説明

過給機付き内燃機関搭載車両

【課題】部品点数の削減を図ると共に、エンジンの外側回りのスペースを有効利用して、エンジンの車幅方向寸法を小さくした過給機付き内燃機関搭載車両を提供する。
【解決手段】過給機120は、クランクケース31から後方に延出するクランク軸30の後端に固定されて、吸気ポート60が配置されたシリンダヘッド33の一側面側に配置される。また、該過給機120に空気を供給するエアクリーナ22は、過給機120の上方、且つエンジンEの後方に位置して、過給機120の上流側に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機付き内燃機関搭載車両に関し、特に、過給機をクランク軸に固定すると共にエンジンの後方に配置して、エンジンの後方スペースを有効利用した過給機付き内燃機関搭載車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの吸気ポートに接続される吸気管に、加圧された空気を供給する過給機をエンジン補機として備える過給機付き内燃機関が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の過給機付き内燃機関は、過給機を吸気マニホールドの下方に配置すると共に、過給機の駆動軸とクランク軸とをベルトで連結して、該ベルトを介してクランク軸の動力を過給機に伝達している。
【特許文献1】特許第2958718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に記載の過給機付き内燃機関は、過給機をエンジン側方の吸気マニホールド下方に配置することによって、過給機と吸気ポートとを連結する吸気通路を短くして過給の立上り応答性の改善が図られている。しかし、ベルトを介してクランク軸の動力を過給機の駆動軸に伝達するようにしているので、ベルト等の他の駆動機構を必要とする。
【0004】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数の削減を図ると共に、小型化を図った過給機付き内燃機関搭載車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、エンジンのシリンダヘッドの一側面側に設けられて、混合ガスが供給される吸気ポートと、エンジンのクランクケース内に回転可能に支持されるクランク軸と、エンジンに供給する空気を加圧して吸気ポートに供給する過給機と、を備える過給機付き内燃機関搭載車両であって、クランク軸は、前記一側面と略直交する方向にクランクケースから延出され、過給機は、吸気ポートが配置された前記一側面側に配置されてクランクケースから延出するクランク軸に固定されることを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成に加えて、車両は、鞍乗型車両であって、クランク軸は、鞍乗型車両の前後方向に延出することを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1または2の構成に加えて、吸気ポートは、シリンダヘッドの後面に開口する開口部を備え、過給機の上方、且つエンジンの後方に位置し、過給機の上流側に配設されて外部から取り入れた空気を過給機に供給するエアクリーナを更に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、過給機は、吸気ポートが配置されたエンジンの一側面側に配置されて、該一側面と略直交する方向にクランクケースから延出するクランク軸に固定されているので、ベルトなどの伝達部品が不要となり、部品点数を削減して、エンジンの小型化が可能となる。
【0009】
請求項2の発明によれば、鞍乗型車両に搭載されたエンジンのクランク軸が、鞍乗型車両の前後方向に延出して配置されているので、エンジンの車幅方向寸法を狭めることができ、これによってエンジンを小型化することができる。
【0010】
請求項3の発明によれば、吸気ポートはシリンダヘッドの後面に開口部を備え、過給機の上流側に配設されたエアクリーナが、過給機の上方、且つエンジンの後方に配置されているので、エンジン後方のスペースを有効に利用することができ、エンジンの小型化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る過給機付き内燃機関搭載車両の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態に係る水冷式のエンジンEが搭載された鞍乗型車両1の車体カバー等を外した状態の側面図を図1に、同平面図を図2に示す。なお、本実施形態においては、車両の前進方向を向いた状態を基準にして前後左右を決めることとする。
【0012】
図1及び図2に示すように、本実施形態の鞍乗型車両1は、不整地走行用の4輪車で、不整地用の低圧のバルーンタイヤが装着される左右一対の前輪FW及び左右一対の後輪RWが、車体フレーム2の前後に懸架される。
【0013】
車体フレーム2は、複数種の鋼材を結合して構成され、エンジンE及び変速機Tをクランクケース31内に一体に構成したパワーユニットPが搭載されるセンタフレーム部3、センタフレーム部3の前部に連接され前輪FWを懸架するフロントフレーム部4、センタフレーム部3の後部に連接されてシート7を支持するシートレール6を有するリヤフレーム部5からなる。
【0014】
センタフレーム部3は、左右一対のアッパパイプ3aが前後を下方へ屈曲されて略3辺をなし、他の略1辺を左右一対のロアパイプ3bが連結して側面視で概ね矩形をなし、左右両パイプをクロスメンバが連結して構成されている。
【0015】
ロアパイプ3bの後部の斜め上方へ屈曲して延びた部分に固着されたピボットプレート8には、前端を軸支されたスイングアーム9が揺動自在に設けられ、スイングアーム9の後部とリヤフレーム部5との間にリヤクッション10が介装されている。スイングアーム9の後端に設けられた後ファイナルリダクションギヤユニット19に後輪RWが懸架されている。
【0016】
左右のアッパパイプ3aの前端部間に架設されたクロスメンバの幅方向中央にステアリングコラム11が支持されており、同ステアリングコラム11で操舵可能に支承されるステアリングシャフト12の上端部に操向ハンドル13が連結され、ステアリングシャフト12の下端部は前輪操舵機構14に連結される。
【0017】
パワーユニットPの前面図である図3も参照して、パワーユニットPのエンジンEは、水冷式で単気筒4ストロークエンジンであり、クランク軸30を車体前後方向に指向させた所謂縦置きの姿勢で、センタフレーム部3に搭載される。
【0018】
パワーユニットPの変速機Tは、エンジンEのクランク軸30を軸支するクランク室Cの右側のミッション室Mに配置され、変速機Tから前後方向に指向した出力軸15が前後に突出している。出力軸15の回転動力は、出力軸15の前端から前ドライブシャフト16および前ファイナルリダクションギヤユニット17を介して左右の前輪FWに伝達され、出力軸15の後端から後ドライブシャフト18および前記後ファイナルリダクションギヤユニット19を介して左右の後輪RWに伝達される。
【0019】
エンジンEは、クランクケース31にシリンダブロック32,シリンダヘッド33,シリンダヘッドカバー34が順に重ねられて構成される。シリンダブロック32は、鉛直方向に対して左に傾いて立設されている。シリンダヘッド33から後方に延出する吸気管20が、スロットルボディ21および吸気接続管28を介してスクロール型過給機120の吐出口に接続され、該スクロール型過給機120の吸入口はエアクリーナ接続管29によって、スクロール型過給機120の上方且つシリンダヘッド33の後方に配置されたエアクリーナ22に接続されている。また、シリンダヘッド33から前方に延出した排気管23が左側に湾曲して後方に向かい、エアクリーナ22の左側を後方に延びて排気マフラー24に接続する。
【0020】
車体フレーム2のセンタフレーム部3には、パワーユニットPの上方に燃料タンク25が支持され、同燃料タンク25の前部下方には燃料ポンプ26が配設され、車体フレーム2のフロントフレーム部4にはラジエータ27が支持されている。
【0021】
次に、パワーユニットPの構成について図3及び図4に基づいて説明する。図3はパワーユニットの前クランクケース31F等を省略した前面図であり、図4は図3におけるIV−IV線での内燃機関の動力伝達機構の断面図である。
【0022】
図4に示すように、パワーユニットPのクランク室Cおよびミッション室Mを構成するクランクケース31は、シリンダブロック32のシリンダボアの中心軸線を通り車体前後方向に指向したクランク軸30と直交する面で前後に分割された前クランクケース31Fと後クランクケース31Rとを備え、後クランクケース31Rの前側合わせ面に、前クランクケース31Fの後側合わせ面を重ね合わせて締結し、また、図3に示すように、クランク軸30のクランクウエブ30w、バランサ軸40のバランサウエイト40w、カム軸43のカムロブ43a,43b等および変速歯車列群T1を内部に収容して構成される。
【0023】
図3及び図4に示すように、シリンダブロック32からシリンダスリーブ32aがクランクケース31に嵌入しており、シリンダスリーブ32aに摺動自在にピストン35が嵌合している。クランク軸30の前後一対のクランクウエブ30w、30w間に架設されたクランクピン37と、ピストン35に設けられたピストンピン36とはコネクティングロッド38を介して連結している。クランク軸30は、クランクウエブ30w、30wの前後で前クランク−ス31Fと後クランクケース31Rに設けた主軸受39,39を介して軸支される。
【0024】
図3において、クランク軸30の右下方(図3では、左下方)には、クランク軸30と平行なバランサ軸40が位置している。バランサ軸40は、その両端が前クランクケース31Fと後クランクケース31Rに設けられた軸受(図示せず)によって軸支される。バランサ軸40の中央にはバランサウエイト40wが形成されており、後部にはドリブンギヤ42bが嵌着されて、クランク軸30に嵌着されたドライブギヤ42aと噛合する。
【0025】
クランク軸30の右斜め上方には、クランク軸30と平行な動弁系のカム軸43が位置し、カム軸43の両端は前クランクケース31Fと後クランクケース31Rに設けられた軸受(図示せず)によって軸支されている。カム軸43は、図示しない減速比1/2の減速機構を介してクランク軸30の回転が伝達される。カム軸43のカムロブ43a,43bには、吸気弁54及び排気弁55を開閉させる動弁機構51に駆動力を伝達するプッシュロッド45の下端が当接している。
【0026】
動弁機構51は、両端がシリンダヘッドカバー34に支持されたロッカアーム軸52に揺動自在に嵌合するロッカアーム53を備え、プッシュロッド45の上端がロッカアーム53の一端53aに当接する。ロッカアーム53の他端53bは、シリンダヘッド33に配設された吸気弁54及び排気弁55の上端に当接して押圧する。これにより、クランク軸30が2回転するとカム軸43が1回転し、カムロブ43a,43bに設定されたリフタに従ってロッカアーム53がロッカアーム軸52を中心として揺動し、所定のタイミングで吸気弁54及び排気弁55を押圧して吸気ポート60及び排気ポート61を開閉制御する。
【0027】
吸気ポート60は、シリンダヘッド33のクランク軸30と直交する一方の側面(後面)に配置されて、後方に開放する開口59を備える。また、排気ポート61は、クランク軸30と直交する他方の側面(前面)に配置される。
【0028】
シリンダヘッド33には、吸気ポート60の開口59に連通する吸気管62が接続される。吸気管62の側面には、所定のタイミングで吸気管62内に燃料を噴射する燃料噴射装置63が配設されている。燃料噴射装置63より上流側の吸気管62内には、バタフライバルブ64が設けられ、該バタフライバルブ64を開閉することにより、吸気ポート60に供給する空気量が制御される。吸気管62は、吸気接続管28によってスクロール型過給機120の吐出口に接続されており、エアクリーナ22を介して取り入れられた外部空気が、スクロール型過給機120によって圧力が高められて供給される。
【0029】
また、ピストン35の頂面とシリンダヘッド33の天井面との間に形成された燃焼室100には、点火装置(図示せず)が配置されて、吸気管62から供給された空気を含む燃料(混合ガス)に点火する。燃料噴射装置63による燃料噴射タイミング及び点火装置による点火タイミングは、マイクロコンピュータを含んで構成された制御装置であるECU93(図1及び図2参照)によって制御される。
【0030】
クランク軸30の左方(図3では、右方)には、変速機Tが配設され、メイン軸46,カウンタ軸47,中間軸48が変速ギヤ機構を構成し、シフトドラム49の駆動で変速がなされ、出力軸15に伝達される。
【0031】
図4を参照して、遠心式の発進クラッチ56は、クランク軸30と一体に回転する入力部材としてのクラッチインナ56iと、径方向外方でクラッチインナ56iを囲む出力部材としての椀状のクラッチアウタ56oと、クラッチインナ56iに枢支されて遠心力により径方向外方に揺動してクラッチアウタ56oに接触して接続する遠心ウエイトとしてのクラッチシュー56sとを備え、クランク軸30に回転自在に軸支された円筒ギヤ部材57にクラッチアウタ56oのボス部がスプライン嵌合している。円筒ギヤ部材57の駆動ギヤ57aから変速機Tに動力が伝達される。
【0032】
変速機Tのメイン軸46は、クランク軸30の左側の斜め上方にクランク軸30と平行に配置され、前クランクケース31Fと後クランクケース31Rに軸受85,86を介して回転自在に軸支されている。また、前クランクケース31Fに保持される軸受85から前方に延出するメイン軸46の前端部には変速クラッチ91が設けられている。
【0033】
変速クラッチ91は、多板摩擦式クラッチであり、クラッチインナ91iがメイン軸46の前端に固着され、メイン軸46に回転自在にクラッチアウタ91oが軸支され、クラッチインナ91iとクラッチアウタ91oとの間にプレッシャプレート91pが介在して、クラッチアウタ91oと一体に回転する複数のクラッチデイスクと、クラッチインナ91iと一体に回転する複数のフリクションディスクの重なりを、プレッシャプレート91pが押圧または解除して動力の伝達制御を行う。
【0034】
クラッチアウタ91oには、ダンパスプリング70を介してプライマリドリブンギヤ71が設けられ、プライマリドリブンギヤ71と円筒ギヤ部材57の駆動ギヤ57aが噛合しているので、発進クラッチ56が入ってクランク軸30の回転が駆動ギヤ57aに伝達されると、プライマリドリブンギヤ71、ダンパスプリング70を介して変速クラッチ91のクラッチアウタ91oに回転動力が伝達され、変速クラッチ91が入れば、クラッチインナ91iとともにメイン軸46が回転する。
【0035】
前クランクケース31Fの前方にスペーサ65を介して前ケースカバー66が被せられる。スペーサ65は前クランクケース31Fの前面の周縁部が前方へ延長した延長部材であって、このスペーサ65にドライサンプ式潤滑系のオイルポンプユニット(図示せず)が構成されるとともに、オイルタンク(図示せず)の一部が形成される。前ケースカバー66の前壁67には、クランク軸30の前端を軸支する軸受68が配設されている。
【0036】
プレッシャプレート91pを作動させるクラッチ作動手段92は、メイン軸46の前側に配置されている。クラッチ作動手段92は、メイン軸46と同軸とされて前ケースカバー66の前壁67に固定された支軸72に、回動可能かつ軸方向に摺動可能に可動カムプレートレバー73が軸支されている。可動カムプレートレバー73の前方に対向して支軸72に固着された固定プレート74と、可動カムプレートレバー73との間には、ボール75が介装されており、可動カムプレートレバー73が揺動すると、固定プレート74からボール75を介して受ける反力で可動カムプレートレバー73は後方(図4において右方向)に移動する。
【0037】
この可動カムプレートレバー73にベアリング76を介した連結された連結プレート80は、変速クラッチ91のプレッシャプレート91pに連結されており、可動カムプレートレバー73の後方への移動によって、プレッシャプレート91pがフリクションディスクの重なりを解除して変速クラッチ91を切断する。
【0038】
可動カムプレートレバー73を作動するのは、後述するシフトスピンドル160であり、シフトスピンドル160に固着されるクラッチアーム(図示せず)の先端に設けられたローラ(図示せず)が、可動カムプレートレバー73の先端の溝に係合している。シフトスピンドル160が回転してクラッチアームが揺動すると、ローラを介して可動カムプレートレバー73が揺動して変速クラッチ91を切断する。
【0039】
メイン軸46のミッション室M内に延出する部分に対して、平行に並んで軸受95,96により軸支されたカウンタ軸47(および中間軸48)との間に、変速段を設定する歯車列の集合である変速歯車列群T1が構成されている。
【0040】
カウンタ軸47の後クランクケース31Rから後方へ突出した後端には駆動ギヤ97が嵌着され、カウンタ軸47と平行に配設された出力軸15に嵌着される従動ギヤ98が駆動ギヤ97と噛合して、減速された動力が出力軸15に伝達されるようになっている。
【0041】
図3に示すように、シフトドラム49は、前クランクケース31Fと後クランクケース31Rに回転自在に架設され、シフトドラム49の外周面に形成された3条のシフト溝に、ガイド軸50に摺動自在に支持されたシフトフォーク50a,50b,50cの各シフトピンが嵌合している。シフトドラム49の回動によりシフト溝にガイドされて軸方向に移動するシフトフォーク50aが、メイン軸46上のシフターを軸方向に移動させ、シフトフォーク50b,50cが、カウンタ軸47上のシフターを軸方向に移動させて噛み合う変速ギヤの組を変更する。
【0042】
シフトドラム49の左下方(図3では、右下方)に隣接して変速回転軸であるシフトスピンドル160が配置されており、シフトスピンドル160とシフトドラム49との間にはシフト伝達手段(図示せず)が介装され、シフトスピンドル160の回動がシフト伝達手段を介してシフトドラム49を所要角度回動するようになっている。シフトスピンドル160には、扇形をしたギヤシフトアーム163が嵌着されている。ギヤシフトアーム163は、扇形の要部分がシフトスピンドル160に嵌着され、外周円弧部分に大径ギヤ163aが形成されている。なお、シフトドラム49の回動角度は、シフトドラム49の後方に同軸に設けられたシフトポジション検出器170により検出される(図5参照)。
【0043】
前ケースカバー66の前壁67には、変速用電動モータ161が前方から取り付けられている。変速用電動モータ161のモータ駆動軸162には、小径の駆動ギヤ(図示せず)が形成されている。
【0044】
変速用電動モータ161のモータ駆動軸162と、シフトスピンドル160との間の略中間位置には、アイドルギヤ軸164が、回転自在に軸支されている。アイドルギヤ軸164には、大径ギヤ164aと小径ギヤ164bとが一体に形成されている。アイドルギヤ軸164の大径ギヤ164aは、モータ駆動軸162の駆動ギヤに噛合し、アイドルギヤ軸164の小径ギヤ164bは、シフトスピンドル160のギヤシフトアーム163の大径ギヤ163aに噛合する。
【0045】
このようにして、変速用電動モータ161が駆動されてモータ駆動軸162が回転すると、アイドルギヤ軸164を介してシフトスピンドル160に回転動力が伝達される。シフトスピンドル160の回転は、前記したように、クラッチアームおよびクラッチ作動手段92を介して変速クラッチ91を切断すると同時に、シフト伝達手段を介してシフトドラム49を所要角度回動させてシフトフォーク50a,50b,50cを摺動させ、変速歯車列群T1の噛み合うギヤの組を変更して変速機Tの変速が実行される。
【0046】
パワーユニットPの後面図である図5に示すように、パワーユニットPの後部には、シフトドラム49の回転軸後端に設けられてシフトドラム49の回動角度を検出するシフトポジション検出器170、シフトスピンドル160の後端に取り付けられた回転角度センサ171、カウンタ軸47の後端に取り付けられた車速センサ172、車速センサ172の右方に取り付けられたシフトポジション検出器170のセンサ端子173、等のエンジン補機が配設されている。また、パワーユニットPの後部には、発電機101およびスタータモータ110が配設されている(図4参照。)。
【0047】
後クランクケース31Rから後方に延出するクランク軸30の後端には、発電機101と、スクロール型過給機120に接続される回転継ぎ手102と、後クランクケース31Rに取り付けられるスタータモータ110の回転をクランク軸30に伝達する始動用被駆動ギヤ77とが設けられる。被駆動ギヤ77は、一方向クラッチ78を介して発電機101のフライホイール103に結合される。
【0048】
図6に示すように、エンジン補機であるスタータモータ110は、後述するスクロール型過給機120の固定側スクロール部140の外側終端140bに隣接して配置されて、後クランクケース31Rに固定されている。また、スタータモータ110は、図7に示すように、スクロール型過給機120の最大半径rの内側に少なくとも一部が位置するように配置されている。スタータモータ110の回軸111は、先端が後クランクケース31Rに設けられた玉軸受112によって支持される。回軸111に形成された駆動ギヤ113は、支持軸114に回動自在に嵌合する中間ギヤ115の大径ギヤ115aと噛合し、中間ギヤ115の小径ギヤ115bが始動用被駆動ギヤ77と噛合する。これにより、スタータモータ110の回軸111の回転が、中間ギヤ115、および始動用被駆動ギヤ77を介してクランク軸30に伝達されてエンジンEが始動する。
【0049】
クランク軸30の後端に形成されたテーパ部30aには、椀型に形成されたフライホイール103のボス部103aが嵌合固定されてクランク軸30と一体に回転する。フライホイール103の椀型内周面には、複数個のフェライトマグネット104が円周方向に所定の間隔で固定されている。複数個のフェライトマグネット104の半径方向内側には、後クランクケース31Rに固定されたコイル105がフェライトマグネット104に対向配置されており、フェライトマグネット104とコイル105とによって発電機101が構成される。即ち、クランク軸30が回転してフェライトマグネット104の磁力がコイル105を横切ることにより、コイル105に起電力が発生する。
【0050】
フライホイール103の外周面には、円周方向の所定の角度範囲において所定の間隔(例えば、30°間隔)で配置された複数の突起部106が形成され、突起部106の回転軌跡の円周方向外方には、パルスセンサ107が配置されている。パルスセンサ107は、突起部106が近傍を通過するごとにこれを検出して制御装置であるECU93に検出信号を送信する。ECU93は、これによってクランク軸30の位相を検出して燃料噴射装置63の燃料噴射タイミング、及び点火装置の点火タイミング等を制御する。
【0051】
後クランクケース31Rから後方に延設されたクランク軸30の後端には、フライホイール103と共に、回転継ぎ手102の前側ボス116が、クランク軸30に螺合する1本のボルト118によって共締めされている。これによって、フライホイール103と回転継ぎ手102の前側ボス116とが、クランク軸30と一体に固定される。
【0052】
回転継ぎ手102の後側ボス117は、スクロール型過給機120のクランク軸121にボルト122によって固定されている。回転継ぎ手102の前側ボス116と後側ボス117とは、互いに係合して回転力を伝達可能な回転伝達部材123,124によって連結されている。回転伝達部材123,124は、例えばゴムなどの弾性を有する材料で形成されてクッション性を有するので、クランク軸30の回転変動を吸収してスクロール型過給機120のクランク軸121に伝達する。
【0053】
図6および図7に示すように、スクロール型過給機120は、エアクリーナ接続管29が連結される吸入口130、および吸気接続管28が連結される吐出口131が設けられた第1ケーシング132と、有底の円筒状に形成され、内側にそれぞれ固定側スクロール部140,141,および142,143が形成されて固定側スクロールとして機能する第2ケーシング133および第3ケーシング134と、可動側スクロール135とを有する。
【0054】
第1、第2、および第3ケーシング132、133、134は、第2ケーシング133と第3ケーシング134との間に、可動側スクロール135を組み込んだ状態でボルトによって一体に組み付けられている。スクロール型過給機120は、複数のボルト136によってエンジンEの後部、具体的には、後クランクケース31Rの出力軸15の側方に隣接して固定されており(図5参照)、後クランクケース31Rから所定の方向に延出する。
【0055】
そして、外部から取り入れられてエアクリーナ22で清浄された空気は、エアクリーナ接続管29を介してスクロール型過給機120に供給され、スクロール型過給機120によって圧力が高められた圧縮空気が、吸気接続管28、スロットルボディ21を介してエンジンEの吸気ポート60に供給される。
【0056】
スクロール型過給機120のクランク軸121は、第1、第2、および第3ケーシング132、133、134の略中心を貫通して配置され、前端側が第2ケーシング133に配設された転がり軸受137によって回動自在に支持されている。固定側スクロールとして機能する第2および第3ケーシング133、134は、その内側に車両1の前後方向に延出して形成された薄板状の固定側スクロール部140、141および142、143を備え、この固定側スクロール部140、141および142、143は互いに同一位相とされて対向配置される。
【0057】
固定側スクロール部140、141、および142、143は、吐出口131の中心点O1を始点とする一対のインボリュート曲線から構成され、インボリュート曲線と吐出口131の外径線とが交差する点を開始点140a,141a(142a、143a)として形成されている。また、第1ケーシング132に設けられた吸入口130は、固定側スクロール部140の外側終端140bの延長線上、且つ外側終端140bに隣接し、固定側スクロールと平行に延出して配置される。具体的には、吸入口130は、固定側スクロール部140の外側終端140bの周方向延長線上近傍で、第2ケーシング133によって構成される固定側スクロールの段差状の外周端144に隣接して配置されている。
【0058】
可動側スクロール135は、可動側基盤150の両面に、中心点O2を始点とする一対のインボリュート曲線から形成される薄板状の可動側スクロール部151、152が、車両1の前後方向に延出して形成されている。可動側スクロール部151、152の開始点151a、152aは、固定側スクロール部140、141の開始点140a,141aを時計方向または半時計方向に90度回転させた位置に設定している。
【0059】
可動側基盤150に設けられたボス150aの中心孔には、クランク軸121の軸心に対して偏芯量εを有する偏心軸121aが嵌合する。また、可動側基盤150には、第2クランク軸支持部150bが形成されており、第2クランク軸支持部150bと対向する位置の第2ケーシング133に、回動自在に配設された第2クランク軸153の偏心軸153aが嵌合する。クランク軸121と偏心軸121aとの偏芯量と、第2クランク軸153と偏心軸153aとの偏芯量は、同じ偏芯量εであり、第2クランク軸153は、図示しないタイミングベルトなどでクランク軸121に連結されて、クランク軸121と同期して回転する。
【0060】
これによって、可動側スクロール135は、クランク軸121の偏心軸121aおよび第2クランク軸153の偏心軸153aの2点で安定して支持され、クランク軸121を回転させると、可動側スクロール部151、152が固定側スクロール部140、141、および142、143に対して偏芯量εを半径する円周上を旋回運動する。
【0061】
そして、この旋回運動によって、固定側スクロール部140、141、および142、143と可動側スクロール部151、152との間に形成される三日月状の空間がそれぞれ狭められながら中心方向へ順次移動するので、吐出口131から連続的に圧縮空気が吐出される。なお、固定側スクロール部140、141、142、143、および可動側スクロール部151、152の軸方向の端面には、圧縮空気を密閉する樹脂等から形成されたシール部材156が設けられている。
【0062】
上記したように、クランク軸30において、クランクウェブ30w、30wの両側を一対の軸受39,39で回転可能に支持し、一方の軸受39の外側(前側)に発進クラッチ56、変速クラッチ91、等の駆動系構成部品を配置し、他方の軸受39の外側(後側)に始動用被駆動ギヤ77、発電機101、スクロール型過給機120等のエンジン補機を配置する。このように、駆動系と補機系とを離して配置することで、発進時に発進クラッチ56がつながる時に生じる発進ショックや、変速時に変速クラッチ91がつながる時に生じる変速ショックが、スクロール型過給機120等の補機に伝わり難くすることができる。
【0063】
上記したように、本実施形態の過給機付き内燃機関搭載車両1によれば、スクロール型過給機120が、吸気ポート60が配置されたエンジンEの一側面側(後面側)に配置され、スクロール型過給機120のクランク軸121が、エンジンEから後方に延出するクランク軸30に固定されているので、ベルトなどの伝達部品が不要となり、エンジンEの小型化が可能となる。更に、エアクリーナ22が、スクロール型過給機120の上方、且つエンジンEの後方に配置されているので、エンジン後方のスペースを有効に利用して、エンジンEの車幅方向寸法を狭めることができる。
【0064】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
また、上記の実施形態においては、エンジンは不整地走行用車両に搭載された4ストロークエンジンとして説明したが、これに限定されず、どのようなエンジンであってもよく、同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の過給機付き内燃機関搭載車両の車体カバー等を外した状態の側面図である。
【図2】図1に示す内燃機関搭載車両の平面図である。
【図3】エンジンの前クランクケース半体を省略して示すパワーユニットの前面図である。
【図4】図3に示すパワーユニットのIV−IV線断面図である。
【図5】パワーユニットの後面図である。
【図6】図4のVI部拡大断面図である。
【図7】図6のVII−VII断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 過給機付き内燃機関搭載車両(鞍乗型車両)
15 出力軸
22 エアクリーナ
30 クランク軸
31 クランクケース
31F 前クランクケース
31R 後クランクケース
33 シリンダヘッド
59 開口部
60 吸気ポート
120 スクロール型過給機(過給機)
133 第2ケーシング(固定側スクロール)
134 第3ケーシング(固定側スクロール)
135 可動側スクロール
E エンジン
FW 前輪(車輪)
RW 後輪(車輪)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのシリンダヘッドの一側面側に設けられて、混合ガスが供給される吸気ポートと、
前記エンジンのクランクケース内に回転可能に支持されるクランク軸と、
前記エンジンに供給する空気を加圧して前記吸気ポートに供給する過給機と、
を備える過給機付き内燃機関搭載車両であって、
前記クランク軸は、前記一側面と略直交する方向に前記クランクケースから延出され、
前記過給機は、前記吸気ポートが配置された前記一側面側に配置されて前記クランクケースから延出する前記クランク軸に固定されることを特徴とする過給機付き内燃機関搭載車両。
【請求項2】
前記車両は、鞍乗型車両であって、
前記クランク軸は、前記鞍乗型車両の前後方向に延出することを特徴とする請求項1に記載の過給機付き内燃機関搭載車両。
【請求項3】
前記吸気ポートは、前記シリンダヘッドの後面に開口する開口部を備え、
前記過給機の上方、且つ前記エンジンの後方に位置し、前記過給機の上流側に配設されて外部から取り入れた空気を前記過給機に供給するエアクリーナを更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の過給機付き内燃機関搭載車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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