説明

道路情報収集・提供方法

【課題】先行車両から収集した道路情報から道路交通情報を精度よく作成することが可能となる道路情報収集・提供方法を提供する。
【解決手段】路側通信装置22、23又はセンタ装置32は、複数の先行の車両11から道路情報(操作情報、ABS作動情報、EPS作動情報、走行情報)を収集し、収集したこれらの道路情報を統計処理することにより、この先の道路区間における走行注意(道路16上に障害物があるか、路面が凍結しているか、あるいは、道路渋滞が発生していること)を通知する道路交通情報を作成する。そして、路側通信装置22、23又はセンタ装置32は、作成した前記道路交通情報を後続の車両12に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路を走行する先行車両から通信を介して得られた道路情報に基づく道路交通情報を情報収集・提供装置にて作成し後続車両に提供する道路情報収集・提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、道路区間を走行している先行車両に関わる各種情報を情報収集・提供装置にて収集し、該情報収集・提供装置が、収集したこれらの情報に基づいて前記道路区間における渋滞、路面の凍結、交通事故等に関わる道路交通情報を後続車両に提供するシステムが特許文献1〜5に提案されている。
【0003】
特許文献1では、道路区間に配置された各種の車両感知器からの感知信号に基づいて、交通管理センターは、前記道路区間における交通流の異常(先行車両の事故等の突発事象の発生)を示す道路交通情報を提供する。
【0004】
特許文献2では、先行車両のアンチロックブレーキ機構(以下、ABSともいう。)の作動情報(以下、ABS作動情報ともいう。)や、当該先行車両での位置情報、路面温度及び外気湿度等の情報に基づいて、すべり情報収集・提供サーバは、前記先行車両の道路区間での路面の凍結を示すすべり情報を後続車両に提供する。
【0005】
特許文献3では、先行車両のカメラが撮影した交差点等の撮影画像を、後続車両がサーバからダウンロードすることにより、該後続車両にて前記交差点での道路状況を事前に確認する。
【0006】
特許文献4では、道路区間に配置された道路交通状況測定装置からの先行車両の走行状況に関わる測定情報や、道路交通情報提供機関からの道路交通情報に基づいて、渋滞情報作成装置は、渋滞情報等の交通情報を作成する。
【0007】
特許文献5では、先行車両からのアクセルペダル、ブレーキペダル等の操作情報、残燃料情報、ワイパー・ランプ等の電装品状態情報を道路情報として情報仲介サーバに提供し、該情報仲介サーバは、得られた前記道路情報を後続車両に提供する。
【0008】
【特許文献1】特開2002−342872号公報(段落[0019]、[0023]、[0027]、[0114]、図1〜図3)
【特許文献2】特開2003−187371号公報([要約]、段落[0001]、[0029]、[0041]、[0042]、[0047]、[0049]、図1)
【特許文献3】特開2005−4480号公報([要約]、段落[0008]、図1、図2)
【特許文献4】特開2005−11014号公報(段落[0027]、[0028]、図1、図2)
【特許文献5】特開2006−31723号公報(段落[0086]、[0177]、[0178]、図15、図36、図51)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜5に開示されているシステムでは、下記の(1)及び(2)の問題がある。
【0010】
(1)情報収集・提供装置が、道路に配置された各種のセンサからの道路情報(路面の凍結等に関わる情報)に基づいて道路交通情報を作成し後続車両を提供した際に、前記道路交通情報を受け取った後続車両が前記路面の凍結している道路上を実際に走行しても横滑り等が発生しない場合がある。
【0011】
(2)道路上を走行する各先行車両から道路情報を収集する毎に情報収集・提供装置にて道路交通情報を作成する場合、例えば、道路区間の途中で停車している先行車両や、車載機器の不具合や通信の不具合のある先行車両から収集される道路情報は、渋滞、路面の凍結、交通事故等とは関わりのない道路情報である可能性が高い。しかしながら、情報収集・提供装置では、道路情報を収集する度に道路交通情報を作成するので、前述した関わりのない道路情報に基づいて、渋滞、路面の凍結、あるいは交通事故の発生を示す道路交通情報を誤って作成し後続車両に提供する可能性がある。
【0012】
この発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、先行車両から収集した道路情報から、道路交通情報を精度よく作成することが可能となる道路情報収集・提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明に係る道路情報収集・提供方法は、複数の先行車両からの道路情報を情報収集・提供装置で収集し、該情報収集・提供装置にて前記各道路情報に関連する道路交通情報を作成して後続車両に提供する道路情報収集・提供方法において、所定の道路区間における当該各先行車両の操作情報を前記道路情報として、前記各先行車両から前記情報収集・提供装置に送信するステップと、前記情報収集・提供装置にて前記各操作情報の分散を求めると共に、前記各操作情報のうち所定の操作情報閾値を上回る操作情報を前記情報収集・提供装置に送信した先行車両の数を求めるステップと、前記分散が所定の分散閾値を上回るか、あるいは、前記先行車両数が所定の車両数閾値を上回った場合に、前記道路区間での走行注意の通知を前記道路交通情報として、前記情報収集・提供装置から前記後続車両に提供するステップとを有することを特徴とする。
【0014】
また、第2の発明に係る道路情報収集・提供方法は、複数の先行車両からの道路情報を情報収集・提供装置で収集し、該情報収集・提供装置にて前記各道路情報に関連する道路交通情報を作成して後続車両に提供する道路情報収集・提供方法において、所定の道路区間における前記各先行車両のアンチロックブレーキ機構(ABS)のアンチロックブレーキ機構作動情報(ABS作動情報)及び横滑り防止機構の横滑り防止作動情報(以下、EPS作動情報ともいう。)のうち少なくとも1つを前記道路情報として、前記各先行車両から前記情報収集・提供装置に送信するステップと、前記情報収集・提供装置が、収集した前記各ABS作動情報及び前記各EPS作動情報より、前記各ABS作動情報を前記情報収集・提供装置に送信した先行車両の数(以下、ABS作動車両数ともいう。)を求めると共に、前記各EPS作動情報を前記情報収集・提供装置に送信した先行車両の数(以下、EPS作動車両数ともいう。)を求めるステップと、前記ABS作動車両数が所定のABS作動車両数閾値を上回るか、又は前記EPS車両数が所定のEPS作動車両数閾値を上回る場合に、前記道路区間での走行注意の通知を前記道路交通情報として、前記情報収集・提供装置から前記後続車両に提供するステップとを有することを特徴とする。
【0015】
さらに、第3の発明に係る道路情報収集・提供方法は、複数の先行車両からの道路情報を情報収集・提供装置で収集し、該情報収集・提供装置にて前記各道路情報に関連する道路交通情報を作成して後続車両に提供する道路情報収集・提供方法において、所定の道路区間における前記各先行車両の走行情報を前記道路情報として、前記各先行車両から前記情報収集・提供装置に送信するステップと、前記情報収集・提供装置が、前記道路区間に入った先行車両のうち所定時間内に前記道路区間を通過する先行車両の確率を示す確率関数に、収集した前記各走行情報を代入して、前記確率関数の値を求めるステップと、前記確率関数の値が所定の確率関数閾値を下回る場合に、前記道路区間での走行注意の通知を前記道路交通情報として、前記情報収集・提供装置から前記後続車両に提供するステップとを有することを特徴とする。
【0016】
これらの発明によれば、いずれも、複数の先行車両からの道路情報を情報収集・提供装置にて収集し、これらの道路情報を前記情報収集・提供装置にて統計処理することにより道路交通情報を作成する。これにより、前記情報収集・提供装置では、一部の先行車両から収集した道路情報が異状な情報(例えば、道路区間の途中で停車している先行車両からの情報や、車載機器の不具合や通信の不具合等による誤った情報)であっても、前記異状な道路情報の影響を排除して、道路交通情報を精度よく作成することができる。
【0017】
また、道路区間内に障害物がある場合、前記道路区間内で路面が凍結している場合、あるいは、前記道路区間内で渋滞が発生している場合において、前記各先行車両からの道路情報は、通常時の前記各先行車両からの道路情報とは明らかに異なるものと予想されるので、前記各先行車両からの道路情報を統計処理することによって、より正確な道路交通情報を作成することができる。
【0018】
従って、上記の各発明では、複数の先行車両からの道路情報に基づいて道路交通情報を精度よく作成し、より正確な道路交通情報を後続車両に提供することが可能となる。
【0019】
なお、前記操作情報とは、前記先行車両における操作者のハンドル操作量、ブレーキ操作量、又はアクセル操作量であり、前記ABS作動情報とは、前記ABSが作動したことを示す情報であり、前記EPS作動情報とは、前記EPSが作動したことを示す情報であり、前記走行情報とは、前記道路区間を前記先行車両が通過したことを示す情報である。
【0020】
また、前記操作情報閾値とは、通常時(道路上において、路面の凍結や、渋滞や、交通事故が発生していないとき)における各先行車両での操作情報の大きさをいい、前記分散閾値とは、通常時における各先行車両での操作情報の分散の大きさをいい、前記車両数閾値は、通常時における各先行車両から前記操作情報閾値を上回る操作情報を前記情報収集・提供装置に送信する先行車両の数をいう。さらに、前記ABS作動車両数閾値とは、通常時におけるABS作動車両数をいい、前記EPS作動車両数閾値とは、通常時におけるEPS作動車両数をいい、前記確率関数閾値は、通常時における確率関数の値をいう。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、複数の先行車両からの道路情報に基づいて道路交通情報を精度よく作成し、より正確な道路交通情報を後続車両に提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、この発明に係る道路情報収集・提供方法の一実施形態が適用された道路情報収集・提供システム10のインフラストラクチャー構成例の一部を示している。
【0024】
この道路情報収集・提供システム10は、矢印で示す方向が通行方向である道路16上に、所定間隔で地点A〜Cに異なるIDを有する路側通信装置(情報収集・提供装置)21〜23が設置されている。
【0025】
道路16上では、複数の車両(先行車両)11が地点Bに設置された路側通信装置22の通信範囲内、及び/又は路側通信装置23の通信範囲内に存在し、車両(後続車両)12が地点Cに設置された路側通信装置23の通信範囲内に存在している。
【0026】
路側通信装置21〜23は、ネットワーク30を介して他の情報収集・提供装置としてのセンタ装置32とリアルタイムな通信が可能に構成されている。
【0027】
図2は、図1例の道路情報収集・提供システム10のシステム構成例を示している。
【0028】
図2から分かるように、道路情報収集・提供システム10は、センタ装置32と、このセンタ装置32に対してネットワーク30を介して無線LANで接続される路側通信装置21〜23と、この路側通信装置21〜23と無線通信可能な車両11、12とから構成されている。
【0029】
車両11、12は、それぞれ、制御部(CPU)100を有し、制御部100には、自己の位置を特定するためのGPS装置102、ナビゲーション装置の表示部を兼ねる表示部104、車速を検出する車速センサ106、車両の振動を検出する振動センサ108、外気温を測定する温度センサ110、無線送受信部118及び状態取込部120が接続されている。
【0030】
状態取込部120には、アクセル開度センサ122、ブレーキ圧力センサ124、ワイパーセンサ126、ハンドルセンサ128、シートセンサ130、アンチロックブレーキ機構(ABS)132、横滑り防止機構(EPS)134及びムービーカメラ136が接続されている。
【0031】
状態取込部120は、これらセンサ類で取り込まれた情報を制御部100に送る。すなわち、状態取込部120は、例えば、アクセル開度センサ122で検出された車両11、12の操作者によるアクセル操作量、ブレーキ圧力センサ124で検出された前記操作者によるブレーキ操作量、及びハンドルセンサ128で検出された前記操作者によるハンドル操作量を、操作情報として制御部100に出力する。また、状態取込部120は、ABS132が作動したことを示すABS作動情報を制御部100に出力し、あるいは、EPS134が作動したことを示すEPS作動情報として制御部100に出力する。
【0032】
制御部100は、該制御部100及び状態取込部120に接続されるセンサ類で得た情報を道路情報として無線送受信部118から送信する。すなわち、制御部100は、自己が得た車両11、12についての道路情報(前記操作情報、前記ABS作動情報、前記EPS作動情報等)を、無線送受信部118を介して通信範囲内に存在する路側通信装置21〜23に送信する。
【0033】
また、制御部100は、GPS装置102で検出された道路16上の所定の道路区間(例えば、地点Cと地点Bとの間の道路区間)における車両11、12の位置(例えば、地点Cと地点Bにおける車両11、12の位置)を道路情報の一つとしての走行情報として無線送受信部118から路側通信装置21〜23に送信する。
【0034】
路側通信装置21〜23は、車両11、12からの各道路情報に対して後述する統計処理(第1実施例〜第3実施例での統計処理)等の所定の処理を施し、渋滞情報、路面凍結、交通事故情報等の各種の道路交通情報を作成して車両12に提供する。
【0035】
また、路側通信装置21〜23は、前記処理を行わずに、受信した各道路情報をそのままセンタ装置32に送信し、該センタ装置32により、車両11、12の道路情報に対して前記統計処理等の所定の処理を施すことで、渋滞情報、路面凍結、交通事故情報等の道路交通情報を作成することも可能である。この場合、センタ装置32は、作成した前記道路交通情報をネットワーク30及び路側通信装置21〜23を経由して車両12に提供する。
【0036】
従って、路側通信装置21〜23又はセンタ装置32は、車両11、12から得られた各道路情報より、例えば、ABS132のABS作動情報やEPS134のEPS作動情報が得られた地点を含む道路区間(例えば、路側通信装置22で先行の車両11が道路情報を送信する通信範囲内や、地点Cと地点Bとの間の道路区間)では、路面凍結等、道路16が滑り易いことを推測し、後続の車両12に対して前記道路区間内での走行注意を通知する道路交通情報を作成する。また、路側通信装置21〜23又はセンタ装置32は、アクセル開度センサ122、ブレーキ圧力センサ124及びハンドルセンサ128の操作情報が得られた地点を含む前記道路区間では、道路16上に障害物があるものと推測し、後続の車両12に対して前記道路区間内での走行注意を通知する道路交通情報を作成する。さらに、路側通信装置21〜23又はセンタ装置32は、GPS装置102の走行情報により、前記道路区間における渋滞の発生を推測し、後続の車両12に対して前記道路区間内での走行注意を通知する道路交通情報を作成する。
【0037】
このように、路側通信装置21〜23又はセンタ装置32では、車両11、12から得られた道路情報に対して統計処理等の所定の処理を施して道路交通情報をリアルタイムに作成し、作成した前記道路交通情報を車両11、12に配信する。
【0038】
路側通信装置21〜23は、制御部(CPU)200を有し、制御部200には、データメモリ201に格納されているデータや、車両11、12からの道路情報のデータに対して統計処理等の所定の処理を行う処理部202、LAN接続部208及び無線送受信部210が接続されている。
【0039】
路側通信装置21〜23の無線送受信部210は、通信範囲内に入った車両11、12の無線送受信部118と無線により情報の送受を行う。路側通信装置21〜23のLAN接続部208は、ネットワーク30を介してセンタ装置32に無線接続されるとともに、他の路側通信装置21〜23のLAN接続部208に対してもネットワーク30を介して無線接続される(図1参照)。
【0040】
センタ装置32は、制御部300を有し、制御部300には、道路16の地点A、B、Cの道路交通情報及びAB間、BC間の道路区間における道路交通情報等が格納された道路データベース(道路DB)306、データメモリ316に格納されているデータに対して統計処理等の所定の処理を行う処理部318及びLAN接続部320が接続されている。
【0041】
センタ装置32のLAN接続部320は、ネットワーク30を介して路側通信装置21〜23のLAN接続部208に対して無線接続される。
【0042】
制御部100、200、300及び処理部202、318は、それぞれ、図示しないROM等に格納されたプログラムを実行することで各種機能実現手段として機能する。
【0043】
道路情報収集・提供システム10は、基本的には以上のように構成され、且つ動作するものであり、次に、この実施形態に係る道路情報収集・提供システムの具体例(第1〜第3実施例)の作用及び効果について、図3〜図7に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0044】
なお、第1〜第3実施例では、路側通信装置22又はセンタ装置32が先行の車両11からの道路情報に対して統計処理を行うことにより道路交通情報を作成し、作成した前記道路交通情報を後続の車両12に提供する場合について説明する。
【0045】
先ず、第1実施例は、図3及び図4に示すように、道路16上の所定の道路区間(例えば、路面通信装置22の通信範囲内にある地点B付近の道路区間)に図示しない障害物があるときに、路側通信装置22が車両11からの操作情報に基づいて、前記道路区間での走行注意を通知する道路交通情報を作成し、車両12に提供する場合である。
【0046】
先ず、ステップS1において、車両11の制御部100(図2参照)は、該制御部100内に設けられた操作情報の加算用エリア(前記道路区間内でのアクセル操作量、ブレーキ操作量及びハンドル操作量の総和や、これらの自乗の総和を格納するエリア)や、最大値用エリア(前記道路区間内でのアクセル操作量、ブレーキ操作量及びハンドル操作量の自乗の最大値を格納するエリア)内の値を0に設定する。
【0047】
次に、状態取込部120は、アクセル開度センサ122からアクセル操作量を取り込み、ブレーキ圧力センサ124からブレーキ操作量を取り込み、ハンドルセンサ128からハンドル操作量を取り込み、前記各操作量を操作情報として制御部100に出力する。制御部100は、単位時間当たりの各操作量を求めると共にこれらの自乗を算出し(ステップS2)、算出したこれらの値を前記加算用エリアに加算する(ステップS3)。
【0048】
次に、制御部100は、最大値用エリアに格納されているデータと、前記加算用エリア内に格納されている前記自乗のデータを比較し(ステップS4)、前記自乗のデータが前記最大値用エリア内のデータよりも大きい場合には、前記最大値用エリア内のデータを前記自乗のデータに置き換える(ステップS5)。一方、ステップS4において、前記自乗のデータが前記最大値用エリア内のデータよりも小さい場合には、制御部100は、次のステップS6の処理に移る。
【0049】
ステップS6において、制御部100は、車両11が所定距離(例えば、1[km])走行したか否かを判定し、前記所定距離を走行していない場合には、所定時間だけ制御部100内の処理を中断した後に(ステップS7)、ステップS2〜S5の処理を再度実行する。一方、ステップS6において、車両11が前記所定距離を走行した場合には、前記加算用エリア内のデータ(単位時間当たりのアクセル操作量、ブレーキ操作量及びハンドル操作量の総和、これらの自乗の総和)と、前記最大値用エリア内のデータ(アクセル操作量、ブレーキ操作量及びハンドル操作量の自乗の最大値)とを、前記所定距離におけるデータとしてメモリ112に保存する(ステップS8)。
【0050】
次いで、制御部100は、車両11から路側通信装置22へのデータの送信が可能であるか否か(車両11が路側通信装置22の通信範囲内にあるか否か)を判定し(ステップS9)、送信可能である場合には、メモリ112に保存されている全てのデータを、車両11の操作情報として無線送受信部118から路側通信装置22に送信する(ステップS10)。一方、ステップS9において、車両11から路側通信装置22へのデータの送信ができないと判定した場合、制御部100は、ステップS1の処理に戻る。
【0051】
路側通信装置22の処理部202では、前記道路区間を走行する複数の車両11から無線送受信部210を経由して操作情報(アクセル操作量、ブレーキ操作量及びハンドル操作量の総和と、アクセル操作量、ブレーキ操作量及びハンドル操作量の自乗の総和と、アクセル操作量、ブレーキ操作量及びハンドル操作量の自乗の最大値)が受信される(ステップS11)。処理部202では、各車両11におけるアクセル操作量、ブレーキ操作量及びハンドル操作量の総和の分散σ2を算出する(ステップS12)。また、処理部202は、前記操作情報を送信してきた複数の車両11のうち、アクセル操作量、ブレーキ操作量及びハンドル操作量の自乗の最大値が所定の閾値(操作情報閾値)を上回る車両11の数Nmaxを算出する(ステップS13)。
【0052】
なお、前記操作情報閾値とは、通常時(道路16上において、路面の凍結や、渋滞や、交通事故が発生していないとき)における各車両11での操作情報の大きさをいう。
【0053】
さらに、処理部202は、分散σ2が所定の閾値(分散閾値)を上回るか、あるいは、数Nmaxが所定の閾値(車両数閾値)を上回るか否かを判断し(ステップS14)、分散σ2が前記分散閾値を上回るか、又は数Nmaxが前記車両数閾値を上回る場合(σ2>分散閾値又はNmax>車両数閾値)には、前記道路区間における車両11のアクセル操作量、ブレーキ操作量及びハンドル操作量が、通常時における車両11のアクセル操作量、ブレーキ操作量及びハンドル操作量とは明らかに異なったもの、換言すれば、前記道路区間に障害物があるものと推測し、後続の車両12に対して前記道路区間での走行注意を通知する道路交通情報を作成する(ステップS15)。
【0054】
なお、前記分散閾値とは、前記通常時における各車両11での操作情報の分散σ2の大きさをいい、前記車両数閾値は、前記通常時における各車両11から前記操作情報閾値を上回る操作情報を路側通信装置22に送信する車両11の数をいう。
【0055】
従って、処理部202は、制御部200、LAN接続部208及びネットワーク30を経由して隣接する他の路側通信装置23に前記道路交通情報を送信し、該路側通信装置23は、受信した前記道路交通情報を、無線送受信部210を経由して後続の車両12に配信する。これにより、車両12の操作者は、この先の道路区間(地点Cと地点Bとの間の道路区間)にて障害物が存在することを認識することができる。
【0056】
次に、第2実施例は、図5及び図6に示すように、道路16上の所定の道路区間(例えば、路面通信装置22の通信範囲内にある地点B付近の道路区間)の路面が凍結しているときに、路側通信装置22が車両11からのABS作動情報及びEPS作動情報に基づいて、前記道路区間での走行注意を通知する道路交通情報を作成し、車両12に提供する場合である。
【0057】
先ず、ステップS20において、車両11の制御部100(図2参照)は、ABS132のABS機能が動作したことを示す変数IABSの値と、EPS134のEPS機能が動作したことを示す変数IEPSの値とを、それぞれ0にクリアする(IABS=0、IEPS=0)。
【0058】
次に、ステップS21において、制御部100は、車両11が前記道路区間内で所定距離(例えば、1[km])走行したか否かを判定し、前記所定距離を走行していない場合には、前記ABS機能が働いたか否かを判断する(ステップS22)。
【0059】
ステップS22において、制御部100は、ABS132のABS作動情報が状態取込部120を介して制御部100に入力されていれば、前記ABS機能が働いたものと判断して、IABSの値を1に設定し(IABS=1、ステップS23)、ステップS24の処理に移行する。一方、制御部100に前記ABS作動情報が入力されていない場合、制御部100は、前記ABS機能が働いていないものと判断して、IABSの値を維持した状態で、ステップS24の処理に移行する。
【0060】
次に、ステップ24において、制御部100は、前記EPS機能が働いたか否かを判断する。この場合、制御部100は、EPS134のEPS作動情報が状態取込部120を介して制御部100に入力されていれば、前記EPS機能が働いたものと判断して、IEPSの値を1に設定し(IEPS=1、ステップS25)、ステップS21の処理に戻る。一方、制御部100に前記EPS作動情報が入力されていない場合、制御部100は、前記EPS機能が働いていないものと判断して、IEPSの値を維持した状態で、ステップS21の処理に戻る。
【0061】
前述したステップS21において、車両11が前記所定距離を走行した場合、制御部100は、前記IABS及び前記IEPS内の値を前記道路区間のデータ(ABS作動情報及びEPS作動情報を示すデータ)としてメモリ112に保存する(ステップS26)。
【0062】
次いで、制御部100は、車両11から路側通信装置22へのデータの送信が可能であるか否か(車両11が路側通信装置22の通信範囲内にあるか否か)を判定し(ステップS27)、送信可能である場合には、メモリ112に保存されている全てのデータを無線送受信部118から路側通信装置22に送信する(ステップS28)。一方、ステップS27において、車両11から路側通信装置22へのデータの送信ができないと判定した場合、制御部100は、ステップS20の処理に戻る。
【0063】
路側通信装置22の処理部202では、前記道路区間を走行する複数の車両11から無線送受信部210を経由して前記全てのデータ(IABS及びIEPS)が受信される(ステップS29)。処理部202では、IABS=1のデータを送信してきた車両11の数(ABS作動車両数)と、IEPS=1のデータを送信してきた車両11の数(EPS作動車両数)とをそれぞれ算出する(ステップS30)。
【0064】
さらに、処理部202は、前記ABS作動車両数が所定の閾値(ABS作動車両数閾値)を上回るか、あるいは、前記EPS作動車両数が所定の閾値(EPS作動車両数閾値)を上回るか否かを判断し(ステップS31)、前記ABS作動車両数又は前記EPS作動車両数が前述した閾値(ABS作動車両数閾値又はEPS作動車両数閾値)を上回る場合には、前記道路区間では、路面凍結等により道路16が滑り易いので、前記閾値以上のデータを送信してきた車両11において、ABS132又はEPS134が作動したものと推測し、後続の車両12に対して前記道路区間内での走行注意を通知する道路交通情報を作成する(ステップS32)。
【0065】
なお、前記ABS作動車両数閾値とは、通常時(道路16上において、路面の凍結や、渋滞や、交通事故が発生していないとき)におけるABS作動車両数をいい、前記EPS作動車両数閾値とは、前記通常時におけるEPS作動車両数をいう。
【0066】
そして、処理部202は、制御部200、LAN接続部208及びネットワーク30を経由して隣接する他の路側通信装置23に前記道路交通情報を送信し、該路側通信装置23は、受信した前記道路交通情報を、無線送受信部210を経由して後続の車両12に配信する。これにより、車両12の操作者は、この先の道路区間(地点Cと地点Bとの間の道路区間)にて路面凍結等が発生していることを認識することができる。
【0067】
次に、第3実施例は、図7に示すように、道路16上の所定の道路区間(例えば、B地点とC地点との間の道路区間)で渋滞が発生しているときに、センタ装置32が先行の車両11からの走行情報に基づいて、前記道路区間での走行注意を通知する道路交通情報を作成し、後続の車両12に提供する場合を示している。
【0068】
先ず、ステップS41において、複数の車両11の制御部100(図2参照)は、該各車両11が地点B(図1参照)を通過した際のGPS装置102で検出された当該各車両11の位置及び時刻を走行情報として無線送受信部118から路側通信装置23に送信し(ステップS41)、路側通信装置23は、受信した各車両11の走行情報(ステップS42)をネットワーク30を経由してセンタ装置32に送信する(ステップS43)。
【0069】
また、制御部100は、その後、各車両11が地点Cを通過した際のGPS装置102で検出された当該各車両11の位置及び時刻を走行情報として無線送受信部118から路側通信装置22に再度送信し(ステップS41)、路側通信装置22は、受信した各車両11の走行情報(ステップS42)をネットワーク30を経由してセンタ装置32に送信する(ステップS43)。
【0070】
ステップS44において、センタ装置302は、LAN接続部320及び制御部300を経由して各車両11の走行情報(地点Cでの走行情報及び地点Bでの走行情報)を受信し、センタ装置302の処理部318は、下記の統計処理を行う。
【0071】
通常時(道路16上において、路面の凍結や、渋滞や、交通事故が発生していないとき)において、地点Cから地点Bに各車両11が移動する際に、これらの車両11の移動時間は正規分布となることが予想される。この場合、移動時間の平均値をμとし、その標準偏差をσとすれば、全ての車両11に対して、(μ−σ)と(μ+σ)との間の移動時間で前記地点Cと前記地点Bとの間の道路区間を通過する車両11の確率Pは、全体の約68[%](P=0.68)になることが予想される。
【0072】
この場合、前記道路区間内で渋滞が発生しているときに、前記地点Cを通過する車両11(台数N)のうち、前記移動時間内で前記地点Bを通過する車両11(台数n)の確率(確率関数)f(n)は、下記の(1)式となる。
【0073】
f(n)=N!×Pn(1−P)N-n/{n!×(N−n)!} (1)
そこで、ステップS45において、処理部318は、路側通信装置23から受信した走行情報に基づいて、地点Cを通過した車両11の台数N(路側通信装置23に走行情報を送信した車両11の台数)を求めると共に、路側通信装置22から受信した走行情報に基づいて、台数Nの車両11のうち所定の時間{例えば、(μ−σ)から(μ+σ)までの範囲の時間}で地点Cを通過した車両11の台数nを求める。そして、処理部318は、台数n、台数N及び確率P(=0.68)から確率関数f(n)の値を求める。
【0074】
次いで、処理部318は、確率関数f(n)の値が所定の閾値(確率関数閾値)を下回るか否かを判断し(ステップS46)、確率関数f(n)の値が前記確率関数閾値を下回る場合には、前記道路区間における車両11の移動時間が通常時の移動時間よりも長くなっている、換言すれば、前記道路区間内で車両11の渋滞が発生しているものと推測して、後続の車両12に対して前記道路区間での走行注意を通知する道路交通情報を作成する(ステップS47)。
【0075】
なお、前記確率関数閾値は、許容範囲と考えられる確率関数の値(例えば、0.05、すなわち、前記道路区間内を通過する車両11のうち渋滞に巻き込まれていない車両11が、20台のうち1台であるときに、当該道路区間が渋滞であるとの判定を許容する際の値)をいう。
【0076】
そして、処理部318は、制御部300、LAN接続部320及びネットワーク30を経由して路側通信装置22に隣接する他の路側通信装置23に前記道路交通情報を送信し、該路側通信装置23は、受信した前記道路交通情報を、無線送受信部210を経由して後続の車両12に配信する。これにより、車両12の操作者は、この先の道路区間にて車両11の渋滞が発生していることを認識することができる。
【0077】
なお、ステップS46において、確率関数f(n)の値が前記確率関数閾値を上回る場合には、処理部318は、前記道路区間における車両11の移動時間が通常時の移動時間内にあり、換言すれば、前記道路区間内で車両11の渋滞が発生していないものと推測して、ステップS44の処理に戻る。
【0078】
このように、本実施形態では、いずれの実施例(第1〜第3実施例)においても、複数の車両11から道路情報を収集し、路側通信装置22、23又はセンタ装置32(情報収集・提供装置)では、収集したこれらの道路情報を統計処理することにより道路交通情報を作成する。これにより、路側通信装置22、23又はセンタ装置32では、一部の先行の車両11から収集した道路情報が異状な情報(例えば、道路区間の途中で停車している車両11からの情報や、車両11に搭載されている車載機器の不具合や通信の不具合等による誤った情報)であっても、前記異状な道路情報の影響を排除して前記道路交通情報を精度よく作成することができる。
【0079】
また、道路16上の所定の道路区間内に障害物がある場合、前記道路区間内で路面が凍結している場合、あるいは、前記道路区間内で道路渋滞が発生している場合において、先行の車両11からの道路情報は、通常時の道路情報とは明らかに異なるものと予想されるので、路側通信装置22、23又はセンタ装置32は、複数の先行の車両11からの道路情報を統計処理することにより、より正確な道路交通情報を正確に作成することができる。
【0080】
従って、前記各実施例では、複数の先行の車両11からの道路情報に基づいて道路交通情報を精度よく作成し、より正確な道路交通情報を後続の車両12に提供することが可能となる。
【0081】
なお、前述した第1〜第3実施例において、車両11は、各種の道路情報を暗号化して路側通信装置22、23に送信し、路側通信装置22、23又はセンタ装置32では、受信した前記道路情報の暗号化を解除した後に当該道路情報の統計処理を行うことも可能である。これにより、車両11から路側通信装置22、23に対して前記道路情報を確実に送信することが可能となる。
【0082】
また、前記第1及び第2実施例では、路側通信装置22を示す装置IDと送信予定日時とを前記道路交通情報に付加し、これらの情報を暗号化した後に隣接する他の路側通信装置23に送信することも可能である。これにより、路側通信装置23では、受信された前記道路交通情報の暗号化を解除した後に、前記道路交通情報を後続の車両12に配信するので、路側通信装置22から路側通信装置23に前記道路交通情報を確実に配信することが可能となる。
【0083】
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】この発明に係る道路情報収集・提供方法の一実施形態が適用された道路情報収集・提供システムのインフラストラクチャー構成例の一部説明図である。
【図2】図1例の道路情報収集・提供システムのシステム構成例を示している。
【図3】道路情報収集・提供システムの第1実施例に係るフローチャートである。
【図4】道路情報収集・提供システムの第1実施例に係るフローチャートである。
【図5】道路情報収集・提供システムの第2実施例に係るフローチャートである。
【図6】道路情報収集・提供システムの第2実施例に係るフローチャートである。
【図7】道路情報収集・提供システムの第3実施例に係るフローチャートである。
【符号の説明】
【0085】
10…道路情報収集・提供システム 11、12…車両
16…道路 21〜23…路側通信装置
30…ネットワーク 32…センタ装置
100、200、300…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の先行車両からの道路情報を情報収集・提供装置で収集し、該情報収集・提供装置にて前記各道路情報に関連する道路交通情報を作成して後続車両に提供する道路情報収集・提供方法において、
所定の道路区間における当該各先行車両の操作情報を前記道路情報として、前記各先行車両から前記情報収集・提供装置に送信するステップと、
前記情報収集・提供装置にて前記各操作情報の分散を求めると共に、前記各操作情報のうち所定の操作情報閾値を上回る操作情報を前記情報収集・提供装置に送信した先行車両の数を求めるステップと、
前記分散が所定の分散閾値を上回るか、あるいは、前記先行車両数が所定の車両数閾値を上回った場合に、前記道路区間での走行注意の通知を前記道路交通情報として、前記情報収集・提供装置から前記後続車両に提供するステップと、
を有することを特徴とする道路情報収集・提供方法。
【請求項2】
複数の先行車両からの道路情報を情報収集・提供装置で収集し、該情報収集・提供装置にて前記各道路情報に関連する道路交通情報を作成して後続車両に提供する道路情報収集・提供方法において、
所定の道路区間における前記各先行車両のアンチロックブレーキ機構のアンチロックブレーキ機構作動情報(ABS作動情報という。)及び横滑り防止機構の横滑り防止作動情報(EPS作動情報という。)のうち少なくとも1つを前記道路情報として、前記各先行車両から前記情報収集・提供装置に送信するステップと、
前記情報収集・提供装置が、収集した前記各ABS作動情報及び前記各EPS作動情報より、前記各ABS作動情報を前記情報収集・提供装置に送信した先行車両の数(ABS作動車両数という。)を求めると共に、前記各EPS作動情報を前記情報収集・提供装置に送信した先行車両の数(EPS作動車両数という。)を求めるステップと、
前記ABS作動車両数が所定のABS作動車両数閾値を上回るか、又は前記EPS車両数が所定のEPS作動車両数閾値を上回る場合に、前記道路区間での走行注意の通知を前記道路交通情報として、前記情報収集・提供装置から前記後続車両に提供するステップと、
を有することを特徴とする道路情報収集・提供方法。
【請求項3】
複数の先行車両からの道路情報を情報収集・提供装置で収集し、該情報収集・提供装置にて前記各道路情報に関連する道路交通情報を作成して後続車両に提供する道路情報収集・提供方法において、
所定の道路区間における前記各先行車両の走行情報を前記道路情報として、前記各先行車両から前記情報収集・提供装置に送信するステップと、
前記情報収集・提供装置が、前記道路区間に入った先行車両のうち所定時間内に前記道路区間を通過する先行車両の確率を示す確率関数に、収集した前記各走行情報を代入して、前記確率関数の値を求めるステップと、
前記確率関数の値が所定の確率関数閾値を下回る場合に、前記道路区間での走行注意の通知を前記道路交通情報として、前記情報収集・提供装置から前記後続車両に提供するステップと、
を有することを特徴とする道路情報収集・提供方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−65516(P2008−65516A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241240(P2006−241240)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】