説明

道路標示シートの施工方法及び道路標示シート

【課題】路面標示シートを加熱溶着させる場合と、加熱せずに圧着させる場合とを選択自在に実施できる道路標示シートの施工方法を提供する。
【解決手段】酢酸ビニル含有量が15〜40重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体とロジンとを配合させた結合材に、ワックスと、着色材、充填材、反射材等の添加材とを配合させた基材組成物を均一に溶融混合されてシート状に成形された基材シートを道路標示シートに備える。
エチレン−酢酸ビニル共重合体によりシートとしての柔軟性が具備されることから、基材シートを加熱してこの基材シートを軟化させ、施工面に溶着させて施工できると共に、前記基材シートの裏面に感圧型粘着剤を付着させて、加熱せずに圧着させて施工できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面に線、文字、ピクト、記号等を描き、これによって誘導、案内、道路中央線、横断歩道等を明示するための道路標示シートの施工方法と、これに用いる道路標示シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
路面に線や文字等の標示を行うための道路標示シートに関しては種々の発明が開示されている。例えば特許文献1には、酢酸ビニル含有量が15〜40重量%であってメルトインデックスが50〜150のエチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して、着色剤、充填材、反射材等の添加剤が200〜500重量部混入され、これ等が均一に溶融混合されてシート状に成形された道路標示シート、が本件出願人によって開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、微小ガラスビーズ等の再帰反射性要素を表側に配設した基層を透明で表面平滑な表面被覆層で被覆した厚さ1mm以下の表面シートを路面に対する順応性にすぐれた未加硫ゴムおよび未硬化合成ゴムからなる群から選ばれた材料を主材とするとともに表面付近にガラスビーズ等の再帰反射性要素を配設した厚さ3mm以下のベースシートの全面または一部に貼着してなる全天候型路面標示用シート材、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭53−9010号公報
【特許文献2】特公平7−57935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される道路標示シートは、施工時に熱を加えて施工面に溶着させ、その後に冷却硬化させるようになされており、これを加熱を行なわずに施工する場合にはシートの柔軟性が低く、ひび割れなどが生じる恐れがあった。
また、特許文献2に示される全天候型路面標示用シート材は、路面に対する順応性に優れた未加硫ゴムや未硬化合成ゴムを主材としているので、加熱を行なわずに施工する場合でもひび割れなどの恐れはないが、凸凹が大きい等の施工面の状態によっては加熱溶着させる道路標示シートと比較して施工面への付着力が弱く剥がれ易くなるという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、路面標示シートを加熱溶着させる場合と、加熱せずに圧着させる場合とを選択自在に実施できる道路標示シートの施工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る道路標示シートの施工方法は、加熱して施工面に付着させる場合と、加熱せずに付着させる場合のいずれの場合にも使用できる道路標示シートを使用した道路標示シートの施工方法であって、
前記道路標示シートは、酢酸ビニル含有量が15〜40重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体とロジンとが配合された結合材に、ワックスと、着色材、充填材、反射材等の添加材とが配合された基材組成物が均一に溶融混合されてシート状に成形された基材シートを備え、
加熱して施工面に付着させる場合には、前記道路標示シートをそのまま使用して、前記基材シートを加熱して施工面に溶着させるようになされ、加熱せずに付着させる場合は、前記基材シートの裏面に感圧型粘着剤を付着させて、該感圧型粘着剤を施工面に圧着させるようになされたことを特徴としている。
【0008】
本発明に係る道路標示シートの施工方法によれば、道路標示シートが、酢酸ビニル含有量が15〜40重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体とロジンとが配合された結合材に、ワックスと、着色材、充填材、反射材等の添加材とが配合された基材組成物が均一に溶融混合されてシート状に成形された基材シートを備えるので、前記ロジンにより溶融すると粘着力が発揮され、またエチレン−酢酸ビニル共重合体によりシートとしての柔軟性が具備されることから、基材シートを加熱してこの基材シートを軟化させ、施工面に溶着させて施工できると共に、前記基材シートの裏面に感圧型粘着剤を付着させて、加熱せずに圧着させて施工でき、加熱溶着させる施工方法と圧着させる施工方法とを選択自在に行なうことができる。
【0009】
また、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体を20重量%以上40重量%以下に配合させた前記基材組成物から形成した基材シートを備えた道路標示シートを用いれば、前記基材シートの柔軟性が良好なものとなり、施工の際や輸送時に基材シートにひび割れ等の破損が生じ難いものとなされるので、好ましい。
また、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体を20重量%以上40重量%以下に配合させ、前記ワックス中にエチレンビスステアリン酸アマイドを配合させた前記基材組成物から形成した基材シートを備えた道路標示シートを用いれば、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の配合によってより粘着しやすい状態となされる基材シートの表面の滑性を向上させ、施工後の道路標示シートの表面へのゴミや汚れの付着を抑制できるので好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の道路標示シートの施工方法及び道路標示シートによれば、道路標示シートの備える基材シートを加熱溶着させる場合と、前記基材シートの裏面に感圧型粘着剤を付着させて加熱せずに圧着させる場合とを、選択自在に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る道路標示シートの実施の一形態を示す正面図である。
【図2】図1(ロ)のA−A断面の概要を示す断面図である。
【図3】図2の道路標示シートを加熱溶着により施工した状態を示す図である。
【図4】図2の道路標示シートに感圧型粘着剤を付着させた状態を示す図である。
【図5】図4の道路標示シートを圧着させて施工した状態を示す図である。
【図6】本発明に係る道路標示シートの実施例と比較例の基材組成物の配合と試験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図面において1は基材シートである。
図1(イ)は、「注意」の文字標示を行なうための道路標示シートを示しており、外形形状が標示内容を表すように切り出しされた基材シート1で構成されている。
【0013】
図1(ロ)は、数字の「1」を標示するための道路標示シートを示している。
図2は図1(ロ)のA−A断面の概要を示す断面図である。
本実施形態の道路標示シートは、基材シート1aとこれと異なる色調の基材シート1bとで形成されており、具体的には外形形状が標示内容を表すように切り出しされた基材シート1aを、正方形の形状に形成され前記基材シート1aと同じ形状の切り抜きを施した基材シート1bの切り抜き部分に嵌め込み形成されている。
【0014】
2は保護シートである。
図2に示すように、保護シート2は下面に低い粘着力を有する粘着剤が塗布されており、基材シート1a、1bの上面に全面に亘って貼着されて取り付けられている。基材シート1bと、その切り抜き部分に嵌め込まれた基材シート1aとは、そのままの状態では容易に外れて分離してしまうが、保護シート2が貼着されることで施工時まで安定して一体の状態を保つことができる。
保護シート2に塗布された粘着剤は、後述する施工の作業の際に基材シート1a、1bから取り外すため、施工時まで基材シート1a、1bに貼着され、取り外す際には基材シート1a、1bの上面から容易に剥がせる程度の小さな粘着力のものを用いる。
【0015】
又、保護シート2は施工時まで安定して基材シート1a、1bに貼着できればよく、合成樹脂製シート、織布、不織布、紙などのシート状のものや、その他のものが用いられるが、後述する施工の際に基材シート1a、1bの施工面への位置決めを容易にするために、透明な合成樹脂製シートの利用が好ましく、本実施形態ではポリエチレンクロスを用いている。
【0016】
図3は図2の道路標示シートを加熱溶着により施工した状態を示す図であり、具体的には道路標示シートを加熱して設置面へ溶着固定させた状態を示している。
本発明の道路標示シートを加熱溶着させて施工する場合は、保護シート2を上面に貼着させた以外は基材シート1a、1bをそのまま用いるものであって、施工場所へ基材シート1a、1bをのせ、保護シート2を剥がした後、上方からガスバーナーの炎であぶるなどの方法で加熱して基材シート1a、1bを溶融させ、施工面へ溶着させた後に固化させて施工する。
道路標示シートの施工面へは、あらかじめプライマーを塗布しておくことで、道路標示シートの密着性が向上する。
【0017】
図4は図2の道路標示シートに感圧型粘着剤を付着させた状態を示す図であり、上面に保護シート2を貼着させた基材シート1a、1bの裏面に感圧型粘着剤を付着させて、加熱せずに施工する状態を示しており、図5は図4の道路標示シートを圧着させて施工した状態を示す図である。
本実施形態で用いている感圧型粘着剤は、粘着剤層3の上下両面にそれぞれ離型シート4を貼着させた両面テープの態様を有したものを用いており、その両面に貼着された離型シート4の片方を剥がして、粘着剤層3を基材シート1a、1bの下面に貼り付け、基材シート1a、1bの全面に貼着されるように取り付けている。
設置面への施工時には、残った離型シート4をはがし、あらかじめプライマーを塗布した施工面へ貼着させた後、保護シート2の上からゴムハンマーなどで叩いて基材シート1a、1bを設置面へ圧着させ、最後に基材シート1a、1bの上面から保護シート2を剥がす。
保護シート2は、嵌め合わせた基材シート1a、1bの分離を防ぐと共に、上記のように加熱せずに圧着させて施工する際に、基材シート1a、1bの上面へ傷など生じる問題を抑制する機能も有している。
【0018】
本実施形態に用いる感圧型粘着剤は、基材シート1a、1bを施工面へ圧着施工できればなんでもよく、両面テープ態様のものでもよく、液状、ゲル状のものを基材シート1a、1bの下面に塗布した後に離型シートを貼り付けてその表面を保護してもよい。
また、感圧型粘着剤の材質も、基材シート1a、1bを施工面へ圧着施工できればなんでもよく、例えばアクリル共重合樹脂、ゴム系接着剤等の公知の粘着剤等を用いることができ、本実施形態ではスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)の粘着剤を用いている。
【0019】
また、本実施形態の道路標示シートは、基材シート1bに設けた切り抜き部分に基材シート1aを嵌め合わせて、道路標示シート全面に亘って1枚分の厚みのみを有するように形成させているので、加熱溶融させて施工する場合には各基材シート1a、1bの全面に亘って均一に加熱でき溶着強度が部分的に弱くなる箇所が生じ難いものとなされる。また、圧着させて施工する場合においても、上面から加えた押し付ける力が、各基材シート1a、1bの全面に亘って均一に粘着剤層3に伝わり、圧着強度が部分的に弱くなる箇所が生じ難いものとなされる。
基材シートの表面に印刷などを施して標示を行なっても良いが、加熱溶着させる場合や、圧着させる場合において、基材シート1a、1bの表面が熱や外力によってわずかに歪む恐れがあるので、本形態では外形形状や切り抜き部分の形状が標示内容を表すように形成された基材シート1a、1bをそれぞれ嵌め合わせて形成し、このような歪みが生じた場合でも標示内容がくずれ難いようになされている。
【0020】
基材シート1a、1bは、基材組成物で形成されており、この基材組成物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下EVAと記載)とロジンとを配合した結合材に、ワックスと、着色材、充填材、反射材等の添加材とを配合させて形成させている。基材シート1a、1bは、前記の基材組成物を加熱して溶融させ、均一に混合させた後にシート状に成形させている。
また、基材シート1aと、1bとでは、添加材に異なる着色材を配合させて、その色調を異ならせている。
【0021】
EVAは道路標示シートに柔軟性、耐衝撃性、耐久性を付与するために使用されるものであるが、EVA中の酢酸ビニル含有量が15重量%以下になると接着性及び柔軟性が低下し、40重量%以上になると耐熱性、耐磨耗性が低下するので酢酸ビニル含有量は15〜40重量%の範囲内にする必要がある。
【0022】
ロジンとしては天然のロジン、テルペン樹脂の他に、合成のロジン様化合物、例えば石油樹脂、クマロン樹脂、キシレンホルマリン樹脂、インデン樹脂等が同様に使用でき、さらにこのロジンに水素添加したもの、グリセリン、グリコール類等でエステル化したもの、ホルムアルデヒド、アミンもしくは不飽和酸例えばマレイン酸等で変性したものも好ましく使用できる。これらのロジンは一種に限らず、二種以上併用しても良い。尚、ロジンを多価アルコールとエステル化する際にマレイン酸を加えて同時に加熱反応させてなるロジン変性マレイン酸樹脂とテルペン樹脂は、他のロジンに比べてEVAに対して相溶性があり、しかも耐候性、耐熱性が良好で本標示シートを路面に施工した場合に脆化したり、変色したりせず、しかも施工作業時に高温に加熱溶解されても分解や変色などが生じないので好ましい。
【0023】
図6は本発明に係る道路標示シートの実施例と比較例の基材組成物の配合と試験結果を示す表である。以下、実施例1〜4と比較例1について説明する。
実施例1は、結合材として酢酸ビニル含有量が28重量%のEVA240重量部と天然ロジン100重量部とを配合し、ワックスとしてポリエチレンワックス11重量部とエチレンビスステアリン酸アマイド6重量部とを配合し、添加材として粒度の小さな炭酸カルシウム110重量部、粒度の大きな炭酸カルシウム330重量部、再帰反射性を有する反射材として機能させるガラスビーズ160重量部、着色材43.4重量部を配合し、前記の結合材、ワックス、添加材をそれぞれ全量配合させて、基材組成物1000.4重量部を作成した。
この基材組成物は上記の配合により、EVAが24重量%含有され、エチレンビスステアリン酸アマイドが0.6重量%含有されたものとなされている。
実施例1は、この基材組成物を130〜180℃に加熱して溶融させ、均一に混合させた後にシート状に成形させて冷却固化させたものである。
上記の粒度の小さな炭酸カルシウムとは95重量%以上が325meshの標準ふるいを通過するように粒度が調整された炭酸カルシウムであり、粒度の大きな炭酸カルシウムとは95重量%以上が28meshの標準ふるいを通過し80meshの標準ふるい上に残るように粒度が調整された炭酸カルシウムである。
【0024】
実施例2は、結合材としてEVA300重量部と水添石油樹脂113重量部とを配合し、添加材として粒度の小さな炭酸カルシウム154重量部、粒度の大きな炭酸カルシウム218重量部、ガラスビーズ160重量部、着色材43.4重量部を配合した点のみが実施例1と異なる事項である。
上記の配合により、実施例2の基材組成物は、EVAが29.8重量%含有され、エチレンビスステアリン酸アマイドが0.6重量%含有されたものとなされている。
【0025】
実施例3は、結合材としてEVA254重量部と水添石油樹脂113重量部とを配合し、添加材として粒度の小さな炭酸カルシウム100重量部、粒度の大きな炭酸カルシウム318重量部、ガラスビーズ160重量部、着色材43.4重量部を配合した点のみが前記の実施例1、2と異なる事項である。
上記の配合により、実施例3の基材組成物は、EVAが25.3重量%含有され、エチレンビスステアリン酸アマイドが0.6重量%含有されたものとなされている。
【0026】
実施例4は、結合材としてEVA254重量部と天然ロジン113重量部とを配合した点のみが前記の実施例3と異なる事項である。
上記の配合により、実施例4の基材組成物は、EVAが25.3重量%含有され、エチレンビスステアリン酸アマイドが0.6重量%含有されたものとなされている。
【0027】
比較例1は、結合材としてEVA127重量部と天然ロジン113重量部とを配合し、ワックスとしてポリエチレンワックス11重量部のみを用い、添加材として粒度の小さな炭酸カルシウム260重量部、粒度の大きな炭酸カルシウム285重量部、ガラスビーズ160重量部、着色材43.4重量部を配合した基材組成物をシート状にした点が前記の実施例1〜4と異なるものである。
比較例1の基材組成物は、上記の配合により、EVAが12.7重量%含有されたものとなされている。
【0028】
次に実施例1〜4及び比較例1に対して実施した、折り曲げ試験の方法について説明する。
上記のように配合した実施例1〜4と比較例1の各基材組成物をシート状に成形する際に、厚さ1.2mmのシート状に成形し、これを冷却して固化させた後に30mm×150mmのサンプル片を作成する。
次に、各サンプル片の長手方向両端がそれぞれ接触するように折り曲げ、中央の折り曲げ部分の状態Aを目視で観察し、破断の有無によって各サンプル片の柔軟性を評価した。その後、状態Aで破断が確認されなかった場合には、中央の折り曲げ部分を指でつまんで力を加え、折り曲げ部分の状態Bを目視で観察して再度ひび割れと破断の有無を評価した。
折り曲げ試験は、23℃、10℃、5℃、0℃、−5℃、−10℃、の環境温度下でそれぞれ実施し、また評価の基準は、「◎:状態Bでひび割れがない」「○:状態Bでひび割れが生じたが破断には至らない」「△:状態Bで破断が生じた」「×:状態Aで破断が生じた」の4段階評価で実施した。
【0029】
折り曲げ試験の結果は、図6に示す通りである。
比較例1は23℃の室温レベルでは状態Bでも破断が確認されなかったが、10℃以下では状態Bで破断し、0℃以下では状態Aで破断が確認された。
これに対して、実施例1〜4はいずれも10℃での試験において状態Bの破断が確認されず、−10℃での試験においても状態Aの破断が確認されず、良好な柔軟性を有していることが確認された。
これは基材組成物に含有されたEVAによるものであり、これによって、実施例1〜4のサンプルは、設置面への施工において、加熱溶融させて設置面へ溶着固定させる施工方法を用いることができるが、シート裏面へ感圧型粘着剤を付着させてこれを圧着固定させる施工方法を用いても、作業中にひび割れや破断などを起こさずに好適に作業できる柔軟性を有しており、上記の施工方法を選択自在に実施できることが確認出来る。
基材シートは、基材組成物中のEVAの含有量が20重量%を下回ると柔軟性が低下し破断などの可能性が大きくなるので、基材組成物中のEVAの含有量が20重量%以上とするのが好ましく、24重量%以上にするのがより好ましい。
また、基材組成物中のEVAの含有量が40重量%を上回ると基材シートの粘着性が大きくなり表面への汚れの付着などの恐れが大きくなるので、40重量%以下にするのが好ましく、30重量%以下にするのがより好ましい。
【0030】
以下に実施例1〜4及び比較例1に対して実施した、接触試験の方法について説明する。実施例1〜4と比較例1のサンプル片を、30mm×150mm、厚さ1.2mm、に形成する。
これを50℃に加熱し、表面に1本の指を押し付けた後に持ち上げ、サンプル片の状態を指先の触感で評価した。
評価の基準は、「○:持ち上げた指にサンプル片が付着する感覚が確認されない」「△:サンプル片は持ち上がらないが指先に付着感がある」「×:指にサンプル片が付着して持ち上がる」の3段階評価で実施した。
【0031】
接触試験の結果は、図6に示す通りである。
比較例1は指先に付着感が感じられたのに対し、実施例1〜4はいずれも指先に付着感が確認されなかった。
これは基材組成物中のワックスに配合させたエチレンビスステアリン酸アマイドによるものであり、これによって、実施例1〜4のサンプルは、路面へ施工された後、夏期の日差し等によってその温度が上昇しても、表面への砂やゴミなどの付着が抑制され、高い防汚性を示すことが確認出来る。
【符号の説明】
【0032】
1 基材シート
2 保護シート
3 粘着剤層
4 離型シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱して施工面に付着させる場合と、加熱せずに付着させる場合のいずれの場合にも使用できる道路標示シートを使用した道路標示シートの施工方法であって、
前記道路標示シートは、酢酸ビニル含有量が15〜40重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体とロジンとが配合された結合材に、ワックスと、着色材、充填材、反射材等の添加材とが配合された基材組成物が均一に溶融混合されてシート状に成形された基材シートを備え、
加熱して施工面に付着させる場合には、前記道路標示シートをそのまま使用して、前記基材シートを加熱して施工面に溶着させるようになされ、加熱せずに付着させる場合は、前記基材シートの裏面に感圧型粘着剤を付着させて、該感圧型粘着剤を施工面に圧着させるようになされたことを特徴とする道路標示シートの施工方法。
【請求項2】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体が20重量%以上40重量%以下に配合され、前記ワックス中にエチレンビスステアリン酸アマイドが配合された前記基材組成物から形成された基材シートを備えた道路標示シートを用いることを特徴とする請求項1に記載の道路標示シートの施工方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の道路標示シートの施工方法に用いられる道路標示シートであって、前記基材シートが備えられていることを特徴とする道路標示シート。
【請求項4】
請求項3に記載の道路標示シートであって、前記基材シートの裏面に感圧型粘着剤が付着されていることを特徴とする道路標示シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−169048(P2011−169048A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34927(P2010−34927)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】