽出物の調製方法はこの分野において知られており、また本明細書においても記載されている。好ましくは抽出物はその調製のすぐ後にさらに処理される(例えばこの抽出物は本明細書において開示された医薬組成物の調製において使用される);しかしながら本発明に従って、使用する前にしばらくの間抽出物を保存しておくことも可能である。抽出物は例えば、凍結乾燥した状態において又は乾燥させた抽出物の状態において保存され得る。しかしながらこの分野において知られているそれぞれの保存形態が用いられ、保存が効果を有している間は長期間にわたって抽出物(及びその構成要素)は有効性をとどめる、つまり保存された抽出物は、好ましくは、実質的には新鮮な抽出物と同様の有効性を有する。
【0074】
乾燥抽出物はこの分野において知られている方法によって日常的に調製され得る。例えば、続く基本(植物)材料の機械的な破砕、例えば細胞解離又はろ過によって、本明細書において記載されたようにその材料は溶媒又はその混合物を用いて抽出され得る。液相及び抽出物残渣(例えばセルロース、ペクチンなどを含み、好ましくは本明細書において開示される活性物質、つまり主にレオリギン及びその((ジ)メトキシ)−誘導体を含まない)の分離後に、液体抽出物(つまり抽出物の液相から得られた)を日常的な技術を活用して濃縮することも可能であり、それらいくつかの具体例については本明細書の以下において記載される。それらの濃縮技術は流動層乾燥機、シロップ状になるまでの濃縮又は濃縮された液体抽出物、噴霧乾燥、凍結乾燥又は真空乾燥機の使用、乾燥トンネル、真空バンド乾燥機又は乾燥棚(drying hurdle)を含むが、これらに限定されない。しばしば有機−含水液体抽出物(例えば有機溶媒を用いて本明細書において得られた液体抽出物)は核沸騰又は表面蒸発によって濃縮される。
【0075】
医薬分野において用いられる日常的な乾燥技術は、蒸留及び通常の条件下(つまり室温)での乾燥、及び乾燥抽出物を得るために圧力及び温度の変化を活用する方法をもまた含む。乾燥抽出物の調製のための既知の方法の1つは以下の通りである:第一に、液体抽出物又は浸出液を調製する;続く溶媒の蒸留の後に粘性のある抽出物が得られ、この抽出物にはしばしば助剤及び/又は賦形剤(例えばラクトース、ポリビニルピロリドン、ショ糖、二酸化ケイ素など)が加えられる。この湿った塊をその後適した乾燥機において乾燥させる。この状況では、ダウンドラフト型気化器を用いた予備乾燥過程後に粘性のある抽出物から乾燥抽出物を得る、真空バンド乾燥機(Mitchell Dryers Ltd)もまた使用される。
【0076】
本明細書においては、キク科ウスユキソウ属に属する植物から得られた市販の抽出物、特に乾燥抽出物の使用についてもまた記載した。
【0077】
細胞、組織、又は植物体全体を機械的に破砕した後に、さらにヘキサン、ペトロレウムベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、液体二酸化炭素、エタノールなどの有機溶媒、及びいずれかの溶媒を別々に加えた水とアルコールの混合物中において、又は続く第二の溶媒又は異なる溶媒の混合物中で植物材料を細胞解離及び/又は溶解/懸濁することができる。好ましくは、ジクロロメタン及びメタノールが抽出溶媒として用いられる。
【0078】
添付の例において示されるように、0.67%レオリギン及び1.47%レオリギン並びにそのメトキシ−誘導体を含むヘキサン抽出物を日常的な技術によって容易に調製することができる。しかしながら、抽出物は本明細書において記載され且つ提供される化合物、特に式(I)の化合物、例えばレオリギン及び/又はその((ジ)メトキシ)誘導体が豊富であることが本明細書においては好ましい。また添付の例において示されるように、標準的な抽出方法及び溶媒(例えばジクロロメタン)を用いて、特に0.7%から1.5%の間の範囲のより高い収量(抽出物中のレオリギン濃度[w/w%]に対して)を容易に得ることができる。これらの標準的な抽出方法を用いて収量約2.2%までのレオリギン及びその5−メトキシ−誘導体を得ることができる。本明細書において記載されるように式(I)の化合物、特にレオリギン(及び/又はその(ジ)メトキシ−誘導体)の濃度は、例えばヘキサンを用いた第一の抽出過程とそれに続く、例えばジクロロメタン、クロロホルム又は第三ブチルメチルエーテル(=tBMe)を用いた抽出過程の複数回の抽出工程によって、さらに上昇させることができる。その後の抽出過程を適応した場合には、少なくとも2.4%の合計リグナン(主に式(I)の化合物、特にレオリギン及び/又はその(ジ)メトキシ−誘導体)含量を得ることができる。リグナン(主に式(I)の化合物、特にレオリギン及び/又はその(ジ)メトキシ−誘導体)濃度もまた、セファデックスLH20カラムクロマトグラフィーの使用によって上昇させることができる(レオリギン濃度の増加は約0.7%から約2.2%)。
【0079】
好ましくは、抽出物は濃縮された抽出物、つまり多量のレオリギン及びその((ジ)メトキシ)−誘導体を含む。それらの濃縮された抽出物は、例えば、添付の例において示されるようにシリカゲルカラムクロマトグラフィーを活用して得ることができる。シリカゲルカラムクロマトグラフィーはこの分野においてよく知られており、“Preparative Chromatography Techniques” by Hostettmann、 K. Marston、 Andrew Hostettmann、 Maryse、 Springer-Verlag GmbH、 2007、 260 p. などの標準的な教科書に詳細に記載されている。実験部分において、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相:ペトロレウムエーテル−アセトン)を用いてレオリギン含量を1.36%から9.76%[w/w]まで顕著に増加させられることを示した。
【0080】
従って、抽出物(例えば本明細書において記載されたいずれかの乾燥方法によって溶媒を蒸発させた後の)の固形成分が少なくとも0.05%、0.1%、0.5%、0.7%、1%、1.5%、2.0%、2.5%又は3.0%の式(I)の化合物、特にレオリギン及び/又はその((ジ)メトキシ)−誘導体を含むことが本明細書においては好ましく、ここで固形成分中に少なくとも0.7%のこれら化合物を含む抽出物が本発明においては「濃縮された」抽出物であると考えられ得る。より好ましくは、抽出物の固形成分は少なくとも5%、6%、7%、8%、及びもっとも好ましくは少なくとも9%又は10%の式(I)の化合物、特にレオリギン及び/又はその((ジ)メトキシ)−誘導体を含む。抽出物中に少なくとも9%のこれら化合物を含む固形成分は「高度に濃縮された」抽出物と考えられ得る。本明細書において定義されたように、「濃縮された抽出物」、及び、特に「高度に濃縮された」抽出物はそのため、本発明の好ましい態様を現す。「濃縮された」又は「高度に濃縮された」抽出物は特に本明細書において開示される医療上の記載において、本明細書において定義される過形成性障害の治療、予防、又は改善に特に有用である。また本発明に従って、(高度に濃縮された)抽出物の固形成分が少なくとも15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、80%又は90%の式(I)の化合物、特にレオリギン及び/又はその誘導体(好ましくは(ジ)メトキシ−誘導体、より好ましくは本明細書において開示される誘導体である、5−メトキシ−レオリギン及び/又は5、5’−ジメトキシ−レオリギン)を含むことが本明細書においては好ましい。本明細書において提供される教えに基づいて、当業者は本発明従って調製された抽出物において式(I)の化合物、特にレオリギン及び/又は誘導体(好ましくは(ジ)メトキシ−誘導体、より好ましくは本明細書において開示された誘導体、5−メトキシ−レオリギン及び/又は5、5’−ジメトキシ−レオリギン)が濃縮された/高度に濃縮されたかどうかを容易に決定することができる。純粋な式(I)の化合物、つまり抽出物の固形成分が本明細書において記載され、提供される化合物を少なくとも95%含むものを得ることがもっとも好ましい。より高収率の式(I)の化合物を得るために、基礎的に抽出された材料がさらに少なくとも1つ及び8つまでのさらなる抽出工程に供された場合もある。(濃縮された/高度に濃縮された)抽出物はLeontopodium属に属する植物、特にそれら植物の根から得られることが好ましい。上記の属、及び本発明に従って使用される種又は栽培種の具体例はこの分野において知られており、また本明細書においても開示された。
【0081】
「濃縮された/高度に濃縮された」抽出物が主にレオリギンを活性物質として、特にそのメトキシ−誘導体との併用において含むことが本明細書において記載された。本明細書において示される教えに基づいて、特に本明細書において開示された活性物質(好ましくはレオリギン及び/又はその(ジ)メトキシ−誘導体及びその混合物)の濃度/含量に依存する抽出物を含む/から成る、医薬組成物の調製においてどの程度の量の(濃縮された/高度に濃縮された)抽出物が使用されるかを当業者は容易に決定することができる。好ましくは、医薬組成物において使用され/含まれる抽出物が実質的に式(I)の化合物、特にレオリギン及び/又はその(ジ)メトキシ−誘導体(またはその混合物)、より好ましくはレオリギン又はその(ジ)メトキシ−誘導体のみ(添付の例において示されるように)を含む医薬組成物と同様の医療効果を発揮する。「実質的に同様の効果」という語は本発明においては、「効果」における変化が10%より少ない、好ましくは5%より少ない、もっとも好ましくは1%より少ないことを意味する。測定される「効果」の具体例は本明細書の上記において記載され、及び添付の例においてもまた示したように、過形成性の疾患/障害の根底にあり中枢機構である血管平滑筋細胞(SMC)増殖の阻害である。
【0082】
前述の通り、本明細書において提供され且つ開示されたLeontopodium属に属する植物から得られる抽出物は、本発明に従って医療上で使用することができる。従って、本発明はキク科ウスユキソウ(Leontopodium)属に属する植物から得られる根抽出物を含む医薬組成物の1つの態様に関する。さらなる態様はキク科ウスユキソウ(Leontopodium)属に属する植物から得られ、本明細書において開示された化合物、特に式(I)の化合物、例えばレオリギン及び/又はその(ジ)メトキシ−誘導体(またはその混合物)が高度に濃縮された抽出物を含む医薬組成物に関する。本明細書においては高度に濃縮された抽出物は主にレオリギン及び/又はその(ジ)メトキシ−誘導体(またはその混合物)を含むことが好ましい。レオリギン及び好ましいその(ジ)メトキシ−誘導体の式もまた本明細書において提供された。キク科ウスユキソウ(Leontopodium)属に属する植物から得られた式(I)の化合物、特にレオリギン及び/又はその((ジ)(メトキシ−))誘導体が好ましく濃縮された(もっとも好ましくは高度に濃縮された)、(根)抽出物を含む本明細書において開示された医薬組成物は、本明細書において定義されたように過形成性障害の治療、予防又は改善に用いられる。本明細書において使用される「根抽出物」いう語は、根から得られた抽出物、つまり抽出物の調製において植物地下部からの植物材料が、好ましくは根のみが未処理の材料として使用された抽出物を意味する。この状況においては、(好ましくは濃縮された、より好ましくは高度に濃縮された)抽出物から成る医薬組成物が好ましい。しかしながら抽出物に加えて医薬組成物には、本明細書において記載され、及びこの分野において知られているさらなる賦形剤/助剤/担体などが含まれる場合がある。上記に従って、医療において又は薬剤として用いられる、キク科ウスユキソウ(Leontopodium)属に属する植物から得られた式(I)の化合物、特にレオリギン及び/又はその(ジ)メトキシ−誘導体(またはその混合物)が(高度に)濃縮された(根)抽出物を含む(から成る)組成物が本明細書において提供された。キク科ウスユキソウ(Leontopodium)属に属する植物から得られ、式(I)の化合物、特にレオリギン及び/又はその(ジ)メトキシ−誘導体(またはその混合物)が(高度に)濃縮された(根)抽出物の、薬剤としての医療における使用についてもまた提供された。上記(医薬)組成物/抽出物が、本明細書において開示され、定義された過形成性障害の治療、予防又は改善において本発明に従って使用されることが記載された。
【0083】
単一の化合物を得るために、抽出物は上記に記載されたように調製され、及び濃縮される場合があり、そしてシリカゲル、AgNOを用いて改良されたシリカゲル、逆相材料(RP18)又はセファデックスLH20(登録商標)を固定相として用いたカラムクロマトグラフィーによるさらなる精製に供される場合がある。加えて、その他の分離技術、例えば高速向流クロマトグラフィー又は分取HPLCもまた同様に使用できる。上述のクロマトグラフィー手法によって得られた画分は、例えば別のクロマトグラフィーによる精製工程によってさらに精製される場合もある。例えば、セファデックスLH−20(登録商標)などの架橋デキストランゲルがその後の精製に用いられ得る。この種のクロマトグラフィーは通常、例えばメタノール、アセトン、ジクロロメタンなどの有機溶媒の存在下において行われる。本明細書において開示された抽出物を含む本明細書において記載された医薬組成物は、さらに(加えて)純粋な(及び/又は(実質的に)精製された、例えば抽出物から精製された)活性物質(つまり式(I)の化合物、特にレオリギン及び/又はその(ジ)メトキシ−誘導体)をもまた含む場合があることが記載された。上記に従って、医薬組成物は本質的に、本明細書において開示され及び本明細書において記載された方法によって得られた植物抽出物を含むことが本明細書においては好ましい。本明細書において記載された抽出物を含まないが、純粋な(及び/又は(実質的に)精製された、例えば抽出物から精製された)活性物質(つまり式(I)の化合物、特にレオリギン及び/又はその(ジ)メトキシ−誘導体)を含む医薬組成物もまた本明細書において記載される。抽出物はまた、例えば超臨界二酸化炭素抽出、ろ過又はソックスレー抽出及び、この分野における当業者によって本発明の手段及び方法に適用できる方法などの、この分野において知られている別の抽出方法によっても得ることが出来る。
【0084】
好ましくはないが、化合物が例えば花、茎、葉、種子などの植物の地上部組織から得られた場合についても本明細書において記載された。抽出に用いるLeontopodium alpinum(エーデルワイス)植物は、例えばStation federale de recherches en production vegetale de Changins(http://www.admin.ch/sar/rac; Revue Suisse Vitic. Arboric. Hortic. 31(2), 889-96 (1999)もまた参照)から容易に入手できる。
【0085】
別の態様においては、本明細書において使用される化合物は合成される場合もある。レオリギンの合成経路の具体例を図8に示した。本発明の別の化合物を得るために、示された合成経路において相当する遊離体の変更が適用される場合もある。当業者は本発明の化合物、特にレオリギンの合成方法を理解し、又は例えばLi Hong Hu, J. Nat. Prod. 68, 342-8. (2005); Babasaheb P. Bandgar, Monatshefte fur Chemie 135, 1251-5 (2004); J Pijus Kumar Mandal, Org. Chem. 63, 2829-34 (1998); Subhas Chandra Roy, J. Org. Chem. 67, 3242-8 (2002)から相当する方法を推論できるだろう。
【0086】
前述の通り、本明細書において表された活性化合物は例えばレオリギンなどの天然物質を誘導体化することによる半合成方法によってもまた提供され得る。この分野において知られている適した誘導体化反応はアルコールを生成するためにレオリギン中のエステル結合を鹸化する方法を含む。アルコールは、アルコール、チオール又はアミンと反応する、カルボニル/カルボキシル酸官能基に酸化することができ、または、異なる有機酸によってエステル化することができ、または、アミン等に変換することができる。
【0087】
医薬組成物は本発明において提供される化合物を含むことができる。本発明に従って使用される化合物は本明細書の上記において記載した通りにLeontopodium植物から得られ、及び/又は化学的に合成することができる。
【0088】
式(I)の化合物及び、特に、レオリギンを含む本発明の医薬組成物は、適切な医療業務、個々の患者の臨床上の症状の考慮、医薬組成物の送達部位、投与方法、投与計画、及び医師に知られるその他の要因に一致した方法で処方され、投与され得る。本明細書における目的のための医薬組成物の「効果量」はそのため、それらの考慮によって決定される。
【0089】
当業者は個々に投与される医薬組成物の効果量が、とりわけ化合物の特性に依存することを理解するだろう。例えば上記化合物がリグナンである場合、投与毎に非経口で投与される合計の薬剤的な医薬組成物の効果量は、患者の体重当たり約1μg/kg/日から10mg/kg/日の範囲になるだろうが、上記に示したように、これは治療の判断による場合がある。より好ましくは、この投与量は少なくとも0.01mg/kg/日、及びヒトに対してもっとも好ましくは約0.01から1mg/kg/日の間である。継続的に使用される場合には、医薬組成物は特に約1μg/kg/時から約50μg/kg/時の投与率、若しくは1日に1〜4回の注入又は、例えばミニポンプを使用した継続的な皮下注入によって投与される。静脈内輸液もまた使用され得る。変化が観察されるまでに必要とされる治療期間及び治療後の反応が見られるまでの間隔は望まれる効果によって様々である。詳細な量は当業者において周知の従来型の試験によって決定され得る。
【0090】
本発明の医薬組成物は、経口で、直腸内に、非経口で、嚢内に、膣内に、腹膜内に、局所的(粉末、軟膏、ドロップ、又は経皮的なパッチによって)に、口腔内に、又は口腔内噴霧若しくは鼻内噴霧で投与することができる。従って、本明細書において提供される化合物は又、非経口経路、経口経路、静脈経路、動脈内経路、筋肉内経路、心臓内経路、肺内経路、膀胱内経路、硝子体内経路、皮下経路、鼻腔内経路又は経皮経路のいずれによっても投与され得る。
【0091】
本発明の医薬組成物は好ましくは薬剤的に許容できる担体を含む。「薬剤的に許容できる担体」という語は、非毒性の固体、半固体若しくは液体の充填剤、希釈剤、カプセル材料又はいずれの調剤佐剤を意味する。本明細書において使用される「非経口」という語は、静脈内、筋肉内、腹膜内、胸骨内、経皮及び動脈内注入及び点滴を含む投与方法を意味する。
【0092】
医薬組成物は、徐放性製剤による投与にもまた適している。徐放性組成物の適した例は例えばフィルム、又はマイクロカプセルなどに成型された製品などの半透過性の高分子マトリックスを含む。徐放性マトリックスはポリラクチド(U.S. Pat. No. 3,773,919, EP 58,481)、L−グルタミン酸及びガンマ−エチル−L−グルタミン酸の共重合体(Sidman, U. et al., Biopolymers 22:547-556 (1983))、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(R. Langer et al., J. Biomed. Mater. Res. 15:167-277 (1981)、及びR. Langer, Chem. Tech. 12:98-105 (1982))、エチレン酢酸ビニル(R. Langer et al., Id.)又はポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)を含む。徐放性医薬組成物は、リポソームに封入された化合物をもまた含む。医薬組成物を含むリポソームはDE 3,218,121; Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 82:3688-3692 (1985); Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 77:4030-4034 (1980); EP 52,322; EP 36,676; EP 88,046; EP 143,949; EP 142,641; Japanese Pat. Appl. 83-118008; U.S. Pat. Nos. 4,485,045及び4,544,545;及びEP 102,324それ自体に知られる方法によって調製される。通常リポソームは脂質含量がコレステロール約30molパーセントより高く、選択された部分が至適治療に調整される小さい(約200〜800オングストローム)ユニラメラ型である。
【0093】
非経口投与には、医薬組成物は通常、薬剤的に許容できる担体、つまり受容者に使用される用量及び濃度で非毒性であり、且つ処方の他の成分と混合可能な担体と共にそれらを望ましい純度に混合することにより、単位毎の用量で注入できる形(溶液、懸濁液又は乳濁液)で処方される。
【0094】
通常、処方は医薬組成物の成分を液体の担体又は微粉化した固体の担体又はその両方と均一に且つ完全に接触させる工程によって調製される。その後必要であれば、生成物は望ましい処方に成型される。好ましくは担体は非経口の担体であり、より好ましくは受容者の血液と等張の液体である。それら担体の例は、水、塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液を含む。リポソームと同様に、本明細書においては固定油及びオレイン酸エチルなどの非液体の担体もまた有用である。担体は等張性及び化学的安定性を高める物質などの少量の添加剤を適切に含む。それらの物質は使用される用量及び濃度において受容者に毒性を示さず、リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、及びその他の有機酸又はそれらの塩などの緩衝液;アスコルビン酸などの抗酸化剤;例えばポリアルギニン又はトリペプチドなどの低分子(約10残基より少ない)(ポリ)ペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性高分子;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、又はアルギニンなどのアミノ酸;単糖、二糖、及びその他のセルロース又はその誘導体を含む炭水化物、グルコース、マンノース、又はデキストリン;EDTAなどのキレート剤;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの対イオン;及び/又はポリソルベート、ポロキサマー、又はPEGなどの非イオン界面活性剤を含む。
【0095】
治療用投与に用いられる医薬組成物の成分は滅菌されていなければならない。滅菌は、除菌ろ過膜(例えば0.2ミクロン膜)を用いて容易に行うことができる。医薬組成物の治療用成分は通常無菌的に利用できる注入口、例えば静脈輸液バッグまたは皮下注射針によって穴をあけることができる栓を有するバイアルなどを有する容器に入れられている。
【0096】
医薬組成物の成分は最初は再構成用の水溶液又は凍結乾燥させた処方として、例えば、密閉したアンプル又はバイアルなどの1単位又は複数回投与用の容器中に保存される場合もある。凍結乾燥させた処方の例としては、5mlのろ過滅菌した1%(w/v)水溶液で10mlバイアルを満たし、得られた混合液を凍結乾燥させたものがある。注入用の溶液は静菌注射用蒸留水を用いて凍結乾燥させた化合物を再構成する工程によって調製される。
【0097】
1つの態様においては、本明細書の上記において定義された化合物は過形成性の疾患/障害の治療、予防又は改善のためのものである。本発明は、過形成性の疾患/障害の治療、予防又は改善用の医薬組成物の調製のための本明細書において定義された化合物の使用にもまた関する。過形成/過形成性の疾患/障害(悪性及び良性)は器官又は組織における異常な(つまり超生理的な)細胞分裂の増加によって特徴づけられる。過形成は病理的又は生理的な、しかしながら肥大とは常に明確に区別できる過程である場合がある。肥大は1つの細胞の増大による組織又は器官の増大である。過形成は細胞分裂による細胞数の増加による組織又は器官の病理的又は生理的な増大である。静脈グラフト障害の重要な部分は、血管腔の狭窄及びグラフト不全を引き起こす過形成性の過程である、内膜過形成と呼ばれる過程である。静脈グラフト障害の一因となる別の過程は、血管における脂質の沈着、マクロファージの侵入、泡沫細胞形成及び脂肪線条形成、平滑筋細胞による内膜増殖及び浸潤に関連した組織リモデリング、細胞外マトリックスの沈着、及びプラーク形成によって特徴付けられるアテローム性動脈硬化である。加えて、炎症性の過程がアテローム性動脈硬化、静脈グラフト障害及び過形成の重大な一因となる。これらの過程は静脈グラフトの血栓及び/又は閉塞を引き起こす場合があるプラークの破裂を引き起こす場合がある。アテローム性動脈硬化の過程においては平滑筋細胞の増殖が重要な役割を果たし、またこの増殖が過形成性の過程でもある。
【0098】
本発明に従って治療、予防又は改善される好ましい過形成性の障害は内膜過形成及び/又は静脈グラフト障害である。静脈グラフト障害は内膜過形成、つまり内膜において異常に増加した平滑筋細胞の増殖及び血管壁の中膜によって特徴付けられる。好ましくは、過形成性の疾患/障害は過形成である。過形成は内膜過形成の場合もある。好ましい態様においては、内膜過形成は狭窄又は再狭窄である。内膜過形成はまたアテローム性動脈硬化の場合もある。「過形成」、「内膜過形成」、「狭窄」、「再狭窄」及び「アテローム性動脈硬化」という語の意味はこの分野においてよく知られており、P.W. Serruys and B. Rensingによって編集され、Taylor&Francisより出版された「Handbook of Coronary Stents 4th edition」又はP.W. Serruys and A.H. Gershlickによって編集されInforma Healthcareによって出版された「Handbook of Drug-eluting stents」などの標準的な教科書から推論し得る。本明細書においては静脈グラフト障害が本発明に従って治療できることが特に記載される。
【0099】
過形成性の障害が増殖性又は腫瘍性の障害の場合もまたある。増殖性の障害は通常、制御できない/増加した細胞増殖と関連した障害であると考えられる。腫瘍形成又は腫瘍性の障害は、病理的な過程又は生理的な過程としての組織の新しい形成によって特徴付けられる。典型的な病理的な腫瘍性の障害は腫瘍/癌である。増殖性の障害の限定されない例としては、良性の増殖性の胸部障害などの良性の増殖性の障害、血腫、白血病、並びにB細胞リンパ腫、骨髄性腫瘍、前立腺癌、乳癌、大腸癌、肺癌及び皮膚癌などの固形癌などの癌障害が挙げられる。
【0100】
1つの態様においては、本発明は過形成性の疾患/障害の治療、予防又は改善が必要とされる対象に、本明細書において定義した化合物を投与する工程を含む、過形成性の疾患/障害の治療、予防又は改善のための方法に関する。その対象は好ましくはヒトである。
【0101】
好ましい適用形態は、ポリマーを主材料としたドラッグデリバリーシステム又はポリマーをコーティングしたドラッグデリバリーシステムであり得る、本明細書において記載された薬剤溶出ステントシステムである。当然のことながら本明細書において記載され、提供された式(I)の化合物、及び、特にレオリギン及び/又はその((ジ)メトキシ)−誘導体がドラッグデリバリーシステムにポリマーとの併用において適用される。さらに薬剤成分(活性成分)は、包埋された薬剤の放出を制御するのに適したトップコート層によって囲まれた非腐食性のポリマー担体(ベースコート処方)に包埋される。可能な適用形態はパリレンC及び以下の2種類の非腐食性ポリマー:ポリエチレン−co−酢酸ビニル(PEVA)及びポリメタクリル酸n−ブチル(PBMA)を含むシステムとなるだろう。本明細書において記載され、提供された式(I)の化合物、及び特にレオリギン及び/又はその((ジ)メトキシ)−誘導体と混合された2種類のポリマー(67%/33%)の併用はパリレンCによって処理されたステントに適用されるベースコート処方を構成する。薬剤を含まないPBMAポリマーのトップコートは本明細書において記載され、提供された式(I)の化合物、及び特にレオリギン及び/又はその((ジ)メトキシ)−誘導体の放出動態を制御するためにステント表面に適用される。一方単層のポリマー、例えばTranslute(登録商標)ポリマーキャリアは薬剤送達マトリックスに使用される。薬剤/ポリマーコーティングはステントの全表面(つまり管腔及び反管腔側)に付着される。
【0102】
1つの態様においては、本発明は、本明細書において記載された化合物、つまり式(I)の化合物、特にレオリギンを含む、含有する又はこの化合物と接触した医療機器に関する。
【0103】
好ましくは、医療機器はドラッグデリバリーシステムである。それらのドラッグデリバリーシステムは例えば、バルーン付きカテーテルの場合がある。バルーン付きカテーテルはその先端に膨張性のバルーンを有するカテーテルの1種である。バルーン付きカテーテルはヒト又は動物体内で狭くなった開口又は管を広げるために使用することができ、及び内膜過形成、再狭窄、狭窄又は静脈グラフト障害などの過形成性の障害の治療に特に有効であると考えられる。第一工程においては、収縮したバルーン付きカテーテルが広げられる血管に配置され、その後の第二工程において膨らまされる。開口又は血管を広げた後、バルーンは収縮され、そして容易に除去され得る。この状況においてはバルーンは式(I)の化合物、特にレオリギン及び/又はその((ジ)メトキシ)−誘導体によって覆われる場合があり又はそれら化合物を含む場合があることが記載される。これら化合物はバルーンの挿入、膨張及び収縮中、及び/又は、に際してバルーンの周囲の細胞又は組織に送達される。本明細書の上記において記載したバルーンはこの状況において、広げる過程の後に完全に除去される場合に特に有効になり得、炎症性反応を起こる可能性を低減する。
【0104】
本明細書において記載されたドラッグデリバリーシステムはポリマーを主材料としたドラッグデリバリーシステム又はポリマーをコーティングしたドラッグデリバリーシステムである場合がある。当然のことながら、本明細書において記載され、提供される式(I)の化合物、及び特にレオリギン及び/又はその((ジ)メトキシ)−誘導体、がポリマーとの併用においてドラッグデリバリーシステムに適用される。好ましくは、ドラッグデリバリーシステムは化合物の徐放性を提供する。ドラッグデリバリーシステムのコーティングに使用されるポリマーの制限されない例としては、ポリエチレングリコール;ポリスチレン;ポリウレタン;ポリ(ヒドロキシ吉草酸);ポリ(L−乳酸);ポリカプロラクトン;ポリ(ラクチド−co−グリコリド);ポリ(ヒドロキシ酪酸);ポリ(ヒドロキシ酪酸−co−吉草酸);ポリジオキサノン;ポリオルトエステル;ポリ無水物;ポリ(グリコール酸);ポリ(D、L−乳酸);ポリ(グリコール酸−co−炭酸トリメチレン);ポリリン酸エステル;ポリリン酸エステルウレタン;ポリ(アミノ酸);シアノアクリレート;ポリ(炭酸トリメチレン);ポリ(イミノ炭酸);コポリ(エーテル−エステル)(例えばPEO/PLA);シュウ酸ポリアルキレン;ポリホスファゼン;フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン及びヒアルロン酸などの生体分子;ポリウレタン;シリコーン;ポリエステル;ポリオレフィン;ポリイソブチレン及びエチレン−アルファオレフィン共重合体;アクリルポリマー及び共重合体;ハロゲン化ビニルポリマー及び共重合体、例えばポリ塩化ビニル;ポリビニルエーテル、例えばポリビニルメチルエーテル;ポリビニリデンハロゲン化物、例えばポリビニリデンフッ化物及びポリビニリデン塩化物;ポリアクリロニトリル;ポリビニルケトン;ポリビニル芳香族、例えばポリスチレン;ポリビニルエステル、例えばポリビニル酢酸;それぞれ及びオレフィンとのビニル単量体の共重合体、例えばエチレン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリアミド、例えばナイロン66及びポリカプロラクタム;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル;エポキシ樹脂;ポリウレタン;レーヨン;レーヨン−三酢酸;セルロース;酢酸セルロース;酪酸セルロース;酢酸酪酸セルロース;セロファン;硝酸セルロース;プロピオン酸セルロース;セルロースエーテル;及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0105】
好ましくは、本明細書において提供される医療機器はステントである。本発明においては、「ステント」という語は障害誘導性の局部的な血流阻害を予防又は打ち消すために体内の天然の管に挿入される医療機器を意味する。本明細書において提供されるステントは好ましくは過形成性の疾患/障害、特に静脈グラフト障害の治療に用いられる場合がある。「薬剤溶出性ステント」という語はこの分野においてよく知られており、且つ例えば、P. W. Serruys and B. Rensingによって編集され、Taylor & Francisより出版された「Handbook of Coronary Stents 4th edition」又はP.W. Serruys and A.H. Gershlickによって編集されInforma Healthcareによって出版された「Handbook of Drug-eluting stents」などから推論できる。一般的な知識及び本明細書及び前述のHandbook of Coronary Stentsなどの標準的な教科書において提供される教えに基づいて、当業者はステント、及び特に式(I)の化合物、特にレオリギン及び/又はその((ジ)メトキシ)−誘導体を含む、含有する、又はそれら化合物と接触した薬剤溶出性ステントを容易に開発及び準備することができる。当業者はステントを本明細書において記載され及び提供された化合物によって、化合物を細胞及び/又は組織、例えば内皮細胞/内皮に送達させるためのコーティングを施す方法を理解するだろう。本明細書において使用されるステント、特に薬剤溶出性ステントは、生分解性ステント、つまり本明細書の上記において記載したように.広げられる管においてステントが挿入のしばらく後に分解/溶解されるステントである場合もまたある。
【0106】
本発明の好ましい態様においては医療機器は薬剤、本明細書において提供される化合物つまり式(I)の化合物及び特にレオリギン及び/又はその((ジ)メトキシ)−誘導体の送達に用いられる。この分野において「ドラッグデリバリーシステム」、特に「薬剤溶出性ステント」として用いられる治療用のシステムは、本発明において用いられる化合物と構造的に関係のない、パクリタクセル(Taxol(登録商標))又はシロリムスの薬剤を含む。さらに、これらの薬剤は本式(I)の化合物、及び特に、レオリギン及び/又はその((ジ)メトキシ)−誘導体と比較して完全に異なった方法でそれらの効果を示す。
【0107】
パクリタクセルはチューブリン二量体からの微小管の配向を促進し、そして脱重合を防ぐことによって微小管を安定化させる。この安定性が結果として生命維持に必要な中間期及び細胞の分裂機能に必須の微小管ネットワークの通常の動的な再構成を阻害する:Premarket Approval Applications (PMA) of the FDA; P030025: TAXUS(商標) Express 2(商標) Paclitaxel-Eluting Coronary Stent System (Monorail and Over-the-Wire). Issued March 4, 2004; Part 2 - Summary of Safety and Effectiveness Data. http://www.fda.gov/cdrh/pdf3/P030025.html。CYPHERTmステント(シロリムスが活性薬剤として含まれる)が及ぼす、臨床試験において見られる新生内膜形成へのその影響の機構は確立されていない。シロリムスはサイトカイン及び増殖因子の刺激に反応してT−リンパ球活性及び平滑筋及び内皮細胞の増殖を阻害する。細胞においては、シロリムスはイムノフィリン、FK結合タンパク質−12(FKBP−12)と結合する。シロリムス−FKBP−12複合体はラパマイシンの哺乳類標的(Target of Rapamycin(mTOR))と結合してその活性を阻害し、細胞周期のGIからS期への進行の阻害を誘導する:Premarket Approval Applications (PMA) of the FDA; P020026: Cypher sirolimus-eluting coronary stent on the raptor over-the-wire delivery system or raptorrail rapid exchange deliver. Issued 4/24/03; Part 2 - Summary of Safety and Effectiveness Data. http://www.fda.gov/cdrh/pdf2/P020026.html。
【0108】
本明細書において提供される化合物、例えば式(I)の化合物及び特にレオリギンはまた、特にバイパス手術の術前及び/又は術中に静脈バイパスを洗浄及び/又は保存するための液体中でも使用され得る。そのような液体中での静脈バイパスの洗浄及び/又は保管は、この種のバイパスの前処理が内皮細胞の損傷を予防及び/又は病気に伴う平滑筋細胞の増殖を阻害し、結果として過形成性の疾患/障害、特に内膜過形成、狭窄、再狭窄又は静脈グラフト障害の発生率を低減する場合があるため、特に有用である。
【0109】
従って、式(I)の化合物及び特にレオリギン及び/又はその((ジ)メトキシ)−誘導体を含む静脈バイパスの洗浄及び/又は保存用の溶液が本明細書において提供される。保存液は本明細書において記載された化合物に加えて、さらなる成分、例えば安定化剤、保存剤、緩衝剤、塩(NaClなど)、浸透性活性化合物、タンパク質(アルブミンなど)を含む場合がある。当然のことながら、洗浄及び/又は保存用溶液はただ1つの式(I)の化合物又は任意に、異なる式(I)の化合物、例えばレオリギン及び/又はレオリギンの異なる((ジ)メトキシ)−誘導体を含み得る。洗浄/保存液はこれら異なる化合物を同じモル濃度で、また一方で異なる濃度で含む場合がある。例えば、第一の化合物は第二の化合物と比較して二倍の濃度で存在する場合がある。好ましくは、洗浄/保存液中の化合物のモル濃度は1から500μMの間であり、好ましくは10から200μMの間、好ましくは50μMである。本明細書の上記において記載した溶液中で洗浄又は保存される静脈バイパスの液密性はそれらの試験に適した装置によって試験されることが本明細書において記載された。静脈バイパスの液密試験はこの分野においてよく知られており、当業者はさらにそれら試験を行うための相当する手段及び方法を理解する。
【0110】
また式(I)の化合物は、任意にゲル(例えばプルロニックゲル)を併用して又はゲルなしで、バイパス手術の前、術中及び/又は術後に静脈バイパスの外膜周囲に適用される場合がある。
【0111】
本発明はまた、式(I)の化合物、特にレオリギン及び/又はその((ジ)メトキシ)−誘導体に静脈バイパスを接触させる工程を含む、バイパスを洗浄及び/又は保存する方法に関する。
【0112】
本発明は、以下の制限のない図及び例を参照することによってさら説明される。
【0113】
図1:レオリギンはエーデルワイス(Leontopodium alpinum Cass.)の根の構成成分である。
【0114】
エーデルワイスはもっとも人気にある高山植物の1つであり、消化不良、発熱、及び腹痛の治療の民間療法に使用される。図1Aはエーデルワイス(Leontopodium alpinum Cass.)の花を示す。図1Bレオリギン、IUPAC名:[(2S,3R,4R)−4−(3,4−ジメトキシベンジル)−2−(3,4−ジメトキシフェニル)テトラヒドロフラン−3−イル]メチル(2Z)−2−メチルブタ−2−エノエートの化学構造を示す。レオリギンは、エーデルワイス(Leontopodium alpinum Cass.)の根から単離されたリグナンである。
【0115】
図2:インビトロにおいて、レオリギンはヒト伏在静脈の内膜過形成を阻害する。
【0116】
図2Aは、器官培養においてヒト伏在静脈での内膜過形成の発展が誘導された実験から得られたデータを要約したものである。組織試料をDMSO(溶媒:対照)又は様々な濃度のレオリギンと共に2週間培養した。培養後に組織を固定、脱水し、パラフィンに包埋した。切片を調整した後、試料を染色し(エラスチカ・ワンギーソン染色)、内膜肥厚をImageJソフトウェアを用いて測定した。1つの試料につき約30の測定を行い、1濃度当たり合計で5つの試料(異なる供与体)を解析した。平均値(ピクセル)+/−S.D.を示す。基準となる試料は生の組織を調整した後に直接固定されたもので、器官培養前の血管の状態を示す。**…p<0.01;***…p<0.001。
【0117】
図2Bは、軽度の内膜過形成を発症していた伏在静脈において器官培養によって引き起こされた内膜の肥厚に対するレオリギンの有無の効果の代表例を示す(上段左:基準値;上段右,対照;下段左:レオリギン5μM;下段右:レオリギン,50μM)。矢印の間の領域が内膜の肥厚を示す。
【0118】
図3:レオリギンはSMC増殖を阻害し、G1期における細胞周期停止を誘導し、そして、p27/KIP蓄積を誘導する。
【0119】
細胞レベルでのレオリギンの効果を調べるために、初期の単離されたヒト血管平滑筋細胞(SMC)を、示した濃度のレオリギンと示した時間培養した。図3AはアネキシンV/ヨウ化プロピジウム法及びFACS解析によって決定した細胞の生存率の解析を示す。値は3回行われた実験の平均値を示す。図3BはXTTアッセイによる細胞増殖の解析を示す。値は3回のそれぞれ独立した実験の平均値+/−S.D.を示す。図3Cヒストグラムブロットは対照又はレオリギンで処理したSMCの培養24時間後のDNA含量の解析結果を示す(上段左ヒストグラム−溶媒対照;上段右ヒストグラム−レオリギン)。ウエスタンブロットの結果(下段)は示された濃度で24時間レオリギンと共に培養したSMCのp27/KIPの解析を示す。
【0120】
図4:レオリギンはECに対して毒性を示さず、TNFアルファが介在するVCAMの発現を阻害する。
【0121】
内皮細胞におけるレオリギンの効果を図4に示した。初期ヒト血管内皮細胞(EC)を示した濃度のレオリギンと共に示した時間培養した。図4AはアネキシンV/ヨウ化プロピジウム法及びFACS解析によって決定した細胞生存率の解析結果を示す。値は3回行われた実験の平均値を示す。図4BはXTTアッセイによるEC増殖の解析を示す。値は3回のそれぞれ独立した実験の平均値+/−S.D.を示す。図4CはTNFアルファ誘導性のVCAM−1、ICAM−1、及びE−セレクチン(E−Sel)の表面発現へのレオリギンの効果を示す。データは実験での平均蛍光強度(MFI)を示す。図4Cの右下図は示された濃度のレオリギン存在下におけるECの代謝タンパク質標識解析を示す。タンパク質を調整した後、合計細胞タンパク質をポリアクリルアミドゲルによって分離し、ゲルを乾燥後、X−線フィルムを用いて解析した。
【0122】
図5:レオリギンはインビボにおいて内皮損傷を引き起こすことなく新生内膜の形成を阻害する。
【0123】
インビボにおける静脈バイパス血管の内膜過形成におけるレオリギンの効果を図5に示した。図5Aは対照及びレオリギンで処理し、動物の頸動脈に挿入された、大静脈の内膜肥厚の形態学的解析を示す。移植後の創縫合前に、外膜周囲に100μLの0.9%NaCl(対照)、0.9%NaCl中の100μMレオリギン100μLを加えた。4週間後に血管を除去し、形態学的解析及び免疫組織化学解析を行った。図5B:上段の2つの画像が静脈血管切片のエラスチカ・ワンギーソン染色を示す。白矢印は形態学的に解析した(図5Aを参照)新生内膜肥厚を示す。中段の画像はヘマトキシリン染色との併用による内皮細胞CD31/PECAM−1抗原(茶,黒矢印)の染色を示す。下段の画像はヘマトキシリン染色との併用による細胞周期阻害剤p27/KIP−1(茶)の免疫組織化学的染色を行った切片を示す。略語「Lu」及び「Li」はそれぞれ、「管腔」及び「肝臓」を示す。
【0124】
図6:SMC比較
図6はラリシレシノール及びレオリギンの平滑筋細胞(SMC)増殖を阻害する活性のXTTアッセイによる比較を示す。値は3回のそれぞれ独立した実験の平均値+/−S.D.を示す。
【0125】
図7:SMC比較
図7はレオリギン及び示したその2つの誘導体の平滑筋細胞(SMC)増殖を阻害する活性のXTTアッセイによる比較を示す。値は3回のそれぞれ独立した実験の平均値+/−S.D.を示す。
【0126】
図8:経路
図8はレオリギンの可能な合成経路を示した。
【実施例】
【0127】
以下の例が本発明を説明する。
【0128】
例1:レオリギンは静脈バイパスグラフトの内膜過形成を阻害する。
【0129】
材料と方法
総則
使用したすべての試薬は高純度(purissimum)又は分析用の等級のものであり、特に断りのない限りシグマ−アルドリッチ(シグマ−アルドリッチ、ウィーン、オーストリア)から購入した。水は逆浸透とそれに続く蒸留によって製造した。
【0130】
レオリギンの植物材料、単離、及び精製
L. alpinum Cass.の破砕した根(1907.84g)をジクロロメタン(12.5L DCM、室温、8回)と共に完全に細胞解離させた。証拠標本は薬学/薬理学研究所、レオポルド−フランゼン−インスブルック大学(Institut fur Pharmazie/Pharmakognosie、Leopold-Franzens-Universitat Innsbruck)の植物標本集に保管した。抽出物を蒸発によって乾燥させ、43.0gの粗ジクロロメタン抽出物を得た。得られた粗抽出物のうちの40.0gを100mlのMeOH中に溶解し、MeOH可溶性部分及び非可溶性部分に分離した。溶解性部分をMeOHを移動相としたセファデックス(登録商標)LH20CC(Pharmacia Biotech、スウェーデン)(90x3.5cm)によって分離し、8画分を得た。画分5(15.13g;溶出量320〜410ml)をアセトン量を増加させるPE−アセトン勾配を用いたシリカCC(180g、41x3.5cm)によって再度クロマトグラフィーにかけ、40画分(A−1からA−40)を得た。少量(28.2mg)の画分A−21(PE/アセトン、85:15;441.2mg)をセミ分取HPLC(PhenomenexSynergyMax−RPカラム(10μm、10x250mm);55%アセトニトリル/45%水、定組成;流量:3.50ml/min;25℃)によって分離し、16.0mgの純粋なレオリギン及び14.0mgのその5−メトキシ誘導体を得た。少量(26.5mg)の画分A−22(PE/アセトン、85:15;77.8mg)を分取HPLC(ウォーターズX−TerraPrepMSC18、5μm、7.8x100mmカラム;70%MeOH/30%水、定組成;流量:1.50ml/min;25℃)によって分離し、収量6.3mgのレオリギンの5、5’−ジメトキシ誘導体を得た。
【0131】
レオリギン及びそのメトキシ−誘導体が濃縮された抽出物の調製
異なる抽出調製物中のレオリギン及びそのメトキシ−誘導体の含量を定量するために、複数の抽出過程が用いられた。そのために破砕されたL. alpinum Cass.の根(20.00g)をジクロロメタン(100ml DCM、室温、8回)を用いて完全に細胞解離させた。ろ過後、得られた抽出物を集め、蒸発させることによって乾燥させて半固体のDCM抽出物を得た。その他の抽出物は、溶媒1x200ml及び1x100mlを用いて15分間超音波処理した、又は植物材料を乾燥した後の第二の超音波抽出工程(5.00g;2x15min;2x100ml溶媒)を行った、20.00gの破砕した根から、超音波抽出を用いて調製された。レオリギン含量を内部標準を用いたHPLCによる定量によって決定した。それぞれの抽出物を2回調製し、そして3回ずつ定量した。5−メトキシ−レオリギン含量はレオリギンの検量線を使用して算出した。
【0132】
細胞培養
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を既に記載があるように、コラゲナーゼを使用して臍の緒(インスブルック医科大学の産婦人科部門から提供された)から酵素的な分離によって単離した;Bernhard, FASEB J 17(15), 2302-4 (2003)参照。ヒト臍帯静脈平滑筋細胞(SMC)をChamley-Campbell, Physiol Rev 59(1), 1-61 (1979)に従って、同じ臍の緒から単離した。SMCをMedium231(Cascade Biologics、ペーズリー、英国)中の0.2%のゼラチンで覆われた(Sigma、シュタインハイム、ドイツ)ポリスチレン製培養フラスコ(BectonDickinson、MeylanCedex、フランス)中に慣用の手順に従って加えた。ヒト臍の緒EC及びSMCの単離及び解析はインスブルック医科大学の倫理委員会によって承認されている。
【0133】
細胞死及び細胞内DNA含量の定量
細胞死の検出及び/又は定量には、既に記載のあるとおり、前向き/横向きの光散乱解析、アネキシンV−ヨウ化プロピジウム法及び核DNA含量の染色(細胞周期解析)が用いられた;Bernhard FASEB J 13(14), 1991-2001 (1999)参照。
【0134】
細胞増殖の解析
細胞増殖をXTT細胞増殖アッセイ(Biomol、ハンブルク、ドイツ)により、製造業者による記載に従って測定した。XTTアッセイは代謝活性を有する細胞がテトラゾリウム塩XTTを分解してオレンジ色の化合物のホルマザンを形成する能力に基づいている。形成された色素は水溶性であり、その色素強度を示された波長で分光光度計によって測定することができる。色素の強度は代謝活性を有する細胞の数の割合を示す。XTTアッセイに加えて、全ての増殖に関係した実験はコールターカウンター中の細胞を数えることによっても評価した。
【0135】
ICAM、VCAM、及びE−セレクチンの表面発現解析
表面接着分子発現のFACSを基にした解析をGrabner et al.によるプロトコルに従って行った;Grabner, Cytometry 40(3), 238-44 (2000)参照。使用された抗体は、抗−VCAM−1抗体(クローン1.4C3、Neomarkers)、抗−ICAM−1抗体(クローン28、DAKOCytomation)、及び抗−E−セレクチン抗体(clone16G4;Novocastra)である。
【0136】
ウエスタンブロット法
ウエスタンブロット法は既に記載のあるとおりに行った;Bernhard, Cell Death Differ 8(10), 1014-21 (2001)参照。一次抗体としては抗-p27/KIP-1抗体(クローン57、;BD Transduction Laboratories)を使用した。
【0137】
タンパク質の代謝標識
35S−メチオニン/システインを使用した代謝標識を既に記載のあるとおりに行った(Bernhard (2001), loc. cit.)。
【0138】
ヒト伏在静脈器官培養
器官培養の実験のためにCABGを受けた患者から伏在静脈の残存物(手術の廃棄物)を集めた。伏在静脈を長軸方向に広げ、シリコーンパッチ(内皮が上向きになるようにして)に貼り付けた。組織片を培地(RPMI1640、30%血清、ヘパリン8mU/ml、抗体)と共に2週間、レオリギン存在下又は非存在下で、内膜過形成を誘導するために培養した。詳細はSchachner, Eur J Cardiothorac Surg 32, 906-911 (2007)を参照。レオリギンを2週間にわたって1日おきに培養器官に新たに添加した。5μMレオリギンは完全に内膜過形成を阻害し(p=0.003)、そして50μM濃度では伏在静脈の既に発現していた内膜過形成が改善した(p<0.001)。ヒト伏在静脈の使用はインスブルック医科大学の倫理委員会によって承認されている。
【0139】
マウスモデル−静脈グラフト障害
使用されたマウスモデルにおいては、供与マウスの大静脈が受容マウスの頸動脈に挿入された。移植後の創縫合前に、100μlの0.9%NaCl(対照群)又は0.9%NaCl中の100μMレオリギン(レオリギン群)を受容マウスの静脈グラフトの外膜の周囲に加えた。インターベンションの4週間後にマウスは処分され、挿入された大静脈を解析のために回収した。4週間後には、それぞれの群の7動物中、3匹の対照及び2匹のレオリギンで処理した動物において血栓による血流の阻害が見られ、それらはその後の解析から除かれた。手術的な過程の詳細についてはSchachner, Eur J Cardiothorac Surg 30(3), 451-63 (2006); Schachner, Heart Surg Forum 9(1), E515-E517 (2006)を参照。動物実験はオーストリア科学研究省の動物実験委員会(Commission for Animal Testing Affairs of the Austrian Ministry for Science and Research)によって承認された。
【0140】
IHC及び形態学的解析
器官培養及びマウス実験から得られた組織を4%パラホルムアルデヒド中で固定し、脱水した後、組織をパラフィンに包埋し(インビボ実験からの大静脈は固定の前にマウス肝臓に包埋した)、パラフィン包埋切片を調製した。免疫組織学的解析は製造業者の使用説明書に従って、Accustain Elastica Stain(HT25)kit(シグマ−アルドリッチ、米国)又はEnVision+System-HRP(DAB)(Dako Cytomation、デンマーク)を用いて行った。一次抗体としては抗−p27/KIP−1抗体(クローン57;BD Transduction Laboratories)、及び抗−CD31/PECAM−1抗体(クローンJC70A、Dako Cytomation)を用いた。画像解析は国立衛生研究所(National Institute of Health、米国)のImageJソフトウェアを用いて行った。
【0141】
結果
レオリギン及びそのメトキシ誘導体が濃縮された抽出物の調製
レオリギン並びにその誘導体である5−メトキシ−レオリギン及び5,5’−ジメトキシ−レオリギンを含む根抽出物を本明細書の上記において記載したように(つまり根を室温で細胞解離させ、その後ジクロロメタンを用いて抽出した)調製し、それによって得られた抽出物の収量は、典型的には、1.03から2.26%の範囲であり、及びレオリギン及びメトキシ−レオリギン含量(その混合物として定量した)の最高値は2.14%であった。
【0142】
レオリギン及びその誘導体が濃縮された抽出物を得るために、植物材料を第一の工程においてヘキサン又はヘプタン中で抽出し、その後ジクロロメタン、クロロホルム又は第三ブチルメチルエーテルなどの有機溶媒で抽出した。結果を下記の表に要約した。
【0143】
【表1】

【0144】
「抽出物の収量」という語は使用した基本的な材料当たりの抽出物の重量を表し、一方レオリギン含量はそれぞれの抽出物中におけるレオリギン及びリグナンの重量パーセントを表す。
【0145】
リグナン(及び誘導体)の濃度もまたセファデックスLH20カラムクロマトグラフィー(レオリギン含量の上昇は0.77%から2.21%)の使用によって上昇した。もっとも顕著な上昇(レオリギン含量の上昇は1.36%から9.76%)はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相:石油エーテル−アセトン)によって達成された。
【0146】
レオリギン、つまりエーデルワイスからの化合物はヒト伏在静脈のインビトロモデルにおいて内膜過形成を阻害する可能性がある。
【0147】
上述の通り、エーデルワイス(Leontopodium alpinum Cass.)の根から単離したレオリギン、[(2S,3R,4R)−4−(3,4−ジメトキシベンジル)−2−(3,4−ジメトキシフェニル)テトラヒドロフラン−3−イル]メチル(2Z)−2−メチルブタ−2−エノエート(図1を参照)はリグナン型の植物の二次代謝化合物である。ヒト伏在静脈の内膜過形成を阻害し得る化合物の器官培養を基礎としたスクリーニングにおいて、レオリギンは著明な阻害活性を示した(図2を参照)。2週間の培養期間にわたってレオリギンを器官培養に添加した場合(隔日で新たに添加した)、内膜過形成が用量依存的に阻害された。5μMレオリギンは内膜過形成を完全に阻害し(p=0.003)、50μMでは既に存在していた伏在静脈の内膜過形成が改善さえもされた(p<0.001)(図2を参照)。
【0148】
レオリギンは、分子量の変化及びp27/KIPタンパク質の蓄積に関連したG1期での細胞周期停止を誘導することによりSMC増殖を阻害する。
【0149】
レオリギン介在性の阻害及び伏在静脈の内膜過形成の改善の根底をなす機序を明らかにするために、内膜肥厚及び内膜過形成(SMC増殖、及び移動)における中心的な細胞型である、単離された初期ヒト血管平滑筋細胞におけるレオリギンの効果を解析した。我々の解析は、レオリギンが48時間後のSMCにおける細胞死(アポトーシス及びネクローシス)においてのごく僅かな増加のみを引き起こすことをはっきりと示した(図3、上段、左側)。より遅い時点での解析も48時間後での結果と一致した(データは示さない)。一方、XTT増殖アッセイによる細胞数の解析(図3、上段、右側)はケイシー(Casy)を使用した細胞数の計測(データは示さない)と同様に、レオリギンの効果的なSMC増殖阻害効果を明らかにした。核DNA含量測定の結果から(図3、下2段、左側)、レオリギンが細胞周期のG1期において細胞の大量の蓄積を引き起こすことが明らかになった。数多くの細胞周期調節因子がG1期停止を引き起こす場合があることが周知であるため、G1期停止と関連した細胞周期調節因子の変化を調べるためにウエスタンブロット法を基礎とした解析を行った。図3の下段右図において、ウエスタンブロット法の結果はレオリギンがp27/KIPタンパク質の発現における変化、つまり27kDの1つのシグナルから、58kDの強いシグナルと24、27(もとのシグナル)及び85kD(85kDは肉眼で確認することが難しく、図では示されていない)の3つの弱いシグナルへの完全な変化を誘導することを示している。p27/KIPの蓄積がサイクリンD1/E−cdk2複合体と結合し、それによってサイクリンD1/E−cdk2複合体を不活化することでG1期停止を仲介することが知られている。観察された分子量の変化はp27/KIPのこの複合体への結合又はp27/KIP分子のオリゴマー形成を示していると考えられる。
【0150】
レオリギンはECに毒性を有さず、TNFアルファが介在するVCAM−1の発現を阻害する。
【0151】
血管の修復と治療、抗血栓、及びグラフトのアテローム性動脈硬化に関連した細胞(マクロファージ)の制御並びに血液と血管の間における化合物(コレステロール)の交換において血管内皮の強度が中心的な役割を果たすため、血管内皮に対するレオリギンの効果をもまた解析した。レオリギンはECの増殖を阻害するが、レオリギンのECに対する毒性の又は細胞死を誘導する効果は観察されなかった(図4左列を参照)。より遅い時点での解析も48時間後の結果と一致した(データは示さない)。興味深いことに、レオリギンはTNFアルファが介在するVCAM−1の表面発現を阻害した(上段右列)。この観察結果を説明する、レオリギンによる内皮の翻訳機構の阻害のような基本的な現象を除くために、代謝タンパク質標識実験を行い(図4、下段右列)、その他の接着分子におけるレオリギンの効果を解析した(図4、右側中央の2図)。これらのデータはレオリギンがタンパク質合成を阻害せず、タンパク質の細胞表面への移動を基本的には干渉せず、しかしEC表面で誘導されたVCAM−1発現を特異的に阻害することを示した。
【0152】
レオリギンは内皮損傷を引き起こすことなくインビボでの新生内膜形成を阻害する。
【0153】
レオリギンのインビボでの適応性を試験するために、静脈グラフト障害のマウスモデルにおけるレオリギンの効果を解析した(方法部分を参照)。ヒト伏在静脈バイパス血管と同様に、移植片は数週間以内に重篤な内膜過形成を発展した。移植後、傷の外科的縫合の前にレオリギンを外膜周囲のリザーバー(0.9%NaCl中の100μMレオリギンを100μl)として直接添加した。移植4週間後にマウスを処理し、その後の解析のために静脈血管を除去した。血栓を生じた静脈はその後の解析から除外し(方法部分を参照)、残りの試料を免疫組織化学的な手法によって解析した。図5(左側)は対照(0.9%NaCl)と比較したレオリギン処理を示し、インビボにおける内膜過形成が阻害される可能性を示した。レオリギンで処理したマウスの静脈グラフトにおいては有効な新生内膜肥厚の減少が示された(上段中央及び上段右の画像)。切片をCD31(内皮マーカー)で染色することにより、レオリギン処理及び対照の血管の内皮膜が無傷であることを明らかにした。最後に切片のp27/KIP染色によって、レオリギンで処理したグラフトにおける数多くの細胞/核がレオリギン添加4週間後においてもp27/KIP陽性に染色されることが明らかとなり、このことはレオリギンの薬剤効果が長期間にわたることを示している。
【0154】
インビボの実験においては本明細書上記において記載したレオリギンを手術過程の後に直接添加した。その後マウスを4週間維持し、その後の試料のみを解析した。レオリギン群では数多くのSMCがp27/KIP陽性に染色されたことから、レオリギンによるSMC増殖阻害を介した機構が分化を誘導していると考えられる。レオリギンを実験に開始時に一度のみ添加した培養細胞及びインビボ実験に対し、レオリギンはインビトロの器官培養実験(レオリギンを一日おきに添加した)において5μM濃度でも著明な内膜過形成の阻害を示した。これらのデータはレオリギンを一定に添加することにより結果が改善される場合があるが、有益な治療効果は1回のレオリギンの添加のみでも達成することができ、インビボでの結果は添加4週間後でも検出可能であることを示唆した。既に存在している内膜過形成を有する伏在静脈のCABGへの使用に関して、レオリギンを単にグラフトに再移植の前に添加することによってレオリギンが開存率を上昇させることに貢献できると考えられる。加えて、用量及び期間を変化させることによる内膜過形成の阻害又は改善への可能性の差異が、例えば血管壁における組織リモデリングの適応の減少の結果として生じる場合があるグラフト動脈瘤などの合併症の低減に貢献できると考えられる。
【0155】
静脈グラフト障害におけるインビボマウスモデルを用いた上記で提供された評価は、より大規模な動物/動物モデルにおいてもまた遂行することができる。通称レオリギンとして知られる特定の化合物の効果を評価するためのブタ動物モデル(つまりランドシュバイン(Landschwein))を使用したプロトコルの具体例(実験の設定及びデータの評価)が本明細書の下記において示される。
【0156】
実験設定
100μM濃度のレオリギンを用いる。動物を2つの処理群(対照、レオリギン処理)に振り分ける。さらに動物を採取時点4週間後及び12週間後それぞれに振り分ける。治療計画を下の表において説明する。
【0157】
【表2】

【0158】
麻酔及び手術手順−ランドシュバイン(ブタの種)における頸動脈グラフトとしての伏在静脈
輸送及び麻酔合併症の予防のため、動物に麻酔の1時間前に簡易ベッドにおいて4mg/kgアザペロン及び0.1mg/kgアトロピンの筋内注入を行う。寝ている動物を手術するためにワラを有した輸送ボックスに輸送する。動物には耳静脈を通じて2〜3mg/kgプロポフォール及び15mgピリトラミドの注入を行い、その後30%Oで挿管及び換気を行う。動物を前筋弛緩させるために8mgパンクロニウム及び0.2mg/kg/hパンクロニウムを繰り返して注入する。麻酔を維持するために、動物に8〜12mg/kg/hプロポフォール及び15mgピリトラミドの持続的な注入を行う。動物における痛みを予防するために、用量を増加する場合もある。麻酔準備期間中、動物には上記の持続的な注入に加えて6ml/kg/hの乳酸リンゲルを投与する。
【0159】
手術手順:頸動脈−グラフト
麻酔の開始後、上記プロトコルに従って、動物を仰臥位に維持し、毛を刈り、消毒のためにオクチンセプト(Octinsept)を用いて洗浄し、その後無菌シーツで覆う。
【0160】
伏在静脈の調製のために、動物の後肢を約10cmの縦切開する。静脈を確保した後、静脈を周囲の組織から病巣に直接触れない手技(no touch technique)によって摘出する。両腕を固定し、切開する。上記技術による静脈調製の後、静脈を取り出し、末端部を通じて管を挿入する。耐圧を試験し、直径を適切な大きさに血管を拡張するために、静脈を80〜100mmHgの圧力でフラッシングすることで拡張する。対照となる動物の伏在静脈のフラッシング及び拡張は1‰DMSOを含む0.9%NaCl溶液を用いて行い、治療群においては1‰DMSOを含む0.9%NaCl溶液中の100μMレオリギン(またはその誘導体)溶液(レオリギン/誘導体を最初にDMSO(100mM溶液)に溶解し、その後0.9%NaCl溶液中で1:1000に希釈した)を用いる。拡張後、静脈を30分から1時間、室温で上記溶液中でインキュベートする。後肢の創縫合を行った後、頸部の調整と共に外科的手術を開始する。まず胸鎖乳突筋の右内頸静脈を切開する。鈍的な調整及び広頸筋を切開した後に頸動脈三角を確認する。内頸静脈及び迷走神経保護下で、総頸動脈を調製し、3cmセグメントを単離する。その後100単位のヘパリン/kgを静脈内に注入する。セグメントの隣接部分及び末端部に血管クランプを設置した後に、総頸動脈を切開し、切除縁を45°の角度に整える。調整され単離された大伏在静脈の一部を相当する長さに短くし、両側を端々吻合する。7/0プロレンを用いた連続吻合によって吻合する。血管のレオリギン(又は誘導体)への暴露時間を増加させるために、吸収性のhaemostypticum(Dabostemp clothes)を1‰DMSO含む0.9%NaCl溶液(対照)又は1‰DMSOを含む0.9%NaCl溶液中の100μMレオリギン(又は誘導体)(治療群)に浸漬し、挿入した静脈の周囲にからませる。傷を層縫合し、皮膚を縫合する。
【0161】
動物の数を少なくするため、上記プロトコルに従って同じ手順を左側においても繰り返す。手術後、動物を種に適した方法によって動物飼育施設に輸送し、そして7日間ジピドロール(Dipidolor)及びノバルジン(Novalgin)を用いた疼痛治療を受けさせる。
【0162】
採取−手術
手術後4及び12週間で試料を採取する。麻酔及び輸送、洗浄及び無菌シーツを使用した覆いは上記に記載した通りに行う。最初に右側の手術痕を確認し、手術部位を再び開く。植え込まれた静脈血管を調整した後、血管クランプを隣接した部分及び末端部に置き、その静脈を除去する。左側についても同じ手順を行う。動物にドルミカム及びフェンタネストをボーラス投与し、その後20mValKClを注入して安楽死させる。
【0163】
解析
採取した静脈グラフトについて以下の解析を行う。
【0164】
組織学的解析:ワンギーソン、オイルレッド、HE−染色;免疫組織化学的解析:s−アクチン、p27、p21、CD31、ICAM−1、VCAM−1、CD3、CD4、CD8、CD56、など。解析はImageJソフトウェアを用いて行う。評価及びデータ解析は盲検化された研究者によって行われるだろう;Reisinger (2009) Cardiovasc Res. 82;542-549、及びMessner (2009), Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.を参照。
【0165】
内皮表面及び血管構成要素の電子顕微鏡(SEM/TEM)を用いた解析;Messner (2009), Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.、及びBernhard(2003), FASEB J.17:2302-2304を参照。
【0166】
グラフトの収縮性及び機能性の臓器槽(organ bath)中での解析;Hammerer-Lercher A, Clin Sci (Lond). 2006;111:225-231を参照。試料の採取に先だって、グラフトの内膜肥厚をソノグラフを用いて解析する;Knoflach (2003) Circulation.;108:1064-1069、及びKnoflach (2009) Stroke;40:1063-1069を参照。
【0167】
試験化合物(つまりレオリギン)の検出のための血液及び血清の回収。
【0168】
上記の解析に基づき、以下の指標/効果はそれぞれ互いに独立してレオリギン(又は誘導体)による治療成功を定義する:1)対照と比較して治療群において内膜肥厚及び/又は内膜を介した肥厚がより低い、2)対照と比較して治療群において内膜における平滑筋細胞がより少ない、3)対照と比較して治療群においてp27及び/又はp21陽性細胞がより多く存在する、4)対照と比較して治療群において新生内膜の形成の度合いがより少ない、5)対照と比較して治療群において組織リモデリング過程の存在が減少した、6)対照と比較して治療群において血管壁における炎症性の細胞の数がより少ない、7)無傷の内皮、8)血管の収縮性の生理学的度合い、9)内皮表面に発現する接着分子の度合いが低いこと、10)グラフトの開存及び血栓形成の兆候がないこと、10)対照と比較して治療群においてグラフトの弾性が維持されていること、及び、11)対照と比較して治療群においてグラフトの収縮性が維持されていること。
【0169】
例2:レオリギンはラリシレシノールよりもSMC(平滑筋細胞増殖)の強力な阻害剤である。
【0170】
図6は72時間後のXTTアッセイによるラリシレシノール及びレオリギンの平滑筋細胞(SMC)増殖阻害活性の比較を示す。値は3回の独立した実験の平均値+/−S.D.を示す。得られたレオリギン(54.5μM;CI95:49.4−59.4μM)のIC50値はラリシレシノール(IC50>100μM)よりも効果が高いことを示した。
【0171】
方法図6
細胞増殖の解析
上記で記載された(例1)ように、細胞増殖をXTT細胞増殖アッセイ(Biomol、ハンブルグ、ドイツ)を用い、製造業者による記載に従って測定した。XTTアッセイはテトラゾリウム塩XTTをオレンジ色の化合物のホルマザンに分解する、細胞の代謝活性能に基づいている。形成される色素は水溶性で、色素強度を分光光度計を用いて指定された波長で測定することができる。色素の強度は代謝活性を有する細胞の割合を示す。
【0172】
ステントの植え込みにおけるラリシレシノールの使用もまたDE 10 2004 046 244において示されている。
【0173】
例3:レオリギン及びそのメトキシ−誘導体はSMC増殖を阻害する。
【0174】
図7は72時間後のXTTアッセイによるレオリギン及びその天然の誘導体の平滑筋細胞(SMC)増殖阻害活性の比較を示す。値は3回の独立した実験の平均値+/−S.D.を示す。得られたレオリギン(54.5μM;CI95:49.4−59.4μM)のIC50値は、レオリギンの効果が5’−メトキシレオリギン(45.9μM;CI95:37.3−53.9μM)又は5,5−ジメトキシレオリギン(IC5048.6μM;CI95:39.9−56.6μM)との間に有意な差がないことを示した。
【0175】
方法−図7
細胞増殖の解析
上記に記載されたように(例1)、細胞増殖をXTT細胞増殖アッセイ(Biomol、ハンブルグ、ドイツ)を用い、製造業者によって記載された方法に従って測定した。XTTアッセイはテトラゾリウム塩XTTをオレンジ色の化合物のホルマザンに分解する、細胞の代謝活性能に基づいている。形成される色素は水溶性で、色素強度を分光光度計を用いて指定された波長で測定することができる。色素の強度は代謝活性を有する細胞の割合を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中
、R及びRは、互いに独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、又はアルコキシから選択され;及び
、R及びRは、互いに独立して、H、OH、ハロゲン、アルキル、又はアルコキシから選択され;
は、−OR、−N(R8’)R、−SR、−C(O)R、−OC(O)R、−C(O)OR、−N(R9’)C(O)R、−C(O)N(R9’)R又は−S(O)Rから選択され;R及びRはアルキル又はアルケニルから互いに独立して選択され、R8’及びR9’はH、アルキル又はアルケニルから互いに独立して選択され;Rに含まれるいずれのアルキル基又はアルケニル基は、非置換であるか、又はOH、ハロゲン又はアルコキシから選択される、1つ以上の置換基によって置換されていてもよく;
Xは、O、S、C(R10)R10及びNR10から選択され(ここで、R10は、それぞれに対して独立してH、アルキル又はアルケニルである);及び
X基を含む環状構造中の破線はそれぞれの結合が一重又は二重結合であってもよいことを示す]
の化合物、又は、その薬剤的に許容できる塩又は溶媒和化合物、を含む医薬組成物。
【請求項2】
式(I)の化合物が式(Ia):
【化2】

[式中、RないしR及びXは請求項1と同様に定義される]
において示される立体化学を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
が−OC(O)R又は−C(O)ORである、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
、R及びRの少なくとも1つ、及び、R、R及びRの少なくとも1つがアルコキシ基である、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
、R及びRの少なくとも2つ、及び、R、R及びRの少なくとも2つがアルコキシ基である、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
式(I)の化合物が下記の構造を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【化3】

【請求項7】
からRの5つ又は6つ全部がアルコキシであり、RからRの残りの基が該当する場合には水素である、請求項1〜3のいずれかにおいて定義された式(I)又は(Ia)の化合物。
【請求項8】
過形成性の疾患/障害の治療、予防又は改善のために用いられる、請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項において定義された化合物を、過形成性の疾患/障害の治療、予防又は改善などを必要とする対象に投与することを含む、過形成性の疾患/障害の治療、予防又は改善方法。
【請求項10】
前記過形成性の疾患/障害が過形成である、請求項8に記載の化合物又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記過形成が内膜過形成である、請求項10に記載の化合物又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記内膜過形成が狭窄又は再狭窄である、請求項11に記載の化合物又は請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記内膜過形成がアテローム性動脈硬化である、請求項11または12に記載の化合物又は請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記過形成性の疾患が増殖性又は腫瘍性の疾患である、請求項8に記載の化合物又は請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記増殖性疾患が良性増殖性疾患である、請求項14に記載の化合物又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記良性増殖性疾患が良性の増殖性乳房疾患である、請求項15に記載の化合物又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記良性増殖性疾患が癌性病変である、請求項14に記載の化合物又は請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記癌性病変が白血病、骨髄性腫瘍、B細胞リンパ腫、前立腺癌、乳癌、大腸癌、肺癌及び皮膚癌から成る群より選択される、請求項17に記載の化合物又は請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物がキク科ウスユキソウ(Leontopodium)属に属する植物から得られる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物に含まれる化合物、請求項7、8及び10〜18のいずれか1項に記載の化合物、又は請求項9〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
キク科ウスユキソウ(Leontopodium)属に属する植物から得られた根抽出物を含む医薬組成物。
【請求項21】
請求項1〜7のいずれかにおいて定義された式(I)及び/又は(Ia)の化合物が高度に濃縮された、キク科ウスユキソウ(Leontopodium)属に属する植物から得られた抽出物を含む医薬組成物。
【請求項22】
請求項8〜18のいずれかにおいて定義された過形成性障害の治療、予防又は改善に用いられる、請求項20または21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記植物がエーデルワイス(Leontopodium alpinum Cass)である、請求項19に記載の化合物、請求項19に記載の方法、又は請求項20〜22のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記化合物が非経口経路、経口経路、静脈経路、皮下経路、鼻腔内経路又は経皮経路のいずれか1つによって投与される、請求項7、8、10〜19及び23のいずれか1項に記載の化合物、請求項9〜19及び23のいずれか1項に記載の方法、又は請求項20〜23のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記対象がヒトである、請求項9〜19、23及び24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1〜8及び10〜24のいずれか1項において定義される化合物を含む、含有する、又は請求項1〜8及び10〜24のいずれか1項において定義される化合物と接触している医療機器。
【請求項27】
前記医療機器がドラッグデリバリーシステムである、請求項26に記載の医療機器。
【請求項28】
前記ドラッグデリバリーシステムがポリマーを主材料とするドラッグデリバリーシステム又はポリマーをコーティングしたドラッグデリバリーシステムである、請求項27に記載の医療機器。
【請求項29】
前記医療機器がステントである、請求項26〜28のいずれか1項に記載の医療機器。
【請求項30】
過形成性の疾患/障害の治療、予防又は改善に用いられる医薬組成物の調製のための、請求項1〜8及び10〜24のいずれか1項において定義される化合物の使用。
【請求項31】
請求項1〜8及び10〜24のいずれか1項において定義される化合物を含む静脈バイパスのための保存液。
【請求項32】
静脈バイパスを請求項1〜8及び10〜24のいずれか1項において定義される化合物と接触させる工程を含む、静脈バイパスの保存方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−530486(P2011−530486A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517957(P2011−517957)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059256
【国際公開番号】WO2010/007169
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508373992)
【Fターム(参考)】