説明

過熱蒸気発生装置

【課題】極めて高いエネルギー効率で過熱蒸気を発生することができる過熱蒸気発生装置を提供する。
【解決手段】過熱蒸気の原料を導入する導入口1と過熱蒸気を排出する排出口2を備えた筒状容器3と、上記筒状容器3の外周に巻回された誘導加熱コイル4と、上記筒状容器3内に収容されて上記誘導加熱コイル4への通電による電磁誘導により発熱する発熱体5と、過熱蒸気の原料を予熱して上記導入口1に供給する予熱管6とを備え、上記予熱管6は、上記誘導加熱コイル4の外側に巻回されて上記誘導加熱コイル4への通電による電磁誘導により発熱して内部を流通する過熱蒸気の原料を予熱するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々な技術分野で利用することのできる過熱蒸気発生装置に関し、幅広い温度域、例えば、120℃〜700℃の過熱蒸気を発生させることができ、炊く,煮る,茹でる,蒸す,焼く,燻培,焙煎,乾燥,殺菌,除菌,溶解,溶融,溶着,洗浄,温風,熱風,加湿,空調などのあらゆる熱加工機器や装置に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱を利用した過熱蒸気発生装置としては、各種のものが提案されているが、誘導加熱槽に導入する原料水を予熱するものとして、下記の特許文献1のものが開示されている。この特許文献1の過熱蒸気発生装置は、内部の下端側を滞水ゾーンとする導電性の筒体の外周囲に誘導コイルが巻回され、上記誘導コイルは金属管製であって、上記滞水ゾーンに水を供給する給水部からの水が、この誘導コイルの中空内部を経由しこの誘導コイルを冷却することによって予熱された状態で上記滞水ゾーンに供給されるようにしたものである。
【特許文献1】特開2003−297537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の過熱蒸気発生装置では、単に誘導コイルを冷却することによって得られた熱で原料水を予熱するに過ぎないため、予熱効率がそれほど高くなく、予熱によって温水が得られる程度である。その結果、予熱によって得られた温水から誘導加熱で一気に過熱水蒸気を得るまで加熱せねばならず、誘導加熱には大きな電力を要し、エネルギー効率はそれほど高くない。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、極めて高いエネルギー効率で過熱蒸気を発生することができる過熱蒸気発生装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の過熱蒸気発生装置は、過熱蒸気の原料を導入する導入口と過熱蒸気を排出する排出口を備えた筒状容器と、上記筒状容器の外周に巻回された誘導加熱コイルと、上記筒状容器内に収容されて上記誘導加熱コイルへの通電による電磁誘導により発熱する発熱体と、過熱蒸気の原料を予熱して上記導入口に供給する予熱管とを備え、上記予熱管は、上記誘導加熱コイルの外側に巻回されて上記誘導加熱コイルへの通電による電磁誘導により発熱して内部を流通する過熱蒸気の原料を予熱するように構成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
過熱蒸気の原料を予熱して導入口に供給する予熱管は、上記誘導加熱コイルの外側に巻回されて上記誘導加熱コイルへの通電による電磁誘導により発熱して内部を流通する過熱蒸気の原料を予熱するようになっている。このように、誘導加熱コイルへの通電による電磁誘導による予熱管の発熱で過熱蒸気の原料を予熱することから、従来に比べて極めて高い熱効率で予熱することができる。また、誘導加熱コイルによって生じるコイル内側の磁界で発熱体を加熱するとともに、従来加熱には利用されることのなかったコイル外側に生じる磁界で予熱管を予熱することから、極めて高いエネルギー効率で過熱蒸気を発生させることができる。また、コイル外側の周囲部分に導電性の予熱管が存在することにより、シールド効果を発揮して誘導加熱コイルのノイズが周囲に与える影響が小さくなり、磁場が外に逃げずにエネルギーロスが極めて少なくなる。
【0007】
本発明において、上記発熱体は、誘導加熱コイルの中心部を貫くように非発熱領域が設けられている場合には、コイル内側においてコイルとの距離が遠くて誘導電流による発熱効率が比較的低いコイルの中心部に非発熱領域を設けることにより、上記非発熱領域を流路等に利用でき、スペースの有効活用が図れる。また、誘導加熱コイルの中心部を貫くように非発熱領域が設けられているため、発熱領域の熱容量がそれだけ小さくなるとともに、上記非発熱領域を取り囲む環状の発熱領域に磁束が集中することから、昇温速度が速くなる。
【0008】
本発明において、上記予熱管と誘導加熱コイルとの距離が、誘導加熱コイルの半径よりも小さく設定されている場合には、予熱管における熱効率がより良好に確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0010】
図1および図2は、本発明の一実施形態の過熱蒸気発生装置を示す。
【0011】
この過熱蒸気発生装置は、過熱蒸気の原料を導入する導入口1と過熱蒸気を排出する排出口2を備えた筒状容器3と、上記筒状容器3の外周に巻回された誘導加熱コイル4と、上記筒状容器3内に収容されて上記誘導加熱コイル4への通電による電磁誘導により発熱する発熱体5と、過熱蒸気の原料を予熱して上記導入口1に供給する予熱管6とを備えている。
【0012】
上記筒状容器3は、有底筒状に形成され、上部開口が蓋部材11で閉塞されている。上記蓋部材11には、導入口1を形成する原料導入管12が接続されるとともに、排出口2を形成する排出管13が接続されている。上記原料導入管12は、蓋部材11を貫通し、その先端開口14は筒状容器3の底部よりも少し上側まで延びている。
【0013】
上記発熱体5は、この例では電磁誘導で加熱される材質からなる多孔質体から形成されている。また、上記発熱体5は、中央に上記原料導入管12が挿通される挿通穴15が形成された筒状を呈している。さらに、上記発熱体5の挿通穴15よりも外側の部分には、挿通穴15に沿うように図において上下に延びる複数の流通路16が形成されている。
【0014】
上記筒状容器3には、その底部に、筒状のスペーサ17が収容され、上記スペーサ17の上に複数の発熱体5が積み重なるように収容されている。上記スペーサ17は多孔質体から構成されるとともに、中央の貫通部18が原料導入管12の内部通路と連通しており、原料導入管12から導入された原料を多孔を通して発熱体5に供給するようになっている。
【0015】
発熱体5に供給された原料は、誘導加熱された発熱体5の熱によって加熱され、過熱蒸気となる。このとき、急激な圧力上昇があるが、発生した過熱蒸気が流通路16を通過することにより緩和されるようになっている。また、上記筒状容器3内の発熱体5よりも排出口2側の領域には、発熱体5で原料が加熱されて発生した過熱蒸気の圧力を緩和するバッファ空間19が設けられて、バッファ空間19を介して排出口2から排出されるようになっている。
【0016】
上記予熱管6は、上記誘導加熱コイル4の外側に巻回されて上記誘導加熱コイル4への通電による電磁誘導により発熱して内部を流通する過熱蒸気の原料を予熱するように構成されている。すなわち、上記予熱管6は金属等の磁性体から形成され、原料供給部20から供給された原料が予熱管6を通過する間に加熱されるようになっている。そして予熱された原料が導入口1に供給されるよう、予熱管6の排出部21が導入管12に接続されている。
【0017】
一方、上記発熱体5は、上述したように、中央部に挿通穴15が形成され、この挿通穴15が、誘導加熱コイル4の中心部を貫くように形成された非発熱領域Cとして機能する。そして、上記予熱管6と誘導加熱コイル4との距離Sは、上記発熱体5の環状を呈する発熱領域Hの仮想中心円Oと誘導加熱コイルとの距離Tと略等しくなるよう設定されている。
【0018】
以上のように、過熱蒸気の原料を予熱して導入口1に供給する予熱管6は、上記誘導加熱コイル4の外側に巻回されて上記誘導加熱コイル4への通電による電磁誘導により発熱して内部を流通する過熱蒸気の原料を予熱するようになっている。このように、誘導加熱コイル4への通電による電磁誘導による予熱管6の発熱で過熱蒸気の原料を予熱することから、従来に比べて極めて高い熱効率で予熱することができる。また、誘導加熱コイル4によって生じるコイル内側の磁界で発熱体5を加熱するとともに、従来加熱には利用されることのなかったコイル外側に生じる磁界で予熱管6を予熱することから、極めて高いエネルギー効率で過熱蒸気を発生させることができる。また、コイル外側の周囲部分に導電性の予熱管6が存在することにより、シールド効果を発揮して誘導加熱コイル4のノイズが周囲に与える影響が小さくなり、磁場が外に逃げずにエネルギーロスが極めて少なくなる。
【0019】
また、上記発熱体5は、誘導加熱コイル4の中心部を貫くように非発熱領域Cが設けられているため、コイル内側においてコイルとの距離が遠くて誘導電流による発熱効率が比較的低いコイルの中心部に非発熱領域Cを設けることにより、上記非発熱領域Cを流路等に利用でき、スペースの有効活用が図れる。また、誘導加熱コイル4の中心部を貫くように非発熱領域Cが設けられているため、発熱領域の熱容量がそれだけ小さくなるとともに、上記非発熱領域Cを取り囲む環状の発熱領域に磁束が集中することから、昇温速度が速くなる。
【0020】
また、上記予熱管6と誘導加熱コイル4との距離Sは、誘導加熱コイルの半径よりも小さく設定するのが好ましい。また、上記予熱管6と誘導加熱コイル4との距離Sは、上記発熱体5の環状を呈する発熱領域Hの仮想中心円Oと誘導加熱コイル4との距離Tよりも小さく設定するのが好ましい。このようにすることにより、予熱管6における熱効率がより良好に確保される。
【0021】
図3は、本発明の第2実施形態の過熱蒸気発生装置を示す。
【0022】
この例では、誘導加熱コイル4aが管体であり、誘導加熱コイル4aの一端側に原料を導入し、誘導加熱コイル4aの他端側が予熱管6の原料供給部20に接続されている。これにより、誘導加熱コイル4aに原料を供給してコイルを冷却する際に原料を予熱し、誘導加熱コイル4a内で予熱された原料をさらに予熱管6に導入するようになっている。それ以外は、上記第1実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。この実施形態でも上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0023】
上記各実施形態では、原料の導入口1と排出口2の双方を筒状容器3の一端側に形成した例を示したが、これに限定するものではなく、原料の導入口1を一端側に設け、他端側に排出口2を設けるようにしてもよい。
【0024】
また、上記過熱蒸気発生装置において使用する原料として代表的には水をあげることができるが、これに限定するものではなく、各種の原料を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態の過熱蒸気発生装置を示す縦断面図である。
【図2】上記過熱蒸気発生装置の横断面図である。
【図3】第2実施形態の過熱蒸気発生装置を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1:導入口
2:排出口
3:筒状容器
4:誘導加熱コイル
4a:誘導加熱コイル
5:発熱体
6:予熱管
11:蓋部材
12:原料導入管
13:排出管
14:先端開口
15:挿通穴
16:流通路
17:スペーサ
18:貫通部
19:バッファ空間
20:原料供給部
21:排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱蒸気の原料を導入する導入口と過熱蒸気を排出する排出口を備えた筒状容器と、上記筒状容器の外周に巻回された誘導加熱コイルと、上記筒状容器内に収容されて上記誘導加熱コイルへの通電による電磁誘導により発熱する発熱体と、過熱蒸気の原料を予熱して上記導入口に供給する予熱管とを備え、
上記予熱管は、上記誘導加熱コイルの外側に巻回されて上記誘導加熱コイルへの通電による電磁誘導により発熱して内部を流通する過熱蒸気の原料を予熱するように構成されていることを特徴とする過熱蒸気発生装置。
【請求項2】
上記発熱体は、誘導加熱コイルの中心部を貫くように非発熱領域が設けられている請求項1記載の過熱蒸気発生装置。
【請求項3】
上記予熱管と誘導加熱コイルとの距離が、誘導加熱コイルの半径よりも小さく設定されている請求項2記載の過熱蒸気発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−174768(P2009−174768A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13220(P2008−13220)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(302067903)株式会社パイコーポレーション (11)
【Fターム(参考)】